(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウィンドファーム制御装置は、前記最適化処理に先行して行われるデータ処理である一次処理を、前記複数の風車の出力を含む運転データに対して実行開始するように前記複数のローカル制御装置にデータ処理開始指令を送るためのデータ処理開始指令部を含み、
各々の前記ローカル制御装置は、各々の前記風車の前記運転データの前記一次処理を行い、前記一次処理の結果を前記ウィンドファーム制御装置に送るように構成された
ことを特徴とする請求項4に記載のウィンドファーム。
前記制御設定は、各々の前記風車の発電出力指令、ピッチ角指令又は方位指令の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載のウィンドファーム。
複数の風車と、前記複数の風車に対してそれぞれ設けられる複数のローカル制御装置と、前記複数の風車の最適化処理を行うためのウィンドファーム制御装置と、を備えるウィンドファームの運転方法であって、
各々の前記ローカル制御装置により、各々の前記風車のオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各々の前記風車のカットアウト制御の少なくとも一つの制御を行うステップと、
前記ウィンドファーム制御装置により前記複数の風車の総出力を増加させるための最適化処理を行うステップと、
前記最適化処理の結果に基づいて各々の前記風車のピッチ角に関する制限値又は出力に関する制限値を前記ウィンドファーム制御装置から各々の前記ローカル制御装置に与えるステップと、
を備えることを特徴とするウィンドファームの運転方法。
複数の風車と、前記複数の風車に対してそれぞれ設けられる複数のローカル制御装置と、前記複数の風車の最適化処理を行うためのウィンドファーム制御装置と、を備えるウィンドファームの運転方法であって、
各々の前記ローカル制御装置により、各々の前記風車のオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各々の前記風車のカットアウト制御の少なくとも一つの制御を行うステップと、
前記ウィンドファーム制御装置により前記複数の風車の最適化処理を行うステップと、
前記最適化処理の結果に基づいて各々の前記風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも一つを前記ウィンドファーム制御装置から各々の前記ローカル制御装置に与えるステップと、
を備え、
前記最適化処理を行うステップでは、
最適化対象の前記風車のうち少なくとも一つの設定変更風車の制御設定を変更し、
最適化対象の前記風車のうち各々の前記設定変更風車よりも下流側に位置する1以上の風下側風車の各々について、前記設定変更風車の前記制御設定の変更の影響が前記風下側風車に到達するまでの遅れ時間を算出し、
前記最適化対象の前記風車の総出力を少なくとも含む評価値を求め、
前記評価値に基づいて、前記最適化対象の前記風車のうち1以上の風車について制御設定を更新するとともに、
前記評価値を求める際、前記設定変更風車の前記制御設定の変更時点から前記遅れ時間を経過した後の前記風下側風車の各々の出力を用いて前記最適化対象の前記風車の総出力を算出し、該総出力の算出結果から前記評価値を求める
ことを特徴とするウィンドファームの運転方法。
前記ウィンドファーム制御装置により、前記最適化処理に先行して行われるデータ処理である一次処理を、前記複数の風車の出力を含む運転データに対して実行開始するように前記複数のローカル制御装置にデータ処理開始指令を送り、
各々の前記ローカル制御装置により、各々の前記風車の前記運転データの前記一次処理を行い、前記一次処理の結果を前記ウィンドファーム制御装置に送る
ことを特徴とする請求項10に記載のウィンドファームの運転方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、ローカル制御装置に対して修正ピッチ角を与えると記載されているが、中央制御装置からローカル制御装置に不適切な翼ピッチ角が指令された場合は風車に異常が発生することも考えられるため、翼ピッチ角に関する指令を中央制御装置(ウィンドファーム制御装置)からローカル制御装置に与えることは風車の安全面の観点から望ましくない。また、上記特許文献1は、既設のウィンドファームに対して該ウィンドファームの発電出力を最適化する制御装置を追加設置する技術について何ら開示されていない。
【0006】
上述した問題に鑑み、本発明の少なくとも一実施形態は、ローカル制御装置の機能を変更することなく、既設のウィンドファームの発電出力を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るウィンドファームは、
複数の風車と、
前記複数の風車に対してそれぞれ設けられ、各々の前記風車のオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各々の前記風車のカットアウト制御の少なくとも一つの制御を行うための複数のローカル制御装置と、
