特許第6863470号(P6863470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863470二次電池用結着剤、二次電池用電極合剤、二次電池用電極及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863470
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】二次電池用結着剤、二次電池用電極合剤、二次電池用電極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20210412BHJP
   C08F 259/08 20060101ALI20210412BHJP
   H01M 4/131 20100101ALN20210412BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   C08F259/08
   !H01M4/131
【請求項の数】9
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2019-550909(P2019-550909)
(86)(22)【出願日】2018年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2018036824
(87)【国際公開番号】WO2019087652
(87)【国際公開日】20190509
【審査請求日】2020年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2017-209270(P2017-209270)
(32)【優先日】2017年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-31003(P2018-31003)
(32)【優先日】2018年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 学
(72)【発明者】
【氏名】井口 貴視
(72)【発明者】
【氏名】浅野 和哉
(72)【発明者】
【氏名】篠田 千紘
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/076371(WO,A1)
【文献】 特開2013−179059(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/083790(WO,A1)
【文献】 特開平07−201316(JP,A)
【文献】 特開2011−198510(JP,A)
【文献】 特開2013−219016(JP,A)
【文献】 特表2014−505134(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/216348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
C08F 259/08
H01M 4/131
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニリデンフルオライドに基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、下記一般式(2−2)で表される単量体(2−2)に基づく重合単位と、を有する含フッ素重合体(A)、及び、
ポリビニリデンフルオライド(B)
を含むことを特徴とする二次電池用結着剤。
【化1】
(式中、R、R及びRは、互いに独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。Yは、無機カチオン又は有機カチオンを表す。)
【請求項2】
前記含フッ素重合体(A)とポリビニリデンフルオライド(B)との質量比(A)/(B)は5/95〜95/5である請求項1記載の二次電池用結着剤。
【請求項3】
前記含フッ素重合体(A)は、全重合単位に対して、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位が50〜95モル%、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が4.8〜49.95モル%、前記単量体(2−2)に基づく重合単位が0.05〜2.0モル%である請求項1又は2記載の二次電池用結着剤。
【請求項4】
前記含フッ素重合体(A)は、重量平均分子量が200000〜2400000である請求項1、2又は3記載の二次電池用結着剤。
【請求項5】
前記含フッ素重合体(A)は、25℃における貯蔵弾性率が1000MPa以下である請求項1、2、3又は4記載の二次電池用結着剤。
【請求項6】
前記含フッ素重合体(A)は、25℃における貯蔵弾性率が800MPa以下である請求項1、2、3、4又は5記載の二次電池用結着剤。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の二次電池用結着剤と電池用粉末電極材料と水又は非水溶剤とを少なくとも混合してなる二次電池用電極合剤。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の二次電池用結着剤を含む二次電池用電極。
【請求項9】
請求項8記載の二次電池用電極を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用結着剤、二次電池用電極合剤、二次電池用電極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、高電圧、高エネルギー密度で、自己放電が少ない、メモリー効果が少ない、超軽量化が可能である、等の理由から、ノート型パソコン、携帯電話、スマートフォン、タブレットパソコン、ウルトラブック等小型で携帯に適した電気・電子機器等に用いられるとともに、更には、自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源等に至るまでの広範な電源として実用化されつつある。二次電池には、更なる高エネルギー密度化が求められており、電池特性の更なる改善が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、充放電サイクル特性を改善した非水電解質二次電池を提供することを目的とし、正極活物質としてLiCoOのようなリチウム含有酸化物と導電剤としてのグラファイトをポリフッ化ビニリデンと混合し作製した正極合剤をN−メチルピロリドンに分散させてスラリー状にしたものをアルミ箔の正極集電体に塗布し、また負極活物質としての炭素質材料とポリフッ化ビニリデンとを混合し作製した負極合剤をN−メチルピロリドンに分散させてスラリー状にしたものを負極集電体である銅箔上に塗布し、それぞれ乾燥後、ローラープレス機により圧縮成形して電極シートに加工する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、使用量を減らした場合でも、粉末電極材料をよく保持し、かつ集電基材との密着性に優れ、高密度化のため電極を厚塗りし捲回、プレスしても電極が割れることがない柔軟性を有する結着剤を提供することを目的として、含フッ素重合体を含む結着剤であって、前記含フッ素重合体は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位及びアミド基(−CO−NRR’(R及びR’は、同一又は異なって、夫々水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。))又はアミド結合(−CO−NR”−(R”は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。))を有する単量体に基づく重合単位を有し、溶液粘度が10〜20,000mPa・sであることを特徴とする結着剤が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、粘度変化が小さく、電極密度が高く、柔軟性に優れ、かつ、電気特性に優れた電池とすることができる電極を製造することができる電極合剤を提供することを目的として、粉末電極材料、結着剤、及び、有機溶剤を含む電極合剤であって、前記結着剤は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位及びテトラフルオロエチレンに基づく重合単位からなる含フッ素重合体、並びに、ポリビニリデンフルオライドを含有し、前記含フッ素重合体は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位を全重合単位に対して80.0〜90.0モル%含み、前記ポリビニリデンフルオライドは、数平均分子量が150000〜1400000であることを特徴とする電極合剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−249859号公報
【特許文献2】特開2013−219016号公報
【特許文献3】国際公開第2013/176093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電極の高密度化、集電体との密着性、電極の柔軟性、及び、スラリーの粘度維持率のいずれにも優れる二次電池用結着剤及び二次電池用電極合剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、下記一般式(2−2)で表される単量体(2−2)に基づく重合単位と、を有する含フッ素重合体(A)、及び、ポリビニリデンフルオライド(B)を含むことを特徴とする二次電池用結着剤である。
【化1】
(式中、R、R及びRは、互いに独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。Yは、無機カチオン又は有機カチオンを表す。)
【0009】
上記含フッ素重合体(A)とポリビニリデンフルオライド(B)との質量比(A)/(B)は5/95〜95/5であることが好ましい。
【0010】
上記含フッ素重合体(A)は、全重合単位に対して、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位が50〜95モル%、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が4.8〜49.95モル%、前記単量体(2−2)に基づく重合単位が0.05〜2.0モル%であることが好ましい。
上記含フッ素重合体(A)は、重量平均分子量が200000〜2400000であることが好ましい。
上記含フッ素重合体(A)は、25℃における貯蔵弾性率が1000MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましい。
【0011】
本発明はまた、上述の二次電池用結着剤と電池用粉末電極材料と水又は非水溶剤とを少なくとも混合してなる二次電池用電極合剤でもある。
本発明は更に、上述の二次電池用結着剤を含む二次電池用電極でもある。
本発明はそして、上述の二次電池用電極を備える二次電池でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結着剤は、上記構成よりなるので、電極の高密度化、集電体との密着性、電極の柔軟性、及び、スラリーの粘度維持率のいずれにも優れる。
【0013】
本発明の電極合剤は、上記構成よりなるので、電極の高密度化、集電体との密着性、電極の柔軟性、スラリーの粘度維持率のいずれにも優れる電極材料層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0015】
二次電池のエネルギー密度を向上させるうえでは、電極作製技術が大きなポイントとなる。例えば、リチウムイオン二次電池の電極については、コークスやカーボン等の炭素質材料を負極活物質として負極を作製する場合、通常、炭素質材料を粉末化し、結着剤と増粘剤とともに溶剤に分散させて負極合剤を調製し、負極集電体に塗布後、溶剤を乾燥除去し、圧延することにより作製する。また正極は、例えばリチウム含有酸化物を正極活物質としてこれを粉末化し、導電剤及び結着剤とともに溶剤に分散させて正極合剤を調製し、正極集電体に塗布後、溶剤を乾燥除去し圧延することにより作製する。
例えば電気自動車に使用されるリチウムイオン二次電池の正極合剤塗膜の密度は現在3.4〜3.6g/ccが主流となっているが、エネルギー高密度化のために、正極合剤塗膜の更なる高密度化が求められる。
本発明の結着剤は、含フッ素重合体(A)及びポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕(B)を含むことを特徴とし、この特徴によって電極の高密度化に優れるため、電池の更なる高容量化が期待できる。更に、集電体との密着性、電極の柔軟性、及び、スラリーの粘度維持率のいずれにも優れる。
【0016】
