特許第6863718号(P6863718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863718
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   F23R3/28 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-225591(P2016-225591)
(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-84340(P2018-84340A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年4月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 理
(72)【発明者】
【氏名】和田山 芳英
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−035336(JP,A)
【文献】 特開2011−226773(JP,A)
【文献】 実開平05−096728(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/28
F23R 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの根元側に位置する挿入部が挿入される孔部を有する燃料ノズルプレートと、
を備えたガスタービン燃焼器において、
前記燃料ノズルは、前記挿入部が前記燃料の流れ方向から見た下流側部分と上流側部分とを備え、前記挿入部の前記下流側部分の外周面だけにおねじ部を備え、前記おねじ部の谷径が前記上流側部分の外径よりも大きく、
前記燃料ノズルプレートは、前記孔部に前記おねじ部と螺合するめねじ部を備え、
前記孔部は、前記燃料の流れ方向から見た下流側部分の内径が上流側部分の内径よりも大きく、
前記燃料ノズルは、前記挿入部の上流側端部が、前記燃料ノズルプレートの上流側端部に冶金的に接合されている、
ことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
前記燃料ノズルは、前記挿入部の前記下流側部分と前記上流側部分とを接続する段差部を備え、
前記燃料ノズルプレートは、前記燃料ノズルの前記段差部に対応する形状の段差部を前記孔部の壁面に備え、
前記燃料ノズルの前記段差部と前記燃料ノズルプレートの前記段差部とは、互いに当接している、
請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項3】
前記燃料ノズルは、前記燃料が流れる燃料流路を内部に備え、前記燃料流路の上流側端部の、前記燃料流路に垂直な断面が多角形である、
請求項1または2に記載のガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、排ガスが環境に与える負荷の低減を目的として、運転時に排出されるNOxに対して厳しい環境基準が設定されている。NOxの排出量は火炎温度の高温化に伴い増加するため、ガスタービンの燃焼器(以下、「ガスタービン燃焼器」又は「燃焼器」と称する。)では、燃焼室内での局所的に高温な火炎の形成を抑制し均一な燃焼を実現させる必要がある。燃焼室内で均一な燃焼を行うためには、燃料を噴射するための燃料ノズルをガスタービン燃焼器に多数設置し、燃料の分散性を高める必要がある。
【0003】
特許文献1には、複数個の燃料ノズルを備えたガスタービン燃焼器の例が記載されている。このガスタービン燃焼器では、燃料ノズルの後端部(上流側)に平行雄ネジが設けられ、燃料ノズルヘッダの燃料ノズル設置孔の内周側に平行雌ネジが設けられ、これらのネジを互いに締結することで、燃料ノズルを燃料ノズルヘッダに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−014297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービン燃焼器において、燃料ノズルから噴射される燃料の分散性を高めるために燃料ノズルの本数を増加させると、燃料ノズル同士の距離が短くなり、燃料ノズルの周囲の空間が狭隘になる。燃料ノズルを燃料ノズルプレートに接合するための空間や空気の流路である燃料ノズル間の空間を確保するためには、燃料ノズルの本数の増加に伴い燃料ノズルを細くする必要がある。
【0006】
一方で、圧縮空気の流れ場に設置される燃料ノズルには、流体力による振動が発生する可能性がある。燃料ノズルに生じる振動応力は、燃料ノズルの外径を拡大することで低減できる。しかし、燃料の分散性を高めるために細い燃料ノズルを使用すると、振動応力を低減し、振動に対する構造信頼性を確保するのが困難である。燃料ノズルの燃料の分散性を向上させるとともに振動に対する構造信頼性を確保するためには、燃料ノズルの外径を拡大せずに燃料ノズルの振動に対する減衰性能を向上させる必要がある。
