特許第6863663号(P6863663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863663
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20210412BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20210412BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/087 331
   G03G9/093
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-146832(P2017-146832)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-28226(P2019-28226A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100149250
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 寛人
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴史
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−190915(JP,A)
【文献】 特開2007−33702(JP,A)
【文献】 特開2012−133332(JP,A)
【文献】 特開平6−3857(JP,A)
【文献】 特開2017−107138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1〜工程3を含み、下記Bに対する下記Aの差[A−B]が13モル%以上である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
工程1:アルコール成分と、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるコア用樹脂(a)を含む分散液から凝集粒子(I)を得る工程
工程2:工程1で得られた凝集粒子(I)に、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるシェル用樹脂(b)を添加し、凝集粒子(II)の分散液を得る工程
工程3:工程2で得られた凝集粒子(II)を融着させてコアシェル型トナー粒子を得る工程
A:A(モル%)は、コア用樹脂(a)のアルコール成分を100モル%としたときの、芳香族モノカルボン酸化合物の量とする。
B:B(モル%)は、シェル用樹脂(b)のアルコール成分を100モル%としたときの、芳香族モノカルボン酸化合物の量とする。
【請求項2】
前記差[A−B]が13モル%以上25%以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記Aが、13モル%以上30モル%以下である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記コア用樹脂(a)における前記芳香族モノカルボン酸が、安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、及びナフトエ酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記Bが、0モル%以上10モル%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
前記シェル用樹脂(b)におけるカルボン酸成分が、芳香族モノカルボン酸を含み、前記芳香族モノカルボン酸が、安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、及びナフトエ酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した静電荷像現像用トナーの開発が要求されている。それに対して、近年、トナーの構造を、コア部と当該コア部を被覆するシェル部とを有するコアシェル構造にすることが提案されている。
【0003】
特許文献1では、軟化点70〜130℃の自己水分散性ポリエステル系樹脂(p1)を含有した樹脂微粒子(P1)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(I)と軟化点120〜190℃の自己水分散性ポリエステル系樹脂(p2)を含有した樹脂微粒子(P2)を水性媒体中に分散してなる水性分散体(II)とを混合し、樹脂微粒子(P1)と樹脂微粒子(P2)とを会合させて樹脂微粒子(P1)をコア粒子として、前記コア粒子の表面上に樹脂微粒子(P2)が会合してなるシェル層を形成させる電子写真用トナーの製造方法であって、前記ポリエステル系樹脂(p2)の軟化点が前記ポリエステル系樹脂(p1)の軟化点より高く、且つ、前記樹脂微粒子(P1)及び/又は前記樹脂微粒子(P2)の一部乃至全部が着色された樹脂微粒子であることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法が記載されている。当該製造方法によれば、得られる画像が良好で、耐ホットオフセット性に優れる電子写真用トナーが得られると記載されている。
【0004】
特許文献2では、ポリエステル樹脂と着色剤とを含むコア領域と、前記コア領域の外周を被覆し、前記ポリエステル樹脂とは異なる組成の樹脂を含むシェル領域とを有し、前記シェル領域を構成する樹脂が、前記シェル領域を構成する樹脂1gをトルエン10gに溶解させた樹脂溶液を、0.1mol/lのNaOH水溶液100gに滴下し、超音波分散機(19.5KHz、150W)で20分間処理を施して得られる樹脂乳化液に対して、加熱減圧処理(60℃、0.08mmHg)を行い、トルエンを除去することにより得られる樹脂懸濁液を、レーザー回折・散乱法を用いて測定する前記樹脂懸濁液中に分散した樹脂微粒子の平均粒径が、1〜10μmであることを特徴とするトナーが記載されている。当該トナーによれば、低温定着性及び保存性が優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−326001号公報
【特許文献2】特開2008−233432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載のトナーでは、コア部に用いられる樹脂と、シェル部に用いられる樹脂の組み合わせによっては、トナーの保管時に積載されるなどして加圧条件に晒された場合に凝集が発生するといった課題があり、加圧耐熱保存性の観点から必ずしも充分な特性は得られなかった。更に、仮に加圧耐熱保存性について優れた特性が得られたとしても、耐ホットオフセット性の観点から、及び、印刷物の耐折曲げ性の観点から、更なる向上が求められていた。
本発明は、加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記工程1〜工程3を含み、下記Bに対する下記Aの差[A−B]が13モル%以上である、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
工程1:アルコール成分と、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるコア用樹脂(a)を含む分散液から凝集粒子(I)を得る工程
