(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の溶液。
前記溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の溶液。
前記多価フェノールがレゾルシンであり、前記少なくとも2種のアルデヒド類がプロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドである、請求項6に記載の溶液の製造方法。
前記多価フェノールがレゾルシンであり、前記少なくとも2種のアルデヒド類がパラアルデヒドとプロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドである、請求項6に記載の溶液の製造方法。
前記少なくとも2種のアルデヒド類のうち、前記式(3)で表される化合物換算で、量が最も多い1種のアルデヒド類1モルに対する他のアルデヒド類の割合が、0.25〜1モルである、請求項6〜9のいずれか一項に記載の溶液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<カリックスアレーン系化合物>
本発明のカリックスアレーン系化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)は、下記式(1)で表される。
【0019】
【化3】
(式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、メチル基又はメトキシ基であり、R
3は炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基又はメチルフェニル基であり、4つのR
3のうち少なくとも2つは互いに異なる。)
【0020】
式(1)中、4つのR
1はそれぞれ同一であってもよく互いに異なってもよい。また、4つのR
2はそれぞれ同一であってもよく互いに異なってもよい。
R
1及びR
2はそれぞれ、極性溶剤に対する溶解性の点では、水酸基以外のもの、すなわち水素原子、メチル基又はメトキシ基が好ましく、耐熱性の点では、水酸基が好ましい。
【0021】
R
3のアルキル基の炭素数は、1〜18であり、1〜4がより好ましい。アルキル基の炭素数が前記範囲の下限値以上であれば、極性溶剤に対する溶解性がより優れる。アルキル基の炭素数が前記範囲の上限値以下であれば、耐熱性がより優れ、また、燃焼性が低くなる。R
3のアルキル基は、直鎖状でもよく分岐状でもよく、直鎖状が好ましい。R
3のヒドロキシフェニル基が有する水酸基は、1つでもよく2つ以上でもよく、1つであることが好ましい。R
3のメチルフェニル基が有するメチル基は、1つでもよく2つ以上でもよく、1つであることが好ましい。
R
3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−メチルフェニル基等が挙げられる。
【0022】
式(1)中、4つのR
3のうち少なくとも2つは互いに異なる。これにより、化合物(1)の極性溶剤に対する溶解性が優れる。
4つのR
3のうち、互いに異なるのは、2種でもよく3種でもよく4種でもよい。
4つのR
3のうち、互いに異なるもの同士の位置関係は特に限定されない。また、4つのR
3のうち同一のものが存在する場合、同一のもの同士の位置関係は特に限定されない。
互いに異なるR
3の組み合わせとしては、例えばメチル基とn−プロピル基との組み合わせ、エチル基とn−プロピル基との組み合わせ、メチル基とエチル基とn−プロピル基との組み合わせ、メチル基とエチル基の組み合わせ、n−プロピル基とn−ブチル基との組み合わせ、n−ブチル基とペンチル基との組み合わせ、メチル基とエチル基とn−プロピル基とn−ブチル基との組み合わせ等が挙げられる。
上記の中でも、比較的安価であり、対応するアルデヒド類の多価フェノールとの反応性が良く、得られる組成物の極性溶剤に対する溶解性がより優れ、硬化物に耐熱性、低熱膨張性が付与でき、燃焼性の低減が出来る点で、メチル基とn−プロピル基との組み合わせ、エチル基とn−プロピル基との組み合わせ、又はメチル基とエチル基とn−プロピル基との組み合わせが好ましい。
【0023】
(作用効果)
本発明の化合物(1)は、一般的なカリックスアレーン系化合物に比べて、エポキシ樹脂を樹脂ワニスにする際に用いられるような極性溶剤に対する溶解性に優れる。これは、4つのR
3のうち少なくとも2つが互いに異なるために、4つのR
3が同一である場合に比べて、結晶性及び構造の対称性が低く、分子間相互作用(例えば水酸基間の水素結合)が緩和されることによると考えられる。
また、本発明の化合物(1)は、複数の水酸基を有することから、水酸基と反応する官能基(エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、ハロゲン化物等)を有する化合物の硬化剤(架橋剤)として用いることができる。また、本発明の組成物を硬化剤として用いることで、硬化物にカリックスアレーン構造を導入し、耐熱性、低熱膨張性、高弾性率等の物性を付与することができる。
