特許第6863717号(P6863717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863717ブリケットの試験方法、ブリケットの試験装置、ブリケットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863717
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ブリケットの試験方法、ブリケットの試験装置、ブリケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/24 20060101AFI20210412BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20210412BHJP
   C22B 23/00 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C22B1/24
   C22B7/02 Z
   !C22B23/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-221021(P2016-221021)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-186643(P2017-186643A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-74555(P2016-74555)
(32)【優先日】2016年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】韓 準兌
(72)【発明者】
【氏名】日高 勝晴
(72)【発明者】
【氏名】森 一広
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンから生じたダストを用いて製造したブリケットの試験方法であって、
円筒形の容器に所定の個数のブリケットを装入し、
前記ブリケットを装入した容器を所定の回転速度で回転させることによって、該容器内において該ブリケットを落下させ、
その後、前記容器から粉粒体を排出し、該粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別して、
篩上の粉粒体の重量をW1とし、前記容器に装入したブリケット全体の重量をW2としたときの、落下強度R1=W1/W2を求める
ブリケットの試験方法。
【請求項2】
前記ブリケットを装入した容器を回転させるに際しては、
回転軸を、前記円筒形の容器の長手方向に対して垂直な方向であって、該容器の中央部を通る線上に位置させて、前記容器を回転させる
請求項1に記載のブリケットの試験方法。
【請求項3】
前記円筒形の容器の長手方向の長さが、前記ロータリーキルンの内径の10%〜20%に相当する長さであり、
前記ブリケットを装入した容器を、15rpm〜25rpmの回転速度で、8回〜12回の回転数の範囲で回転させる
請求項1又は2に記載のブリケット試験方法。
【請求項4】
前記円筒形の容器の内径が、前記ブリケットの粒径の200%〜400%に相当する大きさであり、
前記容器に3個〜5個のブリケットを装入する
請求項3に記載のブリケット試験方法。
【請求項5】
ロータリーキルンから生じたダストを用いて製造したブリケットを、請求項1乃至4のいずれかに記載のブリケットの試験方法により試験するための試験装置であって、
円筒形状の容器と、
前記容器の長手方向に対して垂直な方向であって、該容器の中央部を通る線上に回転軸を位置させた回転部と、を備え、
前記容器内に所定の個数のブリケットが装入され、ブリケットを装入した該容器を所定の回転速度で回転させることによって、該容器内において該ブリケットを落下させる
ブリケットの試験装置。
【請求項6】
ロータリーキルンから生じたダストを用いてブリケットを製造するブリケットの製造方法であって、
前記ダストにより複数の試験用ブリケットを作製し、該試験用ブリケットの落下強度を試験する予備試験工程と、
前記予備試験工程での落下強度についての試験結果に基づいて製造条件を調整し、ブリケットを製造するブリケット製造工程と、を有し、
前記予備試験工程では、
円筒形の容器に所定の個数の前記試験用ブリケットを装入し、
前記試験用ブリケットを装入した容器を所定の回転速度で回転させることによって、該容器内において該試験用ブリケットを落下させ、
その後、前記容器から粉粒体を排出し、該粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別して、
篩上の粉粒体の重量をW1とし、前記容器に装入した試験用ブリケット全体の重量をW2としたときの、落下強度R1=W1/W2を求め、
前記ブリケット製造工程では、
前記予備試験工程において複数の試験用ブリケットに対する試験で算出された前記落下強度R1の結果に基づいて、該落下強度R1が60〜80の範囲となるような製造条件に調整してブリケットを製造する
ブリケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフェロニッケル製錬プロセスで発生するダストから製造されるブリケットの試験方法、及びその試験方法に用いるブリケットの試験装置、並びにそのブリケットの試験方法を適用して製造するブリケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルの一般的な製造方法として、ニッケルを含有するサポロライト鉱石等のラテライト鉱石(以下、単に「鉱石」という)を原料に用いて、乾燥(予備乾燥)工程、焼成工程、還元熔解工程、精製工程を有する乾式製錬方法が採用されている。この方法では、通常、鉱石をロータリードライヤーにて乾燥させて付着水分を15質量%〜25質量%程度とした後(予備乾燥)、ロータリーキルンを使用した焼成処理(焼成工程)が行われる。
【0003】
焼成工程においては、予備乾燥された鉱石と無煙炭等の石炭とをロータリーキルンに装入し、800℃〜1000℃程度にまで加熱することで、付着水の除去(乾燥)と結晶水分の分解(焼成)、さらには予備還元を行って、焼成鉱石(焼鉱)を得る。その後、溶融還元工程において、得られた焼鉱を電気炉にて溶融還元することによって、ニッケルと鉄を含有するメタルとスラグを形成する。
【0004】
ここで、乾燥工程にて用いるロータリードライヤーや、焼成工程にて用いるロータリーキルンにおいては、その鉱石の乾燥処理や焼成処理に伴ってダスト(キルンダスト)が発生する。そのため、排ガス処理設備等において、発生したダストの回収が行われる。
【0005】
回収されたダストは、鉱石と同程度の品位のニッケルを含むことから、通常、原料として再利用している。具体的には、ダストをそのまま、若しくはペレタイザー等でペレットに造粒した上で、ロータリードライヤーやロータリーキルン(以下、総じて「ロータリーキルン」という)に繰り返し装入する方法が採られている。
【0006】
例えば、回収したダストをそのまま繰り返した場合、鉱石が粘土質で自己造粒性を有する鉱石であれば、その装入したダストはロータリーキルン内で鉱石と共に造粒され、再度、ダストとなって飛散する割合は少なくなる。ところが、近年原料として用いている鉱石は、自己造粒性を有しているものが少なく、繰り返したダストは、そのままダストとして再度飛散してしまう。
【0007】
そのことから、ロータリーキルン内に繰り返し装入するにあたっては、ダストを造粒することが行われる。しかしながら、キルンダストには、還元剤としてキルンに装入している石炭が含まれているため、濡れ性が低く、造粒して得られるペレットの強度が低いという問題がある。
【0008】
一般的なダストの造粒では、ペレタイザーを用いた処理が行われているが、ペレットの強度を高めることを目的としてバインダーとなる溶剤を使用しているため、コストが非常に高くなるという欠点がある。
【0009】
そこで、本件出願人は、ダストと鉱石とを予め混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物に所定量の水を添加して混練する混練工程と、混練工程を経て得られた混練物を成形する成形工程とを有するブリケットの製造方法を提案している(特許文献1)。この特許文献1に開示されている方法によれば、バインダーとなる溶剤等を用いることなく低いコストで、高い強度を有するブリケットを製造することができ、再粉化させることなく効果的にロータリーキルンに繰り返し装入することが可能となる。
【0010】
さて、製造コストを更に低減させるためには、ブリケット設備の操業条件を最適化することが必要となり、そのためには操業成績の指標が必要となる。すなわち、ブリケット設備で生産されたブリケットが、キルンに装入された後、当初の目的通り再粉化することなくダスト発生量の低減に寄与するための、ブリケット設備の操業指標である。
【0011】
例えば簡単には、ロータリーキルン等で発生するダストの発生量を指標として利用することが考えられる。
【0012】
しかしながら、日々のダストの発生率は、鉱石の種類、水分等の影響を受けて変動するため、発生したダストが鉱石由来のものか、あるいはブリケット由来のものかの判別は困難であり、ブリケット設備の操業指標として用いることは難しい。
【0013】
また、ブリケット製造時や製造されたブリケットから得られるデータとして、
(1)ブリケット設備に装入したダスト重量Aと、ブリケット設備で製造された10mm径以上のブリケット重量Bから導かれる塊率(=B/A)、あるいは、
(2)ブリケット設備から排出された、ブリケットに成りきれなかった2mm径以下の粉粒の重量Cの粉率(=C/A)、あるいは、
(3)ブリケット設備で製造されたブリケット1個を重量計に乗せて、上方から徐々に力をかけて破壊された時点の重量(=圧潰強度)、
というデータに基づいて、操業指標として適用することも考えられる。しかしながら、上記(1)〜(3)のデータでは、実際にキルンに装入されたブリケットが再粉化する状況と相関関係が小さく、ブリケット設備の操業指標として適用することは困難となる。
【0014】
ここで、「ブリケットが再粉化する状況」とは、ブリケット残留率、すなわちロータリーキルンに装入するブリケットの重量と、排出される焼鉱全体のうちのブリケットの形態を留めているものの重量の割合から判定され、ブリケット残留率が高ければ、再粉化が抑制されているものと判定することができる。
【0015】
