特許第6863533号(P6863533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6863533
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】吹出しノズル
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/02 20060101AFI20210412BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20210412BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B29C55/02
   B05B1/02
   F24F9/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-555262(P2020-555262)
(86)(22)【出願日】2020年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2020037654
【審査請求日】2021年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-190269(P2019-190269)
(32)【優先日】2019年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 晃久
(72)【発明者】
【氏名】千枝 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】庄司 光希
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/115654(WO,A1)
【文献】 実開昭60−98634(JP,U)
【文献】 特開2001−204536(JP,A)
【文献】 特開平6−313603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00−55/30
B05B 1/00− 9/08
F24F 7/08−12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるフィルムに対してエアを吹き出す吹出しノズルであって、
当該吹出しノズルの内部における前記エアの吹き出し位置近傍に設けられ、前記吹出しノズルの開口部の開口面であって、前記エアを吹き出す開口面を通過する仮想面に対して傾斜し、かつ前記仮想面に対して互いに近づく態様で傾斜する傾斜面を有する内設部、
を備えることを特徴とする吹出しノズル。
【請求項2】
前記内設部から前記開口部の外部に突出し、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する突出部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の吹出しノズル。
【請求項3】
前記開口部は、互いに独立する第1〜第3の開口部からなり、
前記内設部は、
第1の開口部と第2の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第1内設部と、
第2の開口部と第3の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第2内設部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の吹出しノズル。
【請求項4】
前記内設部から前記開口部の外部に突出し、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する突出部をさらに備え、
前記突出部は、
第1の開口部と第2の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第1突出部と、
第2の開口部と第3の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第2突出部と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の吹出しノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹出しノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる延伸フィルムの製造方法として逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法が知られている。逐次二軸延伸法では、熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムをその長手方向に延伸することにより一軸延伸フィルムを得た後、得られた一軸延伸フィルムをテンターオーブンに導入して、その中で、その幅方向に延伸する。同時二軸延伸法では、熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムをテンターオーブンに導入して、オーブン内で、その長手方向およびその幅方向に同時に延伸する。
【0003】
熱可塑性樹脂からなる延伸フィルムは、包装用途をはじめとして、各種工業材料用途などに広く用いられている。中でも、ポリエステル、ポリオレフィンやポリアミド樹脂の逐次二軸延伸フィルムは、その優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性等により、未延伸フィルムでは使用に耐えない用途に広く使用され、需要量も増加している。
【0004】
熱可塑性樹脂からなる延伸フィルムを製造するためのテンターオーブンの問題点として、テンターオーブンを構成する室でエアの循環が完結せず、設定温度の異なるエアが隣接する室へ流れ込んだり、テンターオーブンの室外から外気がオーブン内へ流れ込んだり、テンターオーブンの室内のエアがオーブンの外に吹き出したりする現象がある。これらの現象はいずれもフィルムの走行方向にエアが流れる現象であり、このようなエアの流れは、MD(Machine Direction)流と呼ばれている。MD流は、フィルムが走行する際の随伴気流や、テンターオーブン内へ供給される加温されたエアの給気量とテンターオーブン内から排出されるエアの排気量とのずれ等に起因して発生する。