工程2:工程1で得られた凝集粒子(I)に、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるシェル用樹脂(b)を添加し、凝集粒子(II)の分散液を得る工程
工程3:工程2で得られた凝集粒子(II)を融着させてコアシェル型トナー粒子を得る工程
A:A(モル%)は、コア用樹脂(a)のアルコール成分を100モル%としたときの、芳香族モノカルボン酸化合物の量とする。
B:B(モル%)は、シェル用樹脂(b)のアルコール成分を100モル%としたときの、芳香族モノカルボン酸化合物の量とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法(以下、単に「トナーの製造方法」ともいう)は、下記工程1〜工程3を含む。
工程1:アルコール成分と、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるコア用樹脂(a)を含む分散液から凝集粒子(I)を得る工程
工程2:工程1で得られた凝集粒子(I)に、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるシェル用樹脂(b)を添加し、凝集粒子(II)の分散液を得る工程
工程3:工程2で得られた凝集粒子(II)を融着させてコアシェル型トナー粒子を得る工程
そして、当該トナーの製造方法は、下記Bに対する下記Aの差[A−B]が13モル%以上である。
A:A(モル%)は、コア用樹脂(a)のアルコール成分を100モル%としたときの、芳香族モノカルボン酸化合物の量とする。
B:B(モル%)は、シェル用樹脂(b)のアルコール成分を100モル%としたときの、芳香族モノカルボン酸化合物の量とする。
このような製造方法により、加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性に優れる静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)が得られる。
【0010】
本発明の製造方法が、加圧耐熱保存性、ホットオフセット性、及び耐折り曲げ性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明のトナーは、工程1〜工程3を経て得られるコアシェル型トナー粒子を含み、コア部が、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるコア用樹脂(a)を含有し、差[A−B]の値、つまり、コア用樹脂(a)の芳香族モノカルボン酸化合物の量Aと、シェル用樹脂(b)の芳香族モノカルボン酸化合物の量Bと差が、13モル%以上と大きい。
これにより、コア用樹脂(a)とシェル用樹脂(b)との相溶性が適度に低下して、コア部とシェル部とが良好に接着すると共に過剰に相溶することが抑制されて、良好なコアシェル構造が形成され、コア用樹脂(a)及びシェル用樹脂(b)が後述する各々の機能を十分に発現できるものと考えられる。
コア用樹脂(a)は多量に芳香族モノカルボン酸化合物を配合することにより、当該コア用樹脂(a)の分子間相互作用が強固になると考えられる。その結果、加圧による影響が少なくなり、加圧耐熱保存性が良好であると考えられる。また、芳香族モノカルボン酸化合物の含有量差[A−B]が13モル%以上と大きく、シェル用樹脂(b)に芳香族モノカルボン酸化合物が少なく配合されているため、シェル用樹脂(b)の方がより高分子量化しやすくなると考えられる。その結果、耐ホットオフセット性が良好であると考えられる。更に、驚くべきことに、コア部の非晶質樹脂(a)は多量に芳香族モノカルボン酸化合物を配合することにより、低分子量成分の相互作用も強固になり、衝撃に強くなるため、トナーの耐折曲げ性が良好になると考えられる。
【0011】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶質であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶質樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満、好ましくは1.5以上、又は0.5以下、より好ましくは1.6以上、又は0.5以下の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性指数は、実施例に記載の樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度の測定方法により得られた値から算出することができる。
「カルボン酸化合物」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。
カルボン酸化合物がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸化合物の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
「結着樹脂」とは、コア用樹脂(a)、及びシェル用樹脂(b)を包含するトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
【0012】
<差[A−B]>
本発明の製造方法における差[A−B]は、加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性に優れるトナーを得る観点から、13モル%以上であり、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上である。差[A−B]は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは50モル%以下、更に好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、更に好ましくは27モル%以下、更に好ましくは23モル%以下である。
【0013】
A(モル%)は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは13モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは18モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、更に好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、更に好ましくは27モル%以下、更に好ましくは23モル%以下である。
【0014】
B(モル%)は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、更に好ましくは8モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であり、そして、0モル%以上であり、そして、更に好ましくは0モル%である。
【0015】
<工程1>
工程1では、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるコア用樹脂(a)を含む分散液(以下、「混合分散液」ともいう)から凝集粒子(I)を得る。
工程1では、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の添加剤を更に凝集させてもよい。
【0016】
分散液としては、好ましくは、水系分散液である。
水系分散液に用いる水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましい。
水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水が挙げられる。
