(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の肌状態改善用化粧料基剤>
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、水中油乳化剤型であることを特徴とする。
ここで、水中油乳化剤型は単純なO/W型エマルションに限らず、(O
1+O
2)/W型や(W/O)/W型等の複合エマルションでもよい。
また、そのエマルション粒子は、特に限定されないが、0.1〜10μmの平均粒子径のものが、バスケットウィーブ角層形成能に優れ、良好な肌状態改善効果が得られるため好ましい。
【0013】
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、通常、油相成分、水相成分、及び界面活性剤を含む処方で構成される。
油相成分は通常油性成分で構成され、油性成分はいわゆる油剤に限らず、25〜65℃の水に懸濁して1時間静置した後に水と相分離する成分(ただし界面活性剤を除く)を指す。
本発明の肌状態改善用化粧料基剤に配合し得る油性成分としては、極性油、非極性油、シリコーン油、天然油脂、炭化水素油等の油剤;紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等の紫外線防御剤;ビタミンAやビタミンE等の油溶性ビタミン等が挙げられる。
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、油剤を、基剤全体に対して好ましくは1〜70質量%、より好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%含有する。このような範囲で油剤を内相に含む水中油乳化剤型であることにより、バスケットウィーブ角層形成能がより高まる。
【0014】
油剤のうち、極性油としては、合成エステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、オクチルメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0015】
極性を有しないシリコーン油としてはシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン、ジメチコン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
極性を有するシリコーン油としてはジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等が挙げられる。
天然油脂として、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
炭化水素油としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、ワセリン、水添ポリ(C6−12オレフィン)、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0016】
水相成分は、水の他に、水溶性成分であれば特に限定されず、例えば、多価アルコールや高級アルコール等が挙げられる。なお、高級アルコールは、炭素数16〜22、好ましくは18〜22のアルコールを指す。
【0017】
本発明の肌状態改善用化粧料基剤には、前記水相成分のうち多価アルコールを含有することがこのましい。多価アルコールを含有することにより、バスケットウィーブ角層形成能がより高まる。
多価アルコールとしては、2価以上であれば特に限定されないが、3価以上のものが好ましい。具体的には、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、1,2,6−ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);
糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE−テトラハイドロフルフリルアルコール;POP−ブチルエーテル;POP・POE−ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP−グリセリンエーテル;POP−グリセリンエーテルリン酸;POP・POE−ペンタンエリスリトールエーテル等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせることができる。
これらのうち、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコールがより好ましい。
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、多価アルコールを、基剤全体に対して好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜30質量%含有する。
【0018】
高級アルコールは、通常は脂肪族アルコールであり、分岐はあってもなくてもよく、飽和又は不飽和のいずれでもよい。また、好ましくは一価のアルコールである。例えば、バチルアルコール、セタノール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデカノール、1−ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、及びエルシルアルコールが挙げられ、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコールが特に好ましい。なお、これらの一種又は二種以上を組み合わせることができる。