【0005】
MD流が発生すると、室外から流れ込んだ異なる温度のエアがフィルムの近傍を流れながら、室内の加熱エアと混ざるため、フィルムを加熱する効率にムラが生じ、フィルムに大きな温度ムラが生じる。テンターオーブンでは、フィルムを所望の温度まで昇温する予熱工程、フィルムを所望の幅まで拡幅する延伸工程、フィルムを所望の温度で熱処理する熱固定工程、およびフィルムを所望の温度まで冷却する冷却工程の少なくとも1つの工程が行われる。これらのいずれかの工程でフィルムに温度ムラが生じると、フィルムの厚みムラおよび特性ムラの原因にもなり、製品の品質が低下する。製品の品質が低下する以外にも、テンターオーブン内でフィルム破れが発生し、生産性が低下することがある。
【0006】
MD流により、テンターオーブンの室外からエアが流入したり、室内のエアがテンターオーブンの室外に吹き出したりすることを防ぐ技術として、フィルムの搬送方向のオーブンの前段に設けられる吹出しノズルがフィルム面に向けてエアを吹き当てて、エアの流れを遮断する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/115654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、延伸フィルムの製造装置では、フィルムと吹出しノズルとを離して設けることが、装置構成上好ましい。しかしながら、フィルムと吹出しノズルとの間の距離を大きくすると、吹出しノズルから吹き出すエアの風圧が低下して、MD流を遮断することが出来ず、テンターオーブンの室外からエアが流入したり、室内のエアがテンターオーブンの室外に吹き出したりすることで、フィルム近傍やテンターオーブン内の温度ムラが大きくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フィルムとの間の距離を大きくしても温度ムラを抑制することができる吹出しノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明にかかる吹出しノズルは、搬送されるフィルムに対してエアを吹き出す吹出しノズルであって、当該吹出しノズルの内部における前記エアの吹き出し位置近傍に設けられ、前記吹出しノズルの開口部の開口面であって、前記エアを吹き出す開口面を通過する仮想面に対して傾斜し、かつ前記仮想面に対して互いに近づく態様で傾斜する傾斜面を有する内設部、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる吹出しノズルは、上記の発明において、前記内設部から前記開口部の外部に突出し、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する突出部、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる吹出しノズルは、上記の発明において、前記開口部は、互いに独立する第1〜第3の開口部からなり、前記内設部は、第1の開口部と第2の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第1内設部と、第2の開口部と第3の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第2内設部と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる吹出しノズルは、上記の発明において、前記内設部から前記開口部の外部に突出し、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する突出部をさらに備え、前記突出部は、第1の開口部と第2の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第1突出部と、第2の開口部と第3の開口部との間に設けられ、前記仮想面に対して傾斜する傾斜面を有する第2突出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルムとの間の距離を大きくしても温度ムラを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る吹出しノズルを備えるフィルム製造装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、図1に示すA−A線断面に対応するフィルム製造装置の断面図である。
図3図3は、図2に示すB−B線断面に対応する吹出しノズルの断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の変形例1に係る吹出しノズルの構成を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の変形例2に係る吹出しノズルの構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の変形例3に係る吹出しノズルの構成を示す図である。
図7図7は、比較例に係る吹出しノズルの構成を示す図である。
図8図8は、解析例2で用いた数値解析モデルについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る吹出しノズルを備えるフィルム製造装置の概略構成を示す図である。図2は、図1に示すA−A線断面に対応するフィルム製造装置の断面図である。図1及び図2に示すフィルム製造装置1は、気流制御装置2と、テンターオーブン3とを備える。フィルム製造装置1は、逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法を採用する延伸フィルムの製造装置であり、熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムをテンターオーブン3に導入して、テンターオーブン3内で、未延伸のフィルム100の長手方向及び幅方向の少なくとも一方を延伸する。なお、図1において、フィルム100の長手方向は、フィルムの搬送方向FRであり、図の左右方向に相当する。フィルム100の幅方向(フィルム幅方向)は、フィルムの長手方向及び厚さ方向(紙面上下方向)と直交する方向であり、紙面と直交する方向に相当する。
【0018】
気流制御装置2は、フィルム100の搬送方向に対してテンターオーブン3の前段に設けられる。延伸対象のフィルム100は、気流制御装置を通過後、テンターオーブン3内に導入される。気流制御装置2は、連結部4を介してテンターオーブン3に接続する。