結着剤自体は、電極の電気化学的性能にはほとんど寄与しないので、電極の高密度化や電極の内部抵抗を下げるためには、その使用量は極力少ないことが望ましい。本発明の結着剤は集電体との密着性に優れるので、使用量を減らすことができる。その結果、電池容量を向上させることができるとともに、電極の抵抗を低減することもでき、電池性能を向上させることが可能となる。また、結着剤の使用量が減った分、製造コストを削減することも可能となる。
【0017】
また、本発明の結着剤を使用した電極シートは柔軟性に優れるので、正極合剤塗膜を圧延する工程で、容易に高密度化ができる。また、代表的な用途であるリチウムイオン二次電池の形態は円筒型、角型、ラミ型等であり、電極シートは捲回、プレスして導入されるので、電極シートが割れたり、粉末電極材料が脱落したり、集電体から剥離したりしやすいという問題がある。しかし、本発明の結着剤は集電体との密着性、及び、柔軟性に優れるので、高密度化のため電極材料を厚塗りし捲回、プレスしても電極が割れることがなく、粉末電極材料の脱落や集電体からの剥離もない。
【0018】
更に、リチウムイオン二次電池の高容量化に向けて活物質のニッケル含有量が増加しているが、電極合剤作成時にアルカリ条件下になるために電極合剤がゲル化し、集電体への塗布が困難になるという問題がある。しかし、本発明の結着剤は、ニッケル含有量の高い活物質を用いた場合であってもスラリーの粘度維持率に優れるため、電極合剤作成後、長時間置いてもゲル化することはなく流動性を維持したままである。
【0019】
また、結着剤に使用される重合体のスラリー分散性が劣ると電極ムラが発生しやすい。本発明の結着剤は、スラリーの粘度維持率に優れるため、電極合剤作成後、長時間置いてもスラリー分散性が良いため、電極ムラなどが発生しにくく、レート特性に優れることが期待できる。
【0020】
上記含フッ素重合体(A)は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、後述の一般式(2−2)で表される単量体(2−2)に基づく重合単位と、を有する。
【0021】
上記含フッ素重合体(A)は、上記単量体(2−2)に基づく重合単位を有する。上記単量体(2−2)は特定の官能基を有しているため、PVdF(B)と併用することによって、集電体との密着性を向上させることができる。
例えば、特許文献2及び3のように、上記単量体(2−2)に基づく重合単位を有さないVdFに基づく重合単位及びTFEに基づく重合単位からなる含フッ素重合体を用いた場合と比較して、集電体との密着性を向上させることができるため、より結着剤量の削減、更なる電池容量の高容量化を図ることができる。
更に、本発明の結着剤は、集電体との密着性を向上させることができるだけでなく、驚くべきことに、耐ゲル化性及びスラリー分散性にも優れ、かつ、得られる電極の柔軟性を向上させることもできる。
【0022】
上記単量体(2−2)は、下記一般式(2−2)で表される単量体である。上記単量体(2−2)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
【化2】
(式中、R、R及びRは、互いに独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。Yは、無機カチオン又は有機カチオンを表す。)
【0024】
上記一般式(2−2)において、Yは、無機カチオン又は有機カチオンである。無機カチオンとしては、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe等のカチオンが挙げられる。有機カチオンとしては、NH、NH、NH、NHR、NR(Rは、互いに独立に炭素数1〜4のアルキル基を表す。)等のカチオンが挙げられる。Yとしては、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、NHが好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Al、NHがより好ましく、H、Li、Al、NHが更に好ましく、Hが特に好ましい。なお、上記無機カチオン及び有機カチオンの具体例は、便宜上、符号及び価数を省略して記載している。
【0025】
上記一般式(2−2)において、R、R及びRは、互いに独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。上記炭化水素基は1価の炭化水素基である。上記炭化水素基の炭素数は4以下が好ましい。上記炭化水素基としては、上記炭素数のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基等が好ましい。R及びRは、互いに独立に水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(2−2)において、Rは、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。上記炭化水素基は2価の炭化水素基である。上記炭化水素基の炭素数は4以下が好ましい。上記炭化水素基としては、上記炭素数のアルキレン基、アルケニレン基等が挙げられ、中でも、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0027】
上記単量体(2−2)としては、中でも、ビニル酢酸(3−ブテン酸)及びその塩、3−ペンテン酸及びその塩、4−ペンテン酸及びその塩、3−ヘキセン酸及びその塩、4−ヘキセン酸及びその塩、並びに、5−ヘキセン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、3−ブテン酸及びその塩、並びに、4−ペンテン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0028】
上記含フッ素重合体(A)においては、上記単量体(2−2)に基づく重合単位が全重合単位に対して0.05〜2.0モル%であることが好ましい。上記重合単位の含有量が上記範囲内であると、ビニリデンフルオライド及びテトフルオロエチレンに基づく特性を損なうことなく、結着剤の集電体との密着性を向上させることができる。上記重合単位の含有量は、0.10モル%以上がより好ましく、0.30モル%以上が更に好ましく、0.40モル%以上が更により好ましく、また、1.5モル%以下がより好ましい。
【0029】
上記含フッ素重合体(A)は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位を有する。これにより、上記結着剤は溶剤溶解性、耐酸化性、耐電解液浸蝕性に優れる。
【0030】
上記含フッ素重合体(A)は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位を有する。これにより、上記結着剤は柔軟性に優れる。また、耐薬品性(特に耐アルカリ性)も向上する。
【0031】
上記含フッ素重合体(A)においては、全重合単位に対して、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位が50〜95モル%、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位が4.8〜49.95モル%であることが好ましい。これにより、他の重合単位に基づく特性を損なうことなく、得られる電極の柔軟性や耐薬品性を向上させることができる。より好ましくは、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位は60〜90モル%、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位は9.8〜39.95モル%である。
ビニリデンフルオライドに基づく重合単位の含有量の上限は、94モル%であってもよく、89モル%であってもよい。
テトラフルオロエチレンに基づく重合単位の含有量の上限は、49.90モル%であってもよく、49.70モル%であってもよく、49.60モル%であってもよく、49モル%であってもよく、39.90モル%であってもよく、39.70モル%であってもよく、39.60モル%であってもよく、39.00モル%であってもよい。
【0032】
上記含フッ素重合体(A)は、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、及び、上記単量体(2−2)に基づく重合単位を有するものである限り、それらの単量体と共重合可能なその他の単量体に基づく重合単位を更に有していてもよい。
【0033】
上記その他の単量体としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、プロピレン、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン等を使用することができる。中でも、柔軟性と耐薬品性の観点からヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが特に好ましい。
これらの単量体を用いる場合、該単量体に基づく重合単位は、全重合単位に対して0.1〜50モル%であることが好ましい。
【0034】
上記含フッ素重合体(A)は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。より好ましくは400000〜2200000であり、更に好ましくは600000〜2000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0035】
上記含フッ素重合体(A)は、電池特性が向上するという点で、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000であることが好ましい。より好ましくは140000〜1100000である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0036】
上記含フッ素重合体(A)は、25℃における貯蔵弾性率が1000MPa以下であることが好ましい。25℃における貯蔵弾性率が1000MPa以下であると、上記結着剤の柔軟性が一層向上する。上記貯蔵弾性率は、800MPa以下がより好ましく、600MPa以下が更に好ましい。上記貯蔵弾性率は、また、100MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましく、250MPa以上が更に好ましい。
【0037】
上記含フッ素重合体(A)は、100℃における貯蔵弾性率が200MPa以下であることが好ましい。100℃における貯蔵弾性率が200MPa以下であると、上記結着剤の柔軟性が一層向上する。上記貯蔵弾性率は、160MPa以下がより好ましく、140MPa以下が更に好ましく、110MPa以下が更により好ましい。上記貯蔵弾性率は、また、1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が更に好ましい。
【0038】
上記貯蔵弾性率は、長さ30mm、巾5mm、厚み40μmのサンプルについて、アイティー計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で動的粘弾性測定により引張モード、つかみ巾20mm、測定温度−30℃から160℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定した際の25℃及び100℃での測定値である。
測定サンプルは例えば、結着剤(含フッ素重合体(A))を濃度が8質量%になるよう秤量し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させて得た結着剤溶液を、ガラス板上にキャストし100℃で12時間乾燥し、更に真空下で100℃で12時間乾燥し、得た厚さ40μmに成形したフィルムを、長さ30mm、巾5mmにカットすることで作製することができる。
【0039】
含フッ素重合体(A)が、上記のように貯蔵弾性率の低いものであると、本発明の結着剤を用いた正極合剤塗膜を圧延する工程で高密度化しやすい。また、本発明の結着剤を用いた電極を厚塗りかつ高密度化したものを捲回しても電極が割れることがない。
【0040】
ビニリデンフルオライドと、テトラフルオロエチレンと、上記単量体(2−2)と、必要に応じてそれらの単量体と共重合可能なその他の単量体との共重合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましい。
【0041】
上記の共重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤又は水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0042】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等が、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(又はフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類等が代表的なものとして挙げられる。
