(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863734
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】忌避剤含有複合材料、警報器及び忌避剤含有複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/08 20060101AFI20210412BHJP
A01N 25/18 20060101ALI20210412BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20210412BHJP
G08B 21/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
A01N25/08
A01N25/18 102C
A01P17/00
G08B21/16
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-253316(P2016-253316)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-104357(P2018-104357A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 和男
(72)【発明者】
【氏名】西谷 倫之
(72)【発明者】
【氏名】河野 芳海
(72)【発明者】
【氏名】一木 俊伸
【審査官】
山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−41404(JP,A)
【文献】
特開昭51−87998(JP,A)
【文献】
実開平6−64473(JP,U)
【文献】
特開2010−280655(JP,A)
【文献】
特開2000−302613(JP,A)
【文献】
特開2017−146925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
G08B 21/00−21/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドデシル硫酸ナトリウムにより有機修飾されたハイドロタルサイト様化合物の層間に、忌避剤を内包したことを特徴とする忌避剤含有複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の忌避剤含有複合材料を筐体内に有することを特徴とする警報器。
【請求項3】
ハイドロタルサイト様化合物を焼成する第1工程と、
前記第1工程において焼成されたハイドロタルサイト様化合物にドデシル硫酸ナトリウムを混合のうえ撹拌する第2工程と、
前記第2工程において得られた撹拌物を吸引ろ過のうえ乾燥させて有機修飾粘土を得る第3工程と、
前記第3工程において得られた有機修飾粘土に対して忌避剤を含有させる第4工程と、
を備えることを特徴とする忌避剤含有複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、忌避剤含有複合材料、警報器及び忌避剤含有複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス漏れ警報器は台所もしくは業務用厨房に設置され、かつゴキブリが好む狭い構造部分を有する為、市場回収品でゴキブリの営巣が観察される場合があり、ゴキブリが営巣する場合には、その排泄物などにより警報器内部回路の故障を招く恐れがあった。
【0003】
そこで、営巣を防ぐためにガス警報器の構造材に非揮散性の物質(忌避剤)を塗布する方法が提案されている。この方法によれば、ゴキブリが忌避剤に接触することにより不快に感じて営巣しなくなる。
【0004】
しかし、上記の方法では、効果の範囲は忌避剤を塗布した構造物自体に限定され、周辺での営巣を防止できない。また揮散するものについては持続期間が1年程度と短く、ガス警報器の有効期限5年では営巣されてしまう可能性が高くなっていた。以上より、忌避剤を徐放させることについて要求は高まりつつある。なお、この問題はガス警報器に限らず他の警報器(火災警報器や人感警報器等)においても共通するものである。
【0005】
そこで、効果持続時間を長くした害虫忌避剤が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−271004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、警報器の営巣防止のように長期に亘り忌避剤の効果を発揮するためには、特許文献1に記載のような特定の忌避剤を用いるより他なく、忌避剤が用いられる環境等によっては種々の忌避剤を用いたいなどの要求を満たすことができない。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、特定の1つの忌避剤を用いる必要が無くより長期に亘り忌避剤の効果を発揮させることが可能な忌避剤含有複合材料、警報器及び忌避剤含有複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る忌避剤含有複合材料は、
ドデシル硫酸ナトリウムにより有機修飾されたハイドロタルサイト様化合物の層間に、忌避剤を内包したことを特徴とする。
【0010】
この忌避剤含有複合材料によれば、ハイドロタルサイト様化合物の層間で忌避剤を内包すると共に、忌避剤が層間の
ドデシル硫酸ナトリウムとの疎水相互作用によって内包されており、層間に吸着される力が働くこととなる。これらにより、忌避剤の徐放性が高まることとなる。従って、特定の1つの忌避剤を用いる必要が無くより長期に亘り忌避剤の効果を発揮させることができる。
【0011】
また、本発明に係る警報器は、上記に記載の忌避剤含有複合材料を筐体内に有することを特徴とする。