また、本発明の化合物(1)は上記のとおり極性溶剤に対する溶解性に優れるため、エポキシ樹脂用硬化剤として本発明の化合物(1)を用いることで、一般的なカリックスアレーン系化合物を用いる場合に比べて、エポキシ樹脂、硬化剤等が溶剤に溶解した樹脂ワニスの固形分濃度を高くすることができる。したがって、樹脂ワニスを用いて製造される積層板等の生産性が良好である。
また、本発明の化合物(1)は、エポキシ樹脂を製造するための材料として用いることができる。例えば本発明の化合物(1)とエピクロロヒドリンとを反応させることで、化合物(1)の−OHの一部又は全部が−OX(ここで、Xはグリシジル基である。)となった構造の化合物を含むエポキシ樹脂を得ることができる。
【0024】
<組成物>
本発明の組成物は、前述の化合物(1)を含む。
本発明の組成物に含まれる化合物(1)は1種でもよく2種以上でもよい。例えばR
3の種類や組み合わせが異なる複数の化合物(1)を含んでもよい。R
3の種類や組み合わせが同じであっても4つのR
3のうち互いに異なるR
3の数や位置関係が異なる複数の化合物(1)を含んでもよい。
本発明の組成物における化合物(1)の含有量は、組成物の総質量に対し、70質量%以上であり、90質量%以上が好ましく、100質量%であってもよい。化合物(1)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、極性溶剤に対する溶解性が優れる。
【0025】
本発明の組成物は、化合物(1)以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば化合物(1)の製造時に生成し得る副生物、化合物(1)の製造に用いられた材料(後述する多価フェノール、アルデヒド類等)等が挙げられる。例えば後述の製造方法においては、式(1)中の4つのR
3が全て同じであるカリックスアレーン系化合物が副生物として生成し得る。
【0026】
本発明の組成物の重量平均分子量(Mw)は、500〜1500であることが好ましく、600〜900であることがより好ましい。
該重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0027】
本発明の組成物は、例えば、後述する本発明の組成物の製造方法により製造できる。ただし本発明の組成物を製造する方法はこれに限定されるものではない。
【0028】
(作用効果)
本発明の組成物は、化合物(1)を70質量%以上の含有量で含むため、化合物(1)と同様に、一般的なカリックスアレーン系化合物に比べて、極性溶剤に対する溶解性に優れる。また、水酸基と反応する官能基を有する化合物の硬化剤として用いることができ、本発明の組成物を硬化剤として用いることで、硬化物にカリックスアレーン構造を導入し、耐熱性、低熱膨張性、高弾性率等の物性を付与することができる。また、極性溶剤に対する溶解性に優れるため、エポキシ樹脂用硬化剤として本発明の組成物を用いることで、エポキシ樹脂、硬化剤等が溶剤に溶解した樹脂ワニスの固形分濃度を高くすることができ、樹脂ワニスを用いて製造される積層板等の生産性が良好である。また、本発明の組成物を、エポキシ樹脂を製造するための材料として用いることができる。
【0029】
<組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法は、下記式(2)で表される多価フェノールと、下記式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」ともいう。)及びその多量体からなる群から選ばれ、R
3が互いに異なる少なくとも2種のアルデヒド類と、を反応させる工程を含む。
前記多価フェノールと前記少なくとも2種のアルデヒド類とを反応(縮合反応)させることで、化合物(1)が生成する。
【0030】
【化4】
(式(2)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、メチル基又はメトキシ基である。式(3)中、R
3は炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基又はメチルフェニル基である。)
【0031】
式(2)中のR
1及びR
2はそれぞれ式(1)中のR
1及びR
2に対応する。
前記多価フェノールとしては、例えばレゾルシン、2−メチルレゾルシン、5−メチルレゾルシン、ピロガロール、フロログルシノール、2−メトキシレゾルシン、5−メトキシレゾルシン等が挙げられる。
前記多価フェノールとしては、比較的安価であり、アルデヒド類との反応性が非常に良く、カリックスアレーン構造を得やすい点から、レゾルシンが好ましい。
【0032】
式(3)中のR
3は式(1)中のR
3に対応する。
化合物(3)としては、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−トルアルデヒド等が挙げられる。
化合物(3)の多量体としては、例えばパラアルデヒド(アセトアルデヒドの三量体)が挙げられる。化合物(3)の多量体は、酸の存在下で加熱することにより化合物(3)を生成する。例えば多価フェノールとアルデヒド類とを縮合反応させる際に触媒として無機酸、有機酸等を使用すると、反応条件下で化合物(3)の多量体から化合物(3)が生成する。