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、高級アルコールを、基剤全体に対して好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%含有する。
【0019】
界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられ、特に限定されない。
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、界面活性剤を、基剤全体に対して好ましくは0.1〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは1〜5質量%含有する。
【0020】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウ
ム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POEアルキルエーテルカルボン酸;POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0021】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3
,5−メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベン
ジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POEアルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0022】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0023】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等);グリセリンアルキルエーテル等の親油性のものが挙げられる。
また、親水性のものとして、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル等);POEソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等);POEグリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEモノオレエート等);POE脂肪酸エステル類(例えば、POEジステアレート、POEモノステアレート、POEモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POEアルキルエーテル類(例えば、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POE−ベヘニルエーテル、POE−2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等);POEアルキルフェニルエーテル類(例えば、POEノニルフェニルエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POPアルキルエーテル類(例えば、POE・POPセチルエーテル、POE・POP−2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等);テトラ POE・テトラPOP
エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等);POEミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POEソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POEプロピレングリコール脂肪酸エステル;POEアルキルアミン;POE脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0024】
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常化粧料基剤に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、保湿剤、防腐剤、粉末成分、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、酸化防止剤、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。
【0025】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、エチルパラベン、ブチルパラベン等が挙げられる。
【0026】
粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セ
リサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグ
ネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミ
リスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等
);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
【0027】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1− ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリ
ウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
【0029】
単糖としては、例えば、三炭糖(例えば、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−トレオース、エリスリトール等);五炭糖(例えば、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソース、D−アラビノース、D−リボース、D−リブロース、D−キシルロース、L−キシルロース等);六炭糖(例えば、D−グルコース、D−タロース、D−ブシコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ガラクトース、L−マンノース、D−タガトース等);七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等);八炭糖(例えば、オクツロース等);デオキシ糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース、6−デオキシ−L−ガラクトース、6−デオキシ−L−マンノース等);アミノ糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等)等が挙げられる。
【0030】
オリゴ糖としては、例えば、ショ糖、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α,α−トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等が挙げられる。
多糖としては、例えば、セルロース、クインスシード、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸等が挙げられる。
【0031】
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム) 、アシ
ルグルタミン酸塩、アシルβ−アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0032】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0033】
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0034】
pH調整剤としては、例えば、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、E及びその誘導体
、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0036】
有機変性粘土鉱物は、例えば、スメクタイト系(ヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト等)、カオリナイト、イライト、マリーン粘土鉱物(海泥)、デザートローズ粘土鉱物、パスカライト等の粘土鉱物を、4級アミン基やカルボキシル基等によって変性したものが挙げられる。市販されているものとしては、「ベントン38V(ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライト)」(エレメンティス社製)等を例示できる。これらは一般に、水中油乳化剤型の安定化剤として用いられる。
【0037】
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、通常の水中油乳化の手順により調製することができる。
【0038】
本発明の化粧料基剤は、皮膚において角層細胞が隙間なく接着してつまった状態(コンパクト角層)を改善し、角層細胞間に間隙があるかご状態を呈するバスケットウィーブ角層形成を促進する。後述の実施例で示されるように、バスケットウィーブ角層が形成された皮膚では角層水分量が増加し、皮膚柔軟性が向上し、肌色が改善し、成分貯留性・浸透性が向上し、キメが改善する等、肌状態が改善されるため、本発明の化粧料基剤は肌状態改善用途に好適である。肌状態が改善する事により、肌の老化を抑制したり、化粧のノリが良好になったり、肌の見た目が美しい印象を与えたりできる。なお、肌色の改善とは、ソフトフォーカス効果(ぼかし効果)により肌の色や質感が好印象になることや、肌色が明るくなる(明度が上がる)ことを指す。また、キメとは、皮膚表面の形態を指し、皮溝(皮膚表面を縦横・放射状に走る細かく浅い溝)や皮丘(皮溝で囲まれた微小の隆起)からなる皮膚紋理の細かさ/粗さ、整/歪により、良し悪しが評価される。
【0039】
本発明の肌状態改善用化粧料基剤は、肌状態改善成分として化粧料に好適に配合することができる。この際、他の任意成分を共に化粧料に配合することができる。