【0007】
本発明の目的は、流体力による燃料ノズルの振動に対する構造信頼性と燃焼室内での均一な燃焼による高い環境性能とを有するガスタービン燃焼器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるガスタービン燃焼器は、燃料を噴射する燃料ノズルと、前記燃料ノズルの根元側に位置する挿入部が挿入される孔部を有する燃料ノズルプレートとを備えたガスタービン燃焼器において、前記燃料ノズルは、前記挿入部における少なくとも燃料の流れ方向から見た下流側部分の外周面におねじ部を備え、前記燃料ノズルプレートは、前記孔部に前記おねじ部と螺合するめねじ部を備え、前記燃料ノズルは、前記挿入部の上流側端部が、前記燃料ノズルプレートの上流側端部に冶金的に接合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体力による燃料ノズルの振動に対する構造信頼性と燃焼室内での均一な燃焼による高い環境性能とを有するガスタービン燃焼器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例によるガスタービン燃焼器を備えるガスタービンプラントの構成の一例を示す図である。
図2】バーナの構成要素を示す分解図である。
図3】従来のガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成を示す、燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
図4】本発明の実施例1によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成を示す、燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
図5図4に示した燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成の変形例を示す、燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
図6】本発明の実施例2によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成を示す、燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
図7A】本発明の実施例3によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成を示す、燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
図7B図7Aの切断線A−Aでの燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
図8】本発明の実施例4によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成を示す、燃料ノズルと燃料ノズルプレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例によるガスタービン燃焼器について、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一の要素には同一の符号を付け、これらの要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0012】
初めに、図1を用いて、本発明の実施例によるガスタービン燃焼器を備えるガスタービンプラントの構成例を説明する。図1は、本発明の実施例によるガスタービン燃焼器を備えるガスタービンプラントの構成の一例を示す図である。図1では、燃焼器7を断面図で示している。
【0013】
ガスタービンプラント1は、圧縮機3、燃焼器7、ガスタービン8、及び発電機9を備える。圧縮機3は、大気から空気2を取り込み圧縮する。燃焼器7は、圧縮機3が生成した圧縮空気4と燃料5とを燃焼させ、高温高圧の燃焼ガス6を生成する。ガスタービン8は、燃焼器7が生成した燃焼ガス6により駆動され、燃焼ガス6のエネルギーを回転動力として取り出す。発電機9は、ガスタービン8の回転動力を使用して発電する。
【0014】
燃焼器7は、エンドフランジ10、外筒11、バーナ17、ライナ15、及び燃焼室22を備える。バーナ17は、空気孔プレート12、燃料ノズルプレート13、及び複数の燃料ノズル14を備える。
【0015】
圧縮機3が生成した圧縮空気4は、外筒11とライナ15との間の流路16を通り、バーナ17に流入する。ただし、圧縮空気4の一部は、ライナ15を冷却するための冷却空気18としてライナ15内に流入する。
【0016】
