特許第6863657号(P6863657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863657
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】宝飾用金合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 5/02 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   C22C5/02
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-205036(P2016-205036)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-66038(P2018-66038A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】515174571
【氏名又は名称】成瀬 重靖
(73)【特許権者】
【識別番号】516236067
【氏名又は名称】マオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133101
【弁理士】
【氏名又は名称】島崎 俊英
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 重靖
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−184033(JP,A)
【文献】 特開2000−080423(JP,A)
【文献】 特開平11−323462(JP,A)
【文献】 特開2002−053917(JP,A)
【文献】 特開2016−074937(JP,A)
【文献】 特開平11−152531(JP,A)
【文献】 特開2011−225902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Au、Ag、Cu、Zn及びPtからなる宝飾用合金であって、
質量%で、
Au:60%以上、
Ag:1.5〜20.0%、
Cu:1.5〜20.0%、
Zn:0.5〜5.0%、
Pt:1.0〜10.0%
とした宝飾用金合金。
【請求項2】
Au、Ag、Cu、Zn、Pt及びPdからなる宝飾用合金であって、
質量%で、
Au:60%以上、
Ag:1.5〜20.0%、
Cu:1.5〜20.0%、
Zn:0.5〜5.0%、
Pt:1.0〜10.0%、
Pd:1.0〜5.0%
とした宝飾用金合金。
【請求項3】
Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In及びSnからなる宝飾用合金であ
って、
質量%で、
Au:60%以上、
Ag:1.5〜20.0%、
Cu:1.5〜20.0%、
Pt:1.0〜10.0%、
Pd:1.0〜5.0%、
In:0.5〜3.0%、
Sn:0.5〜3.0%
とした宝飾用金合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指輪、ネックレス、ペンダント、イヤリング等の宝飾品に使用される金合金に関する
【背景技術】
【0002】
宝飾用金合金については、JISやISO規格で規定された各種合金があり、Auに対する添加金属はAg、Cuが基本となり、求められる硬さや色調に応じて他の添加金属が用いられている。
【0003】
歯科用合金ではPt、Zn、Ir、Ru、Rhおよび/またはRe等を添加することで、金色の色調を呈しながら、機械的性質の優れた金合金が使用されている(例えば特許文献2)。
【0004】
しかし、歯科用合金は高融点であるためアーク溶解によって鋳造されており、5〜10グラムと溶解量が少なく、構成金属間の融点の差による鋳造不良を招く恐れが高いため、添加金属の添加量も微量とならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−152531公報
【特許文献2】特開2011−225902公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
宝飾用金合金は、一般的にAu−Ag−Cuの三元合金が基準となっているが、硬さはHv70〜120程度であり、使用時に変形しやすく、傷が付きやすいなどの問題がある。
【0007】
一般的には合金の硬さを高めるためにPt、Ir等が添加されるが、添加量が多いと金色の色調が失われ、白色に近い色調を持った合金となる。従って、合金の硬さと金の色調を両立させることは難しい。
【0008】
また、宝飾用合金として必要な溶解量は200〜300グラムと多量であるため、一般的な高周波溶解装置で溶解鋳造ができる必要がある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決する為の手段】
【0010】
そこで本研究はAu60wt%以上において、硬さ、色調、耐食性、耐変色性が良く、変形しにくくしかも傷が付きにくい合金を作製するために、Ag1.5wt%〜20.0wt%、Cu1.5wt%〜20.0wt%、Zn0.5wt%〜5.0wt%、Pt1.0wt%〜10.0wt%とした宝飾用金合金とする。
【0011】
さらに、Au60wt%以上において、Ag1.5wt%〜20.0wt%、Cu1.5wt%〜20.0wt%、Zn0.5wt%〜5.0wt%、Pt1.0wt%〜10.0wt%、Pd1.0wt%〜5.0wt%とした宝飾用金合金とする。
【0012】
さらに、Au60wt%以上において、Ag1.5wt%〜20.0wt%、Cu1.5wt%〜20.0wt%、Pt1.0wt%〜10.0wt%、Pd1.0wt%〜5.0wt%、In0.5wt%〜3.0wt%、Sn0.5wt%〜3.0wt%とした宝飾用金合金とする。
【0013】
ここで、Ptを添加する目的は、硬さを高めるためであり、同時に金と同じく展延性に寄与するためである。
【0014】
その添加量はPt1wt%未満では顕著な添加の効果がなく、Pt10wt%を超えると金色は失われて白色に近い合金になるため、上限を10wt%とした。
【0015】
さらに、Ptは化学的に極めて安定であり、気体中でも化学反応を起こさない利点を持つ。Au−Ptは、全域にわたり固溶する全率固溶型合金となるが、Auに対して10wt%の領域でPtAu3の金属間化合物を生成し、また、α1+α2の固溶域も硬さに影響を及ぼすことになる。
【0016】
また、Pdを添加する目的は、微量の添加によって銀の耐硫化性を高め、金、銀に対しては全率固溶を示し、銅とはPdCu3、PdCuの金属間化合物を生成することによって硬さを高めるからである。また、銅と合金化することで時効硬化を示す。
【0017】
その添加量はPd1wt%未満では顕著な添加の効果がなく、Pd5wt%を超えると金色が失われて白色に近い合金になるため、上限を5wt%とした。
【0018】
また、Znを添加する目的は、脱酸材として効果的な金属であり、流動性を向上させ、融点を下げるからである。
【0019】
その添加量は0.5wt%未満では添加の効果がなく、5.0wt%を超えると溶解時のフューム化が問題になるため、添加上限を5.0wt%とした。
【0020】
また、Inを添加する目的は、Znと同様に脱酸効果と流動性の向上、融点の降下にあるが、In(沸点2072℃)はZn(沸点907℃)のように低温域ではフューム化せず、高温域での鋳造に有効であるためである。
【0021】
その添加量は0.5wt%未満では添加の効果がなく、一方、添加量の上限は、Auを60wt%以上に確保し、そこにPt等の他の金属を添加させるために添加量が制限されるためである。
【0022】
また、Snを添加する目的は、Zn、Inと同様に、脱酸効果と流動性の向上、融点の降下にある。
【0023】
その添加量は0.5wt%未満では添加の効果がなく、3.0wt%を超えるとAuとの間で多くの金属間化合物を生成して合金が硬く脆くなるため、上限を3wt%とした。
【0024】
また、色調の判定は目視にて行った。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例を表1に示す
【0026】
【表1】
表1の結果より、Pt、Pd、Zn、In、Sn等の添加により、硬さの向上を確認することができた。
【0027】
また、同様にこれらZn、In、Sn等の添加は、融点を低下させ、鋳造性の向上に寄与することも確認できた。