(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0012】
なお、各実施形態の図面に示された同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0013】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていないない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0014】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシター100は、本体110と、第1及び第2外部電極131、132と、を含む。
【0015】
本実施形態を明確に説明するために本体110の方向を定義すると、図面上に表示されたL、W、及びTはそれぞれ、長さ方向、幅方向、及び厚さ方向を示す。
【0016】
ここで、厚さ方向は、誘電体層111が積層された積層方向と同一の概念として用いることができる。
【0017】
また、本体110の形状は特に制限されず、例えば、略六面体形状を有することができる。
【0018】
また、本実施形態では、説明の便宜のために、誘電体層111が積層されて成る本体110の壁面のうち、厚さ方向Tにおいて互いに対向する一対の面を第1面及び第2面、上記第1面と第2面とを接続し、且つ長さ方向Lにおいて互いに対向する一対の面を第3面及び第4面、これに垂直に交差し、且つ幅方向において互いに対向する一対の面を第5面及び第6面と定義する。
【0019】
本体110は、活性領域115と、マージン部である上部カバー112及び下部カバー113と、からなる。
【0020】
活性領域115はキャパシター100の容量形成に寄与する部分であって、複数の誘電体層111と、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122と、を含む。
【0021】
このような活性領域115は、複数の誘電体層111と、各々の誘電体層111を間に挟んで交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122と、を厚さ方向Tに積層してから焼成したものである。
【0022】
誘電体層111は焼結された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認することが困難な程度に一体化された状態とすることができる。
【0023】
図3を参照すると、誘電体層111は、強誘電体を含む高誘電率のセラミック粉末111aを少なくとも2層以上、好ましくは3層〜5層にわたって積層することにより構成される。
【0024】
セラミック粉末111aを形成する材料は、例えば、BaTiO
3(チタン酸バリウム)系のものであって、BaTiO
3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶した(Ba
1−xCa
x)TiO
3、Ba(Ti
1−yCa
y)O
3、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yZr
y)O
3、またはBa(Ti
1−yZr
y)O
3などを含むことができるが、本発明に係るセラミック粉末の形成材料はこれらに限定されるものではない。
【0025】
また、セラミック粉末111aは、内側のコア部(core)と表層部であるシェル部(shell)からなるコア−シェル構造を有し、
図5に示すように、上記シェル部上に1〜2nmの厚さのコーティング膜がさらに形成されて、略四面体からなるブロック状にそれぞれ構成される。
【0026】
この際、上記コーティング膜の厚さが2nmを超えると、各粉末のコーティング膜が互いに凝集するため膜の形態が維持されず、島(island)状に(点在する島のように)凝集塊が形成されてしまうという問題が発生する恐れがある。その一方で、上記コーティング膜の厚さが1nm未満であると、層の形態が安定して維持されず、却って焼成時の焼結性を阻害する原因となり得る。
【0027】
また、上記コーティング膜は、アルカリ金属原子を含む単分子型吸着剤と、硝酸塩または塩酸塩形態の添加剤と、を反応させることで形成することができる。
【0028】
この際、上記単分子型吸着剤としては、例えば、分子型電解質またはケトン系の物質を用いることができ、上記アルカリ金属は、原子番号が20以下のアルカリ金属元素であって、例えば、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、またはLi(リチウム)の少なくとも一つとすることができる。
【0029】
一方、製造されたセラミック粉末111aは、粒の大きさ(粒径など)が全て異なった状態であるため、上下に積層した時に、それぞれのセラミック粉末111aの間には空隙(void)が生じ得る。そのため、上記のような粒の大きさのばらつきによって生じる空隙を除去し、セラミック粉末111aの積層時の高さを設計通りにするために、誘電体層111にはガラス(glass)111bをさらに含ませることができる。
【0030】
この際、ガラス111bは、100モルのセラミック粉末111aに対して含有比率(モル比)が1〜5モル%となるように含まれることができる。ガラス111bの含量比が1モル%未満である場合、本体110の焼成時に誘電体層が十分に焼結されないという問題が発生し得る。また、ガラス111bの含量比が5モル%を超える場合、本体110の誘電体特性が十分に発現されないという問題が発生し得る。
【0031】
図4を参照すると、第1内部電極121及び第2内部電極122は互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111の積層方向において互いに対向するように配置され、第1内部電極121と第2内部電極122の間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁されるようにすることができる。
【0032】
