(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る血液採取容器は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する血液採取容器本体と、上記血液採取容器本体内に配置されたセリンプロテアーゼと、上記血液採取容器本体内に配置されたヘパリン中和剤とを備える。
【0024】
本発明では、上記セリンプロテアーゼが配置された領域を第1の領域とし、上記ヘパリン中和剤が配置された領域を第2の領域とする。本発明に係る血液採取容器では、上記第2の領域が、上記第1の領域の上記他端側の端部よりも上記他端側に存在する領域を有する。
【0025】
本発明に係る血液採取容器では、上記の構成が備えられているので、ヘパリンを含む血液を凝固させたときに、泡が噛み込んだ血餅の発生を抑えることができ、かつ、ヘパリンを含む血液を血清と血餅とに分離したときに、分離後の血清におけるフィブリンの生成を抑えることができる。また、本発明に係る血液採取容器では、ヘパリンを含む血液を短時間で凝固させることができる。本発明に係る血液採取容器では、例えば、1単位のヘパリンを含む血液を、5分〜10分で凝固させることができる。
【0026】
ヘパリン中和剤を含む従来の血液採取容器では、ヘパリン中和剤と血液凝固促進成分(トロンビン等のセリンプロテアーゼ)とが血液採取容器本体の内面全体に塗布されている。本発明者らは、この血液採取容器にヘパリンを含む血液を採取すると、血液採取と同時に血液凝固反応が進行し、血液採取時に生じた気泡等の泡が噛み込んだ血餅が発生すること、また、凝固不良が生じることによって、分離後の血清においてフィブリンが生成することを見出した。
【0027】
更に、本発明者らは、血液採取容器本体の開口部付近の狭い範囲に、ヘパリン中和剤と血液凝固促進成分(トロンビン等のセリンプロテアーゼ)との混合物が配置された血液採取容器にヘパリンを含む血液を採取すると、以下が生じやすいことを見出した。すなわち、本発明者らは、この血液採取容器にヘパリンを含む血液を採取すると、該血液に含まれるヘパリン−アンチトロンビンIII複合体によって、トロンビンの不活化反応が飛躍的に促進され、泡が噛み込んだ血餅の発生及び分離後の血清におけるフィブリンの生成がより生じやすいことを見出した。
【0028】
これに対して、本発明に係る血液採取容器では、ヘパリン中和剤が配置されている領域(第2の領域)が、セリンプロテアーゼが配置されている領域(第1の領域)と比べて下方側(上記血液採取容器本体の他端側)に配置されている部分を有する。このため、本発明に係る血液採取容器を用いてヘパリンを含む血液を採取すると、該血液がセリンプロテアーゼよりも先にヘパリン中和剤と接触するので、ヘパリン中和剤が血液中のヘパリンを中和し、ヘパリン−アンチトロンビンIII複合体の形成を効果的に抑えることができる。次いで、転倒混和等を行うことで、血液とセリンプロテアーゼとが接触し、血液凝固反応が効果的に進行し、短時間で血液を凝固させることができる。また、血液採取容器本体内に無機粉末が配置されている場合には、血液凝固反応をより一層効果的に進行させることができる。このため、泡が噛み込んだ血餅の発生及び分離後の血清におけるフィブリンの生成を抑えることができる。
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0031】
血液採取容器11は、セリンプロテアーゼ1(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2(ヘパリン中和剤を含む層)と、無機粉末3(無機粉末を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11は、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11は、真空採血管である。
【0032】
セリンプロテアーゼ1、ヘパリン中和剤2、無機粉末3、及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0033】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1が配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0034】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2が配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0035】
第3の領域R3は、無機粉末3が配置された領域である。第3の領域R3は、円環状の領域である。
【0036】
血液採取容器11では、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1bよりも他端4b側に存在する領域を有する。血液採取容器11では、第2の領域R2の全体が、第1の領域R1の他端4b側の端部1bよりも他端4b側に存在する。第2の領域R2の一端4a側の端部2aは、第1の領域R1の他端4b側の端部1bよりも、他端4b側に位置する。
【0037】
したがって、血液採取容器11では、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域は、存在しない。
【0038】
血液採取容器11では、第3の領域R3が、第1の領域R1の他端4b側の端部1bよりも他端4b側に存在する領域を有する。第3の領域R3の他端4b側の端部3bは、第1の領域R1の他端4b側の端部1bよりも他端4b側に位置する。
【0039】
血液採取容器11では、第1の領域R1が、第3の領域R3の一端4a側の端部3aよりも一端4a側に存在する領域を有する。第1の領域R1の一端4a側の端部1aは、第3の領域R3の一端4a側の端部3aよりも一端4a側に位置する。なお、第1の領域R1の一端側の端部と、第3の領域R3の一端側の端部とは、血液採取容器本体の一端付近まで存在してもよく、血液採取容器本体の一端付近において、同じ位置であってもよい。
【0040】
血液採取容器11では、第1の領域R1の他端4b側の端部1bが、第3の領域R3の一端4a側の端部3aよりも、他端4b側に位置する。したがって、血液採取容器11では、第1の領域R1と、第3の領域R3とが重なる重複領域R13が存在する。血液採取容器11では、重複領域R13は、円環状の領域である。血液採取容器11では、重複領域R13において、セリンプロテアーゼを含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0041】
重複領域R13では、セリンプロテアーゼと、無機粉末とが混在して存在している。
【0042】
血液採取容器11では、第3の領域R3が、第2の領域R2の一端4a側の端部2aよりも一端4a側に存在する領域を有する。第3の領域R3の一端4a側の端部3aは、第2の領域R2の一端4a側の端部2aよりも一端4a側に位置する。
【0043】
血液採取容器11では、第2の領域R2が、第3の領域R3の他端4b側の端部3bよりも他端4b側に存在する領域を有する。第2の領域R2の他端4b側の端部2bは、第3の領域R3の他端4b側の端部3bよりも他端4b側に位置する。
【0044】
血液採取容器11では、第2の領域R2の一端4a側の端部2aが、第3の領域R3の他端4b側の端部3bよりも、一端4a側に位置する。したがって、血液採取容器11では、第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23が存在する。血液採取容器11では、重複領域R23は、円環状の領域である。血液採取容器11では、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0045】
重複領域R23では、ヘパリン中和剤と、無機粉末とが混在して存在している。
【0046】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0047】
血液採取容器11Aは、セリンプロテアーゼ1A(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2A(ヘパリン中和剤を含む層)と、無機粉末3A(無機粉末を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11Aは、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11Aは、管状であり、真空採血管である。
【0048】
セリンプロテアーゼ1A、ヘパリン中和剤2A、無機粉末3A及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0049】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1Aが配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0050】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2Aが配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0051】
第3の領域R3は、無機粉末3Aが配置された領域である。第3の領域R3は、円環状の領域である。
【0052】
血液採取容器11Aでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Abよりも他端4b側に存在する領域を有する。第2の領域R2の他端4b側の端部2Abは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Abよりも、他端4b側に位置する。
【0053】