ブリケット残留率との相関関係が高い、ブリケット設備の操業指標が定まれば、より効果的にブリケット設備の操業条件を把握することが可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2014−148727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ブリケットを製造するためのブリケット設備の操業条件の指標として適用することができるブリケットの試験方法、並びにその試験方法を適用してブリケットを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ブリケットの製造後に装入されるロータリーキルン内における、ブリケットの落下状況を実質的に再現することが可能な強度試験を実施することにより、ブリケット設備の操業指標が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
(1)本発明の第1の発明は、ロータリーキルンから生じたダストを用いて製造したブリケットの試験方法であって、円筒形の容器に所定の個数のブリケットを装入し、前記ブリケットを装入した容器を所定の回転速度で回転させることによって、該容器内において該ブリケットを落下させ、その後、前記容器から粉粒体を排出し、該粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別して、篩上の粉粒体の重量をW1とし、前記容器に装入したブリケット全体の重量をW2としたときの、落下強度R1=W1/W2を求める、ブリケットの試験方法である。
【0020】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記ブリケットを装入した容器を回転させるに際しては、回転軸を、前記円筒形の容器の長手方向に対して垂直な方向であって、該容器の略中央部を通る線上に位置させて、前記容器を回転させる、ブリケットの試験方法である。
【0021】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記円筒形の容器の長手方向の長さが、前記ロータリーキルンの内径の10%〜20%に相当する長さであり、前記ブリケットを装入した容器を、15rpm〜25rpmの回転速度で、8回〜12回の回転数の範囲で回転させる、ブリケット試験方法である。
【0022】
(4)本発明の第4の発明は、第3の発明において、前記円筒形の容器の内径が、前記ブリケットの粒径の200%〜400%に相当する大きさであり、前記容器に3個〜5個のブリケットを装入する、ブリケット試験方法である。
【0023】
(5)本発明の第5の発明は、ロータリーキルンから生じたダストを用いて製造したブリケットの試験装置であって、円筒形状の容器と、前記容器の長手方向に対して垂直な方向であって、該容器の略中央部を通る線上に回転軸を位置させた回転部と、を備え、前記容器内に所定の個数のブリケットが装入され、ブリケットを装入した該容器を所定の回転速度で回転させることによって、該容器内において該ブリケットを落下させる、ブリケットの試験装置である。
【0024】
(6)本発明の第6の発明は、ロータリーキルンから生じたダストを用いてブリケットを製造するブリケットの製造方法であって、前記ダストにより複数の試験用ブリケットを作製し、該試験用ブリケットの落下強度を試験する予備試験工程と、前記予備試験工程での落下強度についての試験結果に基づいて製造条件を調整し、ブリケットを製造するブリケット製造工程と、を有し、前記予備試験工程では、円筒形の容器に所定の個数の前記試験用ブリケットを装入し、前記試験用ブリケットを装入した容器を所定の回転速度で回転させることによって、該容器内において該試験用ブリケットを落下させ、その後、前記容器から粉粒体を排出し、該粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別して、篩上の粉粒体の重量をW1とし、前記容器に装入した試験用ブリケット全体の重量をW2としたときの、落下強度R1=W1/W2を求め、前記ブリケット製造工程では、前記予備試験工程において複数の試験用ブリケットに対する試験で算出された前記落下強度R1の結果に基づいて、該落下強度R1が60〜80の範囲となるような製造条件に調整してブリケットを製造する、ブリケットの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るブリケットの試験方法によれば、そのブリケットを原料鉱石等と共にロータリーキルンに装入して製錬操業を行ったときの再粉化の程度を予測することができ、これにより、その試験結果に基づいて、ブリケットを製造する際のブリケット設備の操業指標とすることができる。
【0026】
また、本発明に係るブリケットの製造方法によれば、ロータリーキルンに装入して製錬操業を行ったときの再粉化を有効に抑制し、またキルン内を転動するブリケットの形状が維持されて破壊を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ブリケットの試験方法から得られる落下強度R1と、ロータリーキルンに装入したブリケットの重量に対する焼鉱中のブリケット残留物の重量の比率R2との相関関係を示すグラフ図である。
図2】ブリケットの試験方法に用いる試験装置の一例を示す図である。
図3】円筒形の容器の内径をブリケット径の300%の大きさとし、容器に3個のブリケットを装入してブリケットの試験方法を5回実施したときの試験結果を示したグラフ図である。
