(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863686
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ウエハ照明ユニット用スペーサー変位装置、及びウエハ照明ユニット
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-119889(P2016-119889)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-27028(P2017-27028A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】2015170
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】591004412
【氏名又は名称】ズス・マイクロテック・リソグラフィ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Suss MicroTec Lithography GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・コンラディ
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌス・シュルツ
【審査官】
今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−227192(JP,A)
【文献】
特開2013−205764(JP,A)
【文献】
実開昭60−049629(JP,U)
【文献】
特開昭52−143774(JP,A)
【文献】
特開昭52−102684(JP,A)
【文献】
米国特許第03685117(US,A)
【文献】
特開平06−163345(JP,A)
【文献】
特開2012−063514(JP,A)
【文献】
特開平03−297125(JP,A)
【文献】
特表2013−519542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、21/67−21/683
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィ工程において、ウエハに塗布されたフォトレジストを、マスクを通して照明するために使用されるウエハ照明ユニット(10)用のスペーサー変位装置(30)であって、
アクチュエーター(34)と、
上記マスクを位置決めするために使用され、上記アクチュエーター(34)によって作用位置と非動作位置との間で変位可能であり、かつ非動作位置から作用位置へ変位可能なスペーサー(32)と、ここで、上記作用位置においてスペーサーは、上記マスクを位置決めするために使用可能であり、上記非動作位置においてスペーサーは、上記マスクを位置決めするために使用不可である、
上記アクチュエーター(34)につながれた力伝達エレメント(48)と、を備え、
上記力伝達エレメント(48)がワイヤーで構成され、旋回エレメント(44)に接続されており、
上記スペーサー(32)は、ワイヤーで構成され旋回エレメント(44)に接続される保持アーム(42)に取り付けられている、
ことを特徴とするスペーサー変位装置。
【請求項2】
上記ワイヤー(48)は、上記旋回エレメント(44)の開口に掛けられていることを特徴とする、請求項1に記載のスペーサー変位装置。
【請求項3】
上記保持アーム(32)は、高さ調節可能な状態で上記旋回エレメント(42)に取り付け可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスペーサー変位装置。
【請求項4】
上記旋回エレメント(42)は、上記保持アーム(42)が異なる高さで配置可能である複数の開口(80)を設けていることを特徴とする、請求項3に記載のスペーサー変位装置。
【請求項5】
上記旋回エレメント(42)は、上記保持アーム(42)を異なる高さに固定可能な窪み(90)を設けていることを特徴とする、請求項3に記載のスペーサー変位装置。
【請求項6】
上記保持アーム(42)を上記旋回エレメント(42)の適所に留めることを可能にする固定ネジ(82)を設けたことを特徴とする、請求項4又は5に記載のスペーサー変位装置。
【請求項7】
上記旋回エレメント(44)と協働し、上記作用位置において上記スペーサーの配置を較正する較正エレメント(54)を設けたことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のスペーサー変位装置。
【請求項8】
上記較正エレメント(54)は、止め面(56)と協働することを特徴とする、請求項7に記載のスペーサー変位装置。
【請求項9】
