(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の1例である二次電池について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において「略〜」との記載は、略同一を例に挙げて説明すると、完全に同一および、実質的に同一と認められるものを含む意図である。また、「端部」の用語は対象物の端及びその近傍を意味するものとする。また、以下で説明する形状、材料、個数などは説明のための例示であって、二次電池の仕様により変更が可能である。以下では同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0011】
以下で説明する二次電池は、例えば電気自動車またはハイブリッド車の駆動電源、または太陽光発電、風力発電等の出力変動を抑制するための用途や夜間に電力を蓄電して昼間に利用するための系統電力のピークシフト用の定置用蓄電システムに利用される。
【0012】
以下、
図1〜
図5を用いて、実施形態の一例である二次電池10について詳説する。
図1は、二次電池10の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す二次電池10からケース本体13を取り外して示す斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示す構成において、第1金属板50,54を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
図3Aは、
図2AのA−A断面を概略的に示す図である。
図3Bは、
図3Aにおいて、正極及び負極の積層数を多くして示している
図3AのB部拡大相当図である。以下では、説明の便宜上、ケース12の蓋板14側を上、蓋板14と反対側を下として説明する。
【0013】
二次電池10は、一対の電極が複数積層された積層電極体30を備える。具体的には、積層電極体30は、セパレータ31を介して複数の正極32及び複数の負極34が積層されることによって形成された所謂積層型の電極構造を有する。各セパレータ31には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。二次電池10の好適な一例は、リチウムイオン電池であって、発電要素として積層電極体30と、非水電解質とを含む。実施形態では、ケース12の内側に積層電極体30が収容される。ケース12は、略箱形状のケース本体13の上端開口部を蓋板14で塞ぐことにより形成される。ケース本体13及び蓋板14は、後述のようにアルミニウムを主成分とする金属から形成される。主成分とは、正極活物質を構成する材料のうち最も含有量が多い成分を意味する。
【0014】
また、二次電池10では、ケース12が正極32に電気的に接続されている。例えば、正極端子16において、ケース12の蓋板14の上面から突出する部分と、蓋板14との間に配置される後述する中間部材18aを除去する、またはこの中間部材18aの一部または全部を金属などの導電性材料により形成することによって、ケース12が正極32に電気的に接続されている。第1金属板50,54は、負極34に電気的に接続されている。例えば、負極34に接続された負極集電板40と第1金属板50、54とが接触することによって、第1金属板50,54が負極34に電気的に接続されている。負極集電板40と第1金属板50との接触部については、後で詳しく説明する。これにより、ケース12の外部から釘などの導電性を有する異物の、釘刺しなどによる内側への侵入や、外部応力が掛かった場合に缶や電極体が変形した際に、積層電極体30内部での短絡電流を迂回させる効果を高くできるので、蓄電されたエネルギーをより安全に放出できる。
【0015】
積層電極体30を構成する正極32、負極34、及び各セパレータ31は、例えばいずれも平面視略矩形形状を有し、それらが積層されてなる積層電極体30は略直方体形状を有する。
図2Bに示すように、各正極32の長手方向(
図2Bの左右方向)における一端部(
図2Bの左端部)には正極タブ33が設けられ、各負極34の長手方向一端部(
図2Bの右端部)には負極タブ35が設けられる。実施形態では、略直方体形状を有する積層電極体30の長手方向に直交する幅方向(
図2Bの上下方向)における一端(
図2Bの上端)から正極タブ33及び負極タブ35が延出している。
【0016】
複数の正極タブ33は、積層電極体30の積層方向一方側(
図2Bの紙面の裏側)に偏って集まって積み重なっている。複数の負極タブ35は、積層電極体30の積層方向一方側に偏って集まって積み重なっている。
【0017】
図4は、積層電極体30において、負極34側のタブ(負極タブ35)と負極集電板40との接続部を示す概略斜視図である。負極タブ35は、各負極34の幅方向(短辺方向)一端(
図4の右端)から延出され、電極積層方向Xに積み重なってタブ積層体36を形成する。そして、タブ積層体36が、負極集電板40の厚み方向一方面(