燃料5は、エンドフランジ10の燃料供給管19を通り、燃料ノズルプレート13に流入し、各燃料ノズル14の燃料流路を流れて各燃料ノズル14から空気孔プレート12に噴射される。空気孔プレート12の空気孔20の燃料ノズル14側の入り口において、燃料ノズル14から噴射された燃料5とバーナ17に流入した圧縮空気4が混合される。燃料5と圧縮空気4の混合気21は、燃焼室22に向かって噴射され、火炎23を形成する。燃料5には、天然ガスだけでなく、コークス炉ガス、製油所オフガス、又は石炭ガス化ガスなどのガスを使用できる。
【0017】
以下では、燃料5の流れの向きについて「上流」又は「下流」と称する。図1では、左側が上流であり、右側が下流である。
【0018】
図2は、バーナ17の構成要素を示す分解図である。図2では、バーナ17を断面図で示している。バーナ17は、空気孔プレート12、燃料ノズルプレート13、及び複数の燃料ノズル14を備える。
【0019】
燃料ノズル14は、燃料5が流れる燃料流路14aを内部に備え、上流側から下流側に向かって延伸するように燃料ノズルプレート13に支持され、上流側から供給された燃料5を下流側に噴射する。
【0020】
燃料ノズルプレート13は、孔部である燃料ノズル取り付け用孔44を備え、燃料ノズル取り付け用孔44の中に燃料ノズル14が設置される。燃料ノズルプレート13は、燃料ノズル14を支持し、上流側から流入する燃料5を燃料ノズル14に供給する。
【0021】
燃料ノズル14の上流側端部30は、燃料ノズルプレート13の上流側端部41に冶金的に接合され、その接合部は燃料5が漏洩しないようシールされている。燃料ノズル14の下流側端部31は、空気孔プレート12の空気孔20と接触しておらず、圧縮空気4が空気孔20に自由に流入することができる。燃料ノズル14の上流側端部30と燃料ノズルプレート13の上流側端部41とは、溶接やろう付けなどで互いに接合される。以下では、燃料ノズル14の上流側端部30と燃料ノズルプレート13の上流側端部41とが溶接で互いに接合された例を説明する。
【0022】
ここで、従来のガスタービン燃焼器におけるバーナの構成、特に燃料ノズルプレートに燃料ノズルが固定された構成を説明する。
【0023】
図3は、従来のガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレート13に燃料ノズル14が固定された構成を示す図であり、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。
【0024】
従来のガスタービン燃焼器では、燃料ノズル14の上流側端部30は、燃料ノズルプレート13の上流側端部41に溶接で接合されている。燃料ノズル14は、この溶接で燃料ノズルプレート13に固定される。燃料ノズル14の上流側端部30と燃料ノズルプレート13の上流側端部41とが接合されている部分を、「接合部45」と呼ぶ。燃料ノズル14の燃料ノズルプレート13に支持されている部分、すなわち燃料ノズル14の根元側に位置しており燃料ノズル取り付け用孔44の中に入っている部分を「挿入部46」と呼ぶ。燃料ノズル14の挿入部46の外周面と燃料ノズルプレート13の燃料ノズル取り付け用孔44の壁面とが接触することで、接合部45に作用する負荷(接合部45に作用する振動応力)を低減する。また、燃料ノズル14の挿入部46の外周面と燃料ノズルプレート13の燃料ノズル取り付け用孔44の壁面との接触に伴い摩擦力が発生し、この摩擦力で燃料ノズル14の振動を減衰させる。
【0025】
しかし、従来のガスタービン燃焼器では、燃料ノズル14の挿入部46の外周面と燃料ノズルプレート13の燃料ノズル取り付け用孔44の壁面との間に隙間があるので、これらの接触が十分に得られないことがあり、燃料ノズル14の振動を減衰させる効果は限られていた。
【0026】
本発明の実施例によるガスタービン燃焼器では、燃料ノズル14は、挿入部46の少なくとも下流側部分の外周面にねじ部(ねじ山を有する部分)を備え、挿入部46の上流側端部30が燃料ノズルプレート13に冶金的に接合された構成を備える。燃料ノズル14の挿入部46の下流側部分とは、燃料ノズル14の挿入部46の下流側端部を含む部分である。燃料ノズル14の挿入部46の少なくとも下流側部分の外周面に設けられたねじ部は、燃料ノズルプレート13の燃料ノズル取り付け用孔44の壁面に設けられたねじ部と螺合しており、これらのねじ部の接触による摩擦力で燃料ノズルの振動を減衰させることができる。本発明の実施例によるガスタービン燃焼器は、燃料ノズル14の挿入部46の少なくとも下流側部分が燃料ノズルプレート13と螺合しているので、図3に示したような従来のガスタービン燃焼器よりも、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13との接触による摩擦力を大きくすることができ、燃料ノズル14の振動に対する減衰性能を向上させることができる。
【0027】