血液採取容器11Aでは、第1の領域R1が、第2の領域R2の一端4a側の端部2Aaよりも一端4a側に存在する領域を有する。第1の領域R1の一端4a側の端部1Aaは、第2の領域R2の一端4a側の端部2Aaよりも、一端4a側に位置する。
【0054】
血液採取容器11Aでは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Abが、第2の領域R2の一端4a側の端部2Aaよりも、他端4b側に位置する。したがって、血液採取容器11Aでは、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域R12が存在する。血液採取容器11Aでは、重複領域R12は、円環状の領域である。血液採取容器11Aでは、重複領域R12において、ヘパリン中和剤を含む層がセリンプロテアーゼを含む層よりも内側に位置する。
【0055】
重複領域R12では、セリンプロテアーゼと、ヘパリン中和剤とが混在して存在している。
【0056】
本発明では、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域R12は、極めて少ないことが好ましく、重複領域が存在しないことがより好ましい。この場合には、血液中のヘパリンをヘパリン中和剤で中和した後に、セリンプロテアーゼと血液とを接触させ、血液を十分に凝固させることができる。
【0057】
血液採取容器11Aでは、第3の領域R3が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Abよりも他端4b側に存在する領域を有する。血液採取容器11Aでは、第3の領域R3の全体が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Abよりも他端4b側に存在する。第3の領域R3の一端4a側の端部3Aaは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Abよりも、他端4b側に位置する。
【0058】
したがって、血液採取容器11Aでは、第1の領域R1と、第3の領域R3とが重なる重複領域は、存在しない。
【0059】
血液採取容器11Aでは、第3の領域R3が、第2の領域R2の他端4b側の端部2Abよりも他端4b側に存在する領域を有する。第3の領域R3の他端4b側の端部3Abは、第2の領域R2の他端4b側の端部2Abよりも他端4b側に位置する。
【0060】
血液採取容器11Aでは、第2の領域R2が、第3の領域R3の一端4a側の端部3Aaよりも一端4a側に存在する領域を有する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Aaは、第3の領域R3の一端4a側の端部3Aaよりも一端4a側に位置する。
【0061】
血液採取容器11Aでは、第2の領域R2の他端4b側の端部2Abが、第3の領域R3の一端4a側の端部3Aaよりも、他端4b側に位置する。したがって、血液採取容器11Aでは、第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23が存在する。血液採取容器11Aでは、重複領域R23は、円環状の領域である。血液採取容器11Aでは、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0062】
重複領域R23では、ヘパリン中和剤と、無機粉末とが混在して存在している。
【0063】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0064】
血液採取容器11Bは、セリンプロテアーゼ1B(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2B(ヘパリン中和剤を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器11Bは、
図1に示す血液採取容器11とは異なり、無機粉末を備えない。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11Bは、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11Bは、管状であり、真空採血管である。
【0065】
セリンプロテアーゼ1B、ヘパリン中和剤2B及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0066】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1Bが配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0067】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2Bが配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0068】
血液採取容器11Bでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Bbよりも他端4b側に存在する領域を有する。血液採取容器11Bでは、第2の領域R2の全体が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Bbよりも他端4b側に存在する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Baは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Bbよりも、他端4b側に位置する。なお、符号1Baは、第1の領域R1の一端4a側の端部であり、符号2Bbは、第2の領域R2の他端4b側の端部である。
【0069】
したがって、血液採取容器11Bでは、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域は、存在しない。なお、第3の領域R3を備えない血液採取容器において、
図3に示す血液採取容器11Bとは異なり、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域R12が存在してもよいが、重複領域R12は極力少ないことが好ましい。
【0070】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0071】
血液採取容器11Cは、セリンプロテアーゼ1C(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2C(ヘパリン中和剤を含む層)と、無機粉末3C(無機粉末を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11Cは、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11Cは、管状であり、真空採血管である。
【0072】
セリンプロテアーゼ1C、ヘパリン中和剤2C、無機粉末3C及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0073】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1Cが配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0074】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2Cが配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0075】
第3の領域R3は、無機粉末3Cが配置された領域である。第3の領域R3は、円環状の領域である。
【0076】
血液採取容器11Cでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Cbよりも他端4b側に存在する領域を有する。血液採取容器11Cでは、第2の領域R2の全体が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Cbよりも他端4b側に存在する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Caは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Cbよりも、他端4b側に位置する。
【0077】
したがって、血液採取容器11Cでは、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域は、存在しない。
【0078】
血液採取容器11Cでは、第3の領域R3が、第1の領域R1の一端4a側の端部1Caよりも一端4a側に存在する領域を有する。第3の領域R3の一端4a側の端部3Caは、第1の領域R1の一端4a側の端部1Caよりも一端4a側に位置する。
【0079】
血液採取容器11Cでは、第3の領域R3が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Cbよりも他端4b側に存在する領域を有する。第3の領域R3の他端4b側の端部3Cbは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Cbよりも他端4b側に位置する。
【0080】
したがって、血液採取容器11Cでは、第1の領域R1と、第3の領域R3とが重なる重複領域R13が存在する。血液採取容器11Cでは、重複領域R13は、第1の領域R1と一致する。血液採取容器11Cでは、重複領域R13は、円環状の領域である。血液採取容器11Cでは、重複領域R13において、セリンプロテアーゼを含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0081】
