特許第6863551号(P6863551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863551
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ホイールのための遮熱構造体
(51)【国際特許分類】
   B60B 7/02 20060101AFI20210412BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20210412BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20210412BHJP
【FI】
   B60B7/02 R
   B32B33/00
   B60B7/02 S
   B32B7/027
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-530720(P2017-530720)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公表番号】特表2018-505086(P2018-505086A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2015080245
(87)【国際公開番号】WO2016097159
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】01994/14
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514091231
【氏名又は名称】ムベア カルボ テック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MUBEA CARBO TECH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】レンナー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ, セバスティアン
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−254201(JP,A)
【文献】 実開昭62−078504(JP,U)
【文献】 特開昭52−051616(JP,A)
【文献】 特開平06−092101(JP,A)
【文献】 特開平02−038101(JP,A)
【文献】 特開昭64−016401(JP,A)
【文献】 特開2001−058502(JP,A)
【文献】 西独国実用新案公開第29506703(DE,U)
【文献】 独国特許出願公開第10006400(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/00−11/10
B60B 17/00−19/14
B32B 7/027
B32B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が複合材料から形成されるベース構造体(11)を備えるホイール(1)のための遮熱構造体(8)であって、
当該遮熱構造体(8)は、前記ベース構造体(11)上に配置され、前記ベース構造体(11)を少なくとも部分的に覆っており、前記ベース構造体(11)に少なくとも部分的に埋め込まれ、
前記遮熱構造体(8)は、少なくとも1つの、メッシュを備えた高熱伝導層(12)を備え、
前記高熱伝導層(12)は、前記遮熱構造体(8)および/または下側の構造体のための耐荷重構造体として機能を果たす、遮熱構造体(8)。
【請求項2】
少なくとも1つの熱反射層(9)を備える、請求項1に記載の遮熱構造体(8)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの熱反射層(9)が金属又はセラミック材料から形成されている、請求項2に記載の遮熱構造体(8)。
【請求項4】
前記遮熱構造体(8)が少なくとも1つの低熱伝導層(10)を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遮熱構造体(8)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの低熱伝導層(10)が、連続体プラスチック及び/又は多孔質プラスチック及び/又は繊維強化プラスチック及び/又は連続体セラミック材料及び/又は繊維強化セラミック材料及び/又は多孔質セラミック材料から形成されている、請求項4に記載の遮熱構造体(8)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの高熱伝導層(12)が、金属シート及び/又は金属箔及び/又は金属メッシュ及び/又は金属織物から形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の遮熱構造体(8)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の遮熱構造体(8)を備えるホイール(1)。
