(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記集合体ケーブルとして、前記JIS G 3536で規定される呼び名が7本より12.7mmのPC鋼より線の12本構成または7本より15.2mmのPC鋼より線の12本構成と同等以上の緊張力を、7本構成で導入できるJIS G 3536で規定されていない、かつ、呼び名が異なる高強度PC鋼より線を採用した、請求項1に記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
前記7本構成において、内層1本の高強度PC鋼より線と外層6本の高強度PC鋼より線との間に形成される空間について、前記プレストレストコンクリート用緊張材の断面積比で50%以上に前記樹脂配合物が充填されている、請求項5に記載のプレストレストコンクリート用緊張材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なポストテンション工法においては、セメントミルク等のグラウトが全長にわたり完全に充填されるように断面積比で60%前後の空隙率(=(シース断面積−集合体ケーブル断面積)/シース断面積)を設定して、シース径が設定される。このように緊張後のセメントミルク等の充填性の品質を安定させる必要があるために大きな空隙率のシースを用いる必要がある。
【0006】
しかしながら、このように緊張後のセメントミルク等のグラウトの充填性の確保を図る必要があるために、シース断面積から集合体ケーブル断面積を差し引いた面積(空隙)がシース断面積に占める割合を表す空隙率を60%程度と大きくしなければならず、力学上必要な集合体ケーブル径よりシース径が相当に大きくなるので、狭い施工箇所等においては施工上好ましくない場合がある。
【0007】
また、一般的なポストテンション工法において用いられる集合体ケーブルとしては、上述したようにPC鋼より線を12本束ねた集合体ケーブルが採用され、その構成は内層3本でその内層を取り巻くように外層9本で構成される。
しかしながら、このように12本束ねた集合体ケーブルとしているために、内層にある3本のPC鋼より線(内層ストランド)は外層の9本のPC鋼より線(外層ストランド)に囲まれており、セメントミルク等のグラウトが侵入できる外層ストランドの隙間は内層ストランド1本あたり3方向しかなく、ストランドとセメントミルク等のグラウトとが接
する面積がほとんど得られず、PC鋼より線の緊張力をコンクリートとの付着により伝達させてプレストレスを導入する内ケーブルにおける合理的な付着力を得られない場合がある。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、プレストレストコンクリートのポストテンション方式において緊張力を導入するプレストレストコンクリート用緊張材であって、施工性が好ましく(狭い施工箇所であっても施工性が好ましく、さらにシース配置作業を省略するともにセメントミルク等のグラウト充填作業を省略して施工性が好ましく)、充填されるグラウトによる防錆等の品質安定性を向上させるとともに、PC鋼より線の緊張力をコンクリートとの合理的な付着力を実現して、十分なプレストレスを導入することのできるプレストレストコンクリート用緊張材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るプレストレストコンクリート用緊張材は、以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るプレストレストコンクリート用緊張材は、プレストレストコンクリートのポストテンション方式において緊張力を導入するプレストレストコンクリート用緊張材であって、複数本のPC鋼より線で構成される集合体ケーブルがシースで被覆され、前記PC鋼より線と前記PC鋼より線との間および前記PC鋼より線と前記シースとの間に、前記集合体ケーブルの緊張後に硬化する樹脂配合物が充填され、前記集合体ケーブルとして、JIS G 3536で規定されるPC鋼より線の12本構成と同等以上の緊張力を7本構成で導入できる高強度PC鋼より線を採用した。
【0010】
好ましくは、前記集合体ケーブルとして、前記JISで規定される呼び名が7本より12.7mmのPC鋼より線の12本構成または7本より15.2mmのPC鋼より線の12本構成と同等以上の緊張力を、7本構成で導入できる高強度PC鋼より線を採用するように構成することができる。
さらに好ましくは、前記7本より12.7mmのPC鋼より線の12本構成に対して、7本より15.2mmの高強度PC鋼より線の7本構成を採用し、前記7本より15.2mmのPC鋼より線の12本構成に対して、19本より17.8mmの高強度PC鋼より線の7本構成を採用して、同等以上の緊張力を導入するように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記12本構成のPC鋼より線は前記JISで規定されるB種鋼材であって、前記高強度PC鋼より線の引張強度は、前記B種
