(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863547
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】エステトロール成分を含有する口腔内崩壊性投与単位
(51)【国際特許分類】
A61K 31/565 20060101AFI20210412BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20210412BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210412BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20210412BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20210412BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20210412BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20210412BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20210412BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20210412BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20210412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
A61K31/565
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/04
A61P5/30
A61P15/18
A61P43/00 111
【請求項の数】27
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-564097(P2017-564097)
(86)(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公表番号】特表2018-517717(P2018-517717A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2016064074
(87)【国際公開番号】WO2016203011
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】15172747.6
(32)【優先日】2015年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517186503
【氏名又は名称】エステトラ ソシエテ プリーヴ ア レスポンサビリテ リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジャスパール, セヴェリーヌ, フランシーヌ, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】プラトー, ヨハネス, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ヒューベル, デニー, ジョアン, マレイン
【審査官】
参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2002/094276(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0070488(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量が30〜1,000mgの間である口腔内崩壊性固形医薬剤形であって:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも90重量%含有するエステトロール粒子0.1〜25重量%、及び
1種又は複数の薬学的に許容される成分75〜99.9重量%
から成り、
前記エステトロール成分を少なくとも100μg含有し、
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも90重量%含有するエステトロール粒子であって、体積中位径が2μm〜50μmの範囲内である前記エステトロール粒子を提供するステップ、
前記エステトロール粒子を1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤と混合することによって乾燥混合物を調製するステップ、及び
前記乾燥混合物を固形剤形に圧縮するステップ
を含む方法によって得られる、口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項2】
前記剤形の重量が40〜500mgの間である、請求項1に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項3】
前記剤形が前記エステトロール成分を0.5〜25重量%含有する、請求項1又は2に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項4】
前記剤形が前記エステトロール成分を0.3〜100mg含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項5】
前記エステトロール成分がエステトロールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項6】
前記エステトロール粒子の体積中位径が3〜35μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項7】
前記剤形が、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、グルコース、ガラクトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、イソマルト、微結晶セルロース、カルシウム塩、及びその組合せから選択される充填剤を50〜99.5体重%含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項8】
前記剤形が、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、微結晶セルロース、及びその組合せから選択される充填剤を50〜99.5体重%含有する、請求項7に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項9】