かかる化粧料の製造においては、本発明の肌状態改善用化粧料基剤に他の任意成分を添加してもよいし、本発明の肌状態改善用化粧料基剤を乳化調製する際に共に混合してもよい。
他の任意成分としては、例えば、;消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0040】
<本発明のスクリーニング方法>
本発明のスクリーニング方法は、培養皮膚におけるバスケットウィーブ(Basket
weave)角層形成を指標とする、肌状態改善用化粧料基剤のスクリーニング方法で
ある。
本スクリーニング方法は、培養皮膚を使用してin vitroで行うため、被験者か
ら皮膚試料を採取することなく、非侵襲的にスクリーニングを行うことができる。
なお、スクリーニングに使用する培養皮膚は、生体から採取した皮膚を培養したものでもよいし、三次元培養皮膚モデルとして培養・構築したものでもよい。
生体から採取し培養した培養皮膚を用いる場合は、角層が未成熟な状態のものが好ましい。
三次元培養皮膚モデルは、表皮基本構造の基底層から顆粒層、有棘層、及び角層を有する、正常ヒト表皮角化細胞から培養・構築したものを好ましく用いることができ、例えば市販のEPI-200キット(Mattek社)等を使用できる。
角層が未成熟な培養皮膚や、三次元培養皮膚モデルは、正常な皮膚とは異なり、バスケットウィーブ角層ではなくコンパクト角層を有しているが、肌状態改善作用を有する化粧料基剤を適用することによりバスケットウィーブ角層形成が促進されること、及びバスケットウィーブ角層形成と肌状態とに相関関係があることに基づき、該形成をスクリーニングの指標とすることができる。
なお、ここでいう肌状態改善とは、角層水分量増加、皮膚柔軟性向上、肌色改善、成分貯留・浸透性向上、及び/又はキメ改善をさす。
【0041】
具体的なスクリーニング手順の一例としては、定法に従って前培養した培養皮膚に対して、被験試料を添加し、さらに室温にて4〜48時間培養した後に、培養皮膚におけるバスケットウィーブ角層形成を評価する。
【0042】
バスケットウィーブ角層形成の評価は、培養皮膚の断面を観察することにより行うことができる。例えば、培養終了後の培養皮膚の切片を常法により作製して、ヘマトキシリンエオジン(HE)染色等を施した後にして光学顕微鏡等で観察すればよい。
この場合、パラフィン包埋から作製した切片において、角層最上部から最下部までの距離(角層距離)が、無処置の場合の角層距離に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上である場合に、該被験試料はバスケットウィーブ角層形成を促進すると判断することができる。あるいは、HE染色画像の角層部分のみの観察画像を切り出して、二値化処理後、全ピクセル数に対する白ピクセル(角層細胞間の間隙に対応)数の割合を算出するなどして、角層全体における間隙の割合を算出し、該割合が好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは40%以上の場合に、該被験試料はバスケットウィーブ角層形成を促進すると判断することができる。
【0043】
また、培養皮膚の角層蛋白質を検出することによっても、バスケットウィーブ角層形成を評価することもできる。例えば、培養終了後の培養皮膚の表面に対してテープストリッピングを行って採取した角層試料から角層蛋白質を検出すればよく、より好ましくはその分布を画像で取得する。角層蛋白質としては、細胞接着蛋白質、角層間物質、角層細胞構成成分等が挙げられ、好ましくは角層細胞接着因子(コルネオデスモゾーム)であり、より好ましくはその構成蛋白質であるデスモグレインである。
検出方法は、例えば特開2007−199053号公報に記載された、角層蛋白質の免疫染色による方法が好ましい。
この場合、例えば蛍光検出された角層蛋白質の分布が、角層細胞の全面であるか、角層細胞の辺縁部に偏在しているかを観察し、辺縁部に偏在している場合に、該被験試料はバスケットウィーブ角層形成を促進すると判断することができる。あるいは、デスモグレイン等の角層蛋白質が分解の進行により減少している場合、例えば特開2007−199053号公報のように、蛍光検出された角層蛋白質の角層細胞1個当たりのピクセル数をカウントし、無処置の場合に対して好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下であ
る場合に、該被験試料はバスケットウィーブ角層形成を促進すると判断することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<製造例>
表1に示す処方に従って、水中油乳化剤型の実施例1〜4の組成物を製造した。すなわち、A成分、B成分、及びC成分をそれぞれ加熱溶解後、C成分にA成分、続いてB成分を撹拌しながら徐々に加えて乳化して、水中油乳化組成物を得た。なお、多価アルコールの含有量が、実施例1は10.0%であるのに対し、実施例2〜4は18.0%である。また、油剤の種類について、実施例1〜3は極性油であるメドフォームの種子油を含有するが、実施例4はこれを非極性油であるスクワランへ変更した。
表2に示す処方に従って、油中水乳化剤型の比較例1の組成物を製造した。すなわち、D成分及びE成分をそれぞれ加熱溶解した後、D成分にE成分を撹拌しながら徐々に加えて乳化して、油中水乳化組成物を得た。
