(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記離型フィルムの他方の離型面に、熱可塑性樹脂を含む第2の離型層をさらに有し、当該離型フィルム全体の厚みが180μm以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
前記第1の離型層が、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を含む、請求項1乃至3いずれか一項に記載の離型フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<離型フィルム>
図1は、本実施形態に係る離型フィルムの断面図である。
図1に示すように、離型フィルム10は、第1の熱可塑性樹脂を含む離型層1と、クッション層3と、第2の熱可塑性樹脂を含む離型層2とが、厚み方向にこの順で積層した積層構造を有する。
また、離型層1は、離型フィルム10の一方の面に配されており、離型層2は、離型フィルム10の他方の面に配されている。
【0016】
本実施形態において、離型フィルム10は、回路等を備えた成型対象物に対し、離型層1側が接するように配置される。すなわち、成型対象物に接する側の面を、離型フィルム10の第1の離型面とし、成型対象物に接する側の面とは反対側の面を、離型フィルム10の第2の離型面とする。
【0017】
また、離型フィルム10を配置する前段階における上記成型対象物の表面は、通常、半硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている。
離型フィルム10は、上記半硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された成型対象物の表面上に配置して用いる。そして、成型対象物の表面に離型フィルム10を配置した状態で、加熱プレスを行うことで、所望の成型品を得ることができる。
【0019】
・離型層1(第1の離型層)
離型層1は、離型フィルム10を用いて加熱プレスを行う際に、成型対象物に接する面(第1の離型面)を形成する層である。
【0020】
本実施形態において、離型層1は粒子を含む。粒子の平均粒径d50は、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上である。一方、粒子の平均粒径d50は、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下である。
粒子の平均粒径d50を上記下限値以上とすることで、離型フィルム10の剛性を向上させるとともに、表面粗化したFPCとの離型性を向上させることができる。一方、粒子の平均粒径d50を上記上限値以下とすることで、離型性と追従性とのバランスを良好にし、仕上がり外観が良好な成型品を作製することができる。
【0021】
粒子は、離型フィルム10の剛性を向上させる観点から、無機粒子であることが好ましい。
無機粒子としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、および溶融シリカなどのシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、アンチモン酸化物、Eガラス、Dガラス、Sガラス、およびゼオライトからなる群から得られる1種または2種以上を用いてなる粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類のみの粒子を単独で使用してもよいし、異なる種類の粒子を併用してもよい。無機粒子は、樹脂との密着性を向上させる目的でシランカップリング剤など用いて表面処理を行ってもよいし、分散性を向上させる目的で無機粒子に有機被膜処理を行ったコアシェル型粒子を用いてもよい。
離型フィルムの剛性を向上させる観点から、結晶性シリカ、非晶性シリカ、および溶融シリカなどのシリカであることが好ましく、球状の溶融シリカであることがより好ましい。
【0022】
離型層1全量に対する粒子の含有量は、好ましくは3重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
これにより、離型層1に関し、表面粗化したFPCとの離型性と追従性のバランスを向上させることができる。
【0023】
離型層1の厚みは、適度な強度を得つつ、高温、高圧プレス時でも良好な離型性を得る観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。一方、成型品に対する埋め込み性を向上させる観点から、離型層1の厚みは、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは35μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下であり、ことさらに好ましくは20μm以下である。
離型層1の厚みを上記下限値以上とすることにより、良好な離型性が得られやすくなり、一方、離型層1の厚みを上記上限値以下とすることにより、良好な追従性が得られやすくなるとともに、コストダウンを図ることができる。また、離型層1の厚みは、離型性と追従性のバランスを両立する観点から、離型フィルム全体の厚みとのバランスにより設定されることが好適である。離型層1の厚みは、離型フィルム全体の厚みに対して、好ましくは15〜40%であり、より好ましくは20〜30%である。
【0024】