図4の上側面)に重なって接合される。
【0018】
負極集電板40は、金属製の板材により形成され、ケース12(
図1)の蓋板14(
図1)と略平行な上端板部41と、上端板部41から略直角に折れ曲がって連続する下側板部42とを含む断面L字形である。負極集電板40は、負極集電体に相当する。このとき、タブ積層体36は、例えば超音波溶接等により、負極集電板40の下側板部42の下端部(
図4の左端部)において、厚み方向一方側面に溶接で接合される。これにより、複数の負極34の端部から延出する負極タブ35が負極集電板40上に集合されて溶接されて、タブ積層体36は負極集電板40に電気的に接続される。正極タブ33も、負極タブ35と同様に断面L字形で金属製の正極集電板45に溶接で接合される。これにより、複数の正極32の端部から延出する正極タブ33が正極集電板45上に集合されて溶接されて、正極タブ33の積層体は正極集電板45に電気的に接続される。正極集電板45は、正極集電体に相当する。
【0019】
正極32は、例えば正極芯材32a(
図2B)と、当該芯材32a上に形成された正極合材層とで構成される。正極芯材32aには、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極タブ33は、例えば正極芯材32aの一部を突出させて形成されており、正極芯材32aと一体化している。正極合材層は、正極活物質の他に、導電材及び結着材を含み、正極芯材32aの両面に形成されていることが好適である。正極32は、例えば正極芯材32a上に正極活物質、結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極合材層を正極芯材32aの両面に形成することにより作製できる。
【0020】
正極活物質には、例えばリチウム含有複合酸化物が用いられる。リチウム含有複合酸化物は、特に限定されないが、一般式Li
1+xM
aO
2+b(式中、x+a=1、−0.2<x≦0.2、−0.1≦b≦0.1、Mは少なくともNi、Co、Mn、及びAlのいずれかを含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。好適な複合酸化物の一例としては、Ni−Co−Mn系、Ni−Co−Al系のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0021】
負極34は、例えば負極芯材34a(
図2B)と、当該芯材34a上に形成された負極合材層とで構成される。負極芯材34aには、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極タブ35は、例えば負極芯材34aの一部を突出させて形成されており、負極芯材34aと一体化している。負極合材層は、負極活物質の他に、結着材を含むことが好適である。負極34は、例えば負極芯材34a上に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合材層を芯材の両面に形成することにより作製できる。
【0022】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料であればよく、一般的には黒鉛が用いられる。負極活物質には、ケイ素、ケイ素化合物、又はこれらの混合物を用いてもよく、ケイ素化合物等と黒鉛等の炭素材料を併用してもよい。ケイ素化合物等は、黒鉛等の炭素材料と比べてより多くのリチウムイオンを吸蔵できることから、負極活物質にこれらを適用することで電池の高エネルギー密度化を図ることができる。ケイ素化合物の好適な一例は、SiO
x(0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物である。また、SiO
xは粒子表面が非晶質炭素等の導電被膜で覆われていることが好ましい。
【0023】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含んでいてもよい。電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。
【0024】
上記のように、ケース12を形成するケース本体13及び蓋板14は、アルミニウムを主成分とする金属から形成される。この金属は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金としては、アルミニウムと鉄を含む合金が例示される。ケース本体13と蓋板14とは、溶接によって電気的に接触した状態で結合される。厚みは、50μm以上、1mm以下であることが好ましい。50μm未満の場合、短絡が発生した際にケースが溶融してしまい、導電板に十分に電流が流れない恐れがあり、1mm以上の場合は電池のエネルギー密度が小さくなってしまう。
【0025】