上記アクチュエーター(34)は、上記ワイヤー(48)がつながれたピストン(36)を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のスペーサー変位装置。
【請求項10】
上記ピストン(36)は、加圧媒体によって負荷をかけることができる圧力チャンバの範囲を定めるものであることを特徴とする、請求項9に記載のスペーサー変位装置。
【請求項11】
圧力チャンバの範囲を定め、上記ピストン(36)の初期位置を較正可能な調節エレメント(39)を設けたことを特徴とする、請求項9又は10に記載のスペーサー変位装置。
【請求項12】
上記スペーサーが非動作位置にある初期位置に上記ピストンを付勢するリターンスプリング(50)を設けたことを特徴とする、請求項9から11のいずれかに記載のスペーサー変位装置。
【請求項13】
上記リターンスプリング(50)は、上記ピストン(36)に作用するものであることを特徴とする、請求項12に記載のスペーサー変位装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のスペーサー変位装置(30)を備えたウエハ照明ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーターと、アクチュエーターによって作用位置と非動作位置との間で変位可能なスペーサーと、アクチュエーターにつながれた力伝達エレメントとを備えた、ウエハ照明ユニット用のスペーサー変位装置に関する。本発明はまた、このタイプのスペーサー変位装置を備えたウエハ照明ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ工程において、ウエハ照明ユニットは、ウエハに塗布されたフォトレジストを照らすために使用することができる。この照明は、マスクを通して行われ、マスクの影に従いフォトレジストの特定領域が照らされないように行われる。照明の機能として、フォトレジストの物理的性質は、後のステップでその一部分が除去可能であるように変化し、その結果、マスクの(ポジあるいはネガの)フォトレジスト・イメージがウエハの表面に残る。
【0003】
後のステップにおいて、ウエハは三次元構造を生産するために続いて処理することができる。このようにして、例えば、半導体チップあるいはMEMS(微小電気機械システム)が生産可能である。
【0004】
フォトレジストの正確な照明のために、ウエハから正確に規定された距離にマスクが位置決めされることは重要である。この目的のために、マスクを位置決めするようにスペーサーが必要とされるとき、スペーサー変位装置によって非動作位置から作用位置へ変位される複数のスペーサーが使用されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1及び
図2は、既知のウエハ照明ユニット10を示し、ここで使用されるスペーサー変位装置と共に示されている。合計3つのスペーサー変位装置12、14、16がウエハ照明ユニットの基体11に取り付けられている。これらの各々は、旋回アーム20があてがわれたアクチュエーター18を含む。それぞれにおいて、スペーサー、例えばスペーサーボール(「プロキシミティボール」)、ディスク、ローラーなど、は、旋回アーム20の自由端、旋回軸から遠い、に取り付けられている。
【0006】
図1に示す非動作位置から
図2に示す作用位置へ旋回アーム20を変位させるために、各アクチュエーター18は、歯車セグメント22に作用する歯付きロッドを備え、歯車セグメント22は、それぞれの旋回アーム20の旋回軸と同心で各旋回アーム20に取り付けられている。歯付きロッドがアクチュエーター18の内部での並進運動において変位するとき、これは旋回アーム20の旋回運動をもたらす。
【0007】
既知の構造は、比較的複雑である。
【0008】
したがって発明の目的は、より単純な構造で、より信頼できて動作するスペーサー変位装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、上述のタイプのスペーサー変位装置において、発明は、力伝達エレメントがワイヤーから構成されることを提供する。このタイプの力伝達エレメントは、入り組んだ複雑な伝達を必要とせずにアクチュエーターの変位動作をスペーサーへ直接に伝達することを可能にする。歯付きロッドが省略される結果として、フォトリソグラフィ工程あるいはスペーサー調節ユニットの生産において使用される材料の結果としての、歯付きロッドの詰まり(jamming)のリスクはもはや存在しない。
【0010】
好ましくは、ワイヤーは、定方向のワイヤー(directed wire)であり、言い換えるとワイヤーは、無負荷のとき曲率を有さず真っ直ぐに延在する。このことは、高精度を達成することを可能にする。
【0011】