鋼材のPC鋼より線の引張強度に対して115%〜125%であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記12本構成は、内層3本かつ外層9本で、前記7本構成は、内層1本かつ外層6本であるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記7本構成において、内層1本の高強度PC鋼より線と外層6本の高強度PC鋼より線との間に形成される空間について、前記プレストレストコンクリート用緊張材の断面積比で50%以上に前記樹脂配合物が充填されているように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るプレストレストコンクリート用緊張材によれば、施工性が好ましく(狭い施工箇所であっても施工性が好ましく、さらにシース配置作業を省略するともにセメントミルク等のグラウト充填作業を省略して施工性が好ましく)、充填されるグラウトによる防錆等の品質安定性を向上させるとともに、PC鋼より線の緊張力をコンクリートとの合理的な付着力を実現して、十分なプレストレスを導入することのできる、プレストレストコンクリートのポストテンション方式において緊張力を導入するプレストレストコンクリート用緊張材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るプレストレストコンクリート用緊張材(以下、コンクリート用緊張材または単に緊張材と記載する場合がある)を、図面に基づき詳しく説明する。なお、
図1〜
図4においてPC鋼より線(ストランド)に施されたハッチングは、ストランド断面を表すものではなく、内層ストランドを示している。また、PC鋼より線とPC鋼より線との間およびPC鋼より線とシースとの間に充填または塗布される樹脂配合物(集合体ケーブルの緊張後に硬化)についてはハッチングを施していない。
【0016】
まず、本実施の形態に係るプレストレストコンクリート用緊張材100、200を大略的に説明する。このプレストレストコンクリート用緊張材100、200は、プレストレストコンクリートのポストテンション方式において緊張力を導入するプレストレストコンクリート用緊張材である。これらの緊張材100、200は、複数本(ここでは7本)の高強度PC鋼より線110、210で構成される集合体ケーブル(高強度PC鋼より線110×7本構成または高強度PC鋼より線210×7本構成)がシース130、230で被覆されている。そして、高強度PC鋼より線110、210と高強度PC鋼より線110、210との間および高強度PC鋼より線110、210とシース130、230との間に、集合体ケーブルの緊張後に硬化する樹脂配合物120、220が予め充填(高強度PC鋼より線110、120に樹脂配合物120、220が予め塗布)されている。
【0017】
ここで、本発明においては、この集合体ケーブル(高強度PC鋼より線110×7本構成または高強度PC鋼より線210×7本構成)として、JIS G 3536で規定されるPC鋼より線の12本構成と同等以上の緊張力を7本構成で導入できる高強度PC鋼より線を採用していることを特徴とする。さらに詳しくは、集合体ケーブルとして、JISで規定される呼び名が7本より12.7mmのPC鋼より線の12本構成または7本より15.2mmのPC鋼より線の12本構成と同等以上の緊張力を、7本構成で導入できる高強度PC鋼より線を採用している。
【0018】
さらに詳しくは、
図2(A)に従来技術として示す7本より12.7mmのPC鋼より線の12本構成に対して、(この構成と同等以上の緊張力を実現できる)7本より15.2mmの高強度PC鋼より線の7本構成を採用した本実施の形態に係るプレストレストコンクリート用緊張材100を
図1および
図2(B)に示す。
また、
図3(A)に従来技術として示す7本より15.2mmのPC鋼より線の12本構成に対して、(この構成と同等以上の緊張力を実現できる)19本より17.8mmの高強度PC鋼より線の7本構成を採用した本実施の形態に係る別のプレストレストコンクリート用緊張材200を
図3(B)に示す。
【0019】
ここで、従来技術として、
図2(A)に示した緊張材1100に用いられる12本構成のPC鋼より線1110(7本より)、および、
図3(A)に示した緊張材2200に用いられる12本構成のPC鋼より線2210(7本より)は、JISで規定されるB種鋼材である。これに対して、
図2(B)に示した緊張材100に用いられる7本構成の高強度PC鋼より線110(7本より)、および、
図3(B)に示した緊張材200に用いられる7本構成の高強度PC鋼より線210(19本より)は、高強度PC鋼より線であって、高強度PC鋼より線の引張強度は、B種
鋼材のPC鋼より線の引張強度に対して115%〜125%である。
【0020】
そして、従来技術として、
図2(A)に示した緊張材1100における12本構成のPC鋼より線1110(7本より)、および、
図3(A)に示した緊張材2200における12本構成のPC鋼より線2210(7本より)においては、内層3本(