重複領域R13では、セリンプロテアーゼと、無機粉末とが混在して存在している。
【0082】
血液採取容器11Cでは、第3の領域R3が、第2の領域R2の一端4a側の端部2Caよりも一端4a側に存在する領域を有する。第3の領域R3の一端4a側の端部3Caは、第2の領域R2の一端4a側の端部2Caよりも一端4a側に位置する。
【0083】
血液採取容器11Cでは、第2の領域R2の他端4b側の端部2Cbと、第3の領域R3の他端4b側の端部3Cbとは同じ位置に存在する。
【0084】
したがって、血液採取容器11Cでは、第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23が存在する。血液採取容器11Cでは、重複領域R23は、第2の領域R2と一致する。血液採取容器11Cでは、重複領域R23は、円環状の領域である。血液採取容器11Cでは、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0085】
重複領域R23では、ヘパリン中和剤と、無機粉末とが混在して存在している。
【0086】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0087】
血液採取容器11Dは、セリンプロテアーゼ1D(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2D(ヘパリン中和剤を含む層)と、無機粉末3D(無機粉末を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11Dは、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11Dは、管状であり、真空採血管である。
【0088】
セリンプロテアーゼ1D、ヘパリン中和剤2D、無機粉末3D及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0089】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1Dが配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0090】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2Dが配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0091】
第3の領域R3は、無機粉末3Dが配置された領域である。第3の領域R3は、円環状の領域である。
【0092】
血液採取容器11Dでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Dbよりも他端4b側に存在する領域を有する。第2の領域R2の他端4b側の端部2Dbは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Dbよりも、他端4b側に位置する。
【0093】
血液採取容器11Dでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の一端4a側の端部1Daよりも一端4a側に存在する領域を有する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Daは、第1の領域R1の一端4a側の端部1Daよりも一端4a側に位置する。
【0094】
したがって、血液採取容器11Dでは、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域R12が存在する。血液採取容器11Dでは、重複領域R12は、第1の領域R1と一致する。血液採取容器11Dでは、重複領域R12は、円環状の領域である。血液採取容器11Dでは、重複領域R12において、ヘパリン中和剤を含む層がセリンプロテアーゼを含む層よりも内側に位置する。
【0095】
重複領域R12では、セリンプロテアーゼと、ヘパリン中和剤とが混在して存在している。
【0096】
血液採取容器11Dでは、第2の領域R2が、第3の領域R3の一端4a側の端部3Daよりも一端4a側に存在する領域を有する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Daは、第3の領域R3の一端4a側の端部3Daよりも一端4a側に位置する。
【0097】
血液採取容器11Dでは、第2の領域R2の他端4b側の端部2Dbと、第3の領域R3の他端4b側の端部3Dbとは同じ位置に存在する。
【0098】
したがって、血液採取容器11Dでは、第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23が存在する。血液採取容器11Dでは、重複領域R23は、第3の領域R3と一致する。血液採取容器11Dでは、重複領域R23は、円環状の領域である。血液採取容器11Dでは、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0099】
重複領域R23では、ヘパリン中和剤と、無機粉末とが混在して存在している。
【0100】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0101】
血液採取容器11Eは、セリンプロテアーゼ1E(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2E(ヘパリン中和剤を含む層)と、無機粉末3E(無機粉末を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11Eは、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11Eは、管状であり、真空採血管である。
【0102】
セリンプロテアーゼ1E、ヘパリン中和剤2E、無機粉末3E及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0103】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1Eが配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0104】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2Eが配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0105】
第3の領域R3は、無機粉末3Eが配置された領域である。第3の領域R3は、円環状の領域である。
【0106】
血液採取容器11Eでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Ebよりも他端4b側に存在する領域を有する。第2の領域R2の他端4b側の端部2Ebは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Ebよりも、他端4b側に位置する。
【0107】
血液採取容器11Eでは、第1の領域R1が、第2の領域R2の一端4a側の端部2Eaよりも一端4a側に存在する領域を有する。第1の領域R1の一端4a側の端部1Eaは、第2の領域R2の一端4a側の端部2Eaよりも一端4a側に位置する。
【0108】
したがって、血液採取容器11Eでは、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域R12が存在する。血液採取容器11Eでは、重複領域R12は、円環状の領域である。血液採取容器11Eでは、重複領域R12において、ヘパリン中和剤を含む層がセリンプロテアーゼを含む層よりも内側に位置する。
【0109】
重複領域R12では、セリンプロテアーゼと、ヘパリン中和剤とが混在して存在している。
【0110】
血液採取容器11Eでは、第2の領域R2が、第3の領域R3の一端4a側の端部3Eaよりも一端4a側に存在する領域を有する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Eaは、第3の領域R3の一端4a側の端部3Eaよりも一端4a側に位置する。
【0111】
血液採取容器11Eでは、第2の領域R2の他端4b側の端部2Ebと、第3の領域R3の他端4b側の端部3Ebとは同じ位置に存在する。
【0112】
したがって、血液採取容器11Eでは、第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23が存在する。血液採取容器11Eでは、重複領域R23は、第3の領域R3と一致する。血液採取容器11Eでは、重複領域R23は、円環状の領域である。血液採取容器11Eでは、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0113】
重複領域R23では、ヘパリン中和剤と、無機粉末とが混在して存在している。
【0114】
図7は、本発明の第7の実施形態に係る血液採取容器の正面断面図である。
【0115】
血液採取容器11Fは、セリンプロテアーゼ1F(セリンプロテアーゼを含む層)と、ヘパリン中和剤2F(ヘパリン中和剤を含む層)と、無機粉末3F(無機粉末を含む層)と、血液採取容器本体4と、血清分離用組成物5と、栓体6とを備える。血液採取容器本体4は、一端4aに開口を有し、他端4bに閉じられている底部を有する。血清分離用組成物5は、血液採取容器本体4の底部に収容されている。栓体6は、血液採取容器本体4の開口に挿入されている。また、血液採取容器11Fは、血液採取容器本体4の少なくとも底部に配置された消泡剤(図示せず)を備える。血液採取容器11Fは、管状であり、真空採血管である。
【0116】
セリンプロテアーゼ1F、ヘパリン中和剤2F、無機粉末3F及び消泡剤はそれぞれ、血液採取容器本体4内に配置されており、血液採取容器本体4の内壁面に付着しており、血液採取容器本体4の内壁面上に配置されている。