また、蓋板14の両端部には、正極端子16及び負極端子17をそれぞれ挿入する貫通孔14aが形成される。正極端子16及び負極端子17は、蓋板14の貫通孔14aにそれぞれ挿入された状態で、中間部材18a、18bを介して蓋板14に固定される。正極端子16及び負極端子17において、蓋板14より上側に突出した部分には上側結合部材19がネジ結合等により固定される。上側結合部材19と蓋板14との間には中間部材18aが挟まれる。中間部材18a、18bは、ガスケットとすることができる。負極端子17と蓋板14との間はガスケットとしての中間部材により絶縁される。また、正極端子16側で中間部材18a、18bの一部または全部を金属により形成することでケース12と正極端子16とを電気的に接続することが可能である。
【0026】
図3Aに示すように、負極集電板40の上端板部41には負極端子17の下端部が溶接によって結合され、電気的に接続される。負極端子17の上端部は、蓋板14の上面から突出する。負極集電板40の上端板部41とケース12の蓋板14との間には、樹脂材料などの絶縁材料製の絶縁部材20が配置される。
【0027】
負極端子17側、または正極端子16側、またはそれらの両側には電流遮断機構が形成されてもよい。電流遮断機構としては、例えば電池内の内圧が上昇した際に電流を遮断する感圧式の電流遮断機構を用いることができ、例えば正極集電体と正極端子の接続経路に設置することができる。電流遮断機構としては、感圧式の電流遮断機構の他にヒューズ等を用いてもよい。
【0028】
また、上記のように負極集電板40には、負極タブ35のタブ積層体36が溶接によって電気的に接続される。これにより、負極34及び負極端子17は、負極集電板40によって電気的に接続される。
【0029】
また、正極集電板45(
図2B)には、正極タブ33の積層体が溶接によって電気的に接続される。これにより、正極32及び正極端子16は、正極集電板45によって電気的に接続される。
【0030】
さらに、二次電池10は、ケース12と積層電極体30との間に配置された一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54と、ケース12及び各第1金属板50,54の間にそれぞれ配置された絶縁材製のスペーサ60とを備える。一方側第1金属板50は、積層電極体30の一方側(
図3Aの左側)に配置され、他方側第1金属板54は、積層電極体30の他方側(
図3Aの右側)に配置される。
【0031】
図2Bに示すように、一方側第1金属板50は、矩形状の本体部51と、延出部52とを含む。延出部52は、本体部51の幅方向一端(
図2Bの上端)において、長手方向一端部(
図2Bの左端部)を除く部分から連続して積層電極体30の積層方向Xに向いて略直角に折れ曲がって延出される。延出部52の先端には、上方に向かって略直角に曲げられた接触片53が形成される。
【0032】
他方側第1金属板54は、矩形状の本体部55と、本体部55の幅方向一端において、長手方向一端部(
図2Bの左端部)を除く部分から連続して積層電極体30の積層方向Xに向いて略直角に折れ曲がって延出された延出部56とを含む。延出部56の先端には、上方に向かって略直角に曲げられた接触片57が形成される。一方側第1金属板50の延出部52の積層方向X長さは、他方側第1金属板54の延出部56の積層方向X長さより大きい。
【0033】
そして
図3Aに示すように、一方側第1金属板50の接触片53と他方側第1金属板54の接触片57とが、負極集電板40の下側板部42の厚み方向両側面において、タブ積層体36よりも上側で、それぞれ面接触している。これにより、一方側、他方側第1金属板50,54は、積層電極体30を積層方向の両側から挟むように、負極集電板40に接続される。これによって、負極集電板40と各第1金属板とが電気的に接続される。例えば、各第1金属板50,54は、負極集電板40に溶接されることが好ましい。
【0034】
各第1金属板50,54は、積層電極体30の負極34を構成する負極芯材と同じ材料により形成される。例えば負極芯材が銅により構成される場合には、各第1金属板50,54も銅により形成することができる。また、各第1金属板50,54は、ステンレス合金、ニッケルなどの他の金属材料により形成されてもよい。各第1金属板50,54の厚みは、負極芯材の厚みよりも十分に大きい。例えば、各第1金属板50,54の厚みは、50μm以上で1mm以下とする。50μm未満の場合、外部応力によってケースと第1金属板が短絡した際に、短絡電流によって第1金属板が溶融してしまい、電流迂回効果を十分に発揮することが出来ない恐れがある。1mm以上の場合、電池のエネルギー密度を十分に高めることが出来ない恐れがある。また、各第1金属板50,54の本体部51,55は、積層電極体30の正極32を構成する正極芯材より大きくする。各第1金属板50,54の本体部51,55の大きさは、負極34を構成する負極芯材と略同一の大きさ、または負極芯材より小さくしてもよい。
【0035】