図2(A)の内
層ストランド1110Cおよび
図3(A)の内層ストランド2210C)、かつ、外層9本(
図2(A)の外層ストランド1110Sおよび
図3(A)の外層ストランド2210S)により構成されている。これに対して、本実施の形態として、
図2(B)に示した緊張材100における7本構成の高強度PC鋼より線110(7本より)、および、
図3(B)に示した緊張材200における7本構成の高強度PC鋼より線210(19本より)においては、内層1本(
図2(B)の内層ストランド110Cおよび
図3(B)の内層ストランド210C)、かつ、外層6本(
図2(B)の外層ストランド110Sおよび
図3(B)の外層ストランド210S)により構成されている。
【0021】
さらに詳しくは、本実施の形態として、
図2(B)に示した緊張材100および
図3(B)に示した緊張材200の7本構成(内層1本かつ外層6本)において、内層1本の高強度PC鋼より線と外層6本の高強度PC鋼より線との間に形成される空間について、プレストレストコンクリート用緊張材100、200の断面積比で50%以上に樹脂配合物が充填されている。
【0022】
大略的にはこのような特徴を備えた本実施の形態に係るプレストレストコンクリート用緊張材100、200についてさらに詳しく説明する。
図1(A)に緊張材100の斜視図、
図1(B)にこの緊張材100の集合体ケーブル(7本構成)を構成する1本の高強度PC鋼より線(ストランド)110(1本の内層ストランド110Cおよび6本の外層ストランド110S)の外観図を、
図1(C)に1本の高強度PC鋼より線(ストランド)110の断面図をそれぞれ示す。
【0023】
このプレストレストコンクリート用緊張材100は、7本の高強度PC鋼より線110で構成される集合体ケーブル(PC鋼より線110×7本構成)がシース130で被覆されており、高強度PC鋼より線110と高強度PC鋼より線110との間および高強度PC鋼より線110とシース130との間に、集合体ケーブルの緊張後に硬化する樹脂配合物120が予め充填されている。すなわち、この緊張材100は、7本の高強度PC鋼より線110、シース130および樹脂配合物120により構成される。なお、このような構成自体は、緊張材100と緊張材200とで共通するものである。また、
図1(B)に示すように、高強度PC鋼より線110は高強度PC鋼線112を7本(高強度PC鋼より線210においては高強度PC鋼線を19本)撚り合わせて形成されている。ただし、
図1(A)においては、撚り合わせた状態を示していない。ここで、強固に撚り合わせられたPC鋼線の間への樹脂配合物の侵入については、本発明において考慮していない。すなわち、強固に撚り合わせられているために、たとえばPC鋼線112とPC鋼線112との間への樹脂配合物の侵入は現実的に考えられないためである。
【0024】
図2を参照して、この緊張材100と同等以上の緊張力を導入できる緊張材1100(従来技術)と比較しながら、この緊張材100の詳細な構成について説明する。
図2(A)に示す緊張材1100と
図2(B)に示す緊張材100とでは、集合体ケーブルおよびPC鋼より線(ストランド)が基本的に異なり、複数本のPC鋼より線とシースと樹脂配合物とにより構成される点は同じであって、高強度PC鋼より線110にPC鋼より線1110が、シース130にシース1130が、樹脂配合物120に樹脂配合物1120が、それぞれ対応する。
【0025】
図2(A)に示すPC鋼より線(ストランド)1110は(内層ストランド1110Cも外層ストランド1110Sも)、JISで規定される呼び名が7本より12.7mmのPC鋼より線(B種鋼材)である。このPC鋼より線(ストランド)1110を、内層側に3本(内層ストランド1110C)、外層側に9本(外層ストランド1110S)を配置している。
【0026】
それに対して、
図2(B)に示す高強度PC鋼より線(ストランド)110は(内層ストランド110Cも外層ストランド110Sも)、7本より15.2mmの高強度PC鋼より線である。この高強度PC鋼より線(ストランド)110を、内層側に1本(内層ストランド110C)、外層側に6本(外層ストランド110S)を配置している。
図3を参照して、(この緊張材100とは別の)緊張材200と同等以上の緊張力を導入できる緊張材2200(従来技術)と比較しながら、この緊張材200の詳細な構成に
ついて説明する。
図3(A)に示す緊張材2200と
図3(B)に示す緊張材200とでは、集合体ケーブルおよびPC鋼より線(ストランド)が基本的に異なり、複数本のPC鋼より線とシースと樹脂配合物とにより構成される点は同じであって、高強度PC鋼より線210にPC鋼より線2210が、シース230にシース2230が、樹脂配合物220に樹脂配合物2220が、それぞれ対応する。
【0027】
図3(A)に示すPC鋼より線(ストランド)2210は(内層ストランド2210Cも外層ストランド2210Sも)、JISで規定される呼び名が
