特許第6863477号(P6863477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863477
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】電動機及び電動送風機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20210412BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20210412BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20210412BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20210412BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20210412BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20210412BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   H02K5/173 A
   H02K7/08 Z
   H02K7/14 A
   F16C19/16
   F16C19/54
   F16C25/08 A
   F16C35/06 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-557985(P2019-557985)
(86)(22)【出願日】2018年5月10日
(86)【国際出願番号】JP2018018177
(87)【国際公開番号】WO2019111430
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-232819(P2017-232819)
(32)【優先日】2017年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 光将
(72)【発明者】
【氏名】寺本 昌也
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−78815(JP,A)
【文献】 特開2001−99147(JP,A)
【文献】 特表2010−503371(JP,A)
【文献】 実開昭63−105452(JP,U)
【文献】 特開2019−122146(JP,A)
【文献】 特開2020−48298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16C 19/16
F16C 19/54
F16C 25/08
H02K 7/08
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に配置され、ロータの回転軸を回転可能に支持する第1の軸受及び第2の軸受と、
中央に形成された貫通孔内に前記回転軸が回転可能に通された状態で前記第1の軸受と前記第2の軸受との間に配置され、前記ハウジング内で前記ハウジングに固定された円筒状部材と、を備え、
前記第1の軸受は、
第1の外輪と、
前記回転軸に固定された第1の内輪と、を備え、
前記第2の軸受は、
第2の外輪と、
前記回転軸に固定された第2の内輪と、を備え、
前記円筒状部材の外側面には、凹部が形成され、
前記円筒状部材は、
前記ハウジングの外側から前記凹部の位置でかしめられて、前記ハウジング内に固定され、
前記第1の外輪を前記回転軸と平行な軸方向に沿って前記第2の軸受とは反対側に向けて押圧するとともに、前記第2の外輪を前記軸方向に沿って前記第1の軸受とは反対側に向けて押圧する電動機。
【請求項2】
前記凹部は、前記円筒状部材の前記軸方向の中心に配置される請求項に記載の電動機。
【請求項3】
前記円筒状部材は、前記第1の軸受側及び前記第2の軸受側の一方又は両方の面に形成され、前記第1の外輪又は前記第2の外輪に当接する凸部を有する請求項1又は請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記第1の外輪と前記円筒状部材との間及び前記第2の外輪と前記円筒状部材との間の一方又は両方に設けられた弾性部材をさらに備えた請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項5】
前記弾性部材は、ゴムである請求項に記載の電動機。
【請求項6】
前記弾性部材は、押しバネである請求項に記載の電動機。
【請求項7】
前記第2の軸受は、前記第1の軸受よりも前記ロータのロータコア側に配置され、
前記第1の外輪の前記円筒状部材とは反対側の面は、前記ハウジングの底部に押し付けられている請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項8】
前記第1の外輪の前記円筒状部材とは反対側の面と前記ハウジングの前記底部との間に設けられた弾性部材をさらに備えた請求項に記載の電動機。
【請求項9】
前記円筒状部材の内径は、前記回転軸の外径よりも大きく、
前記円筒状部材の外径は、前記第1の軸受及び前記第2の軸受の外径よりも小さく、
