特許第6863579号(P6863579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863579
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】簡易回転ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/53 20060101AFI20210412BHJP
   F16F 9/48 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   F16F9/53
   F16F9/48
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-89636(P2017-89636)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-189109(P2018-189109A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236665
【氏名又は名称】不二ラテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 正夫
(72)【発明者】
【氏名】工藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】増本 良澄
(72)【発明者】
【氏名】竹森 弘明
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−216138(JP,A)
【文献】 特開2008−202744(JP,A)
【文献】 特開2005−164013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58,
15/18
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパー・ハウジングとこのダンパー・ハウジング内に相対回転可能に配設された回転体と、
前記ダンパー・ハウジング外から前記ダンパー・ハウジング及び前記回転体間に渡る磁束を形成する永久磁石と、
前記ダンパー・ハウジング及び前記回転体間に介在し前記磁束が通過することで前記回転体の回転に対する減衰力を生じさせる機能性流体と、
前記回転体と前記永久磁石とを連結し前記回転体の回転方向に応じて前記永久磁石を連動させ前記回転体に対して近接離反移動を行わせる連動機構と、
を備えたことを特徴とする簡易回転ダンパー。
【請求項2】
請求項1記載の簡易回転ダンパーであって、
前記回転体は、一体回転可能に結合された回転体側ギアを備え、
前記連動機構は、前記回転体側ギアに噛み合う中継ギアを備え、
前記回転体側ギアは、可動側からトルクを受けて前記回転体を一体に回転させると共に前記中継ギアを連動回転させる、
ことを特徴とする簡易回転ダンパー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の簡易回転ダンパーであって、
前記連動機構は、前記回転体と連動して回転するねじ部と、該ねじ部に螺合するナット部とを備え、前記ねじ部の回転によって前記ねじ部及び前記ナット部の一方が前記近接離反移動の方向に移動し、
前記永久磁石に前記ねじ部及び前記ナット部の一方が設けられ、前記ねじ部及び前記ナット部の一方の移動に応じて前記永久磁石が前記近接離反移動を行う、
ことを特徴とする簡易回転ダンパー。
【請求項4】
請求項1又は2記載の簡易回転ダンパーであって、
前記ダンパー・ハウジング外に設けられ前記永久磁石を収容する磁石ハウジングと、
前記磁石ハウジングと前記永久磁石との間に設けられ前記永久磁石を前記回転体に対して近接離反する方向に案内するガイド部とを備え、
前記連動機構は、前記回転体と連動して回転するねじ部と、該ねじ部に螺合するナット部とを備え、
前記ねじ部の回転によって前記ナット部が前記近接離反移動の方向に移動し、
前記ナット部は、前記永久磁石に設けられ、
前記ナット部の移動に応じて前記永久磁石が前記近接離反移動を行う、
ことを特徴とする簡易回転ダンパー。
【請求項5】
請求項1又は2記載の簡易回転ダンパーであって、
前記ダンパー・ハウジング外に設けられ前記永久磁石を収容する磁石ハウジングを備え、