7本より15.2mmのPC鋼より線(B種鋼材)である。このPC鋼より線(ストランド)2210を、内層側に3本(内層ストランド2210C)、外層側に9本(外層ストランド2210S)を配置している。
【0028】
それに対して、
図3(B)に示す高強度PC鋼より線(ストランド)210は(内層ストランド210Cも外層ストランド210Sも)、19本より17.8mmの高強度PC鋼より線である。この高強度PC鋼より線(ストランド)210を、内層側に1本(内層ストランド210C)、外層側に6本(外層ストランド210S)を配置している。
このように、
図2(B)に示す本実施の形態に係る緊張材100は
図2(A)に示す緊張材1100と同等の緊張力を導入でき、
図3(B)に示す本実施の形態に係る緊張材200は
図3(A)に示す緊張材2200と同等の緊張力を導入できる。これについて、以下において、さらに詳しく説明する。なお、以下においては、ストランド12本構成の緊張材1100および緊張材2200(ともに従来技術)と、ストランド7本構成の緊張材100および緊張材200(ともに本実施の形態)との差異については、PC鋼より線の線径等を除いて同じであって、このストランド12本構成をストランド7本構成に変更したことが大きな特徴であるので、これに伴う作用効果について説明する。
【0029】
図2(A)および
図3(A)に示すストランド12本構成においては、内層ストランド3本および外層ストランド9本で構成される。12本のストランドに樹脂配合物を塗布した後にシース内に挿入する場合において(または12本のストランドをシース内に挿入した後に樹脂配合物を充填する場合において)、3本の内層ストランドへは9本の外層ストランドの間から樹脂配合物が白抜き矢印に示すように侵入していく。このため、1本の内層ストランドあたり3方向のみから樹脂配合物が侵入するに過ぎない。
【0030】
この結果、
図2(A)に示した緊張材1100および
図3(A)に示した緊張材2200の12本構成(内層3本かつ外層9本)においては、内層3本のPC鋼より線と外層9本のPC鋼より線との間に形成される空間について、プレストレストコンクリート用緊張材1100、2200の断面積比で50%以上に樹脂配合物が充填されることはない。その結果、内層ストランドに対して樹脂配合物を十分に塗布(または充填)することができないために、ストランドと樹脂配合物との付着力を合理的に確保することができない。なお、
図2(A)に示した緊張材1100および
図3(A)に示した緊張材2200(におけるPC鋼より線を形成するPC鋼線(112)の配置)は、V軸を対称軸とした線対称であって、H軸を対称軸とした線対称ではなく、緊張材の断面中心(V軸とH軸との交点)を対称の中心とした点対称でもない。
【0031】
一方、
図2(B)および
図3(B)に示すストランド7本構成においては、内層ストランド1本および外層ストランド6本で構成される。7本のストランドに樹脂配合物を塗布した後にシース内に挿入する場合において(または7本のストランドをシース内に挿入した後に樹脂配合物を充填する場合において)、1本の内層ストランドへは6本の外層ストランドの間から樹脂配合物が白抜き矢印に示すように侵入していく。このため、1本の内層ストランドあたり6方向から樹脂配合物が侵入することになる。
【0032】
この結果、
図2(B)に示した緊張材100および
図3(B)に示した緊張材200の7本構成(内層1本かつ外層6本)においては、内層1本の高強度PC鋼より線と外層6本の高強度PC鋼より線との間に形成される空間について、プレストレストコンクリート用緊張材100、200の断面積比で50%以上に樹脂配合物が充填されることになる。その結果、内層ストランドに対して樹脂配合物を十分に塗布(または充填)することができるために、ストランドと樹脂配合物との付着力を合理的に確保することができる。なお
、
図2(B)に示した緊張材100および
図3(B)に示した緊張材200(におけるPC鋼より線を形成するPC鋼線(112)の配置)は、V軸を対称軸とした線対称であって、H軸を対称軸とした線対称であって、緊張材の断面中心(V軸とH軸との交点)を対称の中心とした点対称である。
【0033】
このように、従来技術に係る緊張材1100および緊張材2200の場合、集合体ケーブルの直径(
図2および
図3における点線で示される円の直径)は力学上必要な直径よりも大きくならざるを得ず、かつ、内層ストランドに対する樹脂配合物の付着力を合理的に確保することができない。
これに対して、本実施の形態に係る緊張材100および緊張材200の場合、従来技術のように12本束ねた集合体ケーブルの構成ではなく(内層にある3本のストランドが9本の外層ストランドに囲まれた構成であるために樹脂配合物が侵入できる外層ストランドの間は内層ストランド1本あたり3方向しかない構成ではなく)、7本束ねた集合体ケーブルの構成であって、内層にある1本のストランドが6本の外層ストランドに囲まれた構成であるために樹脂配合物が侵入できる外層ストランドの間は内層ストランド1本あたり6方向もあるために、樹脂配合物と内層ストランドとが接する面積を十分に確保できるので合理的な付着力を得ることができる。
