特許第6863676号(P6863676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000002
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000003
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000004
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000005
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000006
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000007
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000008
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000009
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000010
  • 特許6863676-紙巻き装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863676
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】紙巻き装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/38 20060101AFI20210412BHJP
   A47K 10/36 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A47K10/38 E
   A47K10/36 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-250718(P2015-250718)
(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公開番号】特開2017-113200(P2017-113200A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴司
【審査官】 波多江 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−261465(JP,A)
【文献】 実開平01−110690(JP,U)
【文献】 特開2006−296639(JP,A)
【文献】 国際公開第98/011811(WO,A1)
【文献】 特開2002−238802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/22
A47K 10/32 − 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方へ片持ち状に延出する一対の支持壁を備え、これら一対の支持壁の間にトイレットペーパを保持可能な紙巻き器本体と、
幅方向両側に一対の嵌合部が形成されており、複数の前記紙巻き器本体が幅方向に並列した状態で、隣接する一方の前記支持壁を一方の前記嵌合部に嵌合し、隣接する他方の前記支持壁を他方の前記嵌合部に嵌合して前記支持壁同士を連結し、隣接する前記紙巻き器本体の境界部分を覆うカバー部材と、
前記カバー部材と分離し個別に設けられ、前記支持壁に装着される2個のキャップ部材と、
を備えており、
前記支持壁は、前記カバー部材と前記キャップ部材とが選択的に嵌め付け可能であることを特徴とする紙巻き装置。
【請求項2】
前記紙巻き器本体は、背板を備え、
前記一対の支持壁は前記背板の幅方向両端部に配されていることを特徴とする請求項1に記載の紙巻き装置。
【請求項3】
背板と前記背板の幅方向両端部に配され前方へ片持ち状に延出する一対の支持壁とを備え、トイレットペーパを保持可能な紙巻き器本体と、
複数の前記紙巻き器本体が幅方向に並列した状態で、隣接する前記支持壁同士を連結可能であり、隣接する前記紙巻き器本体の境界部分を覆うカバー部材と、