図5は、積層電極体30における正極32及び負極34と第1金属板50,54との大きさの関係の1例を示す図である。負極34を構成する負極芯材34aの矩形状部分は、正極32を構成する正極芯材32aの矩形状部分より大きくすることが好ましい。また、正極芯材32aにおける正極活物質層の塗布部は、負極芯材34aにおける負極活物質層の塗布部に対し完全に覆われる大きさとすることが好ましい。一方、各第1金属板50,54の矩形状の本体部51,55は、正極芯材32aの矩形状部分より大きくすることが好ましい。このとき、本体部51,55は、長手方向及び幅方向の両方において、正極芯材32aの矩形状部分より大きくすることが好ましい。この好ましい構成によれば、後述するようにケース12(
図1)の外側から内側に釘が刺された場合において、釘が第1金属板50,54を介さずに正極32に刺さることを防止できる。これにより、積層電極体30において釘が正極32及び負極34の両方を貫通して短絡させることが生じにくくなる。また、各第1金属板50,54の矩形状の本体部51,55の小型化を図る面からは、本体部51,55は、矩形状の負極芯材34aより小さくすることが好ましい。
【0036】
そして、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54が負極集電板40に接続された状態で、一方側、他方側第1金属板50、54の内側空間に積層電極体30が配置される。各第1金属板50,54の本体部51,55の内側面と、積層電極体30の積層方向両側面との間には、それぞれセパレータ31が挟まれて配置される。
【0037】
そして、ケース12の内側には、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54と積層電極体30とが収容される。このとき、各第1金属板50、54の本体部51、55の外側面とケース本体13の内側面との間には樹脂材料などの絶縁材製のスペーサ60(
図3A)が挟まれて配置される。スペーサ60は、箱状であり、電極体及び金属板を収容するように配置されている。例えばスペーサ60は、樹脂フィルムまたは樹脂シートなどにより形成される。
図2では、スペーサの図示を省略している。なお、スペーサを平板状として、第1金属板上に貼り付けてもよい。
【0038】
また、スペーサ60の融点は200℃以下とし、かつスペーサ60は熱収縮性を有する構成とすることが好ましい。例えば、スペーサ60には、ポリプロピレンやポリエチレンが用いられる。
【0039】
上記の二次電池10によれば、積層電極体30を備える構成において、外部から釘等の導電性を有する異物が侵入する場合、または、外部応力が掛かった場合に、短絡電流を迂回させる効果を高くできる。これについて、
図6を用いて説明する。
【0040】
図6は、二次電池10の外側から釘62が侵入する状態を示す模式図である。実施形態では、ケース12が正極に電気的に接続され、ケース12のケース本体13の内側に、スペーサ60を介して他方側第1金属板54の本体部55が面している。また、他方側第1金属板54は、負極集電板40(
図3A、
図3B)に接合され、かつ、負極集電板40には複数の負極の負極タブ35(
図3A、
図3B)が接合されている。このとき、ケース本体13及び他方側第1金属板54の外側から釘62が刺された場合には、ケース12と他方側第1金属板54とが短絡する。他方側第1金属板54の厚みは相対的に大きく、電気抵抗は小さい。これによって、ケース12と他方側第1金属板54との短絡時に発生する熱は小さく、大電流を迅速に消費できる。このため、積層電極体30の複数の正極及び負極が短絡されて多くの熱が発生することがなく、蓄電されていたエネルギーをケース12と他方側第1金属板54との短絡経路で安全に放出させることができる。上記では、他方側第1金属板54について説明したが、一方側第1金属板50(
図3A)についても同様である。
【0041】
一方、特許文献1及び特許文献2に記載された構成では、電極体の正極または負極を形成する金属薄膜の正極無地部において、巻回方向と直交する方向の外端に導電板が溶接により固定されている。このような構成では、基本的に電極体が巻回型である場合についてのものであり、電極体が実施形態のような積層構造に適用した場合には、1枚の金属薄膜にしか導電板が溶接されない。このとき、導電板と、複数の正極または負極の他の金属薄膜との間では電気抵抗が大きくなる。これによって、導電板に外側から釘が刺された場合に、短絡点と電極体との接続部において、強制短絡時の抵抗が高くなり、導電板に流れる電流が抑制されるので、短絡電流を迂回させる効果が低くなり内部での発熱が大きくなるおそれがある。これについて、上記の実施形態では積層電極体30を備える構成において、外部から釘が刺された場合に短絡電流を迂回させる効果を高くできるので、このような不都合を防止できる。さらに、外部応力による缶変形等によるケース等と導電板の強制短絡をする場合は、特許文献1及び特許文献2に記載された構成を積層電極体に適用すると、導電板が溶接された金属薄膜が破断する、または、金属薄膜と導電板間の接続が剥がれたりするおそれがある。これについても、上記実施形態では積層電極体30を備える構成において、外部応力による短絡時も、短絡電流を迂回させる効果を高くすることが出来る。