前記連動機構は、前記回転体と連動して回転するねじ部と、該ねじ部に螺合するナット部とを備え、
前記ねじ部の回転によって該ねじ部が前記近接離反移動の方向に移動し、
前記ナット部は、前記磁石ハウジングに設けられ、
前記ねじ部は、前記永久磁石に設けられ、
前記ねじ部の移動に応じて前記永久磁石が前記近接離反移動を行う
ことを特徴とする簡易回転ダンパー。
【請求項6】
請求項1又は2記載の簡易回転ダンパーであって、
前記ダンパー・ハウジング外に設けられ前記永久磁石を収容する磁石ハウジングと、
前記磁石ハウジングと前記永久磁石との間に設けられ前記永久磁石を前記回転体に対して近接離反する方向に案内するガイド部と、
前記回転体に一体回転する回転軸とを備え、
前記連動機構は、前記回転体と連動して回転するねじ部と、該ねじ部に螺合するナット部とを備え、
前記ねじ部の回転によって前記ナット部が前記近接離反移動の方向に移動し、
前記ねじ部は、前記回転軸に設けられ、
前記ナット部は、前記永久磁石に設けられ、
前記ナット部の移動に応じて前記永久磁石が前記近接離反移動を行う、
ことを特徴とする簡易回転ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性流体や磁気粘性流体等の機能性流体を利用して減衰力の調整が可能な簡易回転ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転ダンパーとしては、例えば特許文献1のように、磁性体のケース内に磁気粘性流体を封入すると共に磁性体の回転板を相対回転自在に収容し、且つ電磁コイルをケース内に備えたものがある。
【0003】
この回転ダンパーは、電磁コイルの通電によりケース及び回転板間で磁気粘性流体の剪断抵抗による減衰力を得るようになっており、電磁コイルの通電制御を通じて回転体の回転に応じて減衰力を調整することができる。
【0004】
従って、種々の要求に対応した回転ダンパーを実現でき、例えば、回転体の回転初期や後期の何れかに減衰力を高くしたり、回転中の減衰力を一定とすること等を可能とする。
【0005】
しかし、電磁コイルを用いる場合、回転体の回転に応じて減衰力を調整するには、回転体の回転を監視する必要性や配線の必要性等から構造が複雑になり、また電磁コイルでの発熱がケース外へ発散し難く、耐久性を損なう問題等もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−20539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、回転体の回転に応じて減衰力を調整する場合、構造が煩雑であり、発熱により耐久性を損なうおそれもある点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、簡単な構造で耐久性を向上しつつ回転体の回転に応じて減衰力を調整するために、ダンパー・ハウジングとこのダンパー・ハウジング内に相対回転可能に配設された回転体と、前記ダンパー・ハウジング外から前記ダンパー・ハウジング及び前記回転体間に渡る磁束を形成する永久磁石と、前記ダンパー・ハウジング及び前記回転体間に介在し前記磁束が通過することで前記回転体の回転に対する減衰力を生じさせる機能性流体と、前記回転体と前記永久磁石とを連結し前記回転体の回転方向に応じて前記永久磁石を連動させ前記回転体に対して近接離反移動を行わせる連動機構とを備えた簡易回転ダンパーを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の簡易回転ダンパーは、ダンパー・ハウジング外で回転体の回転に連動して永久磁石を回転体に対して近接離反移動させ、回転体の回転に応じて磁性流体や磁気粘性流体等の機能性流体による減衰力を調整することができ、且つ構造が簡単で、発熱等の問題もなく、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】回転ダンパーの平面図である(実施例1)。
図2図1のII−II線に係る断面図である(実施例1)。
図3】変形例に係る回転ダンパーの断面図である(実施例1)。
図4】他の変形例に係る回転ダンパーの平面図である(実施例1)。
図5】回転ダンパーの断面図であり、(A)は永久磁石が回転体に最も近接した状態、(B)は永久磁石が回転体から最も離反した状態を示す(実施例2)。