【請求項8】
前記遮熱構造体(8)が、ハブ領域(4)及び/又はホイールセンター(2)の他の部分及び/又はリム(5)に配置されている、請求項7に記載のホイール(1)。
【請求項9】
自動車両又は航空機のために使用される、請求項7または8に記載のホイール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱構造体、特に、ホイール、特に自動車両に適した炭素繊維強化プラスチックから形成されるホイールのために使用され得る遮熱構造体に関し、また、そのような遮熱構造体を備えるホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
制動時には、車両の運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、その結果、ブレーキシステムによって高温が発生される。ディスクブレーキシステムでは、特に自動車両において幅広く使用されるカーボンセラミックブレーキでは、最大で1000℃の動作温度が生じる場合がある。運転の間は、ブレーキシステム及び隣接するホイールの両方が車両の周囲で流れる空気とホイール及びブレーキシステムの周囲を通過して流れる空気とによってそれぞれ効率的に冷却されるため、そのような高い温度は重大ではない。
【0003】
しかしながら、車両が高速から制動されて直後に駐車される場合には、そのような能動的な空気冷却がなくなる。その結果、制動後に最大で30分にわたって、高温のブレーキシステムからホイールへかなりの熱伝達が生じる場合がある。ブレーキシステムは通常は隣接するホイールと物理的に直接接触しないため、この伝達は主に放射及び対流によって行われ、伝導は殆ど無視され得る。ディスクブレーキに関して、ホイールとブレーキキャリパ及びブレーキディスクとの間の距離は通常は非常に小さく、したがって、この領域での放射及び対流による熱伝達は非常に高い場合がある。金属から形成される従来のホイールの場合、そのような熱伝達は、ホイールに対して熱損傷をもたらすほど十分高くないのに対し、繊維強化プラスチックなどの他の材料から形成されるホイールの場合には、熱伝達が重大となる場合がある。
【0004】
独国特許第3224929号明細書は、米国のMotor Wheel Corp.を代表して1982年7月3日に出願されたものであり、繊維強化樹脂材料から形成される車両ホイールについて記載する。ホイールの取付ボルト穴の領域における樹脂ディスク材料のクリープを防止するために、熱障壁板が、使用時にそれが車両のハブから樹脂ディスクへの熱伝達を防止するように車内側ディスク面に設けられる。
【0005】
米国特許第5538114号明細書は、Jay D.White及びRalph W.Larsonを代表して1994年12月19日に出願されたものであり、従来のホイールで使用されるドラムブレーキシステムのための熱伝達低減用の絶縁ホイール取付システムを示す。この特許によれば、円筒状のメインドラムに取り付けられるドラム延在部に対してクランプされるように配置される絶縁リングがホイールのハブ領域に形成される。代わりの実施形態において、ドラム延在部には、断熱材料が、該断熱材料の層がホイールのハブ領域とドラム延在部との間に配置されるようにコーティングされる。
【0006】
米国特許第2010194179号明細書は、Goodrich Corporationを代表して2010年1月22日に出願されたものであり、遮熱部と放散部と備える熱管理複合遮熱体を示す。遮熱部は、高温側スキン、伝導層、絶縁層、及び、低温側スキンを備えてもよい。放散部はフィン配列を備えてもよい。遮熱部によって吸収される熱は、周囲環境への伝達のために部分的に又は完全に放散部に伝導される。公開された出願によれば、熱管理システムは、例えば、航空機及び自動車のホイールのために使用されてもよい。
【0007】