【0042】
また、実施形態において、スペーサ60の融点を200℃以下とし、スペーサ60を熱収縮性を有する構成とすることができる。この構成では、釘62がスペーサ60を貫通しながら第1金属板50,54に刺されて強制短絡をさせた場合において、短絡時の熱によって、スペーサ60に生じた貫通孔を熱収縮で広げやすい。これにより、強制短絡がスペーサ60で邪魔されにくくなるという効果を得られる。
【0043】
図7A〜
図7Cを用いて負極集電板40と第1金属板70との接続構造の別例を示す模式図である。
図7A〜
図7Cの例では、1枚の第1金属板70が筒状に形成されて、その周方向両端部で負極集電板40の下側板部42を挟んで溶接によって接合されている。そして、第1金属板70の筒状部分の内側に積層電極体30(
図3A参照)が配置される。
図7Aの例では、下側板部42の一方側面(
図7Aの左側面)には第1金属板70の周方向一端部に形成された折り曲げ片71が接合される。また、下側板部42の他方側面(
図7Aの右側面)には第1金属板70の周方向他端側で筒状部分を形成する平面部72の上端部が接合される。
【0044】
図7Bの例では、負極集電板74は、上端板部75の下側に、断面クランク形に2個所位置で略直角に曲げられた下側板部76が形成される。そして、下側板部76の一方側面(
図7Bの左側面)には第1金属板70の周方向一端側で筒状部分を形成する平面部72aの上端部が接合される。また、下側板部76の他方側面(
図7Bの右側面)には第1金属板70の周方向他端部に形成された折り曲げ片71aが接合される。折り曲げ片71aは、上端部で外側に略直角に曲げられている。
【0045】
図7Cの例では、負極集電板77は、上端板部78の下側に、断面クランク形に2個所位置で略直角に曲げられた下側板部79が形成される。そして、下側板部79の中間部で上端板部78と略平行に伸びる部分の下側面及び上側面において、第1金属板70の周方向両端部に略平行に形成された平板部73a、73bがそれぞれ接合される。第1金属板70の周方向他端部の平板部73bは、下側板部79の中間部と上端板部78とで挟まれる。
【0046】
図8は、負極集電体80と一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54との接続構造の別例を示す模式図である。負極集電体80は、逆U字型形状に形成される。そして、負極集電体80の上端に負極端子17が接続される。また、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54の上端部に形成された延出部52,56の先端が負極集電体80の外側面に負極集電体80を挟むように接合されている。各第1金属板50,54の延出部52,56の先端部には略直角に折り曲げられた接触片53,57(
図3A参照)は形成されていないが、接触片53,57が形成されてもよい。
【0047】
そして、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54の本体部51,55に面するように、それらの内側に2つの積層電極体30が配置される。
図8では、各積層電極体30のうち、複数の負極34のみを図示している。各負極34の上端部に形成された負極タブ35は、負極集電体80の対応する側の外側面にそれぞれ集合し積み重なって接合されている。
【0048】
図9〜
図12を用いて実施形態の別例を説明する。
図9は、実施形態の別例において、
図2Aに対応する図である。
図10は、
図9の構成で用いられる第1金属板82の展開図である。
図11は、
図9の構成において、積層電極体30と蓋板14との間に第1金属板82が配置された状態を示す斜視図である。
図12は、
図9のB−B断面を概略的に示す図である。
【0049】
別例の構成では、二次電池は、
図1〜
図6に示した構成において、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54の代わりに、1枚の第1金属板82を用いている。具体的には、第1金属板82は、平板状の金属板材がU字形に曲げられることにより形成される。第1金属板82は、積層電極体30の上端面及び積層方向両側面を覆うように配置される。
【0050】
図10に示すように第1金属板82は、展開状態で略矩形の平板形状である。そして、第1金属板82の展開状態における長手方向一端縁(
図10の左端縁)において、正極端子16及びその周辺部を避けるように凹部83が形成される。また、第1金属板82の展開状態における長手方向他端縁(
図10の右端縁)の中間部には、長手方向と略平行で幅の狭い2つの溝部84が形成される。凹部83及び溝部84によって、展開状態の第1金属板82をU字形に曲げやすくなる。また、2つの溝部84のうち、一方の溝部84に負極集電板40の下側板部42が挿入される。そして、この状態で、第1金属板82において、溝部84に挟まれた板面と上端板部41とが接合される。