前記複数の風車の最適化処理を行うとともに、前記最適化処理の結果に基づいて各々の前記風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも一つを各々の前記ローカル制御装置に与えるように構成されたウィンドファーム制御装置と、
を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、複数の風車に対応付けてそれぞれ設けられた複数のローカル制御装置により、各風車のオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各風車のカットアウト制御のうち少なくとも一方の制御が行われる。また、ウィンドファーム制御装置により、複数の風車の最適化処理が行われるとともに、該最適化処理の結果に基づいて各風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも1つが各ローカル制御装置に与えられる。つまり、ウィンドファーム制御装置から各ローカル制御装置に対して、各風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値のうち少なくとも一方が与えられる。これにより、既設のウィンドファームに対して各ローカル制御装置の機能を変更することなく発電出力を最適化するウィンドファーム制御装置を追加設置することができる。したがって、既設のウィンドファームにおける各風車の安全性に影響を与えずに、各風車の最適化処理を通じてウィンドファームの総発電出力を改善することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のウィンドファームにおいて、
少なくとも前記複数のローカル制御装置からの情報収集を行うための中央制御ユニットと、
前記中央制御ユニットと前記複数のローカル制御装置との間に設けられるネットワークハブと、
をさらに備え、
前記ウィンドファーム制御装置は、前記ネットワークハブを介して前記複数のローカル制御装置に接続される。
【0010】
上記(2)の構成によれば、ウィンドファーム制御装置は、複数のローカル制御装置からの情報収集を行う中央制御ユニットとは別の制御装置として、ネットワークハブを介して複数のローカル制御装置にそれぞれ接続される。つまり、既設のウィンドファームにおける複数の風車にそれぞれ対応する複数のローカル制御装置、中央制御ユニット及びこれらの接続を集中的に中継するネットワークハブの機能を変更することなく、ネットワークハブにウィンドファーム制御装置を追加設置するという簡易な構成で、既設のウィンドファームの運転を最適化することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のウィンドファームにおいて、
各々の前記ローカル制御装置は、各々の前記風車の運転データの一次処理を行い、前記一次処理の結果を前記ウィンドファーム制御装置に送るように構成される。
【0012】
上記(3)の構成によれば、各風車の運転データの一次処理が各々のローカル制御装置で行われ、該一次処理の結果がウィンドファーム制御装置に送られる。したがって、複数のローカル制御装置に接続されるウィンドファーム制御装置において各風車の運転データの一次処理を行う必要がない。これにより、ウィンドファーム制御装置における演算負荷を低減することができるため、最適化処理を円滑に行うことができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1つに記載のウィンドファームにおいて、
前記ウィンドファーム制御装置は、
最適化対象の前記風車のうち少なくとも一つの設定変更風車の制御設定を変更するための設定変更部と、
最適化対象の前記風車のうち各々の前記設定変更風車よりも下流側に位置する1以上の風下側風車の各々について、前記設定変更風車の前記制御設定の変更の影響が前記風下側風車に到達するまでの遅れ時間を算出するための遅れ時間算出部と、
前記最適化対象の前記風車の総出力を少なくとも含む評価値を求めるための評価値算出部と、
前記評価値に基づいて、前記最適化対象の前記風車のうち1以上の風車について制御設定を更新するための設定更新部と、
を含み、
前記評価値算出部は、前記設定変更風車の前記制御設定の変更時点から前記遅れ時間を経過した後の前記風下側風車の各々の出力を用いて前記最適化対象の前記風車の総出力を算出し、該総出力の算出結果から前記評価値を求める
ように構成される。
【0014】
ウィンドファームの運転を最適化する際の最適化目標(評価関数値)の算出においては、風車間の離隔距離と風速とから求められる時間遅れを考慮することが望ましい。