を有しており、
前記紙巻き器本体は、前記両支持壁の間を上下方向に揺動可能に設けられた紙切り部材をさらに備え、
前記カバー部材と幅方向に隣接する前記紙巻き器本体の隣接する前記両支持壁とを連結する連結部位同士の幅方向に関する間隔が、前記支持壁における前記背板側の端部より前端側の方が幅狭となっていることを特徴とする紙巻き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙巻き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トイレットペーパを横並びの2連に保持する紙巻き装置が知られている。一例として、下記特許文献1が知られている。このものは、設置壁に固定されるホルダー本体に対し三つの爪保持壁を幅方向へ等間隔で取り付けるようにした構成である。この構成であると、保持するトイレットペーパの数に対応した専用のホルダー本体を用意する必要があり、部品管理やコストの点で問題がある。
【0003】
そこで、一つのトイレットペーパを保持する単体の紙巻き器を複数個用いて、これらを保持すべきトイレットペーパの数に応じて順に並列して行く方式が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−238802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような複数個の並列方式であると、隣接する紙巻き器の継ぎ目にゴミが落ち込んでたまり易く、加えて、たまったゴミの掃除がし辛いという問題もある。また、個々の紙巻き器を単に繋いだだけであり、全体形態としてのデザイン上のまとまりに欠けるといった点も指摘できる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、境界部分での掃除を容易に行うことができる紙巻き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紙巻き装置は、前方へ片持ち状に延出する一対の支持壁を備え、これら一対の支持壁の間にトイレットペーパを保持可能な紙巻き器本体と、
幅方向両側に一対の嵌合部が形成されており、複数の前記紙巻き器本体が幅方向に並列した状態で、隣接する一方の前記支持壁を一方の前記嵌合部に嵌合し、隣接する他方の前記支持壁を他方の前記嵌合部に嵌合して前記支持壁同士を連結し、隣接する前記紙巻き器本体の境界部分を覆うカバー部材と、
前記カバー部材と分離し個別に設けられ、前記支持壁に装着される2個のキャップ部材と、
を備えており、
前記支持壁は、前記カバー部材と前記キャップ部材とが選択的に嵌め付け可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数個の紙巻き器本体が幅方向に並列して設置された状態で隣接する紙巻き器本体の境界部分をカバー部材によって覆うことができる。したがって、個々の紙巻き器本体の単なる集合体として認識させるのでなく、切れ目のない連続体として認識させうるため、複数のトイレットペーパを保持する紙巻き装置としてのデザイン性を向上させることができる。また、カバー部材によって紙巻き器本体の境界にゴミが落ち込んでしまうことが回避され、掃除もし易くなる、という利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】単体状態での紙巻き器において、一方の支持壁からキャップ部材を取り外した状態を示す斜視図
図2】カバー部材によって紙巻き器を2連に接続した形態を示す斜視図
図3】同じく正面図
図4】同じく平面図
図5】カバー部材を取り外して支持壁を側方から見た側面図
図6】カバー部材と支持壁との連結状態を示す側面図
図7】連結突起と係止凹部との係止状態を拡大して示す断面図
図8】カバー部材の斜視図
図9】カバー部材における上下方向中央部での平断面図
図10図9のA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
前記紙巻き器本体は、背板と前記背板の幅方向両端部に配され前方へ片持ち状に延出する一対の支持壁とを備える一方、前記カバー部材は幅方向に隣接する前記紙巻き器本体の隣接する前記支持壁同士を連結可能な構成としてもよい。
