特許第6863537号(P6863537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863537
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】網状構造体
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/016 20120101AFI20210412BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20210412BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20210412BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20210412BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   D04H3/016
   D04H3/011
   D04H3/007
   D04H3/147
   D04H3/16
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-557770(P2020-557770)
(86)(22)【出願日】2019年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2019046342
(87)【国際公開番号】WO2020111110
(87)【国際公開日】20200604
【審査請求日】2020年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2018-223515(P2018-223515)
(32)【優先日】2018年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-223516(P2018-223516)
(32)【優先日】2018年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安井 章文
(72)【発明者】
【氏名】小淵 信一
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141915(JP,A)
【文献】 特開2013−076200(JP,A)
【文献】 特開平07−238457(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/093334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F8/00−8/18
D04H1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の熱可塑性エラストマー連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造を持つ網状構造体であって、
前記熱可塑性エラストマー連続線状体がポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、70℃圧縮残留歪が35%以下、反発弾性率が10%以下である網状構造体。
【請求項2】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの反発弾性率が75%以上である請求項1に記載の網状構造体。
【請求項3】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーのショアD硬度が40以下である請求項1に記載の網状構造体。
【請求項4】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点が200℃未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載の網状構造体。
【請求項5】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーと前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの体積比が90/10〜10/90である複合構造化された前記熱可塑性エラストマー連続線状体からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の網状構造体。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマー連続線状体の複合構造がシース・コア構造およびサイド・バイ・サイド構造のいずれかの構造である請求項1〜5のいずれか1項に記載の網状構造体。
【請求項7】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、ポリエステルエーテルブロック共重合体およびポリエステルエステルブロック共重合体の少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の網状構造体。
【請求項8】
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、およびこれらの水素添加共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の網状構造体。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマー連続線状体が中空断面である請求項1〜8のいずれか1項に記載の網状構造体。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマー連続線状体が異形断面である請求項1〜9のいずれか1項に記載の網状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い振動吸収性を示すとともに耐熱耐へたり性に優れた網状構造体に関するものであり、その特性を生かして車両用座席や寝具などに用いられるクッション材に好適な網状構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2013−76200号公報)には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物とポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物で複合構造化された連続線状体からなる網状構造体が記載されている。しかしながら、その網状構造体では、振動吸収性と耐熱耐へたり性を両立した網状構造体を得ることはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−76200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い振動吸収性を示すとともに耐熱耐へたり性に優れた網状構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、三次元ランダムループ接合構造を構成する連続線状体を特定の熱可塑性エラストマーを使用し複合構造化することで、振動吸収性が高くかつ耐熱耐へたり性に優れた網状構造体が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1]繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の熱可塑性エラストマー連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造を持つ網状構造体であって、
