(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863731
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】トンネル切羽面の変位監視装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20210412BHJP
E21D 9/093 20060101ALI20210412BHJP
G01C 11/04 20060101ALI20210412BHJP
G01C 7/06 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
E21D9/093 F
G01C11/04
G01C7/06
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-250195(P2016-250195)
(22)【出願日】2016年12月23日
(65)【公開番号】特開2018-104934(P2018-104934A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健二
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/139090(WO,A1)
【文献】
特開2002−352224(JP,A)
【文献】
特開2001−194112(JP,A)
【文献】
特開2018−017640(JP,A)
【文献】
特開2007−003380(JP,A)
【文献】
特開2014−120786(JP,A)
【文献】
特開2000−155855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
E21D 9/093
G01C 7/06
G01C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成した切羽面の初期形状データを取得する初期形状データ取得手段と、
前記取得した切羽面の初期形状データを記憶する初期形状データ記憶手段と、
前記切羽面の現形状データを取得する現形状データ取得手段と、
前記記憶した切羽面の初期形状データと、前記取得した現形状データとの比較に基づいて、前記初期形状データと前記現形状データとの差違を示す切羽面変位情報を作成する切羽面変位情報作成手段と、
作業者が装着した透過型ウェアラブル端末を用いて、前記切羽面と関連付くようにして、前記切羽面変位情報を表示させる表示制御手段と、
前記切羽面変位情報における前記初期形状データと前記現形状データとの差違が閾値を超えた場合に警報を発生する警報発生手段と、
を備え、
前記警報発生手段は、予め蓄積している各地質におけるトンネル切羽面の変位状況とトンネル切羽面で発生する危険性データまたはその発生予測時刻データとの関係に基づいて、トンネル切羽面で発生する危険性またはその発生時刻の少なくとも一方について警報を発生する、
ことを特徴とするトンネル切羽面の変位監視装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、切羽面変位情報として表示させる画像の色相、彩度、明度の少なくとも一つにより、初期形状データと現形状データとの差違を表現する、
ことを特徴とする請求項1に記載のトンネル切羽面の変位監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル切羽面の変位監視装置に関するものであり、詳しくは、掘削直後の切羽面を監視して変位が発生した場合には、作業員に対して、変位発生位置や変位の程度をいち早く報知することが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事において、未固結地山や断層破砕帯等の軟弱地山を掘削する際に、切羽が崩落することがある。このような切羽の崩落は、安全な作業を行う上で支障となる場合があるため、事前にその兆候を察知して適切な処置を施す必要がある。そこで、切羽の状態を監視して、崩落の危険性が高まった場合に警告を発生するシステムが開発されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された技術は、切羽観察記録を作成する際にフリーハンドのスケッチではなく、常に一定の方向や位置から見た正確な切羽観察記録を容易に作成するための装置及び方法に関するものである。この技術は、切羽近似平面がトンネル切羽に対して所定の位置に形成され、互いの位置関係が既知である複数の基準点を切羽近似平面に対してマーキングする。そして、基準点とともに、トンネル切羽を撮影平面上に撮影して得た写真画像に基づいて切羽観察記録を作成するようになっている。