【0012】
この警報器によれば、筐体内に忌避剤含有複合材料を有することで、筐体内へのゴキブリ等が営巣してしまう可能性を低減することができる。
【0013】
また、本発明に係る忌避剤含有複合材料の製造方法は、ハイドロタルサイト様化合物を焼成する第1工程と、前記第1工程において焼成されたハイドロタルサイト様化合物に
ドデシル硫酸ナトリウムを混合のうえ撹拌する第2工程と、前記第2工程において得られた撹拌物を吸引ろ過のうえ乾燥させて有機修飾粘土を得る第3工程と、前記第3工程において得られた有機修飾粘土に対して忌避剤を含有させる第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この忌避剤含有複合材料の製造方法によれば、忌避剤の徐放性を高めた忌避剤含有複合材料を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の1つの忌避剤を用いる必要が無くより長期に亘り忌避剤の効果を発揮させることが可能な忌避剤含有複合材料、警報器及び忌避剤含有複合材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る警報器を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した忌避剤含有複合材料を示す概念図である。
【
図3】
図1に示した忌避剤含有複合材料の製造方法を示す工程図である。
【
図4】有機修飾粘土の徐放性を示す第1のグラフである。
【
図5】有機修飾粘土の徐放性を示す第2のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0018】
さらに、以下においてはガス警報器を警報器の一例として説明するが、これに限らず、火災警報器、ガス火災一体型警報器及び人感警報器などの他の警報器に適用されてもよい。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る警報器を示す分解斜視図である。
図1に示すように、ガス警報器1は、上ケース2a及び下ケース2bからなる筐体2と、筐体2内に収納される配線板WBと、上ケース2aに対して取り付けられる押しボタン3及び正面カバー4とを備えている。
【0020】
配線板WBには、押下方式により操作されるスイッチ6やLED8の他、スピーカ(図示せず)やガスセンサ9が搭載されている。また、上ケース2aのうちスイッチ6及びLED8に対応する箇所には略二等辺三角形に開口する開口部10が形成されており、この開口部10に平面視して略二等辺三角形状の押しボタン3が嵌め込まれる構成となっている。
【0021】
押しボタン3は配線板WB上のスイッチ6を操作するものであり、ユーザが押しボタン3を押し込むことでスイッチ6を押下操作することができる。特に、本実施形態に係る押しボタン3はLED8からの光を拡散させるレンズ部材としての機能も備えている。
【0022】
正面カバー4は上ケース2aの下部において取り付けられる蓋部材である。ガス警報器1は、正面カバー4が取り外されることにより外部出力等を行うための端子台が露出する構成となっている。
【0023】
さらに、本実施形態においては配線板WB上に、忌避剤含有複合材料11が搭載されている。この忌避剤含有複合材料11には忌避剤が含有されており、忌避剤が忌避剤含有複合材料11から揮発放出されることにより、例えばゴキブリのガス警報器1内における営巣が防止されるようになっている。
【0024】
図2は、
図1に示した忌避剤含有複合材料11を示す概念図である。忌避剤含有複合材料11は、アニオン性界面活性剤13により有機修飾されたハイドロタルサイト様化合物の層15間に、忌避剤17を内包した構成となっている。
【0025】
ハイドロタルサイト様化合物とは、
【化1】
の一般式で表される組成を有し、層状の結晶構造を有するものである。ここで、M
2+及びM
3+は、2価及び3価の金属イオンを表しており、A
n−x/nは、層間陰イオンを表している。このようなハイドロタルサイト様化合物は、〔M
2+1−xM
3+x(OH)
2〕からなる水酸化物シートを基本骨格とするホスト層15と、陰イオン及び水分子からなるゲスト層が積層した構造となっている。
【0026】
本実施形態に係る忌避剤含有複合材料11は、ハイドロタルサイト様化合物(具体的にはハイドロタルサイト)のホスト層15間の炭酸イオン及び水分子を、アニオン性界面活性剤13と忌避剤17とで置き替えた構造となっている。
【0027】
このような忌避剤含有複合材料11は、忌避剤17がホスト層15間のアニオン性界面活性剤13との疎水相互作用によって内包されており、ホスト層15の間に吸着される力が働くこととなる。
【0028】
なお、本実施形態においてアニオン性界面活性剤13には、例えばドデシル硫酸ナトリウム、又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが用いられる。また、忌避剤17には、例えばトランスフルトリンやペパーミントオイルなどが用いられる。
【0029】
次に、本実施形態に係る忌避剤含有複合材料11の製造方法を説明する。
図3は、
図1に示した忌避剤含有複合材料11の製造方法を示す工程図である。
【0030】
まず、符号FSに示すように、ハイドロタルサイトを用意し焼成する(第1工程)。焼成は例えば500℃の温度で2時間行われる。次いで、符号SSに示すように、第1工程において焼成されたハイドロタルサイトにアニオン性界面活性剤13を混合のうえ撹拌する(第2工程)。これにより、ホスト層15間の炭酸イオン及び水分子が離脱し、アニオン性界面活性剤13がホスト層15の間に吸着する。ここで、アニオン性界面活性剤13には、上記したように、例えばドデシル硫酸ナトリウム、又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが用いられる。