前記剤形が、マンニトール、キシリトール、及びその組合せから選択される糖アルコールを少なくとも20重量%含有する、請求項7又は8に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項10】
前記剤形が、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース、及びその組合せから選択される崩壊剤を0.1〜20重量%含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項11】
前記剤形が微結晶セルロースを0〜60重量%含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項12】
前記剤形が、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム、及びその混合物から選択される滑沢剤を0.1〜2重量%含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項13】
医学的治療における使用又は女性ホルモン補充療法における使用であって、前記剤形を舌下、頬側、又は唇下投与することを含む前記使用のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項14】
前記使用が、少なくとも1週間の期間に1日1回投与することを含む、請求項13に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項15】
女性の避妊の方法における使用であって、前記剤形を舌下、頬側、又は唇下投与することを含む前記使用のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項16】
前記使用が、少なくとも1週間の期間に1日1回投与することを含む、請求項15に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊性固形医薬剤形を製造する方法であって:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも90重量%含有するエステトロール粒子であって、体積中位径が2μm〜50μmの範囲内である前記エステトロール粒子を提供するステップ、
前記エステトロール粒子1重量部を1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤2〜1,000重量部と混合することによって乾燥混合物を調製するステップ、及び
前記乾燥混合物を固形剤形に圧縮するステップ
を含む、方法。
【請求項18】
前記方法が、前記エステトロール粒子と前記1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤の混合中又は混合後に、液体溶媒を加えるステップを含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エステトロール粒子の体積中位径が3〜35μmである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥混合物が、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、グルコース、ガラクトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、イソマルト、微結晶セルロース、カルシウム塩、及びその組合せから選択される充填剤を50〜99.5重量%含有する、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記口腔内崩壊性固形医薬剤形が、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、微結晶セルロース、及びその組合せから選択される充填剤を50〜99.5重量%含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥混合物が、マンニトール、キシリトール、及びその組合せから選択される糖アルコールを少なくとも20重量%含有する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥混合物が、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース、及びその組合せから選択される崩壊剤を0.1〜20重量%含有する、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記口腔内崩壊性固形医薬剤形が微結晶セルロースを0〜60重量%含有する、請求項17〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記乾燥混合物が、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム、及びその混合物から選択される滑沢剤を0.1〜2重量%含有する、請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記口腔内崩壊性固形医薬剤形が直接圧縮によって形成される、請求項17〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
重量が30〜1,000mgの間である口腔内崩壊性固形医薬剤形であって:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも90重量%含有するエステトロール粒子0.1〜25重量%、及び
1種又は複数の薬学的に許容される成分75〜99.9重量%
から成り、
前記粒子が2μm〜50μmの体積中位径を有し、
前記エステトロール成分を少なくとも100μg含有する、口腔内崩壊性固形医薬剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量が30〜1,000mgの間である口腔内崩壊性固形医薬投与単位であって、エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも0.1mg含有する前記投与単位を提供する。この固形投与単位は:
上記エステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子0.1〜25重量%、及び
1種又は複数の薬学的に許容される成分75〜99.9重量%
から成る。
【0002】
本発明は、前述の固形投与単位を調製する方法も提供する。
【0003】
さらに、本発明は、医学的治療、女性ホルモン補充療法、及び女性の避妊に対する上記固形投与単位の使用であって、上記固形投与単位を舌下、頬側、又は下唇投与することを含む前記使用に関する。
【背景技術】
【0004】