本発明の気流制御装置2に適用できるフィルムには特に限定はなく、テンターオーブン3で加熱および延伸される公知の熱可塑性樹脂フィルムが適用できる。
【0019】
テンターオーブン3は、内部がフィルム100を延伸させる際に設定される温度に加熱される。テンターオーブン3は、一端が連結部4に接続し、他端には外部へフィルム100を搬出するための開口が形成される。
【0020】
気流制御装置2は、フィルム100の一方の面(図1では上面)に対向して設けられる第1吹出しノズル21と、フィルム100の他方の面(図1では下面)に対向して設けられる第2吹出しノズル22とを有する。以下、「第1吹出しノズル21」を単に「吹出しノズル21」という。また、「第2吹出しノズル22」を単に「吹出しノズル22」という。吹出しノズル21、22は、フィルム100の向かい合う面に対してエアを吹き出す。吹出しノズル21、22は、箱状体20に収容される。箱状体20は、フィルム100の搬送方向の一端が連結部4に連結し、他端には外部からフィルム100を搬入するための開口が形成される。対向する吹出しノズルの数は1対でも効果があるが、複数対あるとさらに効果が高まる。
【0021】
気流制御装置2には、吹出しノズル21、22へのエアの供給源として、ブロアB1、B2と、熱交換器H1、H2と、排気機構E1、E2とが設けられる。ブロアB1は、外部のエアを吸気して吹き出す。熱交換器H1は、ブロアB1が吹き出したエアを加熱する。排気機構E1は、熱交換器H1において加熱されたエアを収容して、ブロアB1に送り込む。ブロアB2、熱交換器H2及び排気機構E2は、上述したブロアB1、熱交換器H1及び排気機構E1とそれぞれ同様の機能を有する。
【0022】
ブロアB1と排気機構E1とはダクトD11によって接続される。ブロアB1と熱交換器H1とはダクトD12によって接続される。熱交換器H1と吹出しノズル21とはダクトD13によって接続される。気流制御装置2では、ブロアB1から吹き出すエアが熱交換器H1において加熱され、加熱されたエアがダクトD13によって吹出しノズル21に送られる。吹出しノズル21は、ダクトD13を経て導入されたエアを吹き出す。また、排気機構E1には、吹き出しノズル21が吹き出したエアやMD流に乗ったエアを吸込む排気部E11、E12が形成される。排気部E11、E12は、排気機構E1内にエアを吸引するための開口が設けられ、その開口は孔形状やスリット形状で形成されている。本実施の形態では、フィルム100の長手方向(搬送方向FR)において、吹出しノズル21の前段に排気部E11が形成され、後段に排気部E12が形成される。
【0023】
また、ブロアB2と排気機構E2とはダクトD21によって接続される。ブロアB2と熱交換器H2とはダクトD22によって接続される。熱交換器H2と吹出しノズル22とはダクトD23によって接続される。気流制御装置2では、ブロアB2から吹き出すエアが熱交換器H2において加熱され、加熱されたエアがダクトD23によって吹出しノズル22に送られる。吹出しノズル22は、ダクトD23を経て導入されたエアを吹き出す。また、排気機構E2には、吹き出しノズル22が吹き出したエアやMD流に乗ったエアを吸込む排気部E21、E22が形成される。排気部E21、E22は、排気機構E2内にエアを吸引するための開口が設けられ、その開口は孔形状やスリット形状で形成されている。本実施の形態では、フィルム100の長手方向(搬送方向FR)において、吹出しノズル22の前段に排気部E21が形成され、後段に排気部E22が形成される。
【0024】
なお、ダクトD13、D23に給気ダンパ(図示略)を設置し、この給気ダンパの開度を変更することによって、吹出しエア量を調節してもよい。給気ダンパは、バルブ、弁、オリフィスなどに代えてもよい。吹出しノズル21、22からの吹出しエア量を調節することによって、エアの加熱に必要なエネルギー使用量を削減することができる。
【0025】
また、ダクトD11、D21に排気ダンパ(図示略)を設置し、この排気ダンパの開度を変更することによって、排気部E11、E12、E21、E22による吸引エア量を調節してもよい。排気ダンパは、バルブ、弁、オリフィスなどに代えてもよい。排気部E11、E12、E21、E22から吸引するエア量を調節することによって、熱的損失を削減することができる。
【0026】
一般に、フィルム100の生産品種に応じて搬送するフィルム100の幅を変更するため、テンターオーブン3においてフィルム100の両端を把持するクリップ及びクリップレール(図示略)を覆うレールカバー51、52の間の距離を、幅方向に広げたり狭めたりする。レールカバー51、52と吹出しノズル21、22とは、互いに干渉しない位置に設けられる。例えば、フィルム100を介して対向して配置された吹出しノズル21、22の間の距離がレールカバー51、52の高さ(フィルム100の厚さ方向の距離)に比べて小さい場合、レールカバー51、52と吹出しノズル21、22とが互いに干渉しないように、フィルム100の幅に応じて吹出ノズル21、22の幅を広げたり狭めたりできる機構を設けることが好ましい。フィルム100の幅が広がった場合、レールカバー51、52との接触や干渉を避けながら、吹出しノズル21、22のフィルム幅方向の長さを広げることで、フィルム幅方向に延在するエアカーテンを形成することができる。
【0027】
続いて、吹出しノズルの構成を説明する。図3は、図2に示すB−B線断面に対応する吹出しノズルの断面図である。図3では、吹出しノズル22の構成を例に説明するが、吹出しノズル21についても同様の構成を有する。吹出しノズル22は、ダクトD23からエアが供給される均圧室221と、均圧室221から延び、エアを外部に吹き出す吹出し部222と、吹出し部222内に設けられ、吹出し部222から吹き出されるエアの流路を分ける分流部223とを有する。
【0028】
吹出し部222には、均圧室221に連なる側と反対側に、エアを吹き出す開口部222aが形成される。開口部222aは、フィルム幅方向に延びるスリットで形成される(図2参照)。なお、エア吹出し開口部222aはスリット形状でなく、フィルム幅方向に複数の孔形状が並んだものでもよい。開口部222aが形成される吹出し部222の端面は、フィルム100の搬送方向FRと平行である。吹出し部222は、開口部222a側の側面の一部が、フィルム100の搬送方向FRに対して傾斜する傾斜面222b、222cが形成される。この傾斜面222b、222cは、開口部222aの開口面に向かって互いに近づく態様で傾斜している。なお、吹出し部222は、傾斜面222b、222cを有しない、中空角柱状をなすものであってもよい。