【0033】
アルデヒド類としては、R
3が互いに異なる少なくとも2種が用いられる。これにより、反応生成物が、4つのR
3のうち少なくとも2つが互いに異なる化合物(1)を含むものとなる。
1分子の化合物(1)が有し得るR
3は4つであるが、使用するアルデヒド類は2種、3種又は4種に限定されず、5種以上であってもよい。この場合、有するR
3の種類が異なる複数の化合物(1)が生成し得る。アセトアルデヒドとパラアルデヒドのような、R
3が互いに同じであるアルデヒド類は、1種として取り扱うものとする。
【0034】
前記少なくとも2種のアルデヒド類の組み合わせとしては、例えば、パラアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの組み合わせ、プロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの組み合わせ、パラアルデヒドとプロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの組み合わ
せ等が挙げられる。
上記の中でも、比較的安価であり、多価フェノールとの反応性が良く、得られる組成物の極性溶剤に対する溶解性がより優れ、硬化物に耐熱性、低熱膨張性が付与でき、燃焼性の低減が出来る点で、パラアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの組み合わせ、プロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの組み合わせ、又はパラアルデヒドとプロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの組み合わせが好ましい。
【0035】
前記少なくとも2種のアルデヒド類のモル比は、特に限定されないが、前記少なくとも2種のアルデヒド類のうち、量が最も多い1種のアルデヒド類(以下、「第一のアルデヒド類」ともいう。)1モルに対する他のアルデヒド類の割合が0.25〜1モルであることが好ましく、0.5〜1モルがより好ましい。
第一のアルデヒド類1モルに対する他のアルデヒド類の割合が前記範囲の下限値以上であれば、多価フェノールとアルデヒド類とを反応させたときに、式(1)中の4つのR
3が全て同じである化合物が生成しにくい。つまり化合物(1)が生成しやすく、多価フェノールとアルデヒド類との反応生成物中の化合物(1)の存在比率が高くなる。
【0036】
ここで、アルデヒド類の量(モル量)は、化合物(3)換算の量であり、多量体の場合は、多量体のモル量に多量体の重合度を乗じた値である。例えばパラアルデヒドの1モルは、化合物(3)換算で3モルである。
量が最も多いアルデヒド類が2種以上存在する場合は、それらの内の任意の1種を第一のアルデヒド類とする。
他のアルデヒド類が2種以上存在する場合、他のアルデヒド類の割合は、2種以上の他のアルデヒド類の合計での割合ではなく、2種以上の他のアルデヒド類それぞれの割合である。
【0037】
前記多価フェノールに対する前記少なくとも2種のアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/多価フェノール)は、0.50〜1.20が好ましく、0.50〜1.00がより好ましい。アルデヒド類/多価フェノールのモル比が前記範囲の下限値以上であれば、歩留まりが良好であり、前記範囲の上限値以下であれば、アルデヒド類が余剰になることのコストアップを抑制でき、また、余剰のアルデヒド類の除去が容易である。
なお、ここでのアルデヒド類のモル量は、化合物(3)換算の量である。
【0038】
前記多価フェノールと前記少なくとも2種のアルデヒド類との反応は、常法により行うことができる。
上記反応は、反応速度の観点から、触媒の存在下で行うことが好ましい。
上記反応は、前記多価フェノールおよび前記少なくとも2種のアルデヒド類を溶解し、化合物(1)を溶解しない溶媒(以下、「反応溶媒」ともいう。)中で行うことが好ましい。反応溶媒中で反応を行うと、生成した化合物(1)を反応溶媒中に析出させることができる。
前記多価フェノールと前記少なくとも2種のアルデヒド類とを反応させる方法としては、前記反応溶媒に前記多価フェノールを溶解し、そこに前記少なくとも2種のアルデヒド類を滴下する方法が好ましい。アルデヒド類は反応性が高いため、反応させる全量を一度に反応系に存在させた場合、化合物(1)以外の副生物が生じやすい。アルデヒド類を徐々に反応系に加えることで、副生物の生成を抑制できる。また、生成した化合物(1)は析出するため、化合物(1)の反応性は低く、化合物(1)と他の成分との反応や化合物(1)の分解が生じにくい。そのため、得られる反応生成物が、化合物(1)を70質量%以上の含有量で含むものとなりやすく、反応溶媒から回収した反応生成物をそのまま本発明の組成物とすることができる。
反応溶媒に触媒が添加されていてもよい。
【0039】