エステトロールは、妊娠中にのみ胎児の肝臓によって産生されるヒトステロイドである。この天然ホルモンは、1965年にDiczfalusyと共同研究者らによって、妊婦の尿中に発見された。エステトロールは、4つのヒドロキシル基を有すエストロゲンステロイドの構造を持つ。エステトロールは、胎児の肝臓で、2つの酵素、15α−及び16α−水酸化酵素によってエストラジオール及びエストリオールから合成される。出生後、これら2つの酵素が発現されなくなるため、新生児の肝臓はエステトロールを合成する能力を急速に失う。
【0005】
エステトロールは、胎盤を通過して母体循環に入り、すでに妊娠9週には母体尿中に検出された。妊娠中期の間、母体血漿中の濃度が高く、非抱合型エステトロール濃度は、妊娠終了に向かって約1ng/mL(>3nmol/L)まで安定して上昇することが認められた。エステトロールの生理学的機能は、これまでのところ不明である。胎児の健康状態についてのマーカーとしてのエステトロールの使用の可能性が、かなり大規模に研究されてきた。しかし、妊娠中の母体のエステトロール血漿濃度の個体内及び個体間変動が大きいため、マーカーとしての使用は実現しそうにない。
【0006】
2001年以降、エステトロールに関し大規模な研究が行われてきた。ヒトにおいて、エステトロールは、高くて用量比例的な経口バイオアベイラビリティ、及び約28時間の長い終末消失半減期を有することが示された。in vitro試験の結果から、エステトロールは、エチニルエストラジオール及び17β−エストラジオールといったエストロゲンとは異なり、エストロゲン受容体のERα型を優先的に、エストロゲン受容体に高選択的に結合することが示された。同様に、エチニルエストラジオール及び特に17β−エストラジオールとは対照的に、エステトロールは、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)に結合せず、in vitroにおいてSHBG産生を刺激しない。
【0007】
エステトロールの特性についても、一連の予測的で、十分に検証されている薬理学的in vivoラットモデルにおいて検討されてきた。これらのモデルにおいて、エステトロールは、膣、子宮(子宮筋層及び子宮内膜の両方)、体重、骨質量、骨強度、ほてり、及び排卵(抑制)に対してエストロゲン作用を示した。エステトロールのこれらすべての作用は、用量依存的であり、同等の用量で最大の作用を示した。驚くべきことに、エステトロールは、抗エストロゲン剤であるタモキシフェン及び卵巣摘出と同様の程度及び用量で、DMBA乳房腫瘍モデルにおける腫瘍の発生を予防した。17β−エストラジオールの存在下におけるエステトロールのこの抗エストロゲン作用は、ヒト乳癌細胞を用いたin vitro試験においても認められている。
【0008】
国際公開第2002/094275号、国際公開第2002/094276号、国際公開第2002/094278号、及び国際公開第2003/018026号を含む多くの特許出願で、エステトロールの頬側、舌下、又は唇下投与について言及されている。これらの公報に、頬側、舌下、又は唇下投与のためのエステトロール含有投与単位についての記載はなかった。
【0009】
国際公開第2010/033832号は、エストリオール化合物及び薬学的に許容されるマトリックス材料を含有する経口投与剤形であって、頬側口腔及び/又は舌下腔の唾液に接触すると約300秒未満の時間内で、少なくとも約90%のエストリオール化合物を放出する前記経口投与剤形について記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2007/286829号は、エチニルエストラジオールの送達が可能であり、バイオアベイラビリティが向上している経口投与された固形投与剤形であって、(i)エチニルエストラジオール約0.5μg〜約50μg及び(ii)前記固形投与剤形を2オンス以下の水で患者に経口投与する場合、口腔粘膜を介してエチニルエストラジオールを少なくとも15%吸収することを可能にする口腔内溶解促進担体(oral dissolution enhancing carrier)を含有する前記固形投与剤形について記載されている。
【0011】
米国特許第6,117,446号は、生侵食性ポリマー担体(bioerodible polymeric carrier)と、テストステロン及び薬理学的に許容されるそのエステルから選択されるアンドロゲン剤、プロゲスチン、並びにエストロゲンの治療上有効な量から成る圧縮錠剤を含む、ステロイド系活性薬剤の組合せを投与するための頬側投与単位について記載されている。上記例は、次の成分を十分に混合することによって調製された頬側投与単位について記載されている:エストロゲン、プロゲストゲン、アンドロゲン、ポリエチレンオキシド、カルボマー、及びステアリン酸マグネシウム。次に、上記混合物を流動層造粒法によって造粒し、こうして得られた顆粒を圧縮して錠剤とした。
【0012】
エステトロールを含有する経口投与単位は、複数の特許公報に記載されている。
【0013】
国際公開第2002/094276号は、ホルモン補充療法に使用するための医薬組成物について記載されており、前記療法は、このような治療を必要としている患者に有効量のエステトロールを投与することを含み、前記組成物は、実質的にプロゲストゲン及び抗プロゲスチンを含有しない。国際公開第2002/094276号は、下記製剤処方に基づき、エステトロール1.5mgを含有する重量185mgのエステトロール錠剤の調製について記載されている:
【表1】
国際公開第2002/094275号は、女性のリビドーを増強する方法におけるエステトロールの使用について記載されており、前記方法は、前記女性に有効量のエステトロールを投与することを含む。経口投与は適切な投与様式として言及されている。この特許出願は、国際公開第2002/094276号と同じエステトロール錠剤について記載されている。
【0014】
国際公開第2002/094279号は、哺乳動物の雌を避妊する方法におけるエステトロールの使用について記載されており、前記方法は、出産可能な雌に、排卵を阻害するために有効な量の前記エストロゲン成分及びプロゲストゲン成分を経口投与することを含む。185mgのエステトロール錠剤の下記製剤処方は、本国際特許出願に記載されている。
【0015】
【表2】
国際公開第2003/041718号は、哺乳動物に対するホルモン補充法におけるエステトロールの使用について記載されており、前記方法は、哺乳動物に、低エストロゲン症の症状を予防又は治療するために有効な量のエステトロール及びプロゲストゲン成分を経口投与することを含む。この特許出願は、国際公開第2002/094279号と同じエステトロール錠剤について記載されている。
【0016】
国際公開第2007/081206号は、哺乳動物の急性血管障害を治療する方法におけるエステトロールの使用について記載されており、前記方法は、前記哺乳動物に、必要に応じて前記哺乳動物に対し有効な量のエステトロールを経口投与することを含む。この特許出願は、1カプセル当たりエステトロール100mg及びシルデナフィルクエン酸塩25mgを含有する硬ゼラチンカプセルの調製について記載されている。