上記(4)の構成によれば、最適化対象の風車のうち設定変更風車の制御設定が設定変更部により変更されると、設定変更風車の下流側に位置する1以上の風下側風車の各々について、設定変更風車に加えられた設定変更の影響が各々の風下側風車に到達するまでの遅れ時間が遅れ時間算出部によって算出される。また、評価値算出部により、設定変更風車の制御設定の変更時点から遅れ時間を経過した後における風下側風車の各々の出力を用いて最適化対象の風車の総出力が算出され、該総出力の算出結果に基づいて評価値が求められる。そして、評価値算出部によって求められた評価値に基づき、設定更新部が、最適化対象の風車のうち1以上の風車について制御設定を更新する。したがって、上流側風車に加えられた設定変更の影響が、下流側風車に到達するタイミングにおける風下側風車の出力を考慮して求められた評価値に基づいて該下流側風車の制御設定が変更されるため、ウィンドファームの実情に則したより適切な評価値を得ることができる。これにより、上流側風車に加えた設定変更による下流側風車への影響の遅れ時間を適切に考慮しながら、ウィンドファーム全体の発電総出力の最適化目標を設定することが可能となる。さらに、既設のウィンドファームに対してこのような制御装置を追加適用することにより、小規模の改造で効果的にウィンドファームの出力最適化を実現することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載のウィンドファームにおいて、
前記ウィンドファーム制御装置は、前記複数の風車の出力を含む運転データの一次処理を開始するように前記複数のローカル制御装置にデータ処理開始指令を送るためのデータ処理開始指令部を含み、
各々の前記ローカル制御装置は、各々の前記風車の前記運転データの前記一次処理を行い、前記一次処理の結果を前記ウィンドファーム制御装置に送るように構成される。
【0016】
上記(5)の構成によれば、データ処理開始指令部により送信されたデータ処理開始指令に応じて、各ローカル制御装置が、複数の風車の出力を含む運転データの一次処理を行い、該一次処理の結果が各ローカル制御装置からウィンドファーム制御装置に送信される。これにより、ウィンドファーム制御装置の操作者は、必要に応じて必要なタイミングで各風車の運転データを収集することができるとともに、収集した一次処理の結果に基づき、例えば、ピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値のうち少なくとも1つを各ローカル制御装置に送信することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載のウィンドファームにおいて、
前記少なくとも一つの設定変更風車は、
第1設定変更風車と、
前記第1設定変更風車よりも下流側に位置する第2設定変更風車と、
を含み、
前記設定変更部は、
前記第1設定変更風車の前記制御設定の変更の影響が前記第2設定変更風車に到達するまで、前記第2設定変更風車の前記制御設定の前回値を保持し、
前記第1設定変更風車の前記制御設定の変更の影響が前記第2設定変更風車に到達したとき、前記第2設定変更風車の前記制御設定を変更する
ように構成される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、第1設定変更風車における制御設定の変更の影響が、該第1設定変更風車よりも風向の下流側に位置する第2設定変更風車に到達するまで、第2設定変更風車では前回の制御設定値が保持される。つまり、第1設定変更風車における制御設定の変更の影響が第2設定変更風車に到達するまでの遅れ時間が経過する前には第2設定変更風車の制御設定が変更されることがなく、上記遅れ時間が経過した後に第2設定変更風車の制御設定が変更される。したがって、第1設定変更風車に対する制御設定の変更の影響に対して、第2設定変更風車の設定変更による改善効果が表れ得る適切なタイミングで第2設定変更風車の制御設定を変更することができる。また、遅れ時間の経過前に第2設定変更風車の制御設定を変更することによる出力減少の可能性を低減することができる。これにより、ウィンドファーム全体の発電総出力の最適化を図ることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れか1つに記載のウィンドファームにおいて、
前記制御設定は、各々の前記風車の発電出力指令、ピッチ角指令又は方位指令の少なくとも一つを含む。
【0020】
上記(7)の構成によれば、設定変更部により変更される設定変更風車の制御設定には各々の風車の発電出力指令、ピッチ角又は方位指令のうち1以上が含まれる。つまり、各々の風車の発電出力指令、ピッチ角指令又は方位指令の少なくとも1つを含む制御設定の変更による影響が下流側風車に到達するまでの遅れ時間を適切に考慮しながら、ウィンドファーム全体の発電総出力の最適化を図ることができる。
【0021】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係るウィンドファームの運転方法は、