水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
水とともに水系媒体を構成し得る水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。これらの中でも、有機溶媒のトナーへの混入を防止する観点から、ポリエステル樹脂を溶解しない炭素数1以上5以下のアルキルアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールがより好ましい。
【0017】
〔コア用樹脂(a)〕
コア用樹脂(a)は、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル系樹脂である。コア用樹脂(a)は、好ましくは非晶質ポリエステル系樹脂である。
【0018】
アルコール成分としては、例えば、ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、炭素数2以上12以下の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、及び脂環式ジオールが挙げられる。
脂肪族ジオールは、好ましくは、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールが好ましく、1,2−プロパンジオールがより好ましい。
第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下である。
【0019】
芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、好ましくは下記一般式(I)で表される化合物である。
【0020】
【化1】
【0021】
一般式(I)において、OR、及びROは、いずれもオキシアルキレン基であり、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、更に好ましくはオキシプロピレン基である。
x及びyは、アルキレンオキシドの付加モル数に相当する。更に、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は2以上が好ましい。また、xとyの和の平均値は、同様の観点から、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
また、x個のORとy個のROは、各々同一であっても異なっていてもよいが、トナーの記録媒体への定着性を向上させる観点から、同一であることが好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0022】
脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
以上のアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
以上の中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、又は、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールが好ましい。
【0023】
カルボン酸成分には、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物が含まれる。
芳香族モノカルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸が挙げられる。これらの中でも、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、又はナフトエ酸が好ましく、安息香酸、又はターシャリーブチル安息香酸がより好ましく、安息香酸が更に好ましい。
芳香族モノカルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは13モル%以上、更に好ましくは15モル%以上、更に好ましくは18モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、更に好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
【0024】
多価カルボン酸化合物としては、例えば、ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは77モル%以下、更に好ましくは74モル%以下である。
【0025】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、アゼライン酸、コハク酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸又はその無水物(以下「アルケニルコハク酸」ともいう)が挙げられる。アルケニルコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸化合物としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0026】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、又はこれらの無水物等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、トナーの低温定着性、及び高温高湿下での帯電安定性をより向上させる観点、並びに、トナーの耐久性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上であり、そして、トナーの耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは13モル%以下である。
カルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
多価カルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは55モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは87モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは82モル%以下である。
【0028】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0029】
(コア用樹脂(a)の製造方法)
コア用樹脂(a)は、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合することで得られる。
重縮合では、必要に応じて、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
重縮合の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0030】
(コア用樹脂(a)の物性)
コア用樹脂(a)の酸価は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、トナーの低温定着性及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
【0031】
コア用樹脂(a)の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは165℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