触媒としては、反応が進行すれば特に制限はなく、公知の触媒種、例えば無機酸、有機酸を用いることができる。具体例としては、臭化水素酸、塩酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、3フッ化ホウ素等が挙げられる。
【0040】
触媒の量は、前記多価フェノールに対して1.0〜100.0質量%が好ましく、5.0〜50.0質量%がより好ましい。触媒量が前記範囲の下限値以上であれば、反応速度を充分に速くすることができる。触媒量が前記範囲の上限値以下であれば、反応が急激に進みにくく、反応をコントロールしやすい。
【0041】
反応溶媒としては、反応中に化合物(1)が析出し得るものであれば特に制限はないが、水又は炭化水素系溶剤が好ましい。炭化水素系溶剤としては、例えばノルマルヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等が挙げられる。
反応溶媒としては、比較的安価であり、化合物(1)を容易に析出させることが可能であることから、水、ノルマルヘキサン、トルエンが好ましい。
反応溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
反応溶媒の量は、反応中に化合物(1)が析出し得る量であれば特に制限はないが、多価フェノールに対し、50〜400質量%が好ましく、100〜300質量%がより好ましい。反応溶媒の量が前記範囲の下限値以上であれば、反応溶媒中の析出物の濃度が充分に低く、反応溶媒の撹拌が容易である。反応溶媒の量が前記範囲の上限値以下であれば、化合物(1)以外の副生物の生成を抑制でき、また、反応が充分に速く進む。また、廃液の量が増加することによるコストアップを抑制できる。
【0043】
前記多価フェノールと前記少なくとも2種のアルデヒド類との反応温度は、20℃〜150℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。反応温度が前記範囲の下限値以上であれば、反応が進みやすく、また、反応生成物の分子量分散度が狭くなり、本発明の組成物を容易に得ることができる。また、反応生成物が析出した反応溶媒の撹拌が容易である。反応温度が前記範囲の上限値以下であれば、反応をコントロールしやすい。
【0044】
前記多価フェノールが溶解した反応溶媒への前記少なくとも2種のアルデヒド類の滴下時間(滴下を開始してから滴下を終了するまでの時間)は、1〜20時間が好ましく、3〜10時間がより好ましい。滴下時間が前記範囲の下限値以上であれば、反応生成物の分子量分散度が狭くなり、本発明の組成物を容易に得ることができる。また、反応生成物が析出した反応溶媒の撹拌が容易である。滴下時間が前記範囲の上限値以下であれば、生産性が良好である。
【0045】
反応溶媒中に析出した反応生成物は、ろ過等の公知の固液分離処理により回収できる。回収後、必要に応じて、水洗、精製、再結晶等を行ってもよい。
【0046】
前記多価フェノールと前記少なくとも2種のアルデヒド類との反応により得られる反応生成物は、化合物(1)を70質量%以上の含有量で含んでいれば、そのまま本発明の組成物とすることができる。
反応生成物中の化合物(1)の構造は、
13C−核磁気共鳴分析(NMR)、電界脱離質量分析(FD−MS)、液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)、飛行時間型質量分析(TOF−MS)等の公知の分析方法により確認できる。
反応生成物中の化合物(1)の含有量(純度)は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)、液体クロマトグラフィー(LC)等の公知の分析方法により確認できる。
【0047】
<エポキシ樹脂用硬化剤>
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、前述の本発明の組成物からなる。すなわち、化合物(1)を70質量%以上の含有量で含む。本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の好ましい態様は、本発明の組成物の好ましい態様と同様である。
【0048】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、前述の本発明のエポキシ樹脂用硬化剤と、を含む。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ樹脂及び本発明のエポキシ樹脂用硬化剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば硬化促進剤、フィラー(例えばカーボンブラック、ガラスクロス、シリカ)、難燃剤、添加剤(ワックス)等が挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤以外の他の硬化剤をさらに含んでもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤を含んでもよい。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を積層板の製造に用いる場合は、溶剤を含むことが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止材として用いる場合は、溶剤を含まないことが好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、公知のエポキシ樹脂であってよく、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0050】
