【実施例1】
【0018】
[簡易回転ダンパーの構造]
図1は、本発明の一実施例に係る簡易回転ダンパーの平面図であり、
図2は、
図1のII−II線に係る断面図である。なお、以下において「軸心方向」とは、簡易回転ダンパー(以下、単に「回転ダンパー」と称する)1の回転軸心方向を意味する。また、「径方向」とは、回転ダンパー1の径方向を意味する。
【0019】
本実施例の回転ダンパー1は、例えば図示しない引き戸等の可動側Mに対する減衰力を生じさせ、回転体3の回転に応じて減衰力を調整可能とするものである。
【0020】
回転ダンパー1は、
図1及び
図2のように、ケース5と、回転体3と、永久磁石7と、連動機構9とを備えている。
【0021】
ケース5は、非磁性体製であり、例えば樹脂で形成されている。なお、ケース5の材料は、非磁性体製であれば良く、非磁性体金属、セラミック等で形成することもできる。非磁性体金属としては、例えば銅、アルミニウム、ステンレス等を用いることができる。
【0022】
このケース5は、軸心方向の両側にダンパー・ハウジング11及び磁石ハウジング13が一体に形成され、磁石ハウジング13がダンパー・ハウジング11外に設けられる構成となっている。
【0023】
本実施例において、ケース5は、中空円筒状の本体部5aを備え、この本体部5aが軸心方向の中間部で中板5bにより区切られ、軸心方向の両側にダンパー・ハウジング11及び磁石ハウジング13が区画されている。本体部5aの外周には、ダンパー・ハウジング11と磁石ハウジング13との間に取付用のフランジ部5cが一体に形成されている。
【0024】
ダンパー・ハウジング11は、軸心方向の一側(
図2の上側)で開口する凹形状であり、この凹形状の開口部分が蓋部5dによって閉じられている。蓋部5dは、ケース5の本体部5aに溶着等により一体的に取り付けられている。
【0025】
蓋部5dの軸心部には貫通孔5eが形成されている。ダンパー・ハウジング11の軸心部には、中板5bから軸11aが突出している。ダンパー・ハウジング11内は、後述する機能性流体Fが回転体3と共に封入されている。
【0026】
磁石ハウジング13は、軸心方向の他側(
図2の下側)で開口する凹形状であり、内部に永久磁石7が収容されている。磁石ハウジング13の軸心部には、中板5bから軸13aが突出している。
【0027】
回転体3は、ケース5と同様に、非磁性体製であり、例えば樹脂や、銅、アルミニウム、ステンレス等の非磁体金属、セラミック等で形成されている。なお、回転体3は、磁性体により構成することも可能である。
【0028】
この回転体3は、円柱状に形成されており、ケース5のダンパー・ハウジング11内に回転可能に配設されている。回転体3とダンパー・ハウジング11との間は、隙間が確保されている。かかる隙間に機能性流体Fが介在する。なお、回転体3とダンパー・ハウジング11との間の隙間は、本実施例において径方向の隙間と軸心方向の隙間の双方を含む。
【0029】
機能性流体Fとしては、鉄粉等を分散させた磁性流体(Magnetic Fluid)やMR流体と称される磁気粘性流体(Magneto Rheological Fluid)が用いられる。機能性流体Fは、ダンパー・ハウジング11と回転体3との間に介在し、後述する磁束ループRが通過することで鉄粉等によるクラスターを形成し、ダンパー・ハウジング11及び回転体3間にせん断抵抗による減衰力を発生させる。減衰力は、磁束ループRの磁束の増減に応じて増減する。
【0030】
回転体3の軸心部には、軸心方向の他側に、ダンパー・ハウジング11の軸11aに対応して嵌合孔3aが形成されている。従って、回転体3は、嵌合孔3aにおいてダンパー・ハウジング11の軸11aに回転自在に嵌合している。また、回転体3の軸心部には、軸心方向の一側に、回転体3と一体回転する回転軸である回転体軸3bが突設されている。回転体軸3bは、蓋部5dの貫通孔5eからダンパー・ハウジング11外に突出している。
【0031】
蓋部5dの貫通孔5eには、シール部材15が支持され、シール部材15は、回転体軸3bに密接している。シール部材15には、例えばOリングやXリングが用いられる。
【0032】
回転体軸3bの外端には、回転体側ギア17が取り付けられている。従って、回転体側ギア17は、回転体3に一体回転可能に結合されている。回転体側ギア17は、本実施例において平歯車となっているが、これに限られるものではなく、かさ歯車等の他の種類の歯車とすることも可能である。
【0033】