離型フィルム10の第1の離型面の算術平均高さSaは0.6μm以上2.3μm以下であり、0.7μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
算術平均高さSaを上記下限値以上とすることにより、粗化FPCとの離型性を高めることができる。一方、算術平均粗さSaを上記上限値以下とすることにより、追従性を良好に保持することができるようになる。
なお、算術平均高さSaは、ISO25178に準じて測定することができる。
【0025】
また、離型フィルム10の第1の離型面の任意の領域において、当該領域の面積をA(mm
2)、当該領域の表面積をS(mm
2)としたとき、S/Aが1.005以上1.025以下である。
S/Aを上記下限値以上とすることにより、粗化FPCとの離型性を高めることができる。一方、S/Aを上記上限値以下とすることにより、追従性を良好に保持することができるようになる。
なお、第1の離型面の任意の領域とは、離型フィルム10が離型フィルムとして機能する領域であればいずれの領域であってもよい。
【0026】
また、離型フィルム10における算術平均高さSa、およびS/Aの数値は、離型層1に含まれる粒子の粒径、粒子の含有量、離型フィルム10及び離型層1の厚みを制御することによって調整することができる。すなわち、例えば、粒子の粒径が離型層1の厚みよりも大きければ、離型フィルム10の第1の離型面において当該粒子による凹凸が顕著になる傾向があり、また、粒子の含有量が多ければ離型フィルム10の第1の離型面に粒子による凹凸が顕著になる傾向が得られる。
【0027】
離型フィルム10において、第1の離型面の剥離強度は、低い値であるほど望ましいが、0.1N/50mm以下であり、FPCと自然剥離することが好ましい。
こうすることで、成型対象物に対する離型性を向上させることができる。
【0028】
なお、上記剥離強度は、以下の方法で測定することができる。
まず、カバーレイフィルムをラミネートした回路基板に対し、アルゴン(Ar)プラズマ処理を施す事で表面粗化した回路基板を得る。
つぎに、表面粗化した回路基板に対して、離型フィルム10における第1の離型面が、上述した回路基板と対向するように上下に貼り合わせ、真空プレス機を用い、熱プレスを行うことにより、試験片を作製する。その後、引張試験機を用いて、得られた試験片から離型フィルム10を剥離することにより、第1の離型面の剥離強度を測定する。
【0029】
離型層1は熱可塑性樹脂を含む。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)等のポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂(TPX:以下、ポリメチルペンテン樹脂ともいう。)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)、ポリプロピレン樹脂(PP)及び他の成分を共重合した共重合体樹脂が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、離型層1の離型性を向上させる観点から、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましく、ポリメチルペンテン樹脂であることがより好ましい。
【0030】
離型層1は、上記の熱可塑性樹脂のほか、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコーンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有させてもよい。
【0031】
・離型層2
離型層2は、離型フィルム10を用いて加熱プレスを行う際に、プレス熱板と接する面(第2の離型面)を形成する層である。
【0032】
離型層2は、粒子を含んでもよい。離型層2に含まれる粒子の平均粒径d50は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。
こうすることで、第2の離型面に対して所望の大きさの凹凸を付与することができる。
【0033】
離型層2全量に対する粒子の含有量は、0.05重量%以上30重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上10重量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、離型層2に含まれる粒子は、上記離型層1に含まれる粒子と同様の粒子とすることができる。なお、離型層1に含まれる粒子と、離型層2に含まれる粒子は、同じ材料または粒径からなる粒子であってもよく、異なる材料または粒径からなる粒子であってもよい。
【0035】
離型層2の厚みは、適度な強度を得つつ、高温、高圧プレス時でも良好な離型性を得る観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。一方、成型品に対する埋め込み性を向上させる観点から、離型層2の厚みは、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは35μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下であり、ことさらに好ましくは20μm以下である。また、離型層2の厚みは、離型性と追従性のバランスを両立する観点から、離型フィルム全体の厚みとのバランスにより設定されることが好適である。離型層2の厚みは、離型フィルム全体の厚みに対して、好ましくは15〜40%であり、より好ましくは20〜30%である。
