特許第6863698号(P6863698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863698
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】圧縮気体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   F17C11/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-180630(P2016-180630)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-44630(P2018-44630A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年3月8日
【審判番号】不服2020-9819(P2020-9819/J1)
【審判請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 安彦
(72)【発明者】
【氏名】波多江 徹
(72)【発明者】
【氏名】大和久 崇
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 勲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 建信
【合議体】
【審判長】 井上 茂夫
【審判官】 間中 耕治
【審判官】 村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0090226(US,A1)
【文献】 特開2004−084540(JP,A)
【文献】 特開2012−154252(JP,A)
【文献】 特開2015−152091(JP,A)
【文献】 特開平11−343986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮して圧縮気体を生成する複数の圧縮機と、
圧縮気体を貯蔵する容器本体と、前記容器本体の内部に設けられ、前記容器本体の内部の圧縮気体を吸着する吸着材と、を備える圧縮気体貯蔵容器と、
消費機器による圧縮気体の需要量を検出する圧縮気体需要量検出部と、
前記圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量を検出する圧縮気体残量検出部と、
前記圧縮気体需要量検出部の検出結果に基づいて、前記圧縮機及び前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、前記圧縮機が停止して前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止されると共に稼働している前記圧縮機のみから前記消費機器に圧縮空気が供給される状態と、前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵される状態と、に切り替える制御部と、
を備える圧縮気体供給システム。
【請求項2】
前記容器本体から吐出される圧縮気体について予め規定された圧力の最低値を最低利用圧力とした場合に、
前記吸着材は、前記容器本体の内部の圧縮気体の圧力が前記最低利用圧力以上で前記圧縮気体の吸着量が急増する材料で形成されている、
請求項1に記載の圧縮気体供給システム。
【請求項3】
前記圧縮気体は、圧縮空気であり、
前記吸着材を形成する材料は、多孔質材、ゼオライト、及び、金属錯体のいずれかである、
請求項2に記載の圧縮気体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮気体を貯蔵する圧縮気体貯蔵容器を備えた圧縮気体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体を圧縮して圧縮気体を生成する複数の圧縮機と、複数の圧縮機にて生成された圧縮気体を貯蔵する圧縮気体貯蔵容器とを備える圧縮気体供給システムがある(例えば、特許文献1参照)。この圧縮気体供給システムは、圧縮気体貯蔵容器を備えるので、圧縮気体の需要量に瞬間的な変動がある場合でも、圧縮気体貯蔵容器から圧縮気体を供給することにより、圧縮気体の需要量の瞬間的な変動に対応可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−084540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧縮空気の需要量を常時満たす供給量を確保できる圧縮機を設置する場合、圧縮機の負荷率(定格供給量に対する実供給量)は低くなる。圧縮機は定格(負荷率100%)時に最も圧縮空気の製造効率がよいことから、低い負荷率で圧縮機を運転することは、製造効率が低くなる。また、大量の圧縮気体を必要とする需要家の場合、圧縮気体貯蔵容器を大きくする必要がある。