熱可塑性エラストマー連続線状体がポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、70℃圧縮残留歪が35%以下、反発弾性率が10%以下である網状構造体。
[2]前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの反発弾性率が75%以上である上記[1]に記載の網状構造体。
[3]前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーのショアD硬度が40以下である上記[1]に記載の網状構造体。
[4]前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点が200℃未満である上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の網状構造体。
[5]前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーと前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの体積比が90/10〜10/90である複合構造化された前記熱可塑性エラストマー連続線状体からなる上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の網状構造体。
[6]前記熱可塑性エラストマー連続線状体の複合構造がシース・コア構造およびサイド・バイ・サイド構造のいずれかの構造である上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の網状構造体。
[7]前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーがポリエステルエーテルブロック共重合体およびポリエステルエステルブロック共重合体の少なくとも1種である上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の網状構造体。
[8]前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、およびこれらの水素添加共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の網状構造体。
[9]前記熱可塑性エラストマー連続線状体が中空断面である上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の網状構造体。
[10]熱可塑性エラストマー連続線状体が異形断面である上記[1]〜[9]のいずれか1つに記載の網状構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、高い振動吸収性を示すとともに耐熱耐へたり性にも優れる網状構造体に関するものであり、その特性を生かし車両用座席や寝具などに好適に使用できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の網状構造体は、繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の熱可塑性エラストマーからなる連続した線状体(本明細書では、「連続線状体」ということがある。)を曲がりくねらせ、該連続線状体同士を接触させ、接触部を融着して三次元ランダムループ接合構造を形成している。このことで、非常に大きい応力で、大変形を与えても、融着一体化した三次元ランダムループ接合構造からなる網状構造体の全体が変形して応力を吸収し、応力が解除されると熱可塑性エラストマーのゴム弾性が発現して、該網状構造体は元の形態に回復することができる。連続線状体の繊維径が0.1mm未満では、抗圧縮強力が低くなり、その結果反発力が低下する。一方、連続線状体の繊維径が3.0mmを超えると連続線状体の個々の抗圧縮性は大きいが、網状構造体を構成する連続線状体の本数が少なくなるため力の分散が悪くなる。特に、100kg/cm以上の著しく大きい圧縮力を受けた場合に、応力集中によるへたり(圧縮永久歪み)が発生し、使用箇所が制限される場合がある。繊維径は、0.3mm以上2.0mm以下が好ましく、0.4mm以上1.5mm以下がより好ましい。なお、本発明において、単一繊維径の連続線状体だけでなく、繊維径の異なる連続線状体を使用し、見掛け密度との組合せで最適な構成とすることもできる。
【0009】
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性エラストマーで複合構造化されている。そして、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、反発弾性率が75%以上あるいはショアD硬度が40以下のものを使用することが好ましい。通常、網状構造体の振動吸収性を高めるとともに耐熱耐へたり性を高める目的で、網状構造体を構成する連続線状体を複合化する。その場合、振動吸収性を高めるために、反発弾性率が5%以下のポリスチレン系熱可塑性エラストマーを使用する。さらに、耐熱耐へたり性を高めるために、(a)融点が高くかつ反発弾性率が低いポリエチレン系熱可塑性エラストマーあるいは(b)融点が高く、反発弾性率が低く、かつショアD硬度が低いポリエチレン系熱可塑性エラストマーを使用する。そして両者を適切な体積比で複合化して使用される。しかしながら、本発明者等は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの反発弾性率が75%以上あるいはショアD硬度が40以下で、融点が比較的低いものを使用した方が、振動吸収性および耐熱耐へたり性が共に高くなることを見出し、本発明に到達した。ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点は、200℃未満が好ましく、195℃以下がより好ましく、特に好ましくは190℃以下である。また、耐熱耐へたり性の点から、融点は150℃以上が好ましく、より好ましくは155℃以上、特に好ましくは160℃以上である。