図6】変形例に係る回転ダンパーの断面図である(実施例2)。
図7】回転ダンパーの断面図である(実施例3)。
図8】変形例に係る回転ダンパーの断面図である(実施例3)。
図9】回転ダンパーの断面図である(参考例)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
簡単な構造で耐久性を向上しつつ回転体の回転に応じて減衰力を制御するという目的を、回転体の回転に連動する永久磁石を用いた簡易回転ダンパーとして実現した。
【0012】
すなわち、簡易回転ダンパーは、ダンパー・ハウジングとこのダンパー・ハウジング内に相対回転可能に配設された回転体と、ダンパー・ハウジング外からダンパー・ハウジング及び回転体間に渡る磁束を形成する永久磁石と、ダンパー・ハウジング及び回転体間に介在し磁束が通過することで回転体の回転に対する減衰力を生じさせる機能性流体と、回転体と永久磁石とを連結し回転体の回転方向に応じて永久磁石を連動させ回転体に対して近接離反移動を行わせる連動機構とを備える。
【0013】
回転体は、一体回転可能に結合された回転体側ギアを備え、連動機構は、回転体側ギアに噛み合う中継ギアを備え、回転体側ギアは、可動側からトルクを受けて回転体を一体に回転させると共に中継ギアを連動回転させる構成であってもよい。
【0014】
連動機構は、回転体と連動して回転するねじ部と、このねじ部に螺合するナット部とを備え、ねじ部の回転によってねじ部及びナット部の一方が近接離反移動の方向に移動するねじ駆動機構を有するものであってもよい。この場合、永久磁石にねじ部及びナット部の一方が設けられ、ねじ部及びナット部の一方の移動に応じて永久磁石が近接離反移動を行う。
【0015】
簡易回転ダンパーは、その一形態として、ダンパー・ハウジング外に設けられ永久磁石を収容する磁石ハウジングと、磁石ハウジングと永久磁石との間に設けられ、永久磁石を回転体に対して近接離反する方向に案内するガイド部とを備えてもよい。この場合、ナット部は、永久磁石に設けられる。
【0016】
別の形態として、ナット部は、磁石ハウジングに設けられ、ねじ部は、永久磁石に設けられてもよい。この場合、ガイド部は不要である。
【0017】
更に別の形態として、回転体に一体回転する回転軸を備え、ねじ部は、回転軸に設けられ、ナット部は、永久磁石に設けられてもよい。この場合、ガイド部が、磁石ハウジングと永久磁石との間に設けられる。
【実施例1】
【0018】
[簡易回転ダンパーの構造]
図1は、本発明の一実施例に係る簡易回転ダンパーの平面図であり、図2は、図1のII−II線に係る断面図である。なお、以下において「軸心方向」とは、簡易回転ダンパー(以下、単に「回転ダンパー」と称する)1の回転軸心方向を意味する。また、「径方向」とは、回転ダンパー1の径方向を意味する。
【0019】
本実施例の回転ダンパー1は、例えば図示しない引き戸等の可動側Mに対する減衰力を生じさせ、回転体3の回転に応じて減衰力を調整可能とするものである。
【0020】
回転ダンパー1は、図1及び図2のように、ケース5と、回転体3と、永久磁石7と、連動機構9とを備えている。
【0021】
ケース5は、非磁性体製であり、例えば樹脂で形成されている。なお、ケース5の材料は、非磁性体製であれば良く、非磁性体金属、セラミック等で形成することもできる。非磁性体金属としては、例えば銅、アルミニウム、ステンレス等を用いることができる。
【0022】
このケース5は、軸心方向の両側にダンパー・ハウジング11及び磁石ハウジング13が一体に形成され、磁石ハウジング13がダンパー・ハウジング11外に設けられる構成となっている。
【0023】
本実施例において、ケース5は、中空円筒状の本体部5aを備え、この本体部5aが軸心方向の中間部で中板5bにより区切られ、軸心方向の両側にダンパー・ハウジング11及び磁石ハウジング13が区画されている。本体部5aの外周には、ダンパー・ハウジング11と磁石ハウジング13との間に取付用のフランジ部5cが一体に形成されている。
【0024】
ダンパー・ハウジング11は、軸心方向の一側(図2の上側)で開口する凹形状であり、この凹形状の開口部分が蓋部5dによって閉じられている。蓋部5dは、ケース5の本体部5aに溶着等により一体的に取り付けられている。
【0025】