【0043】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸等のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0044】
上記界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4〜20の直鎖又は分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。添加量(対重合水)は、好ましくは50〜5000ppmである。
【0045】
上記連鎖移動剤としては、例えば、エタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01〜20質量%の範囲で使用される。
【0046】
上記溶媒としては、水、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
【0047】
上記懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類;CFHCFCFCFH、CFCFHCFCFCF、CFCFCFCFCFH、CFCFCFHCFCF、CFCFHCFHCFCF、CFHCFCFCFCFH、CFHCFHCFCFCF、CFCFCFCFCFCFH、CFCH(CF)CFCFCF、CFCF(CF)CFHCFCF、CFCF(CF)CFHCFHCF、CFCH(CF)CFHCFCF、CFHCFCFCFCFCFH、CFCFCFCFCHCH、CFCHCFCH等のハイドロフルオロカーボン類;F(CFOCH、F(CFOC、(CFCFOCH、F(CFOCH等の(ペルフルオロアルキル)アルキルエーテル類;CFCHOCFCHF、CHFCFCHOCFCHF、CFCFCHOCFCHF等のヒドロフルオロアルキルエーテル類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性及び経済性の面から、水性媒体に対して10〜100質量%が好ましい。
【0048】
重合温度としては特に限定されず、0〜100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
【0049】
水を分散媒とした懸濁重合においては、メチルセルロース、メトキシ化メチルセルロース、プロポキシ化メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ゼラチン等の懸濁剤を、水に対して0.005〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.4質量%の範囲で添加して使用することができる。
【0050】
この場合の重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルヘプタフルオロプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(クロロフルオロアシル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロアシル)パーオキサイド等が使用できる。その使用量は、単量体合計量(ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンと、上記単量体(2−2)と、必要に応じてそれらの単量体と共重合可能なその他の単量体との合計量)に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0051】
また、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、プロピオン酸エチル、四塩化炭素等の連鎖移動剤を添加して、得られる重合体の重合度を調節することも可能である。その使用量は、通常は、単量体合計量に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。
【0052】
単量体の合計仕込量は、単量体合計量:水の重量比で1:1〜1:10、好ましくは1:2〜1:5であり、重合は温度10〜50℃で10〜100時間行う。
【0053】
上記の懸濁重合により、容易にビニリデンフルオライドと、テトラフルオロエチレンと、上記単量体(2−2)と、必要に応じてその他の単量体とを共重合させることができる。
【0054】
上記乳化重合は、水性媒体の存在下で実施する。上記水性媒体としては、水が好ましい。上記重合に使用される水はイオン交換水を使用することが好ましく、その電気電導度は10μS/cm以下で低いものほど好ましい。イオン分が多いと反応速度が安定しない場合がある。フッ素系溶媒においても製造工程において含まれる酸や塩素基を含有する化合物等の成分が極力少ない高純度の方が好ましい。酸分や塩素等を含有する化合物は連鎖移動性を有する場合があるので、重合速度や分子量を安定させるうえで好ましい。更に、重合で使用するその他原料(フッ化ビニリデンやテトラフルオロエチレン等のモノマー、開始剤、連鎖移動剤等)においても同様に連鎖移動性の成分が少ない高純度の物を使用することが好ましい。反応の準備段階では、水を仕込んだ状態後、槽内を撹拌しながら気密試験を行った後、槽内を減圧、窒素微加圧、減圧を繰り返し、槽内の酸素濃度を1000ppm以下のできるだけ小さい酸素濃度まで下がったことを確認した後に、再び減圧しモノマー等の原料を仕込んで反応を開始する方が、反応速度の安定化、分子量の調節には好ましい。
【0055】
上記乳化重合では、重合温度としては特に限定されず、0〜150℃であってよい。重合圧力は、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0〜9.8MPaGであってよい。
【0056】
上記乳化重合では、1種又は複数の界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤としては、公知の乳化剤を使用してよく、例えば下記界面活性剤群[A]〜[G]等を使用できる。
(界面活性剤群[A])
CF(CFCOONH、CF(CFCOONH、CF(CFCOONH、CF(CFSONa、CF(CFSONH等の含フッ素アニオン性アルキル界面活性剤類
(界面活性剤群[B])
式:CFO−CF(CF)CFO−CX(CF)−Y(式中、XはH又はFを表し、Yは−COOM、−SO、−SONM又は−POを表す。上記M、M、M、M、M及びMは、同一又は異なって、H、NH又は一価カチオンを表す。)又は、式:CFO−CFCFCFO−CFXCF−Y(式中、XはH又はFを表し、Yは上記と同じ。)又は、式:CFCFO−CFCFO−CFX−Y(式中、XはH又はFを表し、Yは上記と同じ。)で表される含フッ素アニオン性アルキルエーテル界面活性剤類
(界面活性剤群[C])
CH=CFCF−O−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−COONH等の、含フッ素アリルエーテル類
(界面活性剤群[D])
線状1−オクタンスルホン酸、線状2−オクタンスルホン酸、線状1,2−オクタンジスルホン酸、線状1−デカンスルホン酸、線状2−デカンスルホン酸、線状1,2−デカンジスルホン酸、線状1,2−ドデカンジスルホン酸、線状1−ドデカンスルホン酸、線状2−ドデカンスルホン酸、線状1,2−ドデカンジスルホン酸等のアルカンスルホン酸又はそれらの塩、1−オクチルスルフェート、2−オクチルスルフェート、1,2−オクチルジスルフェート、1−デシルスルフェート、2−デシルスルフェート、1,2−デシルジスルフェート、1−ドデシルスルフェート、2−ドデシルスルフェート、1,2−ドデシルジスルフェート等のアルキルスルフェート又はそれらの塩、ポリビニルホスホン酸又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルスルホン酸又はその塩等の非フッ素化界面活性剤類
(界面活性剤群[E])
ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールフェノールオキシド、ポリプロピレングリコールアクリレート及びポリプロピレングリコール等の非フッ素エーテル界面活性剤類
(界面活性剤群[F])
非フッ素界面活性剤(例えば、界面活性剤群[D]から選択される少なくとも1種)、及び分子量が400未満である含フッ素界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤、及び官能性フルオロポリエーテル(フルオロポリオキシアルキレン鎖(例えば、式:−(CF−CFZO−(式中、ZはF又は炭素数1〜5の(パー)フルオロ(オキシ)アルキル基、jは0〜3の整数)を繰り返し単位として1つ以上含む鎖)と官能基(例えば、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基及びそれらの酸塩型の基からなる群より選択される少なくとも1種)とを含む化合物)の混合物類
(界面活性剤群[G])
不活性化させた非フッ素界面活性剤類(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、直鎖状アルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、シロキサン界面活性剤等の炭化水素含有界面活性剤を、過酸化水素又は後述する重合開始剤等と反応させたもの)
【0057】
上記界面活性剤の使用量としては、水性媒体の1〜50000ppmが好ましい。
【0058】
上記乳化重合の重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、又は水溶性ラジカル重合開始剤を使用でき、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0059】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等が、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(又はフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類等が代表的なものとして挙げられる。
【0060】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸等のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレート、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0061】
上記乳化重合の重合開始剤としては、なかでも、過硫酸塩がより好ましい。その使用量は、水性媒体に対して0.001〜20質量%の範囲で使用される。
【0062】
上記乳化重合においては、連鎖移動剤を使用することができる。上記連鎖移動剤としては、例えば、エタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、水性媒体に対して0.001〜20質量%の範囲で使用される。
【0063】
上記乳化重合によって得られたラテックスを粉末に加工する場合、その方法は特に限定されず、従来公知の方法で行うことができる。例えば、酸添加による凝析、無機金属塩添加による凝析、有機溶剤添加による凝析、凍結凝析等を利用できる。酸凝析に用いられる凝析剤は公知の凝析剤を利用してよく、例えば塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。塩凝析に用いられる凝析剤は公知の凝析剤を利用してよく、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。凝析後、水又は有機溶剤を用いて、残留する界面活性剤や重合開始剤、連鎖移動剤、余分な凝析剤等を洗浄除去してもよい。その後、濡れたポリマーを乾燥することで乾燥粉末を得ることができる。
【0064】
上記の乳化重合により、容易にビニリデンフルオライドと、テトラフルオロエチレンと、上記単量体(2−2)と、必要に応じてその他の単量体とを共重合させることができる。
【0065】
ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンと共重合させる単量体(すなわち上記単量体(2−2)、及び、必要に応じてその他の単量体)の仕込量は、得られる共重合体の接着性、耐薬品性、分子量、重合収率等を考慮して決められる。
【0066】
上記結着剤は、更にPVdF(B)を含む。本発明は、結着剤としてPVdF(B)に上記含フッ素重合体(A)を配合することで、合剤調製から24時間経過しても粘度変化を小さくすることができ、更に、耐ゲル化性に優れ、電極密度が高く、集電体との密着性、及び、柔軟性にも優れた電極が得られることが見出されたものである。
【0067】
上記PVdFは、VdFに基づく重合単位のみからなるホモポリマーであってもよいし、VdFに基づく重合単位と、上記VdFに基づく重合単位と共重合可能な単量体(α)に基づく重合単位とからなるものであってもよい。