圧縮気体貯蔵容器を大きくすると、圧縮気体供給システムが大型化する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、圧縮空気の製造効率の改善および圧縮機の削減、圧縮気体貯蔵容器の小型化、ひいては、この圧縮気体貯蔵容器を備えた圧縮気体供給システムの小型化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の圧縮気体供給システムは、気体を圧縮して圧縮気体を生成する複数の圧縮機と、圧縮気体を貯蔵する容器本体と、前記容器本体の内部に設けられ、前記容器本体の内部の圧縮気体を吸着する吸着材と、を備える圧縮気体貯蔵容器と、消費機器による圧縮気体の需要量を検出する圧縮気体需要量検出部と、前記圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量を検出する圧縮気体残量検出部と、前記圧縮気体需要量検出部の検出結果に基づいて、前記圧縮機及び前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、前記圧縮機が停止して前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止されると共に稼働している前記圧縮機のみから前記消費機器に圧縮空気が供給される状態と、前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵される状態と、に切り替える制御部と、を備える。
【0007】
この圧縮気体供給システムによれば、圧縮気体貯蔵容器の容器本体の内部には、吸着材が設けられており、この吸着材は、容器本体の内部の圧縮気体を吸着する。つまり、吸着材は、材料表面への吸着や分子や金属錯体の結晶構造の空隙への取り込みなどによる安定化するエネルギーの分だけ気体分子を効率的に貯蔵できる。したがって、吸着材が圧縮気体を吸着することにより、圧縮気体の貯蔵効率(充填密度)を向上させることができるので、容器本体の容積を小さくすることができ、ひいては、圧縮気体貯蔵容器を小型化することができる。圧縮気体貯蔵容器を小型化できる分、システム全体を小型化することができる。
また、この圧縮気体供給システムによれば、消費機器による圧縮気体の需要量と、圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量とに応じて、圧縮機及び圧縮気体貯蔵容器の少なくとも一方から消費機器への圧縮気体の供給と、圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の貯蔵とを切り替えるので、消費機器に安定して圧縮気体を供給することができる。
【0008】
なお、請求項2に記載のように、請求項1に記載の圧縮気体供給システムにおいて、前記容器本体から吐出される圧縮気体について予め規定された圧力の最低値を最低利用圧力とした場合に、前記吸着材は、前記容器本体の内部の圧縮気体の圧力が前記最低利用圧力以上で前記圧縮気体の吸着量が急増する材料で形成されていても良い。
【0009】
この場合の増加率の急増とは、圧力差をΔP(=P-Pmin)、吸着量の差をΔN(=N-Nmin)、容器の内容積をV、気体定数をR、温度T(等温)とした場合、ΔN/ΔP>V/RTとなるように増加率が増加することである。
【0010】
この圧縮気体供給システムによれば、吸着材は、容器本体の内部の圧縮気体の圧力が最低利用圧力以上で圧縮気体の吸着量が急増する材料で形成されている。したがって、容器本体に最底利用圧力以上で圧縮気体を貯蔵することにより、容器本体の内部の圧縮気体の貯蔵効率(充填密度)をより一層向上させることができる。これにより、圧縮気体貯蔵容器をより一層小型化することができる。
【0011】
また、請求項3に記載のように、請求項2に記載の圧縮気体供給システムにおいて、前記圧縮気体は、圧縮空気であり、前記吸着材を形成する材料は、多孔質材、ゼオライト、及び、金属錯体のいずれかでも良い。
【0012】
この圧縮気体供給システムによれば、圧縮された空気を吸着する吸着材の形成材料は、多孔質材、ゼオライト、及び、金属錯体のいずれかである。したがって、容器本体の内部の圧縮気体の圧力が最低利用圧力以上で圧縮気体の吸着量を急増させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、本発明によれば、圧縮気体貯蔵容器の小型化、ひいては、この圧縮気体貯蔵容器を備えた圧縮気体供給システムの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る圧縮気体供給システムの全体構成を示すブロック図である。
図2図1に示される圧縮気体貯蔵容器の具体的な構成を示す縦断面図である。
図3図2に示される吸着材の特性として、圧縮気体の圧力と吸着材の吸着量との関係を示すグラフである。
図4】各種ガスの吸着等温線を示す図である。
図5図1に示される制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る圧縮気体供給システムの動作の一例として、時間と圧縮気体の需要量及び圧縮機の台数との関係を示すグラフである。
図7】比較例に係る圧縮気体供給システムの動作の一例として、時間と圧縮気体の需要量及び圧縮機の台数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
図1に示される本発明の一実施形態に係る圧縮気体供給システム10は、複数の消費機器100に圧縮気体を供給するためのものであり、複数の圧縮機12と、複数の圧縮気体貯蔵容器14と、圧縮気体需要量検出部16と、圧縮気体残量検出部18と、制御部20とを主要な構成として備えている。
【0021】