【0017】
国際公開第2008/156365号は、新生児の胎便吸引症候群(MAS)の治療におけるエステトロールの使用について記載されており、前記治療は、出生後7日間以内の前記新生児に、有効量のエストロゲンを投与することを含む。上記国際特許出願は、エストロゲンを少なくとも1μg含有する、新生児に使用するための坐剤であって、最大直径10mm未満及び重量0.5g未満の特徴をさらに持つ前記坐剤について記載されている。上記坐剤に含有される賦形剤は、体温で融解する脂質物質を基剤にすることができ、又は水と接触した際に溶解又は崩壊する親水性成分を基剤にすることができる。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、エステトロール成分を含有する口腔内崩壊性固形医薬投与単位を提供する。上記投与単位は、水性環境で上記エステトロールを速やかに放出する。上記固形投与単位は、直接圧縮による製造が容易であり、舌下、頬側、又は唇下投与に最適である。舌下、頬側、及び唇下投与は、そのエステトロール成分が消化器系を通過する必要がなく、初回通過時の肝曝露を回避する利点をいずれも有する。さらに、これらの投与様式は、活性の速やかな発現をもたらす。
【0019】
本発明に記載の固形投与単位は、重量が30〜1,000mgの間であり、エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも100μg含有し、:
上記エステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子0.1〜25重量%、及び
1種又は複数の薬学的に許容される成分75〜99.9重量%
から成る。
【0020】
この固形投与単位は:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子であって、体積中位径が2μm〜50μmの範囲内である前記エステトロール粒子を
提供するステップ、
上記エステトロール粒子を1種又は複数の薬学的に許容される成分を混合することによって乾燥混合物を調製するステップ、及び
上記乾燥混合物を固形投与単位に圧縮するステップ
を含む方法によって入手可能である。
【0021】
唾液へのエステトロール成分の速やかで完全な溶解は、上記固形投与単位の舌下、頬側、又は唇下投与によって、その成分を効率的に送達するために不可欠である。本発明者は、非常に小さな粒子形態の上記固形投与単位中にエステトロール成分が存在する場合、エステトロール成分は、速やかに放出され、唾液に分散し、口腔内粘膜を介して吸収されることを予想外に発見した。
【0022】
本発明は、前述の固形投与単位を調製する方法も提供し、前記方法は:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子であって、体積中位径が2μm〜50μmの範囲内である前記エステトロール粒子を
提供するステップ、
上記エステトロール粒子1重量部を1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤2〜1,000重量部と混合することによって乾燥混合物を調製するステップ、及び
上記乾燥混合物を固形投与単位に圧縮するステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例3で使用された製造方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の態様は、重量が30〜1,000mgの間である口腔内崩壊性固形医薬投与単位であって:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子0.1〜25重量%、及び
1種又は複数の薬学的に許容される成分75〜99.9重量%
から成る前記投与単位であって、
上記エステトロール成分を少なくとも100μg含有する上記固形投与単位に関し;
ここで、前記固形投与単位は:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子であって、体積中位径が2μm〜50μmの範囲内である前記エステトロール粒子を
提供するステップ、
上記エステトロール粒子を1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤と混合することによって乾燥混合物を調製するステップ、及び
上記乾燥混合物を固形投与単位に圧縮するステップ
を含む方法によって得られる。
【0025】
本明細書で用いる場合、「エステトロール」という用語は、1,3,5(10)−エストラトリエン−3,15α,16α,17β−テトロール又は15α−ヒドロキシエストリオール、同様にエステトロールの水和物、例えば、エステトロール一水和物を指す。
【0026】
本明細書で用いる場合、「口腔内崩壊性投与単位」という用語は、唾液と接触した際に口腔内で速やかに崩壊し、エステトロール成分が唾液に分散し、口腔内粘膜を介して吸収されるように設計された投与単位を指す。
【0027】
本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される成分」という用語は、以下でさらに定義されるとおり、薬学的に許容される賦形剤及び上記エステトロール成分以外の薬学的活性成分の両方を含む。
【0028】
本明細書で用いる場合、「舌下」という用語は、これによって上記エステトロール成分が、舌下の組織を介して血中に拡散する、薬理学的な投与経路を指す。
【0029】
本明細書で用いる場合、「頬側」という用語は、これによって上記エステトロール成分が、頬の内膜(頬粘膜)と歯/歯茎の間の口内部位である頬前庭の組織を介して血中に拡散する、薬理学的な投与経路を指す。
【0030】
本明細書で用いる場合、「唇下」という用語は、これによって上記エステトロール成分が、口唇と歯肉の間に置かれる、薬理学的な投与経路を指す。
【0031】
別段の指定がない限り、本明細書に記載されるすべての百分率は、重量百分率である。
【0032】
本発明に包含される固形投与単位の例には、錠剤、糖衣錠、トローチ剤、及びフィルム剤が含まれる。好ましい実施形態によると、上記投与単位は、錠剤、最も好ましくは圧縮錠剤である。
【0033】
上記固形投与単位の重量は、通常40〜500mgの間、より好ましくは50〜300mgの間、及び最も好ましくは70〜150mgの間である。
【0034】
上記固形投与単位は、上記エステトロール成分を、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは1〜20重量%、及び最も好ましくは1.2〜15重量%含有する。
【0035】