【0068】
上記単量体(α)としては、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、プロピレン、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン等が挙げられる。
また、アクリル酸等の(メタ)アクリルモノマー(好ましくは、親水性(メタ)アクリルモノマー)等も使用できる。
更に、特開平6−172452号公報に記載されているような不飽和二塩基酸モノエステル、たとえばマレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステルやビニレンカーボネートなど、また特開平7−201316号公報に記載されているような、−SOM、−OSOM、−COOM、−OPOM(Mはアルカリ金属を表わす)やアミン系極性基である−NHR、−NR(R、R、Rはアルキル基を表わす)などの親水性極性基を有する化合物、たとえばCH=CH−CH−Y、CH=C(CH)−CH−Y、CH=CH−CH−O−CO−CH(CHCOOR)−Y、CH=CH−CH−O−CH−CH(OH)−CH−Y、CH=C(CH)−CO−O−CH−CH−CH−Y、CH=CH−CO−O−CH−CH−Y、CH=CHCO−NH−C(CH−CH−Y(Yは親水性極性基、またRはアルキル基を表わす)やその他、マレイン酸や無水マレイン酸などがあげられる。さらに、CH=CH−CH−O−(CH−OH(3≦n≦8)、
【化3】
CH=CH−CH−O−(CH−CH−O)−H(1≦n≦14)、CH=CH−CH−O−(CH−CH(CH)−O)−H(1≦n≦14)などの水酸化アリルエーテルモノマーや、カルボキシル化および/または−(CF−CF(3≦n≦8)で置換されるアリルエーテルおよびエステルモノマー、たとえばCH=CH−CH−O−CO−C−COOH、CH=CH−CH−O−CO−C10−COOH、CH=CH−CH−O−C−(CFCF、CH=CH−CH−CO−O−C−(CFCF、CH=C(CH)−CO−O−CH−CFなども同様に共重合可能な単量体として使用できる。
ところで、以上のような極性基などを含む化合物以外でもPVdFの結晶性を少し低下させ材料に柔軟性を与えることによりアルミや銅の金属箔からなる集電体との接着性が向上しうることがこれまでの研究より類推できるようになった。これより、たとえばエチレン、プロピレンなどの不飽和炭化水素系モノマー(CH=CHR、Rは水素原子、アルキル基またはClなどのハロゲン)や、フッ素系モノマーである3フッ化塩化エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンやCF=CF−O−C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF−C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF−(CFCFH(nは1以上の整数)、さらにCF=CF−O−(CFCF(CF)O)−C2n+1(m、nは1以上の整数)も使用可能である。
そのほか式(1):
【0069】
【化4】
(式中、Yは−CHOH、−COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、XおよびXは同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Rは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体も使用可能である。これらの単量体を1種または2種以上共重合することにより、さらに集電体との接着性が向上し、充放電を繰り返し行なっても集電体より電極活物質が剥がれ落ちることがなく、良好な充放電サイクル特性が得られる。
上記PVdF(B)は、上記単量体(2−2)に基づく重合単位を含まないことが好ましい。
【0070】
上記PVdF(B)は、単量体(α)として親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に基づく重合単位を含むことも好ましい。上記PVdF(B)は、親水性(メタ)アクリルモノマーを1種含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0071】
上記親水性(メタ)アクリルモノマーは、式:
【化5】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、または、炭素数1〜3の炭化水素基である。ROHは水素原子または少なくとも1つのヒドロキシル基を含む炭素数1〜5の2価の炭化水素基である。)で示される単量体が好ましい。
【0072】
上記親水性(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
親水性(メタ)アクリルモノマーは、式:
【化6】
で示されるヒドロキシエチルアクリレート、下記式:
【化7】
で示される2−ヒドロキシプロピルアクリレート、下記式:
【化8】
で示される2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及び、下記式:
【化9】
で示されるアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記アクリレートやアクリル酸は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記親水性(メタ)アクリルモノマーとして最も好ましくは、式(a2)で示される2−ヒドロキシプロピルアクリレート、式(a3)で示される2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及び、式(a4)で示されるアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0075】
上記PVdF(B)が単量体(α)として親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に基づく単位(MA)を含む場合、集電体との密着性、親水性、耐熱性の観点から、上記PVdF(B)においてランダムに分布した単位(MA)の分率が40%以上であることが好ましい。上記分率は、50%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0076】
上記「ランダムに分布した単位(MA)の分率」は、次式:
【数1】
に従って、VdFに由来する2つの重合単位の間に含まれる、(MA)配列の平均数(%)と、(MA)単位の全平均数(%)とのパーセント比を意味する。
【0077】
(MA)単位のそれぞれが孤立している、すなわち、VdFの2つの重合単位の間に含まれるとき、(MA)配列の平均数は(MA)単位の平均全数に等しいので、ランダムに分布した単位(MA)の分率は100%であり、この値は(MA)単位の完全にランダムな分布に相当する。従って、(MA)単位の全数に対して孤立(MA)単位の数が大きければ大きいほど、上記のような、ランダムに分布した単位(MA)の分率の百分率値は高い。
【0078】
上記PVdF(B)における(MA)単位の全平均数の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけ、例えばアクリル酸含有率の測定に好適な酸−塩基滴定法を、側鎖に脂肪族水素を含む(MA)モノマー(例えば、HPA、HEA)の定量に適切な、NMR法を、PVdF(B)製造中の全供給(MA)モノマーおよび未反応残存(MA)モノマーに基づく重量収支を挙げることができる。上記(MA)配列の平均数(%)は、標準方法に従って例えば19F−NMRによって測定することができる。
【0079】
上記単量体(α)としては、親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)、マレイン酸、及び、クロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、集電体との密着性の観点から、親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)が特に好ましい。
【0080】
上記PVdF(B)は、単量体(α)に基づく重合単位が全重合単位の10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
【0081】
上記PVdF(B)は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。上記重量平均分子量は、より好ましくは400000以上、更に好ましくは600000以上であり、より好ましくは2200000以下、更に好ましくは2000000以下である。
上記PVdF(B)の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、密着性の観点から、150000以上であることが好ましく、200000以上であることがより好ましく、400000以上であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0082】
上記PVdF(B)は、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000である。
上記数平均分子量は、140000以上が好ましく、1100000以下が好ましい。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0083】
本発明の結着剤は、上記含フッ素重合体(A)とPVdF(B)との質量比(A)/(B)が5/95〜95/5であることが好ましく、10/90〜90/10であることがより好ましく、15/85〜85/15であることが更に好ましい。
上記範囲であることによって、電極の高密度化、集電体との密着性、電極の柔軟性、スラリーの粘度維持率をより改善することができる。
スラリーの粘度維持率をより改善する点からは、質量比(A)/(B)は5/95〜70/30であることも好ましい。
電極の高密度化及び集電体との密着性の点から、質量比(A)/(B)は10/90〜95/5であることが好ましく、15/85〜95/5であることがより好ましい。
【0084】
本発明の結着剤は、含フッ素重合体(A)とPVdF(B)とを併用することによって、含フッ素重合体(A)を単独で用いた場合と比較して、特に、スラリーの粘度維持率を向上させることができる。また、スラリーの粘度維持率が向上するにも関わらず、優れた電極の高密度化、集電体との密着性、電極の柔軟性を維持することができる。
また、含フッ素重合体(A)は、PVdFと比較して製造コストが高くなる傾向があるが、本発明の結着剤は、含フッ素重合体(A)とPVdF(B)とを併用することによって、含フッ素重合体(A)の使用量を削減することができ、コストの点で大きな利点がある。
【0085】
本発明の結着剤において、上記含フッ素重合体(A)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記PVdF(B)としても、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
例えば、1種の含フッ素重合体(A)と、2種以上のPVdF(B)を併用してもよいし、2種以上の含フッ素重合体(A)と、1種のPVdF(B)を併用してもよい。もちろん、2種以上の含フッ素重合体(A)と2種以上のPVdF(B)とを併用してもよい。
【0086】
本発明の結着剤は、上記含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)を含む限り、その他の成分を更に含んでいてもよく、該その他の成分は1種又は2種以上を用いることができる。
【0087】
上記結着剤に使用可能な上記その他の成分としては、VdF重合体(但し、含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)を除く)、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、スチレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中でも、VdF重合体が好ましい。
これらその他の成分の含有量は、含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)の合計量に対して10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。また、含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)の合計量に対して0.01質量%以上であってもよい。
【0088】
上記VdF重合体は、VdFに基づく重合単位を含み、上記含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)とは異なる重合体である。