複数の圧縮機12は、互いに同一の構成である。各圧縮機12は、気体を圧縮して圧縮気体を生成する。本実施形態において、圧縮気体は、一例として、空気である。複数の圧縮機12の個数は、任意に設定可能である。本実施形態では、一例として、複数の圧縮機12の個数は、複数の消費機器100と同数である。各圧縮機12と消費機器100とは、圧縮気体供給配管22を介して接続されている。複数の圧縮気体供給配管22は、第一連結配管24によって連結されており、これにより、複数の圧縮機12は、複数の消費機器100に対して並列に接続されている。
【0022】
複数の圧縮気体貯蔵容器14は、互いに同一の構成である。圧縮気体貯蔵容器14の個数は、任意に設定可能である。第一連結配管24には、容器側上流配管26の上流端が接続されており、この容器側上流配管26の下流端には、複数の入口側分岐路28が形成されている。各入口側分岐路28は、複数の圧縮気体貯蔵容器14の入口に接続されている。複数の圧縮気体貯蔵容器14の出口には、容器側下流配管30の上流端に形成された複数の出口側分岐路32が接続されており、容器側下流配管30の下流端は、第二連結配管34に接続されている。この第二連結配管34は、複数の圧縮気体供給配管22を連結しており、これにより、複数の圧縮気体貯蔵容器14は、複数の消費機器100に対して並列に接続されている。
【0023】
複数の圧縮気体供給配管22と第一連結配管24との連結部には、三方弁36がそれぞれ設けられている。三方弁36は、圧縮機12から消費機器100へ圧縮気体を流通させる状態と、圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14へ圧縮気体を流通させる状態とに切替可能となっている。また、複数の入口側分岐路28には、入口側開閉弁38が設けられ、複数の出口側分岐路32には、出口側開閉弁40が設けられている。また、複数の消費機器100の各々と複数の圧縮機12の各々とは、圧縮気体再利用配管42によって接続されており、消費機器100で未消費の圧縮気体は、圧縮気体再利用配管42を通じて圧縮機12に戻されるようになっている。
【0024】
図2に示されるように、圧縮気体貯蔵容器14は、より具体的には、圧縮気体を貯蔵する容器本体52と、この容器本体52の内部に設けられた吸着材54とを有する。容器本体52の内部には、容器本体52の上下方向に離間する一対の仕切板56が設けられており、吸着材54は、一対の仕切板56の間に収容されている。一対の仕切板56は、例えば多数の孔を有する等により圧縮気体が透過可能な構成になっている。容器本体52は、吸着材54による吸着熱を外部と容易に熱交換できるように金属製であることが望ましい。なお、容器本体52は、軽量化のためにプラスチック製でも良い。容器本体52の上端及び下端には、入口管58と出口管60がそれぞれ設けられている。この入口管58及び出口管60は、圧縮気体貯蔵容器14の入口及び出口を形成している。
【0025】
吸着材54は、入口管58から出口管60へ圧縮気体が通過するように多数の孔や空間等を有する。この吸着材54は、容器本体52の内部の圧縮気体を吸着して圧縮気体の体積を低減させる機能を有する。この吸着材54は、圧縮気体の圧力が所定の圧力以上で圧縮気体の吸着量が急増する材料で形成される。この場合の増加率の急増とは、圧力差をΔP(=P-Pmin)、吸着量の差をΔN(=N-Nmin)、容器の内容積をV、気体定数をR、温度T(等温)とした場合、ΔN/ΔP>V/RTとなるように増加率が増加することである。
【0026】
図3には、このような吸着材54の特性として、圧縮気体の圧力と吸着材54の吸着量との関係が示されている。図3において、圧力aは、圧縮気体貯蔵容器14の入口での圧力であり、圧力bは、圧縮気体貯蔵容器14の出口での圧力である。図3に示されるように、吸着材54は、圧力b以上で圧縮気体の吸着量が急増する。圧縮気体貯蔵容器14の出口での圧力bは、容器本体52から吐出される圧縮気体について予め規定された圧力の最低値、すなわち最低利用圧力に設定される。圧力bは、圧縮気体貯蔵容器14等の構造や運転状況等の条件によって適宜設定されるものであり、また、吸着材54による圧縮気体の吸着量の急増率は、吸着材54の種類や特性等によって適宜決まるものである。
【0027】
このような圧縮気体の吸着量が急増する材料としては、例えば、多孔質材(シリカ、シリカゲル、アルミナ、活性炭など)、ゼオライト、金属錯体などが好適に使用される。図4には、各種ガスの吸着等温線が示されている。図4に示されるように、ある圧力まではほとんど吸着せず、その圧力になると急激に吸着が始まり、瞬時に飽和状態に達する吸着材がある(出典:SCEJ 38th Autumn Meeting (Fukuoka, 2006)、「多孔性金属錯体の吸着材および分離材への適用に関する展望」(大阪ガス)関 建司)。吸着材54に吸着された圧縮気体は、吸着材54から離脱されて圧縮気体貯蔵容器14から吐出される。
【0028】
なお、吸着材54には、吸着熱の影響を緩和するために、蓄熱材が導入されていても良い。この蓄熱材としては、例えば、エリスリトールなどの糖類、酢酸トリウム3水和物や硫酸ナトリウム10水和物などの水溶液、水、パラフィンやひまし油などの油、及び、多価イソシアネート化合物などの有機物が適用可能である。
【0029】
図1に示される圧縮気体需要量検出部16は、例えば、流量センサ等によって構成されている。この圧縮気体需要量検出部16は、複数の消費機器100による圧縮気体の需要量(消費量)を検出し、この検出した需要量に応じた信号を制御部20に出力する。
【0030】