蓋部5dの軸心部には貫通孔5eが形成されている。ダンパー・ハウジング11の軸心部には、中板5bから軸11aが突出している。ダンパー・ハウジング11内は、後述する機能性流体Fが回転体3と共に封入されている。
【0026】
磁石ハウジング13は、軸心方向の他側(図2の下側)で開口する凹形状であり、内部に永久磁石7が収容されている。磁石ハウジング13の軸心部には、中板5bから軸13aが突出している。
【0027】
回転体3は、ケース5と同様に、非磁性体製であり、例えば樹脂や、銅、アルミニウム、ステンレス等の非磁体金属、セラミック等で形成されている。なお、回転体3は、磁性体により構成することも可能である。
【0028】
この回転体3は、円柱状に形成されており、ケース5のダンパー・ハウジング11内に回転可能に配設されている。回転体3とダンパー・ハウジング11との間は、隙間が確保されている。かかる隙間に機能性流体Fが介在する。なお、回転体3とダンパー・ハウジング11との間の隙間は、本実施例において径方向の隙間と軸心方向の隙間の双方を含む。
【0029】
機能性流体Fとしては、鉄粉等を分散させた磁性流体(Magnetic Fluid)やMR流体と称される磁気粘性流体(Magneto Rheological Fluid)が用いられる。機能性流体Fは、ダンパー・ハウジング11と回転体3との間に介在し、後述する磁束ループRが通過することで鉄粉等によるクラスターを形成し、ダンパー・ハウジング11及び回転体3間にせん断抵抗による減衰力を発生させる。減衰力は、磁束ループRの磁束の増減に応じて増減する。
【0030】
回転体3の軸心部には、軸心方向の他側に、ダンパー・ハウジング11の軸11aに対応して嵌合孔3aが形成されている。従って、回転体3は、嵌合孔3aにおいてダンパー・ハウジング11の軸11aに回転自在に嵌合している。また、回転体3の軸心部には、軸心方向の一側に、回転体3と一体回転する回転軸である回転体軸3bが突設されている。回転体軸3bは、蓋部5dの貫通孔5eからダンパー・ハウジング11外に突出している。
【0031】
蓋部5dの貫通孔5eには、シール部材15が支持され、シール部材15は、回転体軸3bに密接している。シール部材15には、例えばOリングやXリングが用いられる。
【0032】
回転体軸3bの外端には、回転体側ギア17が取り付けられている。従って、回転体側ギア17は、回転体3に一体回転可能に結合されている。回転体側ギア17は、本実施例において平歯車となっているが、これに限られるものではなく、かさ歯車等の他の種類の歯車とすることも可能である。
【0033】
この回転体側ギア17を介して、回転体3は、引き戸等の可動側Mからトルクを受けるようになっていると共に連動機構9に連結されている。なお、可動側Mには、回転体側ギア17に噛み合うラック等が形成される。すなわち、回転体側ギア17が可動側Mからトルクを受けて、一方で回転体3を一体回転させ、他方で連動機構9の後述する中継ギア27aを連動回転させる。
【0034】
そして、連動機構9は、永久磁石7に連結されているため、回転体3と永久磁石7とを連結し、回転体3の回転方向に応じて永久磁石7を連動させ回転体3に対して近接離反移動を行わせるようになっている。
【0035】
永久磁石7は、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石等からなる板状体で、磁石ハウジング13内に軸心方向に移動自在に収容されている。磁石ハウジング13と永久磁石7との間には、スプライン等からなるガイド部19が設けられている。ガイド部19は、永久磁石7を回転体3に対して近接離反する方向(軸心方向)に案内する。
【0036】
永久磁石7は、軸心方向の両側に磁極(N極、S極)を有している。永久磁石7の軸心部は、雌ねじ部35aが形成されており、後述するようにねじ駆動機構部25のナット部35を構成する。
【0037】
かかる永久磁石7は、磁極間に渡る磁束により、ケース5のダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRを形成する。なお、磁束ループRは、ループ状の磁束をいい、図2に磁束線として概略的に示す。この磁束ループRは、永久磁石7の回転体3に対する距離に応じて、ケース5のダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRの磁束密度が増減する。すなわち、磁束ループRは、回転体3に最も近接したときに磁束密度が最も多く、回転体3から離れるに従って磁束密度が減少する。そして、磁束ループRは、回転ダンパー1の特性にもよるが、永久磁石7が回転体3から一定以上離れた場合に、ケース5のダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束が消滅する。