【0010】
本発明で用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。ポリエステルエーテルブロック共重合体のより具体的な構成としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、またはエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などから選ばれたポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体が例示される。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、好ましくは、(1)ジカルボン酸としてテレフタル酸または/およびイソフタル酸、ジオ−ル成分として1,4−ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてポリテトラメチレングリコールからなる3元ブロック共重合体、および(2)ジカルボン酸としてテレフタル酸または/およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジオ−ル成分として1,4−ブタンジオール、ポリエステルジオールとしてポリラクトンからなる3元ブロック共重合体である。特に好ましくは、上記(1)ジカルボン酸としてテレフタル酸または/およびイソフタル酸、ジオ−ル成分として1,4−ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてポリテトラメチレングリコールからなる3元ブロック共重合体である。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことができる。
【0011】
本発明で用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、網状構造体の耐熱耐へたり性を適度に保持しながら高い振動吸収性を発現するという観点から、反発弾性率が75%以上あるいはショアD硬度が40以下のポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマーの反発弾性率が75%以上であると、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが受けた衝撃を、複合構造化した連続線状体を共に構成するポリスチレン系熱可塑性エラストマーへ伝達しやすくなる。その結果、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーにより発現する振動吸収性が高くなる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーの反発弾性率は、78%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、ショアD硬度が40以下であると、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが硬すぎず、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの衝撃吸収性を十分に活かしやすくなる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーのショアD硬度は、好ましくは38以下であり、より好ましくは36以下であり、さらに好ましくは34以下である。
【0012】
本発明で用いるポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に限定されるものではないが、網状構造体の振動吸収性を高める点から、反発弾性率が10%以下が好ましい。ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの反発弾性率が10%以下であると、充分な振動減衰性が発現し、網状構造体の振動吸収性が向上する。ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの反発弾性率は、7%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。反発弾性率が10%以下を満足するポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−イソプレン共重合体、あるいはそれらを水素添加したものが挙げられる。
【0013】
また、本発明の目的である、高い振動吸収性と優れた耐熱耐へたり性を維持できる範囲で、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリスチレン系熱可塑性エラストマー以外の第3の熱可塑性エラストマーを用いて複合構造化させることも可能である。第3の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0014】
本発明の網状構造体を構成する複合化された連続線状体のポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーの構成比は特に規定されるものではないが、好ましくはポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーの体積比で好ましくは95/5〜5/95、より好ましくは92/8〜8/92、さらに好ましくは90/10〜10/90である。前記体積比が、100/0〜95/5(95/5を除く)の場合、振動吸収性を高く保つことが難しくなる。一方、前記体積比が5/95〜0/100(5/95を除く)の場合、耐熱へたり性を高く保つことが難しくなる。
【0015】
本発明の網状構造体は、反発弾性率測定装置を用いて測定した反発弾性率が10%以下である。反発弾性率が10%を超えると、網状構造体の振動吸収性が不十分となる。好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である。
【0016】
本発明において、網状構造体の70℃圧縮残留歪は、耐熱耐へたり性を評価するための指標である。本発明の網状構造体は、70℃圧縮残留歪が35%以下であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは23%以下であり、特に好ましくは20%以下であり、最も好ましくは18%以下である。70℃圧縮残留歪が35%を超えると、必要とする耐熱耐へたり性が不足する場合がある。70℃圧縮残留歪の下限値は特に規定しないが、本発明で得られる網状構造体においては1%以上である。