本発明の実施例によるガスタービン燃焼器は、このような構成により、燃料ノズル14が主に挿入部46のねじ部で燃料ノズルプレート13に支持され、燃料ノズル14の振動に対する減衰性能を向上させることができ、燃料ノズル14の振動に対する高い構造信頼性を確保することができる。また、本発明の実施例によるガスタービン燃焼器は、燃料ノズル14の外径を拡大せずに高い構造信頼性を確保することができるので、燃料ノズル14の本数を増加させて燃焼室22内での均一な燃焼を実現し、高い環境性能を得ることができる。
【実施例1】
【0028】
図4は、本発明の実施例1によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレート13に燃料ノズル14が固定された構成を示す図であり、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。
【0029】
燃料ノズル14は、挿入部46の外周面の全体にねじ部(おねじ部)51を備える。燃料ノズルプレート13は、燃料ノズル14の根元側に位置する挿入部46が挿入される孔部である燃料ノズル取り付け用孔44を有し、燃料ノズル取り付け用孔44の壁面で、燃料ノズル14を支持する部分(燃料ノズル14のねじ部51に対応する位置)にねじ部(めねじ部)81を備える。燃料ノズル14のねじ部(おねじ部)51は、燃料ノズルプレート13のねじ部(めねじ部)81と螺合している。
【0030】
更に、燃料ノズル14の挿入部46の上流側端部30は、燃料ノズルプレート13の上流側端部41に冶金的に接合されている。燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13とが冶金的に接合されている接合部45は、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13との間のシール及び燃料ノズル14の回転止めの役割を果たす。
【0031】
図5は、図4に示した燃料ノズルプレート13に燃料ノズル14が固定された構成の変形例を示す、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。
【0032】
図5に示す構成では、燃料ノズル14は、挿入部46の下流側部分50の外周面だけにねじ部(おねじ部)51を備える。燃料ノズルプレート13は、燃料ノズル取り付け用孔44の壁面で、燃料ノズル14のねじ部51に対応する位置にねじ部(めねじ部)81を備える。燃料ノズル14のねじ部(おねじ部)51は、燃料ノズルプレート13のねじ部(めねじ部)81と螺合している。燃料ノズル14の挿入部46の上流側端部30は、燃料ノズルプレート13の上流側端部41に接合部45で冶金的に接合されている。
【0033】
図4図5に示した構成では、燃料ノズル14は、主にねじ部51で燃料ノズルプレート13に対して構造的に支持される。燃料ノズル14が挿入部46の少なくとも下流側部分50の外周面にねじ部51を備え、燃料ノズルプレート13が燃料ノズル取り付け用孔44の壁面にねじ部81を備えることで、燃料ノズル14が流体力等により振動しても、ねじ部51とねじ部81との摩擦により、燃料ノズル14の振動に対して高い減衰性能を得ることができる。更に、燃料ノズル14は、主にねじ部51で燃料ノズルプレート13に支持されるので、挿入部46の上流側にある接合部45に作用する負荷(振動応力)を低減することができる。本実施例によるガスタービン燃焼器では、このような構成により、構造信頼性を向上させることができる。
【0034】
燃料ノズル14は、流体力等により振動すると、燃料ノズルプレート13から突出した部分の先端である下流側端部31の振動振幅が最も大きくなる。本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃料ノズル14は、上流側端部30にある接合部45で燃料ノズルプレート13と冶金的に接合され、接合部45と下流側端部31との間にあるねじ部51で燃料ノズルプレート13との摩擦により振動を減衰させる。燃料ノズル14は、振動の振幅が最も大きい部分である下流側端部31から最も離れた位置(上流側端部30)で燃料ノズルプレート13と接合されているため、接合部45と下流側端部31との間にあるねじ部51の燃料ノズルプレート13との摩擦をより大きくすることができ、この摩擦による振動の減衰効果をより大きくすることができる。
【0035】
図4に示したように、燃料ノズル14が挿入部46の全体にねじ部51を備えると、燃料ノズル14の振動の減衰効果を大きくすることができる。しかし、この構成では、燃料ノズル14のねじ部51の上流側端部を燃料ノズルプレート13に冶金的に接合させることになるので、冶金的な接合(溶接やろう付け)が困難であり、接合強度や接合面の平坦さが低下する等、接合の品質が低下することが懸念される。このような場合には、図5に示したような、燃料ノズル14が挿入部46の下流側部分50だけにねじ部51を備える構成を採用することができる。なお、ねじ部51の存在する長さ(燃料5の流れ方向の長さ、すなわち燃料ノズル14の軸方向の長さ)は、燃料ノズル14の燃料ノズルプレート13から突出した部分の長さ(燃料ノズルプレート13と燃料ノズル14の下流側端部31との距離)の20%以上であると好ましい。ねじ部51がこのような長さであれば、燃料ノズル14の振動を効果的に減衰することができると考えられる。