圧縮気体残量検出部18は、例えば、圧力センサ等によって構成されている。この圧縮気体残量検出部18は、複数の圧縮気体貯蔵容器14における圧縮気体の残量(圧力)を検出し、この検出した残量に応じた信号を制御部20に出力する。
【0031】
制御部20は、例えば演算装置や記憶装置等を有する電子回路を備えている。この制御部20は、上述の圧縮気体需要量検出部16及び圧縮気体残量検出部18から出力された信号(検出結果)に基づいて、複数の圧縮機12、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。制御部20の記憶装置には、圧縮機12や圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体を供給したり、圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体を貯蔵したりするためのプログラムが格納されている。制御部20の演算装置は、そのプログラムを実行し、複数の消費機器100に圧縮気体を供給させる。
【0032】
次に、上述の圧縮気体供給システム10の動作について説明する。
【0033】
制御部20は、上述のプログラムを実行することで、具体的には、以下のステップS1〜ステップS20を実行する。図5には、ステップS1〜ステップS20の処理の流れを表すフローチャートが示されている。
【0034】
(ステップS1)
ステップS1では、制御部20が、圧縮気体需要量検出部16から出力された信号に基づいて、消費機器100の需要が圧縮機12の供給量を上回っているか判断する。消費機器100の需要が圧縮機12の供給量を上回っていない場合、制御部20は、ステップS5に移行し、消費機器100の需要が圧縮機12の供給量を上回っている場合、制御部20は、ステップS2に移行する。
【0035】
(ステップS2)
ステップS2では、制御部20が、圧縮気体残量検出部18から出力された信号に基づいて、圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体の残量があるか判断する。圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体の残量がない場合、制御部20は、ステップS4に移行し、圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体の残量がある場合、制御部20は、ステップS3に移行する。
【0036】
(ステップS3)
消費機器100の需要が圧縮機12の供給量を上回っており、圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体の残量がある場合、ステップS3では、制御部20が、圧縮機12及び圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体が供給されるように、圧縮機12、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、圧縮機12を稼働させ、三方弁36を圧縮機12から消費機器100へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38を閉止し、出口側開閉弁40を開放する。これにより、圧縮機12及び圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体が供給される。
【0037】
(ステップS4)
消費機器100の需要が圧縮機12の供給量を上回っているが、圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体の残量がない場合、ステップS4では、制御部20が、圧縮気体貯蔵容器14からの圧縮気体の供給が停止され、圧縮機12のみから消費機器100に圧縮気体が供給されるように、圧縮機12、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、圧縮機12を稼働させ、三方弁36を圧縮機12から消費機器100へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38及び出口側開閉弁40を閉止する。これにより、圧縮気体貯蔵容器14からの圧縮気体の供給が停止され、圧縮機12のみから消費機器100に圧縮気体が供給される。また、制御部20は、圧縮気体の供給不足を発報する。さらに、制御部20は、消費機器100の需要を絞る。このとき、供給先の消費機器100の構成に応じて、需要を絞る消費機器100の優先順位をつけても良い。
【0038】
(ステップS5)
消費機器100の需要が圧縮機12の供給量を上回っていない場合、ステップS5では、制御部20が、圧縮気体需要量検出部16から出力された信号に基づいて、消費機器100において圧縮気体の需要があるか判断する。消費機器100において圧縮気体の需要がない場合、制御部20は、ステップS15に移行し、消費機器100において圧縮気体の需要がある場合、制御部20は、ステップS6に移行する。
【0039】
(ステップS6)