図4】ロータリーキルン内のおけるブリケットを含む装入物の転動運動の様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0029】
≪1.ブリケットの試験方法≫
本実施の形態に係るブリケットの試験方法は、ロータリーキルンから生じたダスト(キルンダスト)を用いて製造したブリケットの試験方法である。具体的に、この試験方法は、円筒形の容器に所定の個数のブリケットを装入し、ブリケットを装入した容器を所定の回転数で回転させることによって、容器内においてブリケットを落下させる。
【0030】
その後、容器から粉粒体を排出して取り出し、その粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別する。そして、目開き10mmの篩上の粉粒体の重量を測定し、その篩上の粉粒体の重量を「W1」とし、容器に装入したブリケット全体の重量を「W2」としたときの、以下の式(i)で表される落下強度R1を算出することを特徴とする。
R1=W1/W2 ・・・(i)
【0031】
このブリケットの試験方法では、回転する円筒形の容器の中でブリケットを落下させることによってそのブリケットに衝撃を与えるようにしており、破砕されたブリケットから、適切なサイズの篩を用いてブリケット残留物を篩別け、容器への装入物量と残留物量との比率(落下強度R1)に基づいて、ブリケットの落下強度を算出している。
【0032】
このようにして算出される落下強度R1は、ロータリーキルンに装入されるブリケットの重量(総重量)と、キルンへ装入した後に破砕され、焼鉱中に残留するブリケット由来の破砕物量との比率と相関が高いものであり、したがって、上述したブリケットの試験方法により求められる落下強度R1を、ブリケット設備の操業指標として有効に適用することができる。
【0033】
図1に示すグラフ図は、横軸を、本実施の形態に係るブリケットの試験方法から得られる落下強度R1、つまり、容器に装入したブリケットの重量(W2)のうちの、落下試験の後に10mmサイズ以上の大きさを維持したブリケット破砕物(ブリケット残留物)の重量(W1)の比率とするものである。また、図1に示すグラフ図は、縦軸を、ロータリーキルンに装入したブリケットの重量(「W4」とする)のうちの、10mmサイズ以上のブリケット由来の破砕物(焼鉱中のブリケット残留物)の重量(「W3」とする)の比率R2とするものである。
R2=W3/W4 ・・・(ii)
【0034】
図1のグラフ図に示すように、焼鉱中のブリケット残留物の比率と、本実施の形態に係るブリケットの試験方法から得られる落下強度R1とは、高い相関を有することが分かる。したがって、このようなブリケットの試験方法を行うことにより、ブリケットをロータリーキルンに装入する前に、ロータリーキルンから排出された時点での再粉化率(=1−残留率)を予測することが可能となり、ブリケット設備の操業条件の指標として有効に活用することができる。
【0035】
ここで、本実施の形態に係るブリケットの試験方法で使用されるブリケットは、ブリケット成形後の未乾燥状態のものであり、篩別されて得られるブリケット破砕物(粉粒体)も乾燥されていない状態である。したがって、上述した篩上の粉粒体重量「W1」、ブリケット全体の重量「W2」は、サイズは異なっているものの、いずれも未乾燥状態であって比較的強度の低いブリケットの重量である。
【0036】
一方で、ロータリーキルンから排出されるブリケット由来の破砕物は、ブリケット成形後に乾燥され、更にロータリーキルン内で熱処理を受けている。また、そのロータリーキルンから排出される焼鉱には、ブリケット由来物C1や、鉱石由来の焼鉱C2のほか、未反応の炭素質還元剤C3等がふくまれている。したがって、上述した焼鉱中のブリケット残留物の重量「W3」は、ブリケットの重量「W4」がロータリーキルンに装入したブリケットの重量であるとはいえ、乾燥後のブリケットがロータリーキルンを通過する間に、C1〜C3を含む様々な焼鉱の構成物と接触しつつ熱処理を受けて硬化し、強度が増したブリケット破砕物(≧10mm)の重量である。
【0037】
したがって、R1(=W1/W2)とR2(W3/W4)とは、常識的には単純に比較することができない数値であるところ、本発明者らによる鋭意検討の結果、図1のグラフ図に示す相関関係が成立することを見出した。なお、図1のグラフ図は、実施例にて行った試験結果と同じである。
【0038】
すなわち、図1のグラフ図の場合、相関関係を示す関係式は以下のように表される。
R2=kR1+t (k=1.3825、t=−85.342) ・・(式1)
【0039】
そして、このことから、上記式1に以下のそれぞれの重量(W1〜W4)を代入することによって、以下の式2を導出することができる。
ロータリーキルンに装入するブリケットの重量:W4
ロータリーキルンから排出されるブリケット由来の破砕物(≧10mm)の重量:W3
ブリケットの試験方法において容器に装入するブリケットの重量:W2
ブリケットの試験方法により得られたブリケット破砕物(≧10mm)の重量:W1
R1=W1/W2
R2=W3/W4
W3={k(W1/W2)+t}×W4 (k、tは、式1と同じ) ・・(式2)
【0040】
以上のように、本実施の形態に係るブリケットの試験方法を実施して落下強度R1(=W1/W2)を算出することにより、ロータリーキルンにブリケットを装入するにあたって、そのロータリーキルンから排出されるブリケット由来の破砕物(≧10mm)の割合を、上記式2に基づいて推定することができ、ブリケット設備の操業条件の指標とすることができる。