【0032】
コア用樹脂(a)のガラス転移温度は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0033】
コア用樹脂(a)の数平均分子量は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは2,000以上であり、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下である。
【0034】
コア用樹脂(a)の重量平均分子量は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは9,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
【0035】
コア用樹脂(a)の酸価、軟化点、ガラス転移温度、及び平均分子量は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
なお、コア用樹脂(a)2種以上を組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0036】
コア用樹脂(a)の添加量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、結着樹脂の総量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0037】
〔コア用樹脂(a)を含む樹脂粒子(X)の分散液〕
工程1において、コア用樹脂(a)は、コア用樹脂(a)を含む樹脂粒子(X)として凝集させ、凝集粒子(I)を得ることが好ましい。樹脂粒子(X)は、樹脂粒子(X)の分散液として得ることが好ましく、樹脂粒子(X)の水系分散液として得ることがより好ましい。
【0038】
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、転相乳化法により分散することが好ましい。転相乳化法としては、例えば、樹脂の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂に水系媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。
【0039】
転相乳化に用いる有機溶媒としては、樹脂を溶解すれば特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトンが挙げられる。
有機溶媒溶液には、塩基性物質等の中和剤を添加することが好ましい。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
樹脂の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。なお、中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義である。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子(X)を構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子(X)を構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
【0040】
有機溶媒溶液又は溶融した樹脂を撹拌しながら、水系媒体を徐々に添加して転相させる。
水系媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、樹脂粒子(X)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子(X)を構成する樹脂のガラス転移温度以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。
【0041】
分散液中の樹脂粒子(X)の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは800nm以下、より好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下である。
体積中位粒径(D50)は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0042】
〔離型剤〕
離型剤としては、例えば、ワックスが挙げられる。
ワックスとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン;シリコーンワックス;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物系又は石油系ワックス;エステルワックス等の合成ワックスが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、トナーの低温定着性を向上させる観点から、カルナウバワックス、又はパラフィンワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0043】
離型剤の融点は、例えば、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
離型剤の融点の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0044】
離型剤の量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0045】
離型剤は、離型剤粒子として凝集させることが好ましい。
離型剤粒子としては、離型剤粒子の分散液として得ることが好ましく、離型剤粒子の水系分散液として得ることがより好ましい。
離型剤粒子の分散液は、離型剤と水系媒体とを、離型剤の融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。
分散機としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、高圧分散機等が挙げられる。
超音波分散機としては、例えば超音波ホモジナイザーが挙げられる。
超音波分散機の市販品としては、例えば、「US−150T」、「US−300T」、「US−600T」(株式会社日本精機製作所製)、「SONIFIER(登録商標)4020−400」、「SONIFIER(登録商標)4020−800」(ブランソン社製)等が挙げられる。
高圧分散機の市販品としては、例えば、高圧湿式微粒化装置「ナノマイザー(登録商標)NM2−L200−D08」(吉田機械興業株式会社製)が挙げられる。
【0046】
離型剤の分散には、界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸塩、アルケニルコハク酸塩等アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;非イオン性界面活性剤等が挙げられ、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、及び離型剤粒子と樹脂粒子の凝集性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはアルケニルコハク酸ジカリウムである。
【0047】
離型剤水系分散液中の界面活性剤の含有量は、離型剤粒子の分散安定性を向上させる観点、及びトナー作製時の離型剤粒子の凝集性を向上させ、遊離を防止する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0048】