前記円筒状部材の内径と前記回転軸の外径との差は、前記円筒状部材の外径と前記第1の軸受及び前記第2の軸受の外径との差よりも大きい請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項10】
前記円筒状部材は、前記ハウジングと同等な熱膨張率である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電動機と、
前記回転軸に固定されたファンと、を備えた電動送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機及び電動送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャフトを有し、このシャフトに、羽根車と、ロータコアと、軸受カートリッジが取り付けられた高速圧縮機用のロータ組立体において、軸受カートリッジは羽根車とロータコアとの間に取り付けられ、さらに、軸受カートリッジは、1対の軸受と、軸受の各々に予圧を付与するばねと、軸受を包囲し軸受に固着されたスリーブとを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2010−196707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような技術においては、軸受を包囲するスリーブと軸受とが固着されている。すなわち、シャフトの軸方向に垂直な径方向において、スリーブに対して軸受を固着することで、軸受を固定している。軸受に支持されたシャフトが高速で回転する運転時には、軸受及びスリーブが高温になる。このため、スリーブにより軸受を確実に固定するために、スリーブには、軸受と同等な熱膨張率である素材を用いる必要がある等の制約が生じる。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、ロータの回転軸を支持する軸受の固定に用いる部材について、軸受と同等な熱膨張率である等の制約がないものを用いることが可能である電動機及び電動送風機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電動機は、ハウジング内に配置され、ロータの回転軸を回転可能に支持する第1の軸受及び第2の軸受と、中央に形成された貫通孔内に前記回転軸が回転可能に通された状態で前記第1の軸受と前記第2の軸受との間に配置され、前記ハウジング内で前記ハウジングに固定された円筒状部材と、を備え、前記第1の軸受は、第1の外輪と、前記回転軸に固定された第1の内輪と、を備え、前記第2の軸受は、第2の外輪と、前記回転軸に固定された第2の内輪と、を備え、前記円筒状部材の外側面には、凹部が形成され、前記円筒状部材は、前記ハウジングの外側から前記凹部の位置でかしめられて、前記ハウジング内に固定され、前記第1の外輪を前記回転軸と平行な軸方向に沿って前記第2の軸受とは反対側に向けて押圧するとともに、前記第2の外輪を前記軸方向に沿って前記第1の軸受とは反対側に向けて押圧する。
【0007】
また、この発明に係る電動送風機は、上述のように構成された電動機と、前記回転軸に固定されたファンと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る電動機及び電動送風機によれば、ロータの回転軸を支持する軸受の固定に用いる部材について、軸受と同等な熱膨張率である等の制約がないものを用いることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る電動機を備えた電動送風機の断面図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る電動送風機の斜視図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る電動機の要部を拡大して示す断面図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る電動機の円筒状部材を示す斜視図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る電動機の円筒状部材の別例を示す斜視図である。
図6】この発明の実施の形態2に係る電動機の要部を拡大して示す断面図である。
図7】この発明の実施の形態2に係る電動機の円筒状部材を示す斜視図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る電動機の要部を拡大して示す断面図である。
図9】この発明の実施の形態4に係る電動機の要部を拡大して示す断面図である。
図10】この発明の実施の形態5に係る電動機の要部を拡大して示す断面図である。
図11】この発明の実施の形態5に係る電動機の円筒状部材を示す斜視図である。
図12】この発明の実施の形態5に係る電動機が備えるロータ組立体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1から図5は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は電動機を備えた電動送風機の断面図、図2は電動送風機の斜視図、図3は電動機の要部を拡大して示す断面図、図4は電動機の円筒状部材を示す斜視図、図5は電動機の円筒状部材の別例を示す斜視図である。
【0012】