【0041】
なお、本発明者らは、本実施の形態に係るブリケットの試験方法により算出される落下強度(R1)と、焼鉱中のブリケット残留物の割合(R2)との間に、上述した相関関係が生まれる主な理由を、以下のように推測する。すなわち、
[1]そもそも操業中にブリケットが破砕されるのは、ロータリーキルンに装入された初期であり、乾燥後とはいえ熱処理を受けて硬化して強度が増加する前のブリケットであるからであり、
[2]また、本実施の形態に係るブリケットの試験方法において、円筒形の容器が回転することによりブリケットが落下する距離は、ロータリーキルンよりも小さく、衝撃力も小さいため、乾燥後のブリケットよりも強度の弱い、未乾燥のブリケットとすることによって、その衝撃力の差を緩和することができ、
[3]さらに、篩別の目開きである10mmサイズであることが重要であって、ブリケットが破砕される上での定常状態、すなわち、キルンダストを原料としてブリケットを成形したものを落下の衝撃力によって破砕する場合に、同程度の衝撃力を加え続けても、10mmサイズ以上のものと、それ未満のサイズのものとの比率があまり変わらない。例えば、通常の100倍の時間をかけても、その比率は極僅かしか変化しないといった、ダストを原料して製造されるブリケットに独特な破砕特性があるためである、
と推測することができる。
【0042】
≪2.ブリケットの試験方法におけるブリケットの落下処理≫
ここで、図2に、ブリケットの試験方法に用いることができる試験装置の一例を示す。上述したように、このブリケットの試験方法においては、円筒形の容器にブリケットを装入し、そのブリケットを装入した容器を所定の回転数で回転させることによって、容器内でブリケットを落下させ衝撃を与えるようにしている。
【0043】
例えば図2に示すように、ブリケット試験装置1は、所定の長さの円筒形状の容器10を備えている。また、ブリケット試験装置1においては、円筒形状の容器10の略中央部、すなわち、円筒形状の容器10の長手方向に対して垂直な方向であって、その容器10の略中央部を通る線上に回転軸Pを位置させた回転部11を備えている。
【0044】
[円筒形の容器]
容器10は、上述したように円筒形状を呈した容器である。容器10においては、所定の個数のブリケットが装入され、後述する回転部11による回転駆動によって、回転動作が与えられる。
【0045】
円筒形の容器10の長手方向の長さとしては、特に限定されないが、ブリケットを装入しようとするロータリーキルンの直径(内径)より小さければよい。具体的には、例えば、ロータリーキルンの内径の10%〜20%程度に相当する長さとすることが好ましく、12%〜17%程度に相当する長さとすることがより好ましく、15%程度に相当する長さとすることが特に好ましい。長手方向の長さが長すぎると、ブリケットが落下する高さが大きくなり過度に衝撃が加えられる可能性があり、一方で、長さが短すぎると、適度な衝撃を加えることができない可能性がある。
【0046】
特に、容器10の長手方向の長さを、ロータリーキルンの内径の15%程度に相当する長さとすることで、ロータリーキルン内でのブリケットの動きをより良く再現することができ、この試験方法から得られるデータのバラツキを小さくすることができる。
【0047】
また、円筒形の容器10の内径としては、ブリケットが容器10の内部を自由に落下できるように、そのブリケットの粒径よりも大きければ、特に限定されない。具体的には、例えば、ブリケットの粒径の200%〜400%程度に相当する大きさとすることが好ましく、250%〜350%程度に相当する大きさとすることがより好ましく、300%程度に相当する大きさとすることが特に好ましい。容器10の内径が大きすぎると、ブリケットに過度に衝撃が加えられる可能性があり、一方で、内径が小さすぎると、複数のブリケットを容器10内に装入したときに、ブリケット同士が常時重なった状態で落下運動による衝突を受けるようになるため、測定結果にバラツキが生じる可能性がある。
【0048】
特に、容器10の内径を、ブリケットの粒径の300%程度に相当する大きさとすることで、ロータリーキルン内でのブリケットの動きをより良く再現することができ、この試験方法から得られるデータのバラツキを小さくすることができる。
【0049】
容器10に装入するブリケットの個数としては、3個〜5個程度とすることが好ましく、3個程度とすることがより好ましい。これにより、容器10内において自由落下をしつつ、ブリケットの一部分同士が適度に接触する状態となって、ロータリーキルン内でのブリケットの動きをより良く再現することができる。
【0050】
ここで、図3は、円筒形の容器10の内径が、ブリケットの粒径(ブリケット径)の300%に相当する大きさであり、その容器10に3個のブリケットを装入してブリケットの試験方法を5回実施したときの試験結果(R1[%])を示した図である。図3のグラフ図に示すように、容器10の内径をブリケット径の300%の大きさとし、3個のブリケットを装入して試験を行うことによって、ロータリーキルン内でのブリケットの動きをより良く再現することができ、具体的には、測定結果の標本標準偏差が2.2となり高度の再現性を得ることができる。
【0051】
