特許第6863519号(P6863519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6863519-液漏れ検知装置及びオーブン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863519
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】液漏れ検知装置及びオーブン
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/54 20060101AFI20210412BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20210412BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01N30/54 D
   G01N30/86 T
   G01N30/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-506122(P2020-506122)
(86)(22)【出願日】2018年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2018039315
(87)【国際公開番号】WO2019176154
(87)【国際公開日】20190919
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】201810207869.1
(32)【優先日】2018年3月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】徐 博
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−102096(JP,A)
【文献】 特開2015−14533(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3127573(JP,U)
【文献】 特開2018−4623(JP,A)
【文献】 特開2015−155837(JP,A)
【文献】 特開2000−9709(JP,A)
【文献】 米国特許第5830353(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉される内部空間を有し、前記内部空間に試料流路が設けられており、前記試料流路内に液体試料が流れているオーブン筐体、及び前記内部空間に設けられ、前記内部空間を加熱するヒータを有するオーブンに用いられる液漏れ検知装置であって
前記内部空間に設けられ、前記試料流路から前記内部空間に漏洩し気化した液体試料を検出するガスセンサーと、
前記内部空間に連通し、前記試料流路から前記内部空間に漏洩した気化していない液体試料を前記オーブン筐体の外部に導出する液漏れ管路と、
前記オーブン筐体の外部に設けられ、前記液漏れ管路から導出される液体試料を検出する液体センサーと、を備え
前記液漏れ管路は、熱伝導性材料からなり、前記オーブン筐体の外部に導出される気化していない液体試料の温度を前記熱伝導性材料の放熱作用により前記液体センサーの作動範囲内にまで低下させる、液漏れ検知装置。
【請求項2】
前記液漏れ管路は熱伝導性材料からなる、請求項1に記載の液漏れ検知装置。
【請求項3】
前記内部空間の底部に設けられ、前記試料流路から漏洩した気化していない液体試料を収集する液漏れ収集部をさらに備え、
前記液漏れ管路は、前記液漏れ収集部と連通し、前記液漏れ収集部が収集した前記液体試料を導出する、請求項1に記載の液漏れ検知装置。
【請求項4】
密閉された内部空間を有し、前記内部空間に試料流路が設けられており、前記試料流路内を液体試料が流れるオーブン筐体と、
前記内部空間に設けられ、前記内部空間を加熱するヒータと、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液漏れ検知装置と、を備えている、オーブン。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液漏れ検知装置を備えている、クロマト分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液漏れ検知装置及びオーブンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーブンは液体クロマト分析システム(又は、超臨界流体クロマトやイオンクロマト等の他のクロマト分析システム)において普遍に使用される装置である。オーブンの一種として、例えば、液体クロマト分析システム中の反応槽が挙げられる。一般に、試料の流れる流路(以下、試料流路)がオーブンの内部に収容され、オーブンの作動時には、オーブン内に設けられたヒータにより、流路内の試料を所定の温度まで加熱する。しかし、試料流路で漏洩が発生すると、セキュリティリスクが発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オーブン内の試料流路の漏れを検知するために、液体センサーを使用することが考えられる。しかし、液体センサーの使用温度に制限(一般に100℃以下が要求される)があり、高温状態でのオーブンでは液体センサーが正常に作動できないため、高温の液体を検出することができない(高温状態の液体は約150℃である)。このため、従来技術では、通常、使用温度が高いオーブン内に単一のガスセンサーのみが設けられる。試料流路で試料の漏れがある場合、漏れた試料はオーブン内で気化し、ガスセンサーにより検出される。
【0004】
しかし、本願発明者は、オーブンが低温で作動する場合又は漏れた試料の沸点が高い場合、即ち、漏れた試料が気化しない場合には、ガスセンサーによって試料流路での漏れが検出されず、セキュリティリスクが発生するという問題があることを発見した。すなわち、従来技術では、オーブン内の試料流路の漏れを確実に検出できない問題が存在する。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、オーブン内の試料流路の漏れを確実に検出可能な液漏れ検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液漏れ検知装置は、オーブンに用いられるものである。該オーブンは、密閉される内部空間を有し、内部空間に試料流路が設けられており、試料流路内に液体試料が流れているオーブン筐体と、内部空間に設けられ、内部空間を加熱するヒータと、を備えるものである。液漏れ検知装置は、前記オーブン筐体の前記内部空間に設けられ、試料流路から内部空間に漏洩し気化した液体試料を検出するガスセンサーを備えている。液漏れ検知装置は、内部空間に連通し、試料流路から内部空間に漏洩した気化していない液体試料をオーブン筐体の外部に導出する液漏れ管路と、オーブン筐体の外部に設けられ、液漏れ管路から導出される液体試料を検出する液体センサーと、をさらに備える。液漏れ管路は、熱伝導性材料からなり、オーブン筐体の外部に導出される気化していない液体試料の温度を熱伝導性材料の放熱作用により液体センサーの作動範囲内にまで低下させる。