上記VdF重合体は、上記単量体(2−2)に基づく重合単位を含まないことが好ましい。
【0089】
上記VdF重合体は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。より好ましくは400000〜2200000であり、更に好ましくは600000〜2000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0090】
上記VdF重合体は、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000であることが好ましい。より好ましくは140000〜1100000である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0091】
上記VdF重合体は、VdFに基づく重合単位のみからなる重合体であってもよいし、VdFに基づく重合単位と、VdFと共重合し得る単量体に基づく重合単位とを含む重合体であってもよい。
上記VdF重合体は、全重合単位に対して、VdFに基づく重合単位を50モル%以上含むことが好ましく、60モル%以上含むことがより好ましい。また、VdFに基づく重合単位は100モル%以下であってよい。
【0092】
上記VdF重合体において、上記VdFと共重合し得る単量体としては特に限定されないが、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、(メタ)アクリルモノマー(好ましくは、親水性(メタ)アクリルモノマー)、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、プロピレン、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン等が挙げられる。
また、VdF重合体として例示した、後述するVdF/TFE共重合体等に含まれてよい単量体も使用可能である。
【0093】
上記VdF重合体は、全重合単位に対して、VdFと共重合し得る単量体に基づく重合単位を50モル%以下含むことが好ましく、40モル%以下含むことがより好ましい。また、VdFと共重合し得る単量体に基づく重合単位は0モル%以上であってよい。
【0094】
上記VdF重合体としては、例えば、VdF/テトラフルオロエチレン〔TFE〕共重合体、VdF/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体、VdF/クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、及び、VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。
【0095】
上記VdF/TFE共重合体は、VdFに基づく重合単位(VdF単位)及びTFEに基づく重合単位(TFE単位)からなる共重合体である。
【0096】
上記VdF/TFE共重合体は、VdF単位を、全重合単位に対して50〜95モル%含むことが好ましい。VdF単位が50モル%未満であると電極合剤の粘度の経時変化が大きくなるおそれがあり、95モル%より多いと合剤から得られる電極の柔軟性が低下するおそれがある。
上記VdF/TFE共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して55モル%以上含むことが好ましく、60モル%以上含むことがより好ましい。また、上記VdF/TFE共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して92モル%以下含むことがより好ましく、89モル%以下含むことが更に好ましい。
上記VdF/TFE共重合体の組成は、NMR分析装置を用いて測定することができる。
【0097】
上記VdF/TFE共重合体は、VdF単位及びTFE単位の他に、VdF及びTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。共重合体の優れた耐電解液膨潤性を損なわない程度にそれらと共重合しうる単量体を共重合させて接着性を更に向上させることができる。
上記VdF及びTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、上記VdF/TFE共重合体の全重合単位に対して3.0モル%未満が好ましい。3.0モル%以上であると、一般的にVdFとTFEの共重合体の結晶性が低下し、その結果耐電解液膨潤性が低下する傾向がある。
【0098】
上記VdF及びTFEと共重合し得る単量体としては、特開平6−172452号公報に記載されているような不飽和二塩基酸モノエステル、例えばマレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステルやビニレンカーボネート等、また特開平7−201316号公報に記載されているような、−SOM、−OSOM、−COOM、−OPOM(Mはアルカリ金属を表わす)やアミン系極性基である−NHR、−NR(R、R、Rはアルキル基を表わす)等の親水性極性基を有する化合物、例えばCH=CH−CH−A、CH=C(CH)−CH−A、CH=CH−CH−O−CO−CH(CHCOOR)−A、CH=CH−CH−O−CH−CH(OH)−CH−A、CH=C(CH)−CO−O−CH−CH−CH−A、CH=CH−CO−O−CH−CH−A、CH=CHCO−NH−C(CH−CH−A(Aは親水性極性基、またRはアルキル基を表わす)やその他、マレイン酸や無水マレイン酸等が挙げられる。更に、CH=CH−CH−O−(CH−OH(3≦n≦8)、
【0099】
【化10】
【0100】
CH=CH−CH−O−(CH−CH−O)−H(1≦n≦14)、CH=CH−CH−O−(CH−CH(CH)−O)−H(1≦n≦14)等の水酸化アリルエーテルモノマーや、カルボキシル化及び/又は−(CF−CF(3≦n≦8)で置換されるアリルエーテル及びエステルモノマー、例えばCH=CH−CH−O−CO−C−COOH、CH=CH−CH−O−CO−C10−COOH、CH=CH−CH−O−C−(CFCF、CH=CH−CH−CO−O−C−(CFCF、CH=C(CH)−CO−O−CH−CF等も同様に共重合可能な単量体として使用できる。
ところで、以上のような極性基等を含む化合物以外でも上記含フッ素重合体(A)の結晶性を少し低下させ材料に柔軟性を与えることによりアルミや銅の金属箔からなる集電体との接着性が向上しうることがこれまでの研究より類推できるようになった。これより、例えばエチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素系モノマー(CH=CHR、Rは水素原子、アルキル基又はCl等のハロゲン)や、フッ素系モノマーである3フッ化塩化エチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、CF=CF−O−C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF−C2n+1(nは1以上の整数)、CH=CF−(CFCFH(nは1以上の整数)、更にCF=CF−O−(CFCF(CF)O)−C2n+1(m、nは1以上の整数)も使用可能である。
そのほか式:
【0101】
【化11】
【0102】
(式中、Zは−CHOH、−COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基又はエポキシ基、X及びX’は同じか又は異なりいずれも水素原子又はフッ素原子、Rは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体も使用可能である。これらの単量体を1種又は2種以上共重合することにより、更に集電体との接着性が向上し、充放電を繰り返し行なっても集電体より電極活物質が剥がれ落ちることがなく、良好な充放電サイクル特性が得られる。
これら単量体の中でも、柔軟性と耐薬品性の観点から、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが特に好ましい。
【0103】
このように上記VdF/TFE共重合体は、VdF単位及びTFE単位の他に、他の重合単位を含むものであってもよいが、VdF単位及びTFE単位のみからなることがより好ましい。
【0104】
上記VdF/TFE共重合体は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。より好ましくは400000〜2200000であり、更に好ましくは600000〜2000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0105】
上記VdF/TFE共重合体は、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000であることが好ましい。より好ましくは140000〜1100000である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0106】
上記VdF/TFE共重合体を製造する方法としては、例えば、重合単位を形成するVdF及びTFE等の単量体や、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等を行う方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましい。
上記重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0107】
上記VdF/HFP共重合体は、VdFに基づく重合単位(VdF単位)及びHFPに基づく重合単位(HFP単位)からなる共重合体である。
【0108】
上記VdF/HFP共重合体は、VdF単位を、全重合単位に対して80〜98モル%含むことが好ましい。VdF単位が80モル%未満であると得られた電極の電解液に対する膨潤性が大きく、電池特性が大幅に低下し、98モル%より多いと合剤から得られる電極の柔軟性が劣る傾向がある。
上記VdF/HFP共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して83モル%以上含むことがより好ましく、85モル%以上含むことが更に好ましい。また、上記VdF/HFP共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して97モル%以下含むことがより好ましく、96モル%以下含むことが更に好ましい。
上記VdF/HFP共重合体の組成は、NMR分析装置を用いて測定することができる。
【0109】
上記VdF/HFP共重合体は、VdF単位及びHFP単位の他に、VdF及びHFPと共重合し得る単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。本発明の効果を達成するためには、VdFとHFPとの共重合体で充分であるが、更に共重合体の優れた耐電解液膨潤性を損なわない程度にそれらと共重合しうる単量体を共重合させて接着性を更に向上させることもできる。
上記VdF及びHFPと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、上記VdF/HFP共重合体の全重合単位に対して3.0モル%未満が好ましい。3.0モル%以上であると、一般的にVdFとHFPの共重合体の結晶性が低下し、その結果耐電解液膨潤性が低下するおそれがある。
【0110】
上記VdF及びHFPと共重合し得る単量体としては、上記VdF/TFE共重合体について例示したVdF及びTFEと共重合し得る単量体と同様の単量体及びTFEを挙げることができる。
【0111】
上記VdF/HFP共重合体は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。より好ましくは400000〜2200000であり、更に好ましくは600000〜2000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0112】
上記VdF/HFP共重合体は、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000であることが好ましい。より好ましくは140000〜1100000である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0113】
上記VdF/HFP共重合体を製造する方法としては、例えば、重合単位を形成するVdF及びHFP等の単量体や、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等を行う方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましい。
上記重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0114】
上記VdF/CTFE共重合体は、VdFに基づく重合単位(VdF単位)及びCTFEに基づく重合単位(CTFE単位)からなる共重合体である。