この発明の実施の形態1に係る電動送風機100は、図1に示すように、ブロワー部200とモータ部300とを備えている。ブロワー部200は、ファン210及びファンカバー220等を備えている。ブロワー部200の構成については後述する。
【0013】
モータ部300は、電動機である。つまり、この発明の実施の形態1に係る電動送風機100は電動機を備えている。ここでは、電動機であるモータ部300がブラシレスDCモータである例について説明する。
【0014】
モータ部300は、図1及び図2に示すように、フレーム310とブラケット320とを備えている。フレーム310は、モータ部300の外殻を形成する部材である。フレーム310の主要部は、中空の円筒形状を呈する。フレーム310の一端側は開放されている。図1に示すように、フレーム310の他端側には、ハウジング311が設けられている。ハウジング311は、フレーム310の主要部より小さい円筒形状の凹部である。
【0015】
フレーム310の前述した他端側、すなわち、ハウジング311が設けられた側には、ブラケット320が取り付けられている。ブラケット320は、フレーム310にネジ等により固着されている。
【0016】
モータ部300は、ロータ330及びステータ340を備えている。ロータ330は、フレーム310の内部空間の中央部に配置される。ロータ330は、ロータコア331を備えている。ロータコア331は、永久磁石である。ロータコア331の中心には、シャフト332が固着されている。シャフト332は、ロータ330の回転軸である。
【0017】
ステータ340は、フレーム310の内部空間内において、ロータ330を取り囲むように配置される。ステータ340は、鉄芯であるステータコアにコイルを巻くことで構成される。ステータ340は、ロータ330に作用する磁力を発生させるためのものである。
【0018】
ハウジング311の内部には、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600が配置されている。第1の軸受400及び第2の軸受500は、ロータ330の回転軸であるシャフト332を回転可能に支持するためのものである。シャフト332のロータコア331とは反対側の部分は、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600に通されている。ロータ330のシャフト332は、ハウジング311、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600によって、フレーム310に対して回転可能に支持されている。このシャフト332の支持構造の詳細については後述する。なお、シャフト332のロータコア331とは反対側の部分は、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600を貫通している。
【0019】
次に、電動送風機100が備えるブロワー部200の構成について説明する。図1に示すように、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600を貫通したシャフト332のロータコア331とは反対側の部分には、ブロワー部200のファン210が取り付けられている。図1及び図2に示すように、ブラケット320には、ファン210を囲うようにしてファンカバー220が取り付けられている。図1に示すように、ファンカバー220におけるファン210の中心に対向する部分には、吸込口221が形成されている。ファンカバー220内には、ファン210の外周に沿うようにして、案内羽根230が取り付けられている。案内羽根230は、ファン210の回転によって吸込口221から吸引された空気をモータ部300へ導入するためのものである。
【0020】
次に、電動送風機100の動作時における空気の流れについて説明する。電動送風機100の動作時には、ロータ330及びシャフト332が回転し、シャフト332に固定されたファン210が回転する。ファン210が回転すると、吸込口221からファンカバー220内へと空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、ファン210の中心部から外周へと吹き出す。ファン210の外周から吹き出した空気は、案内羽根230に導かれて、ブラケット320からフレーム310の内部に流入する。フレーム310の側面には、図示しない排気口が形成されている。フレーム310の内部に流入した風が、この排気口からフレーム310の外部に抜けて流れる。
【0021】
次に、図3及び図4を参照しながら、ハウジング311、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600によるシャフト332の支持構造について説明する。ハウジング311は、前述したように円筒形状の凹部である。ハウジング311の凹部のロータコア331側は、フレーム310の内部空間と通じるように開放されている。ハウジング311の凹部のファン210側は、ハウジング底部312である。
【0022】
第1の軸受400は、第1の外輪410、第1の内輪420及び第1の転動体430を備えている。第1の軸受400は、円環状を呈する。第1の外輪410は、第1の内輪420よりも径が大きい円環状の部材である。第1の内輪420は、第1の外輪410よりも径が小さい円環状の部材である。
【0023】