【0031】
次に、符号TSに示すように、第2工程において得られた撹拌物を吸引ろ過のうえ乾燥させて有機修飾粘土を得る(第3工程)。乾燥は、例えば50℃の温度で2時間行われる。その後、第3工程において得られた有機修飾粘土に対して忌避剤を約5分間物理混合させて含有させる(第4工程)。ここで、忌避剤17には、上記したように、例えばトランスフルトリンやペパーミントオイルなどが用いられる。
【0032】
以上により、本実施形態に係る忌避剤含有複合材料11が製造される。
【0033】
図4は、有機修飾粘土の徐放性を示す第1のグラフである。なお、
図4においてはアニオン性界面活性剤13としてドデシル硫酸ナトリウムを用いて
図3に示すようにして製造された有機修飾粘土と、アニオン性界面活性剤13を用いることがないハイドロタルサイトとの徐放性を示している。さらに、
図4に示す例では忌避剤17に代えて殺虫剤であるパラジクロロベンゼンをホスト層15の間に保持させている。
【0034】
図4に示すように、ドデシル硫酸ナトリウムを用いて製造された有機修飾粘土は、製造後1時間で約0%の殺虫剤が揮発放出され、2時間、3時間、4時間、6時間、7時間及び8時間で、それぞれ約0.1%、0.28%、0.28%、0.5%、0.65%及び0.82%の殺虫剤が揮発放出される。
【0035】
一方、アニオン性界面活性剤13を用いることがないハイドロタルサイトは、製造後1時間で約0.1%の殺虫剤が揮発放出され、2時間、3時間、4時間、6時間、7時間及び8時間で、それぞれ約0.25%、0.45%、0.5%、0.77%、0.95%及び1.07%の殺虫剤が揮発放出される。
【0036】
このように、アニオン性界面活性剤13としてドデシル硫酸ナトリウムを用いた有機修飾粘土は、アニオン性界面活性剤13を用いることがないハイドロタルサイトよりも、高い徐放性を示すことがわかった。
【0037】
図5は、有機修飾粘土の徐放性を示す第2のグラフである。なお、
図5においてはアニオン性界面活性剤13としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて
図3に示すようにして製造された有機修飾粘土と、アニオン性界面活性剤13を用いることがないハイドロタルサイトとの徐放性を示している。さらに、
図5に示す例では忌避剤17に代えて殺虫剤であるパラジクロロベンゼンをホスト層15の間に保持させている。
【0038】
図5に示すように、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて製造された有機修飾粘土は、製造後1時間で約0.05%の殺虫剤が揮発放出され、2時間、3時間、5時間、6時間、及び7時間で、それぞれ約0.18%、0.21%、0.4%、0.62%及び0.75%の殺虫剤が揮発放出される。
【0039】
一方、アニオン性界面活性剤13を用いることがないハイドロタルサイトは、製造後1時間で約0.12%の殺虫剤が揮発放出され、2時間、3時間、5時間、6時間、及び7時間で、それぞれ約0.25%、0.45%、0.65%、0.77%、及び0.95%の殺虫剤が揮発放出される。
【0040】
このように、アニオン性界面活性剤13としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた有機修飾粘土は、アニオン性界面活性剤13を用いることがないハイドロタルサイトよりも、高い徐放性を示すことがわかった。
【0041】
このようにして、本実施形態に係る忌避剤含有複合材料11によれば、ハイドロタルサイト様化合物のホスト層15の間で忌避剤17を内包すると共に、忌避剤17がホスト層15の間のアニオン性界面活性剤13との疎水相互作用によって内包されており、ホスト層15間に吸着される力が働くこととなる。これらにより、忌避剤17の徐放性が高まることとなる。従って、特定の1つの忌避剤17を用いる必要が無くより長期に亘り忌避剤17の効果を発揮させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るガス警報器1によれば、筐体2内に忌避剤含有複合材料11を有することで、筐体2内へのゴキブリ等が営巣してしまう可能性を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る忌避剤含有複合材料11の製造方法によれば、忌避剤17の徐放性を高めた忌避剤含有複合材料11を製造することができる。
【0044】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0045】
例えば、上記実施形態において忌避剤含有複合材料11は、配線板WB上に載置されているが、これに限らず、上ケース2aや下ケース2bの内壁に取り付けられるなど、筐体2内の他の箇所および、外気に忌避剤が放散される箇所に設けられていてもよい。
【0046】
また、忌避剤含有複合材料11はハイドロタルサイトから製造されるものに限らず、他のハイドロタルサイト様化合物から製造されるものであってもよい。さらに、アニオン性界面活性剤13は、上記したドデシル硫酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに限らず、他のものであってもよい。同様に、忌避剤17についてもトランスフルトリンやペパーミントオイルに限られるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 :ガス警報器
2 :筐体
2a :上ケース
2b :下ケース
3 :押しボタン
4 :正面カバー
6 :スイッチ
8 :LED
9 :ガスセンサ
10 :開口部
11 :忌避剤含有複合材料
13 :アニオン性界面活性剤
15 :ホスト層
17 :忌避剤
WB :配線板