【0036】
離型層2は、熱可塑性樹脂を含む。離型層2で用いられる熱可塑性樹脂は、上記離型層1で説明したのと同様の熱可塑性樹脂を用いることができる。離型層1と離型層2で用いられる熱可塑性樹脂は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、離型層2は、離型層1と同様の材料を用いて形成されてもよく、異なっていてもよい。
【0037】
・クッション層3
クッション層3は、離型層1と離型層2との間に介在する。
【0038】
クッション層3の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上90μm以下であることがより好ましく、10μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。また、製造コストを低減する観点から、クッション層3の厚みは、20μm以上50μm以下であることが好ましく、30μm以上40μm以下であることがより好ましい。
クッション層3の厚さが上記下限値以上とすることにより、高温・高圧条件下でも粗化FPCに対する離型性が得られやすくなる。さらに、離型フィルム10のクッション性が得られ、加熱プレス時に使用される後述の資材などの網目がFPC表面に転写するのを抑制し良好な外観が得られるとともに、追従性が良好になる。一方、クッション層3の厚さを上記上限値以下とすることにより、離型性を良好に維持できる。
【0039】
クッション層3を形成する樹脂材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロプレン等のα−オレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を重合体成分として有するα−オレフィン系共重合体、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、α−オレフィン系共重合体が好ましい。
α−オレフィン系共重合体としては、エチレン等のα−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。
さらに、良好なクッション機能を得る観点から、エチレン等のα−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を単独で用いたもの、または、ポリブチレンテレフタレートと1,4シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートとの混合物、α−オレフィン系重合体とエチレン等のα−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との混合物が好ましい。
たとえば、エチレンとエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との混合物、ポリプロピレン(PP)とエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との混合物、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリプロピレン(PP)とエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)との混合物、などがより好ましい。
【0040】
クッション層3は、さらにゴム成分を含んでもよい。ゴム成分としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー材料、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム等のゴム材料等が挙げられる。
【0041】
クッション層3には、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、染料および顔料等の着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有させてもよい。
【0042】
クッション層3を形成する方法としては、例えば、空冷または水冷インフレーション押出法、Tダイ押出法等の公知の方法が挙げられる。
【0043】
・離型フィルム10全体
離型フィルム10の全体の厚みは、好ましくは30μm以上180μm以下であり、より好ましくは30μm以上150μm以下である。また、製造コストを低減する観点から、離型フィルム10の全体の厚みは、好ましくは30μm以上100μm以下であり、より好ましくは40μm以上90μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上80μm以下である。
離型フィルム10の厚さを上記下限値以上とすることにより、高温・高圧条件下でも粗化FPCに対する離型性が得られやすくなる。さらに、離型フィルム10のクッション性が得られ、加熱プレス時に使用される後述の資材などの網目がFPC表面に転写するのを抑制し良好な外観が得られるとともに、追従性が良好になる。一方、離型フィルム10の厚さを上記上限値以下とすることにより、離型性を良好に維持できる。
また、離型フィルム10の全体の厚みを上記の数値範囲内にすることで、成型品の作製時にプレス圧を離型フィルム10に対してムラなく均一に印加することが可能となる。
【0044】
次に、本実施形態の離型フィルム10の効果について説明する。