第1内部電極121及び第2内部電極122の各々は、本体110内の長さ方向Lに沿ってそれぞれ延在し、第1内部電極121及び第2内部電極122の各々は、一方の端部が本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3面及び第4面にそれぞれ露出するように配置することができる。
【0033】
また、本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3面及び第4面に露出した第1内部電極121及び第2内部電極122の一方の端部は、本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3及面び第4面に露出した箇所において第1外部電極131及び第2外部電極132とそれぞれ電気的に接続されるようにすることができる。
【0034】
上述のような構成により、第1及び第2外部電極131、132に所定の電圧が印加されると、互いに対向する第1内部電極121と第2内部電極122との間に電荷が蓄積される。この際、積層型キャパシター100の静電容量は、誘電体層111の積層方向に沿って第1内部電極121と第2内部電極122とが互いに重なり合う重複領域の面積に比例する。
【0035】
また、第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途に応じて決定することができ、例えば、本体110のサイズを考慮して、0.05〜2.5μmの範囲内となるように決定することができるが、本発明における内部電極121、122の厚みは、このような寸法に限定されるものではない。
【0036】
また、第1及び第2内部電極121、122は導電性金属で形成され、本実施形態ではニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金などの材料を用いることができるが、本発明における内部電極121,122の形成材料はこれらに限定されるものではない。
【0037】
上記導電性金属の印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明における導電性金属の印刷方法は、これらに限定されるものではない。
【0038】
上記カバーは上部カバー112及び下部カバー113を含む。
【0039】
図面を参照すると、上部カバー112は、活性領域115において最上部に配置された第1内部電極121の上面に所定の厚さとなるように形成された部分であり、下部カバー113は、活性領域115において最下部に配置された第2内部電極122の下面に所定の厚さとなるように形成された部分である。
【0040】
このような上部カバー112及び下部カバー113は、例えば、活性領域115に含まれる誘電体層111を、キャパシター100の本体110における活性領域115の上部と下部にそれぞれ少なくとも一つ以上積層することで形成することができる。
【0041】
第1及び第2外部電極131、132は、本体110の長さ方向Lにおける両端面を形成する第3及び第4面に配置され、第1及び第2内部電極121、122が第3面と第4面にそれぞれ露出した部分とそれぞれ接触して電気的に接続される。
【0042】
この際、第1及び第2外部電極131、132は、本体110の壁面のうち、厚さ方向Tにおいて互いに対向する第1面及び第2面の一部まで延在させる形で設けることができる。
【0043】
また、第1及び第2外部電極131、132は、必要に応じて、本体110の壁面のうち、幅方向Wにおいて互いに対向する第5面及び第6面の一部まで延在させる形で設けることができ、それにより、本体110に対する外部電極131、132の固着強度を向上させることができる。
【0044】
かかる第1及び第2外部電極131、132は、導電性金属を含む導電性ペーストを印刷したり塗布したりする方法により形成することができる。
【0045】
上記導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)、またはこれらの合金を含むことができるが、本発明において用いられる導電性材料は、これらに限定されるものではない。
【0046】
一方、必要に応じて、第1及び第2外部電極131、132の表面に、ニッケル(Ni)またはスズ(Sn)などを用いてめっき層(不図示)をさらに形成することができる。
【0047】
積層型キャパシターの製造方法
以下、本発明の一実施形態による積層型キャパシター100の製造方法を
図6および
図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0048】
先ず、本発明の誘電体層111を形成するのに使用されるセラミック組成物を製造する方法について説明する。
【0049】
本実施形態に係るセラミック組成物は、先ず、Ba(OH)
2を準備し(ステップS10)、このBa(OH)
2に結晶軸比の値を高めるために金属異物を添加し(ステップS21)、TiO
2をさらに添加して(ステップS22)、シードを合成する(ステップS20)。
【0050】
次に、上記シードに粒成長抑制剤を添加し(ステップS31)、誘電体粉末の結晶性を上昇させながら粒成長させて、シードをコア−シェル構造に形成する(ステップS30)。
【0051】
次に、上記粒成長したシードのモル比を調節する(ステップS40)。
【0052】
上記モル比が調節されたシードは、水系で重量比が約20〜40重量%の固形分を有するスラリー状に分散している。
【0053】
したがって、上記シードに単分子型吸着剤を添加してシードの表面にパッチさせた後、硝酸塩または塩酸塩形態の金属イオンを添加して反応させて(ステップS51)、
図5に示すように、シードのシェル部に1〜2nmの厚さのコーティング膜を形成する(ステップS50)。
【0054】
この際、上記単分子型吸着剤としては分子型電解質またはケトン系の物質を用いることができ、上記アルカリ金属原子はNa(ナトリウム)またはK(カリウム)などの金属元素とすることができる。
【0055】
次に、上記コーティング膜が形成されたシードを乾燥する(ステップS60)ことで、ブロック状の粉末形態からなるセラミック組成物が完成する。