【0029】
分流部223は、開口部222a側の端部が、開口部222aに向かって互いに傾斜する傾斜面を有する。具体的に、分流部223は、均圧室221から角柱状をなして延びる基部223aと、吹出し部222内の、エアの吹き出し位置近傍に設けられ、基部223aから開口部222a側に延びる内設部223bとを有する。内設部223bには、開口部222aの開口面を通過し、かつこの開口面と平行な仮想面Sに対して傾斜する傾斜面223c、223dが形成される。この傾斜面223c、223dは、開口部222aに向かって互いに近づく態様で傾斜している。分流部223は、図3に示す断面において、外縁が五角形状をなしている。仮想面Sは、搬送方向FRと平行である。本実施の形態において、傾斜面223cは傾斜面222bと、傾斜面223dは傾斜面222cとそれぞれ平行としたが、吹出し部222の傾斜面と、分流部223の傾斜面とは、平行である必要はない。
【0030】
ここで、吹出し部222の先端から、フィルム100までの距離をL、分流部223の傾斜面(図3では傾斜面223d)と仮想面Sとのなす角度をθ1(>0)、フィルム搬送方向FRにおける開口部222aと分流部223との間の距離であって、仮想面S上の距離をtとする。距離L、角度θ1および距離tは、エアのよどみ点P1における設定圧力に基づいてそれぞれ決定される。設定圧力は、例えば60Paに設定されるが、MD流を遮断できる圧力以上に設定すればよく、60Paには限定されない。なお、よどみ点P1は、フィルム100における、吹出し部222から吹き出されるエアによって生じるよどみ位置に相当する。
【0031】
続いて、吹出しノズル21、22から噴き出されたエアの流れ方を、吹出しノズル22を例に説明をする。ダクトD23を介して吹出しノズル22に供給されたエア(熱風)は、開口部222aからフィルム100に向けて吹き出す。開口部222aから吹き出されたエアは、分流部223によって、吹出し方向が制御される。搬送方向FRの上流側から吹き出すエアは、分流部233によってフィルム100に対して下流側に傾斜して吹き出される。これに対し、搬送方向FRの下流側から吹き出すエアは、分流部233によってフィルム100に対して上流側に傾斜して吹き出される。上流側および下流側から吹き出される各エアは、互いに交差する方向に進み、吹出しノズル22とフィルム100との間で合流する。このエアの合流によって風圧が増大し、単位時間当たりの風量が大きくなる。合流後、エアは、フィルム100の搬送方向FRに対して直交する方向に進み、フィルム100に当たる。その後、エアは、フィルム100の搬送方向上流側と下流側に流れる向きを変えて、箱状体20に流れ込むエアと衝突してリターンエアとなり、排気部E21、E22にそれぞれ吸引される(図1参照)。吹き出しノズル21から吹き出されたエアも同様の流れ方で、排気部E11、E12に吸引される。
【0032】
この際、フィルム搬送方向に発生する随伴流とともに、装置外からフィルム100の下面を通って流入するエアが、気流制御装置2のフィルム搬入口を通って箱状体20内に流れ込んでくると、吹出しノズル22から吹き出されるエアによって形成されるエアカーテンに遮られて流れの向きを変え、リターンエアと共に排気部E21に吸引される。このようにして、装置外から流入するエアを排気部E21が吸引することによって、気流制御装置2の外部から流入するエアがテンターオーブン3に流れ込み、テンターオーブン3内で温度ムラが発生することを防止できる。装置外からフィルム100の上面を通って、フィルム搬入口から箱状体20内に流れ込んでくるエアについても同様である。
【0033】
また、テンターオーブン3から流入するエアが、フィルム100の下面側から気流制御装置2の搬出口(連結部4)を通って箱状体20内に流れ込んでくると、吹出しノズル22から吹き出されるエアによって形成されるエアカーテンに遮られて流れの向きを変え、リターンエアと共に排気部E22に吸引される。このようにして、テンターオーブン3から流入するエアを排気部E22が吸引することによって、テンターオーブン3の室内で加熱されたエアが、テンターオーブン3の室外へ吹き出し、テンターオーブン3周囲の作業エリアの温度を上昇させ、テンターオーブン3周囲の作業環境を悪化することを防止できる。さらに、フィルム100からの昇華物がテンターオーブン3の室外で析出し、フィルム100の表面に付着することで、異物欠点として生産性を低下させることを防止できる。テンターオーブン3からフィルム100の上面を通って箱状体20内に流れ込んでくるエアについても同様である。
【0034】
これまで説明したように、吹出しノズル21、22は、フィルム100の各表面に対してそれぞれ対向するように配置されている。この際、吹出しノズルを、フィルム100の一方の面側のみに設置した場合、吹出しノズルが設置されていない側において、MD流が流れ易くなり、吹出しノズルの気流分断効果が低減する。熱可塑性樹脂フィルムは、布帛のような材料とは異なって、エアを透過し難い。そのため、フィルム100に一方の面側のみからエアを吹き付ける場合、エアの風圧によりフィルム100が吹き上がり、もしくはフィルム100が吹き下がり、フィルム100のバタツキが大きくなる。
【0035】
フィルム100のバタツキを防止するためには、フィルム100の一方の面側と他方の面側に吹出しズルをそれぞれ設置し、一方の面側の吹出しノズルの開口部と他方の面側の吹出しノズルの開口部とを、フィルム100を介して互いに対向させる。開口部が互いに対向していることで、フィルム100の同じ位置を一方の面側と他方の面側から押しつける効果が生じるので、フィルムがバタつくのを防止できる。ここで、開口部が互いに対向するとは、一方の面側の吹出しノズルの開口部をフィルム100に投影したときの投影領域と、他方の面側の吹出しノズルの開口部をフィルム100に投影したときの投影領域とが少なくとも一部において重なる状態をいう。この際、開口部の大きさが同じである場合に、双方の投影領域が完全に重なる状態にあることがより好ましい。
【0036】