この回転体側ギア17を介して、回転体3は、引き戸等の可動側Mからトルクを受けるようになっていると共に連動機構9に連結されている。なお、可動側Mには、回転体側ギア17に噛み合うラック等が形成される。すなわち、回転体側ギア17が可動側Mからトルクを受けて、一方で回転体3を一体回転させ、他方で連動機構9の後述する中継ギア27aを連動回転させる。
【0034】
そして、連動機構9は、永久磁石7に連結されているため、回転体3と永久磁石7とを連結し、回転体3の回転方向に応じて永久磁石7を連動させ回転体3に対して近接離反移動を行わせるようになっている。
【0035】
永久磁石7は、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石等からなる板状体で、磁石ハウジング13内に軸心方向に移動自在に収容されている。磁石ハウジング13と永久磁石7との間には、スプライン等からなるガイド部19が設けられている。ガイド部19は、永久磁石7を回転体3に対して近接離反する方向(軸心方向)に案内する。
【0036】
永久磁石7は、軸心方向の両側に磁極(N極、S極)を有している。永久磁石7の軸心部は、雌ねじ部35aが形成されており、後述するようにねじ駆動機構部25のナット部35を構成する。
【0037】
かかる永久磁石7は、磁極間に渡る磁束により、ケース5のダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRを形成する。なお、磁束ループRは、ループ状の磁束をいい、
図2に磁束線として概略的に示す。この磁束ループRは、永久磁石7の回転体3に対する距離に応じて、ケース5のダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRの磁束密度が増減する。すなわち、磁束ループRは、回転体3に最も近接したときに磁束密度が最も多く、回転体3から離れるに従って磁束密度が減少する。そして、磁束ループRは、回転ダンパー1の特性にもよるが、永久磁石7が回転体3から一定以上離れた場合に、ケース5のダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束が消滅する。
【0038】
連動機構9は、ギア機構部23とねじ駆動機構部25とで構成されている。なお、連動機構9は、本実施例の変形例(
図3)や実施例3のように、ギア機構部23を設けない構成とすることも可能である。
【0039】
ギア機構部23は、回転体側ギア17の回転にねじ駆動機構部25を連動させるもので、一対の中継ギア27a,27bと、中継ギア27a,27b間の連結軸29と、磁石側ギア31とを備える。
【0040】
中継ギア27a及び27bは、同一形状の平歯車からなる。これら中継ギア27aは、軸心方向に対向して配置され、それぞれ回転体側ギア17及び磁石側ギア31に噛み合っている。中継ギア27a及び27b間は、連結軸29によって一体回転するように結合されている。
【0041】
連結軸29は、軸心方向に延設された中実軸であり、両端部が中継ギア27a及び27bに固定されている。連結軸29の中間部は、ケース5の本体部5aに回転自在に支持されている。すなわち、ケース5の本体部5aには、一対の軸支持アーム5fが一体に設けられている。軸支持アーム5fには、連結軸29が貫通して回転自在に支持されている。
【0042】
磁石側ギア31は、回転体側ギア17と同一形状の平歯車からなる。これにより、連動機構9は、磁石側ギア31と中継ギア27bとの間のギア比が回転体側ギア17と中継ギア27aとの間のギア比と変わらないようになっている。ただし、それら両ギア比は、相互に異なるように設定することも可能である。磁石側ギア31は、軸心方向で回転体側ギア17に対する反対側に位置し、ねじ駆動機構部25に連結されている。
【0043】
ねじ駆動機構部25は、ねじ部33とナット部35とで構成されている。なお、連動機構9は、ねじ駆動機構部25に代えて、例えばカム機構部等を用いることも可能である。
【0044】
ねじ部33は、連動機構9の磁石側ギア31の軸心部に同心に位置し、磁石側ギア31に対して一体回転可能に取り付けられている。従って、ねじ部33は、連動機構9を介して回転体3と連動して回転する構成となっている。
【0045】
かかるねじ部33は、磁石側ギア31から磁石ハウジング13内へと軸心方向で突出し、外周に雄ねじ部33aが形成されている。本実施例において、雄ねじ部33aは、永久磁石7の移動量を増加するために多条ねじとなっているが、1条ねじであってもよい。なお、雄ねじ部33aの条数の設定により、回転体3の回転速度に対して、ナット部35ひいては永久磁石7の移動速度を調整することができる。
【0046】
ねじ部33の端部には、磁石ハウジング13の軸13aに対応して嵌合孔33bが設けられている。従って、ねじ部33は、嵌合孔33bにおいて磁石ハウジング13の軸13aに回転自在に嵌合している。