【0117】
第1の領域R1は、セリンプロテアーゼ1Fが配置された領域である。第1の領域R1は、円環状の領域である。
【0118】
第2の領域R2は、ヘパリン中和剤2Fが配置された領域である。第2の領域R2は、円環状の領域である。
【0119】
第3の領域R3は、無機粉末3Fが配置された領域である。第3の領域R3は、円環状の領域である。
【0120】
血液採取容器11Fでは、第2の領域R2が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Fbよりも他端4b側に存在する領域を有する。血液採取容器11Fでは、第2の領域R2の全体が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Fbよりも他端4b側に存在する。第2の領域R2の一端4a側の端部2Faは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Fbよりも、他端4b側に位置する。
【0121】
したがって、血液採取容器11Fでは、第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域は、存在しない。
【0122】
血液採取容器11Fでは、第3の領域R3が、第1の領域R1の一端4a側の端部1Faよりも一端4a側に存在する領域を有する。第3の領域R3の一端4a側の端部3Faは、第1の領域R1の一端4a側の端部1Faよりも一端4a側に位置する。
【0123】
血液採取容器11Fでは、第3の領域R3が、第1の領域R1の他端4b側の端部1Fbよりも他端4b側に存在する領域を有する。第3の領域R3の他端4b側の端部3Fbは、第1の領域R1の他端4b側の端部1Fbよりも他端4b側に位置する。
【0124】
したがって、血液採取容器11Fでは、第1の領域R1と、第3の領域R3とが重なる重複領域R13が存在する。血液採取容器11Fでは、重複領域R13は、円環状の領域である。血液採取容器11Fでは、重複領域R13において、セリンプロテアーゼを含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0125】
重複領域R13では、セリンプロテアーゼと、無機粉末とが混在して存在している。
【0126】
血液採取容器11Fでは、第3の領域R3が、第2の領域R2の一端4a側の端部2Faよりも一端4a側に存在する領域を有する。第3の領域R3の一端4a側の端部3Faは、第2の領域R2の一端4a側の端部2Faよりも一端4a側に位置する。
【0127】
血液採取容器11Fでは、第2の領域R2が、第3の領域R3の他端4b側の端部3Fbよりも他端4b側に存在する領域を有する。第2の領域R2の他端4b側の端部2Fbは、第3の領域R3の他端4b側の端部3Fbよりも他端4b側に位置する。
【0128】
したがって、血液採取容器11Fでは、第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23が存在する。血液採取容器11Fでは、重複領域R23は、円環状の領域である。血液採取容器11Fでは、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置する。
【0129】
重複領域R23では、ヘパリン中和剤と、無機粉末とが混在して存在している。
【0130】
本発明に係る血液採取容器では、第1の領域R1の一端側(血液採取容器本体の一端側)の端部が、第2の領域R2の一端側(血液採取容器本体の一端側)の端部よりも一端側に位置していてもよく、他端側に位置していてもよい。また、本発明に係る血液採取容器では、第1の領域R1の一端側の端部が、第2の領域R2の一端側の端部と一致していてもよい。
【0131】
本発明に係る血液採取容器では、第1の領域R1の一端側(血液採取容器本体の一端側)の端部が、第3の領域R3の一端側(血液採取容器本体の一端側)の端部よりも一端側に位置していてもよく、他端側に位置していてもよい。また、本発明に係る血液採取容器では、第1の領域R1の一端側の端部が、第3の領域R3の一端側の端部と一致していてもよい。
【0132】
本発明に係る血液採取容器では、第2の領域R2の一端側(血液採取容器本体の一端側)の端部が、第3の領域R3の一端側(血液採取容器本体の一端側)の端部よりも一端側に位置していてもよく、他端側に位置していてもよい。また、本発明に係る血液採取容器では、第2の領域R2の一端側の端部が、第3の領域R3の一端側の端部と一致していてもよい。
【0133】
本発明に係る血液採取容器では、第2の領域R2の他端側(血液採取容器本体の他端側)の端部が、第3の領域R3の他端側(血液採取容器本体の他端側)の端部よりも一端側に位置していてもよく、他端側に位置していてもよい。また、本発明に係る血液採取容器では、第2の領域R2の他端側の端部が、第3の領域R3の他端側の端部と一致していてもよい。
【0134】
本発明に係る血液採取容器では、第1の領域R1、第2の領域R2、第3の領域R3、重複領域R12、重複領域R23、及び重複領域R13はそれぞれ、環状の領域であってもよく、環状の領域でなくてもよい。第1の領域R1、第2の領域R2及び第3の領域R3の形状は、例えば、血液採取容器本体の形状等により適宜変更される。
【0135】
本発明に係る血液採取容器では、重複領域R12において、ヘパリン中和剤を含む層がセリンプロテアーゼを含む層よりも内側に位置していてもよく、外側に位置していてもよい。本発明に係る血液採取容器では、重複領域R12において、ヘパリン中和剤を含む層が、セリンプロテアーゼを含む層よりも内側に位置していることが好ましい。
【0136】
本発明に係る血液採取容器では、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置していてもよく、外側に位置していてもよい。本発明に係る血液採取容器では、重複領域R23において、ヘパリン中和剤を含む層が無機粉末を含む層よりも内側に位置していることが好ましい。この場合には、ヘパリンを含む血液と接触するヘパリン中和剤の量を多くすることができ、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0137】
本発明に係る血液採取容器では、該血液採取容器の他端側を下側にして、採血又は血液サンプルを分注する等により血液を採取したときに、採取された血液の液面よりも上側(血液採取容器本体の一端側)に、第1の領域R1が存在することが好ましい。
【0138】
以下、本発明に係る血液採取容器を更に詳細に説明する。
【0139】
(セリンプロテアーゼ:第1の領域R1)
上記セリンプロテアーゼは、上記血液採取容器本体内に配置される。上記セリンプロテアーゼは、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していることが好ましい。この場合に、上記セリンプロテアーゼは、例えば、後述の水溶性バインダー等を介して、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していてもよい。上記セリンプロテアーゼは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。第1の領域R1は、セリンプロテアーゼが配置されている領域である。
【0140】
上記セリンプロテアーゼとしては、トロンビン、トロンビン様酵素、トリプシン、及びフィブリノーゲン分解酵素等が挙げられる。上記トロンビン様酵素としては、蛇毒及びエカリン等が挙げられる。
【0141】
血液を効果的に凝固させる観点から、上記セリンプロテアーゼは、トロンビン、トロンビン様酵素、又はフィブリノーゲン分解酵素であることが好ましく、トロンビン、又はトロンビン様酵素であることがより好ましく、トロンビンであることが更に好ましい。上記トロンビン様酵素は、蛇毒又はエカリンであることが好ましい。
【0142】
上記血液採取容器において、上記セリンプロテアーゼの含有量は、採取される血液1mLあたり、好ましくは0.5単位以上、より好ましくは1単位以上、好ましくは50単位以下、より好ましくは20単位以下である。上記セリンプロテアーゼの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液凝固反応を効果的に進行させることができ、また、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0143】
(ヘパリン中和剤:第2の領域R2)
上記ヘパリン中和剤は、上記血液採取容器本体内に配置される。上記ヘパリン中和剤は、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していることが好ましい。この場合に、上記ヘパリン中和剤は、例えば、後述の水溶性バインダー等を介して、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していてもよく、ヘパリン中和剤のみで、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していてもよい。上記ヘパリン中和剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。第2の領域R2は、ヘパリン中和剤が配置されている領域である。
【0144】
上記ヘパリン中和剤としては、ヘパリン中和剤として使用可能なものであればよく、例えば、アミン塩、及び第4級窒素原子を有する有機化合物等が挙げられる。上記アミン塩及び上記第4級窒素原子を有する有機化合物は、血液中のヘパリンを吸着・中和して、ヘパリンを不活性化することができる。
【0145】