【0038】
連動機構9は、ギア機構部23とねじ駆動機構部25とで構成されている。なお、連動機構9は、本実施例の変形例(図3)や実施例3のように、ギア機構部23を設けない構成とすることも可能である。
【0039】
ギア機構部23は、回転体側ギア17の回転にねじ駆動機構部25を連動させるもので、一対の中継ギア27a,27bと、中継ギア27a,27b間の連結軸29と、磁石側ギア31とを備える。
【0040】
中継ギア27a及び27bは、同一形状の平歯車からなる。これら中継ギア27aは、軸心方向に対向して配置され、それぞれ回転体側ギア17及び磁石側ギア31に噛み合っている。中継ギア27a及び27b間は、連結軸29によって一体回転するように結合されている。
【0041】
連結軸29は、軸心方向に延設された中実軸であり、両端部が中継ギア27a及び27bに固定されている。連結軸29の中間部は、ケース5の本体部5aに回転自在に支持されている。すなわち、ケース5の本体部5aには、一対の軸支持アーム5fが一体に設けられている。軸支持アーム5fには、連結軸29が貫通して回転自在に支持されている。
【0042】
磁石側ギア31は、回転体側ギア17と同一形状の平歯車からなる。これにより、連動機構9は、磁石側ギア31と中継ギア27bとの間のギア比が回転体側ギア17と中継ギア27aとの間のギア比と変わらないようになっている。ただし、それら両ギア比は、相互に異なるように設定することも可能である。磁石側ギア31は、軸心方向で回転体側ギア17に対する反対側に位置し、ねじ駆動機構部25に連結されている。
【0043】
ねじ駆動機構部25は、ねじ部33とナット部35とで構成されている。なお、連動機構9は、ねじ駆動機構部25に代えて、例えばカム機構部等を用いることも可能である。
【0044】
ねじ部33は、連動機構9の磁石側ギア31の軸心部に同心に位置し、磁石側ギア31に対して一体回転可能に取り付けられている。従って、ねじ部33は、連動機構9を介して回転体3と連動して回転する構成となっている。
【0045】
かかるねじ部33は、磁石側ギア31から磁石ハウジング13内へと軸心方向で突出し、外周に雄ねじ部33aが形成されている。本実施例において、雄ねじ部33aは、永久磁石7の移動量を増加するために多条ねじとなっているが、1条ねじであってもよい。なお、雄ねじ部33aの条数の設定により、回転体3の回転速度に対して、ナット部35ひいては永久磁石7の移動速度を調整することができる。
【0046】
ねじ部33の端部には、磁石ハウジング13の軸13aに対応して嵌合孔33bが設けられている。従って、ねじ部33は、嵌合孔33bにおいて磁石ハウジング13の軸13aに回転自在に嵌合している。
【0047】
ナット部35は、上記のように永久磁石7の軸心部に雌ねじ部35aを設けることによって構成されている。従って、本実施例では、永久磁石7にナット部35が設けられた構成となっている。
【0048】
ナット部35は、ねじ部33に螺合しており、ねじ部33の回転により回転体3に対してねじ部33に沿って近接離反移動可能となっている。具体的には、ねじ部33が回転すると、ナット部35を含む永久磁石7の回転がガイド部19によって規制され、ねじ部33の回転方向に応じナット部35を含む永久磁石7がガイド部19にガイドされつつ回転体3に対して近接離反移動する。
【0049】
[簡易回転ダンパーの動作]
回転ダンパー1は、引き戸等の対象物から回転体側ギア17にトルクが入力されると、一方で回転体軸3bを介して回転体3が回転し、他方で連動機構9のギア機構部23の中継ギア27a、連結軸29、中継ギア27b、及び磁石側ギア31を介してねじ駆動機構部25のねじ部33が回転する。
【0050】
回転体3の回転に対しては、永久磁石7から回転体3に渡る磁束ループRにより、機能性流体Fが鉄粉等によるクラスターを形成して減衰力を発生させる。
【0051】