第1の外輪410と第1の内輪420との間には、円環状の空間が形成される。この第1の外輪410と第1の内輪420との間の空間内には、複数の第1の転動体430が配置される。各第1の転動体430は、例えば球状を呈する。各第1の転動体430は、第1の外輪410の内周面に設けられた凹部と第1の内輪420の外周面に設けられた凹部とにそれぞれ一部が入り込んで接している。第1の転動体430が回転することで、第1の外輪410と第1の内輪420の相対的な位置関係を保ったまま、第1の外輪410に対して第1の内輪420が円滑に回転することができる。
【0024】
第1の内輪420の内側には、シャフト332が通されている。第1の内輪420は、シャフト332の予め定められた位置に例えば圧入等により固定される。第1の外輪410は、ハウジング311に固定されない。したがって、そのままでは、第1の外輪410はハウジング311に対して移動可能である。
【0025】
第2の軸受500の構成は、第1の軸受400の構成と同様である。すなわち、第2の軸受500は、第2の外輪510、第2の内輪520及び第2の転動体530を備えている。第2の軸受500は、円環状を呈する。第2の外輪510は、第2の内輪520よりも径が大きい円環状の部材である。第2の内輪520は、第2の外輪510よりも径が小さい円環状の部材である。
【0026】
第2の外輪510と第2の内輪520との間には、円環状の空間が形成される。この第2の外輪510と第2の内輪520との間の空間内には、複数の第2の転動体530が配置される。各第2の転動体530は、例えば球状を呈する。各第2の転動体530は、第2の外輪510の内周面と第2の内輪520の外周面とにそれぞれ接している。第2の転動体530が回転することで、第2の外輪510と第2の内輪520の相対的な位置関係を保ったまま、第2の外輪510に対して第2の内輪520が円滑に回転することができる。
【0027】
第2の内輪520の内側には、シャフト332が通されている。第2の内輪520は、シャフト332の予め定めされた位置に例えば圧入等により固定される。第2の外輪510は、ハウジング311に固定されない。したがって、そのままでは、第2の外輪510はハウジング311に対して移動可能である。
【0028】
シャフト332に対する第1の軸受400の固定位置及び第2の軸受500の固定位置は、どちらも予め定められている。したがって、第1の軸受400と第2の軸受500とは、予め定められた間隔でシャフト332に固定される。
【0029】
この第1の軸受400と第2の軸受500との間には、円筒状部材600が配置される。円筒状部材600は、図4に示すように、中心部に貫通孔610が形成された円筒状の部材である。図3に示すように、シャフト332は、円筒状部材600の貫通孔610内を通っている。貫通孔610の内径は、シャフト332の外径よりも大きい。したがって、円筒状部材600の貫通孔610内で、シャフト332は、自由に回転することができる。つまり、円筒状部材600は、中央に形成された貫通孔610内にシャフト332が回転可能に通された状態で第1の軸受400と第2の軸受500との間に配置されている。
【0030】
円筒状部材600は、ハウジング311内でハウジング311に固定されている。円筒状部材600は、例えばハウジング311に接着又は圧入により固定される。シャフト332と平行な方向(以下、「軸方向」ともいう)に沿った円筒状部材600の寸法は、シャフト332に固定された第1の軸受400と第2の軸受500との間隔よりも長い。したがって、円筒状部材600は、第1の外輪410を軸方向に沿って第2の軸受500とは反対側に向けて押圧している。また、同時に、円筒状部材600は、第2の外輪510を軸方向に沿って第1の軸受400とは反対側に向けて押圧している。
【0031】
円筒状部材600の外径は、第1の軸受400及び第2の軸受500の外径よりも小さい。ここで、第1の軸受400の外径とは、第1の外輪410の外径のことである。同様に、第2の軸受500の外径とは、第2の外輪510の外径のことである。したがって、第1の軸受400及び第2の軸受500は、ハウジング311に直接的には固定されていない。
【0032】
第1の内輪420及び第2の内輪520が予め定められた間隔でシャフト332に固定された状態で、第1の軸受400と第2の軸受500との間に第1の外輪410及び第2の外輪510を押圧する円筒状部材600を設けることで、すなわち、第1の軸受400と第2の軸受500との間で円筒状部材600を挟持することで、第1の軸受400及び第2の軸受500に対し円筒状部材600が固定される。そして、この円筒状部材600がハウジング311に固定されることで、第1の軸受400及び第2の軸受500はハウジング311に対して固定されている。換言すれば、第1の軸受400及び第2の軸受500は、円筒状部材600を介して間接的にハウジング311に固定されている。そして、このような構造で第1の軸受400及び第2の軸受500を固定することにより、第1の外輪410及び第2の外輪510は、ハウジング311から軸方向に垂直な荷重を受けていない。
【0033】
したがって、シャフト332の軸方向に垂直な径方向においてハウジング311に第1の軸受400及び第2の軸受500を固着させることなく、第1の軸受400及び第2の軸受500をハウジング311内に固定できる。このため、ロータのシャフト332を支持する軸受の固定に用いる部材である円筒状部材600について、軸受と同等な熱膨張率であるという制約がないものを用いることが可能である。具体的に例えば、円筒状部材600としてアルミニウム合金を採用することで、軽量化の要求に応えることができる。