上記アミン塩は、第1級アミン塩であってもよく、第2級アミン塩であってもよく、第3級アミン塩であってもよい。上記アミン塩を構成するアミンは、直鎖状のアミンであってもよく、環状のアミンであってもよく、低分子化合物であってもよく、低分子の繰返し構造単位を有する高分子化合物であってもよい。上記アミン塩を構成するアミンは第1級アミンであってもよく、第2級アミンであってもよく、第3級アミンであってもよい。また、上記アミン塩を構成する酸は、無機酸であってもよく、有機酸であってもよい。上記無機酸としては、塩酸などのハロゲン化水素酸、硫酸、及び亜硫酸等が挙げられ、上記有機酸としては、蟻酸、及び酢酸等が挙げられる。上記アミン塩は、アセチル基を有していてもよく、イミノ基を有していてもよく、エーテル基を有していてもよい。上記アミン塩は、分子内塩であってもよい。
【0146】
上記アミン塩の好ましい具体例としては、例えば、下記式(1)で表されるヘキサデシルジメチルアミン塩酸塩、下記式(2)で表されるテトラデシルジ(アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
【0149】
第4級窒素原子を有する有機化合物は、直鎖状の化合物であってもよく、環状の化合物であってもよく、低分子化合物であってもよく、低分子の繰返し構造単位を有する高分子化合物であってもよい。上記第4級窒素原子を有する有機化合物としては、テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。上記第4級窒素原子を有する有機化合物は、アルキル基を有していてもよく、アリール基を有していてもよく、イミノ基を有していてもよく、エーテル基を有していてもよい。
【0150】
上記第4級窒素原子を有する有機化合物の好ましい具体例としては、下記式(3)で表されるドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0152】
また、上記第4級窒素原子を有する有機化合物としては、上述のような比較的分子量の小さい化合物のほかに、第4級窒素を有する重合体等が挙げられる。上記第4級窒素を有する重合体としては、下記式(4)で表される繰り返し構造単位を有するポリカチオン等が挙げられる。
【0154】
上記式(4)中、R
1〜R
4はそれぞれ水素原子又はアルキル基を表し、Xはハロゲン原子又は酸基を表し、Yはアルキレン基又はアルキレン基にスルホニル基が結合した基を表す。上記式(4)中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることが好ましい。上記式(4)中、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子であることが好ましい。
【0155】
上記式(4)で表される構造単位を有するポリカチオンにおいて、該式(4)で表される構造単位の繰り返し数は、好ましくは5以上、好ましくは2000以下である。なお、上記式(4)で表される構造単位を有するポリカチオンでは、上記式(4)のR
1又はR
2が水素原子である構造単位を一部に有していてもよい。
【0156】
上記式(4)で表される構造単位を有するポリカチオンは、下記式(5)又は下記式(6)で表される構造単位を有するポリカチオンであることが好ましく、下記式(6)で表される構造を有するポリカチオンであることがより好ましい。なお、下記式(6)で表される構造を有するポリカチオンは、ポリアミンサルホンである。
【0159】
上記式(5)で表される構造単位を有するポリカチオンは、下記式(7)で表されるポリカチオンであってもよく、下記式(8)で表されるポリカチオンであってもよく、下記式(9)で表されるポリカチオンであってもよく、下記式(10)で表されるポリカチオンであってもよい。また、上記式(4)で表される構造単位を有するポリカチオンは、上記式(5)、上記式(6)、下記式(7)、下記式(8)、下記式(9)又は下記式(10)における2つのメチル基の一方又は双方がエチル基等のアルキル基であるポリカチオンであってもよい。
【0164】
また、上記第4級窒素を有する重合体は、上記式(4)〜(10)の第4級窒素を含む六員環に代えて、第4級窒素を含む基を有する重合体であってもよい。上記第4級窒素を有する重合体は、上記式(4)〜(10)の第4級窒素を含む六員環に代えて、第4級窒素を含む五員環、第4級窒素を含む四員環及び第4級窒素を含む三員環を有する重合体であってもよい。
【0165】
上記血液採取容器において、上記ヘパリン中和剤の含有量は、該ヘパリン中和剤の種類、採取される血液量、及び血液中のヘパリン濃度によって適宜調整される。上記血液採取容器において、上記ヘパリン中和剤の含有量は、採取される血液1mLあたり、好ましくは1×10
−7g以上、より好ましくは5×10
−6g以上、更に好ましくは1×10
−5g以上、特に好ましくは1.5×10
−5g以上である。上記血液採取容器において、上記ヘパリン中和剤の含有量は、採取される血液1mLあたり、好ましくは1×10
−1g以下、より好ましくは1×10
−2g以下、より一層好ましくは1×10
−4g以下、更に好ましくは5×10
−5g以下、特に好ましくは3.5×10
−5g以下である。上記ヘパリン中和剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。上記血液採取容器において、上記ヘパリン中和剤の含有量は、採取される血液1mLあたり、1×10
−5g以上5×10
−5g以下であることが好ましく、1.5×10
−5g以上3.5×10
−5g以下であることがより好ましい。この場合には、本発明の効果を特により一層効果的に発揮させることができる。
【0166】
(無機粉末:第3の領域R3)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に配置された無機粉末を備えることが好ましい。上記無機粉末は、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していることが好ましい。この場合に、上記無機粉末は、例えば、後述の水溶性バインダー等を介して、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していてもよい。上記無機粉末は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。第3の領域R3は、無機粉末が配置されている領域である。
【0167】
上記無機粉末としては、シリカ粉末、ガラス粉末、カオリン粉末、セライト粉末、及びベントナイト粉末等が挙げられる。上記無機粉末は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0168】
血液を良好に凝固させる観点から、上記無機粉末は、シリカ粉末であることが好ましく、多孔性のシリカ粉末であることがより好ましい。
【0169】
上記無機粉末の平均粒径は、好ましくは1mm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは10μm以下である。上記無機粉末の平均粒径が上記上限以下であると、血液を短時間で良好に凝固させることができる。
【0170】
上記無機粉末の平均粒径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法又は画像解析法による測定により求めることが好ましい。
【0171】
上記無機粉末のアマニ油吸油量は、好ましくは20ml/100g以上、好ましくは40ml/100g以下である。上記無機粉末のアマニ油吸油量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0172】
上記無機粉末のアマニ油吸油量は、JIS K−5101に準拠して測定される。
【0173】
上記無機粉末のBET比表面積は、好ましくは5000cm
2/g以上、好ましくは30000cm
2/g以下である。上記無機粉末のBET比表面積が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0174】
上記無機粉末のBET比表面積は、上記無機粉末の表面に吸着される気体の吸着量、その時の平衡圧、吸着ガスの飽和蒸気圧から単分子層として表面を覆いきる気体量を求め、これに吸着気体分子の平均断面積を乗じて算出することができる。上記吸着気体としては、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、及びメタンガス等を用いることができる。なお、BET比表面積では、アマニ油吸油量の測定では測定できない細孔を含めた表面積を測定することができる。
【0175】
上記血液採取容器において、上記無機粉末の含有量は、採取される血液1mLあたり、好ましくは1×10
−6g以上、より好ましくは5×10
−5g以上、好ましくは1×10
−2g以下、より好ましくは1×10
−3g以下である。上記無機粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液を短時間で良好に凝固させることができ、また、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。なお、上記無機粉末の含有量が上記上限を超えると、血清の検査結果に影響を及ぼすことがある。
【0176】
上記第1の領域において、上記セリンプロテアーゼは、層状に配置されていてもよく、点状等の島状に形成されていてもよい。上記第2の領域において、上記ヘパリン中和剤は、層状に配置されていてもよく、点状等の島状に形成されていてもよい。上記第3の領域において、上記無機粉末は、層状に配置されていてもよく、点状等の島状に形成されていてもよい。
【0177】