離型フィルム10は、離型層1およびクッション層3を備え、第1の離型面の算術平均高さSaが0.6μm以上2.3μm以下であり、かつ、第1の離型面の任意の領域において、当該領域の面積をA(mm
2)、当該領域の表面積をS(mm
2)としたとき、S/Aが1.005以上1.025以下である。
すなわち、第1の離型面の表面状態を高度に制御することで、離型フィルム10の粗化FPCとの離型性と追従性とのバランスを向上させるものである。かかる理由の詳細は明らかではないが以下のように推測される。
まず、算術平均高さSaとは、平均面に対する山と谷の高さ(凹凸の高さ)の平均を表すパラメータであり、離型面と対象物との接点の状態に着目し離型性を制御するものと推測されるのに対し、S/Aとは、表面積が大きいほどクッション性が得られやすくなると考えられ、追従性を制御しやすくなるものと推測される。そこで、これらを組み合わせることで離型面全体の表面形状が適切に制御され、その結果、離型フィルム10全体として、表面粗化したFPCに対しても、良好な離型性が得られるとともに、離型性と追従性のバランスを向上できると考えられる。
なお、表面粗化されたFPCとは、例えば、Arガス下でプラズマ処理が施されたもの、算術平均粗さSaが(0.18μm)以上であるものを意図するが、上記以外の様々なプラズマ処理条件を採用する事もできる。
【0045】
本実施形態において、離型フィルム10は、離型層1と、クッション層3と、離型層2とが厚み方向にこの順で積層してなる積層構造を有したものについて説明したが、これに限られない。
例えば、離型フィルムは、接着層、ガスバリア層等を有する4層、5層等の4層以上の構成であってもよい。この場合、接着層、ガスバリア層としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0046】
<離型フィルム10の製造方法>
離型フィルム10は、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、インフレーション法等公知の方法を用いて作製することができる。また、離型フィルム10は、離型層1と、クッション層3と、離型層2との各層を、別々に製造してからラミネーター等により接合してもよいが、空冷式または水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で成膜することが好ましい。なかでも、共押出Tダイ法で成膜する方法が各層の厚さ制御に優れる点で特に好ましい。また、離型層1と、クッション層3と、離型層2とをそのまま接合してもよいし、接着層を介して接合してもよい。
【0047】
<成型品の製造方法>
次に、本実施形態の成型品の製造方法について説明する。
本実施形態の成型品の製造方法は、上述した離型フィルム10を使用するものである。そして、本実施形態の成型品の製造方法は、たとえば、フレキシブルプリント回路基板を作製する際に使用してもよい。この場合、離型フィルム10は、フレキシブルフィルム上に形成された回路を保護するため、当該回路に対してカバーレイフィルムを加熱プレスして密着させる際に、カバーレイとプレス機との間に介在させて使用する。
【0048】
具体的には、離型フィルム10は、例えば、フレキシブルプリント配線基板の製造工程の一つであるカバーレイプレスラミネート工程において用いられる。より詳細には、離型フィルム10は、回路露出フィルムへのカバーレイフィルム接着時にカバーレイフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにカバーレイフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びカバーレイフィルムと共にプレス機により加熱加圧される。この時、クッション性の向上のために、紙、ゴム、フッ素樹脂シート、ガラスペーパー等、またはこれらを組合せた資材を離型フィルムとプレス機の間に挿入した上で加熱加圧することもできる。
【0049】
また、本実施形態の離型フィルム10は、上述した成型品を作製するために以下の方法で使用してもよい。
まず、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている対象物の表面に対して、上記本実施形態に係る離型フィルム10の離型層1における第1の離型面を配置する。次に、離型フィルム10の離型層2における第2の離型面上に、紙、ゴム、フッ素樹脂シート、ガラスペーパー等、またはこれらを組合せた資材を配置する。その後、離型フィルム10を配置した対象物に対し、金型内でプレス処理を行う。ここで、上述した熱硬化性樹脂は、半硬化状態であっても、硬化状態であってもよいが、半硬化状態であると、当該離型フィルム10の作用効果が一層顕著なものとなる。特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である場合には、当該エポキシ樹脂が、硬化反応の中間の段階にあること、すなわち、Bステージ状態にあることが好ましい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
第1の離型層を形成する熱可塑性樹脂組成物として、ポリメチルペンテン樹脂(TPX(登録商標))(三井化学社製、RT31)90重量部と、平均粒径d50が、11.7μmの球状の無機粒子である溶融シリカ(新日鉄住金マテリアルズ社製、SC10−32F)10重量部を用いた。