ステップS6では、制御部20が、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要があるか判断する。判断方法としては、単に圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量で判断しても良いし、過去の需要データからの需要予測により判断しても良い。圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要がない場合、制御部20は、ステップS10に移行し、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要がある場合、制御部20は、ステップS7に移行する。
【0040】
(ステップS7)
ステップS7では、制御部20が、圧縮機12の一部を停止しても圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できるか判断する。圧縮機12の一部を停止すると圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できない場合、制御部20は、ステップS9に移行し、圧縮機12の一部を停止しても圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できる場合、制御部20は、ステップS8に移行する。
【0041】
(ステップS8)
ステップS8では、制御部20が、圧縮機12の一部(可能な限りの台数の圧縮機12)を停止させる。また、制御部20は、稼働している残りの圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵されると共に、圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体が供給されるように、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、三方弁36を圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38を開放し、出口側開閉弁40を開放する。これにより、稼働している残りの圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵されると共に、圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体が供給される。
【0042】
(ステップS9)
圧縮機12の一部を停止すると圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できない場合、ステップS9では、制御部20が、全ての圧縮機12を稼働させる。また、制御部20は、全ての圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵されると共に、圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体が供給されるように、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、ステップS8と同様に、三方弁36を圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38を開放し、出口側開閉弁40を開放する。
【0043】
(ステップS10)
消費機器100において圧縮気体の需要があるが、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要がない場合、ステップS10では、制御部20が、圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体を供給しても良いか判断する。圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体を供給して良くない場合、制御部20は、ステップS12に移行し、圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体を供給しても良い場合、制御部20は、ステップS11に移行する。
【0044】
(ステップS11)
圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体を供給しても良い場合、ステップS11では、制御部20が、全ての圧縮機12を停止させる。また、制御部20は、圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体が供給されるように、入口側開閉弁38及び出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、入口側開閉弁38を閉止し、出口側開閉弁40を開放する。これにより、圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体が供給される。
【0045】
(ステップS12)
圧縮気体貯蔵容器14のみから消費機器100に圧縮気体を供給して良くない場合、ステップS12では、制御部20が、圧縮機12の一部を停止しても残りの圧縮機12から消費機器100に圧縮気体を供給できるか判断する。圧縮機12の一部を停止すると所望の量の圧縮気体を消費機器100に供給できない場合、制御部20は、ステップS14に移行し、圧縮機12の一部を停止しても所望の量の圧縮気体を消費機器100に供給できる場合、制御部20は、ステップS13に移行する。
【0046】
(ステップS13)