離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は、均一な凝集粒子を得る観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは300nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは600nm以下である。
【0049】
〔着色剤〕
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、無機系複合酸化物、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、及びマラカイトグリーンオクサレート等の種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリン ブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系等の各種染料が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0050】
着色剤は、着色剤粒子として凝集させることが好ましい。
着色剤粒子としては、着色剤粒子の分散液として得ることが好ましく、着色剤粒子の水系分散液として得ることがより好ましい。
着色剤粒子の分散液は、着色剤と水系媒体とを、分散機を用いて分散して得ることが好ましい。
分散機の例は、前述の離型剤粒子の分散液で例示したものと同様である。
【0051】
着色剤の分散には、界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でもアニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸塩、アルケニルコハク酸塩が挙げられる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0052】
界面活性剤の量は、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、着色剤100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。
【0053】
着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
【0054】
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤としては、例えば、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、又はサリチル酸金属錯体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
荷電制御剤の量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。
【0055】
荷電制御剤は、荷電制御剤粒子として凝集させることが好ましい。
荷電制御剤粒子としては、荷電制御剤粒子の分散液として得ることが好ましく、荷電制御剤粒子の水系分散液として得ることがより好ましい。
荷電制御剤分散液は、荷電制御剤と水系媒体とを、界面活性剤等の存在下、分散機を用いて分散して得ることが好ましい。分散機としては、サンドグラインダー、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。界面活性剤の種類及び含有量は、上記の着色剤の分散液の好適例と同様である。
【0056】
荷電制御剤粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
【0057】
〔工程1の各種条件〕
混合時の温度は、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子(I)を得る観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
また、凝集を制御して所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子を得る観点から、凝集剤の水溶液は、pHを7.0以上9.0以下に調整して使用することが好ましい。
【0058】
更に、凝集を促進させ、所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子を得る観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。その際の凝集する温度としては、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
【0059】
(界面活性剤)
混合分散液を調製する際、樹脂粒子(X)及び必要に応じて添加される離型剤粒子等の任意成分の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は、樹脂粒子(X)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0060】
上述の樹脂粒子(X)の分散液、及び任意成分を混合は、常法により行われる。当該混合により得られた混合分散液に、凝集を効率的に行う観点から、凝集剤を添加することが好ましい。
【0061】
(凝集剤)
凝集剤としては、例えば、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が挙げられる。これらの中でも、塩化カルシウムが好ましい。
【0062】
凝集剤を用いて、例えば、0℃以上40℃以下の樹脂粒子(X)を含む混合分散液に、結着樹脂の総量100質量部に対し5質量部以上50質量部以下の凝集剤を添加し、樹脂粒子(X)を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(I)を得る。更に、凝集を促進させる観点から、凝集剤を添加した後に混合分散液の温度を上げることが好ましい。
【0063】
凝集粒子(I)の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。凝集粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0064】
<工程2>
工程2では、工程1で得られた凝集粒子(I)に、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物及び芳香族モノカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるシェル用樹脂(b)を添加し、凝集粒子(II)の分散液を得る。
【0065】
〔シェル用樹脂(b)〕
シェル用樹脂(b)は、例えば、アルコール成分と、多価カルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂である。シェル用樹脂(b)は、好ましくは非晶質ポリエステル系樹脂である。
アルコール成分、多価カルボン酸化合物の例示としては、コア用樹脂(a)と同様のものが好適例として挙げられる。シェル用樹脂(b)における好適態様として、コア用樹脂(a)と共通する部分については説明を省略する。
以下、シェル用樹脂(b)として、好適な態様について説明する。
シェル用樹脂(b)のカルボン酸成分は、芳香族モノカルボン酸化合物を含有していてもよい。