【0004】
特許文献2に記載された技術は、トンネルなどの切羽面の不連続面検出や切羽面における地質境界検出を行うための測量システムに関するものである。この技術は、測量すべきトンネル切羽面について、デジタルカメラで撮影を行ってトンネル切羽面の中心投影画像を取得する。そして、少なくともデジタルカメラ撮影におけるカメラ位置、カメラ姿勢及び焦点距離の値、さらに、カメラレンズのゆがみ、カメラレンズ中心位置のずれの値を使用した中心投影画像から正射投影画像への変換式を用いて解析し、トンネル切羽面の正射投影画像を取得することにより、切羽面の測量を行うようになっている。
【0005】
また、トンネルの切羽後方に取り付けたレーザー変位計により、切羽の押出変位を連続的に測定する方法がある。この方法では、計測データに基づいて、変位速度や崩落に至るまでの予測時間等のデータを算出する。そして、累積変位量や変位速度が、予め設定した管理基準値を超えると、警告灯を点滅して警報を発生するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−285583号公報
【特許文献2】特開2008−267843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、監視員により目視で切羽面を監視する方法では、常時監視することが困難であり、監視員の感覚に頼った管理となってしまう。また、特許文献1に記載された技術では、自動的に切羽観察記録を作成することはできるが、切羽面の変位に対する判断は人手に頼っており、崩落等の危険を瞬時に報知することはできない。また、特許文献2に記載された技術では、画像に基づいて切羽面の測量を行うことはできるが、切羽面の変位に対する判断は人手に頼ることになり、特許文献1と同様の問題があった。
【0008】
さらに、レーザー変位計を用いて切羽の押出変位を連続的に測定する方法では、警告灯を用いて崩落等の危険を報知することはできるが、どの位置で変位が発生しているのかを報知することはできないため、適切な待避を行うことができない場合があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、作業者や監視員の感覚に頼らずに、正確かつ適切な情報に基づいて、迅速に切羽面の変位を報知することが可能なトンネル切羽面の変位監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のトンネル切羽面の変位監視装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明のトンネル切羽面の変位監視装置は、初期形状データ取得手段と、初期形状データ記憶手段と、現形状データ取得手段と、切羽面変位情報作成手段と、表示制御手段と、
警報発生手段とを備えたことを特徴とするものでる。
【0011】
初期形状データ取得手段は、形成した切羽面の初期形状データを取得するための手段である。初期形状データ記憶手段は、取得した切羽面の初期形状データを記憶するための手段である。現形状データ取得手段は、切羽面の現形状データを取得するための手段である。切羽面変位情報作成手段は、初期形状データ記憶手段に記憶した切羽面の初期形状データと、現形状データ取得手段により取得した現形状データとの比較に基づいて、初期形状データと現形状データとの差違を示す切羽面変位情報を作成するための手段である。表示制御手段は、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末を用いて、切羽面と関連付くようにして、切羽面変位情報を表示させるための手段である。警報発生手段は、切羽面変位情報における初期形状データと現形状データとの差違が閾値を超えた場合に警報を発生するための手段であり、予め蓄積している各地質におけるトンネル切羽面の変位状況とトンネル切羽面で発生する危険性データまたはその発生予測時刻データ
との関係に基づいて、トンネル切羽面で発生する危険性またはその発生時刻の少なくとも一方について警報を発生する。
【0012】
上述した構成からなるトンネル切羽面の変位監視装置において、表示制御手段は、表示する画像(切羽面変位情報)の色相、彩度、明度の少なくとも一つにより、初期形状データと現形状データとの差違を表現することが可能である。
【0014】
上述した構成からなるトンネル切羽面の変位監視装置では、掘削機械により掘削を行い、支保工を建て込み、鏡面へコンクリートを吹き付け、ロックボルトを施工して切羽面を形成する。そして、初期形状データ記憶手段の機能により、トンネル掘削完了時(鏡面へのコンクリート吹き付け終了時)におけるトンネル切羽面の初期形状データを記憶しておく。