気流制御装置2は、テンターオーブン3へのフィルム100の搬入口と、テンターオーブン3の室外との間の気流を分断し、気流制御するための装置である。そのため、テンターオーブン3のフィルム100の搬送方向の上流側に隣り合って気流制御装置2を設置した場合、吹出しノズルから噴出するエア温度は、テンターオーブン3の搬入口におけるテンターオーブン3室外のエア温度と同等か、このエア温度より高いことが好ましい。このことにより、フィルム100を過剰に冷却し、テンターオーブン内の予熱工程に不具合が生じることを防ぐ。また、テンターオーブン3のフィルム100の搬送方向FRの下流側に隣り合って気流制御装置2を設置した場合、吹出しノズルから吹き出すエア温度は、テンターオーブン3の搬出口におけるテンターオーブン3室外のエア温度と同等か、このエア温度より高いことが好ましい。このことにより、フィルム100を過剰に冷却し、テンターオーブン3の下流工程に不具合が生じることを防ぐ。また、吹出しノズルから吹き出すエアの温度は、フィルム100のガラス転移点以下であることが好ましい。このことにより、熱可塑性樹脂からなるフィルム100の結晶構造が変化することを抑制できる。
【0037】
以上説明した実施の形態では、エアを吹き出す吹出しノズル21、22において、吹出し部の内部に、傾斜面を有する分流部を設けて吹出し部から吹き出すエアを分け、吹出しノズルとフィルム100との間で合流させてフィルム100にエアを当てるようにした。吹出しノズル21、22が吹き出すエアは、合流によって風圧が増し、MD流を遮断するためのエアカーテンを形成する。本実施の形態によれば、合流によって風圧を増大させたエアをフィルム100に当てるため、フィルム100と吹出しノズルとの間の距離を大きくしても温度ムラを抑制することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態において、分流部223が基部223aを有しない構成としてもよい。この場合、分流部(内設部223b)は、吹出しノズル22のフィルム幅方向と交差する内壁に固定される。
【0039】
(変形例1)
次に、実施の形態の変形例1について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態の変形例1に係る吹出しノズルの構成を示す図である。変形例1に係るフィルム製造装置の構成は、上述したフィルム製造装置1において、吹出しノズルの構成を変えた以外は同じである。上述した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。以下、吹出しノズル22に代わる吹出しノズル22Aの構成を説明するが、吹出しノズル21に代わる吹出しノズルの構成も同じである。
【0040】
吹出しノズル22Aは、ダクトD23からエアが供給される均圧室221と、均圧室221から延び、エアを外部に吹き出す吹出し部222と、吹出し部222内に設けられ、吹出し部222から吹き出されるエアの流路を分ける分流部224とを有する。
【0041】
分流部224は、開口部222a側の端部が、開口部222aに向かって互いに傾斜する傾斜面を有する。具体的に、分流部224は、均圧室221から角柱状に延びる基部224aと、吹出し部222内に設けられ、基部224aから開口部222a側に延びる内設部224bとを有する。内設部224bには、フィルム100の搬送方向に対して傾斜する傾斜面224c、224dと、搬送方向FRの一端が傾斜面224cに連なるとともに、他端が傾斜面224dに連なる平面部224eとが形成される。傾斜面224c、224dは、開口部222aに向かって互いに近づく態様で傾斜している。平面部224eは、搬送方向FRと平行であり、開口部222aを通過する仮想面S上に位置している。分流部224は、図4に示す断面において、外縁が台形状をなしている。なお、平面部224eは仮想面Sと略平行な面とすることが好ましいが、傾斜面224cおよび傾斜面224dから延び、傾斜面224cおよび傾斜面224dを繋ぐ曲面で形成されていてもよい。
【0042】
ここで、平面部224eの搬送方向FRの距離をWとする。距離L、角度θ1、距離tおよび距離Wは、エアのよどみ点P1(図3参照)における設定圧力に基づいてそれぞれ決定される。
【0043】
以上説明した変形例1においても、傾斜面を有する分流部224を設けて吹出し部222から吹き出すエアを分け、吹出しノズル22Aとフィルム100との間で合流させてフィルム100にエアを当てるようにした。本変形例1によれば、合流によって風圧を増大させたエアをフィルム100に当てるため、フィルム100と吹出しノズルとの間の距離を大きくしても温度ムラを抑制することができる。
【0044】
なお、上述した変形例1において、分流部224が基部224aを有しない構成としてもよい。この場合、分流部(内設部224b)は、吹出しノズル22Aのフィルム幅方向と交差する内壁に固定されるものであってもよい。
【0045】
(変形例2)
次に、実施の形態の変形例2について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態の変形例2に係る吹出しノズルの構成を示す図である。変形例2に係るフィルム製造装置の構成は、上述したフィルム製造装置1において、吹出しノズルの構成を変えた以外は同じである。上述した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。以下、吹出しノズル22に代わる吹出しノズル22Bの構成を説明するが、吹出しノズル21に代わる吹出しノズルの構成も同じである。
【0046】
吹出しノズル22Bは、ダクトD23からエアが供給される均圧室221と、均圧室221から延び、エアを外部に吹き出す吹出し部222と、吹出し部222から吹き出されるエアの流路を分ける分流部225とを有する。
【0047】
分流部225は、吹出し部222内から一部が突出し、均圧室221側と反対側に向かって互いに傾斜する傾斜面を有する。具体的に、分流部225は、吹出し部222内に設けられてエアの流れを分ける内部分流部225aと、吹出し部222から突出して設けられ、エアを分流する外部分流部225bとを有する。分流部225は、図5に示す断面において、外縁が五角形状をなしている。
【0048】
内部分流部225aは、均圧室221から延びる基部225cと、吹出し部222内に設けられ、基部225cから開口部222a側に延びる内設部225dとを有する。内設部225dには、仮想面Sに対して傾斜する傾斜面225e、225fと、搬送方向FRの一端が傾斜面225eに連なるとともに、他端が傾斜面225fに連なり、外部分流部225bに接続する接続部225gとが形成される。傾斜面225e、225fは、開口部222aに向かって互いに近づく態様で傾斜している。接続部225gは、搬送方向FRと平行であり、開口部222aを通過する仮想面S上に位置している。