上記血液採取容器本体の上記一端と上記他端との距離をLとする。第1の領域R1は、上記一端から上記他端に向かって、0.05Lの位置と0.40Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが好ましく、0.06Lの位置と0.35Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することがより好ましく、0.07Lの位置と0.30Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが更に好ましく、0.07Lの位置と0.25Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが特に好ましい。第1の領域R1は、上記一端から上記他端に向かって、0.40Lの位置よりも上記一端側に存在することが好ましく、0.35Lの位置よりも上記一端側に存在することがより好ましく、0.30Lの位置よりも上記一端側に存在することが更に好ましく、0.25Lの位置よりも上記一端側に存在することが特に好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0178】
第2の領域R2は、上記一端から上記他端に向かって、0.40Lの位置と0.90Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが好ましく、0.45Lの位置と0.85Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することがより好ましく、0.50Lの位置と0.85Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが更に好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0179】
第3の領域R3は、上記一端から上記他端に向かって、0.01Lの位置と1.00Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが好ましく、0.02Lの位置と0.90Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することがより好ましく、0.03Lの位置と0.85Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが更に好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0180】
第1の領域R1と、第2の領域R2とが重なる重複領域R12は、存在しないか又は存在する。重複領域R12は、存在してもよく、存在しなくてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、重複領域R12は、存在しないことが好ましい。
【0181】
重複領域R12が存在する場合に、第2の領域R2の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離に対する、重複領域R12の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離の比(重複領域R12の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離/第2の領域R2の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離)を比(R12/R2)とする。上記比(R12/R2)は、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.01以下である。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0182】
重複領域R12の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離、及び、第2の領域R2の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離は、血液採取容器本体の上記一端と上記他端とを結ぶ方向の距離である。
【0183】
第1の領域R1と、第3の領域R3とが重なる重複領域R13は、存在しないか又は存在する。重複領域R13は、存在してもよく、存在しなくてもよい。
【0184】
重複領域R13が存在する場合に、第3の領域R3の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離に対する、重複領域R13の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離の比(重複領域R13の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離/第3の領域R3の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離)を比(R13/R3)とする。上記比(R13/R3)は、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.25以下である。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0185】
重複領域R13の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離、及び、第3の領域R3の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離は、血液採取容器本体の上記一端と上記他端とを結ぶ方向の距離である。
【0186】
第2の領域R2と、第3の領域R3とが重なる重複領域R23は、存在しないか又は存在する。重複領域R23は、存在してもよく、存在しなくてもよい。
【0187】
重複領域R23が存在する場合に、第3の領域R3の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離に対する、重複領域R23の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離の比(重複領域R23の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離/第3の領域R3の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離)を比(R23/R3)とする。上記比(R23/R3)は、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.1以下である。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0188】
重複領域R23の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離、及び、第3の領域R3の上記一端側の端部と上記他端側の端部との距離は、血液採取容器本体の上記一端と上記他端とを結ぶ方向の距離である。
【0189】
(消泡剤)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体内に配置された消泡剤を備えることが好ましい。上記消泡剤は、上記血液採取容器本体の内壁面上に付着していることが好ましい。上記消泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0190】
上記消泡剤としては、ポリオキシアルキレン及びポリオキシアルキレン誘導体等が挙げられる。上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、ポリオキシアルキレンエーテル等が挙げられる。
【0191】
上記ポリオキシアルキレンエーテルとしては、ポリオキシプロピレン、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)、及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)グリセリルエーテル等が挙げられる。
【0192】
上記消泡剤が配置された領域を第4の領域R4とし、上記血液採取容器本体の上記一端と上記他端との距離をLとする。
【0193】
第4の領域R4は、上記一端から上記他端に向かって、0.05Lの位置と1.00Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが好ましく、0.07Lの位置と0.90Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することがより好ましく、0.10Lの位置と0.85Lの位置との間の少なくとも一部の領域に存在することが更に好ましい。上記消泡剤は、上記血液採取容器の少なくとも底部に配置されていることが好ましい。この場合には、血液を採取したときに、該血液が消泡剤に良好に接触し、血液採取後の気泡の発生を抑えることができ、その結果、泡が噛み込んだ血餅の発生をより一層効果的に抑えることができる。
【0194】
なお、第4の領域R4と、上記第1の領域R1とが重なる重複領域は存在してもよく、存在しなくてもよい。第4の領域R4と、上記第2の領域R2とが重なる重複領域は存在してもよく、存在しなくてもよい。第4の領域R4と、上記第3の領域R3とが重なる重複領域は存在してもよく、存在しなくてもよい。
【0195】
上記血液採取容器において、上記消泡剤の含有量は、採取される血液1mLあたり、好ましくは2.0×10
−3mg以上、より好ましくは3.0×10
−3mg以上、好ましくは0.2mg以下、より好ましくは0.11mg以下である。上記消泡剤の含有量が上記下限以上であると、消泡効果をより一層高めることができる。上記消泡剤の含有量が上記上限以下であると、消泡剤に起因する不溶物の発生を抑えることができ、従って、臨床検査時に、検体採取用のノズルに該不溶物が詰まったりするなどの臨床検査時のトラブルの発生を抑えることができる。
【0196】
(血清分離用組成物)
上記血液採取容器は、上記血液採取容器本体の底部に収容された血清分離用組成物を備えることが好ましい。