【0017】
本発明の網状構造体は、25%圧縮時硬さが、好ましくは2.0kg/φ200mm以上である。25%圧縮時硬さとは、網状構造体をφ200mm径の円形状の圧縮板にて75%まで圧縮して得た応力−歪み曲線の25%圧縮時の応力である。25%圧縮時硬さが2.0kg/φ200mm未満であると、クッション性が損なわれてしまう。より好ましくは2.5kg/φ200mm以上、さらに好ましくは3.0kg/φ200mm以上である。上限は特に規定されないが、好ましくは30kg/φ200mm以下、より好ましくは25kg/φ200mm以下、さらに好ましくは20kg/φ200mm以下である。30kg/φ200mm以上であると網状構造体が硬くなりすぎ、クッション性の観点から好ましくない。
【0018】
本発明の網状構造体を構成する連続線状体には、目的に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪酸系、エポキシ系、アジピン酸エステル系、ポリエステル系の可塑剤、公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、アミン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、過酸化物などの分子調整剤、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物などの反応基を有する化合物、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料などを添加することができる。
【0019】
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピークを有するのが好ましい。融点以下に吸熱ピークを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン−2,6−ジカルボン酸などを好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%含有するものとグリコ−ル成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオールとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、より好ましくは1000以上3000以下のポリテトラメチレングリコールを10重量%以上70重量%以下、より好ましくは20重量%以上60重量%以下で共重合させた場合、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン−2,6−ジカルボン酸の含有量が多いとハ−ドセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱抗へたり性が向上する。加えて、溶融熱接着後更に融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニーリング処理すると、より耐熱抗へたり性が向上する。圧縮歪みを付与してからアニーリングすると更に耐熱抗へたり性が向上する。このような処理をした網状構造体の連続線状体は、示差走査型熱量計(DSC)で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニーリングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピークを発現しない。このことから類推するに、アニーリングにより、ハードセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、耐熱抗へたり性が向上しているのではないかとも考えられる(以下、このアニーリング処理を「疑似結晶化処理」ということがある)。
【0020】
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーで複合構造化することを特徴とするが、好ましい複合構造としては、シース・コア構造、サイド・バイ・サイド構造などが挙げられる。シース・コア構造は芯鞘型とも呼ばれ、シース(鞘)とコア(芯)の位置関係から同心型と偏心型に、また断面形状として円形断面と異型断面に分類できるが、本発明ではいずれの組合せも使用することができる。サイド・バイ・サイド構造は並列型とも呼ばれ、多成分が貼り合わされた断面構造をしている。シース・コア構造、サイド・バイ・サイド構造のいずれの構造においても、断面形状が中空または中実のいずれの構造であっても良い。
【0021】
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の複合構造がシース・コア構造の場合は、シース成分とコア成分の比率は体積比で好ましくは95/5〜5/95であり、より好ましくは92/8〜8/92であり、さらに好ましくは90/10〜10/90である。100/0〜95/5(ただし95/5を除く)または5/95〜0/100(ただし5/95を除く)となると、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーとの相補的な物性が発現しにくくなり、耐熱耐へたり性が高くかつ振動吸収性も高いという本発明の目的を達成することが難しくなる。
【0022】
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の複合構造がサイド・バイ・サイド構造の場合は、ポリエステル系可塑性エラストマーまたはポリスチレン系熱可塑性エラストマーのどちらか一方の線状体の表面の割合を多くした構造(例えば、偏芯シース・コア構造のシースにポリエステル系可塑性エラストマーを配した様な構造)とすることができる。
【0023】
本発明は、連続線状体が複合構造化されていることを特徴とする。網状構造体の反発弾性率を小さくする観点から、線状体の表面の50%以上を反発弾性率が75%以上あるいはショアD硬度が40以下のポリエステル系熱可塑性エラストマーが占める連続線状体が好ましい。中でも線状体の表面の80%以上を反発弾性率が75%以上あるいはショアD硬度が40以下のポリエステル系熱可塑性エラストマーが占める連続線状体がより好ましい。線状体の表面の100%を反発弾性率が75%以上あるいはショアD硬度が40以下のポリエステル系熱可塑性エラストマーが占める連続線状体、すなわちシース・コア構造である連続線状体が特に好ましい。
【0024】
連続線状体の断面形状は特には限定されないが、中空断面や異形断面にすることで、抗圧縮性や嵩高性を付与でき、低繊維径化したい場合には特に好ましい。抗圧縮性は用いる素材のモジュラスにより調整して、柔らかい素材では中空率や異形度を高くし初期圧縮応力の勾配を調整できるし、ややモジュラスの高い素材では中空率や異形度を低くして座り心地が良好な抗圧縮性を付与する。中空断面や異形断面の他の効果として中空率や異形度を高くすることで、同一の抗圧縮性を付与した場合、より軽量化が可能となる。