なお、この円筒形の容器10は、図2に示すように、例えば後述する回転部11の回転軸を把持して固定する固定器具12により、試験場所の地面から所定の高さに位置するように設置されている。これにより、容器10に対して効率的に回転動作が付与される。
【0052】
[回転部]
回転部11は、上述した円筒形の容器10を回転させるための装置であって、容器10の長手方向に対して垂直な方向であって、その容器10の略中央部を通る線上に回転軸Pを位置させている。回転部11と容器10とは、回転軸Pを介して接続固定されている。
【0053】
回転部11は、図2に示すように、取っ手11aを有する回転ハンドル11Aが設けられており、例えば、作業者Hの手動操作によって回転ハンドル11Aを所定の回転速度で回転させることで、回転軸Pを介して接続固定された容器10を回転可能にしている。
【0054】
なお、回転部11による容器10の回転は、自動で行われるようにしてもよい。
【0055】
ここで、回転部11による容器10の回転操作においては、円筒形の容器10の中でブリケットの落下運動が生じるように回転させる。回転条件としては、遠心力が強すぎてブリケットの落下運動が起こらない状態を防ぎながら回転させることができれば、その回転速度(rpm)、回転数(回転の回数)について特段の制限はなく、装入したブリケットの破砕程度が定常的になるように調整すればよい。
【0056】
その中でも、上述したように円筒形の容器10の長さ方向の長さが、ロータリーキルンの内径の15%程度に相当する長さであって、回転速度が15rpm〜25rpm程度であり、回転数が8回〜12回程度の条件とすることによって、容器10の内部において、ロータリーキルン内のブリケットの動きをより良く再現することができる。そして、特に、回転速度を20rpmとし、回転数を10回とすることによって、ブリケットの試験方法から得られるデータのバラツキを小さくすることができ、より好ましい。
【0057】
実操業において、ブリケットの装入量は、ロータリーキルンへの装入物量の約10%程度であり、それ以外の大部分(90%程度)は鉱石(原料鉱石、乾燥鉱石)や炭素質還元剤等である。ロータリーキルン内でブリケットが落下する運動は、何もない空間をブリケットが落下するのではなく、簡単には例えば図4に示すように、ロータリーキルン50の回転に伴って連続的に形成される装入物Xの傾斜をブリケットが転がりながら、他の装入物と衝突しつつ移動していくという、いわゆる転動運動となっている。このことから、容器10に対して、好ましくは上述する回転条件を付加することによって、ロータリーキルン内におけるブリケットの動きをより良く再現することができる。
【0058】
なお、図4中の矢印D1は、ロータリーキルンの回転方向を示し、矢印D2は、ロータリーキルンの回転に伴って内部で転動するブリケットを含む装入物の動きを示す。
【0059】
≪3.ブリケットの試験方法における粉粒体の篩別け処理≫
上述したように、本実施の形態に係るブリケットの試験方法では、例えば試験装置1を用いて容器10内においてブリケットの落下処理を行った後、その容器10からブリケットの粉粒体を取り出し、粉粒体を所定の目開きの篩で篩別する。なお、粉粒体とは、容器10内におけるブリケットの落下処理によって粉砕されたブリケットの集まりをいう。
【0060】
ここで、篩別けに用いる篩の目開きとしては、10mm程度とすることが重要となる。ブリケットが破砕される上での定常状態、すなわち、キルンダストを原料としてブリケットを成形したものを落下の衝撃力によって破砕する場合に、例えば同程度の衝撃力を加え続けても、10mmサイズ以上のものと、それ未満のサイズのものとの比率があまり変わらない。例えば、通常の100倍の時間をかけても、その比率は極僅かしか変化しないといった、ダストを原料して製造されるブリケットに独特な破砕特性がある。
【0061】
このことから、例えばブリケット試験装置1を用いたブリケットの落下処理を行った後に、取り出した粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別けすることで、そのブリケットの離ロータリーキルン内での破砕特性を考慮した分別を行うことができる。
【0062】
そして、このような篩別けにより篩上に残留した粉粒体の重量「W1」と、容器10に装入したブリケット全体の重量「W2」との比率で定義される、落下強度R1(=W1/W2)を算出する。
【0063】
上述したように、「W1/W2」の比率で定義される落下強度R1は、ロータリーキルンに装入したブリケットの重量(W4)のうちの、10mmサイズ以上のブリケット由来の破砕物(焼鉱中のブリケット残留物)の重量(W3)の比率R2(=W3/W4)と、高い相関関係を有している。したがって、上述したブリケットの試験方法を行うことにより、そのブリケットを原料鉱石等と共にロータリーキルンに装入して製錬操業を行ったときの、再粉化の程度を予測することができる。このことから、その試験結果に基づいて、ブリケットを製造する際におけるブリケット設備の操業指標とすることができる。
【0064】
≪4.ブリケットの製造方法≫
本実施の形態に係るブリケットの製造方法は、ロータリーキルンから生じたダストを用いてブリケットを製造するブリケットの製造方法である。そして、この製造方法においては、上述したブリケットの試験方法を実施することによって得られる試験結果に基づいて、その製造条件を調整してブリケットを製造する。
【0065】