このとき、連動機構9のねじ駆動機構部25のねじ部33が回転体3と共に回転するので、ナット部35を介し永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させる。これにより、回転ダンパー1は、回転体3の回転に応じて永久磁石7からダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRの磁束密度を増減させて減衰力を調整することができる。
【0052】
従って、減衰時の回転体3の回転に応じて、永久磁石7を回転体3に近接させるのか、離反させるか、或はそのときの速度を設定することで、種々の特性を有する回転ダンパー1を実現でき、例えば、回転体3の回転初期や後期の何れかに減衰力を高くしたり、回転体3の回転中の減衰力をほぼ一定とすること等を可能とする。
【0053】
[実施例1の効果]
本実施例の回転ダンパー1は、ダンパー・ハウジング11とこのダンパー・ハウジング11内に相対回転可能に配設された回転体3と、ダンパー・ハウジング11外からダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRを形成する永久磁石7と、ダンパー・ハウジング11及び回転体3間に介在し磁束ループRが通過することで回転体3の回転に対する減衰力を生じさせる機能性流体Fと、回転体3と永久磁石7とを連結し回転体3の回転方向に応じて永久磁石7を連動させ回転体3に対して近接離反移動を行わせる連動機構9とを備える。
【0054】
従って、本実施例では、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させ、回転体3の回転に応じて磁性流体や磁気粘性流体等の機能性流体Fによる減衰力を調整することができ、且つ構造が簡単で、発熱等の問題もなく、耐久性を向上することができる。
【0055】
本実施例の回転ダンパー1では、回転体3が一体回転可能に結合された回転体側ギア17aを備え、連動機構9が回転体側ギア17に噛み合う中継ギア27aを備え、回転体側ギア17aが可動側Mからトルクを受けて回転体3を一体に回転させると共に中継ギア27aを連動回転させる。
【0056】
従って、本実施例では、可動側Mからトルクを受けるための回転体側ギア17を利用して永久磁石7を回転体3に連動させることができ、より構造を簡単にすることができる。
【0057】
連動機構9は、回転体3と連動して回転するねじ部33と、ねじ部33に螺合するナット部35とを備え、ねじ部33の回転によってねじ部33及びナット部35の一方(本実施例ではナット部35)が永久磁石7の近接離反移動の方向に移動し、永久磁石7にねじ部33及びナット部35の一方が設けられ、ねじ部33及びナット部35の一方の移動に応じて永久磁石7が近接離反移動を行う。
【0058】
従って、連動機構9は、ねじ駆動機構を利用して、容易且つ確実に永久磁石7を回転体3に対して連動させて近接離反移動させることができる。
【0059】
また、本実施例では、ダンパー・ハウジング11外に設けられ永久磁石7を収容する磁石ハウジング13と、磁石ハウジング13と永久磁石7との間に設けられ永久磁石7を回転体3に対して近接離反する方向に案内するガイド部19とを備え、ナット部35が永久磁石7に設けられているので、より容易且つ確実に永久磁石7を回転体3に対して連動させて近接離反移動させることができる。
【0060】
[変形例]
図3は、変形例に係る回転ダンパーの断面図である。なお、図3は、図1のII−II線に係る断面に対応している。
【0061】
図3の変形例では、上記実施例1の連動機構9のギア機構部23を省略し、連結フレーム37を設けたものである。
【0062】
連結フレーム37は、回転ダンパー1を迂回して回転体3とねじ駆動機構部25のねじ部33とを一体回転するようにリジッドに連結する。この連結フレーム37は、回転体3の回転体軸3bの外端に一体回転する回転体側フレーム部39を備えている。回転体側フレーム部39は、径方向に伸び、両端部39a及び39bが回転ダンパー1から突出している。
【0063】
回転体側フレーム部39の一端部39aは、可動側に結合されるアームを構成し、回転体側フレーム部39の他端部39bには、連結フレーム37の中継フレーム部41が一体に設けられている。
【0064】
中継フレーム部41は、回転体側フレーム部39から回転ダンパー1に沿って軸心方向に伸び、磁石側フレーム部43に至る。