【0056】
本実施形態の積層型キャパシター100を製造するためには、先ず、上記のような方法により製造されたセラミック組成物を用いて、複数のセラミックシートを製造する(ステップS110)。
【0057】
上記セラミックシートは、本体110の活性領域115と上部カバー112及び下部カバー113に含まれる誘電体層111を形成するためのものである。
【0058】
上記セラミックシートは、セラミック粉末、ポリマー、及び溶剤などを混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレードなどによりキャリアフィルム上に塗布及び乾燥することで、数μmの厚さのシート(sheet)状となるように製作することが可能である。
【0059】
この際、追加材料として、セラミック組成物の間に配置されるようにガラス(glass)をさらに添加することができる。
【0060】
上記ガラスは、セラミック組成物100モルに対する含有比率(モル比)が1〜5モル%となるように含まれることができる。
【0061】
次に、上記それぞれのセラミックシートの少なくとも一面に、ニッケルなどの導電性粉末を含む導電性ペーストを所定の厚さの層となるように印刷することで、第1及び第2内部電極121、122を形成する(ステップS120)。
【0062】
また、第1及び第2内部電極121、122の各々は、セラミックシートの長さ方向Lにおける一方の端部が本体部110の両端面(第3面と第4面)にそれぞれ露出するように形成することができる。
【0063】
この際、上記導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明における印刷方法は、これらに限定されるものではない。
【0064】
次に、第1及び第2内部電極121、122が形成された複数のセラミックシートを、それぞれのセラミックシートを挟んで第1及び第2内部電極121、122が互いに対向して配置されるように積層する。そして、その上面と下面に内部電極121、122が形成されていないセラミックシートを配置した後、加圧することで積層体を製造する(ステップS130)。
【0065】
次に、上記積層体を1個のキャパシターに対応する領域毎に切断することでチップ化し、焼成することで、厚さ方向Tにおいて互いに対向する第1面及び第2面を壁面として有し、第1及び第2内部電極121、122の各々の一端が交互に露出しており、長さ方向Lにおける両端面を形成する第3及び第4面を壁面としてさらに有し、幅方向Wにおいて互いに対向する第5及び第6面を壁面としてさらに有する本体110を製造する(ステップS140)。
【0066】
この際、上記積層体を成すセラミックシート内のセラミック組成物はブロック状の構造を有しており、相互接触が点接触でなく面接触となった状態で焼成されるため、焼成速度を速くすることができる。
【0067】
また、このようなセラミック組成物の相互間における面接触は、セラミックシートの添加剤がグレイン内で全体的に拡散することを抑制する作用をもたらすため、セラミック組成物におけるコア部分に高誘電率の領域を確保することが可能となる。
【0068】
したがって、このようなセラミックシートの特性により、積層型キャパシター100の誘電率及び信頼性を同時に向上させる効果を期待することができる。
【0069】
次に、本体110の長さ方向Lにおいて両端面を形成する第3及び第4面の上に、第1及び第2内部電極121、122が露出している部分とそれぞれ電気的に接続されるように、導電性ペーストを用いて第1及び第2外部電極131、132を形成する(ステップS150)。
【0070】
この際、第1及び第2外部電極131、132はディッピングまたはローラーなどの方法により形成することができるが、本発明における外部電極131、132の形成方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0071】
次に、上記のように形成したキャパシタを焼成して積層型キャパシター100を完成する(ステップS160)。
【0072】
従来の誘電体層111の製造方法は、母材として球状の粒形状を有するBaTiO
3と、添加剤としての無定形金属酸化物粉末とを混合し、有機溶剤を溶媒として均一に分散させた後、それをシート状に成形してから乾燥することで製造していた。
【0073】
しかし、上記誘電体層111は、添加剤として用いられる金属酸化物粉末の高い活性化エネルギー(activation energy)により、過度な粒成長が生じて信頼性が低下する。そのため、低速かつ高温となる条件下での焼成は可能であるが、急速かつ低温となる条件下での焼成や、薄層化した状態での焼成は困難であるという問題があった。
【0074】
上記の問題を解消するために、添加剤として用いられる金属酸化物粉末を20nm以下の粒径を有するナノ金属酸化物に製造する技術や、添加剤をBaTiO
3の表面にコーティングする技術が知られている。
【0075】
しかし、上記ナノ金属酸化物の場合、微粒分散の限界により、急速かつ低温となる条件下での焼成や薄層化した状態での焼成の効果が高くない。
【0076】
また、上記添加剤をBaTiO
3の表面にコーティングする技術の場合、過度な粒成長の発生は一部抑えることができるが、粒子同士の点接触の焼結特性を示す幾何学的(Geometric)特性により、依然として長い焼成時間が必要となる。
【0077】
以上より、本実施形態によると、誘電体層を成すセラミック組成物がコア−シェル構造を有し、このうちシェル部上に1〜2nmの厚さのコーティング膜が形成されることで、硝酸塩または塩酸塩などの添加剤が母材とは速く反応するが、概ねシェル部でのみ部分的に反応し、コア部に至るまで完全に拡散することは最小限に抑えられるため、低温で急速な焼成が可能となる。
【0078】
したがって、このような材料で誘電体層111及びキャパシター100の本体110を製造すると、積層型キャパシター100の高誘電率及び高信頼性を同時に確保することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。