【0115】
上記VdF/CTFE共重合体は、VdF単位を、全重合単位に対して80〜98モル%含むことが好ましい。VdF単位が80モル%未満でも98モル%より多くても電極合剤の粘度の経時変化が大きくなるおそれがある。また、上記VdF/CTFE共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して97.5モル%以下含むことがより好ましく、97モル%以下含むことが更に好ましい。
上記VdF/CTFE共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して85モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。
上記VdF/CTFE共重合体の組成は、NMR分析装置を用いて測定することができる。
【0116】
上記VdF/CTFE共重合体は、VdF単位及びCTFE単位の他に、VdF及びCTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。本発明の効果を達成するためには、VdFとCTFEとの共重合体で充分であるが、更に共重合体の優れた耐電解液膨潤性を損なわない程度にそれらと共重合しうる単量体を共重合させて接着性を更に向上させることができる。
上記VdF及びCTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、上記VdF/CTFE共重合体の全重合単位に対して好ましくは10.0モル%以下であり、より好ましくは5.0モル%以下である。10.0モル%を超えると、一般的にVdFとCTFEの共重合体の結晶性が著しく低下し、その結果耐電解液膨潤性が低下する傾向がある。
【0117】
上記VdF及びCTFEと共重合し得る単量体としては、上記VdF/TFE共重合体について例示したVdF及びTFEと共重合し得る単量体と同様の単量体、TFE及びHFPを挙げることができる。
【0118】
上記VdF/CTFE共重合体は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。より好ましくは400000〜2200000であり、更に好ましくは600000〜2000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0119】
上記VdF/CTFE共重合体は、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000であることが好ましい。より好ましくは140000〜1100000である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0120】
上記VdF/CTFE共重合体を製造する方法としては、例えば、重合単位を形成するVdF及びCTFE等の単量体や、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等を行う方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましい。
上記重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0121】
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、VdFに基づく重合単位(VdF単位)及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく重合単位(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン単位)からなる共重合体である。
【0122】
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、VdF単位を、全重合単位に対して80〜98モル%含むことが好ましい。VdF単位が80モル%未満でも98モル%より多くても電極合剤の粘度の経時変化が大きくなるおそれがある。また、上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して97.5モル%以下含むことがより好ましく、97モル%以下含むことが更に好ましい。
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、VdF単位を全重合単位に対して85モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体の組成は、NMR分析装置を用いて測定することができる。
【0123】
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、VdF単位及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペン単位の他に、VdF及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと共重合し得る単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。本発明の効果を達成するためには、VdFと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとの共重合体で充分であるが、更に共重合体の優れた耐電解液膨潤性を損なわない程度にそれらと共重合しうる単量体を共重合させて接着性を更に向上させることもできる。
上記VdF及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体の全重合単位に対して3.0モル%未満が好ましい。3.0モル%以上であると、一般的にVdFと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの共重合体の結晶性が低下し、その結果耐電解液膨潤性が低下するおそれがある。
【0124】
上記VdF及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと共重合し得る単量体としては、上記VdF/TFE共重合体について例示したVdF及びTFEと共重合し得る単量体と同様の単量体、TFE及びHFPを挙げることができる。
【0125】
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が200000〜2400000であることが好ましい。より好ましくは400000〜2200000であり、更に好ましくは600000〜2000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0126】
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体は、数平均分子量(ポリスチレン換算)が70000〜1200000であることが好ましい。より好ましくは140000〜1100000である。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い50℃で測定することができる。
【0127】
上記VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体を製造する方法としては、例えば、重合単位を形成するVdF及びCTFE等の単量体や、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等を行う方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましい。
上記重合においては、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0128】
本発明の結着剤は、含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)を含むことによって、集電体との密着性が良好で、柔軟性にも優れ、更に、耐ゲル化性及びスラリー分散性にも優れることから、二次電池の電極に用いる結着剤として好適である。また、高密度化も可能であり、正極合剤塗膜の密度を3.4g/cc以上とすることが期待できる。また、3.6g/cc以上とすることも可能である。本発明の結着剤はまた、二次電池のセパレータコーティングの結着剤に用いることもできる。本明細書において、二次電池用結着剤には、二次電池の正極、負極、セパレータに用いる結着剤が含まれる。上記二次電池はリチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0129】
本発明の結着剤は、活物質、水又は非水溶剤とともに電極合剤を構成することもできる。本発明の結着剤を適用する対象となる二次電池は、正極合剤が正極集電体に保持されてなる正極、負極合剤が負極集電体に保持されてなる負極、及び、電解液を備えている。
以下に、本発明の結着剤を用いた、電池の電極製造用合剤(電極合剤)の例について説明する。
【0130】
リチウムイオン二次電池のような、電解液として有機ないし非水系電解液を使用した非水系電解液電池においては、非水系電解液の電導度の小さいことに由来する重負荷性能の低さを改良するため、活物質層を薄くし電極面積を大きくすることが行われている。
【0131】
このための方法として、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属箔あるいは金属網等からなる集電体に、微粉末状の活物質、炭素等の導電剤及び結着剤からなる電極合剤形成用組成物を、塗布接着し、電極とすることが試みられている。結着剤の使用量は極力少なくする必要があり、少量でも活物質等をよく保持し、集電体への接着性に優れたものが要求される。また結着剤は通常電気絶縁性であるため、その使用量の増大は電池の内部抵抗を大きくする。この点からも結着剤は、できるだけ少ない使用量でその機能を果たすことが要求される。
【0132】
通常、結着剤量は、極めて少量で、全電極合剤に対して30質量%以下とすることが好ましい。このような少ない結着剤量では、電極合剤の微粒子成分間又は微粒子成分と集電体間の空隙を、結着剤が完全に充填することはできない。顔料等の充填剤を含有する塗料、ライニング材等の場合は、結着剤が充填剤間等の空隙を完全に充填するに充分な多量の結着剤を使用するので充填剤の保持に関してはほとんど問題が生じない。しかし電極用の結着剤の場合は、上述のように使用量が極めて少量であり、少量でも活物質をよく保持し、集電体への接着性に優れたものが要求される。
【0133】
本発明は、上述した本発明の二次電池用結着剤と電池用粉末電極材料と水又は非水溶剤とを少なくとも混合してなる二次電池用電極合剤でもある。上記電極合剤は、上述した本発明の二次電池用結着剤を水又は非水溶剤に分散又は溶解してなる溶液又は分散液と、電池用粉末電極材料とを混合してなる二次電池用電極合剤であることが好ましい。より好ましくはリチウムイオン二次電池用電極合剤である。本発明の電極合剤は、上述した結着剤を含むので、集電体との密着性、電極の柔軟性のいずれにも優れる電極材料層を形成することができる。また、電極ムラなどが発生しにくいため、電池のレート特性を向上させることが期待できる。上記電極合剤は、正極の作成に用いる正極合剤であってもよく、負極の作成に用いる負極合剤であってもよいが、正極合剤であることが好ましい。
【0134】
上記粉末電極材料は、電極活物質を含むことが好ましい。電極活物質は、正極活物質及び負極活物質に分けられる。リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、リチウム複合酸化物が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。上記正極活物質としては、リチウム含有遷移金属リン酸化合物も好ましい。上記正極活物質が、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物等の、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質であることも好ましい。
【0135】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。上記置換したものとしては、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・マンガン・アルミニウム複合酸化物、リチウム・チタン複合酸化物等が挙げられ、より具体的には、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Mn0.3Co0.2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiMn1.8Al0.2、LiMn1.5Ni0.5、LiTi12、LiNi0.82Co0.15Al0.03等が挙げられる。