【0065】
磁石側フレーム部43は、中継フレーム部41から半径方向に伸び、端部にねじ駆動機構部25のねじ部33が結合されている。
【0066】
かかる構成により、図3の変形例でも、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
図4は、他の変形例に係る回転ダンパーの平面図である。
【0068】
図4の変形例では、回転体側ギア17に代えて、ギア付きアーム45を設けたものである。ギア付きアーム45は、回転体3の回転体軸3bに結合され、径方向に伸びている。ギア付きアーム45の一端は、可動側に結合されるアーム部45aを構成し、ギア付きアーム45の他端は、連動機構9のギア機構部23の中継ギア27aに噛み合うギア部45bを備えている。なお、ギア付きアーム45も、可動側Mからトルクを受けて回転体3を一体に回転させると共に中継ギア27aを連動回転させるので、回転他側ギア17のような歯車ではないものの、回転体側ギアを構成する。
【0069】
かかる変形性でも、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。なお、図4の変形例は、他の実施例や変形例に適用することも可能である。
【実施例2】
【0070】
図5は、実施例2に係る回転ダンパーの断面図であり、(A)は永久磁石が回転体に最も近接した状態、(B)は永久磁石が回転体から最も離反した状態を示す。なお、図5は、図1のII−II線に係る断面に対応している。また、実施例2では、実施例1と対応する構成部分に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0071】
本実施例の回転ダンパー1は、連動機構9のねじ駆動機構部25のねじ部33が永久磁石7と共に回転体3に対して近接離反移動する構成となっている。
【0072】
すなわち、本実施例では、ねじ駆動機構部25のナット部35が磁石ハウジング13に設けられ、ねじ部33が永久磁石7に設けられている。
【0073】
磁石ハウジング13は、実施例1に対して、中板5bとの間にテーパ面13bが設けられ、軸13aが除去された形態となっている。この磁石ハウジング13の内周には、テーパ面13bの範囲で雌ねじ部35aが設けられてナット部35が構成されている。
【0074】
ねじ部33は、磁石ハウジング13に対応した柱状であり、軸心方向一端側の外周に雄ねじ部33aが形成されている。雄ねじ部33aは、本実施例において多条ねじであるが、実施例1と同様に一条ねじであってもよい。
【0075】
このねじ部33の雄ねじ部33aは、ナット部35の雌ねじ部35aに螺合している。これにより、ねじ部33は、自身の回転によりナット部35に対する螺合位置を変更しつつ回転体3に対して近接離反移動する。なお、雄ねじ部33aは、ねじ部33が回転体3から最も離反した場合に中継ギア27bに突き当たり、抜け止めの役割を果たす。
【0076】
ねじ部33の軸心方向他端側の外周には、磁石側ギア31が一体に形成されている。磁石側ギア31は、連動機構9の中継ギア27bに噛み合う。磁石側ギア31は、中継ギア27bと同様、平歯車であるため、その歯幅方向である軸心方向におけるねじ部33の上記近接離反移動を許容する。
【0077】
かかるねじ部33は、軸心方向一端の軸心部に永久磁石7を保持している。これにより、ねじ部33が永久磁石7に設けられた構成となっている。永久磁石7は、ねじ部33の凹部33c内に収容され、表面7cがねじ部33の端面33dと面一になっている。
【0078】
従って、本実施例においても、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
[変形例]
図6は、変形例に係る回転ダンパーの断面図であり、図1のII−II線と直交してフランジ部を通る断面に対応している。
【0080】
図6の変形例では、連動機構9の位置を周方向に90度ずらしたものである。これにより、図6の変形例では、連動機構9の連結軸29がフランジ部5cを貫通している。なお、本変形例では、回転体側ギア17、中継ギア27a及び27b、及び磁石側ギア31の大きさに変更があるが、ギア比自体は、実施例1と変わらない。
【0081】
かかる変形例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0082】