【0051】
このような第1金属板82は、
図11に示すように、展開状態で蓋板14と積層電極体30との間に中間部が差し込まれた状態で、両側部分が下側に略直角に曲げられて積層電極体30の周囲を覆う。このとき、第1金属板82において、積層電極体30の積層方向外側に配置される部分が矩形状の本体部82aとなる。また、本体部82aと積層電極体30とでセパレータ31(
図12)を挟んでいる。これにより、第1金属板82は、積層電極体30における正極端子16及び負極端子17の側である上側において、積層電極体30の積層方向の全長にわたって跨ぐように配置される。その他の構成及び作用は、
図1〜
図6の構成と同様である。
【0052】
図13Aは、第1金属板50,54の接続構造の別例を示す斜視図である。
図13Bは、
図13Aの第1金属板50,54の内側に積層電極体30が配置された構成を示している
図12に対応する図である。
【0053】
図13A、
図13Bに示す別例の構成では、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54の上端部で負極集電板40の上端板部41と略平行な延出部52,56が上下方向に重ねられている。そして、他方側第1金属板54の延出部の長手方向端縁(
図13Aの右端縁)には溝部58が形成され、この溝部58に負極集電板40の下側板部42が挿入される。上端板部41と第1金属板50の延出部52の上面部とが接合される。また、他方側第1金属板54の延出部56の上面部は、第1金属板50の延出部52の下面部に接合される。このとき、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54からなる部材は、積層電極体30の上側において、積層電極体30の積層方向の全長にわたって跨ぐように配置される。その他の構成及び作用は、
図1〜
図6の構成と同様である。
【0054】
なお、
図13A、
図13Bの構成において、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54の代わりに1枚の第1金属板を筒状に形成したものを用いることもできる。このとき、この第1金属板の筒状部分の内側に積層電極体30が配置される。
【0055】
図14は、実施形態の別例において、
図6に対応する図である。本例の構成では、
図1〜
図6の構成において、ケース12を正極に電気的に接続しない。その代わりに一方側第1金属板50(図示せず)及び他方側第1金属板54のそれぞれとケース12との間に、一方側第2金属板(図示せず)及び他方側第2金属板90がそれぞれ配置されている。
図14では、二次電池において、一方側第1金属板50及び他方側第1金属板54のうち、他方側第1金属板54の側の端部を示している。以下、他方側第1金属板54は、第1金属板54と記載し、他方側第2金属板90は、第2金属板90と記載する場合がある。
【0056】
第2金属板90は、絶縁部材95を介して、第1金属板54の外側(
図14の右側)に配置される。絶縁部材95は、例えば樹脂フィルムまたは樹脂シートである。第2金属板90は、第1金属板54と同様に平板状の本体部91を有し、本体部91の幅方向一端(
図14の上端)で長手方向一端部に延出部(図示せず)が積層電極体30の積層方向に延出するように形成される。そして延出部の先端には、第1金属板54と同様に、接触片が形成される。そして、第2金属板90の接触片が正極集電板に溶接で接合されることにより、第2金属板90が正極に電気的に接続される。一方側第2金属板も正極集電板に接合される側が異なるだけで、他方側第2金属板90と同様である。また、各第2金属板90とケース12との間には、絶縁部材95が挟まれて配置される。
【0057】
また、第2金属板90は、積層電極体30の正極を構成する正極芯材と同じ材料により形成される。例えば正極芯材がアルミニウムの箔により形成される場合には、各第2金属板90もアルミニウムにより形成することができる。各第2金属板90の厚みは、正極芯材の厚みよりも十分に大きい。例えば、各第2金属板90の厚みは、50μm以上で1mm以下とし、第1金属板よりも厚いことが好ましい。また、各第2金属板90の矩形状の本体部は、正極芯材より大きくし、負極を構成する負極芯材より小さくすることが好ましい。
【0058】
このような構成では、ケース12が中性極となるが、釘62がケース12に外側から刺された場合に、第1金属板54及び第2金属板90に貫通することにより、強制短絡することができる。これにより、短絡電流を迂回させる効果を高くできるので、短絡により生じるエネルギーを安全に放出できる。その他の構成及び作用は、
図1〜
図6の構成と同様である。なお、積層電極体30の積層方向において、第1金属板54及び第2金属板90の配置は逆としてもよい。