【0049】
外部分流部225bは、フィルム幅方向に延びる三角柱状をなし、仮想面Sに対して傾斜する二つの傾斜面を有する。なお、外部分流部225bの先端は仮想面Sと略平行な平面であってもよく、曲面であってもよい。図5において、外部分流部225bの各傾斜面は、仮想面Sに対して、傾斜面225e、225fと同じ角度で傾斜しているが、異なる角度にしてもよい。外部分流部225bは、突出部に相当する。
【0050】
ここで、接続部225gの搬送方向FRの距離をW、内部分流部225aの傾斜面(図5では傾斜面225f)と仮想面Sとのなす角度をθ1(>0)、外部分流部225bの傾斜面と仮想面Sとのなす角度をθ2(>0)とする。距離L、角度θ1、θ2、距離tおよび距離Wは、エアのよどみ点P1(図3参照)における設定圧力に基づいてそれぞれ決定される。なお、変形例2における距離Lは、外部分流部225bの先端からフィルム100までの距離となる。
【0051】
以上説明した変形例2においても、傾斜面を有する分流部225を設けて吹出し部222から吹き出すエアを分け、吹出しノズルとフィルム100との間で合流させてフィルム100にエアを当てるようにした。本変形例2によれば、合流によって風圧を増大させたエアをフィルム100に当てるため、フィルム100と吹出しノズルとの間の距離を大きくしても温度ムラを抑制することができる。
【0052】
なお、変形例2において、外部分流部225bは、接続部225gに連なる例を説明したが、吹出し部222に、フィルム幅方向に延びる二つの開口部が形成され、この開口部間において吹出し部222の外表面に支持されるものであってもよい。また、内部分流部225aにおいても、開口部間において吹出し部222の内壁に支持されるものであってもよい。
【0053】
また、変形例2において、内部分流部225aおよび外部分流部225bは、一体的に形成されるものであってもよい。
【0054】
(変形例3)
次に、実施の形態の変形例3について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の実施の形態の変形例3に係る吹出しノズルの構成を示す図である。変形例3に係るフィルム製造装置の構成は、上述したフィルム製造装置1において、吹出しノズルの構成を変えた以外は同じである。上述した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付す。以下、吹出しノズル22に代わる吹出しノズル22Cの構成を説明するが、吹出しノズル21に代わる吹出しノズルの構成も同じである。
【0055】
吹出しノズル22Cは、ダクトD23からエアが供給される均圧室221と、均圧室221から延び、エアを外部に吹き出す吹出し部222と、吹出し部222から吹き出されるエアの流路を分ける分流部226とを有する。
【0056】
吹出しノズル22Cの吹出し部222には、三つの開口部(開口部222d〜222f)が形成される。開口部222d〜222fは、ともにフィルム幅方向に延びる孔形状をなす。開口部222d〜222fは、搬送方向FRの上流側から順に開口部222d、222e、222fが並ぶ。
【0057】
分流部226は、吹出し部222内から一部が突出し、均圧室221側と反対側に向かって互いに傾斜する傾斜面を有する。具体的に、分流部226は、吹出し部222内に設けられる内設部226aと、吹出し部222から突出する突出部226bとを有する。内設部226aは、開口部222dと開口部222eとの間、および開口部222eと開口部222fとの間の吹出し部222の内壁に支持される。また、突出部226bは、開口部222dと開口部222eとの間、および開口部222eと開口部222fとの間の吹出し部222の外表面に支持される。
【0058】
内設部226aは、搬送方向FRに対して上流側に設けられる第1内設部226cと、下流側に設けられる第2内設部226dとを有する。
【0059】
突出部226bは、搬送方向FRに対して上流側に設けられる第1突出部226eと、下流側に設けられる第2突出部226fとを有する。
【0060】
第1内設部226cには、開口部222d側に傾斜面226gが形成される。
第2内設部226dには、開口部222f側に傾斜面226hが形成される。
傾斜面226g、226hは、ともに仮想面Sに対して傾斜し、開口部222aに向かって互いに近づく態様で傾斜する。
【0061】
第1突出部226eには、傾斜面226gに連なる傾斜面226iが形成される。
第2突出部226fには、傾斜面226hに連なる傾斜面226jが形成される。
傾斜面226i、226jは、ともに仮想面Sに対して傾斜し、傾斜面226iは開口部222dに向かって、傾斜面226jは開口部222fに向かって、互いに離れる態様で傾斜する。換言すれば、傾斜面226i、226jは、内設部226a側と反対側の端部(先端)に向かって互いに近づく態様で傾斜する。なお、第1突出部226eや第2突出部226fの先端は仮想面Sと略平行であってもよく、曲面であってもよい。図6において、傾斜面226iは、仮想面Sに対する角度が、傾斜面226gの角度と異なっているが、同じ角度にしてもよい。傾斜面226jの傾斜角度と傾斜面226hの傾斜角度についても同様である。
【0062】
内設部226aおよび突出部226bにおいて、開口部222d〜222fのうち、搬送方向FRの中央に位置する開口部222e側の壁面は、搬送方向FRに対して直交している。なお、この壁面は、搬送方向FRに対して傾斜していてもよいし、内設部226aの壁面と、突出部226bの壁面との傾斜角度が、互いに異なっていてもよい。
【0063】
ここで、搬送方向FRにおける開口部222d〜222fの距離をそれぞれt1〜t3、開口部222dと開口部222eとの間の距離をW1、開口部222eと開口部222fとの間の距離をW2、内設部226aの傾斜面(図6では傾斜面226h)と仮想面Sとのなす角度をθ1(>0)、突出部226bの傾斜面(図6では傾斜面226j)と仮想面Sとのなす角度をθ2(>0)とする。距離L、角度θ1、θ2、距離t1〜t3および距離W1、W2は、エアのよどみ点P1(図3参照)における設定圧力に基づいてそれぞれ決定される。なお、変形例3における距離Lは、突出部226bの先端からフィルム100までの距離となる。距離t1〜t3は全て同じ長さでも異なっていてもよいが、距離t1と距離t3とは同じ長さであるのが好ましい。