ステップS13では、制御部20が、圧縮機12の一部(可能な限りの台数の圧縮機12)を停止させる。また、制御部20は、稼働している残りの圧縮機12から消費機器100に圧縮気体が供給されるように、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、三方弁36を圧縮機12から消費機器100へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38及び出口側開閉弁40を閉止する。これにより、稼働している残りの圧縮機12のみから消費機器100に圧縮気体が供給される。
【0047】
(ステップS14)
圧縮機12の一部を停止すると所望の量の圧縮気体を消費機器100に供給できない場合、ステップS14では、制御部20が、全ての圧縮機12を稼働させる。また、制御部20は、全ての圧縮機12から消費機器100に圧縮気体が供給されるように、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、三方弁36を圧縮機12から消費機器100へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38及び出口側開閉弁40を閉止する。これにより、全ての圧縮機12から消費機器100に圧縮気体が供給される。
【0048】
(ステップS15)
消費機器100において圧縮気体の需要がない場合、ステップS15では、制御部20が、消費機器100への圧縮気体の供給が停止されるように、圧縮機12及び出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、圧縮機12を停止させ、出口側開閉弁40を閉止する。これにより、消費機器100への圧縮気体の供給が停止される。そして、制御部20は、ステップS16に移行する。
【0049】
(ステップS16)
ステップS16では、制御部20が、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要があるか判断する。圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要がない場合、制御部20は、ステップS20に移行し、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要がある場合、制御部20は、ステップS17に移行する。
【0050】
(ステップS17)
ステップS17では、制御部20が、圧縮機12の一部を停止しても圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できるか判断する。圧縮機12の一部を停止すると圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できない場合、制御部20は、ステップS19に移行し、圧縮機12の一部を停止しても圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できる場合、制御部20は、ステップS18に移行する。
【0051】
(ステップS18)
ステップS18では、制御部20が、圧縮機12の一部(可能な限りの台数の圧縮機12)を停止させる。また、制御部20は、稼働している残りの圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵されるように、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、三方弁36を圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38を開放し、出口側開閉弁40を開放する。これにより、稼働している残りの圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵される。
【0052】
(ステップS19)
圧縮機12の一部を停止すると圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵できない場合、ステップS19では、制御部20が、全ての圧縮機12を稼働させる。また、制御部20は、全ての圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵されるように、三方弁36、入口側開閉弁38、及び、出口側開閉弁40を制御する。すなわち、制御部20は、三方弁36を圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14へ圧縮気体を流通させる状態とし、入口側開閉弁38を開放し、出口側開閉弁40を閉止する。これにより、全ての圧縮機12から圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が供給されて圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体が貯蔵される。
【0053】
(ステップS20)
消費機器100への圧縮気体の供給が停止し、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器14に貯蔵する必要がない場合、ステップS20では、制御部20が、全ての圧縮機12を停止させる。
【0054】
このように、本実施形態の圧縮気体供給システム10は、消費機器100における圧縮気体の需要と、圧縮気体貯蔵容器14における圧縮気体の残量と、圧縮気体貯蔵容器14への圧縮気体の貯蔵の要否に応じて、圧縮機12や圧縮気体貯蔵容器14から消費機器100に圧縮気体を供給したり、圧縮気体貯蔵容器14に圧縮気体を貯蔵したりする。