【0034】
さらに、
図2および
図3を参照すると、
図2において、
(L(1100A)×6+L(1100B)×3)>(L(100)×6)、
((L(1100A)×6+L(1100B)×3)/9)<L(100)、
図3において、
(L(2200A)×6+L(2200B)×3)<(L(200)×6)、
((L(2200A)×6+L(2200B)×3)/9)<L(200)、
となっている。
【0035】
すなわち、
図3においては、外層ストランドの外側表面積の総和が大きくなり、かつ、1ストランドあたりの外側表面積(平均表面積)が大きくなっているために、
図2においては、外層ストランドの外側表面積の総和が大きくならないものの1ストランドあたりの外側表面積(平均表面積)が大きくなっているために、(少なくとも)外層ストランド1本あたりの樹脂配合物の付着面積を増加させることができる。この結果、樹脂配合物と外層ストランドとが接する面積を十分に確保できるので、合理的な付着力をさらに得ることができる。なお、本発明においては、外層ストランドの外側表面積の総和および外層1ストランドあたりの外側表面積(平均表面積)の少なくともいずれかが、従来の12本構成(内層3本かつ外層9本)よりも大きくなることにより樹脂配合物と外層ストランドとが接する面積を十分に確保できて合理的な付着力をさらに得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0036】
また、特許文献1に開示された従来技術に対しては、シース断面積から鋼材断面積を差し引いた面積(空隙)がシース断面積に占める割合を表す空隙率を60%程度とすることにより緊張後のセメントミルク等のグラウトの充填性を確保していたために、力学上必要なシース径(緊張材径)よりも相当に大きいシース径が必要であったが、本実施の形態に係る緊張材100および緊張材200の場合には高強度PC鋼より線110、210と高強度PC鋼より線110、210との間および高強度PC鋼より線110、210とシース130、230との間に、集合体ケーブルの緊張後に硬化する樹脂配合物120、220が予め充填されているために、特許文献1に開示された従来技術のように、集合体ケーブルに対して大きな空隙率を備えた径の大きなシースを採用する必要がない。
【0037】
図4に、
図2(A)および
図2(B)ならびに
図3(A)および
図3(B)にそれぞれ示したプレストレストコンクリート用緊張材の特性を示す。
この
図4に示すように、
・7本より12.7mmのPC鋼より線の12本構成(従来技術)に対して、7本より15.2mmの高強度PC鋼より線の7本構成を採用した本実施の形態に係るプレストレストコンクリート用緊張材100は、小さい径かつ軽い単位重量であるにもかかわらず、従
来技術と同等以上の緊張力を導入することができ、
・7本より15.2mmのPC鋼より線の12本構成(従来技術)に対して、19本より17.8mmの高強度PC鋼より線の7本構成を採用した本実施の形態に係る別のプレストレストコンクリート用緊張材200は、小さい径かつ軽い単位重量であるにもかかわらず、従来技術と同等以上の緊張力を導入することができ、
ることがわかる。
【0038】
このように本実施の形態に係る緊張材100および緊張材200は、以下の作用効果を発現することができる。
(1)JIS G 3536で規定されるB種鋼材のPC鋼より線に替えて高強度PC鋼より線を採用することにより集合体ケーブルを構成するストランドの必要な数を(12本から7本へ)減少することができ、集合体ケーブルの径を小さく、かつ、単位重量を軽く、抑えることができる。
(2)12本構成(内層3本かつ外層9本)を7本構成(内層1本かつ外層6本)に集合体ケーブルのストランド構成(本数および配置)を変更することにより、内層ストランド1本あたりの樹脂配合物の充填性の向上および付着面積の上昇、ならびに、外層ストランド1本あたりの樹脂配合物の付着面積の上昇に起因して、合理的な付着力を実現することができる。
(3)樹脂配合物を施工前に集合体ケーブルに塗布することによりセメントミルク等のグラウトの充填性の確保のための60%程度もの空隙率は必要なくなるために(特許文献1に開示された従来技術に対して)シース外径を小径化することができる。
【0039】
以上のようにして、プレストレストコンクリートのポストテンション方式において緊張力を導入するプレストレストコンクリート用緊張材であって、施工性が好ましく(狭い施工箇所であっても施工性が好ましく、さらにシース配置作業を省略するともにセメントミルク等のグラウト充填作業を省略して施工性が好ましく)、充填されるグラウトによる防錆等の品質安定性を向上させるとともに、PC鋼より線の緊張力をコンクリートとの合理的な付着力を実現して、十分なプレストレスを導入することのできる、プレストレストコンクリート用緊張材を提供することができる。
【0040】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。