このような構成によれば、カバー部材という単一の部材が紙巻き器本体同士の連結機能とカバー機能とを兼備するから、仮に、カバー機能をもった部材とは別に連結専用の部材を要するとした場合と比べれば部品点数を削減することができる。
【0011】
また、前記紙巻き器本体は、前記両支持壁の間を上下方向に揺動可能に設けられた紙切り部材をさらに備え、前記カバー部材と幅方向に隣接する前記紙巻き器本体の隣接する前記両支持壁とを連結する連結部位同士の幅方向に関する間隔が、前記支持壁における前記背板側の端部より前端側の方が幅狭となるよう構成してもよい。
仮に、紙巻き器本体の両支持壁の前端が内向きとなるように変形していると、支持壁と紙切り部材とが干渉してしまう虞がある。しかし、上記のような構成によれば、カバー部材が隣接する紙巻き器本体を連結した際に、隣接する支持壁の前端側同士を接近する方向、つまり幅方向外側に強制的に拡開させるよう矯正することができる。これによって、紙切り部材と支持壁との干渉を未然に回避することができる。
【0012】
<実施例1>
図1は紙巻き器本体1の単体状態を示しており、一方(図示右側)の支持壁2に装着されているキャップ部材3を取り外した状態を示している。図2乃至図4は2個の紙巻き器本体1を幅方向に並列して連結した状態を示している。但し、以下の説明において「幅方向」とは図3における左右方向であり、「前後方向」とは図4における上下方向であり、「上下方向」とは図5における上下方向を言うものとする。
【0013】
さて、紙巻き器本体1は合成樹脂製であり、図4に示すように、背板4と、この背板4の前面において幅方向両端部に取り付けられた一対の支持壁2と、両支持壁2の間において上下方向へ揺動可能に取付けられた紙切り部材5とを備えて構成されている。
【0014】
図3に示すように、背板4は横長の略方形状に形成され、設置壁Wに対する取付け用の凹部6が3か所に設けられている。取付け用の凹部6は、上部側において幅方向に分かれて2箇所、下部側において幅方向中央に一箇所が配されている。上部側に配された両取付け用の凹部6は幅方向へ長く延出され、下部側に配された取付け用の凹部6は縦方向に長く延出されている。いずれの取付け用の凹部6においても、取付け用凹部6の延出方向と同方向への長孔となった差し込み孔7が貫通している。但し、本実施例1においては下部側に配された差し込み孔7は上部側のものに比べて短めに形成されている。差し込み孔7の周囲には座面6Aが形成され、差し込み孔7を介して設置壁Wにねじ込まれるねじ8の頭部を受けるようになっている。
【0015】
背板4の幅方向両側縁には一対の支持壁2が前方へ片持ち状に延出して形成され、幅方向で対向している。図5に示すように、両支持壁2は、鉛直方向に沿って延びる後縁および水平方向に沿って延びる上下縁がストレート状をなして形成されるが、前縁は半円状をなして形成されている。
【0016】
図5等に示すように、支持壁2の前縁部寄りでかつ上下方向に関して上部寄りの部位には縦長の窓孔9が開口している。この窓孔9にはトイレットペーパTを保持するための保持爪10が装着される。
【0017】
支持壁2の外面であって窓孔9の開口縁には、窓孔9を全周から取り囲むようにして窓枠11が立設されている。窓枠11のうち下端縁には補強縁12が連続しかつこの補強縁12は前後方向に沿いつつ支持壁2の後端まで延出している。補強縁12のうち窓枠11の下縁に対応する長さ範囲は、全範囲に亘って逃がし凹部13が切欠き形成されている。
図1図5に示すように、窓枠11において前後に対向する両側縁の上下方向の中央部及び下端寄りには前後でペアをなす計2対の切欠き溝14が形成されている。下端寄りに配された両切欠き溝14には保持爪10の支持軸15が横架されている。保持爪10はこの支持軸15を中心として回動可能であり、支持壁2の内方へ支持壁2の壁面とほぼ直交して水平姿勢で突出する突出位置と、窓孔9内に引っ込んでほぼ直立姿勢で退避する退避位置との間を回動可能である。保持爪10が突出位置にあるときには、保持爪10の付け根側が窓孔9の下縁部に当接することで突出位置を越えて回動することが規制されている。一方、保持爪10が退避位置にあるときには、窓枠11の上縁部の前後方向中央部に下向きに突出形成されたストッパ突起16に保持爪10の先端部が当接することで、保持爪10が退避位置を越えて回動することが規制されている。
【0018】