複数の風車と、前記複数の風車に対してそれぞれ設けられる複数のローカル制御装置と、前記複数の風車の最適化処理を行うためのウィンドファーム制御装置と、を備えるウィンドファームの運転方法であって、
各々の前記ローカル制御装置により、各々の前記風車のオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各々の前記風車のカットアウト制御の少なくとも一つの制御を行うステップと、
前記ウィンドファーム制御装置により前記複数の風車の最適化処理を行うステップと、
前記最適化処理の結果に基づいて各々の前記風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも一つを前記ウィンドファーム制御装置から各々の前記ローカル制御装置に与えるステップと、
を備える。
【0022】
上記(8)の構成によれば、複数の風車に対応付けてそれぞれ設けられた複数のローカル制御装置により、各風車のオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各風車のカットアウト制御のうち少なくとも一方の制御が行われる。また、ウィンドファーム制御装置により、複数の風車の最適化処理が行われるとともに、該最適化処理の結果に基づいて各風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも1つが各ローカル制御装置に与えられる。つまり、ウィンドファーム制御装置から各ローカル制御装置に対して、各風車のピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値のうち1以上が与えられる。これにより、既設のウィンドファームに対して各ローカル制御装置の機能を変更することなく発電出力を最適化するウィンドファーム制御装置を追加設置することができる。したがって、既設のウィンドファームにおける各風車の安全性に影響を与えずに、各風車の最適化処理を通じてウィンドファームの総発電出力を改善することができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載のウィンドファームの運転方法において、
各々の前記ローカル制御装置により、各々の前記風車の運転データの一次処理を行うステップと、
前記一次処理の結果を前記ウィンドファーム制御装置に送るステップと、を備える。
【0024】
上記(9)の構成によれば、各風車の運転データの一次処理が各々のローカル制御装置で行われ、該一次処理の結果がウィンドファーム制御装置に送られる。したがって、複数のローカル制御装置に接続されるウィンドファーム制御装置において各風車の運転データの一次処理を行う必要がない。これにより、ウィンドファーム制御装置における演算負荷を低減することができるため、最適化処理を円滑に行うことができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(8)又は(9)に記載のウィンドファームの運転方法において、
前記最適化処理を行うステップでは、
最適化対象の前記風車のうち少なくとも一つの設定変更風車の制御設定を変更し、
最適化対象の前記風車のうち各々の前記設定変更風車よりも下流側に位置する1以上の風下側風車の各々について、前記設定変更風車の前記制御設定の変更の影響が前記風下側風車に到達するまでの遅れ時間を算出し、
前記最適化対象の前記風車の総出力を少なくとも含む評価値を求め、
前記評価値に基づいて、前記最適化対象の前記風車のうち1以上の風車について制御設定を更新するとともに、
前記評価値を求める際、前記設定変更風車の前記制御設定の変更時点から前記遅れ時間を経過した後の前記風下側風車の各々の出力を用いて前記最適化対象の前記風車の総出力を算出し、該総出力の算出結果から前記評価値を求める。
【0026】
上記(10)の構成によれば、最適化対象の風車のうち設定変更風車の制御設定が変更されると、設定変更風車の下流側に位置する1以上の風下側風車の各々について、設定変更風車に加えられた設定変更の影響が各々の風下側風車に到達するまでの遅れ時間が算出される。また、設定変更風車の制御設定の変更時点から遅れ時間を経過した後における風下側風車の各々の出力を用いて最適化対象の風車の総出力が算出され、該総出力の算出結果に基づいて評価値が求められる。そして、求められた評価値に基づいて、最適化対象の風車のうち1以上の風車について制御設定が更新される。したがって、上流側風車に加えられた設定変更の影響が、下流側風車に到達するタイミングにおける風下側風車の出力を考慮して求められた評価値に基づいて該下流側風車の制御設定が変更されるため、ウィンドファームの実情に則したより適切な評価値を得ることができる。これにより、上流側風車に加えた設定変更による下流側風車への影響を適切に考慮しながら、ウィンドファーム全体の発電総出力の最適化目標を設定することが可能となる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)に記載のウィンドファームの運転方法において、