【0036】
なお、図4図5に示した構成では、燃料ノズル14は、挿入部46の外径が、燃料ノズルプレート13から突出した部分の外径よりも大きい。燃料ノズル14は、挿入部46の外径と燃料ノズルプレート13から突出した部分の外径とが同じであってもよい。
【実施例2】
【0037】
図6は、本発明の実施例2によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレート13に燃料ノズル14が固定された構成を示す図であり、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。
【0038】
燃料ノズル14は、挿入部46が下流側部分50と上流側部分62とを備える。燃料ノズル14の挿入部46の上流側部分62とは、燃料ノズル14の挿入部46の上流側端部30を含む部分である。燃料ノズル14は、挿入部46の下流側部分50の外周面だけにねじ部(おねじ部)51を備え、ねじ部51の谷径(ねじ部51の溝の部分での径)が、挿入部46の上流側部分62の外径よりも大きい。燃料ノズル14は、上流側部分62の外周面には、ねじ部51を備えない。燃料ノズルプレート13は、このような燃料ノズル14に対応するような形状の燃料ノズル取り付け用孔44を備える。燃料ノズル取り付け用孔44の壁面は、燃料ノズル14のねじ部51に対応する位置にねじ部(めねじ部)81を備える。
【0039】
燃料ノズル14は、挿入部46の下流側部分50と上流側部分62とを接続する段差部60を備える。燃料ノズルプレート13は、燃料ノズル14の段差部60に対応するような形状の段差部61を燃料ノズル取り付け用孔44の壁面に備える。燃料ノズル14の段差部60と燃料ノズルプレート13の段差部61とは、互いに当接している。燃料ノズル14の段差部60と燃料ノズルプレート13の段差部61は、燃料ノズル14の軸方向(長さ方向)に垂直な面であるのが好ましい。
【0040】
燃料ノズル14のねじ部(おねじ部)51は、燃料ノズルプレート13のねじ部(めねじ部)81と螺合している。燃料ノズル14の挿入部46の上流側端部30は、燃料ノズルプレート13の上流側端部41に接合部45で冶金的に接合されている。
【0041】
本実施例によるガスタービン燃焼器は、バーナ17を組み立てるときに燃料ノズル14を下流側から燃料ノズルプレート13に対してねじ込む構造を備える。本実施例によるガスタービン燃焼器は、実施例1に示した効果に加えて、バーナ17の組立ての際に燃料ノズル14の段差部60と燃料ノズルプレート13の段差部61とを互いに接触させることで燃料ノズル14の軸方向(長さ方向)の位置決めが容易になるという効果を備える。このため、本実施例によるガスタービン燃焼器では、バーナ17の組立てを正確に実行することができ、燃料ノズル14の振動に対しても高い構造信頼性を得ることができる。
【実施例3】
【0042】
図7Aは、本発明の実施例3によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレート13に燃料ノズル14が固定された構成を示す図であり、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。図7Bは、図7Aの切断線A−Aでの燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。
【0043】
本実施例によるガスタービン燃焼器のバーナ17は、実施例2によるガスタービン燃焼器のバーナ17の構成に加えて、次のような構成を備える。すなわち、燃料ノズル14は、燃料流路14aの上流側端部70の、燃料流路14aに垂直な断面が多角形である。
【0044】
バーナ17の組立て時は、燃料ノズル14を下流側から燃料ノズルプレート13の燃料ノズル取り付け用孔44に挿入し、燃料ノズル14のねじ部(おねじ部)51が燃料ノズルプレート13のねじ部(めねじ部)81に螺合するように燃料ノズル14を回転させる。燃料ノズル14を回転させる作業は、燃料流路14aの上流側端部70から燃料流路14aに工具(例えば、レンチ)を挿入して行うことがある。そこで、燃料流路14aに上流側端部70から工具を挿入して燃料ノズル14を回転させることができるように、燃料ノズル14の燃料流路14aの上流側端部70は、燃料流路14aに垂直な断面が多角形である。
【0045】