【0025】
本発明の網状構造体の具体的な態様は、見掛け密度の好ましい範囲が、クッション材としての機能が発現できる0.005g/cm以上0.20g/cm以下である。0.005g/cm未満では反発力が失われるのでクッション材には不適当であり、0.20g/cmを越えると反発力が高すぎて座り心地が悪くなり好ましくない。本発明のより好ましい見掛け密度は0.01g/cm以上0.10g/cm以下であり、さらに好ましい範囲は0.03g/cm以上0.06g/cm以下である。本発明の網状構造体は、繊維径の異なる線状体からなる複数層を積層し、各層の見掛け密度を変えることにより好ましい特性を付与することができる。例えば、繊維径の細い表面層と繊維径の太い基本層からなる場合は、表面層の密度はやや高くして構成本数を多くし、線状体の一本が受ける応力を少なくして応力の分散を良くし、かつ臀部を支えるクッション性も向上させることで座り心地を向上させることができる。基本層は繊維径を太くして少し硬くし、振動吸収と体型保持を受け持つ層としてより緻密な層とするため、やや繊維径の細い線状体で、かつ高密度とすることができる。これにより座席フレーム面から受ける振動や反発応力を基本層に均一に伝達し、全体が変形してエンルギー変換できるようにし、座り心地を良くすると共にクッションの耐久性も向上させることもできる。さらに、座席のサイドの厚みと張りを付与させるために部分的に繊維径をやや細くして高密度化することもできる。このように各層はその目的に応じ好ましい密度と繊維径を任意に選択できる。なお、網状構造体の各層の厚みは、特に限定されないが、クッション体としての機能が発現されやすい3mm以上とするのが好ましく5mm以上とするのがより好ましい。
【0026】
網状構造体の構造体外表面は、曲がりくねらせた線状体が途中で30°以上、好ましくは45°以上曲げられ実質的に面がフラット化されており、接触部の大部分が融着している表層部を有することが好ましい。このことで、網状構造体面の該線状体の接触点が大幅に増加して接着点を形成するため、座った時の臀部の局部的な外力も臀部に異物感を与えずに構造面で受け止められ、面構造が全体で変形して内部の構造体全体も変形して応力を吸収し、応力が解除されると弾性樹脂のゴム弾性が発現して、構造体は元の形態に回復することができる。実質的にフラット化されてない場合、臀部に異物感を与え、表面に局部的な外力が掛かかり、表面の線状体および接着点部分までに選択的に応力集中が発生する場合があり、応力集中による疲労が発生して耐へたり性が低下する場合がある。構造体外表面がフラット化された場合、ワディング層を使用しないで、または非常に薄いワディング層を積層し、側地で表面を覆い自動車用、鉄道用等の座席や椅子またはベッド用、ソファー用、布団用等のクッションマットにすることができる。構造体外表面がフラット化されていない場合は、網状構造体の表面に比較的厚め(好ましくは10mm以上)のワディング層を積層して側地で表面を覆って座席やクッションマットを形成する必要がある。必要に応じてワディング層との接着または側地との接着は表面がフラットな場合は容易であるが、フラット化されていない場合は凸凹なため接着が不完全になる。
【0027】
次に、本発明の三次元ランダムループ接合構造からなる網状構造体の製造方法について述べる。以下の方法は一例であって、これに限定するものではない。本発明の網状構造体は、溶融紡糸により製造される。まず、(1)溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせて互いに接触させ、大部分の接触部を融着させることにより3次元構造を形成しつつ、(2)引取り装置で挟み込む。次いで、(3)冷却槽で冷却せしめて網状構造体を形成する。本発明では、吐出線状をポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーで複合構造化できるように、各ノズルオリフィス前で各熱可塑性エラストマーを分配し、該熱可塑性エラストマーの高融点成分の融点より10℃以上、低融点成分の融点より120℃以下の溶融温度で該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態の複合化した吐出線状から上記方法により複合構造化させた連続線状体からなる網状構造体を製造する。
【0028】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとポリスチレン系熱可塑性エラストマーは一般的な溶融押出機を用いて別々に溶融し、一般的な複合紡糸の方法と同様にオリフィス直前で複合化するように分配合流させ吐出する。シ−ス・コア構造の連続線状体を紡糸する場合、コア成分を中心から供給し、その回りからシ−ス成分を合流させ吐出する。サイド・バイ・サイド構造の連続線状体を紡糸する場合、左右または前後から各成分を合流させて吐出する。このときの溶融温度は、低融点の成分の融点より120℃以下の温度で溶融させないと熱分解が著しくなり熱可塑性樹脂の特性が悪くなるので好ましくない。他方、高融点成分の融点より10℃以上にしないとメルトフラクチャ−が発生し正常な線状形成ができなくなる。また、サイド・バイ・サイド構造の場合は線状の接着が不良になる場合がある。好ましい溶融温度は低融点成分の融点より20℃以上100℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下であり、高融点成分の融点より15℃以上40℃以下、より好ましくは20℃以上30℃以下の範囲となる同一溶融温度で合流させ吐出させる。合流直前の溶融温度差は10℃以下にしないと、異常流動を発生し複合化形態の形成が損なわれる場合がある。
【0029】
オリフィスの形状は特に限定されないが、異形断面(例えば三角形、Y型、星型等の断面二次モ−メントが高くなる形状)や中空断面(例えば三角中空、丸型中空、突起つきの中空等となるよう形状)とすることで溶融状態の吐出線状が形成する3次元構造が流動緩和し難くし、逆に接触点での流動時間を長く保持して接着点を強固にできるので特に好ましい。特開平1−2075号公報に記載の接着のための加熱をする場合、3次元構造が緩和し易くなり平面的構造化し、3次元立体構造化が困難となるので好ましくない。構造体の特性向上効果としては、見掛けの嵩を高くでき軽量化になり、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良できて、へたり難くなる。中空断面では中空率が80%を越えると断面が潰れ易くなるので、中空断面を採用する場合の中空率は、好ましくは軽量化の効果が発現できる10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。
【0030】