硬化促進剤としては、特に限定されず、公知の硬化促進剤であってよく、例えばリン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの中でも、硬化性、耐熱性、電気特性がより優れる点、耐湿信頼性が低下しにくい点で、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾールが好ましい。リン系化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン等が挙げられる。第3級アミンとしては、例えば1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。これらの硬化促進剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は他の硬化剤を併用してもよい。他の硬化剤としては、エポキシ樹脂に用いられる硬化剤として公知のものを用いることができ、例えばフェノールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、酸無水物、アミン樹脂等が挙げられる。
【0052】
溶剤としては、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を溶解するものであれば特に制限はなく、典型的には、極性溶剤が用いられる。極性溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂組成物中、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ基当量と、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の水酸基当量との比(エポキシ基当量/水酸基当量)が0.7〜1.5となる量であることが好ましい。エポキシ基当量/水酸基当量は、0.95〜1.05がより好ましい。エポキシ基当量/水酸基当量が前記範囲内であれば、得られる硬化物の物性が良好である。例えば高耐熱性、低熱膨張性、高弾性率の硬化物が得られる。
【0054】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂に対し、0.1〜5質量%が好ましい。
溶剤の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分濃度が20〜70質量%となる量が好ましく、本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分濃度が40〜60質量%となる量がより好ましい。
【0055】
(作用効果)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を含むため、得られる硬化物が耐熱性、低熱膨張性、高弾性率等の物性を有する。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、例えば半導体装置の部材(プリント配線基板、半導体封止部等)を構成する材料として有用である。
また、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、一般的なカリックスアレーン系化合物に比べて、極性溶剤に対する溶解性が優れる。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物を、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤等が極性溶剤に溶解したワニス状のものとする場合、一般的なカリックスアレーン系化合物を硬化剤として用いる場合に比べて、固形分濃度を高くすることができる。かかるワニス状のエポキシ樹脂組成物は、例えば積層板の製造用として有用である。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、熱硬化させて硬化物とすることができる。熱硬化させる際の加熱温度は、180℃〜220℃が好ましい。
【0057】
<積層板>
本発明の積層板は、層を構成する樹脂成分として本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含む以外は、公知の積層板と同様の構成であってよい。