燃料流路14aの上流側端部70のこの断面の形状は、バーナ17の組立てに用いる工具の形状に応じて定めることができる。図7A図7Bには、燃料流路14aの上流側端部70のこの断面が六角形の例を示している。図7A図7Bの例では、六角棒レンチを用いて、燃料ノズル14を燃料ノズルプレート13にねじ込むことができる。
【0046】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃料ノズル14の燃料流路14aの上流側端部70が、バーナ17の組立てに用いる工具の形状に応じた形状をしているため、バーナ17の組立てを確実に実行することができ、燃料ノズル14の振動に対しても高い構造信頼性を得ることができる。
【0047】
なお、実施例1によるガスタービン燃焼器(図4、5)も、本実施例によるガスタービン燃焼器と同様に、燃料ノズル14の燃料流路14aの上流側端部70が、燃料流路14aに垂直な断面が多角形である構成を備えることができる。
【実施例4】
【0048】
図8は、本発明の実施例4によるガスタービン燃焼器におけるバーナでの燃料ノズルプレート13に燃料ノズル14が固定された構成を示す図であり、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13の断面図である。
【0049】
燃料ノズル14は、挿入部46が下流側部分50と上流側部分62とを備える。燃料ノズル14は、挿入部46の下流側部分50の外周面だけにねじ部(おねじ部)51を備え、ねじ部51の山径(ねじ部51の山の部分での径)が、挿入部46の上流側部分62の外径よりも小さい。燃料ノズル14は、上流側部分62の外周面には、ねじ部51を備えない。燃料ノズルプレート13は、このような燃料ノズル14に対応するような形状の燃料ノズル取り付け用孔44を備える。燃料ノズル取り付け用孔44の壁面は、燃料ノズル14のねじ部51に対応する位置にねじ部(めねじ部)81を備える。
【0050】
燃料ノズル14は、挿入部46の下流側部分50と上流側部分62とを接続する段差部60を備える。燃料ノズルプレート13は、燃料ノズル14の段差部60に対応するような形状の段差部61を燃料ノズル取り付け用孔44の壁面に備える。燃料ノズル14の段差部60と燃料ノズルプレート13の段差部61とは、互いに当接している。燃料ノズル14の段差部60と燃料ノズルプレート13の段差部61は、燃料ノズル14の軸方向(長さ方向)に垂直な面であるのが好ましい。
【0051】
燃料ノズル14のねじ部(おねじ部)51は、燃料ノズルプレート13のねじ部(めねじ部)81と螺合している。燃料ノズル14の挿入部46の上流側端部30は、燃料ノズルプレート13の上流側端部41に接合部45で冶金的に接合されている。
【0052】
本実施例によるガスタービン燃焼器は、バーナ17を組み立てるときに燃料ノズル14を上流側から燃料ノズルプレート13に対してねじ込む構造を備える。本実施例によるガスタービン燃焼器は、実施例1に示した効果に加えて、バーナ17の組立ての際に燃料ノズル14の段差部60と燃料ノズルプレート13の段差部61とを互いに接触させることで燃料ノズル14の軸方向(長さ方向)の位置決めが容易になるという効果を備える。更に、燃料ノズル14と燃料ノズルプレート13との接合部45に損傷が発生しても、燃料ノズル14が燃料ノズルプレート13から下流側に抜け落ちて燃焼器7の他の部品が損傷するのを防止できる。このため、本実施例によるガスタービン燃焼器では、バーナ17の組立てを正確に実行することができるとともに燃焼器7の損傷を防止でき、燃料ノズル14の振動に対してもより高い構造信頼性を得ることができる。
【0053】
本実施例によるガスタービン燃焼器は、実施例3によるガスタービン燃焼器と同様に、燃料ノズル14の燃料流路14aの上流側端部70が、燃料流路14aに垂直な断面が多角形である構成を備えることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…ガスタービンプラント、2…空気、3…圧縮機、4…圧縮空気、5…燃料、6…燃焼ガス、7…燃焼器、8…ガスタービン、9…発電機、10…エンドフランジ、11…外筒、12…空気孔プレート、13…燃料ノズルプレート、14…燃料ノズル、14a…燃料ノズルの燃料流路、15…ライナ、16…圧縮空気の流路、17…バーナ、18…冷却空気、19…燃料供給管、20…空気孔、21…混合気、22…燃焼室、23…火炎、30…燃料ノズルの上流側端部、31…燃料ノズルの下流側端部、41…燃料ノズルプレートの上流側端部、44…燃料ノズルプレートの燃料ノズル取り付け用孔、45…接合部、46…挿入部、50…燃料ノズルの挿入部の下流側部分、51…燃料ノズルのねじ部(おねじ部)、60…燃料ノズルの段差部、61…燃料ノズルプレートの段差部、62…燃料ノズルの挿入部の上流側部分、70…燃料ノズルの燃料流路の上流側端部、81…燃料ノズルプレートのねじ部(めねじ部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8