【0015】
切羽面を形成した後(鏡面へのコンクリート吹き付けを終了した後)、現形状データ取得手段の機能により、形成した切羽面の現形状データを取得する。そして、切羽面変位情報作成手段の機能により、初期形状データと現形状データとを比較して、初期形状データと現形状データとの差違を示す切羽面変位情報を作成する。切羽面変位情報とは、形成したトンネル切羽面が基準形状とどの程度相違しているかを示す情報(変位情報)であり、トンネル切羽面の膨らみ、亀裂の発生、崩落等による形状変化を示している。作成された切羽面変位情報は、表示制御手段の機能により、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末を用いて、切羽面と関連付くようにして表示する。
【0016】
切羽面変位情報の表示では、表示画像の色を変化させたり、明るさを変化させたりして、トンネル切羽面の形成状態の変化を表現する。例えば、トンネル切羽面の形成に伴い、現形状データと基準データとの差違が生じると、その度合いに応じて表示色を変化させる。そして、初期形状データと現形状データとの差違が閾値を超えた場合には、例えば、切羽面の崩落等の危険が発生する可能性があるため、予め蓄積している各地質におけるトンネル切羽面の変位状況とトンネル切羽面で発生する危険性データまたはその発生予測時刻データ
との関係に基づいて、トンネル切羽面で発生する危険性またはその発生時刻の少なくとも一方について警報を発生する。この際、例えば、崩落危険箇所等における表示画像の明るさを一気に増すとともに赤色表示し、あるいは、スピーカーから警報音を発生して、作業者に対して切羽面の変位状況を報知する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るトンネル切羽面の変位監視装置によれば、トンネル切羽面の初期形状データを記憶しておき、トンネル掘削工程において、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末を用いて、切羽面と関連付くようにして、初期形状データと現形状データとの差違を示す切羽面変位情報を表示する。これにより、作業者は、切羽面の形状が基準形状と一致しているか否かを瞬時に認識することができるので、万が一、切羽面の崩落等の危険が発生した場合には、現場待避等、適切な行動を起こすことができる。
【0018】
また、表示する画像の色相、彩度、明度の少なくとも一つにより、初期形状データと現形状データとの差違を表現することにより、作業者は、正確かつ適切な情報を瞬時に認識することができるので、迅速に切羽面の状態を把握することができる。
【0019】
さらに、初期形状データと現形状データとの差違が閾値を超えて、切羽面の崩落等の危険が発生する可能性がある場合には、警報手段により警報を発生することにより、作業者は、いち早く切羽面の変位に気付くことができるので、さらに一層、適切な対処を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル切羽面の変位監視装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係るトンネル切羽面の変位監視装置(以下、変位監視装置と略記する)の実施形態を説明する。
図1及び
図2は本発明の実施形態に係る変位監視装置を説明するもので、
図1は変位監視装置の構成を示すブロック図、
図2は切羽面変位情報の表示状態を示す模式図である。
【0022】
<変位監視装置の概要>
本発明の実施形態に係る変位監視装置は、トンネル切羽面の状態を常時監視し、作業員や監視員に対してトンネル切羽面の状態を認識させるとともに、崩落等の危険が発生する可能性がある場合には、いち早く作業員にその旨を報知して、待避等、適切な処置を行うことができるようにした技術である。
【0023】
<変位監視装置の詳細>
本発明の実施形態に係る変位監視装置10は、
図1に示すように、初期形状データ取得手段11、初期形状データ記憶手段12、現形状データ取得手段13、切羽面変位情報作成手段14、表示制御手段15を備えており、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末20を用いて切羽面変位情報を表示する。また、これらの手段に加えて、警報発生手段16を備えることが可能である。以下、各手段について詳述する。
【0024】
<初期形状データ取得手段>