芳香族モノカルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、更に好ましくは8モル%以下、更に好ましくは5モル%以下あり、そして、0モル%以上であり、そして、更に好ましくは0モル%である。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、フマル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは45モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。
多価カルボン酸化合物の量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下である。
【0066】
(シェル用樹脂(b)の物性)
シェル用樹脂(b)の軟化点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは165℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
【0067】
シェル用樹脂(b)のガラス転移温度は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0068】
シェル用樹脂(b)の数平均分子量は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは2,500以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下である。
【0069】
シェル用樹脂(b)の重量平均分子量は、トナーの加圧耐熱保存性及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは50,000以下である。
【0070】
シェル用樹脂(b)の添加量は、トナーの加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性をより向上させる観点から、コア用樹脂(a)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上であり、そして、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0071】
工程2において、シェル用樹脂(b)は、シェル用樹脂(b)を含む樹脂粒子(Y)として凝集させ、凝集粒子(II)を得ることが好ましい。樹脂粒子(Y)は、樹脂粒子(Y)の分散液として得ることが好ましく、樹脂粒子(Y)の水系分散液として得ることがより好ましい。
樹脂粒子(Y)の分散液は、前述の樹脂粒子(X)の分散液の製造方法に準じて製造することができる。
【0072】
〔工程2の各種条件〕
シェル用樹脂(b)を添加する時の温度は、トナーの低温定着性及び耐久性を高める観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは47℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
【0073】
樹脂粒子(Y)の添加量は、トナーの低温定着性及び耐久性を高める観点から、樹脂粒子(X)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上であり、そして、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0074】
工程2においては、凝集粒子が、トナーとして適度な粒径に成長したところで凝集を停止させてもよい。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0075】
(凝集停止剤)
凝集停止剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。凝集停止剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0076】
凝集粒子(II)の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。凝集粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0077】
<工程3>
工程3では、工程2で得られた凝集粒子(II)を融着させてコアシェル型トナー粒子を得る。
コアシェル型トナー粒子は、例えば、コア部と、コア部の表面に位置するシェル部とを有する。
工程3では、工程2で得られた凝集粒子中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、融着粒子が形成される。凝集粒子(II)を融着させた場合には、コアシェル型トナー粒子を得ることができる。
【0078】
工程3においては、凝集粒子(II)の融着性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐久性を高める観点から、コア用樹脂(a)、及びシェル用樹脂(b)のガラス転移温度の最大値以上の温度で融着することが好ましい。
保持温度は、凝集粒子の融着性を向上させる観点、及びトナーの生産性を向上させる観点から、コア用樹脂(a)、及びシェル用樹脂(b)のガラス転移温度の最大値より、好ましくは2℃高い温度以上、より好ましくは4℃高い温度以上、更に好ましくは6℃高い温度以上であり、そして、コア用樹脂(a)、及びシェル用樹脂(b)のガラス転移温度の最大値より、好ましくは30℃高い温度以下、より好ましくは20℃高い温度以下、更に好ましくは12℃高い温度以下である。
【0079】
コアシェル型トナー粒子において、シェル用樹脂(b)とコア用樹脂(a)の質量比[樹脂(b)/樹脂(a)]は、好ましくは5/100以上、より好ましくは10/100以上、更に好ましくは20/100以上であり、そして、好ましくは60/100以下、より好ましくは50/100以下、更に好ましくは40/100以下である。
【0080】
工程3で得られる分散液中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子の円形度は、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
円形度は、実施例に記載の方法により測定できる。
融着は、上記好ましい円形度の範囲に達した後に終了することが好ましい。
【0081】
<後処理工程>
工程3の後、分散液中からトナー粒子を分離することが好ましい。
分散液中のコアシェル粒子は、例えば、吸引濾過法等により固液分離を行う。固液分離後に、更に洗浄を行うことが好ましい。
固液分離後に乾燥を行ってもよい。乾燥時の温度は、融着粒子自体の温度が、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度の最小値より低くなるようにすることが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
【0082】
〔外添剤〕
トナーは、前記コアシェル粒子は、流動化剤等を外添剤としてコアシェル粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0083】
トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0085】
[測定方法]
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0086】