上記固形投与単位に含有されるエステトロール成分の量は、好ましくは0.3〜100mg、より好ましくは0.5〜40mg、及び最も好ましくは1〜20mgの範囲内とする。
【0036】
本発明のエステトロール成分は、好ましくはエステトロール、
ヒドロキシル基の少なくとも1つの水素原子が、1〜25個の炭素原子を持つ炭化水素カルボン酸、スルホン酸、又はスルファミン酸のアシル基により置換されているエステトロールのエステル、
及びそれらの組み合わせから成る群から選択さ
れる。上記エステトロール成分は、エステトロール(エステトロール水和物を含む)であることがさらにより好ましい。上記投与単位に含有されるエステトロール成分は、エステトロール一水和物であることが最も好ましい。
【0037】
上記固形投与単位中の上記エステトロール粒子の粒径は、舌下、頬側、又は唇下投与後、上記エステトロール成分を十分に吸収するために適するべきである。上記固形投与単位中のエステトロール粒子及び(独立して)上記固形投与単位の調製に用いるエステトロール粒子は、体積中位径が3μm〜35μmの範囲内であることが好ましく、4μm〜25μmの範囲内であることがより好ましく、及び5μm〜15μmの範囲内であることが最も好ましい。
【0038】
上記固形投与単位中のエステトロール粒子及び(独立して)上記固形投与単位の調製に用いるエステトロール粒子は、60μmを超える粒径の粒子を限定量を超えて含有しないことが好ましい。60μmを超える粒径を有するエステトロール粒子は、10体積%以下であること(D
90)が好ましく、5体積%以下であること(D
95)がより好ましい。40μmを超える粒径を有するエステトロール粒子は、10体積%以下であること(D
90)がさらにより好ましく、5体積%以下であること(D
95)がより好ましい。
【0039】
上記エステトロール粒子及び本方法で使用される他の粒子状材料の上記粒径分布は、レーザー回折によって適切に確定されてもよい。上記固形投与単位中のエステトロール粒子の粒径分布は、分光技術、例えば、ラマンマッピングを用いて適切に確定され得る。
【0040】
本発明の固形投与単位は、投与単位が、口腔内に導入され、唾液と接触した際、そのエステトロール成分が、速やかに放出される利点を提供する。上記投与単位からのエステトロール成分の放出速度は、実施例に記載されている溶出試験、又は欧州薬局方2.9.1(「錠剤及びカプセルの崩壊」)及び米国薬局方<701>(「崩壊」)に従い、さらに実施例にも記載されている崩壊試験を用いて適切に確定し得る。前述の溶出試験を実施した場合、本発明の固形投与単位は、5分後、エステトロール成分を、通常少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、及び最も好ましくは少なくとも80%放出する。前述の崩壊試験を実施した場合、本発明の固形投与単位は、通常5分未満、より好ましくは2分未満、さらにより好ましくは1.5分未満、さらにより好ましくは1分未満、さらにより好ましくは45秒未満、及び最も好ましくは30秒未満に崩壊する。
【0041】
上記固形投与単位及び本方法に使用されるエステトロール粒子は、上記エステトロール成分を少なくとも90重量%含有することが好ましく、上記エステトロール成分を少なくとも95重量%含有することがより好ましく、及び上記エステトロール成分を少なくとも99重量%含有することが最も好ましい。上記エステトロール成分以外に、上記エステトロール粒子は、上記投与単位の分散を補助し、上記エステトロール成分の溶出及び吸収を補助する、薬学的に許容される賦形剤を適切に含有することができる。このような賦形剤の例には、微結晶セルロース、張力活性剤、共溶媒、吸収促進剤、超崩壊剤(superdisintegrant)、及び緩衝剤が含まれる。
【0042】
上記エステトロール粒子は、上記投与単位の0.5〜35重量%の間に通常相当する。上記エステトロール粒子は、上記投与単位の1〜22重量%に相当することがより好ましく、1.2〜15重量%に相当することが最も好ましい。
【0043】
本発明の投与単位は、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、グルコース、ガラクトース、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、イソマルト、微結晶セルロース、カルシウム塩(例えば、リン酸カルシウム)、及びその組合せから選択される充填剤を、50〜99.5重量%含有することが好ましく、55〜90重量%含有することがより好ましく、及び60〜88重量%含有することが最も好ましい。特に好ましい実施形態によると、上記投与単位は、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、微結晶セルロース、及びその組合せから選択される充填剤を、30〜99.5重量%含有し、50〜90重量%含有することがより好ましく、及び60〜80重量%含有することが最も好ましい。
【0044】
上記投与単位は、マンニトール、キシリトール、及びその組合せから選択される糖アルコールを少なくとも20重量%含有することが有利である。上記投与単位は、マンニトール、キシリトール、及びその組合せから選択される糖アルコールを30〜90重量%含有することがより好ましい。上記投与単位は、マンニトール、キシリトール、及びその組合せから選択される糖アルコールを40〜80重量%含有することが最も好ましい。
【0045】
先行する請求項のいずれか一項に記載の投与単位、ここで、前記投与単位は、加工デンプン(例えば、カルボキシメチルデンプンのナトリウム塩)、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース(crosslinked carmellose)、及びその組合せから選択される崩壊剤を、0.1〜20重量%含有し、0.2〜10重量%含有することがより好ましく、及び1〜5重量%含有することが最も好ましい。
【0046】
エステトロール粒子、充填剤、及び崩壊剤の上記組合せは、上記固形投与単位の少なくとも70重量%を通常構成する。前記組合せは、上記投与単位の少なくとも80重量%を構成することがより好ましく、少なくとも90重量%を構成することが最も好ましい。
【0047】
本発明の固形投与単位は、微結晶セルロースを、0〜60重量%含有することが好ましく、5〜40重量%含有することがより好ましく、及び10〜35重量%含有することが最も好ましい。
【0048】
別の好ましい実施形態によると、上記投与単位は、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム、及びその混合物から選択される滑沢剤を、0.1〜2重量%含有し、0.2〜1.5重量%含有することがより好ましく、0.5〜1重量%含有することが最も好ましい。
【0049】
上記投与単位に適切に含有されてもよい他の賦形剤には、粘膜付着剤、香料、着色剤、甘味剤(甘い味の充填剤以外)、滑剤、及びその組合せが含まれる。