【0034】
また、軸方向に沿って第1の外輪410及び第2の外輪510が押圧されることで、第1の軸受400及び第2の軸受500の回転を安定させることができる。すなわち、これは、電動送風機100が駆動する際に、第1の軸受400の第1の外輪410と第1の内輪420と第1の外輪410と第1の内輪420の間に介在する第1の転動体430の位置を適切に保ち、第1の外輪410に対して第1の内輪420が第1の転動体430を介して滑らかに回転できるようにすることが可能である。第2の軸受500についても同様である。
【0035】
前述したように、ファン210が回転すると、吸込口221からファンカバー220内へと空気が吸い込まれる。この際、反作用としてファン210には吸込口221の方へと引き寄せられる力が生じる。ファン210はシャフト332に固定され、第1の内輪420及び第2の内輪520はシャフト332に固定されている。したがって、ファン210が回転すると、第1の内輪420及び第2の内輪520にはファン210側へと移動しようとする力、すなわち軸方向に沿った力が働く。
【0036】
このとき、第1の軸受400及び第2の軸受500には、円筒状部材600により軸方向に沿った力が予め加えられている。このため、ファン210の回転に伴い第1の内輪420及び第2の内輪520がファン210側に移動しようとしても、第1の外輪410と第1の内輪420と第1の転動体430との相対的な位置関係、及び、第2の外輪510と第2の内輪520と第2の転動体530との相対的な位置関係を保ち、円滑なシャフト332の回転を維持できる。
【0037】
また、前述したように、円筒状部材600の内径は、シャフト332の外径よりも大きい。そして、円筒状部材600の内径とシャフト332の外径との差が、円筒状部材600の外径と第1の軸受400及び第2の軸受500の外径との差よりも大きくなるようにするとよい。このようにすることで、組立時等にハウジング311内で円筒状部材600の中心軸とシャフト332の中心軸とが仮にずれたとしても、第1の軸受400及び第2の軸受がハウジング311に当接することで、円筒状部材600とシャフト332とが接触することがない。したがって、円筒状部材600がシャフト332の円滑な回転の妨げとなってしまうことを抑制できる。
【0038】
なお、この実施の形態1では、第2の軸受500は、第1の軸受400よりもロータ330のロータコア331側に配置されている。そして、第1の外輪410の円筒状部材600とは反対側の面は、ハウジング311のハウジング底部312に押し付けられている。このようにすることで、フレーム310にロータ組立体(シャフト332、ロータコア331、第1の軸受400、第2の軸受500及び円筒状部材600)を取り付ける際の位置合わせが容易になる。
【0039】
なお、円筒状部材600は、ハウジング311の外側からかしめられて、ハウジング311内に固定されてもよい。この場合、図5に示すように、円筒状部材600の外側面には、凹部620が形成されている。そして、円筒状部材600は、凹部620の位置でかしめられる。このようにすることで、ハウジング311のかしめられた部分が、凹部620内に突出して円筒状部材600が固定される。したがって、かしめによる円筒状部材600の変形を抑制できる。この際、凹部620は、円筒状部材における前述の軸方向の中心に配置されるようにするとよい。
【0040】
また、かしめることで円筒状部材600をハウジング311に固定する場合、かしめる位置は、シャフト332について軸対称となるようにするとよい。さらに、特に、かしめることで円筒状部材600をハウジング311に固定する場合、円筒状部材600は、ハウジング311と異なる素材であっても構わないが、同等な熱膨張率であることが望ましい。このようにすることで、円筒状部材600とハウジング311が熱膨張することによる、円筒状部材600の固定の緩みの発生を抑制できる。
【0041】
実施の形態2.
図6及び図7は、この発明の実施の形態2に係るもので、図6は電動機の要部を拡大して示す断面図、図7は電動機の円筒状部材を示す斜視図である。
【0042】
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、円筒状部材における第1の軸受側及び第2の軸受側の両方の側面に凸部を形成し、これらの凸部が第1の外輪及び第2の外輪にそれぞれ当接するようにしたものである。以下、この実施の形態2に係る電動機及び電動送風機について、実施の形態1の構成を元にした場合を例に挙げ、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0043】
この発明の実施の形態2に係る電動機及び電動送風機においては、図6及び図7に示すように、円筒状部材600に凸部630が形成されている。凸部630は、円筒状部材600の円筒形の2つの底面に相当する面にそれぞれ形成されている。凸部630は、これらの面における外周寄りに配置されている。したがって、これらの面の貫通孔610に近い内周側は、凸部630に対して相対的に凹んでいる。また、円筒状部材600の外側面には、凹部620が全周にわたり連続して形成されている。
【0044】