〔樹脂の軟化点、最高ピーク温度、ガラス転移温度等〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱の最高ピーク温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間保持させ、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱ピークの最高温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0087】
〔樹脂の数平均分子量、重量平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。ついで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP−200」(住友電気工業株式会社製)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記装置を用いて、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;2.63×10、2.06×10、1.02×10、ジーエルサイエンス株式会社製;2.10×10、7.00×10、5.04×10)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:「CO−8010」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
【0088】
〔凝集粒子(1)、トナー粒子、及びトナーの体積中位粒径(D50)及びCV値〕
凝集粒子(1)、トナー粒子、及びトナーの体積中位粒径は以下のとおり測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザーIII バージョン3.51」(ベックマンコールター社製)
・電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン109P」(花王株式会社製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
また、体積中位粒径と同様にして体積平均粒径を求め、CV値(%)を下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0089】
〔樹脂粒子、着色剤粒子、荷電制御剤粒子及び離型剤粒子の体積中位粒径(D50)〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA−920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径(D50)を測定した。
【0090】
〔水系分散体の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、試料の水分(質量%)を測定した。固形分は下記式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−試料の水分(質量%)
【0091】
[評価]
〔加圧耐熱保存性の評価〕
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gの重りをのせ、50℃及び相対湿度60%の環境で24時間保持した。パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上に加圧保存したトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。篩いA上に残存したトナー質量WA(g)を、篩いB上に残存したトナー質量WB(g)を、篩いC上に残存したトナー質量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式に従って算出される値(α)により、流動性加圧耐熱保存性を評価した。値(α)が100に近いほど、加圧耐熱保存性に優れる。
α=100−(WA+WB×0.6+WC×0.2)/10×100
【0092】
〔印刷物の耐ホットオフセット性〕
複写機「AR−505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を100℃から200℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。ホットオフセットの発生を目視にて観察し、ホットオフセットが発生する温度を耐ホットオフセット性として確認した。このホットオフセットが発生する温度が高いほど好ましい。
【0093】
〔印刷物の耐折曲げ性〕
複写機「AR−505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:20cm×20cm、付着量:0.5mg/cm)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を160℃として定着させた。この画像を、50g/cmで30秒間内側に折り曲げ、再度開き、破損した画像を柔らかい布でふき取った後の、画像欠損の幅の最大値を印刷物の耐折曲げ性の指標とした。なお、定着紙には、「Copy Bond SF‐70NA」(シャープ株式会社製、75g/m)を使用した。
【0094】
[コア用樹脂の製造]
製造例A1〜A8、A10〜A11(樹脂A−1〜A−8、A−10〜A−11の製造)
表1に示す、トリメリット酸無水物以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及び助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温し、その後235℃で8時間重縮合させた後、1時間10kPaで減圧。その後、210℃まで降温しトリメリット酸無水物添加し、210℃で1時間重縮合させた。更に210℃で10kPaの減圧下にて表1に記載の軟化点まで反応を行って、樹脂A−1〜A−8、A−10〜A−11を得た。物性を表1に示す。
【0095】
製造例A9(樹脂A−9の製造)
表1に示す、トリメリット酸無水物以外のポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒及び助触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間重縮合させた。その後トリメリット酸無水物を添加し、210℃で1時間重縮合させた。更に210℃で10kPaの減圧下にて表1に記載の軟化点まで反応を行って、樹脂A−9を得た。物性を表1に示す。
【0096】
【表1-1】
【0097】
【表1-2】
【0098】
【表1-3】
【0099】
製造例B1〜B4、B6(樹脂B−1〜B−4、B−6の製造)
表2に示す、フマル酸、トリメリット酸無水物及び重合禁止剤以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及び助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温し、その後235℃で6時間重縮合させた後、10kPaに減圧し、1時間更に重縮合させた。その後、180℃まで降温しフマル酸、トリメリット酸無水物及び重合禁止剤を添加し、210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で1時間重縮合させた。更に210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点まで反応を行って、樹脂B−1〜B−4、B−6を得た。物性を表2に示す。
【0100】
製造例B5(樹脂B−5の製造)