本発明の積層板は、本発明のエポキシ樹脂組成物を用い、公知の方法を利用して製造できる。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物として溶剤を含むワニス状のものを調製し、該エポキシ樹脂組成物を基材に含浸させ、乾燥してプリプレグを得て、該プリプレグを単独で又は複数枚を重ね、必要に応じて片面又は両面にさらに銅箔等の金属箔を重ね、熱プレスする方法が挙げられる。熱プレスにより、乾燥したエポキシ樹脂組成物が硬化し、基材と硬化物とを含む層が形成される。
基材としては、紙、綿、ガラス、炭素繊維等が挙げられる。
【0058】
<半導体封止材>
本発明の半導体封止材は、構成する樹脂成分として本発明のエポキシ樹脂組成物を含む以外は、公知の封止材と同様の構成であってよい。
【0059】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、半導体封止部として本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を含むものを備える以外は、公知の半導体装置と同様の構成であってよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体封止部を形成(半導体を封止)する方法としては、公知の方法、例えばトランスファー成形法、圧縮成形法等、を用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下の各例において「%」は、特に限定のない場合は「質量%」を示す。
以下の各例において、ゲル浸透クロマトグラフィー分析(GPC法による測定)は、GPC測定装置として東ソー社製HLC8120GPC、カラムとしてカラム:TSKgel(登録商標) G3000H+G2000H+G2000Hを用いて行った。水酸基当量は、自動滴定装置(平沼産業社製COM−1700S)を用い、無水酢酸によるアセチル化法で測定した。
13C−核磁気共鳴(NMR)分析は、日本電子社製LA−400を用いて行った。電界脱離質量分析(FD−MS)は、日本電子社製SX−102Aを用いて行った。
【0061】
<実施例1>
レゾルシンとパラアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの反応:
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lのガラス製反応容器に水220.0g、レゾルシン110.1g(1.0mol)、35%塩酸16.5gを仕込み、90℃まで昇温した。そこに、パラアルデヒド19.8g(0.15mol)とn−ブチルアルデヒド32.4g(0.45mol)とを予め混合した混合溶液を6時間かけて滴下し、その後1時間反応を行った。反応中、反応液中に析出物が確認された。次いで、反応液を30%NaOHで中和し、ろ過して析出物を回収した。得られた析出物に対し、水洗浄とろ過とを洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、真空乾燥により水分を除去し、組成物Aを得た。
【0062】
得られた組成物Aについて、GPC測定を行ったところ、組成物Aの標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は675、分散度(Mw/数平均分子量(Mn))は1.028、純度は97%であった。また、組成物Aの水酸基当量は76.0g/eqであった。ここで、純度は、組成物Aの総質量に対する、化合物(1)に相当する化合物の割合であり、以下においても同様である。
また、組成物Aについて、
13C−NMR、FD−MSによる構造解析を実施した。それぞれの結果を以下に示す。また、
図1に、
13C−NMRスペクトルの測定結果を示すチャートを、
図2に、FD−MSスペクトルの測定結果を示すチャートをそれぞれ示す。これらの結果から、組成物Aに含まれる化合物が下記式(1−1)で表される構造を有することが確認された。式(1−1)中の各炭素原子の位置に示した符号a〜jは、
13C−NMRのデータにおける炭素に付した符号に対応するものである 。
13C−NMR(400MHz,acetone−d
6):δ(ppm)=152−154(m,1.0C,aromatic C
a)、124−128(m,1.5C,aromatic C
b,C
c)、102−104(s,0.5C,aromatic C
d)、32−37(d,0.5C,C
e,C
f)、27−29(s,0.25C,C
i)、19−23(d,0.5C,C
g,C
j)、13−15(s,0.25C,C
h)。
FD−MS:545m/z、573m/z、601m/z、629m/z、657m/zの各化合物が示された。
【0063】
【化5】
【0064】
<実施例2>
レゾルシンとプロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの反応:
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lのガラス製反応容器に水220.0g、レゾルシン110.1g(1.0mol)、35%塩酸16.5gを仕込み、90℃まで昇温した。そこに、プロピオンアルデヒド26.1g(0.45mol)とn−ブチルアルデヒド32.4g(0.45mol)とを予め混合した混合溶液を6時間かけて滴下し、その後1時間反応を行った。反応中、反応液中に析出物が確認された。次いで、反応液を30%NaOHで中和し、ろ過して析出物を回収した。得られた析出物に対し、水洗浄とろ過を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、真空乾燥により水分を除去し、組成物Bを得た。
得られた組成物Bについて、実施例1と同様の条件でGPCを行った。その結果、組成物Bの重量平均分子量(Mw)は826、分散度(Mw/Mn)は1.099、純度は91%であった。また、水酸基当量は80.5g/eqであった。
また、組成物Bについて、FD−MSを用いて実施例1と同様の条件で構造解析を実施した。結果を以下に示す。また、
図3に、FD−MSスペクトルの測定結果を示すチャートを示す。この結果から、組成物Bに含まれる化合物が、実施例1と同様に、カリックスアレーン構造を有することが確認された。
FD−MS:601m/z、615m/z、629m/z、643m/z、657m/zの各化合物が示された。
【0065】
<実施例3>
レゾルシンとパラアルデヒドとプロピオンアルデヒドとn−ブチルアルデヒドの反応:
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lのガラス製反応容器に水220.0g、レゾルシン110.1g(1.0mol)、35%塩酸16.5gを仕込み、90℃まで昇温した。そこに、パラアルデヒド13.2g(0.1mol)とプロピオンアルデヒド17.4g(0.3mol)とn−ブチルアルデヒド21.6g(0.3mol)とを予め混合した混合溶液を6時間かけて滴下し、その後1時間反応を行った。反応中、反応液中に析出物が確認された。次いで、反応液を30%NaOHで中和し、ろ過して析出物を回収した。得られた析出物に対し、水洗浄とろ過を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、真空乾燥により水分を除去し、組成物Cを得た。
得られた組成物Cについて実施例1と同様の条件でGPCを行った。その結果、組成物Cの重量平均分子量(Mw)は686、分散度(Mw/Mn)は1.033、純度は97%であった。また、水酸基当量は77.6g/eqであった。
また、組成物Cについて、FD−MSを用いて実施例1と同様の条件で構造解析を実施した。結果を以下に示す。また、
図4に、FD−MSスペクトルの測定結果を示すチャートを示す。この結果から、組成物Cに含まれる化合物が、実施例1と同様に、カリックスアレーン構造を有することが確認された。
FD−MS:545m/z、559m/z、573m/z、587m/z、601m/z、615m/z、629m/z、643m/z、657m/zの各化合物が示された。
【0066】
<比較例1>
レゾルシンとパラアルデヒドとの反応:
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lのガラス製反応容器に水220.0g、レゾルシン110.1g(1.0mol)、35%塩酸16.5gを仕込み、90℃まで昇温した。そこにパラアルデヒド40.0g(0.3mol)を3時間かけて滴下し、その後3時間反応を行った。次いで、反応液を30%NaOHで中和し、ろ過して析出物を回収した。得られた析出物に対し、水洗浄とろ過を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、真空乾燥により水分を除去し、組成物Dを得た。
得られた組成物Dについて実施例1と同様の条件でGPCを行った。その結果、組成物Dの重量平均分子量(Mw)は594、分散度(Mw/Mn)は1.024であった。また、水酸基当量は68.5g/eqであった。
また、組成物Dについて、FD−MSを用いて実施例1と同様の条件で構造解析を実施した。結果を以下に示す。また、
図5に、FD−MSスペクトルの測定結果を示すチャートを示す。この結果から、組成物Dに含まれる化合物が、実施例1と同様に、カリックスアレーン構造を有することが確認された。
FD−MS:545m/zの化合物が示された。
【0067】
<比較例2>
レゾルシンとプロピオンアルデヒドとの反応:
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lのガラス製反応容器に水220.0g、レゾルシン110.1g(1.0mol)、35%塩酸16.5gを仕込み、90℃まで昇温した。そこにプロピオンアルデヒド52.3g(0.9mol)を10時間かけて滴下し、その後3時間反応を行った。次いで、反応液を30%NaOHで中和し、ろ過して析出物を回収した。得られた析出物に対し、水洗浄とろ過を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、真空乾燥により水分を除去し、組成物Eを得た。