クッション層として、変性ポリエチレン樹脂(エチレン―メチルメタクリレート共重合体(EMMA)樹脂)(住友化学社製、WD106)40重量部、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、E111G)30重量部、ポリメチルペンテン樹脂(TPX(登録商標))(三井化学社製、RT31)30重量部を含む樹脂組成物を用いた。
第2の離型層を形成する熱可塑性樹脂組成物として、ポリメチルペンテン樹脂(TPX(登録商標))(三井化学社製、RT31)98重量部と、球状の無機粒子である溶融シリカ(新日鉄住金マテリアルズ社製、SC10−32F)2重量部を用いた。
それぞれの材料を用いて、第1の離型層、クッション層、第2の離型層を、押出Tダイ法によって、厚み方向にこの順で積層し、それぞれの厚さが20μm、30μm、20μmとなるように成形する成形工程を行った。
【0053】
<実施例2>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が20重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを10μm、クッション層の厚みを40μm、第2の離型層の厚みを10μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2の離型フィルムを得た。
【0054】
<実施例3>
溶融シリカSC10−32Fに代えて、平均粒径d50が17.1μmである溶融シリカ(新日鉄住金マテリアルズ社製、SC70F)を用い、溶融シリカの含有量が5重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを30μm、クッション層の厚みを40μm、第2の離型層の厚みを30μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて実施例3の離型フィルムを得た。
【0055】
<実施例4>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が10重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを15μm、クッション層の厚みを30μm、第2の離型層の厚みを15μmとした点以外は、実施例3と同様の方法にて実施例4の離型フィルムを得た。
【0056】
<実施例5>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が15重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを10μm、クッション層の厚みを30μm、第2の離型層の厚みを10μmとした点以外は、実施例3と同様の方法にて実施例5の離型フィルムを得た。
【0057】
<実施例6>
溶融シリカSC10−32Fに代えて、平均粒径d50が23.9μmである溶融シリカ(新日鉄住金マテリアルズ社製、SC80−53F)を用い、溶融シリカの含有量が5重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを20μm、クッション層の厚みを40μm、第2の離型層の厚みを20μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて実施例6の離型フィルムを得た。
【0058】
<実施例7>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が10重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを15μm、クッション層の厚みを30μm、第2の離型層の厚みを15μmとした点以外は、実施例6と同様の方法にて実施例7の離型フィルムを得た。
【0059】
<実施例8>
第1の離型層の厚みを25μm、クッション層の厚みを60μm、第2の離型層の厚みを25μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて実施例8の離型フィルムを得た。
【0060】
<実施例9>
第1の離型層の厚みを30μm、クッション層の厚みを70μm、第2の離型層の厚みを30μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて実施例9の離型フィルムを得た。
【0061】
<実施例10>
第1の離型層の厚みを35μm、クッション層の厚みを80μm、第2の離型層の厚みを35μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて実施例10の離型フィルムを得た。
【0062】
<比較例1>
溶融シリカSC10−32Fに代えて、平均粒径d50が2.2μmである溶融シリカ(新日鉄住金マテリアルズ社製、SP60)を用い、溶融シリカの含有量が10重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを30μm、クッション層の厚みを40μm、第2の離型層の厚みを30μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて比較例1の離型フィルムを得た。
【0063】
<比較例2>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が20重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを20μm、クッション層の厚みを30μm、第2の離型層の厚みを20μmとした点以外は、比較例1と同様の方法にて比較例2の離型フィルムを得た。
【0064】