具体的に、このブリケットの製造方法は、ダストにより作製した複数の試験用ブリケットの落下強度を試験する予備試験工程と、予備試験工程で得られた試験結果に基づいて製造条件を調整してブリケットを製造するブリケット製造工程と、を有する。
【0066】
上述したように、例えば図2に示したようなブリケット試験装置1を用いたブリケットの試験方法により算出される落下強度R1は、ロータリーキルンに装入されるブリケットの重量(総重量)と、キルンに装入した後に粉砕されて焼鉱中に残留するブリケット由来の破砕物量との比率と、相関性が高い。このことから、その落下強度R1を、ブリケットの製造における指標、すなわち製造条件の決定指標として有効に適用することができる。
【0067】
[予備試験工程]
先ず、予備試験工程は、ロータリーキルンから生じるダストにより複数の試験用ブリケットを作製し、その試験用ブリケットの落下強度を試験する工程である。すなわち、予備試験工程は、ダストによりブリケットを製造するに先立ち、複数の試験用のブリケットを用いて試験を行うことにより、それらの結果から最適なブリケットの製造条件を導出するための工程である。
【0068】
予備試験工程では、円筒形の容器に所定の個数の試験用ブリケットを装入し、試験用ブリケットを装入した容器を所定の回転速度で回転させることによって、容器内においてその試験用ブリケットを落下させる。そしてその後、容器から粉粒体を排出し、その粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別して、篩上の粉粒体の重量をW1とし、容器に装入した試験用ブリケット全体の重量をW2としたときの、落下強度R1=W1/W2を求める。
【0069】
なお、この予備試験工程での試験用ブリケットに対する試験方法については、上述したブリケットの試験方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、その試験方法においては、例えば図2に示したようなブリケット試験装置1を用いて行うことができる。
【0070】
このように、予備試験工程において、複数の試験用ブリケットに対する試験でそれぞれの落下強度R1を算出することにより、それぞれのブリケットをロータリーキルンに装入したときの、そのロータリーキルンから排出されるブリケット由来の破砕物(≧10mm)の割合を推定することができる(上述した式2を参照)。そして、得られた落下強度R1の結果に基づいて、最適なブリケットの製造条件を選定することができる。
【0071】
[ブリケット製造工程]
次に、ブリケット製造工程は、ロータリーキルンに装入するブリケットを製造する工程である。そして、そのブリケットの製造においては、上述した予備試験工程での落下強度R1についての試験結果に基づいて製造条件を調整し、ブリケットを製造する。
【0072】
ブリケットは、ロータリーキルンから排出されるキルンダストを回収し、そのキルンダストからブリケット装置(成形装置)を用いて製造することができる。具体的には、先ず、回収したキルンダストに所定量の水を添加し、ダウミキサー等の混練機を用いて混練する。次に、その混練物をブリケット成形装置に投入して所定の形状のブリケット(未乾燥のブリケット)に成形する。その後、例えば120℃〜180℃程度の温度条件で、成形したブリケットを乾燥させる。
【0073】
ここで、ロータリーキルンに装入するブリケットにおいては、再粉化することなく、所定の強度を有するものであることが望ましく、そのようなブリケットを製造するにあたっては、キルンダストに添加して混練する水分の割合が重要となる。
【0074】
このとき、本実施の形態においては、上述した予備試験工程にて算出される試験用ブリケットの落下強度R1が60〜80の範囲となるような製造条件、すなわち、落下強度R1が60〜80の範囲となるブリケットを製造するにあたり添加する水分の割合(混練物中の水分率)に条件を調整して、ブリケットを製造することを特徴としている。
【0075】
図1に示したように、ブリケットの試験方法により算出される落下強度R1に関して、R1が60未満であると、焼鉱中のブリケット残留率(R2)がほぼゼロとなることが分かる。したがって、落下強度R1が60未満である場合には、10mmサイズ以上のブリケット由来の破砕物(焼鉱中のブリケット残留物)の重量(W3)がゼロとなり、そのほとんどが再粉化してしまう。
【0076】
また、R1が80以下となる製造条件とするのは、次の理由による。すなわち、例えば図1に示される結果だけから判断すると、R1の値が大きければ大きいほどR2の値も大きくなり、つまり、10mmサイズ以上のブリケット由来の破砕物(焼鉱中のブリケット残留物)の重量(W3)が大きくなることを示している。したがって、再粉化の量も有効に抑制することができるといえる。ところが、実操業においてブリケットの製造条件を調整する現実的な方法は、上述したように、キルンダストに添加し混練して得られる混練物中の水分率を調整することである。
【0077】
ここで、下記表1は、混練物中の水分率を変化させることで製造条件を変えて作製した6つの試験用ブリケットについて、ブリケットの試験方法を実施して、落下強度R1を算出した結果を示す一覧表である。また、この表1においては、それぞれの試験用ブリケットについての圧潰強度試験の測定結果も併せて示している。
【0078】