国際公開第2009130229号パンフレットは、Zircotec Limitedを代表して2009年4月21日に出願されたものであり、摩耗及び他の機械的損傷に対する良好な耐性を得るために炭素繊維強化プラスチック材料上に塗布されるべきジルコニウム酸マグネシウムの層を開示する。また、この公開公報は、そのような層が腐食及び化学攻撃にも耐性があるとともに炭素繊維強化プラスチック材料を保護するための熱障壁を形成する良好な耐熱性を有することについても言及する。
【発明の概要】
【0008】
総質量が小さいとともに慣性モーメントが小さいホイールを得るために、例えば炭素繊維又はガラス繊維を備える繊維強化プラスチックがリム及びホイールセンターのために使用されてもよい。本発明の文脈内において、「ホイールセンター」は、スポーク構造体、例えばホイールスパイダー又はホイールディスクのそれぞれのような任意のタイプのホイールセンターを含むように理解されるべきである。他の手法によれば、ホイールセンターが金属から形成される一方で、リムのみが繊維強化プラスチックから形成されてもよく、或いは、逆もまた同様である。そのようなタイプのホイールは「ハイブリッドホイール」と称されてもよい。
【0009】
残念ながら、構造的な機械的観点から軽量ホイールを得ることができる大きな可能性を与え、したがって幅広く使用される炭素繊維強化プラスチックは、熱に対して非常に限られた耐性しか有さないと同時に、比較的高い熱伝導率を有する。特に、炭素繊維強化プラスチックと組み合わせて使用される多くのマトリックスは、かなり限られた耐熱性によって特徴付けられる。これにより、繊維強化プラスチックを備えるホイールが、車両のブレーキシステムによって引き起こされるような熱損傷を起こし易くなる。したがって、特に炭素繊維強化プラスチックを備えるホイールの場合、ブレーキシステムによって放出される熱エネルギーからの効率的な保護が必要とされる。
【0010】
ブレーキシステムからホイールへの熱伝達を低減するための幾つかのシステムが従来技術から知られているが、これらのシステムは全て、ブレーキシステム(それぞれサスペンション)とホイールとの間に配置されなければならない付加的な構成要素を必要とする。多くの車両の場合、ホイールとサスペンションとの間の空間が非常に限られており、したがって、従来技術から知られるシステムを適用できないため、これは実行できない。
【0011】
そのため、本発明の1つの目的は、少なくとも一部が繊維強化プラスチックから形成されるホイールのための効率的な熱遮蔽を与えるとともにホイール、ブレーキシステム、及び、サスペンションの間の領域に大きな付加的空間を必要としない遮熱構造体を提供することである。結果として、本発明に係る遮熱構造体を備えるホイールは、車両のサスペンション及び/又はブレーキシステムの事前変更を伴うことなく広い範囲の車両に適している。
【0012】
したがって、少なくとも一部が繊維強化プラスチックから形成されるベース構造体を備えるホイールの場合、特別な遮熱構造体が、ホイールのベース構造体上に配置されて、少なくとも重要な領域でベース構造体を少なくとも部分的に覆っている。そのため、ホイールへの熱エネルギーの流れを減少させることができるとともに、熱エネルギーの蓄積を制御して分配することができ、それにより、熱損傷をもたらすホットスポットを回避できる。したがって、遮熱構造体がホイールの一体部分となり、それにより、ホイールの構造体を用いた熱エネルギーの制御された放散が可能となる。
【0013】
適切な場合には、遮熱構造体が少なくとも1つの熱反射層を備えてもよい。そのような層は、それが吸収するよりも多くの放射熱を反射する。したがって、そのような層は、反射層を伴わないホイールと比べた場合、ブレーキシステムからホイールへの熱エネルギーの流れを減少させる。そのような層は、例えば金又はアルミニウムなどの金属から形成されてもよい。
【0014】
これに代えて又は加えて、遮熱構造体は、熱障壁としての機能を果たすことができる少なくとも1つの低熱伝導層を備えてもよい。そのような層は、例えば、連続体プラスチック(例えば、アラミド、ポリアミド)及び/又は多孔質プラスチック及び/又は繊維強化プラスチック及び/又は連続体セラミック材料及び/又は繊維強化セラミック材料及び/又は多孔質セラミック材料から形成されてもよい。
【0015】
用途に応じて、低熱伝導層は、ベース構造体に対してコーティングとして塗布されてもよい。したがって、例えば、低熱伝導性成分(例えば、セラミック粒子)を含むワニスが使用されてもよい。
【0016】
用途に応じて、耐熱マトリックスに埋め込まれてもよい少なくとも1つの低熱伝導層がアラミド繊維及び/又はストーンファイバー(例えば玄武岩)及び/又はガラス繊維を含む繊維強化プラスチックから形成される場合には、良好な結果を得ることができる。
【0017】