【0136】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、リチウム含有遷移金属リン酸化合物の具体例としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等のリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0137】
特に、高電圧、高エネルギー密度、あるいは、充放電サイクル特性等の観点から、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiNi0.82Co0.15Al0.03、LiNi0.33Mn0.33Co0.33、LiNi0.5Mn0.3Co0.2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、LiFePOが好ましい。
【0138】
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0139】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により正極活物質表面に付着させることができる。
【0140】
表面付着物質の量としては、正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
【0141】
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電剤との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
【0142】
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g/cm以上、好ましくは1.5g/cm以上、更に好ましくは1.6g/cm以上、最も好ましくは1.7g/cm以上である。正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、通常2.5g/cm以下、好ましくは2.4g/cm以下である。
【0143】
正極活物質のタップ密度は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
【0144】
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、最も好ましくは3μm以上で、通常20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高嵩密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成すなわち活物質と導電剤や結着剤等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることもできる。
【0145】
なお、本発明におけるメジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA−920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0146】
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、正極活物質の平均一次粒子径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.08μm以上、最も好ましくは0.1μm以上で、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.6μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。なお、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0147】
正極活物質のBET比表面積は、0.2m/g以上、好ましくは0.3m/g以上、更に好ましくは0.4m/g以上で、4.0m/g以下、好ましくは2.5m/g以下、更に好ましくは1.5m/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
【0148】
BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研社製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
【0149】
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、また、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0150】
なお、本発明において、正極活物質粉体は1種を単独で用いても良く、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0151】
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
【0152】
金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であれば特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0153】
炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質;炭素質物質{例えば天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、或いはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物(例えば軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、或いは乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直留系重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等分解系石油重質油、更にアセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジン等のN環化合物、チオフェン、ビチオフェン等のS環化合物、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクリロニトリル、ポリピロール等の有機高分子、含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂)及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物}を400から3200℃の範囲で一回以上熱処理された炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。
【0154】
電極活物質(正極活物質又は負極活物質)の含有量は、得られる電極の容量を増やすために、電極合剤中80質量%以上が好ましい。
【0155】
上記粉末電極材料は、更に導電剤を含んでもよい。導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック類やグラファイト等の炭素材料、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられる。
【0156】
電極合剤中の粉体成分(活物質及び導電剤)と上記含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)の合計との割合は、通常、重量比で80:20〜99.5:0.5程度であり、粉体成分の保持、集電体への接着性、電極の導電性を考慮して決められる。
【0157】
上述のような配合割合では、集電体上に形成される電極合剤層では、上記含フッ素重合体(A)は粉体成分間の空隙を完全に充填することは出来ないが、溶媒として上記含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)を良く溶解又は分散する液体を用いると、乾燥後の電極合剤層において、上記含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)が均一に分散、編み目状になり、粉体成分をよく保持するので好ましい。
【0158】
上記液体としては、水又は非水溶剤を挙げることができる。非水溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;更に、それらの混合溶剤等の低沸点の汎用有機溶剤を挙げることができる。
なかでも、上記液体としては、電極合剤の安定性、塗工性に優れている点から、N−メチル−2−ピロリドン、及び/又は、N,N−ジメチルアセトアミドであることが好ましい。
【0159】
上記電極合剤中の上記液体の量は、集電体への塗布性、乾燥後の薄膜形成性等を考慮して決定される。通常、上記結着剤と上記液体との割合は、重量比で0.5:99.5〜20:80が好ましい。
【0160】
また、上記含フッ素重合体(A)及びPVdF(B)は、上記液体に対する速やかな溶解又は分散を可能とするために、平均粒径1000μm以下、特に30〜350μmの、小粒径で使用に供することが望ましい。
【0161】
上記電極合剤は、集電体との接着性を更に向上させるため、例えば、ポリメタクリレート、ポリメチルメタアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミド系樹脂等を更に含んでいてもよい。また、架橋剤を添加し、γ線や電子線等の放射線を照射して架橋構造を形成させてもよい。架橋処理法としては放射線照射に留まらず、他の架橋方法、例えば熱架橋が可能なアミン基含有化合物、シアヌレート基含有化合物等を添加して熱架橋させてもよい。
【0162】
上記電極合剤は、電極スラリーの分散安定性を向上させるために、界面活性作用等を有する樹脂系やカチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の分散剤を添加してもよい。
【0163】
上記電極合剤における本発明の結着剤の配合割合は、好ましくは電極合剤の0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0164】
上記電極合剤は、粘度維持率が、好ましくは70%以上であり、より好ましく80%以上である。また好ましくは300%未満である。
上記粘度維持率は、25℃において、B型粘度計を用い、合剤調製時の粘度(η0)、合剤調製からの24時間経過後の粘度(ηa)をそれぞれ測定し、下記式により求めた値である。
スラリー安定性(Xa)=ηa/η0×100[%]
ここで、η0及びηaは、M3ロータ−を用い、回転速度6rpmの条件で、測定開始から10分間経過後の粘度の値である。
【0165】
上記結着剤を含む電極合剤を調製する方法としては、該結着剤を上記液体に溶解又は分散させた溶液又は分散液に上記粉末電極材料を分散、混合させるといった方法が一般的である。そして、得られた電極合剤を、金属箔又は金属網等の集電体に均一に塗布、乾燥、必要に応じてプレスして集電体上へ薄い電極合剤層を形成し薄膜状電極とする。
【0166】
そのほか、例えば結着剤粉末と電極材料の粉末同士を先に混合した後、上記液体を添加し合剤を作製してもよい。また、結着剤と電極材料の粉末同士を加熱溶融し、押出機で押し出して薄膜の合剤を作製しておき、導電性接着剤や汎用性有機溶剤を塗布した集電体上に貼り合わせて電極シートを作製することもできる。更に、予め予備成形した電極材料に結着剤の溶液又は分散液を塗布してもよい。このように、結着剤としての適用方法は特に限定されない。
【0167】
本発明は、上述した本発明の二次電池用結着剤を含む二次電池用電極でもある。本発明の電極は、上述した結着剤を含むので、高密度化のため電極材料を厚塗りし捲回、プレスしても電極が割れることがなく、粉末電極材料の脱落や集電体からの剥離もない。
【0168】
上記電極は、集電体と、当該集電体上に形成された、上記粉末電極材料と上記結着剤とからなる電極材料層とを有することが好ましい。上記電極は、正極であっても負極であってもよいが、正極であることが好ましい。
【0169】
集電体(正極集電体及び負極集電体)としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属箔あるいは金属網等が挙げられる。中でも、正極集電体としては、アルミ箔等が好ましく、負極集電体としては銅箔等が好ましい。
【0170】
本発明の電極は、集電体と電極材料層との剥離強度が0.20N/cm以上であることが好ましく、0.25N/cm以上であることがより好ましい。剥離強度は高ければ高いほどよいので上限は特にない。
上記剥離強度は、縦1.2cm、横7.0cmに切り取った電極の電極材料層側を両面テープで可動式治具に固定し、集電体を100mm/分の速度で90度に引っ張った時の応力(N/cm)をオートグラフにて測定した値である。
【0171】
本発明の電極は、電極限界密度が3.4g/cc以上であることが好ましい。より好ましくは、3.6g/cc以上である。