なお、圧潰強度とは、落下強度R1とは異なり、例えば図4で示したようにブリケットがロータリーキルンの中で滞留しつつ積み重なって転動する際の強度であって、単位は「kg/個」として定義することができる。また、その圧潰強度は、JIS Z 8841の圧潰強度試験方法に準じて測定することができる。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示す結果から、落下強度R1を大きくするためには混練物中の水分率を増加させればよいことが分かるが、落下強度R1が80を超えるような水分率に調整したブリケットでは、その圧潰強度が10kg/個を下回るほどに低下する。すなわち、混練物中の水分率が大きいものほど再粉化は抑制できるが、ロータリーキルン内における転動中にブリケットが重なり合って押し潰されるようになり、所定の形状を維持することができずに破壊される可能性がある。また、ハンドリング性が悪化する可能性もある。
【0081】
したがって、このようなことから、ブリケット製造工程においては、予備試験工程にて算出される試験用ブリケットの落下強度R1が60〜80の範囲となるような条件(混練物中の水分率)に製造条件を調整して、ブリケットを製造する。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
[ブリケットの製造]
ロータリーキルンからキルンダストを回収して、そのキルンダストからブリケットを製造した。具体的には、ブリケットは、水分率が18重量%となるようにキルンダストを混練した後、ブリケット装置により未乾燥のブリケットを成形して、150℃で15分間の条件で乾燥させて得た(乾燥後ブリケット)。乾燥後のブリケットは、50mm×50mm×20mmの形状であった。この場合のブリケットサイズは50mmであるという。
【0084】
製造したブリケットを、原料のキルンダストの回収のタイミング毎に、No.1〜No.10の10グループに分けた。
【0085】
[フェロニッケル製錬におけるロータリーキルンを用いた操業]
装入物として、ニッケル酸化鉱石(Ni品位:0.5重量%〜1.5重量%)と、還元剤としてのコークスと、キルンダストから製造したブリケットとを、ロータリーキルンに装入し、装入物の滞留時間を約30分として、3時間の連続操業を行った。装入物の重量比率は、ニッケル酸化鉱石:コークス:ブリケット=80:10:10とした。
【0086】
なお、このロータリーキルンによる操業を、ブリケットのグループ(No.1〜No.10)毎に、10回行った。
【0087】
使用したロータリーキルンは、直径(内径):4.7m、長さ:100mのものであり、回転数を5rpmとして回転させた。また、ロータリーキルン内を、排出端に設けられたバーナーにより加熱し、装入した装入物を850℃に加熱させた。
【0088】
ロータリーキルンによる操業終了後、得られた焼鉱を排出させて、10mmの目開きの篩を用いて篩別した。そして、篩上に残留した10mmサイズ以上のブリケット由来の破砕物(焼鉱中のブリケット残留物)の重量(W3)を測定し、ロータリーキルンに装入したブリケットの重量(W4)との比率R2(=W3/W4)を求めた。
【0089】
[ブリケット試験]
ブリケット試験装置として、図2に模式図を示す装置1を用いてブリケット試験を行った。ブリケット試験装置1において、円筒形の容器10としては、長手方向の長さが700mmであり、内径が150mmのものを用いた。なお、容器10の長さ700mmは、ロータリーキルンの内径(4.7m)のおよそ15%に相当する長さであり、容器10の内径150mmは、ブリケットサイズ50mmの300%に相当する大きさである。
【0090】
このようなブリケット試験装置1を用いて、円筒形の容器10内に、ブリケットサイズが50mmのブリケットを3個装入し、その容器10を、回転速度:20rpm、回転回数:10回として回転させた。
【0091】
なお、このブリケット試験を、ブリケットのグループ(No.1〜No.10)毎に、10回行った。
【0092】
ブリケット試験装置1による容器10の回転処理の終了後、容器10から粉粒体を排出させ、その粉粒体を10mmの目開きの篩で篩別した。そして、篩上に残留した10mmサイズ以上の粉粒体の重量(W1)を測定し、容器10に装入したブリケット全体の重量(W2)との比率である、落下強度R1(=W1/W2)を求めた。
【0093】
[測定結果]
下記表2に、ブリケットのグループ毎の「R1」、「R2」の算出結果をまとめて示す。なお、「R1」、「R2」は、単位を「%」とする百分率で表す。
【0094】
【表2】
【0095】
また、表2に示す「R1」、「R2」の算出結果に基づいて、縦軸を焼鉱中のブリケット残留率(R2)、横軸をブリケット試験による10mm以上のサイズ(+10mm)粉粒体の割合(R1)とするグラフにプロットした結果を、図1に示す。
【0096】
図1に示すように、全体的に、「R1」と「R2」との間には高い相関関係が認められることが分かった。このことから、上述したブリケット試験を行うことにより、そのブリケットを原料鉱石等と共にロータリーキルンに装入して製錬操業を行ったときの、再粉化の程度を予測することができる。したがって、その結果に基づいて、ブリケットを製造する際におけるブリケット設備の操業指標とすることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 ブリケットの試験装置
10 容器
11 回転部
12 固定器具
図1
図2
図3
図4