【0047】
ナット部35は、上記のように永久磁石7の軸心部に雌ねじ部35aを設けることによって構成されている。従って、本実施例では、永久磁石7にナット部35が設けられた構成となっている。
【0048】
ナット部35は、ねじ部33に螺合しており、ねじ部33の回転により回転体3に対してねじ部33に沿って近接離反移動可能となっている。具体的には、ねじ部33が回転すると、ナット部35を含む永久磁石7の回転がガイド部19によって規制され、ねじ部33の回転方向に応じナット部35を含む永久磁石7がガイド部19にガイドされつつ回転体3に対して近接離反移動する。
【0049】
[簡易回転ダンパーの動作]
回転ダンパー1は、引き戸等の対象物から回転体側ギア17にトルクが入力されると、一方で回転体軸3bを介して回転体3が回転し、他方で連動機構9のギア機構部23の中継ギア27a、連結軸29、中継ギア27b、及び磁石側ギア31を介してねじ駆動機構部25のねじ部33が回転する。
【0050】
回転体3の回転に対しては、永久磁石7から回転体3に渡る磁束ループRにより、機能性流体Fが鉄粉等によるクラスターを形成して減衰力を発生させる。
【0051】
このとき、連動機構9のねじ駆動機構部25のねじ部33が回転体3と共に回転するので、ナット部35を介し永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させる。これにより、回転ダンパー1は、回転体3の回転に応じて永久磁石7からダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRの磁束密度を増減させて減衰力を調整することができる。
【0052】
従って、減衰時の回転体3の回転に応じて、永久磁石7を回転体3に近接させるのか、離反させるか、或はそのときの速度を設定することで、種々の特性を有する回転ダンパー1を実現でき、例えば、回転体3の回転初期や後期の何れかに減衰力を高くしたり、回転体3の回転中の減衰力をほぼ一定とすること等を可能とする。
【0053】
[実施例1の効果]
本実施例の回転ダンパー1は、ダンパー・ハウジング11とこのダンパー・ハウジング11内に相対回転可能に配設された回転体3と、ダンパー・ハウジング11外からダンパー・ハウジング11及び回転体3間に渡る磁束ループRを形成する永久磁石7と、ダンパー・ハウジング11及び回転体3間に介在し磁束ループRが通過することで回転体3の回転に対する減衰力を生じさせる機能性流体Fと、回転体3と永久磁石7とを連結し回転体3の回転方向に応じて永久磁石7を連動させ回転体3に対して近接離反移動を行わせる連動機構9とを備える。
【0054】
従って、本実施例では、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させ、回転体3の回転に応じて磁性流体や磁気粘性流体等の機能性流体Fによる減衰力を調整することができ、且つ構造が簡単で、発熱等の問題もなく、耐久性を向上することができる。
【0055】
本実施例の回転ダンパー1では、回転体3が一体回転可能に結合された回転体側ギア17aを備え、連動機構9が回転体側ギア17に噛み合う中継ギア27aを備え、回転体側ギア17aが可動側Mからトルクを受けて回転体3を一体に回転させると共に中継ギア27aを連動回転させる。
【0056】
従って、本実施例では、可動側Mからトルクを受けるための回転体側ギア17を利用して永久磁石7を回転体3に連動させることができ、より構造を簡単にすることができる。
【0057】
連動機構9は、回転体3と連動して回転するねじ部33と、ねじ部33に螺合するナット部35とを備え、ねじ部33の回転によってねじ部33及びナット部35の一方(本実施例ではナット部35)が永久磁石7の近接離反移動の方向に移動し、永久磁石7にねじ部33及びナット部35の一方が設けられ、ねじ部33及びナット部35の一方の移動に応じて永久磁石7が近接離反移動を行う。
【0058】
従って、連動機構9は、ねじ駆動機構を利用して、容易且つ確実に永久磁石7を回転体3に対して連動させて近接離反移動させることができる。
【0059】
また、本実施例では、ダンパー・ハウジング11外に設けられ永久磁石7を収容する磁石ハウジング13と、磁石ハウジング13と永久磁石7との間に設けられ永久磁石7を回転体3に対して近接離反する方向に案内するガイド部19とを備え、ナット部35が永久磁石7に設けられているので、より容易且つ確実に永久磁石7を回転体3に対して連動させて近接離反移動させることができる。
【0060】
[変形例]