表2に示す、フマル酸、トリメリット酸無水物及び重合禁止剤以外のポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒及び助触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で10時間重縮合させた。その後、180℃まで降温しフマル酸、トリメリット酸無水物及び重合禁止剤を添加し、210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃で1時間重縮合させた。更に210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点まで反応を行って、樹脂B−5を得た。物性を表2に示す。
【0101】
【表2-1】
【0102】
【表2-2】
【0103】
[コア用樹脂粒子(X)の水系分散液の製造]
製造例X1(水系分散液X−1)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5L容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、樹脂A−1 150gを60℃にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、20質量%アンモニア水溶液(pKa:9.3)を、樹脂の酸価に対して中和度100モル%になるように添加し、30分撹拌して、混合物を得た。続いてイオン交換水675gを77分かけて添加した。次いで、250r/分の撹拌を行いながら、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去した後、アニオン性界面活性剤「エマールE27C」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、花王株式会社製、固形分28質量%)を16.7g混合し、完全に溶解させた。その後、水系分散液の固形分濃度を測定し、イオン交換水を加えることにより、水系分散液X−1の固形分濃度を20質量%に調整した。
【0104】
製造例X2〜X11(水系分散液X−2〜X−11)
製造例X1において、用いた樹脂を、表3に示すとおりに変更した以外は、製造例X1と同様にして、樹脂粒子の水系分散液X−2〜X−11を得た。
【0105】
【表3】
【0106】
[シェル用樹脂粒子(Y)の水系分散液の製造]
製造例Y1〜Y6(水系分散液Y−1〜Y−6)
製造例X1において、用いたポリエステル樹脂を表4に示すとおりに、樹脂B−1〜B−6に変更した以外は、製造例X1と同様にして、シェル用樹脂粒子(Y)の水系分散液Y−1〜Y−6を得た。
【0107】
【表4】
【0108】
[離型剤粒子の分散液の製造]
製造例W1(離型剤粒子の分散液W−1)
パラフィンワックス「HNP0190」(日本精蝋株式会社製、融点:85℃)50g、カチオン性界面活性剤「サニゾールB50」(花王株式会社製、50質量%水溶液)5g及びイオン交換水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、パラフィンワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、固形分濃度20質量%の離型剤粒子を含有する離型剤粒子の分散液W−1を得た。離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は550nmであった。
【0109】
[荷電制御剤粒子の分散液の製造]
製造例CH1(荷電制御剤粒子の分散液CH−1)
荷電制御剤としてサリチル酸系化合物「ボントロンE−84」(オリヱント化学工業株式会社製)50g、非イオン性界面活性剤として「エマルゲン150」(花王株式会社製)5g及びイオン交換水200gを混合し、ガラスビーズを使用し、サンドグラインダーを用いて25℃にて10分間分散させて、荷電制御剤粒子を含有する荷電制御剤粒子の分散液CH−1を得た。固形分濃度20質量%の荷電制御剤粒子の体積中位粒径(D50)は500nmであった。
【0110】
[着色剤粒子の分散液の製造]
製造例P1(着色剤粒子の分散液P−1)
1L容のビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業株式会社製)116.2g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G−15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)154.9g及び脱イオン水340gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子の分散液P−1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は118nmであった。
【0111】
[静電荷像現像用トナーの製造]
実施例1
コア用樹脂粒子(X)の水系分散液X−1を300g、離型剤粒子の分散液W−1を15g、着色剤粒子の分散液P−1を8g、荷電制御剤粒子の分散液CH−1を2g、3L容の容器に入れ、アンカー型の撹拌機で100r/分(周速31m/分)の撹拌下、20℃で0.1質量%塩化カルシウム水溶液150gを30分かけて滴下した。その後、撹拌しながら50℃まで昇温した。3時間経過した時点で体積中位粒径(D50)が5μmに達した凝集粒子(I)を得た。その後、シェル用樹脂粒子(Y)の水系分散液Y−1を90g加え、撹拌して分散させることにより、凝集粒子(I)にシェル用樹脂粒子(Y)を凝集させた凝集粒子(II)を得た。その後、凝集粒子(II)の分散液に、凝集停止剤としてアニオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王株式会社製、固形分28質量%)4.2gを脱イオン水37gで希釈した希釈液を添加して、凝集体を得た。次いで80℃まで昇温し、80℃になった時点から1時間80℃を保持した後、加熱を終了した。これによりコアシェル型のトナー粒子を形成させた後、20℃まで徐冷し、150メッシュ(目開き150マイクロメートル)の金網でろ過した後、吸引ろ過を行い、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることによりトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の体積中位粒径(D50)は5.1μmであった。
トナー粒子100質量部に対し、外添剤「アエロジル R−972」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径:16nm)0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で3600r/分(周速31.7m/秒)、5分間混合することにより、外添剤処理を行いトナー(体積中位粒径D50=5.1μm)を得た。得られたトナーの評価結果を表5に示す。
【0112】
実施例2〜16及び比較例1〜5
実施例1において、用いた樹脂粒子の水系分散液の種類及び量を表に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。得られたトナーの評価結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
実施例と比較例とを対比することで本発明の製造方法によれば、加圧耐熱保存性、耐ホットオフセット性、及び耐折曲げ性に優れるトナーが得られることがわかる。