<比較例3>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が2重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを20μm、クッション層の厚みを30μm、第2の離型層の厚みを20μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて比較例3の離型フィルムを得た。
【0065】
<比較例4>
第1の離型層全量に対する溶融シリカの含有量が20重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを10μm、クッション層の厚みを40μm、第2の離型層の厚みを10μmとした点以外は、実施例3と同様の方法にて比較例4の離型フィルムを得た。
【0066】
<比較例5>
溶融シリカSC10−32Fに代えて、平均粒径d50が35.6μmである溶融シリカ(新日鉄住金マテリアルズ社製、SC30F)を用い、溶融シリカの含有量が5重量部となるように上記TPXと配合してなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点、第1の離型層の厚みを15μm、クッション層の厚みを30μm、第2の離型層の厚みを15μmとした点以外は、実施例1と同様の方法にて比較例5の離型フィルムを得た。
【0067】
<比較例6>
溶融シリカSP60を抜き、上記TPX100重量部からなる熱可塑性樹脂材料を用いて第1の離型層を作製した点以外は、比較例1と同様の方法にて比較例6の離型フィルムを得た。
【0068】
実施例1〜10および比較例1〜6の各離型フィルムを用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
<評価方法>
・粒子(溶融シリカ)の平均粒径d50:レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern社製、マスターサイザー2000)を用い、溶媒を水として粒子を分散させて粒度測定を行って得られた結果より、累積頻度が50%となる粒子径の値を平均粒径d50として算出した。なお、単位は、μmである。
【0070】
・第1の離型層の第1の離型面の算術平均高さ(Sa):得られた離型フィルムにおける第1の離型層の第1の離型面の表面について、ISO25178に準じ、菱化システム社製VertScan R3300Hを用いて、測定した。なお、単位は、μmである。
【0071】
・第1の離型層の第1の離型面の面積(A)および表面積(S):得られた離型フィルムにおける第1の離型層の第1の離型面の表面について、菱化システム社製VertScan R3300Hを用いて、測定した。
【0072】
・離型性(第1の離型層の第1の離型面の離型性):
まず、カバーレイフィルムをラミネートした回路基板に対し、Arプラズマ処理を施す事で表面粗化した回路基板を得た。このArプラズマ処理は、Arガスを用い、150sccmの流量でチャンバー内に供給し、チャンバー内の圧力を25Paにして、マイクロ波(電力300W、周波数:13.56MHz)の印加によりArプラズマを生成することにより行った。
粗化した回路基板に対して、離型フィルム10における第1の離型面が、上述した回路基板と対向するように上下に貼り合わせ、真空プレス機を用い、175℃、2MPaの圧力で、1分間の熱プレスを行うことにより、試験片を作製する。その後、得られた試験片をプレス機から取り出し、60秒間大気下で冷却した後、引張試験機(エーアンドデイ社製Force gauge AD−4932A−50N)を用いて、180°方向に約1000mm/分の速度で応力を加えて離型フィルムを剥離することにより、第1の離型面の剥離強度を測定した。
剥離強度の測定は、以下の基準に基づいて離型性を評価した。
○:剥離強度が0.1N/50mm以下で、試験片がFPCから自然剥離する。
×:剥離強度が0.1N/50mmより大きく、試験片がFPCから自然剥離しない。
【0073】
・離型性2(第1の離型層の第1の離型面の離型性):
上記の離型性評価と同一の粗化処理を施した回路基板に対して、離型フィルム10における第1の離型面が、上述した回路基板と対向するように上下に貼り合わせ、真空プレス機を用い、185℃、2MPaの圧力で、1分間の熱プレスを行うことにより、試験片を作製した。その後、得られた試験片をプレス機から取り出し、60秒間大気下で冷却した後、引張試験機(エーアンドデイ社製Force gauge AD−4932A−50N)を用いて、180°方向に約1000mm/分の速度で応力を加えて離型フィルムを剥離することにより、第1の離型面の剥離強度を測定した。
剥離強度の測定は、以下の基準に基づいて離型性を評価した。
○:剥離強度が0.1N/50mm以下で、試験片がFPCから自然剥離した。
△:剥離強度が0.1N/50mmより大きく、3N/50mm以下。
×:剥離強度が3N/50mmより大きい。
【0074】
・追従性(接着剤のしみだし形状):
まず、有沢製作所製のカバーレイ(CMタイプ)に1mm角の開口部を作成した。次に、フレキシブル配線板用銅張積板の表面に対して、接着剤がコーティングされている側の面が接触するように上記開口部を有するカバーレイを仮止めした試験片を作製した。次いで、離型フィルムにおける第1の離型層の第1の離型面が、上記試験片のカバーレイを有する側の面と対向するように、上記離型フィルムと、上記試験片とを重ねあわせた後、175℃、2MPaの条件で2分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。このようにして得られた成型品について、カバーレイに形成した開口部内に、該カバーテープの表面にコーティングされている接着剤が上記開口部の外縁部からしみ出した形状(接着剤のしみだし形状)を観察し、以下の基準に基づいて追従性を評価した。