このように構成された円筒状部材600を第1の軸受400と第2の軸受500との間に配置することで、図6に示すように、円筒状部材600の2つの凸部630が、第1の外輪410と第2の外輪510とにそれぞれ当接する。
【0045】
また、ハウジング311には、かしめ部313が形成される。かしめ部313は、ハウジング311内の円筒状部材600の凹部620に合わせた位置に配置される。ハウジング311はかしめ部313において、ハウジング311の外側から内側に向けて突出するように変形している。かしめ部313におけるハウジング311内壁の突出部は、円筒状部材600の凹部620内に配置される。そして、このかしめ部313と凹部620とにより、円筒状部材600がハウジング311内に固定される。
【0046】
なお、他の構成については実施の形態1と同様であり、ここでは、その説明を省略する。
【0047】
以上のように構成された電動機及び電動送風機においても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。さらに、円筒状部材600に凸部630を設けたことで、円筒状部材600で第1の外輪410及び第2の外輪510だけを、より確実に押圧することができる。したがって、第1の内輪420及び第2の内輪520の回転への円筒状部材600の干渉が発生する可能性を低減し、ロータ330を円滑に回転させることが可能である。
【0048】
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3に係るもので、電動機の要部を拡大して示す断面図である。
【0049】
ここで説明する実施の形態3は、前述した実施の形態1又は実施の形態2の構成において、第2の外輪と円筒状部材との間に弾性部材を設けるようにしたものである。以下、この実施の形態3に係る電動機及び電動送風機について、実施の形態2の構成を元にした場合を例に挙げ、実施の形態2との相違点を中心に説明する。
【0050】
この発明の実施の形態3に係る電動機及び電動送風機においては、図8に示すように、円筒状部材600と第2の軸受500との間に、バネ710が設けられている。円筒状部材600の第2の軸受500側の面には凸部が形成されていない。バネ710は円環状を呈する押しバネである。バネ710は具体的に例えばバネワッシャーである。
【0051】
バネ710は、弾性的に変形した状態で円筒状部材600と第2の軸受500との間に挿入されている。したがって、バネ710は、第2の外輪510を軸方向に沿って第1の軸受400とは反対側に押圧している。換言すれば、円筒状部材600は、バネ710を介して第2の外輪510を軸方向に沿って第1の軸受400とは反対側に押圧している。バネ710は、他の弾性体、具体的に例えばゴム等であってもよい。
【0052】
なお、円筒状部材600の第1の軸受400側の面には凸部630が形成されている。そして、円筒状部材600は、凸部630によって第1の外輪410を軸方向に沿って第2の軸受500とは反対側に押圧している。他の構成については実施の形態2と同様であり、ここでは、その説明を省略する。
【0053】
以上のように構成された電動機及び電動送風機においても、実施の形態1又は実施の形態2と同様の効果を奏することができる。そして、円筒状部材600が第2の外輪510を押圧する力を弾性部材であるバネ710によって安定させることができる。また、第2の軸受500からハウジング311に伝搬されるロータ330の回転による振動を抑制し、電動機の外郭部品の振動を軽減できる。
【0054】
なお、ここでは、第2の外輪510と円筒状部材600との間に弾性部材であるバネ710を設けた場合の例について説明した。しかし、弾性部材を設ける箇所はこれに限られない。弾性部材を第1の外輪410と円筒状部材600との間に設けるようにしてもよい。
【0055】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4に係るもので、電動機の要部を拡大して示す断面図である。
【0056】
ここで説明する実施の形態4は、前述した実施の形態1から実施の形態3のいずれかの構成において、第1の外輪の円筒状部材とは反対側の面とハウジングの底部との間に弾性部材を設けるようにしたものである。以下、この実施の形態4に係る電動機及び電動送風機について、実施の形態3の構成を元にした場合を例に挙げ、実施の形態3との相違点を中心に説明する。
【0057】
この発明の実施の形態4に係る電動機及び電動送風機は、図9に示すように、第1の軸受400とハウジング底部312との間には、ゴム720が設けられている。ゴム720は、円環状を呈する例えばシリコンゴムである。ゴム720は、弾性的に変形した状態で第1の軸受400とハウジング底部312との間に挿入されている。ゴム720は、他の弾性体、具体的に例えば押しバネ等であってもよい。
なお、他の構成については実施の形態3と同様であり、ここでは、その説明を省略する。
【0058】
以上のように構成された電動機及び電動送風機においても、実施の形態1から実施の形態3のいずれかと同様の効果を奏することができる。そして、第1の軸受400からハウジング底部312に伝搬されるロータ330の回転による振動を抑制し、電動機の外郭部品の振動を軽減できる。また、ゴム720と第1の軸受400との間の摩擦力により、第1の軸受400の位置を安定させることができる。
【0059】
実施の形態5.