また、比較例2としてワセリン(大洋製薬株式会社製)を用意した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
<試験例1>三次元培養皮膚モデルを用いたin vitroスクリーニング
市販の三次元培養皮膚モデル(EPI-200キット、Mattek社)を用いて試験を行った。キ
ットの使用方法に従って皮膚モデルを培養し、皮膚モデルの各カップ内(角層上)に、被験物質として実施例1〜5及び比較例1〜2の組成物を100μLずつ添加し、室温にて4〜48時間培養した。培養終了後、培養皮膚モデルをPBS(−)で洗浄し、10%中性緩衝ホルマリン液にて固定、パラフィン包埋し、常法通りに組織切片を作製した。また、対照として無処置の皮膚モデルについても、同様に培養し、組織切片を作製した。作製した各組織切片についてヘマトキシリンエオジン(HE)染色を施し、光学顕微鏡観察により、角層表皮の組織構造を観察した(
図1)。染色角層の撮像を用いて角層距離を測定し、無処置の角層に対する割合を算出した(表3)。また、二値化処理した角層部分の画像において、全ピクセル数に対する白ピクセル数の割合を算出して、角層全体に対する間隙の割合とした(表3)。
【0049】
図1、表3に示すように、無処置の皮膚モデル(対照)では角層細胞が隙間なく接着しているのに対し、実施例1〜4の水中油乳化剤型の組成物を添加した皮膚モデルでは、角層細胞間の間隙が形成されて角層距離が大きくなり、バスケットウィーブ角層の形成が促進されていることが確認された。特に、多価アルコールを18.0質量%含有する実施例2〜4の方が、10質量%含有する実施例1よりも角層における間隙の割合が大きく、バスケットウィーブ角層の形成は進んでいた。比較例1の油中水乳化剤型の組成物及び比較例2のワセリンを添加した皮膚モデルでは、いずれも無処置の対照皮膚モデルと同様にバスケットウィーブ角層の形成は認められなかった。
これらの結果より、水中油乳化剤型の基剤がバスケットウィーブ角層の形成に有効であり、特定量の多価アルコールを含有することがより好ましいことが示された。
【0050】
【表3】
【0051】
<試験例2>水中油乳化剤型の基剤のヒトに対する連用試験
実施例3の水中油エマルション処方を30〜40代の女性被験者22名に、1日2回、1か月間連続して使用してもらった。連用前及び1ヵ月連用後に、Skicon−200により角層水分量を、ヴィーナストロンを用いて往路2g荷重時の周波数変化(Δf)を指標に角層柔軟性を、それぞれ測定した。また、ビデオマイクロスコープを用いて皮膚表面のキメの状態(皮溝の鮮明度及び皮丘の形)を観察し、熟練者が5段階スコア(悪化、やや悪化、変化なし、やや改善、改善)で評価した。また、同被験者からテープストリッピング採取した角層細胞のデスモグレイン1の免疫染色を行い、その存在状態を指標に、バスケットウィーブ角層の形成状態を調べた。
【0052】
なお、デスモグレイン1の免疫染色は、特開2007−199053号公報及びY. Naoe et al. Journal of Dermatological Science 57 (2010) 192-198を参考にした。
具体的には、市販の粘着テープを用い、被験者の頬部の角層細胞をテープを用い剥離、採取し、当該テープをスライドガラスに貼付し、キシレン中で半日処理して粘着テープを除去した。スライドガラスに付着した角層細胞に対し、デスモグレイン1の免疫染色を行った。当該免疫染色は、一次抗体としてAnti-Desmogrein 1, Mouse-Mono [Dsg1-P23](Progen 65110)を用い、二次抗体としてAlexa Fluor 488 Goat Anti-mouse IgG(Invitrogen A-11001)を用いて行い、染色された角層標本を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。
【0053】
図2に角層水分量の結果(全被験者の平均)を示す。実施例3の水中油乳化剤型の組成物の1ヵ月連用により、角層水分量が上昇したことが分かる。
図3に角層柔軟性の結果を示す(全被験者の平均)。縦軸の周波数変化Δf[Hz]の絶対値が大きいほど柔軟性が高いことを表すことから、実施例3の水中油乳化剤型の組成物の1ヵ月連用により、角層柔軟性が向上したことが分かる。
図4に一被験者の皮膚表面の撮像を示す。また、5段階スコアによるキメの状態評価の結果を表4に示す。実施例3の水中油乳化剤型の組成物の1ヵ月連用により、キメの状態(皮溝の鮮明度及び皮丘の形)に改善が認められたことが分かる。
【0054】
【表4】
【0055】
図5に一被験者のデスモグレイン1の免疫染色した角層細胞の撮像を示す。また、特開2007−199053号公報を参照して、蛍光検出されたデスモグレイン1の角層細胞1個あたりのピクセル数をカウントした結果を
図6に示す(全被験者の平均)。実施例3の水中油乳化剤型の組成物の1ヵ月連用前には細胞全面に存在していたデスモグレイン1は、1ヵ月連用後には、分解が進んで細胞辺縁部のみに残存している様子が観察され、連用前と比較して連用後では、角層細胞1個あたりのデスモグレイン1発現量が有意に減少していることが確認された。実施例3の水中油乳化剤型の組成物の1ヵ月連用により、バスケットウィーブ角層の形成が促進されたと考えられる。
【0056】
<試験例3>バスケットウィーブ角層の光拡散性の検討