オリフィスの孔間ピッチは、線状が形成するループが充分接触できるピッチとする必要がある。連続線状体の密度が高い構造にするには孔間ピッチを短くし、連続線状体の密度が低い構造にするには孔間ピッチを長くする。本発明の孔間ピッチは好ましくは3mm〜20mm、より好ましくは5mm〜10mmである。本発明では所望に応じ異密度化や異繊維径化もできる。列間のピッチまたは孔間のピッチも変えた構成、および列間と孔間の両方のピッチも変える方法などで異密度層を形成できる。また、オリフィスの断面積を変えて吐出時の圧力損失差を付与すると、溶融した熱可塑性エラストマーが同一ノズルから一定の圧力で押し出される吐出量が圧力損失の大きいオリフィスほど少なくなる原理を用いて、異繊維径化できる。
【0031】
次いで、引取りネットで溶融状態の三次元立体構造体の両外表面を挟み込み、両外表面の溶融状態の曲がりくねった吐出された連続線状体を30°以上折り曲げて変形させ、外表面をフラット化すると同時に、曲げられていない吐出線状との接触点を接着して構造を形成する。その後、連続して冷却媒体(通常は室温の水を用いるのが冷却速度を早くでき、コスト面でも安くなるので好ましい。)で急冷して本発明の三次元ランダムループ接合構造体からなる網状構造体を得る。次いで、水切り乾燥するが、冷却媒体中に界面活性剤等を添加すると、水切りや乾燥がしにくくなったり、熱可塑性エラストマーが膨潤したりすることもあり好ましくない。本発明の好ましい方法としては、一旦冷却後、疑似結晶化処理を行う。疑似結晶化処理温度は、少なくとも融点(Tm)より10℃以上低く、Tanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上で行う。この処理で、融点以下に吸熱ピ−クを持ち、疑似結晶化処理しないもの(吸熱ピ−クを有しないもの)より耐熱耐へたり性が著しく向上する。本発明の好ましい疑似結晶化処理温度は(Tαcr+10℃)から(Tm−20℃)である。単なる熱処理により疑似結晶化させると耐熱耐へたり性が向上する。さらには一旦冷却後、10%以上の圧縮変形を付与してアニーリングすることで耐熱耐へたり性が著しく向上するのでより好ましい。また、一旦冷却後、乾燥工程を経する場合、乾燥温度をアニーリング温度とすることで同時に疑似結晶化処理を行うができる。また、別途疑似結晶化処理を行うができる。
【0032】
次いで、上記網状構造体を所望の長さまたは形状に切断してクッション材に用いる。本発明の網状構造体をクッション材に用いる場合、その使用目的、使用部位により使用する樹脂、繊維径、ル−プ径、嵩密度を選択する必要がある。例えば、表層のワディングに用いる場合は、ソフトなタッチと適度の沈み込みと張りのある膨らみを付与するために、低密度で細い繊維径、細かいル−プ径にするのが好ましく、中層のクッション体としては、共振振動数を低くし、適度の硬さと圧縮時のヒステリシスを直線的に変化させて体型保持性を良くし、耐久性を保持させるために、中密度で太い繊維径、やや大きいル−プ径が好ましい。勿論、用途との関係で要求性能に合うべく他の素材、例えば短繊維集合体からなる硬綿クッション材、不織布等と組合せて用いることも可能である。また、樹脂製造過程以外でも性能を低下させない範囲で製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例で本発明を詳述する。なお、実施例中の評価は以下の方法で行った。
【0034】
<樹脂特性>
(1)反発弾性率
JIS K 6255規格により測定した。
(2)融点
島津製作所TA50、DSC50型示差熱分析計を使用し、10gの試料を昇温速度20℃/分で20℃から250℃まで測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
(3)ショアD硬度
ASTM D2240規格により測定した。
【0035】
<網状構造体特性>
(4)25%圧縮時硬度
試料を30cm×30cmの大きさに切断し、20℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、20℃±2℃の環境下にあるエー・アンド・デイ社製テンシロン(RTG−1310)にてφ200mm、厚み10mmの加圧板を用いて、試料の中心部を10mm/minの速度で圧縮を開始し、荷重が1.0Nになる時の厚みを計測し、硬度計厚みとする。この時の加圧板の位置をゼロ点として、速度100mm/minで硬度計厚みの75%まで圧縮した後、速度100mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻す。引き続き速度100mm/minで硬度計厚みの25%まで圧縮し、その際の荷重を25%圧縮時硬度とした。25%圧縮時硬度の単位はkg/φ200mmであり、n=3の平均値で示した。
(5)連続線状体の繊維径
試料を幅方向10cm×長さ方向10cm×試料厚さの大きさに切断し、切断断面から厚さ方向にランダムに10本の線状体を約5mmの長さで採集した。採集した線状体を、光学顕微鏡を適切な倍率で繊維径測定箇所にピントを合わせて繊維側面から見た繊維の太さを測定した。なお、網状構造体の表面は平滑性を得るためにフラット化されていることから繊維断面が変形している場合があるため、網状構造体表面から2mm以内の領域から試料は採取しないこととした。
(6)連続線状体の中空率
網状構造体から連続線状体を採取し、液体窒素で冷却した後に割断し、その断面を電子顕微鏡で倍率50倍にて観察し、得られた画像をCADシステムにて解析して樹脂部分の断面積(A)と中空部分の断面積(B)を測定し、{B/(A+B)}×100の式により中空率を算出した。
(7)70℃圧縮残留歪
試料を10cm×10cm×試料厚さの大きさに切断し、圧縮前厚さtbを測定したサンプルを50%圧縮状態に保持できる冶具に挟み、70±2℃に設定した乾燥機に入れ、22時間放置した。その後サンプルを取り出し、圧縮歪みを除き、室温(25℃)で冷却して30分放置後の圧縮後厚さtaを求め、式(tb−ta)/tb×100より70℃圧縮残留歪みを算出した:単位%(n=3の平均値)。ここで、圧縮前厚さtbおよび圧縮後厚さtaは、圧縮前および圧縮後の各サンプル1か所の高さを測定しその平均値を厚さとした。
(8)網状構造体の反発弾性率
試料を幅方向10cm×長さ方向10cm×試料厚さの大きさに切断し、20℃±2℃の環境下に無荷重で24時間放置した後、20℃±2℃の環境下にあるエー・アンド・デイ社製テンシロン(RTG−1310)にてφ200mm、厚み10mmの加圧板を用いて、試料を10mm/minの速度で圧縮を開始し、荷重が5.0Nになる時の厚みを計測し、この時の加圧板の位置をゼロ点として、速度100mm/minで硬度計厚みの75%まで圧縮した後、速度100mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻し、連続した動作で、速度100mm/minで硬度計厚みの75%まで圧縮した後、速度100mm/minにて加圧板をゼロ点まで戻す。サンプルを15分間静置した後、直径80mm、重さ600gの円柱状の錘を15cmの高さから落下させ、最初の跳ね返りの高さを求め、以下の式より反発弾性率を求める。跳ね返りの高さは高速度デジタルカメラで測定した(n=3の平均値)。