発明の1つの実施形態では、スペーサーは、旋回エレメントに取り付けられる。これは、スペーサーが旋回エレメントの旋回軸から非常に大きな距離で取り付けられている場合には、アクチュエーターの比較的小さなストロークをスペーサーの比較的大きな調節距離に変換することを可能にする。
【0012】
好ましくは、この場合、旋回エレメントは、中間要素なしで、アクチュエーターのストロークを旋回エレメントの旋回運動に変換するようにワイヤーにつながれる。
【0013】
この場合、ワイヤーは、信頼できるカップリングが単純な組み立てで達成されるような方法において旋回エレメントの開口に掛けられてもよい。
【0014】
好ましくは、スペーサーは、旋回エレメントに接続される保持アームに取り付けられる。その結果、異なる保持アームが同じ旋回エレメントに取り付け可能であるようにモジュール構造は設けられる。
【0015】
発明の1つの実施形態では、保持アームはワイヤーから構成される。これは、コスト効率の良い構造に帰着する。
【0016】
スペーサーは、ワイヤーに直接取り付けられてもよい。これは、さらに低い製造コストにつながる。特に、スペーサーは、ワイヤーに通され接着可能である。これは、フォトリソグラフィ工程で使用される腐食性化学物質(aggressive chemicals)用の接着部位での小さなアクションエリア(action area)に帰着する。
【0017】
単純な方法で異なる応用例にスペーサー変位装置を適応可能なように、保持アームは、好ましくは高さ調節可能な方法で旋回エレメントに取り付けられている。
【0018】
この目的のために、1つの実施形態では、保持アームが配置可能な複数の開口が異なる高さで旋回エレメントに設けられてもよい。開口は、すべての位置において保持アームの信頼できる案内を保証する。
【0019】
あるいはまた、旋回エレメントは、保持アームが異なる高さに固定可能な凹みを設けてもよい。その結果、保持アームの高さは、(ほぼ)連続的に調節することができる。
【0020】
旋回エレメントにおいて保持アームを確実に固定可能なように、一方、もし要求されれば単純な方法でそれを解放しかつ異なる位置に再び装着可能なように、旋回エレメントにおける適所に保持アームを留めることができる固定ネジが好ましくは設けられる。
【0021】
発明の好ましい実施形態において、止め面を備えた較正エレメントが設けられる。これは、作用位置においてスペーサーの配置を直接較正することを可能にする。
【0022】
この場合、較正エレメントが止め面と協働するということが提供されてもよい。このことは、間に置かれる部品が必要ではないので、より単純な組み立て及び高精度に帰着する。
【0023】
代替の実施形態では、アクチュエーターとスペーサーとの間に配置され、ワイヤーに作用する偏向デバイスが設けられる。この実施形態では、間に置かれた連結要素が必要なく、動作主体(actor)のストロークは、スペーサーの対応するストロークに直接変換される。
【0024】
発明の1つの実施形態では、偏向デバイスは、複数の偏向ローラを備える。これは、ほとんど摩擦なくワイヤーをそらす、つまり偏向することを可能にする。
【0025】
代わりの実施形態では、偏向デバイスは案内ダクトを備える。この変形は、より単純な組み立てとなることで区別される。
【0026】
発明の1つの実施形態では、アクチュエーターは、ワイヤーが連結されるピストンを備える。その結果、ピストンのストロークは、ワイヤーのストロークに直接変換される。
【0027】
ピストンは、加圧媒体によって負荷がかけられる圧力チャンバの範囲を定める。その結果、ピストンは、圧力チャンバに例えば真空あるいは圧縮空気を適用することにより、単純な方法で調節することができる。
【0028】
原理上は、ピストンが電磁的に調節されることはさらに考えられる。
【0029】
好ましくは、圧力チャンバの範囲を定め、ピストンの初期位置を較正可能にする調節エレメントが設けられる。その結果として、非動作位置においてスペーサーの位置は正確に較正することができる。
【0030】
発明の1つの実施形態において、リターンスプリングが設けられる。これは、アクチュエーターがもはや動作しないとき、スペーサーが自動的に初期位置に戻されることを保証する。
【0031】
リターンスプリングは、特にピストンに作用してもよい。これは、低摩擦でのコンパクトな構造に帰着する。
【0032】
発明はまた、このタイプのスペーサー変位装置を備えたウエハ照明ユニットに関する。結果として生じる利点については、上の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、従来技術によるスペーサー変位装置を備えたウエハ照明ユニットを示し、スペーサーが非動作位置にある状態を示している。
【
図2】
図2は、
図1のウエハ照明ユニットを示し、スペーサーが作用位置にある状態を示している。
【
図3】発明の第1実施形態によるスペーサー変位装置の部分断面図であり、スペーサーが非動作位置にある状態を示している。
【
図4】
図4は、