試験例1と同様に三次元皮膚モデルを培養し、皮膚モデルの各カップ内(角層上)に、実施例3の組成物を100μLずつ添加し、室温にて24時間培養して、バスケットウィーブ角層を形成させた。比較として組成物を未添加のものも用意し、未成熟な角層(コン
パクト角層)とした。
作製後の試料に対して、ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業社製)を用いて、全光線透過率、拡散透過率、及び平行透過率を測定し、ヘイズ(Haze(%)=拡散透過率/全光透過率×100%)を算出した。結果を
図7(a)に示す。
また、作製後の試料において、光学顕微鏡(明視野)により、透過拡散光を直接撮影した。結果を
図7(b)に示す。
【0057】
バスケットウィーブ角層を形成した三次元培養皮膚モデルは、コンパクト角層の三次元培養皮膚モデルと比較して有意に高いヘイズを示し、光拡散性に優れることが示された(
図7(a))。また、透過拡散光の撮影像からも、バスケットウィーブ角層は、コンパクト角層と比較して、光拡散性に優れることがわかる(
図7(b))。
これらの結果から、バスケットウィーブ角層の形成により肌の光拡散性が向上し、そのソフトフォーカス効果(ぼかし効果)によって肌の色や質感が改善される可能性が示された。
【0058】
<試験例4>バスケットウィーブ角層と肌色の明るさとの相関の検討
50代〜60代の女性被験者41名に対して、分光測色器によりL*値を測定した。
同被験者からテープストリッピングにより角層細胞を採取し、試験例2と同様に該角層細胞のデスモグレイン1の免疫染色を行った。取得した免疫染色像のうち、角層細胞が存在しない箇所を削除した残余の全ピクセル数に対して、デスモグレイン1を示すピクセル数の割合を算出した。この値が小さいほど、コルネオデスモゾームの分解が進行していること、すなわちバスケットウィーブ角層形成度合いが高いことを示す。
解析ソフト(JMP ver.10.0(SAS社製))を使用して、L*値と前記割合との相関分析を行った。
【0059】
結果を
図8に示す。コルネオデスモゾームの分解が進み、バスケットウィーブ角層形成度合いが高いほど、L*値が大きく、肌色が明るいことが示された。この結果から、バスケットウィーブ角層の形成により、肌色の明るさが向上することが明らかとなった。
【0060】
<試験例5>バスケットウィーブ角層と角層柔軟性との相関の検討(1)
20代〜70代の女性被験者93名に対して、ヴィーナストロンにより往路2g荷重時の周波数変化(Δf)を指標に、角層柔軟性を測定した。
同被験者からテープストリッピングにより角層細胞を採取し、試験例2と同様に該角層細胞のデスモグレイン1の免疫染色を行った。デスモグレイン1の分解の程度を指標に、すなわち角層細胞に残存しているコルネオデスモゾームが辺縁部に偏在している度合いが高いかを観察して、各被験者を順位づけした。この順位が小さいほど、コルネオデスモゾームが辺縁部に偏在している度合いが高いこと、すなわちバスケットウィーブ角層形成度合いが高いことを示す。
解析ソフト(JMP ver.10.0(SAS社製))を使用して、周波数変化(Δf)値と前記順位との相関分析を行った。
【0061】
結果を
図9に示す。コルネオデスモゾームの分解が進み、バスケットウィーブ角層形成度合いが高いほど、周波数変化(Δf)値の絶対値が大きく、角層柔軟性が高いことが示された。この結果から、バスケットウィーブ角層の形成により、角層柔軟性が向上することが明らかとなった。
【0062】
<試験例6>バスケットウィーブ角層と角層柔軟性との相関の検討(2)
20代〜60代の女性被験者98名に対して、ヴィーナストロンにより往路2g荷重時の周波数変化(Δf)を指標に、角層柔軟性を測定した。
同被験者からテープストリッピングにより角層細胞を採取し、試験例2と同様に該角層
細胞のデスモグレイン1の免疫染色を行った。取得した免疫染色像から、試験例4と同様に全ピクセル数に対するデスモグレイン1を示すピクセル数の割合を算出した。
解析ソフト(JMP ver.10.0(SAS社製))を使用して、周波数変化(Δf)値と前記割合との相関分析を行った。
【0063】
結果を
図10に示す。コルネオデスモゾームの分解が進み、バスケットウィーブ角層形成度合いが高いほど、周波数変化(Δf)値の絶対値が大きく、角層柔軟性が高いことが示された。この結果からも、バスケットウィーブ角層の形成により、角層柔軟性が向上することが明らかとなった。
【0064】
<試験例7>バスケットウィーブ角層の成分貯留性・浸透性の検討
試験例3と同様に、三次元皮膚培養モデルを用いて、バスケットウィーブ角層及びコンパクト角層の試料を作製した。
作成後の試料に対して、色素(0.05%トルイジンブルー溶液)を100μL添加して37℃にて培養した。3時間後に組織を回収し、OCTコンパウンドにて凍結包埋し、常法通りに組織切片を作製した。光学顕微鏡観察により、表皮における色素の局在状態を観察した。
【0065】
結果を
図11に示す。バスケットウィーブ角層を形成した三次元培養皮膚モデルは、コンパクト角層の三次元培養皮膚モデルと比較して、角層における色素の貯留が大きいことがわかる。また、コンパクト角層の三次元培養皮膚モデルでは表皮層への色素の浸透はみられないが、バスケットウィーブ角層を形成した三次元培養皮膚モデルでは表皮層へ色素が浸透している様子が確認された。この結果から、バスケットウィーブ角層の形成により、肌における有効成分の貯留性・浸透性が向上する可能性が示された。