図3は、変形例に係る回転ダンパーの断面図である。なお、
図3は、
図1のII−II線に係る断面に対応している。
【0061】
図3の変形例では、上記実施例1の連動機構9のギア機構部23を省略し、連結フレーム37を設けたものである。
【0062】
連結フレーム37は、回転ダンパー1を迂回して回転体3とねじ駆動機構部25のねじ部33とを一体回転するようにリジッドに連結する。この連結フレーム37は、回転体3の回転体軸3bの外端に一体回転する回転体側フレーム部39を備えている。回転体側フレーム部39は、径方向に伸び、両端部39a及び39bが回転ダンパー1から突出している。
【0063】
回転体側フレーム部39の一端部39aは、可動側に結合されるアームを構成し、回転体側フレーム部39の他端部39bには、連結フレーム37の中継フレーム部41が一体に設けられている。
【0064】
中継フレーム部41は、回転体側フレーム部39から回転ダンパー1に沿って軸心方向に伸び、磁石側フレーム部43に至る。
【0065】
磁石側フレーム部43は、中継フレーム部41から半径方向に伸び、端部にねじ駆動機構部25のねじ部33が結合されている。
【0066】
かかる構成により、
図3の変形例でも、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
図4は、他の変形例に係る回転ダンパーの平面図である。
【0068】
図4の変形例では、回転体側ギア17に代えて、ギア付きアーム45を設けたものである。ギア付きアーム45は、回転体3の回転体軸3bに結合され、径方向に伸びている。ギア付きアーム45の一端は、可動側に結合されるアーム部45aを構成し、ギア付きアーム45の他端は、連動機構9のギア機構部23の中継ギア27aに噛み合うギア部45bを備えている。なお、ギア付きアーム45も、可動側Mからトルクを受けて回転体3を一体に回転させると共に中継ギア27aを連動回転させるので、回転他側ギア17のような歯車ではないものの、回転体側ギアを構成する。
【0069】
かかる変形性でも、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。なお、
図4の変形例は、他の実施例や変形例に適用することも可能である。
【実施例2】
【0070】
図5は、実施例2に係る回転ダンパーの断面図であり、(A)は永久磁石が回転体に最も近接した状態、(B)は永久磁石が回転体から最も離反した状態を示す。なお、
図5は、
図1のII−II線に係る断面に対応している。また、実施例2では、実施例1と対応する構成部分に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0071】
本実施例の回転ダンパー1は、連動機構9のねじ駆動機構部25のねじ部33が永久磁石7と共に回転体3に対して近接離反移動する構成となっている。
【0072】
すなわち、本実施例では、ねじ駆動機構部25のナット部35が磁石ハウジング13に設けられ、ねじ部33が永久磁石7に設けられている。
【0073】
磁石ハウジング13は、実施例1に対して、中板5bとの間にテーパ面13bが設けられ、軸13aが除去された形態となっている。この磁石ハウジング13の内周には、テーパ面13bの範囲で雌ねじ部35aが設けられてナット部35が構成されている。
【0074】
ねじ部33は、磁石ハウジング13に対応した柱状であり、軸心方向一端側の外周に雄ねじ部33aが形成されている。雄ねじ部33aは、本実施例において多条ねじであるが、実施例1と同様に一条ねじであってもよい。
【0075】
このねじ部33の雄ねじ部33aは、ナット部35の雌ねじ部35aに螺合している。これにより、ねじ部33は、自身の回転によりナット部35に対する螺合位置を変更しつつ回転体3に対して近接離反移動する。なお、雄ねじ部33aは、ねじ部33が回転体3から最も離反した場合に中継ギア27bに突き当たり、抜け止めの役割を果たす。
【0076】
ねじ部33の軸心方向他端側の外周には、磁石側ギア31が一体に形成されている。磁石側ギア31は、連動機構9の中継ギア27bに噛み合う。磁石側ギア31は、中継ギア27bと同様、平歯車であるため、その歯幅方向である軸心方向におけるねじ部33の上記近接離反移動を許容する。
【0077】
かかるねじ部33は、軸心方向一端の軸心部に永久磁石7を保持している。これにより、ねじ部33が永久磁石7に設けられた構成となっている。永久磁石7は、ねじ部33の凹部33c内に収容され、表面7cがねじ部33の端面33dと面一になっている。
【0078】
従って、本実施例においても、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