保持爪10は窓孔9にほぼ適合する外形に形成され、先端側のみ前後部が角落しされている。保持爪10の基端部には前後方向に沿って筒状のばね装着部17が形成されている。ばね装着部17は図5等に示すように、前後方向に関する一定範囲が外方へ向けて開口して横穴17Aが形成されている。前記した支持軸15は、中央部にトーションバネ18が巻着された状態でばね装着部17の前後両端部を貫通し、上記したように、下端寄りに配された両切欠き溝14の間に橋渡されている。
【0019】
図5に示すように、支持壁2の外面において、窓枠11の前後両側縁の下端部から前後方向外方へ等距離だけ離れた位置には、一対のずれ止め壁19が立設されている。このずれ止め壁19は保持爪10の支持軸15の両軸端面に当接可能であり、支持軸15の軸方向へのずれ規制を行っている。なお、両ずれ止め壁19のうち後側のものはその下端が補強縁12に接続されている。
【0020】
また、図5に示すように、支持壁2の外面において補強縁12を挟んで窓枠11の下方にはばね受け部20が突設されている。ばね受け部20は前後方向両側から中央部に向けて徐々に突出高さを増すような略山形形状に形成され、かつ頂部が平面をなす台状に形成されている。さらに、図5に示すように、ばね受け部20の頂部には上下方向に沿ってずれ止め溝21が凹設されている。前記したトーションバネ18の一端はこのずれ止め溝21に係止し、他端は、詳細には図示しないが、ばね装着部17内に連通する保持爪10の中空空間内に延びて同空間内の壁面に係止している。これにより、トーションバネ18は保持爪10を突出位置へ向けて回動するよう付勢する。
【0021】
支持壁2の後縁を除く周縁には外向きに周壁22が立設されており、この周壁22にはキャップ部材3とカバー部材23が選択的に嵌め付け可能である。周壁22は窓枠11及び補強縁12の突出高さとほぼ同じ高さに形成されている。周壁22のうち支持壁2の前端部には上下二箇所に開口24が配され、両開口24の間には前小壁25が形成されている。この前小壁25の外面、および残りの周壁22における外面には適当間隔毎に複数の連結突起26が突出形成されている。これら連結突起26は前後方向に沿った同一ライン上に配置されている。図7に示すように、各連結突起26にはキャップ部材3あるいはカバー部材23の嵌合方向(同図に示すS矢印方向)に沿って先端側から徐々に上り勾配となる傾斜面26Aが形成され、嵌合方向後端はほぼ真っ直ぐ(周壁22の外面からほぼ直角)に起立した係止面26Bが形成されている。
【0022】
キャップ部材3も合成樹脂製であり、図1に示すように、支持壁2の全面に適合する蓋板27を有し、その周縁の全縁には嵌合壁28が形成されている。嵌合壁28は支持壁2の周壁22に対し外側から嵌合可能である。蓋板27の内面には支持壁2の各切欠き溝14に突入される軸押さえ29が4か所に突出形成されている。キャップ部材3が支持壁2に嵌着されたときに、軸押さえ29のうち切欠き溝14のうち保持爪10の支持軸15が通過しているものに対応する位置にあるペアは、対応する切欠き溝14のペア内に突入し、支持軸15の両端部寄りの部位を押さえ込むことで、保持爪10を外れ止めしている。キャップ部材3を支持壁2に取り付けたときに、軸押さえ29のうち支持軸15に対応しないペアを設けているのは、左右のキャップ部材3は装着時に上下が逆転する関係にあることを考慮したうえで、両キャップ部材3を左右共通の部品とするためである。
【0023】
さらに、キャップ部材3の嵌合壁28の内面側には複数の係止受け部30が方形状に凹み形成され、これらは支持壁2の各連結突起26に対応した位置に配されている。
【0024】
紙切り部材5は、基板5Aを有しており、その後端部には詳細には図示されないが、幅方向外方へ向けて支持軸部5Bが突出している。両支持軸部5Bは、両支持壁2の内面における後端上部に形成された軸孔31へ差し込まれ、紙切り部材5全体を支持軸部5Bを中心として上下方向に回動可能に支持している。基板の内面側であって先端部寄りには図示しないおもりが装着されていて、紙切り部材5全体を下方、つまりトイレットペーパTに覆い被さる方向に付勢している。また、基板5Aの先端にはほぼ全幅に亘って鋸刃状の紙切り部5Cが形成されている。
【0025】