前記ウィンドファーム制御装置は、前記複数の風車の出力を含む運転データの一次処理を開始するように前記複数のローカル制御装置にデータ処理開始指令を送り、
各々の前記ローカル制御装置により、各々の前記風車の前記運転データの前記一次処理を行い、前記一次処理の結果を前記ウィンドファーム制御装置に送る、ように構成されてもよい。
【0028】
上記(11)の構成によれば、ウィンドファーム制御装置により送信されたデータ処理開始指令に応じて、各ローカル制御装置が、複数の風車の出力を含む運転データの一次処理を行い、該一次処理の結果が各ローカル制御装置からウィンドファーム制御装置に送信される。これにより、ウィンドファーム制御装置の操作者は、必要に応じて必要なタイミングで各風車の運転データを収集することができるとともに、収集した一次処理の結果に基づき、例えば、ピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値のうち少なくとも1つを各ローカル制御装置に送信することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ナセル重量を低減とともに組み立て性を向上させた再生可能エネルギー型発電装置を提供することできる。また、本発明の少なくとも一実施形態によれば、組み立て性を向上させた再生可能エネルギー型発電装置の組み立て方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0032】
図1はウィンドファームの構成例を示す図である。
図2はウィンドファームを構成する風車の一例を示す図である。
【0033】
図1に示すように、幾つかの実施形態に係るウィンドファーム1は、複数の風車T(T1〜Tn)と、各風車Tとそれぞれ信号線2を介して電気的に接続されたウィンドファーム・コントローラ10(ウィンドファームの制御装置)と、を備える。ウィンドファーム・コントローラ10は、複数の風車T1〜Tnを備えたウィンドファーム1の運転制御を司る。幾つかの実施形態において、ウィンドファーム1は、複数の風車Tに対してそれぞれ設けられた複数のローカル制御装置LC(LC1〜LCn)を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、ウィンドファーム1は、少なくとも複数のローカル制御装置LCからの情報収集を行うためのSCADAサーバ4(中央制御ユニット)と、該SCADAサーバ4と複数のローカル制御装置LCとの間に設けられたネットワークハブ3と、をさらに備えてもよい。幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、ネットワークハブ3を介して複数のローカル制御装置LCに接続されてもよい。
以下、ウィンドファーム1を構成する風車T1〜T3の例を挙げた後、ローカル制御装置LC及びウィンドファーム・コントローラ10の詳細について説明する。なお、
図1では複数の風車として3台の風車T1〜T3を例示しているが、ウィンドファーム1を構成する風車の数はこれに限定されず、任意の数(例えば、n又はN)であってよい。
【0034】
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム1の各風車T1〜T3は、
図2に示すように、複数のブレード102及びそれらが取り付けられるハブ104で構成されるロータ105と、ハブ104に連結された主軸106と、主軸106の回転力を受けて駆動される発電機110とを備えていてもよい。幾つかの実施形態において、主軸106と発電機110とはドライブトレイン108及びその出力軸109を介して連結されていてもよい。幾つかの実施形態において、ドライブトレイン108は、主軸106の回転を増速するギア式の増速機を備えていてもよい。幾つかの実施形態において、ドライブトレイン108は、ギア式の増速機に替えて、油圧トランスミッションを備えていてもよい。他の実施形態では、ドライブトレイン108に代えて、主軸106と発電機110とが直接接続されたダイレクトドライブ方式であってもよい。
【0035】
ドライブトレイン108及び発電機110は、主軸軸受107を介して主軸106を回転自在に支持するナセル112に収納されていてもよい。ナセル112の底面を構成するナセル台板114は、ヨー旋回軸受118を介してタワー116によって支持されていてもよい。なお、ナセル台板114には、ヨーモータ21(
図3参照)及びピニオンギアを有するヨー旋回機構119が固定されていてもよく、タワー116側に設けられたリングギアにヨー旋回機構119のピニオンギアを噛み合わせた状態でヨーモータ21を駆動することでナセル112をタワー116に対して旋回可能になっていてもよい。さらに、各ブレード102は、翼旋回軸受(不図示)を介してハブ104に支持されており、ハブ104内に設けられたピッチ駆動アクチュエータ23(
図3参照)によってピッチ角が調節可能になっていてもよい。
【0036】