【0055】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る圧縮気体供給システム10には、圧縮気体貯蔵容器14が用いられており、この圧縮気体貯蔵容器14の容器本体52の内部には、吸着材54が設けられている。この吸着材54は、容器本体52の内部の圧縮気体を吸着する。したがって、吸着材54が圧縮気体を吸着することにより、圧縮気体の貯蔵効率(充填密度)を向上させることができるので、容器本体52の容積を小さくすることができ、ひいては、圧縮気体貯蔵容器14を小型化することができる。
【0057】
また、吸着材54は、容器本体52の内部の圧縮気体の圧力が最低利用圧力以上で圧縮気体の吸着量が急増する材料で形成されている。したがって、容器本体52に最底利用圧力以上で圧縮気体を貯蔵することにより、容器本体52の内部の圧縮気体の貯蔵効率(充填密度)をより一層向上させることができる。これにより、圧縮気体貯蔵容器14をより一層小型化することができる。
【0058】
また、圧縮された空気を吸着する吸着材54の形成材料は、多孔質材、ゼオライト、及び、金属錯体のいずれかである。したがって、容器本体52の内部の圧縮気体の圧力が最低利用圧力以上で圧縮気体の吸着量を急増させることができる。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係る圧縮気体供給システム10によれば、上述の圧縮気体貯蔵容器14を備えるので、圧縮気体貯蔵容器14を小型化できる分、システム全体を小型化することができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態に係る圧縮気体供給システム10によれば、消費機器100による圧縮気体の需要量と、圧縮気体貯蔵容器14における圧縮気体の残量とに応じて、圧縮機12及び圧縮気体貯蔵容器14の少なくとも一方から消費機器100への圧縮気体の供給と、圧縮気体貯蔵容器14における圧縮気体の貯蔵とを切り替えるので、消費機器100に安定して圧縮気体を供給することができる。
【0061】
ここで、図6には、本実施形態に係る圧縮気体供給システムの動作の一例として、時間と圧縮気体の需要量及び圧縮機の台数との関係を示すグラフが示されている。また、図7には、比較例に係る圧縮気体供給システムの動作の一例として、時間と圧縮気体の需要量及び圧縮機の台数との関係を示すグラフが示されている。
【0062】
図7に示されるように、圧縮気体の需要量と同量を供給しようとすると、低い負荷率で圧縮機を運転することになり、製造効率が低くなる。また、圧縮気体の最大需要量を要する時間が少ない場合には、複数の圧縮機のうちの一部(図7中のN3)を稼働しないことがあり、稼働しない時間が長い場合には、初期投資に見合わない設備導入を迫られる可能性が懸念される。
【0063】
一方、図6に示されるように、本実施形態の場合には、圧縮気体の需要量に応じて、圧縮気体貯蔵容器からの圧縮気体の供給と圧縮気体貯蔵容器への圧縮気体の貯蔵が切り替えられるので、場合によっては複数の圧縮機のうちの一部または全部を停止することにより、圧縮機を高い負荷率で運転することができるため、圧縮空気の製造効率が高い。つまり、図6のハッチングAで示されるように、圧縮気体の需要が少ないときにも圧縮機を高い負荷率で稼働し、圧縮気体を圧縮気体貯蔵容器に貯蔵することができる。一方、図6のハッチングBで示されるように圧縮気体貯蔵容器に貯蔵された圧縮気体を消費機器に供給し、圧縮機を停止することができる。これらにより、圧縮機の負荷を平準化、かつ高くすることができるので、効率を向上させることができる。さらに、図6のハッチングCで示されるように、圧縮気体貯蔵容器に貯蔵された圧縮気体を消費機器に供給することで、圧縮機の数を減らすことができる。これにより、設備導入費用を低減することができる。
【0064】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0065】
上記実施形態において、圧縮気体供給システム10で使用される圧縮気体は、空気であるが、例えば、メタン、酸素、窒素、二酸化炭素、水素、アルゴン、ヘリウムなど、一般に圧縮貯蔵され得る気体であれば、空気以外の気体が用いられても良い。
【0066】
また、上記実施形態において、圧縮気体供給システム10は、複数の消費機器100に対して、複数の圧縮機12及び複数の圧縮気体貯蔵容器14を備えているが、一つの消費機器100に対して、一つの圧縮機12及び一つの圧縮気体貯蔵容器14を備える構成とされていても良い。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
10…圧縮気体供給システム、12…圧縮機、14…圧縮気体貯蔵容器、16…圧縮気体需要量検出部、18…圧縮気体残量検出部、20…制御部、22…圧縮気体供給配管、24…第一連結配管、26…容器側上流配管、28…入口側分岐路、30…容器側下流配管、32…出口側分岐路、34…第二連結配管、36…三方弁、38…入口側開閉弁、40…出口側開閉弁、42…圧縮気体再利用配管、52…容器本体、54…吸着材、56…仕切板、58…入口管、60…出口管、100…消費機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7