【0050】
上記固形投与単位は、上記エステトロール成分以外に、1種又は複数の他の薬学的活性成分を含有してもよい。このような他の薬学的活性成分の例には、ステロイドホルモンが含まれる。本発明の固形投与単位は、1種又は複数のプロゲストゲン、好ましくは、プロゲステロン、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、酢酸ノルエチステロン(NETA)、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、3β−ヒドロキシデソゲストレル、3−ケトデソゲストレル(=エトノゲストレル)、17−デアセチルノルゲスチメート、19−ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アナゲストン、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸フルロゲストン、ガストリノン(gastrinon)、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール(=リノエストレノール)、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレンゲストロール、ネストロン、ノメゲストロール、酢酸ノメゲストロール(NOMAC)、ノルエチンドロン(=ノルエチステロン)、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d−ノルゲストレル及びdl−ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17α)−17−ヒドロキシ−11−メチレン−19−ノルプレグナ−4,15−ジエン−20−イン−3−オン、チボロン、トリメゲストン、アルゲストンアセトフェニド、ネストロン、プロメゲストン、17−ヒドロキシプロゲステロンエステル、19−ノル−17ヒドロキシプロゲステロン、17α−エチニル−テストステロン、17α−エチニル−19−ノル−テストステロン、d−17β−アセトキシ−13β−エチル−17α−エチニル−ゴン−4−エン−3−オンオキシム、及びこれらの化合物のプロドラッグから選択される1種又は複数のプロゲストゲンを、0.05〜10mg含有することが好ましく、0.1〜5mg含有することがより好ましい。本発明に従って使用される上記1種又は複数のプロゲストゲンは、プロゲステロン、デソゲストレル、エトノゲストレル、ゲストデン、ジエノゲスト、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、酢酸ノルエチステロン(NETA)、ノメゲストロール、酢酸ノメゲストロール(NOMAC)、ドロスピレノン、トリメゲストン、ネストロン、及びジドロゲステロンから成る群から選択されることが好ましい。
【0051】
本発明に記載の固形投与単位は、1種又は複数のアンドロゲン、好ましくは、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA);硫酸DHEA(DHEAS);テストステロンエステル(例えば、ウンデカン酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、フェニルプロピオン酸テストステロン、テストステロンイソヘキサノエート(testosterone isohexanoate)、エナント酸テストステロン(testosterone enantate)、テストステロンブカネート(testosterone bucanate)、デカン酸テストステロン、テストステロンブシクレート(testosterone buciclate));メチルテストステロン;メステロロン;スタノゾロール;アンドロステンジオン;ジヒドロテストステロン;アンドロスタンジオール;メテノロン;フルオキシメステロン;オキシメステロン;メタンドロステノロル(methandrostenolol);MENT、及びこれらの化合物のプロドラッグから選択される1種又は複数のアンドロゲンを、0.05〜100mg含有することが好ましく、0.1〜50mg含有することがより好ましい。上記1種又は複数のアンドロゲンは、テストステロン、DHEA、及びMENTから成る群から選択されることが最も好ましい。
【0052】
本発明の別の態様は、医学的治療、女性ホルモン補充療法、又は女性の避妊に対する前述の固形投与単位の使用であって、上記投与単位を舌下、頬側、又は唇下投与することを含む前記使用に関する。本発明の固形投与単位が、適切に使用されることがある医学的治療の例には、骨粗鬆症の治療、及び子宮内膜症、乳癌、又は前立腺癌に対するエストロゲンのアドバック療法が含まれる。好ましい実施形態に従って、上記固形投与単位は、女性ホルモン補充療法又は女性の避妊に使用される。上記固形投与単位は、特に外陰腟萎縮及び/又は血管運動症状を治療するため、女性ホルモン補充療法に使用されることが最も好ましい。
【0053】
医学的治療、女性ホルモン補充療法、又は女性の避妊に対する上記固形投与単位の使用には、上記エステトロール成分を、少なくとも0.1mg、より好ましくは0.5〜100mg、及び最も好ましくは1〜40mg供給するため、上記固形投与単位を舌下、頬側、又は唇下投与することが通常含まれる。
【0054】
外陰腟萎縮を治療するため、上記投与単位は、上記エステトロール成分を、少なくとも0.1mg供給するために十分な量で投与されることが好ましい。上記投与された投与単位は、上記エステトロール成分を、少なくとも0.5mg供給することがより好ましく、少なくとも1mg供給することが最も好ましい。外陰腟萎縮の治療において、上記投与単位は、供給する上記エステトロール成分を、好ましくは50mg以下、より好ましくは20mg以下、及び最も好ましくは10mg以下とする量で投与される。
【0055】
血管運動症状を治療するため、上記投与単位は、上記エステトロール成分を、少なくとも0.2mg供給するために十分な量で投与されることが好ましい。上記投与された投与単位は、上記エステトロール成分を、少なくとも1mg供給することがより好ましく、少なくとも2mg供給することが最も好ましい。血管運動症状の治療において、上記投与単位は、供給する上記エステトロール成分を、好ましくは100mg以下、より好ましくは40mg以下、及び最も好ましくは20mg以下とする量で投与される。
【0056】
上記固形投与単位のこれらの使用は、通常少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも2週間の期間の上記投与単位の1日1回投与を含む。これらの期間、上記固形投与単位は、好ましくは少なくとも0.05mg、より好ましくは0.1〜40mg、及び最も好ましくは0.2〜20mgの上記エステトロール成分の1日量を供給するために投与される。