図3のスペーサー変位装置を示し、スペーサーが作用位置にある状態を示している。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例によるスペーサー変位装置の部分的な平面図であり、スペーサーが非動作位置にある状態を示している。
【
図6】
図6は、
図5のスペーサー変位装置を示し、スペーサーが作用位置にある状態を示している。
【
図7】
図7は、
図5のスペーサー変位装置における異なる断面での平面図を示す。
【
図11】
図11は、スペーサーが非動作位置にある状態で
図5に示すスペーサー変位装置の変形例である。
【
図12】
図12は、スペーサー用の中央位置にある保持アームを備えた
図5から
図11によるスペーサー変位装置用の調節エレメントの斜視図である。
【
図16】
図16は、別の変形構成における調節エレメントの斜視図であり、保持アームは下部位置に取り付けられている。
【
図18】
図18は、保持アームが中央位置にある状態において、
図16の調節エレメントの斜視図である。
【
図21】
図21は、発明の第2実施形態によるスペーサー変位装置の斜視図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態の変形例におけるスペーサー変位装置である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、発明は、添付図面に示される2つの実施形態によって開示される。
図3は、スペーサー32が
図3に示す非動作位置から
図4に示す作用位置へ変位することができるスペーサー変位装置30を示す。
【0035】
この場合、スペーサー32は、フォトリソグラフィ工程にて使用されるようなウエハ照明ユニットにおけるウエハに関して規定の距離にマスクを配置するのに使用可能なボールである。
【0036】
スペーサー変位装置30は、アクチュエーター34を備え、スペーサー32はアクチュエーター34によって変位することができる。
【0037】
図3及び
図4に示す実施形態において、アクチュエーター34は、シリンダー38内で調節可能に配置されるピストン36を含む。シリンダー38は、アクチュエーター34の基体40に設けられる。
【0038】
スペーサー32は、旋回エレメント44に順に取り付けられる保持アーム42に取り付けられている。旋回エレメント44は、基体40における軸46の周りに旋回可能に配置されている。
【0039】
この場合、保持アーム42は、例えば金属、特にワイヤーから構成することができる、長くて真っ直ぐなロッドのように構成される。それは、旋回エレメント4が回転するときに調節されるような方法で、旋回エレメント44に接続される。保持アーム42は、例えば、旋回エレメント44の凹部へ留められてもよい。
【0040】
旋回エレメント44は、ワイヤーで構成される力伝達エレメント48によってピストン36に接続される。示された実施形態では、真っ直ぐに延在する定方向のワイヤーが使用される。
【0041】
力伝達エレメント48は、旋回エレメント44に旋回可能に接続される。示された実施形態では、力伝達エレメント48の、ある角度に設定された端部分は、旋回エレメント44の開口に掛けられる。よってこの接続は、自転車のスポークのわん曲した端部(elbowed end)がハブの開口に収容されるような自転車のスポークとハブとの間の接続に類似する。
【0042】
旋回エレメント44から遠い、力伝達エレメント48の端部分は、耐引張及び耐圧縮の方法でピストン36に接続される。ピストン36は、例えば、力伝達エレメント48が差し込まれる中央の開口を有してもよい。
【0043】
シリンダー38において、ピストン36の、旋回エレメントから遠い側方にリターンスプリング50が配置され、リターンスプリング50は、スペーサー32が非動作位置にある
図3に示す初期位置にピストン36を付勢する。
【0044】
シリンダー38に形成されピストン36によって一端が密閉される圧力チャンバに制御された方法で圧力が印加可能なように、シリンダーは、圧力媒体ターミナル52に接続される。
【0045】
図3に示す非動作位置から
図4に示す作用位置へスペーサー32を変位させるために、シリンダー内の圧力チャンバは、圧力媒体ターミナル52を介して真空に接続される。その結果、ピストン36は、
図3及び
図4に対してリターンスプリング50の動作とは反対方向に上方へ変位される。このストロークは、力伝達エレメント48を介して旋回エレメント44に伝達され、したがって(スペーサー32と共に)時計回りへの旋回運動を実行する。
【0046】
再び非動作位置にスペーサー32を戻すために、シリンダー38内部の圧力チャンバは、圧力媒体ターミナル52を介して通気される。このことは、リターンスプリング50の動作の下、ピストン36が初期位置へ戻り、よって旋回エレメント44が反時計回りに旋回するという結果を有する。
【0047】