ホイール及び/又はブレーキシステムの幾何学的形態に応じて、遮熱構造体が少なくとも1つの高熱伝導層を備えてもよい。そのような層は、より広い面積にわたる熱エネルギーの分配を促進させるため、したがって、下側のベース構造体の損傷をもたらすエネルギー集中及び超臨界ホットスポットをそれぞれ回避するために使用されてもよい。
【0018】
高熱伝導層が熱反射層と低熱伝導層との間に配置される−熱反射層はホイールの外面上にある−場合には、良好な結果を得ることができる。そのような中間層は、局所的に加えられる熱エネルギーをより広い面積にわたって非常に効率的に分散させるために、したがって、下側の構造体の損傷をもたらし得る熱の局所的な蓄積を回避するために使用されてもよい。
【0019】
高熱伝導層は、例えば、金属シート、金属箔、金属メッシュ(グリッド)、又は、金属織物を備えてもよい。これに代えて又は加えて、シート、箔、メッシュ/グリッド、及び、織物が他の材料から形成されてもよい。比較的高い熱伝導率を有する材料が使用される場合には良好な結果を得ることができる。
【0020】
また、高熱伝導層が、耐荷重構造体として、したがって、遮熱構造体及び/又は下側のベース構造体のための機械的補強要素としての機能も果たす場合には、良好な結果を得ることもできる。
【0021】
適切な場合、遮熱構造体は、少なくとも一部がベース構造体に埋め込まれてもよい。したがって、ホイールの形状(外側の幾何学的形態)は、遮熱構造体の存在によって僅かに変更されるにすぎない。
【0022】
本発明に係る遮熱体は、自動車両(例えば、自動車、オートバイ)に適したホイールのために使用されてもよいが、そのような車両に限定されず、したがって、例えば航空機のために使用されてもよい。
【0023】
本発明に係る遮熱構造体は、一般に、ブレーキディスク及び/又はキャリパの近傍にあるホイールの領域で適用される。しかしながら、遮熱構造体は、蓄積された熱エネルギーをより広い面積にわたって分散させることによって放散させるために他の領域にまで及んでもよい。したがって、局所的な熱集中を除外できるとともに、対流及び/又は熱放射によるホイールからの熱伝達を増大させることができる。
【0024】
遮熱構造体がハブ領域及び/又はホイールセンターの残りの部分及び/又はリムに配置される場合には、良好な結果を得ることができる。
【0025】
本発明がブレーキシステムとホイールとの間の超臨界熱伝達を防止する他のシステム、例えば付加的な遮熱体又は能動冷却システムと組み合わせて使用されてもよいことは明らかである。
【0026】
加えて、本発明は、ディスクブレーキシステムと組み合わせて使用されるように限定されず、例えばドラムブレーキシステムなどの事実的に任意の他のタイプのブレーキシステムと組み合わせて使用されてもよい。
【0027】
更に、本発明が、炭素繊維強化プラスチックから形成されるホイールのみに限定されず、耐熱性に関して同様の問題をかかえる他の材料から形成されるホイールのために使用されてもよいことも明らかである。
【0028】
本明細書に記載される発明は、添付の特許請求の範囲に記載される発明に対して限定的であると見なされるべきでない本明細書中で与えられる以下の詳細な説明及び添付図面から更に十分に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ディスクブレーキとキャリパとを伴うホイールを正面図で示す。
図2図1のホイールを後方から見た斜視図で示す。
図3図1のホイールを後方から見た斜視図で示し、例示目的でホイールの一部が切り取られている。
図4】ホイールセンター及び遮熱構造体を斜視図で示す。
図5】リム及び遮熱構造体を斜視図で示し、例示目的でホイールが部分的に切り取られている。
図6】ベース構造体上に配置される遮熱構造体の第1の実施形態を示す。
図7】ベース構造体上に配置される遮熱構造体の第2の実施形態を示す。
図8】ベース構造体上に配置される遮熱構造体の第3の実施形態を示す。
図9】ベース構造体上に配置される遮熱構造体の第4の実施形態を示す。
図10】ベース構造体上に配置される遮熱構造体の第5の実施形態を示す。
図11】ベース構造体上に配置される遮熱構造体の第6の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
前述の概要及び好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と併せて読むと更に良く理解されよう。本発明を例示する目的で、図面の幾つかの図の全体にわたって同様の数字が類似の部分を表す現在好ましい実施形態が示されるが、本発明が開示される特定の方法及び手段に限定されないことが理解されよう。