【0057】
外陰腟萎縮を治療するため、上記投与単位は、少なくとも0.1mgの上記エステトロール成分の1日量を供給するために投与されることが好ましい。上記投与単位は、より好ましくは0.5〜20mg、最も好ましくは1〜10mgの上記エステトロール成分の1日量を供給するために投与される。
【0058】
血管運動症状を治療するため、上記投与単位は、少なくとも0.2mgの上記エステトロール成分の1日量を供給するために投与されることが好ましい。上記投与単位は、より好ましくは1〜40mg、最も好ましくは2〜20mgの上記エステトロール成分の1日量を供給するために投与される。
【0059】
本発明のさらに別の態様は、本明細書で先に記載されている固形投与単位を調製する方法であって:
エステトロール、エステトロールエステル、及びその組合せから選択されるエステトロール成分を少なくとも80重量%含有するエステトロール粒子であり、体積中位径が2μm〜50μmの範囲内である前記エステトロール粒子を
提供するステップ、
上記エステトロール粒子1重量部を1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤2〜1,000重量部と混合することによって乾燥混合物を調製するステップ、及び
上記乾燥混合物を固形投与単位に圧縮するステップ
を含む、前記方法に関する。
【0060】
本方法の方法は、上記エステトロール粒子と上記1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤の混合中又は混合後に、液体溶媒を加えるステップを含まないことが好ましい。
【0061】
本方法において、固形投与単位に圧縮される上記乾燥混合物は、上記エステトロール粒子と上記1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤を、好ましくは1:3〜1:500の範囲内、より好ましくは1:4〜1:100の範囲内、及び最も好ましくは1:5〜1:10の範囲内の重量比で組み合わせることによって製造される。
【0062】
上記固形投与単位に圧縮される上記乾燥混合物は、本明細書で先に定義されている充填剤を、50〜99.5重量%含有することが好ましく、55〜90重量%含有することがより好ましく、及び60〜88重量%含有することが最も好ましい。
【0063】
特に好ましい実施形態によると、上記乾燥混合物は、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、微結晶セルロース、及びその組合せから選択される充填剤を、30〜99.5重量%含有し、50〜90重量%含有することがより好ましく、及び60〜80重量%含有することが最も好ましい。
【0064】
マンニトール、キシリトール、及びその組合せから選択される糖アルコールを、上記乾燥混合物中に少なくとも濃度20重量%で含有することは有利である。前記糖アルコールを、上記乾燥混合物中に濃度30〜90重量%で含有することはより好ましく、濃度40〜80重量%で含有することは最も好ましい。
【0065】
別の好ましい実施形態によると、上記乾燥混合物は、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース、及びその組合せから選択される崩壊剤を、0.1〜20重量%含有し、0.2〜10重量%含有することがより好ましく、及び1〜5重量%含有することが最も好ましい。
【0066】
エステトロール粒子、充填剤、及び崩壊剤の上記組合せは、上記乾燥混合物の少なくとも70重量%を通常構成する。前記組合せは、上記乾燥混合物の少なくとも80重量%を構成することがより好ましく、少なくとも90重量%を構成することが最も好ましい。
【0067】
本発明の上記固形投与単位は、微結晶セルロースを、0〜60重量%含有することが好ましく、5〜40重量%含有することがより好ましく、及び10〜35重量%含有することが最も好ましい。
【0068】
本方法で使用される乾燥混合物は、微結晶セルロースを、0〜60重量%含有することが好ましく、5〜40重量%含有することがより好ましく、及び10〜35重量%含有することが最も好ましい。
【0069】
上記固形投与単位に圧縮される上記乾燥混合物は、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム、及びその混合物から選択される滑沢剤を、0.1〜2重量%含有することが好ましく、0.2〜1.5重量%含有することがより好ましく、及び0.5〜1重量%含有することが最も好ましい。
【0070】
上記乾燥混合物は、直接圧縮によって固形投与単位に圧縮されることが好ましい。
【0071】
本方法によって得られた固形投与単位は、様々な方法で包装することができる。上記投与単位は、少なくとも14個の投与単位を含むブリスターパックに包装されることが好ましい。
【0072】
本発明は、下記の非限定的実施例を用いてさらに例証される。
【実施例】
【0073】
溶出試験
下記溶出試験は、口腔内崩壊性投与単位の溶出挙動を試験するために適用することができる。
【0074】
溶出装置
パドル及びバスケット溶出試験器バンケルVK7010(VanKel VK7010)又はVK7025、オートサンプラーVK8000、1000mL溶出試験器用ベッセル、及び多孔性ミクロンフィルター(35ピン)
【0075】
溶出媒体
10,000mLのメスフラスコに脱イオン水(demineralised water)9,000mLを移す。
68.05gのKH
2PO
4及び8.96gのNaOHを加え、すべてが溶解するまで上記溶液を撹拌する。
上記溶液を混合し、必要であれば、NaOH又はリン酸を用いてpHを6.8に調整し、脱イオン水を用いて体積を調整する。
【0076】
溶出手順
溶出媒体900mLをパドル装置の各ベッセルに移す。
装置を組み立て、上記媒体を37±0.5℃に加温し、温度計を取り外す。
パドルの回転を開始する前に6個のベッセルの底にそれぞれ1個の錠剤を置く。
直ちにパドルの回転を開始する。
50rpmの撹拌速度を用いる。
【0077】
完全な溶出プロファイルのため、5、10、20、30、45、60、75、及び90分後に溶出試験器用ベッセルからサンプル5mLを採取する。溶出媒体の表面とパドルブレードの先端の間の中間で、ベッセル壁から10mm以上離れた位置からサンプルを採取する。取り除かれた溶出媒体の体積分は、新たな溶出媒体で置き換えない。
【0078】
サンプル中のエステトロール濃度は、基準としてエステトロール原液を用いたHPLCによって確定された。
【0079】
移動相(MP)のリン酸緩衝液の調製
1.15gのNH
4H
2PO
4(10mM)を脱イオン水1,000mLに移して溶解し、リン酸を用いてpHを3.0に調整する。
【0080】
HPLC装置
クォータナリ溶媒送達システム、容量可変インジェクター、温度制御オートサンプラー、カラム恒温槽、及びフォトダイオードアレイ検出器2996(すべてWaters)から成るアライアンス2695(Alliance2695)分離モジュール