[変形例]
図6は、変形例に係る回転ダンパーの断面図であり、
図1のII−II線と直交してフランジ部を通る断面に対応している。
【0080】
図6の変形例では、連動機構9の位置を周方向に90度ずらしたものである。これにより、
図6の変形例では、連動機構9の連結軸29がフランジ部5cを貫通している。なお、本変形例では、回転体側ギア17、中継ギア27a及び27b、及び磁石側ギア31の大きさに変更があるが、ギア比自体は、実施例1と変わらない。
【0081】
かかる変形例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0082】
図7は、実施例3に係る回転ダンパーの断面図であり、
図1のII−II線と直交してフランジ部を通る断面に対応している。実施例3では、実施例1と対応する構成部分に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0083】
本実施例の回転ダンパー1は、連動機構9のギア機構部23を省略し、ねじ駆動機構部25のねじ部33が回転体軸3bに設けられ、ナット部35が永久磁石7に設けられた構成となっている。
【0084】
すなわち、回転体軸3bは、中間部において回転体3の貫通孔3cに嵌合し、両端部が回転体3から軸心方向に突出する。回転体軸3bの一端部は、ダンパー・ハウジング11外へと引き出されて回転体側ギア17が取り付けられる外端となる。回転体軸3bの他端部は、中板5bに設けられた貫通孔5gを貫通して、磁石ハウジング13の底壁13bに支持されている。中板5bには、回転体軸3bとの間をシールするOリングやXリング等のシール部材47が保持されている。
【0085】
回転体軸3bの他端部の外周には、ねじ駆動機構部25のねじ部33を構成する雄ねじ部33aが形成されている。ねじ部33には、ナット部35が螺合している。ナット部35は、実施例1と同様、永久磁石7に一体に設けられている。
【0086】
本実施例では、回転体3と一体回転するねじ部33により、ナット部35を介して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができる。従って、本実施例においても、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
しかも、本実施例では、回転体軸3bを利用してねじ部33を構成するため、構成を簡素化することができると共に、回転体3の回転そのものによって永久磁石7を回転体3に対して近接離反させ、永久磁石7の動作のレスポンスや安定性を向上することもできる。
【0088】
[変形例]
図8は、変形例に係る回転ダンパーの断面図であり、
図1のII−II線と直交してフランジ部を通る断面に対応している。
【0089】
図8の変形例では、磁石ハウジング13をダンパー・ハウジング11上に積層した構成となっている。すなわち、磁石ハウジング13は、ダンパー・ハウジング11の蓋部5dを覆うようにダンパー・ハウジング11に取り付けられる。
【0090】
回転体軸3bは、磁石ハウジング13を貫通して外端が外部に位置している。磁石ハウジング13内において、回転体軸3bの外周には、雄ねじ部33aが設けられてねじ駆動機構部25のねじ部33を構成している。ねじ部33には、磁石ハウジング13内に収容されている永久磁石7のナット部35が螺合している。永久磁石7と磁石ハウジング13との間には、ガイド部19が設けられている。
【0091】
従って、本変形例でも、ダンパー・ハウジング11外で回転体3の回転に連動して永久磁石7を回転体3に対して近接離反移動させることができ、実施例3と同様の作用効果を奏することができる。
【0092】
[参考例]
図9は、参考例に係る回転ダンパーの断面図である。
【0093】
参考例は、実施例1〜3の可動式の永久磁石7に代えて、固定式の電磁石49を設けたものである。
【0094】
参考例の回転ダンパー1は、連動機構9及び磁石ハウジング13を有さず、近傍に電磁石49が配置されている。電磁石49は、強磁性体製のコア49aの周囲に電磁コイル49bを巻いて構成されている。
【0095】
かかる参考例では、減衰時の回転体3の回転に応じて、電磁石49の通電制御により、種々の特性を有する回転ダンパー1を実現できる。ただし、永久磁石7を用いた実施例1〜3の方が、制御が簡単であると共に、磁束密度が高いことから回転ダンパー1として有利である。また、実施例1〜3は、永久磁石7を用いているため、参考例のように減衰力を発生させる間、常に通電するようなことはなく、省エネルギーの観点からも有利である。