【0064】
以上説明した変形例3においても、傾斜面を有する分流部226を設けて吹出し部222から吹き出すエアを分け、吹出しノズルとフィルム100との間で合流させてフィルム100にエアを当てるようにした。本変形例3によれば、合流によって風圧を増大させたエアをフィルム100に当てるため、フィルム100と吹出しノズルとの間の距離を大きくしても温度ムラを抑制することができる。
【0065】
なお、上述した変形例3において、突出部226bを有しない構成としてもよい。この場合、分流部226は、内設部226a(第1内設部226cおよび第2内設部226d)のみによって構成される。
【0066】
なお、上述した実施の形態や変形例1〜3では、分流部に形成される傾斜面が、平面状をなすものとして説明したが、これに限らず、例えば曲面状や波面状をなしていてもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって、さらに本発明の詳細を説明する。なお、本実施例により本発明が限定して解釈されるわけではない。
[解析1]
以下の実施例では、上述した実施の形態の各構成例について、吹出しノズルのパラメータを設定し、風圧(風量)の解析を行った。解析は、上述したよどみ点において風圧が60Paとなったときの風量を求めた。実施例では、求めた風量が比較対象と比較して小さい場合に、吹出しノズルとして、風量増大の効果が認められれば○、認められなければ×と判定した。
【0068】
(実施例1)
図3に示す吹出しノズル22において、距離tを12mm、距離Lを150mm、角度θ1を70degとして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【表1】
【0069】
(実施例2)
図4に示す吹出しノズル22Aにおいて、距離tを5mm、距離Lを150mm、距離Wを2mm、角度θ1を70degとして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
距離tを12mmにした以外は実施例2と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
図5に示す吹出しノズル22Bにおいて、距離tを12mm、距離Lを150mm、距離Wを5mm、角度θ1を70deg、角度θ2を65degとして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
距離Wを10mmにした以外は実施例4と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
図7に示す吹出しノズル300を用いて解析を行った。図7は、比較例に係る吹出しノズルの構成を示す図である。吹出しノズル300は、例えばダクトD23からエアが供給される均圧室301と、均圧室301から延び、開口部302aから外部にエアを吹き出す吹出し部302と、吹出し部302内に設けられ、吹出し部302から吹き出されるエアの流路を分ける分流部303とを有する。分流部303は角柱状をなして延びる。吹出しノズル300では、吹出し部302の先端からフィルム100までの距離をL、吹出し部302の開口面(端面)を通過し、かつこの開口面と平行な平面をS300、分流部303と仮想面S300とのなす角度をθ1(>0)、フィルム搬送方向FRにおける開口部302aと分流部303との間の距離であって、仮想面S300上の距離をt1とする。
比較例1では、吹出しノズル300において、距離tを5mm、距離Lを150mm、距離Wを2mm、角度θ1を90degとして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
距離tを12mmにした以外は比較例1と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0075】
(比較例3)
距離Lを50mmにした以外は比較例2と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表1に示す。
【0076】
比較例1では、よどみ点の風圧を60Paにするのに9.0m3/分/mの風量を要する。これに対し、距離t、Lが同じ実施例2では、8.5m3/分/mとなった。
また、比較例2では、よどみ点の風圧を60Paにするのに19.2m3/分/mの風量を要する。これに対し、距離t、Lが同じ実施例1、3〜5では、それぞれ19.2m3/分/mよりも小さい風量となった。なお、比較例3では、よどみ点の風圧が60Paに達しないという解析結果となった。
【0077】
(実施例6)
図6に示す吹出しノズル22Cにおいて、距離t1およびt3を8mm、距離t2を8mm、距離Lを150mm、角度θ1を62deg、角度θ2を45degとして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【表2】
【0078】
(実施例7)
距離Wを15mmにした以外は実施例6と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0079】
(実施例8)
角度θ1を45degにした以外は実施例7と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0080】
(実施例9)
角度θ1を30degにした以外は実施例7と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0081】
(実施例10)
角度θ1を80degにした以外は実施例7と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0082】
(実施例11)
角度θ2を30degにした以外は実施例7と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0083】
(実施例12)
角度θ2を80degにした以外は実施例7と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0084】
(実施例13)
角度θ1を80deg、角度θ2を10degにした以外は実施例6と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0085】
(比較例4)