分析カラム:シンメトリーC18(Symmetry C18)、3.9×150mm、dp=5μm(Waters製)
ガードカラム:セキュリティーガード(Security guard)カラムC18、4x3mm(Phenomenex)
流量:1.0mL/分
検出:UV@280nm
カラム温度:30℃
オートサンプラー温度:10℃
注入量:100μL
実行時間:12分
【表3】
溶出試験は3回実施する。
【0081】
粒径測定
エステトロール一水和物の粒径分布は、マルバーンマスターサイザーマイクロプラス(MALVERN MASTERSIZER MICROPLUS)レーザー粒径分析器を用いて実施する。
【0082】
分散媒の調製:
エステトロール一水和物1g及びトリオレイン酸ソルビタン1gをフラスコ内に量り取る。
n−ヘキサン1Lを加え、室温で少なくとも1時間混合する。
0.45μmフィルターを通して濾過する。
【0083】
サンプル調製:
サンプル100mgを25mLビーカーに入れる。
分散媒を数滴加える。
ガラス棒で慎重に混合し、粉末を十分に懸濁させる。
分散媒10mLを加える。
サンプル分散ユニットの速度3000〜3500rpmで分析を実施する。
【0084】
分析:
粒径測定は、同じ分散を用いて3回実施する。最終的な結果は、3回の検出結果を平均して得られる。
【0085】
実施例1
舌下錠は、下記の手順によって調製する。
【0086】
表1に示される組成物を含有する錠剤化混合物は、低剪断撹拌機を用いた乾式混合によって調製される。
【0087】
【表4】
上記錠剤化混合物は、直径6.5mmの80mgの円形錠剤に圧縮する。これらの錠剤のエステトロール含有量は10mgである。
【0088】
実施例2
舌下錠は、下記の手順によって調製する。
【0089】
表2に示される組成物を含有する錠剤化混合物は、低剪断撹拌機を用いた乾式混合によって調製される。
【0090】
【表5】
上記錠剤化混合物は、直径6.5mmの80mgの円形錠剤に圧縮する。これらの錠剤のエステトロール含有量は、10mgである。
【0091】
実施例3
5種の異なる舌下錠のセット(製剤処方A〜E)は、下記の手順及び
図1に示される手順によって調製した。
【0092】
錠剤毎のエステトロールの目標含有量は以下のとおりであった:製剤処方Aは100μg、製剤処方Bは1mg、並びに製剤処方C、D及びEは10mg。
【0093】
上記錠剤の目標重量は以下のとおりであった:製剤処方Aは30mg、製剤処方Bは1000mg、並びに製剤処方C、D及びEは80mg。
【0094】
上記エステトロールを主な希釈剤の一部と混合し、800μm篩(screen)で篩い分けした。すべての他の賦形剤も800μm篩で篩い分けした。
【0095】
上記材料を測り、混合容器に移して(ステアリン酸マグネシウム以外)15分間混合した。
【0096】
最後に、ステアリン酸マグネシウムを加え、さらに3分間混合した。
【0097】
適切なパンチ(30mg錠剤(A)に対しては5mm、80mg錠剤(C、D及びE)に対しては6mm、及び1000mg錠剤(B)に対しては15mm)を装備したシングルパンチ機を使用し、圧縮を行った。
【0098】
欧州薬局方2.9.1(「錠剤及びカプセルの崩壊」)及び米国薬局方<701>(「崩壊」)に記載される公知のプロトコールに従って、所定の液体として水を用い、崩壊時間を数値化した。
【0099】
欧州薬局方2.9.8(「錠剤の耐衝撃性」)に記載される公知のプロトコールを用い、硬度を測定した。
【0100】
最終製剤及び対応する錠剤の結果は、下記の表3及び4にみられる。
【0101】
特殊な支障を何らきたすことなく、すべての製剤処方を調製し、錠剤に加工した。流動性の問題を克服するため、すべての製剤処方に流動性の良い希釈剤を使用したこと、及びスティッキングを避けるため、ステアリン酸マグネシウムの濃度は少なくとも1.5%としたことに留意すべきである。
【0102】
【表6】
【表7】
目標重量に近い最終重量ですべての錠剤が得られたこと、及びこれらの錠剤のために意図された舌下、頬側、又は唇下投与経路によると、最も大きい1g錠剤であっても崩壊時間は非常に短かったことが確認できる。
【0103】
最終的に、すべての錠剤の硬度は非常に許容し得る範囲内であった。
【0104】
実施例4
無作為化、非盲検、二期間、クロスオーバー、薬物動態試験を実施し、100mgの錠剤1個で投与されたエステトロール10mgの舌下バイオアベイラビリティと、エステトロール10mgを含有する83mgの錠剤に含有されたエステトロールの経口アベイラビリティを比較した。これらの錠剤は、絶食状態の女性健常者に舌下及び経口投与された。
【0105】
10名の健康な女性被験者は、下記判定基準に基づいて選択される:年齢45〜65歳(含む)、非喫煙者又は元喫煙者(投薬の少なくとも6ヵ月前)、体格指数(BMI)=18.5〜30kg/m
2(スクリーニング時を含む)。
【0106】
上記100mg舌下錠の組成は下記の表5に記載されている。
【0107】
【表8】
これらの錠剤の崩壊時間は非常に短い(平均40秒)。
【0108】
上記試験の第1及び第2の期間の開始時、午前07:00〜午前07:28の間に、被験者5名は、エステトロールの錠剤(錠剤重量100mg;エステトロール10mg)を1錠投与されることによって、エステトロールの舌下製剤の1回用量を摂取し、さらに被験者5名は、水200mLと一緒に飲み込んでエステトロールの錠剤(錠剤重量83mg;エステトロール10mg)を1錠投与されることによって、エステトロールの経口製剤の1回経口用量を摂取する。
【0109】
被験者は、錠剤の投与前少なくとも10時間及び投与後少なくとも4時間絶食することが求められる。上記薬剤の投与前1時間以内の水又は飲料の摂取は認められない。被験者は、錠剤の投与前1時間及び投与後2時間に水200mLを摂取する。被験者は、錠剤の投与後4時間から水及びフルーツティーを自由に摂取する。錠剤の投与前10.5時間並びに投与後4、6、9、及び13時間に標準食を供給する。
【0110】
第1及び第2の期間に行われた一連の事象を表6に示す:
【表9】
本試験で用いる血液及び尿のサンプリングスケジュールを表7に示す。
【0111】
【表10】
採取された血液サンプル中のエステトロール濃度は、HPLC/MS/MSを用いて確定する。尿サンプル中のエステトロールグルクロン酸抱合体(D−環)濃度も、HPLC/MS/MSを用いて確定する。
【0112】
これらの分析結果から、舌下投与されたエステトロールのバイオアベイラビリティは、経口投与されたエステトロールと同程度又はより優れていることが示される。さらに、上記データから、舌下投与されたエステトロールは、経口投与されたエステトロールと比較してバイオアベイラビリティがより早いことが示唆される。舌下によるエステトロールは、肝機能検査値への影響が少ない。