上記電極限界密度は、電極をロールプレス機により、10t加圧で密度変化がなくなるまで圧延を繰り返した後の電極材料層の密度である。密度は、電極材料層の面積/膜厚/重量を測定して算出した値である。
【0172】
本発明は、上述した本発明の二次電池用電極を備える二次電池でもある。本発明の二次電池においては、正極及び負極の少なくとも一方が、上述した本発明の二次電池用電極であればよく、正極が上述した本発明の二次電池用電極であることが好ましい。二次電池はリチウムイオン二次電池であることが好ましい。
【0173】
本発明の二次電池は、更に非水系電解液を備えることが好ましい。上記非水系電解液は特に限定されるものではないが、有機溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の公知の炭化水素系溶媒;フルオロエチレンカーボネート、フルオロエーテル、フッ素化カーボネート等のフッ素系溶媒の1種又は2種以上が使用できる。電解質も従来公知のものがいずれも使用でき、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、炭酸セシウム等を用いることができる。更に本発明の正極合剤及び/又は負極合剤には、集電体との接着性を更に向上させるため、例えばポリメタクリレート、ポリメチルメタアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミド系樹脂等を併用してもよい。
【0174】
また、正極と負極との間にセパレータを介在させてもよい。セパレータとしては、従来公知のものを使用してもよいし、上述した本発明の結着剤をコーティングに使用したセパレータを使用してもよい。
【0175】
二次電池(好ましくはリチウムイオン二次電池)の正極、負極及びセパレータの少なくとも1つに上述した本発明の結着剤を用いることも好ましい。
【0176】
上述した本発明の結着剤からなる二次電池用フィルムも、本発明の好適な態様の1つである。
【0177】
基材と、当該基材上に形成された、上述した本発明の結着剤からなる層とを有する二次電池用積層体も、本発明の好適な態様の1つである。上記基材としては、上記集電体として例示したものや、二次電池のセパレータに用いられる公知の基材(多孔質膜等)等が挙げられる。
【実施例】
【0178】
次に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0179】
重合例1(含フッ素重合体(a)の製造)
攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブに純水0.6kgとメチルセルロース0.6gを投入し、十分に窒素置換を行った後、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン0.57kgを仕込み、系内を37℃に保った。TFE/VdF=5/95モル比の混合ガスを仕込み、槽内圧を1.5MPaにした。3−ブテン酸0.20g、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を0.5g添加して重合を開始した。槽内圧を保つようにTFE/VdF=10/90モル比の混合ガスを供給し、反応終了までに70gの混合ガスを追加した。3−ブテン酸を混合ガスの供給に合わせて連続的に追加し、反応終了までに0.54g追加した。混合ガス70g追加完了後、槽内ガスを放出し、反応を終了させた。
反応生成物を水洗、乾燥して、含フッ素重合体(a)を69g得た。
得られた含フッ素重合体(a)の組成及び物性は以下の通りである。
含フッ素重合体(a):TFE/VDF=14/86(mol%)、3−ブテン酸:0.39(mol%)、重量平均分子量1260000
【0180】
また、投入するTFE及びVdFの割合を変更したこと、3−ブテン酸を4−ペンテン酸に変更したこと以外は、重合例1と基本的に同様の方法で下記含フッ素重合体(b)〜(e)を製造した。
含フッ素重合体(b):TFE/VDF=33/67(mol%)、3−ブテン酸:0.70(mol%)、重量平均分子量1160000
含フッ素重合体(c):TFE/VDF=18/82(mol%)、4−ペンテン酸:0.45(mol%)、重量平均分子量820000
含フッ素重合体(d):TFE/VDF=32/68(mol%)、4−ペンテン酸:0.70(mol%)、重量平均分子量930000
含フッ素重合体(e):TFE/VDF=19/81(mol%)、重量平均分子量980000
【0181】
重合例2(含フッ素重合体(f)の製造)
攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブに純水0.6kgとメチルセルロース0.6gを投入し、十分に窒素置換を行った後、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン0.57kgを仕込み、系内を37℃に保った。テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド=4/96モル比の混合ガスを仕込み、槽内圧を1.5MPaにした。4−ペンテン酸0.14g、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートの50質量%メタノール溶液を0.2g添加して重合を開始した。槽内圧を保つようにテトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン=11/89モル比の混合ガスを供給し、反応終了までに70gの混合ガスを追加した。4−ペンテン酸を混合ガスの供給に合わせて連続的に追加し、反応終了までに0.62g追加した。混合ガス70g追加完了後、槽内ガスを放出し、反応を終了させた。
反応生成物を水洗、乾燥して、含フッ素重合体(f)を68g得た。
得られた含フッ素重合体(f)の組成及び物性は以下の通りである。
含フッ素重合体(f):TFE/VDF=13/87(mol%)、4−ペンテン酸:0.61(mol%)、重量平均分子量810000
【0182】
その他、実施例及び比較例では下記重合体を用いた。
PVdF(A):ホモPVdF、重量平均分子量900000
PVdF(B):ホモPVdF、重量平均分子量1800000
PVdF(C):アクリル変性PVdF、重量平均分子量1100000、変性量:1.0モル%
PVdF(D):マレイン酸変性PVdF、重量平均分子量900000、変性量:0.5モル%
PVdF(E):CTFE変性PVdF、重量平均分子量800000、変性量:2.4モル%
【0183】
実施例1〜12及び比較例1〜4
表1に示すように含フッ素重合体及びPVdFを用いて、各種物性を以下の方法により測定・評価した。結果を表1に示す。
【0184】
(ポリマー組成1)
VdFとTFEの比率については、NMR分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製、VNS400MHz)を用いて、19F−NMR測定でポリマーのDMF−d溶液状態にて測定した。
19F−NMR測定にて、下記のピークの面積(A、B、C、D)を求め、VdFとTFEの割合を計算した。
A:−86ppm〜−98ppmのピークの面積
B:−105ppm〜−118ppmのピークの面積
C:−119ppm〜−122ppmのピークの面積
D:−122ppm〜−126ppmのピークの面積
VdFの割合:XVdF=(4A+2B)/(4A+3B+2C+2D)×100[mol%]
TFEの割合:XTFE=(B+2C+2D)/(4A+3B+2C+2D)×100[mol%]
3−ブテン酸又は4−ペンテン酸の含有量については、カルボキシ基の酸−塩基滴定によって測定した。従った手順を以下に詳述する。
約0.5gの含フッ素重合体を70〜80℃の温度で15gのアセトンに溶解させた。5mlの水を次に、ポリマーが凝固しないよう加えた。約−270mVでの中性転移で、酸性度の完全な中和まで0.1Nの濃度を有する水性NaOHでの滴定を次に実施した。測定結果から、含フッ素重合体1g中に含まれる3−ブテン酸又は4−ペンテン酸の含有物質量α[mol/g]を求めた。α、上記方法で求めた含フッ素重合体のVdF/TFE組成、TFE、VdF、3−ブテン酸又は4−ペンテン酸の分子量に基づき、下記式を満たすように含フッ素重合体の3−ブテン酸又は4−ペンテン酸の割合Y[mol%]を求めた。
α=Y/[{TFEの分子量}×{XTFE×(100−Y)/100}+{VdFの分子量}×{XVdF×(100−Y)/100}+{3−ブテン酸又は4−ペンテン酸の分子量}×Y]
得られたXVdF、XTFE、Yの値から、最終組成比を以下の通り計算した。
VdFの割合:XVdF×(100−Y)/100[mol%]
TFEの割合:XTFE×(100−Y)/100[mol%]
3−ブテン酸又は4−ペンテン酸の割合:Y[mol%]
【0185】
(重量平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。東ソー株式会社製のAS−8010、CO−8020、カラム(GMHHR−Hを3本直列に接続)、及び、株式会社島津製作所製RID−10Aを用い、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を流速1.0ml/分で流して測定したデータ(リファレンス:ポリスチレン)より算出した。
【0186】
また、以下のように正極を作製し、各種物性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0187】
(正極合剤用スラリーの調製)
正極活物質(NMC(622)(LiNi0.6Mn0.2Co0.2))、導電剤アセチレンブラック(AB)、及び、結着剤(含フッ素重合体及びPVdF)を、表1に示す質量比になるように秤量した。含フッ素重合体及びPVdFの合計濃度が8質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させたのち、この結着剤のNMP溶液に所定量の正極活物質と導電剤を加え、撹拌機で十分に混合して、良好な均質性を確実にした。スラリー中の固形分濃度は70%とした。
【0188】
(正極の作製)
調製した上記正極合剤用スラリーを厚さ20μmのアルミ箔からなる電極集電帯に均一に塗布し、NMPを完全に揮発させ、正極を作製した。
【0189】
(正極の電極限界密度の測定)
作製した電極を、ロールプレス機により、10t加圧で密度変化がなくなるまで圧延を繰り返し、そのときの正極合剤塗膜の密度を電極限界密度とした。密度は、面積/膜厚/重量を測定して算出した。
【0190】
(電極柔軟性評価(正極の折り曲げ試験))
ロールプレス機により、正極合剤塗膜の密度が所定密度3.3g/cc)になるまで圧延し、作製した正極を縦3cm、横6cmに切り取った後、180°折り畳んだ後拡げて、正極の傷や割れの有無を目視で確認した。傷や割れが確認されない場合は○、ひび割れが確認された場合は△、正極が破断した場合は×と評価した。
この評価は、表1に示す電極密度について実施した。
【0191】
(電極密着性評価(正極の剥離試験))
縦1.2cm、横7.0cmに切り取った正極の電極側を両面テープで可動式治具に固定し、集電体を100mm/分の速度で90度に引っ張った時の応力(N/cm)をオートグラフにて測定した。
【0192】
(粘度維持率評価(スラリー分散性))
調製した上記正極合剤用スラリーの粘度を、B型粘度計(東機産業株式会社製、TV−10M)を用いて25℃で測定した。合剤用スラリー調製時の粘度(η0)、合剤用スラリー調製からの24時間経過後の粘度(ηa)をそれぞれ測定し、粘度維持率(Xa)を下記の式により求めた。ここで合剤粘度とは、M3ロータ−を用いて回転速度6rpmの条件の下で、開始から10分間経過後の粘度の値とした。
Xa=ηa/η0×100[%]
【0193】
(ニッケル含有量の高い活物質を含む正極合剤用スラリーの調製)
正極活物質NCA(LiNi0.82Co0.15Al0.03)、導電剤アセチレンブラック(AB)、及び、結着剤(含フッ素重合体及びPVdF)を、質量比が活物質/AB/ポリマー=93/4/3になるように秤量した。含フッ素重合体及びPVdFの合計濃度が8質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させたのち、この結着剤のNMP溶液に所定量の正極活物質と導電剤を加え、撹拌機で十分に混合して、良好な均質性を確実にした。組成物の固形分濃度は70%とした。
【0194】
(粘度維持率評価(ゲル化試験))
上記で作製したNCAを用いた正極合剤用スラリーを、B型粘度計を用いて(東機産業株式会社製、TV−10M)を用いて25℃で測定した。合剤調製時の粘度(η0)、合剤調製からの24時間経過後の粘度(ηa)をそれぞれ測定し、粘度維持率(Xa)を下記の式により求めた。ここで合剤粘度とは、M3ロータ−を用いて回転速度6rpmの条件の基で、開始から10分間経過後の粘度の値とした。
Xa=ηa/η0×100[%]
上記算出により、300(%)以上の場合は×(ゲル化)、300(%)未満の場合は○と評価した。
【0195】
【表1】