初期形状データ取得手段11は、形成した切羽面の初期形状データを取得するための手段であり、例えば、ビデオカメラ等の撮像装置及び照明装置等からなる。この初期形状データ取得手段11は、例えば、トンネルの天端等に設置して、トンネル切羽面を撮像対象とする。この際、照度が不足していれば、投光器やLEDライト等の照明装置によりトンネル切羽面に撮影光を照射することが好ましい。初期形状データ取得手段11により取得した初期形状データは、初期形状データ記憶手段12に記憶する。なお、形成した切羽面の初期形状データとは、掘削機械により掘削を行い、支保工を建て込み、鏡面へコンクリートを吹き付けた時点における切羽面の形状データである。
【0025】
<初期形状データ記憶手段>
初期形状データ記憶手段12は、例えば、HDD等の大容量記憶装置からなる。この初期形状データ記憶手段12に、トンネル掘削完了時(鏡面へのコンクリート吹き付け終了時)におけるトンネル切羽面の初期形状データ(断面形状、地山状況等のデータ)を記憶しておく。初期形状データは、切羽面変位情報作成手段14に送信されて、現形状データとともに切羽面変位情報の作成に使用する。
【0026】
この初期形状データ記憶手段12は、トンネルの掘削現場に設置したコンピュータに内蔵(付帯)していてもよいが、データ通信回線を介してデータ通信可能に設置されていてもよい。例えば、管理施設に設置したサーバー(図示せず)を初期形状データ記憶手段12として機能させるとともに、サーバーと、初期形状データ取得手段11、現形状データ取得手段13、切羽面変位情報作成手段14、表示制御手段15とをデータ通信回線を介して接続することにより、情報を送受信してもよい。この場合、サーバーはクラウドシステム上に構築した仮想サーバーであってもよい。
【0027】
また、データ通信回線は、データの送受信を行うことができればどのような回線であってもよく、インターネット、公衆電話回線、専用データ通信回線、無線LAN回線、有線LAN回線等を、単独であるいは組み合わせて用いることができる。このように、初期形状データ記憶手段12をサーバーの機能とすることにより、湿度が高く、あるいは粉塵が存在して、コンピュータ等の精密機器にとって環境が良いとは言えない施工現場においても本発明に係る変位監視装置10を使用することができる。
【0028】
<現形状データ取得手段>
現形状データ取得手段13は、トンネル掘削工程において形成したトンネル切羽面の現形状データを取得するための手段であり、例えば、ビデオカメラ等の撮像装置及び照明装置等からなる。この現形状データ取得手段13は、例えば、トンネルの天端等に設置して、トンネル切羽面を撮像対象とする。この際、照度が不足していれば、投光器やLEDライト等の照明装置によりトンネル切羽面に撮影光を照射することが好ましい。現形状データ取得手段13により取得した現形状データは、切羽面変位情報作成手段14に送信されて、初期形状データとともに切羽面変位情報の作成に使用する。なお、現形状データ取得手段13は、初期形状データ取得手段11と兼用の手段として構成してもよい。
【0029】
<切羽面変位情報作成手段>
切羽面変位情報作成手段14は、初期形状データ記憶手段12に記憶したトンネル切羽面の初期形状データと、取得した現形状データとの比較に基づいて、初期形状データと現形状データとの差違を示す切羽面変位情報を作成するための手段であり、例えば、コンピュータ及びその付帯装置と、コンピュータにインストールすることによりハードウェアと協同して動作するアプリケーションプログラムとからなる。
【0030】
なお、初期形状データ記憶手段12と同様に、切羽面変位情報作成手段14は、トンネルの掘削現場に設置したコンピュータに内蔵(付帯)していてもよいが、データ通信回線を介してデータ通信可能に設置されていてもよい。
【0031】
<透過型ウェアラブル端末>
透過型ウェアラブル端末20は、例えば、ゴーグル及びゴーグルのレンズ面に映像を表示させるための表示装置からなり、種々の形態がある。例えば、ゴーグル本体の側面あるいは両側面にプロジェクタを配設し、このプロジェクタからレンズ面に映像を投写し、レンズ内に埋め込まれたホログラムによって光を反射させることにより、利用者が目視している物体に重ね合わせて情報を表示するものがある。この透過型ウェアラブル端末20は、情報の表示形式を限定するものではなく、切羽面と関連付くようにして切羽面変位情報を表示することができれば、どのような態様であってもよい。
【0032】
また、切羽面と関連付くようにして切羽面変位情報を表示するためには、透過型ウェアラブル端末20の現在位置やレンズ面の向き等に関する位置情報を取得する必要がある。位置情報の取得には、地磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、GNSS、位置情報を発信するビーコン、撮影したマーカーの撮像データを用いた位置解析等のシステムを、単独または組み合わせて用いることができる。
【0033】
<表示制御手段>