反発弾性率(%)=(跳ね返り高さ(cm)/15(cm))×100
(9)見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定し、体積を求め、試料の重さを体積で除した値(g/cm)で示す。(n=4の平均値)
【0036】
<合成例1>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量2000)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4−BD/PTMGが100/75/25(mol比)のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を得た。その特性を表1に示す。
【0037】
<合成例2>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4−BD/PTMGが100/71.8/28.2(mol比)のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)を得た。その特性を表1に示す。
【0038】
<合成例3>
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオール(1,4−BD)とポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、昇温減圧しつつ重縮合せしめ、DMT/1,4−BD/PTMGが100/84/16(mol比)のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成させ、次いで抗酸化剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥してポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)を得た。その特性を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
<実施例1>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、それぞれ240℃で溶融して、体積比30/70でシース/コアがA−1/TPSとなるようにオリフィス前で合流させ、幅50cm×長さ5cmのノズル有効面に、長さ方向の列間ピッチが5mm、幅方向の孔間ピッチが10mmで配置された丸型中空断面連続線状体形成用の孔径1.0mmのオリフィスを備えるノズルより、240℃にて総吐出量を1000g/分で吐出させた。ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に、吐出させた連続線状体を引取り、連続線状体の接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分0.66mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させた。次いで、105℃の熱風乾燥機中で20分間の疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して複合構造の連続線状体からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0041】
<実施例2>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比50/50でシース/コアがA−1/TPSとなるようにした以外は実施例1と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0042】
<実施例3>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比10/90でシース/コアがA−1/TPSとなるようにした以外は実施例1と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0043】
<実施例4>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比50/50でシース/コアがA−2/TPSとなるようにした以外は実施例1と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0044】
<比較例1>
合成例3で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比30/70でシース/コアがA−3/TPSとなるようにした以外は実施例1と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0045】
<比較例2>
体積比を70/30に変えた以外は比較例1と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0046】
<比較例3>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)を240℃で溶融して、幅65cm×長さ5cmのノズル有効面に、幅方向の列間ピッチが5.2mm、長さ方向の列間ピッチが6.0mmで配置された丸型中空断面連続線状体形成用の孔径1.0mmのオリフィスを備えるノズルより、240℃にて総吐出量を1000g/分で吐出させた。ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅70cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に、吐出させた連続線状体を引取り、連続線状体の接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分0.66mの速度で冷却水中へ引込み固化させた。次いで、70℃の熱風乾燥機中で15分間の疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0047】
<比較例4>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)に変えて合成例3で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)を用いて、熱風乾燥器の温度を105℃に変えた以外は比較例3と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0048】