次に、主として図8乃至図10を参照してカバー部材23の説明を行う。本実施例1のカバー部材23は幅方向に並列する複数の紙巻き器本体1の継ぎ目を隠す機能と、紙巻き器本体1を幅方向に連結する機能とを有する。
【0026】
カバー部材23も合成樹脂材にて一体に形成されている。カバー部材23は、仕切り板32とこの仕切り板32から幅方向両側へ対称に張り出す覆い壁33とを備えて形成されている。覆い壁33は仕切り板32の全周縁に沿って形成されている。カバー部材23において、仕切り板32を挟んで幅方向両側は一対の嵌合部R1,R2となっている(図9参照)。両嵌合部R1,R2は、紙巻き器本体1を幅方向に並列させたときに、隣り合う支持壁2の周壁22に対して嵌合可能であるとともに、紙巻き器本体1の継ぎ目となる両周壁22の全範囲を覆い隠すことができる。但し、実施例1では好ましい形態として両周壁22の全範囲を覆い隠す形態を例示したが、一部、例えば周壁22の上部領域が覆い隠される形態としてもよい。
【0027】
覆い壁33は、後端に位置する後壁部33Aとこの後壁部33Aの上下両端から前端の頂点部(前方へ最も突出した部位:図10でPにて示される部位)にかけての上下の領域である上側壁部33B及び下側壁部33Cとからなっている。図9に示すように、覆い壁33全体の幅寸法に関し、後端側から頂点部Pに向けて徐々に幅狭となるように形成されている。図9に示すように、覆い壁33の後端部での幅寸法をW1としたときに、頂点部Pでの幅寸法W2はW1>W2となっている。
【0028】
また、両嵌合部R1,R2には覆い壁33の内面に複数の係止凹所34が凹設され、それぞれが前後方向に沿って2列に配されている。各係止凹所34は仕切り板32を境にして対称位置に配されている。これら係止凹所34はキャップ部材3の各係止受け部30に対応するものであり、両嵌合部R1,R2が、幅方向に隣接する紙巻き器本体1の隣接する両支持壁2に嵌合したときに、各係止凹所34は隣接する紙巻き器本体1の連結突起26の各列にそれぞれ嵌合し、これによってカバー部材23を介して紙巻き器本体1同士を幅方向に連結することができる。
【0029】
ところで、両嵌合部R1,R2において幅方向で対応する関係にある係止凹所34同士の間隔は、図9に示すように、後端側から頂点部側にかけて徐々に幅狭となるように設定されている。例えば、後端側に位置する係止凹所34のペアの間隔をW3としたときに、頂点部に位置する係止凹所34のペアの間隔W4はW3>W4となっている。したがって、幅方向で隣接する紙巻き器本体1がカバー部材23によって連結された状態では、幅方向に隣接する支持壁2の前端側は幅方向外側へ、つまり隣接する支持壁2同士を互いに接近させる方向に強制変形させられることになる。このことにより、隣接する紙巻き器本体1において支持壁2と紙切り部材5との干渉が未然に回避されることになる。
【0030】
図10に示すように、仕切り板32の両面において覆い壁33寄りの周縁であって、各係止凹所34に対応した位置には肉抜き孔35が複数個所に開口している。また、仕切り板32における前部寄りの部位にはキャップ部材3と同様の軸押さえ36が4か所にそれぞれ外向きに突出形成されている。各軸押さえ36の配置、構成及び機能についてはキャップ部材3で説明したものと全く同様であるため、重複した説明は省略する。
【0031】
次に、上記のように構成された本実施例1の作用効果を説明する。紙巻き器本体1が単体で使用されるときには、両支持壁2のそれぞれにキャップ部材3が取付けられ、その状態で設置壁Wに対してねじ8を介して全体の固定がなされる。トイレットペーパTを保持するときには、トイレットペーパTにて紙切り部材5を上方へ押し上げつつ両支持壁2の間に嵌め入れる。これに伴い、トイレットペーパTの外周面が突出位置にある双方の保持爪10に下方から当接するため、両保持爪10はトーションバネ18のばね力に抗して退避位置に押し込まれる。そして、トイレットペーパTの芯体の筒孔(いずれも図示しない)が保持爪10と適合すれば、保持爪10はトーションバネ18にて突出位置に復帰して筒孔内に刺さり込む。かくして紙巻き器本体1にトイレットペーパTが保持される。
【0032】
一方、紙巻き器本体1を幅方向に連結して使用するときには、設置壁Wへの固定に先立って、紙巻き器本体1を連結したときに隣接(対向)する位置関係となる支持壁2からキャップ部材3をそれぞれ取り外しておく。
【0033】