力伝達エレメント48によって、ピストン36のストロークは、旋回エレメント44へ摩擦なしに直接かつ事実上伝達される。旋回エレメント44が非動作位置と作用位置との間で調節されるとき、旋回エレメント44と力伝達エレメント48との間の接続ポイントによって起こる僅かな横方向の撓みは、ピストンが破壊的な傾動モーメントで付勢されることなく、力伝達エレメント本来の弾性の結果として力伝達エレメントによって受け取ることができる。
【0048】
図5から
図10は、スペーサー変位装置の第1実施形態における変形例を示している。同じ参照符号が第1実施形態から既知の部品用に使用されており、この点に関して上の記述が参照される。
【0049】
第1実施形態と、
図5から
図10の変形構成との間の主な相違点は、変形構成では、ピストンが真空の使用ではなく圧縮空気(あるいは圧力下の気体)を使用して変位するという点である。
【0050】
図5及び
図6に見ることができるように、ピストン36及びロックエレメント39は、シリンダー38内に配置される。リターンスプリング50は、圧力ターミナル52に面するピストン36の側方、換言するとピストン36と旋回エレメント44との間、に配置される。
【0051】
圧縮空気が圧力ターミナル52に供給されたとき、スペーサー32が非動作位置から作用位置へ移されるように、ピストンは、
図5に示す初期位置から
図6に示す作用位置へ移動される。
【0052】
非動作位置におけるスペーサー32の配置は、シリンダー内にロックエレメントがより大きい範囲あるいはより小さい範囲でふさがれることで較正することができる。この目的のために、ロックエレメント39は、基体40におけるシリンダー38の雌ねじに係合する雄ねじを設けてもよい。
【0053】
作用位置におけるスペーサー32の配置は、旋回エレメント44と協働することができる較正エレメント54(
図7及び
図8を参照)を使用して較正することができる。
【0054】
示された実施形態では、止め面56が旋回エレメント44に設けられ、スペーサー32、よって旋回エレメント44が作用位置(
図8を参照)にあるとき、止め面56は較正エレメント54にぶつかる。
【0055】
ロックエレメント39に類似の方法で、較正エレメント54は、基体40の雌ねじに係合する雄ねじを設けることができる。
【0056】
図8で見ることができるように、較正エレメント54によって、スペーサー32は、非動作位置と作用位置との間で正確に90°にて配置されることが保証されるだけでなく、他の旋回角度にも設定可能である。この場合、較正エレメント54は、スペーサー32の旋回角度が
図7及び
図8に示される変形例におけるものよりも小さいように、基体40内へさらにねじ込まれる。
【0057】
図10では、旋回エレメント44が円筒状に形成され、その周辺面が基体40のシリンダー凹部57へ挿入されることを見ることができる。止め面56は、特別の深さによって旋回エレメントへ延在する溝58の底として形成される。保持アーム42は、旋回エレメント44に設けられた凹部59内へ留められる。
【0058】
図11は、スペーサー変位装置のさらなる変形例を示す。
図5から
図10に示される変形例との相違点は、凹部43を設けたカバーエレメント41が基体40に置かれることである。
【0059】
非常に長い保持アームにスペーサーが取り付けられている場合、スペーサーがスペーサー変位装置30の外へ自由に突出し保護されないものよりも、カバーエレメント41に「置かれる」ように、カバーエレメント41は、基体40の拡張を形成する。この場合、それ及びスペーサー32は、機械負荷及び任意の汚れに対して非常に良好に保護される。
【0060】
カバーエレメント41は、ねじ45によって基体40に解放可能に固定される。このように、調節デバイスは、構成状況にモジュール式に適用可能である。
【0061】
異なる構成及び応用分野を考慮して、保持アーム42及び、よってスペーサー32を異なる高さに調節可能に準備することは望ましい。この目的のために旋回エレメント44は、単純な方法で使用することができる。
【0062】
図12及び
図13は、保持アーム42の高さを調節するのに適した旋回エレメント44の構成を示す。旋回エレメント44は、旋回エレメント44の円筒状の外面から内側へ延在する複数の開口80を設けている。
【0063】
示された実施形態では、開口80は半径方向に延在する。しかしながら、開口80は半径方向に斜めに延在することも可能である。
【0064】
この場合、合計で4つの開口80が使用されており、それはすべて互いの上に配列されている。その結果、保持アーム42をそれぞれ所望の高さに配置することができる(比較すると、一方の
図12及び
図13では、保持アーム42は2つの中央位置のうちの1つに配置され、他方の
図14及び
図15では保持アームは下部位置に存在する)。
【0065】