<比較例5>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)に変えて合成例2で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)を用いて、熱風乾燥器の温度を105℃に変え、吐出温度を220℃に変えた以外は比較例3と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2に示す。
【0049】
<比較例6>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)に変えて合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を用いて、熱風乾燥器の温度を105℃に変え、吐出温度を220℃に変えた以外は比較例2と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表2示す。
【0050】
【表2】
【0051】
<実施例5>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、それぞれ240℃で溶融して、体積比40/60でシース/コアがA−1/TPSとなるようにオリフィス前で合流させ、幅50cm×長さ5cmのノズル有効面に、長さ方向の列間ピッチが5mm、幅方向の孔間ピッチが10mmで配置された丸型中空断面連続線状体形成用の孔径1.0mmのオリフィスを備えるノズルより、240℃にて総吐出量を1000g/分で吐出させた。ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に、吐出させた連続線状体を引取り、連続線状体の接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分0.66mの速度で25℃の冷却水中へ引込み固化させた。次いで、105℃の熱風乾燥機中で20分間の疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して複合構造の連続線状体からなる網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0052】
<実施例6>、
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比60/40でシース/コアがA−1/TPSとなるようにした以外は実施例5と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0053】
<実施例7>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比20/80でシース/コアがA−1/TPSとなるようにした以外は実施例5と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0054】
<実施例8>
合成例2で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比60/40でシース/コアがA−2/TPSとなるようにした以外は実施例5と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0055】
<比較例7>
合成例3で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)と、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とを、体積比40/60でシース/コアがA−3/TPSとなるようにした以外は実施例5と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0056】
<比較例8>
体積比を60/40に変えた以外は比較例7と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0057】
<比較例9>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)を240℃で溶融して、幅65cm×長さ5cmのノズル有効面に、幅方向の孔間ピッチが5.2mm、長さ方向の孔間ピッチが6.0mmで配置された丸型中空断面連続線状体形成用の孔径1.0mmのオリフィスを備えるノズルより、240℃にて総吐出量を1000g/分で吐出させた。ノズル面25cm下に冷却水を配し、幅70cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に、吐出させた連続線状体を引取り、連続線状体の接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分0.66mの速度で冷却水中へ引込み固化させた。次いで、70℃の熱風乾燥機中で15分間の疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0058】
<比較例10>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)に変えて合成例3で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)を用いて、熱風乾燥器の温度を105℃に変えた以外は比較例9と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0059】
<比較例11>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)に変えてを合成例2で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)を用いて、熱風乾燥器の温度を105℃に変えた以外は比較例9と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0060】
<比較例12>
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーである水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(TPS)に変えてを合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を用いて、熱風乾燥器の温度を105℃に変えた以外は比較例8と同じようにして網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の網状構造体は、高い振動吸収性を示し、耐熱耐へたり性にも優れる網状構造体であり、その特性を生かし車両用座席や寝具などに好適に使用できるものである。