○:接着剤のしみだし形状の凹凸差が、80μm未満であった。
×:接着剤のしみだし形状の凹凸差が、80μm以上であった。
【0075】
・成形性(ボイド):
幅100μm、深さ50μmの溝が形成された回路露出フィルムの表面に対し、有沢製作所社製のCL(CMタイプ、厚み40um)を重ね、次いで、離型フィルムを更に回路基板と対向するように上下に貼り合わせ、真空プレス機を用い、185℃、2MPaで1分間加熱圧縮して成形した。すなわち、金型、離型フィルム、成形材料、離型フィルム、金型の順で、積層し、加熱圧縮成形を行った。その後、得られた成形品をプレス機から取り出し、60秒間大気下で冷却した後、この成形品の外観を光学顕微鏡で観察し、以下の基準に基づいて成形性(ボイド)を評価した。
○:ボイドの数が0個
△:長さ0.3mm以上のボイドの数が0個、かつ0.3mm未満のボイドの数が1個以上
×:長さ0.3mm以上のボイドの数が1個以上
【0076】
・成形性(成型品のシワ):
フレキシブル配線板用銅張積板の表面に対して、有沢製作所製のカバーレイ(CMタイプ)の接着剤がコーティングされている側の面が接触するように上記カバーレイを仮止めした試験片を作製した。次いで、離型フィルムにおける第1の離型層の第1の離型面が、上記試験片のカバーレイを有する側の面と対向するように、上記離型フィルムと、上記試験片とを重ねあわせた後、175℃、2MPaの条件で2分間の熱プレス処理を施し、成型品を得た。FPCの外観について、JPCA規格の「7.5.7.2項しわ」に準拠した方法で単位面積当たりのシワ発生率を測定した。得られた測定値については、以下の基準で評価した。
○:シワ発生率が1.5%未満であった。
×:シワ発生率が1.5%以上であった。
【0077】
【表1】
【0078】
この出願は、2018年8月24日に出願された日本出願特願2018−156933号、および、2019年6月7日に出願された日本出願特願2019−106729号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
一方の離型面に、熱可塑性樹脂を含む第1の離型層を有する離型フィルムであって、
前記一方の離型面の算術平均高さSaが0.6μm以上2.3μm以下であり、
前記一方の離型面の任意の領域において、当該領域の面積をA(mm2)、当該領域の表面積をS(mm2)としたとき、S/Aが1.005以上1.025以下である、離型フィルム。
<2>
前記第1の離型層が、平均粒径d50が3μm以上35μm以下である粒子を含有する、<1>に記載の離型フィルム。
<3>
前記離型フィルムの他方の離型面に、熱可塑性樹脂を含む第2の離型層をさらに有し、当該離型フィルム全体の厚みが180μm以下である、<1>または<2>に記載の離型フィルム。
<4>
前記第1の離型層全量に対する前記粒子の含有量が3重量%以上30重量%以下である、<2>に記載の離型フィルム。
<5>
前記第1の離型層が、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を含む、<1>乃至<4>いずれか一つに記載の離型フィルム。
<6>
前記粒子が無機粒子である、<2>または<4>に記載の離型フィルム。
<7>
前記無機粒子が、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、溶融シリカ、およびゼオライトからなる群から得られる1種または2種以上を用いてなる粒子である、<6>に記載の離型フィルム。
<8>
前記第1の離型層が、ポリ4−メチル1−ペンテン樹脂を含む、<1>乃至<7>いずれか一つに記載の離型フィルム。
<9>
前記第1の離型層と、前記第2の離型層とが、クッション層を介して、積層されている、<3>に記載の離型フィルム。
<10>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載の離型フィルムの前記一方の離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、
前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、
を含み、
前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている、成型品の製造方法。
<11>
前記離型フィルムを配置する前記工程の後、前記離型フィルムの第2の離型層の離型面上に資材を配置する工程をさらに含む、<10>に記載の成型品の製造方法。
<12>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載の離型フィルムの前記一方の離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、
前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、
を含み、当該加熱プレス後、成型品を得るための離型フィルムの使用であって、
前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている、離型フィルムの使用。