この状態で、一方の紙巻き器本体1に対し、キャップ部材3が取り外された状態の支持壁2に対しカバー部材23の一方の嵌合部を適合させてそのまま嵌合させる。具体的には、支持壁2における周壁22の外面に対しカバー部材23の覆い壁33の片側を適合させて嵌合させる。これにより、周壁22の各連結突起26にカバー部材23の対応する係止凹所34が係止するのであるが、前述したように、各連結突起26にはカバー部材23の嵌合方向に沿った傾斜面26Aが形成されているため、嵌合作業は円滑になされ、傾斜面26Aを越えた時点で係止面26Bが係止凹所34の開口縁に係止してカバー部材23の外れ止めがなされる(図7状態)。また、上記したカバー部材23の嵌合の際には、各軸押さえ36が対応する切欠き溝14にそれぞれ進入する。4つの軸押さえ36のうち下側のペアについては、下側の切欠き溝14に進入した際に、保持爪10の支持軸15の両端部を押さえ付けて保持爪10の固定がなされる。
【0034】
上記のようにして一方の紙巻き器本体1に対してカバー部材23の片側の嵌合部R1(R2)の嵌合が完了すれば、同様の要領で他方の紙巻き器本体1に対してもカバー部材23の他方の嵌合部R2(R1)への嵌合作業を行う。こうすることで、二つの紙巻き器本体1がカバー部材23を介して横並びに連結された形態の紙巻き装置が得られる。こうして得られた紙巻き装置は、両紙巻き器本体1の背板4をそれぞれねじ止めすることによって設置壁Wへの取付けがなされる。
【0035】
以上のように、本実施例1の紙巻き装置では、カバー部材23の覆い壁33が隣接する支持壁2の間を橋渡すようにして両支持壁2の周壁22の全範囲を覆い隠すため、つまり、両紙巻き器本体1のつなぎ目が覆われるため、つなぎ目にゴミが浸入することがなく、掃除を簡単に行うことができる。
【0036】
また、上記のようにしてつなぎ目を覆い隠すため、使用者は二つの独立した紙巻き器を単に連結したものとして認識するのでなく、複数のトイレットペーパTを保持可能な一連の紙巻き装置として認識する、というデザイン上の利点も得られる。さらに、本実施例1によれば、独立した2つの紙巻き器本体1を連結したものであるため、単体の仕様と連結した仕様とで紙巻き器本体1を共用することができる。換言すれば、一つの紙巻き器本体1を単独で使用する仕様と、複数の紙巻き器本体1がカバー部材23を介して複数個、連結された仕様とを選択することが可能となる。つまり、両仕様で専用のものを必要としないから、コスト面で有利であり、部品管理も簡単になる。
【0037】
さらに、本実施例1の紙巻き装置では、カバー部材23によって紙巻き器本体1を連結した際に、両紙巻き器本体1に対するカバー部材23の連結部位、すなわち幅方向で対をなす連結突起26と幅方向で対をなす係止凹所34との係止部位の間隔が、後部側から前部側に向けて徐々に狭くなるようになっているため、両紙巻き器本体1で隣接する支持壁2の前端同士が互いに接近するように強制的に変形させられている。このため、仮に、一つの紙巻き器本体1において支持壁2同士が互いに接近する方向へ内向きに変形していたとしても、カバー部材23によって支持壁2同士を強制的に拡開変形させるようになっていることから、支持壁2と紙切り部材5との干渉を未然に回避することができる。
【0038】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、カバー部材23は紙巻き器本体1同士の連結機能を持たず、紙巻き器本体1を個別に設置壁Wに固定するような形式のものであってもよい。
【0039】
(2)上記実施例では、紙巻き器本体1を2連に連結した形態を例示したが、3連以上の形態であってもよい。
(3)上記実施例では、カバー部材同士の連結部位を隣接する支持壁としたが、これに代えて隣接する背板とすることも可能である。
(4)上記実施例では、支持壁にキャップ部材を被せ付けるようにしたが、支持壁とキャップ部材を一体に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…紙巻き器本体
2…支持壁
4…背板
5…紙切り部材
23…カバー部材
26…連結突起(連結部位)
34…係止凹所(連結部位)
T…トイレットペーパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10