【0007】
本発明の液漏れ検知装置において、液漏れ管路は熱伝導性材料からなるものであってもよい。これにより、液体試料が液漏れ管路に流れる際に、液漏れ管路を構成する熱伝導性材料の放熱作用により、液体試料が次第に冷却され、これにより、液体試料の温度を液体センサーの作動範囲まで低下させることができる。これにより、液体試料を液体センサーによって検知することができる。
【0008】
本発明の液漏れ検知装置は、内部空間の底部に設けられ、気化していない液体試料を試料流路から収集する液漏れ収集部をさらに備えていてもよい。この場合、液漏れ管路は、液漏れ収集部と連通し、液漏れ収集部に収集された気化していない液体試料を導出するものであることが好ましい。これにより、オーブン内で漏れた液がスムーズに導出され、オーブンの液漏れを確実に検出することができる。
【0009】
本発明のオーブンは、密閉された内部空間を有し、内部空間に試料流路が設けられており、試料流路内に液体試料が流れているオーブン筐体と、内部空間に設けられ、内部空間を加熱するヒータと、本発明の液漏れ検知装置と、を備えているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、漏れた試料が気化しないような場合にも、オーブン筐体の外部に設けられた液体センサーにより漏洩した液体を検出することができる。さらに、液体センサーがオーブンの外に配置されているので、液体センサーが高温下で正常に作動できない問題を解決した。これにより、オーブン内の試料流路の漏洩を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液漏れ検知装置及びオーブンの一実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の液漏れ検知装置及びオーブンについて説明する。
【0013】
図1に示すように、オーブンは、主に、オーブン筐体1とヒータ2とを備えている。オーブン筐体1は密閉された内部空間11を有し、該内部空間11に試料流路3が設けられている。試料流路3内を液体試料が流れる。ヒータ2は、内部空間11に設置され、該内部空間11を加熱する。この実施例では、オーブン筐体1は断熱材を挟んだ2層構造であり、内部空間11を保温する機能を有する。図1における矢印はそれぞれ、液体試料の流入及び流出方向を示す。
【0014】
液漏れ検知装置は、ガスセンサー4、液漏れ管路5及び液体センサー6を備えている。
【0015】
ガスセンサー4は、オーブン筐体1の内部空間11に設置されている。試料流路3で液漏れが発生したとき、漏洩した試料の沸点がオーブン筐体1の内部空間11における温度よりも低い場合には、該漏洩試料が気化するため、ガスセンサー4が試料流路3から内部空間11に漏洩し気化した液体試料を検出することによって、オーブン内の液漏れを検出することができる。
【0016】
液漏れ管路5はオーブン筐体1の内部空間11と連通している。そのため、試料流路3に液漏れが発生したとき、試料流路3から内部空間11に漏洩した気化していない液体試料が液漏れ管路5によってオーブン筐体1の外部に導出される。
【0017】
液漏れ管路5によってオーブン筐体1の外部へ導出された液体試料を検出するための液体センサー6がオーブン筐体1の外部に設置されている。これにより、たとえ漏れた試料が気化しない場合にも、オーブン筐体1の外部に設置された液体センサー6により漏れた液体を検出することができる。
【0018】
液漏れ検知装置において、ガスセンサー4と液体センサー6を同時に配置することで、同時に有機蒸気、水、有機液体及びその他の複数の液体を測定することができ、オーブン内の試料流路の漏洩検出の信頼性が向上する。
【0019】
液漏れ管路5は、例えば金属等の熱伝導性材料からなる。これにより、液体試料が液漏れ管路に流れるとき、液漏れ管路を構成する熱伝導性材料の放熱作用により、液体試料が次第に冷却され、液体試料の温度を液体センサーの作動範囲内にまで低下する。これにより、漏れた液体試料を液体センサーによって検知することができる。ここで、液漏れ管路5の長さは特に限定されず、液体試料を十分に冷却できればよい。図1には液漏れ管路5を垂直にオーブンへ挿入した構造を示しているが、これに限らず、液漏れ管路5の熱伝導性能を高めるために、液漏れ管路5の一段をオーブンの外壁に貼り合わせて敷設してから、オーブンに挿入してもよい。このようにして、オーブンの外壁の熱伝導性作用により、液漏れ管路5内の液体試料を迅速に放熱させることができる。
【0020】
オーブンの外部に設けられた液体センサー6の設置位置も特に限定されず、正常に作動可能な適切な位置に設置すればよい。例えば、液漏れ管路5の導出口に液体試料を受けるトレイを設置し、液体センサー6をトレイ内に設置することができる。液体試料を受けるトレイを設置することで、液体試料をさらに迅速に冷却させることができる、液体センサーによって液体試料を検知することができる。
【0021】
液漏れ検知装置は、内部空間11の底部に設置され、気化していない液体試料を収集するためのトレイ状の液漏れ収集部7をさらに備えている。液漏れ管路5は、液漏れ収集部7と連通して液漏れ収集部7が収集した液体試料を導出する。トレイ状の液漏れ収集部7が設けられていることで、オーブン内で漏洩した液体試料をスムーズにオーブン外へ導出することができ、オーブンの液漏れを確実に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のオーブンは、例えば、反応槽であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 オーブン筐体
2 ヒータ
3 試料流路
4 ガスセンサー
5 液漏れ管路
6 液体センサー
7 液漏れ収集部
11 内部空間
図1