【0197】
上記血清分離用組成物として、従来公知の血清分離用組成物を用いることができる。上記血清分離用組成物としては、例えば、WO2011/105151A1等に記載の血清分離用組成物が挙げられる。
【0198】
上記血清分離用組成物は、遠心分離時に血清層と血餅層との間に移動して隔壁を形成することで、血餅層と血清層との成分移行を防止する目的で用いられる。
【0199】
(血液採取容器のその他の詳細)
上記血液採取容器本体の材料は特に限定されない。上記血液採取容器本体の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂;ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラス等のガラスが挙げられる。上記血液採取容器本体の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0200】
上記血液採取容器は、栓体を備えることが好ましい。上記栓体として、従来公知の栓体を用いることができる。上記栓体は、血液採取容器本体の開口に、気密的かつ液密的に取付けることが可能な素材、形状からなる栓体であることが好ましい。上記栓体は、採血針が刺通され得るように構成されていることが好ましい。
【0201】
上記栓体としては、血液採取容器本体の開口に嵌合する形状を有する栓体、シート状のシール栓体等が挙げられる。
【0202】
また、上記栓体は、ゴム栓等の栓本体と、プラスチック等で構成されたキャップ部材とを備える栓体であってもよい。この場合には、血液採取後に、血液採取容器本体の開口から栓体を引き抜く際に、血液が人体と接触するリスクを抑えることができる。
【0203】
上記栓体(又は上記栓本体)の材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、ブチルゴム、及びハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。上記金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。密封性を高める観点からは、上記栓体(又は上記栓本体)の材料は、ブチルゴムであることが好ましい。上記栓体(又は上記栓本体)は、ブチルゴム栓であることが好ましい。
【0204】
上記血液採取容器本体は、採血管本体であることが好ましい。上記血液採取容器は、採血管であることが好ましい。
【0205】
上記血液採取容器の内圧は特に限定されない。上記血液採取容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空血液採取容器(真空採血管)であってもよい。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。
【0206】
細菌感染を防止する観点から、上記血液採取容器の内部はISO、及びJISに記載の基準に則って滅菌されていることが好ましい。
【0207】
上記血液採取容器は、セリンプロテアーゼを含む第1の組成物と、ヘパリン中和剤を含む第2の組成物と、必要に応じて、無機粉末を含む第3の組成物と、消泡剤を含む第4の組成物とを血液採取容器本体の内壁面上に配置することにより製造することができる。上記配置の方法として、塗布、散布、及び内壁へ付着等の公知の技術を採用することができる。
【0208】
上記第1の組成物が配置された領域が、血液採取容器における第1の領域R1に対応する。上記第2の組成物が配置された領域が、血液採取容器における第2の領域R2に対応する。上記第3の組成物が配置された領域が、血液採取容器における第3の領域R3に対応する。上記第4の組成物が配置された領域が、血液採取容器における第4の領域R4に対応する。上記第1の組成物と上記第2の組成物との双方が重複して配置された領域が、血液採取容器における重複領域R12に対応する。上記第1の組成物と上記第3の組成物との双方が重複して配置された領域が、血液採取容器における重複領域R13に対応する。上記第2の組成物と上記第3の組成物との双方が重複して配置された領域が、血液採取容器における重複領域R23に対応する。
【0209】
上記塗布の方法は、特に限定されない。上記塗布の方法としては、スプレー塗布及びディッピングコーディング法等が挙げられる。血液採取容器本体の内壁面に上記の各組成物を塗布した後、乾燥させることが好ましい。
【0210】
また、上記の各組成物を塗布及び乾燥させる前又は塗布及び乾燥させた後に、血清分離用組成物を収容し、上記の各組成物を塗布及び乾燥させた後に栓体を血液採取容器本体の上記開口に取り付けることにより、上記血液採取容器を製造することが好ましい。
【0211】
上記第1の組成物、上記第2の組成物、上記第3の組成物及び上記第4の組成物の塗布順序(配置順序)は特に限定されない。ヘパリンを含む血液と接触するヘパリン中和剤の量を多くする観点からは、上記第3の組成物及び上記第4の組成物の塗布及び乾燥後に上記第2の組成物を塗布及び乾燥することが好ましい。上記第1の組成物、上記第3の組成物及び上記第4の組成物の塗布及び乾燥後に上記第2の組成物を塗布及び乾燥することが好ましい。
【0212】
上記第1の組成物、上記第2の組成物、上記第3の組成物及び上記第4の組成物はそれぞれ、水、有機溶剤、水溶性バインダー、抗線溶剤、抗プラスミン剤及び血餅剥離成分等の他の成分を含んでいてもよい。この場合、上記第1の領域R1、上記第2の領域R2、上記第3の領域R3及び上記第4の領域R4はそれぞれ、上述した他の成分も含まれうる。
【0213】
上記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、ヘキサン等が挙げられる。上記有機溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0214】
上記水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系共重合体及びポリオキシアルキレンブロック共重合体等が挙げられる。上記水溶性バインダーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0215】
上記抗線溶剤及び上記抗プラスミン剤としては、アプロチニン、大豆トリプシンインヒビター、ε−アミノカプロン酸、p−アミノメチル安息香酸及びアミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。上記抗線溶剤及び上記抗プラスミン剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0216】
上記抗線溶剤及び上記抗プラスミン剤は、臨床上の推奨量で用いることが好ましい。アプロチニンは、例えば、採取される血液1mLあたり、約100KIU〜600KIU(単位)で用いられることが好ましい。大豆トリプシンインヒビターは、例えば、採取される血液1mlあたり、約500IU〜4000IU(単位)で用いられることが好ましい。ε−アミノカプロン酸、p−アミノメチル安息香酸及びアミノメチルシクロヘキサンカルボン酸はそれぞれ、例えば、採取される血液1mlあたり、約10
−8g〜10
−2gで用いられることが好ましい。
【0217】
上記血餅剥離成分としては、シリコーンオイル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン及びこれらの誘導体等が挙げられる。上記血餅剥離成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。血液採取容器の内壁面等への血液の付着を効果的に抑える観点から、上記血液採取容器本体には、上記血餅剥離成分として、シリコーンオイル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン、又はこれらの誘導体が配置されていることが好ましい。上記シリコーンオイルとしては、例えば水溶性タイプの変性シリコーンオイルが挙げられ、好ましく用いられる。上記ポリオキシアルキレン及びその誘導体としては、例えば、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレングリセリルエーテル等が挙げられ、好ましく用いられる。なお、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、消泡剤にも相当する成分である。
【0218】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0220】
図1に示す形状を有する血液採取容器本体
内径10.8mm×長さ100mm(長さ:一端(開口端)と他端との距離)
材料:ポリエチレンテレフタレート
【0222】
図1に示す形状を有する栓体
ゴム栓(材料:ブチルゴム)
【0224】
血清分離用組成物(チクソトロピー性分離剤、積水化学工業社製)
【0225】
以下の第1の組成物、第2の組成物、第3の組成物及び第4の組成物の材料を用意した。
【0226】
(セリンプロテアーゼ)
トロンビン(伊藤製薬社製「トロンビン伊藤」)
【0227】
(ヘパリン中和剤)
ポリアミンサルホン(5)(上記式(5)で表される構造を有するポリカチオン)(日東紡績社製「PAS−H−5L」)
ポリアミンサルホン(6)(上記式(6)で表される構造を有するポリカチオン)(日東紡績社製「PAS−A−5」)
ポリアミンサルホン(7)(上記式(7)で表される構造を有するポリカチオン)(日東紡績社製「PAS−J−81」)
ポリアミンサルホン(8)(上記式(8)で表される構造を有するポリカチオン)(日東紡績社製「PAS−2351」)
【0228】
(無機粉末)
シリカ粉末(UNIMIN SPECIALTY MINERAL社製、平均粒径5μm)
【0229】
(消泡剤)
ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(アデカ社製「アデカポリエーテルG−4000」)
【0230】
(水溶性バインダー)
ポリビニルピロリドン(和光純薬社製「PVP−K30」)
【0231】
以下のようにして、第1の組成物を作製した。
【0232】
17万5千単位のトロンビンと、0.1gのポリビニルピロリドンと、0.6gのβ−アラニンとを、水10gに完全に溶解して、第1の組成物を得た。
【0233】
以下のようにして、第2の組成物A〜Eを作製した。
【0234】
第2の組成物Aの作製:
0.36gのヘパリン中和剤(ポリアミンサルホン(6))と、0.8gのポリビニルピロリドンとを、水100gに完全に溶解して、第2の組成物Aを得た。
【0235】
第2の組成物Bの作製:
0.4gのヘパリン中和剤(ポリアミンサルホン(6))と、0.8gのポリビニルピロリドンとを、水50gに完全に溶解して、第2の組成物Bを得た。
【0236】
第2の組成物Cの作製:
0.36gのヘパリン中和剤(ポリアミンサルホン(5))と、0.8gのポリビニルピロリドンとを、水100gに完全に溶解して、第2の組成物Cを得た。
【0237】
第2の組成物Dの作製:
0.36gのヘパリン中和剤(ポリアミンサルホン(7))と、0.8gのポリビニルピロリドンとを、水100gに完全に溶解して、第2の組成物Dを得た。
【0238】
第2の組成物Eの作製:
0.36gのヘパリン中和剤(ポリアミンサルホン(8))と、0.8gのポリビニルピロリドンとを、水100gに完全に溶解して、第2の組成物Eを得た。
【0239】
以下のようにして、第3の組成物を作製した。
【0240】
2.5gのシリカ粉末と、1.5gのポリビニルピロリドンとを、水100gに混合して、第3の組成物を得た。
【0241】
以下のようにして、第4の組成物を作製した。
【0242】
0.3gのポリオキシプロピレングリセリルエーテルを水100gに混合して、第4の組成物を得た。
【0243】
以下のようにして、組成物Xを作製した。
【0244】
24万単位のトロンビンと、0.36gのヘパリン中和剤(ポリアミンサルホン(6))と、0.8gのポリビニルピロリドンと、1.2gのβアラニンとを、水100gに完全に溶解して、組成物Xを得た。
【0245】
(実施例1)
血液採取容器本体の底部に血清分離用組成物0.9gを収容した。次いで、血液採取容器本体の内壁面に、表1に示す第2の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第1の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、血液採取容器本体を13kPaに減圧し、栓体により密封して血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0246】
(実施例2)
血液採取容器本体の底部に血清分離用組成物0.9gを収容した。次いで、血液採取容器本体の内壁面に、第4の組成物を表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、表1に示す第2の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第1の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。これら以外は実施例1と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0247】
(実施例3)
第2の組成物の種類を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0248】
(実施例4)
血液採取容器本体の内壁面に、第3の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第4の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、表1に示す第2の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第1の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。これら以外は実施例1と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0249】
(実施例5〜8)
第2の組成物の種類を表1に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0250】
(実施例9)
血液採取容器本体の内壁面に、第3の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第4の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第1の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、表1に示す第2の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、第1の組成物が拡散しない内に、直ちに、乾燥させた。これら以外は実施例1と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0251】
(実施例10〜13)
第2の組成物の種類を表1に示すように変更したこと、組成物の塗布する領域を表1のように変更したこと以外は、実施例9と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0252】
(実施例14)
血液採取容器本体の内壁面に、第3の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、第4の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。次いで、表1に示す第2の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、第2の組成物が拡散しない内に、乾燥させた。次いで、第1の組成物を、表1に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。これら以外は実施例1と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0253】
(比較例1)
組成物の塗布する領域を表1のように変更したこと以外は、実施例4と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0254】
(比較例2)
血液採取容器本体の内壁面に、組成物Xを、表3に示す領域にスプレー塗布した後、乾燥させた。これら以外は実施例1と同様にして、血液採取容器(真空採血管)を作製した。
【0255】
(評価)
(1)泡が噛み込んだ血餅の発生頻度及び血清におけるフィブリンの生成頻度
ヘパリンの濃度が1単位/mLとなるように調製された血液を用意した。この血液5mLを、10mLシリンジ(針なし、JMS社製「JS−S10C」)に採取し、Transfer Device(BD社製「REF364880」)を用いて、得られた血液採取容器(真空採血管)に採取し、5回転倒混和した。その後、血液採取容器を20分間静置した。次いで、血液採取容器を1500Gで10分間遠心分離した。遠心分離後の血液採取容器を肉眼で観察し、泡が噛み込んだ血餅の有無及び血清におけるフィブリンの有無を、以下の基準で判定した。なお、各評価は、6名の血液を採取して行った。
【0256】
(1−1)泡が噛み込んだ血餅の発生頻度及びそのサイズ
血液採取容器6本を観察し、泡が噛み込んだ血餅が発生しているか否かを観察した。泡が噛み込んだ血餅が発生している場合に、泡が噛みこんだ血餅のサイズを以下のレベル1〜3に分類し、その本数を求めた。なお、泡が噛みこんだ血餅が発生していない場合は、レベル0と分類した。
【0257】
レベル0:泡が噛みこんだ血餅が発生していない
レベル1:泡が噛みこんだ血餅の最大長さが1cm以下
レベル2:泡が噛みこんだ血餅の最大長さが1cmを超え2cm以下
レベル3:泡が噛みこんだ血餅の最大長さが2cmを超える
【0258】
(1−2)血清におけるフィブリンの生成頻度及びそのサイズ
血液採取容器6本を観察し、血清においてフィブリンの生成が観察されるか否かを観察した。血清においてフィブリンの生成が観察される場合に、フィブリンのサイズを以下のレベル1〜3に分類し、その本数を求めた。なお、血清においてフィブリンの生成が観察されない場合は、レベル0と分類した。
【0259】
レベル0:血清においてフィブリンの生成が観察されない
レベル1:血清において生成したフィブリンの最大径が1cm以下
レベル2:血清において生成したフィブリンの最大径が1cmを超え2cm以下
レベル3:血清において生成したフィブリンの最大径が2cmを超える
【0260】
構成及び結果を表1〜4に示す。なお、表1には、第1の領域、第2の領域及び第3の領域の位置関係が類似する図を示した。また、表2中、距離とは、血液採取容器本体の上記一端と上記他端とを結ぶ方向の距離である。
ヘパリンを含む血液を凝固させたときに、泡が噛み込んだ血餅の発生を抑えることができ、かつ、ヘパリンを含む血液を血清と血餅とに分離したときに、分離後の血清におけるフィブリンの生成を抑えることができる血液採取容器を提供する。
本発明に係る血液採取容器は、一端に開口を有し、他端に閉じられている底部を有する血液採取容器本体と、前記血液採取容器本体内に配置されたセリンプロテアーゼと、前記血液採取容器本体内に配置されたヘパリン中和剤とを備え、前記セリンプロテアーゼが配置された領域を第1の領域とし、前記ヘパリン中和剤が配置された領域を第2の領域としたときに、前記第2の領域が、前記第1の領域の前記他端側の端部よりも前記他端側に存在する領域を有する。