得られた組成物Eについて実施例1と同様の条件でGPCを行った。その結果、組成物Eの重量平均分子量(Mw)は786、分散度(Mw/Mn)は1.102であった。また、水酸基当量は74.0g/eqであった。
また、組成物Eについて、FD−MSを用いて実施例1と同様の条件で構造解析を実施した。結果を以下に示す。また、
図6に、FD−MSスペクトルの測定結果を示すチャートを示す。この結果から、組成物Eに含まれる化合物が、実施例1と同様に、カリックスアレーン構造を有することが確認された。
FD−MS:601m/zの化合物が示された。
【0068】
実施例1〜3、比較例1〜2で得られた組成物A〜Eについて、溶剤溶解性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
<溶剤溶解性の評価>
組成物を、表1に示す溶剤に、固形分濃度が30%となるように溶解し、得られた溶液を密閉した容器にて15℃で1ヵ月間静置した。静置後の溶液の状態を目視で観察し、以下の基準で溶剤溶解性を評価した。
○(良好):溶液中に析出物が見られなかった。
×(不良):溶液中に析出物が見られた。
【0069】
【表1】
【0070】
表1中の記号は以下の意味を示す。
ACN:アセトン、MEK:メチルエチルケトン、THF:テトラヒドロフラン、PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、NMP:N−メチル−2−ピロリドン。
【0071】
上記結果に示すとおり、実施例1〜3の組成物は、ACN、MEK、THF、PGME、DMF、NMPのいずれの溶剤に対しても溶解性が良好であった。
一方、アルデヒド類としてパラアルデヒドを単独で用いた比較例1の組成物は、上記のすべての溶剤に対して溶解性が不良であった。アルデヒド類としてプロピオンアルデヒドを単独で用いた比較例2の組成物は、PGME以外のすべての溶剤に対して溶解性が不良であった。
【0072】
<実施例4〜6、比較例3〜4>
[エポキシ樹脂組成物の調製]
表2に示す組成となるように各成分を混合して溶液状のエポキシ樹脂組成物を調製した。
表2中、フェノールノボラック樹脂としては、軟化点120℃のものを用いた。トリフェニルメタン型フェノール樹脂としては、群栄化学工業社製の商品名「TPM−100」(軟化点100℃)を用いた。エポキシ樹脂としては、新日鉄住金化学社製の商品名「YDCN−704」(オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)を用いた。イミダゾールは硬化促進剤であり、和光純薬工業社製の試薬を用いた。
また、エポキシ樹脂及び硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基当量と、硬化剤中の水酸基当量との当量比(エポキシ基当量/水酸基当量)が1となるように設定した。
軟化点は、JIS K 6910:2007に従って測定した。
【0073】
[積層板用成形物の作製]
ガラスクロス(日東紡社製の商品名「WEA7628」)に、プリプレグの全量に対して約40%となる量のエポキシ樹脂組成物を含浸し、風乾してプリプレグを得た。その後、プリプレグを6枚重ね、100℃/15分の条件にて半硬化を行い、真空ヒータープレス装置を用いて130℃、2kN/m
2の条件下で熱プレスを実施し130℃から180℃まで、20kN/m
2の条件下にて10℃/15分毎に昇温し、成形物の作製を行った。得られた成形物に対し、180℃で5時間の後硬化を実施して、厚さ2.0mmの積層板用成形物を得た。
【0074】
得られた積層板用成形物について、ガラス転移温度、貯蔵弾性率、熱分解開始温度、平均線熱膨張係数を以下の方法で測定した。結果を表2に示す。
[ガラス転移温度(Tg)、貯蔵弾性率]
積層板用成形物を幅10.0mm×長さ55.0mmの大きさに裁断してテストピースを作製した。このテストピースについて、ガラス転移温度(℃)、30℃における貯蔵弾性率(MPa)及び260℃における貯蔵弾性率(MPa)をそれぞれ、粘弾性スペクトロメーター(セイコーインスツルーメンツ社製、DMS 110)を用い、10℃/分の昇温速度で30℃〜350℃の範囲で測定した。
[熱分解開始温度]
積層板用成形物について、示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製 TG/DTA6300)により、エアー雰囲気下で熱重量減量を測定し、熱分解開始温度(℃)を求めた。
[平均線熱膨張係数]
積層板用成形物を幅2.0mm×長さ2.0mmの大きさに裁断して試料を作製した。この試料について、熱機械的分析装置(セイコーインスツルーメンツ社製、TMA 110)を用い、10℃/分の昇温速度で30℃から350℃まで昇温し、40℃〜90℃及び160℃〜200℃それぞれの温度範囲における平均線熱膨張係数を測定した。
【0075】
【表2】
【0076】
上記結果に示すとおり、実施例4〜6のエポキシ樹脂組成物から得られた積層板用成形物は、比較例3〜4のエポキシ樹脂組成物から得られた積層板用成形物に比べて、ガラス転移温度が高く、熱分解開始温度が高く、平均線熱膨張係数が低く、貯蔵弾性率が高いものであった。