表示制御手段15は、透過型ウェアラブル端末20における切羽面変位情報の表示を制御するための電子機器及びソフトウェアからなる。なお、ソフトウェアは、これと同等の機能を有する論理回路であってもよい。また、切羽面変位情報を三次元的に表現するには、拡張現実(AR)技術、複合現実(MR)技術、仮想現実(VR)技術を利用する。拡張現実(AR)技術、複合現実(MR)技術、仮想現実(VR)技術を利用すると、利用者は、ゴーグルのレンズ面を通して実際の施工箇所(例えば、トンネル掘削面)を目視しながら、レンズ面に表示された切羽面変位情報を重ね合わせて認識することができる。
【0034】
<警報発生手段>
警報発生手段16は、初期形状データと現形状データとの差違が閾値を超えた場合に警報を発生するための手段である。例えば、表示制御手段15により、切羽面と関連付くようにして表示する画像(切羽面変位情報)の態様(色相、彩度、明度の少なくとも一つ)を、正常な状態と比較して極端に変化させることにより、表示制御手段15を警報発生として機能させてもよいし、警報を発生するための装置を別途設けてもよい。
【0035】
警報発生装置としては、例えば、
図2に示すように、アンプ及びスピーカーや回転灯を挙げることができる。すなわち、スピーカーから警報音を発生したり、回転灯を点灯、点滅させたりして、警報を発生する。また、上述した画像表示による警報と警報発生装置による警報との双方を行ってもよい。
【0036】
<切羽面変位情報の表示>
以下、本実施形態の変位監視装置10を用いて、切羽面と関連付くようにして切羽面変位情報を表示する手順を説明する。切羽面変位情報を作成するには、初期形状データ取得手段11の機能により、鏡面へのコンクリート吹き付け終了時における切羽面の初期形状データを取得する。例えば、ビデオカメラにより、形成したトンネル切羽面を撮影して初期形状データを取得する。取得した初期形状データは、初期形状データ記憶手段12に記憶しておく。
【0037】
一方、その後のトンネル切羽面の現形状データは、現形状データ取得手段13の機能により取得する。例えば、ビデオカメラにより、トンネル切羽面の現状を撮影して現形状データを取得する。この現形状データは、コンピュータの一時記憶領域に記憶しておく。
【0038】
そして、切羽面変位情報作成手段14の機能により、初期形状データと現形状データとを用いて、両データの差違を演算し、切羽面変位情報を作成する。演算結果である切羽面変位情報は、表示制御手段15の機能により、作業者が装着した透過型ウェアラブル端末20を用いて、切羽面と関連付くようにして表示する。当該表示する画像(切羽面変位情報)は、色相、彩度、明度の少なくとも一つにより、初期形状データと現形状データとの差違を表現する。
【0039】
図2を参照して、上述した手順について説明する。
図2(a)はトンネル切羽面を形成した当初の表示状態、
図2(b)はトンネル切羽面の形成から時間が経過した時点の表示状態、
図2(c)は警告発生を行う時点の表示状態を示す。
【0040】
トンネル掘削によりトンネル切羽面を形成した当初には、トンネル切羽面に初期形状データを表示する。そして、トンネル切羽面の形状が変化するに従い、初期形状データと現形状データとの差違を、表示画像の色相、彩度、明度の少なくとも一つにより表現する。さらに、初期形状データと現形状データとの差違が閾値を超えてトンネル切羽面の崩落等が生じる可能性がある場合には、表示画像の色彩を変化させたり、一気に明るさを増したりして、作業者に対してトンネル切羽面の形状変化が異常であることを報知する。また、同時に、警報装置のスピーカーから警報音を発生する。切羽面変位情報として、等高線を用いて、トンネル切羽面の状態を表現してもよい。
【0041】
<他の実施形態>
上述した実施形態は、本発明に係るトンネル切羽面の変位監視装置の基本的な態様であるが、他の技術を組み合わせることにより、より一層多面的に、トンネル切羽面の変位監視を行うことができる。例えば、ボーリング調査や弾性波を用いた解析技術等によりトンネル地山の地質を把握し、各地質に対してトンネル切羽面がどのような変位を来した場合に、トンネル切羽面の崩壊や出水等が発生するのかをデータとして蓄積しておく。そして、トンネル地山とトンネル切羽面との変位との関係に基づいて、崩落や出水が発生する危険性や、その発生予想時刻等を演算して、警報を発生することが可能である。このような技術を用いることにより、より一層迅速にトンネル切羽面の変位を報知することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
10 変位監視装置
11 初期形状データ取得手段
12 初期形状データ記憶手段
13 現形状データ取得手段
14 切羽面変位情報作成手段
15 表示制御手段
16 警報発生手段
20 透過型ウェアラブル端末