図7は、実施例3に係る回転ダンパーの断面図であり、図1のII−II線と直交してフランジ部を通る断面に対応している。実施例3では、実施例1と対応する構成部分に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0083】
本実施例の回転ダンパー1は、連動機構9のギア機構部23を省略し、ねじ駆動機構部25のねじ部33が回転体軸3bに設けられ、ナット部35が永久磁石7に設けられた構成となっている。
【0084】
すなわち、回転体軸3bは、中間部において回転体3の貫通孔3cに嵌合し、両端部が回転体3から軸心方向に突出する。回転体軸3bの一端部は、ダンパー・ハウジング11外へと引き出されて回転体側ギア17が取り付けられる外端となる。回転体軸3bの他端部は、中板5bに設けられた貫通孔5gを貫通して、磁石ハウジング13の底壁13bに支持されている。中板5bには、回転体軸3bとの間をシールするOリングやXリング等のシール部材47が保持されている。
【0085】
回転体軸3bの他端部の外周には、ねじ駆動機構部25のねじ部33を構成する雄ねじ部33aが形成されている。ねじ部33には、ナット部35が螺合している。ナット部35は、実施例1と同様、永久磁石7に一体に設けられている。
【0086】
本実施例では、回転体3と一体回転するねじ部33により、ナット部35を介して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができる。従って、本実施例においても、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
しかも、本実施例では、回転体軸3bを利用してねじ部33を構成するため、構成を簡素化することができると共に、回転体3の回転そのものによって永久磁石7を回転体3に対して近接離反させ、永久磁石7の動作のレスポンスや安定性を向上することもできる。
【0088】
[変形例]
図8は、変形例に係る回転ダンパーの断面図であり、図1のII−II線と直交してフランジ部を通る断面に対応している。
【0089】
図8の変形例では、磁石ハウジング13をダンパー・ハウジング11上に積層した構成となっている。すなわち、磁石ハウジング13は、ダンパー・ハウジング11の蓋部5dを覆うようにダンパー・ハウジング11に取り付けられる。
【0090】
回転体軸3bは、磁石ハウジング13を貫通して外端が外部に位置している。磁石ハウジング13内において、回転体軸3bの外周には、雄ねじ部33aが設けられてねじ駆動機構部25のねじ部33を構成している。ねじ部33には、磁石ハウジング13内に収容されている永久磁石7のナット部35が螺合している。永久磁石7と磁石ハウジング13との間には、ガイド部19が設けられている。
【0091】
従って、本変形例でも、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、実施例3と同様の作用効果を奏することができる。
【0092】
[参考例]
図9は、参考例に係る回転ダンパーの断面図である。
【0093】
参考例は、実施例1〜3の可動式の永久磁石7に代えて、固定式の電磁石49を設けたものである。
【0094】
参考例の回転ダンパー1は、連動機構9及び磁石ハウジング13を有さず、近傍に電磁石49が配置されている。電磁石49は、強磁性体製のコア49aの周囲に電磁コイル49bを巻いて構成されている。
【0095】
かかる参考例では、減衰時の回転体3の回転に応じて、電磁石49の通電制御により、種々の特性を有する回転ダンパー1を実現できる。ただし、永久磁石7を用いた実施例1〜3の方が、制御が簡単であると共に、磁束密度が高いことから回転ダンパー1として有利である。また、実施例1〜3は、永久磁石7を用いているため、参考例のように減衰力を発生させる間、常に通電するようなことはなく、省エネルギーの観点からも有利である。
【符号の説明】
【0096】
1 回転ダンパー
3 回転体
3b 回転体軸(回転軸)
11 ダンパー・ハウジング
13 磁石ハウジング
17 回転体側ギア
19 ガイド部
27a、27b 中継ギア
33 ねじ部
35 ナット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9