【0031】
図1図3は、キャリパ7と位置合わせされたブレーキディスク6を備えるディスクブレーキシステムと共にホイール1の実施形態を示す。ホイールサスペンションの他の部分は、例示目的で省略した。図示の実施形態のホイール1は、繊維強化プラスチックから形成されている。ホイールは、タイヤ(図示せず)を受けるように形成される外周リム5と中心ハブ4とを接続する幾つかのスポーク3を有するホイールセンター2を備える。図3に点線の円により示されるように、ブレーキディスク6とスポーク3、ハブ4、及び、リム5との間の距離は、幾つかの位置で比較的小さい。キャリパ7とスポーク3、リム5のそれぞれとの間の距離に関しても同じことが当てはまる。このことは、特に、例えばブレーキパッド用のピストン(図示せず)が配置されるキャリパ7の隆起部に関して当てはまる。そのため、ホイール1のこれらの領域は、制動中及び制動後にディスクブレーキシステムにより放散される熱に起因して熱損傷を起こし易い。
【0032】
したがって、本発明によれば、ホイール1のこれらの領域には、図4及び図5に示されるように、遮熱構造体が設けられるとよい。図4は、ディスクブレーキシステム(図示せず)に極めて近接するホイールの表面上に配置される遮熱構造体8によって熱遮蔽されるホイールセンター2を示す。図示の実施形態において、ハブ4に隣接する領域及びスポーク3の一部は、そのような遮熱構造体8によって保護されてもよい。図5に示されるように、リム5の内側の(中心を向く)表面も、そのような遮熱構造体8によって熱遮蔽されてもよい。
【0033】
図6図11は、下側のベース構造体11を熱損傷から保護するために使用されてもよい遮熱構造体8の様々な変形例を示す。図6は、繊維強化プラスチックから形成されるベース構造体11の表面上に配置される熱反射層9を備える遮熱構造体8の第1の変形例を示す。熱反射層9は、それが吸収するよりも多くの放射熱を反射する材料から形成される層を備える。適した材料としては、例えばアルミニウム又は金のような金属とすることができる。そのようなタイプの遮熱構造体8は、ベース構造体11のための何らかのタイプのコーティングとして塗布されてもよい。
【0034】
図7は、ベース構造体11に埋め込まれる低熱伝導層10を備える遮熱構造体8の他の変形例を示す。遮熱構造体8自体は、高い耐熱性を有するとともに、ベース構造体11を熱損傷から保護し、それに対して、ベース構造体11は、炭素繊維強化プラスチックなどの熱に比較的敏感な材料から形成される場合がある。そのようなタイプの低熱伝導層10は、表面に入る熱が固体中へ伝導されることを防止する。遮熱構造体8がベース構造体11に埋め込まれるため、ホイール1の外形及び幾何学的形態はそれぞれ遮熱構造体8の存在によって影響されない。
【0035】
図8は、熱反射層9と、ベース構造体10に埋め込まれる下側の低熱伝導層10とを備える遮熱構造体8の他の変形例を示す。そのため、遮熱構造体8のそのような変形例を使用すると、構造体の表面での熱の蓄積を最小限に抑えるという概念と、熱に敏感な下側のベース構造体11に対する熱伝達を最小限に抑えるという概念とを組み合わせることができる。
【0036】
図9及び図10に示されるように、本発明の変形例では、熱反射層9及び低熱伝導層10がいずれもベース構造体11に埋め込まれてもよい。図9に示されるように、本発明の幾つかの変形例において、熱反射層9は、熱損傷から保護されるべきベース構造体と物理的に直接接触することなく低熱伝導層10に埋め込まれてもよい。したがって、ベース構造体11に損傷をもたらすことなく熱反射層9を高温まで加熱することさえできる。図10に示される変形例において、熱反射層9は、下側の低熱伝導層10を完全に覆いつつベース構造体11に埋め込まれる。そのような変形例は、例えば、熱の蓄積が非常に局所的である用途において使用されてもよく、熱反射層9は、蓄積された熱エネルギーを熱放射及び熱対流によってより広い面積にまで分配して減少させる役目も果たす。図11は、より広い面積にわたる熱エネルギーの分配を向上させるために低熱伝導層10に埋め込まれる高熱伝導層12を備える遮熱構造体8の変形例を示す。図11に示される遮熱構造体8は、熱反射層9を更に備える。
【符号の説明】
【0037】
1 ホイール
2 ホイールセンター
3 スポーク
4 ハブ
5 リム
6 ブレーキディスク
7 キャリパ
8 遮熱構造体
9 熱反射層
10 低熱伝導層
11 ベース構造体
12 高熱伝導層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11