それぞれの選択された開口80に保持アーム42を固定するために、固定ネジ82が使用されてもよく、固定ネジは保持アームが確実に適所に固定される程度まで留め穴84へねじ込まれる。必要に応じて、保持アーム42が最下位置にない場合には、スペーサー86(
図13を参照)が真下に置かれてもよい。
【0066】
図12及び
図14において、窪み90も見ることができ、窪み90には2つの通路92が開いている。これは、例えば、通路92の窪み90との交点に設けられた凹部に力伝達エレメントのボールヘッドを留めることによって、力伝達エレメント48が旋回エレメント44に連結される所である。
【0067】
図16及び
図17は、
図12から
図15における実施形態の場合のような段階状ではなく、保持アームの高さを(事実上)連続的に調節することができる旋回エレメント44の変形例を示す。
【0068】
この目的のために、受入れダクト94が旋回エレメントに設けられ、かつ開口80の全体と同じ配向で旋回エレメントを通り延在する。示された実施形態では、受入れダクトは、旋回エレメントの上面から旋回エレメントを直径方向に延在し旋回エレメントの底面の真上で終端する凹みとして構成されている。
【0069】
保持アーム42は、固定ネジ82によって固定される受入れダクト94に挿入される。固定ネジは、受入れダクト94と交差する留め穴84に設けたねじと係合する。
【0070】
保持アーム42が最下位置に固定される場合、固定ネジ82は、受入れダクト94の底に対して保持アームを留める(
図16及び
図17を参照)。
【0071】
保持アームが高位置(
図18及び
図19を参照)に固定される場合には、留めダクトの底に対して突っ張りかつ保持アーム42がそれに対して続いて位置決めされる高さ調節部分96が留めダクト及び/又は留め穴に置かれる。よって固定ネジ82は、高さ調節部分の上面に対して保持アームを留める。
【0072】
図20は、高さ調節部分96の構成を示す。これはシリンダーであり、その外径は、留め穴84の内径にほぼ相当する。その上面において、高さ調節部分は、保持アームが平らな状態で受け入れられるように半円筒状のへこみ98を設けている。
【0073】
保持アームが非常に細かなステップにおいてそれぞれ所望の高さに装着可能な方法において、高さ調節部分96は、多くの異なる高さに持ち上げることができる。
【0074】
図21及び
図22は、第2実施形態を示す。第1実施形態に示した部品に関して同じ参照数字が使用されており、この点に関して上の記述が参照される。
【0075】
第1実施形態と第2実施形態との間の差異は、第2実施形態では、スペーサー32が回転の代わりに並進運動にて変位される点である。
【0076】
第2実施形態において、スペーサー32は、力伝達エレメント48に取り付けられている。この場合もまた、力伝達エレメント48は、定方向のワイヤーによって形成される。力伝達エレメントは偏向デバイス60を介してアクチュエーター34のピストン36から案内される。偏向デバイス60は、ピストン36のストロークの方向から外れた方向において非動作位置と作用位置との間でスペーサー32を変位することを可能にする。これは、利用可能な構成スペースの制限の観点において好都合になり得る。
【0077】
示された実施形態では、偏向デバイス60は、力伝達エレメント48を90°そらす複数の偏向ローラ62から構成される。偏向ローラ62は、力伝達エレメント48が塑性変形しない十分に大きな曲率半径で案内されるような方法で配列される。
【0078】
偏向デバイス60とスペーサー32との間にワイヤーガイド64がさらに設けられ、これは、スペーサー変位装置30の出口部分で力伝達エレメント48をさらに安定させる。
【0079】
偏向ローラ62の代わりに、ボーデンケーブルに類似したワイヤーガイドも所望の方法でワイヤーを案内し偏向するように使用されてもよい。ボーデンケーシングのカウンターベアリングが調節可能な場合には、スペーサー32の位置は、単純な方法で調節方向において較正することができる。
【0080】
図23は、第2実施形態の変形例を示す。第2実施形態に示した部品に関して同じ参照数字が使用されており、この点に関して上の記述が参照される。
【0081】
図23に示される変形例と、
図21及び
図22の実施形態との間の主な差異は、
図23では、偏向デバイス60が偏向ローラを有しておらず、その代りに、基体40に設けた曲がったダクト70によって形成されるという点である。
【0082】
その結果、力伝達エレメント48は、ピストン36の変位方向から外れてスペーサー32用の所望の変位方向へ偏向される。
【0083】
さらなる相違点は、
図23のスペーサー変位装置では、スペーサー32が非動作位置では基体40における凹部72に「置かれる」という力伝達エレメントが十分に短く構成されるということである。これは、力伝達エレメント48が同様により短くなり、ワイヤーガイド64が省略される場合には、原理的に
図21及び
図22に示す実施形態においても可能である。