図10から図12は、この発明の実施の形態5に係るもので、図10は電動機の要部を拡大して示す断面図、図11は電動機の円筒状部材を示す斜視図、図12は電動機が備えるロータ組立体の分解斜視図である。
【0060】
ここで説明する実施の形態5は、前述した実施の形態1から実施の形態4のいずれかの構成において、第1の外輪と円筒状部材との間及び第2の外輪と円筒状部材との間の両方に弾性部材を設けるようにしたものである。以下、この実施の形態5に係る電動機及び電動送風機について、実施の形態3の構成を元にした場合を例に挙げ、実施の形態3との相違点を中心に説明する。
【0061】
この発明の実施の形態5に係る電動機及び電動送風機においては、図10及び図12に示すように、円筒状部材600と第1の軸受400との間に、ゴム720が設けられている。ゴム720は、円環状を呈する例えばシリコンゴムである。また、円筒状部材600と第2の軸受500との間には、バネ710が設けられている。バネ710は円環状を呈する押しバネである。バネ710は具体的に例えばバネワッシャーである。
【0062】
図11に示すように、この実施の形態5においては、凸部630は、円筒状部材600の円筒形の2つの底面に相当する面にそれぞれ形成されている。凸部630は、これらの面における内周寄りに配置されている。したがって、これらの面の貫通孔610から遠い外周側は、凸部630に対して相対的に凹んでいる。
【0063】
図10に示すように、バネ710は、弾性的に変形した状態で円筒状部材600と第2の軸受500との間に挿入されている。したがって、バネ710は、第2の外輪510を軸方向に沿って第1の軸受400とは反対側に押圧している。換言すれば、円筒状部材600は、バネ710を介して第2の外輪510を軸方向に沿って第1の軸受400とは反対側に押圧している。この際、凸部630は、バネ710の円環形の内側に配置される。このため、バネ710の位置がずれることを抑制できる。バネ710は、他の弾性体、具体的に例えばゴム等であってもよい。
【0064】
ゴム720は、弾性的に変形した状態で円筒状部材600と第1の軸受400との間に挿入されている。したがって、ゴム720は、第1の外輪410を軸方向に沿って第2の軸受500とは反対側に押圧している。換言すれば、円筒状部材600は、ゴム720を介して第1の外輪410を軸方向に沿って第2の軸受500とは反対側に押圧している。この際、凸部630は、ゴム720の円環形の内側に配置される。このため、ゴム720の位置がずれることを抑制できる。ゴム720は、他の弾性体、具体的に例えば押しバネ等であってもよい。
他の構成については実施の形態3と同様であり、ここでは、その説明を省略する。
【0065】
以上のように構成された電動機及び電動送風機においても、実施の形態1から実施の形態4のいずれかと同様の効果を奏することができる。また、円筒状部材600が第2の外輪510を押圧する力を弾性部材であるバネ710によって安定させることができる。同様に、円筒状部材600が第1の外輪410を押圧する力を弾性部材であるゴム720によって安定させることができる。さらに、第1の軸受400及び第2の軸受500からハウジング311に伝搬されるロータ330の回転による振動を抑制し、電動機の外郭部品の振動を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上で説明した実施の形態1から実施の形態5に係る電動送風機は、具体的に例えば、電気掃除機、ドライヤー等の電気機器に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
100 電動送風機
200 ブロワー部
210 ファン
220 ファンカバー
221 吸込口
230 案内羽根
300 モータ部
310 フレーム
311 ハウジング
312 ハウジング底部
313 かしめ部
320 ブラケット
330 ロータ
331 ロータコア
332 シャフト
340 ステータ
400 第1の軸受
410 第1の外輪
420 第1の内輪
430 第1の転動体
500 第2の軸受
510 第2の外輪
520 第2の内輪
530 第2の転動体
600 円筒状部材
610 貫通孔
620 凹部
630 凸部
710 バネ
720 ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12