分流部226を設けない構成とし、それ以外のパラメータは実施例6と同じにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0086】
(比較例5)
距離Wを15mmにした以外は比較例4と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0087】
(比較例6)
分流部226の突出部226bを設けて角度θ2を45degにした以外は比較例4と同じパラメータにして解析した。各パラメータおよび解析結果を表2に示す。
【0088】
実施例6〜13は、よどみ点の風圧を60Paにするのに10.3〜17.2m3/分/mの風量を要する。これに対し、比較例4、5は、風量が不安定で風量が求められず、比較例6も19.7m3/分/mの風量を要するという解析結果となった。
【0089】
[解析2]
解析2では、上記解析1とは異なる数値解析モデルを作成し、このモデルで数値解析を行ってMD流の遮断性能を評価した。
図8は、本解析で用いた数値解析モデルを説明する図である。図8に示す装置モデル200は、吹出しノズル22を備える気流制御装置2(図1等参照)を構成する室をモデル化したものであり、フィルム搬送方向FRに平行な縦断面を示す。気流制御装置2の内部空間を解析する上で計算資源を節約するために、装置モデル200および外部空間61は、フィルム100を介して上下に対称な形状と仮定し、下方側の半分のみで数値解析を行った。また、MD流の遮断性能を評価するには、フィルム搬送方向FRに平行な縦断面におけるエアの流れ方を調べれば十分であるので、この面における2次元モデルで数値解析を行った。
【0090】
各構造の寸法は次の通りとした。装置モデル200はフィルム搬送方向FRの長さXを1000mm、高さHを500mmとし、内部に吹出しノズル22および排気機構E2を設置した。吹出しノズル22のフィルム搬送方向FRの寸法W3を200mmとし、フィルム100と吹出しノズル22との距離Lを150mmとした。装置モデル200のフィルム搬送方向上流側には外部空間61を配置し、フィルム搬送方向下流側にはテンターオーブン3との連結部4が配置される設定とした。外部空間61の下端からフィルム100との距離Y1は50mm、連結部4の下端からフィルム100との距離Y2は50mmとした。
【0091】
外部空間61の外部境界62と連結部4の内部境界63を圧力境界とし、境界条件として、外部境界62に大気圧(0.1MPa)を、内部境界63に−5Paを設定した。また、外部空間61の温度を25℃、連結部4につながるテンターオーブンの温度を125℃に設定し、空気の物性は大気圧で乾燥空気を想定した。吹出しノズル22には、上述したよどみ点において風圧が60Paとなった風量が流入する境界条件を設定し、吹出し温度は60℃とした。排気部E21、E22には、吹出しノズルから吹き出される風量と等量の風量が流出する境界条件を設定した。
【0092】
気流制御装置2の効果は、図8に示す装置モデル200と外部空間61との間の評価面64における平均温度、および装置モデル200と連結部4との間の評価面65における平均温度をそれぞれ指標とした。
【0093】
なお、この条件において、装置モデル200の給排気を止めると、外部空間61から装置モデル200を通って、連結部4まで平均流速2.0m/sでエアが流れ、テンターオーブン3に25℃の冷気が流入して温度ムラが発生した。
【0094】
(実施例14)
装置モデル200の吹出しノズル22に、実施例1で用いた吹出しノズル22を配置して解析した。この吹出しノズル22は距離tが12mm、角度θ1が70degであった。解析の結果、評価面64における平均温度は25℃、評価面65における平均温度は125℃であった。すなわち、装置モデル200から外部空間61に熱気が漏れ出すことや、連結部4からテンターオーブン3内に冷気が流入することを防止できた。そのため、気流制御装置2により、テンターオーブン3での温度ムラの発生を抑制できると推定できた。
【0095】
(実施例15)
装置モデル200の吹出しノズル22に、実施例8で用いた吹出しノズル22Cを配置して解析した。この吹出しノズル22は距離t1〜t3が8mm、角度θ1が45deg、角度θ2が45degであった。解析の結果、評価面64における平均温度は25℃、評価面65における平均温度は125℃であった。すなわち、装置モデル200から外部空間61に熱気が漏れ出すことや、連結部4からテンターオーブン3内に冷気が流入することを防止できた。そのため、気流制御装置2により、テンターオーブン3での温度ムラの発生を抑制できると推定できた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の吹出しノズルは、フィルム製造設備のテンターオーブンでの加熱・延伸工程に好ましく適用できるが、適用範囲はこれに限られない。
【符号の説明】
【0097】
1 フィルム製造装置
2 気流制御装置
3 テンターオーブン
4 連結部
21 第1吹出しノズル(吹出しノズル)
22、22A、22B、22C 第2吹出しノズル(吹出しノズル)
51、52 レールカバー
61 外部空間
62 外部境界
63 内部境界
64 外部空間側の評価面
65 連結部側の評価面
100 フィルム
221 均圧室
222 吹出し部
223、224、225、226 分流部
223a、224a、225c 基部
223b、224b、225d、226a 内設部
223c、223d、224c、224d、225e、225f、226g、226h、226i、226j 傾斜面
224e 平面部
225a 内部分流部
225b 外部分流部
225g 接続部
226b 突出部
226c 第1内設部
226d 第2内設部
226e 第1突出部
226f 第2突出部
B1、B2 ブロア
D11、D12、D13、D21、D22、D23 ダクト
E1、E2 排気機構
E11、E12、E21、E22 排気部
H1、H2 熱交換器
S 仮想面
【要約】
本発明にかかる吹出しノズルは、搬送されるフィルムに対してエアを吹き出す吹出しノズルであって、当該吹出しノズルの内部におけるエアの吹き出し位置近傍に設けられ、吹出しノズルの開口部の開口面であって、エアを吹き出す開口面を通過する仮想面に対して傾斜し、かつ仮想面に対して互いに近づく態様で傾斜する傾斜面を有する内設部、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8