なお、
図2に示した構成例の風車Tにおいて、各種部品の損傷状態又は劣化状態を示す状態値が状態値検出センサ(例えば、
図3に示す荷重センサ33等を含む)によって取得され、ウィンドファーム・コントローラ10に報告されるようになっている。
各風車T1〜T3の各種部品の状態値の具体例として、ブレード102の損傷状態又は劣化状態を示すものとしてブレード102の重量、各ブレード102間の重量アンバランス、ブレード102の振動等を挙げることができ、タワー116の損傷状態又は劣化状態を示すものとしてタワー116基部又はタワー116上部の疲労荷重やタワー116の振動等を挙げることができ、増速機や油圧トランスミッション等のドライブトレイン108の損傷状態又は劣化状態を示すものとして主軸軸受107や油圧ポンプの軸受の振動、主軸106の振動や振れ回り、油圧ポンプのピストン振動や振幅、油圧トランスミッションの効率等を挙げることができ、ナセル台板114やハブ104等の鋳物からなる部材の損傷状態又は劣化状態を示すものとして応力集中による疲労を挙げることができる。
【0037】
次に、ローカル制御装置LCの詳細について説明する。
図3は、幾つかの実施形態にローカル制御装置LCにおける制御系の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、幾つかの実施形態において、ローカル制御装置LCは、例えば、コンピュータであり、CPU51、該CPU51が実行する各種プログラムやテーブル等のデータを記憶するための記憶部としてのROM(Read Only Memory)53、各プログラムを実行する際の展開領域や演算領域等のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)52の他、図示しない大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース、及び外部記憶装置が装着されるアクセス部などを備えていてもよい。これらは全て、バス54を介して接続されており、バス54は信号線2(
図1参照)及びネットワークハブ3を介してウィンドファーム・コントローラ10及びSCADAサーバ4と電気的に接続されている。更に、ウィンドファーム・コントローラ10は、例えば、キーボードやマウス等からなる入力部(図示省略)及びデータを表示する液晶表示装置等からなる表示部(図示省略)等と接続されていてもよい。
【0038】
幾つかの実施形態において、ローカル制御装置LCには、各風車T1〜T3に設けられた風向センサ31、風速センサ32及び荷重センサ33の各々から、それぞれ風向、風速及び荷重に関する検知信号が送信されてもよい。上記の荷重センサ33は、例えば、主軸軸受107やタワー116等、装置荷重や風による負荷が作用する場所に1つ以上設置されていてもよい。幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、バス14及び信号線2を介してヨーモータ21、ヨーブレーキ駆動アクチュエータ22、ピッチ駆動アクチュエータ23及びピッチブレーキ駆動アクチュエータ24と電気的に接続されていてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態において、ROM13には、後述する安全制御プログラム55が格納されていてもよい。
【0040】
続いて、ウィンドファーム・コントローラ10の詳細について説明する。
図4は、幾つかの実施形態に係るウィンドファーム・コントローラ10(ウィンドファームの制御装置)における制御系の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、例えば、コンピュータであり、CPU11、該CPU11が実行する各種プログラムやテーブル等のデータを記憶するための記憶部としてのROM13、各プログラムを実行する際の展開領域や演算領域等のワーク領域として機能するRAM12の他、図示しない大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース、及び外部記憶装置が装着されるアクセス部などを備えていてもよい。幾つかの実施形態では、ウィンドファーム・コントローラ10は、後述する制御設定を更新する工程で得られた最適な制御設定を風況パラメータと関連付けて保存するデータベース19を含んでもよく、データベース19には発電出力分配テーブル(図示省略)等が格納されていてもよい。これらは全て、バス14を介して接続されており、バス14は信号線2(
図1参照)を介してウィンドファーム1の各風車T1〜T3と電気的に接続されている。更に、ウィンドファーム・コントローラ10は、例えば、キーボードやマウス等からなる入力部(図示省略)及びデータを表示する液晶表示装置等からなる表示部(図示省略)等と接続されていてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10には、各風車T1〜T3に設けられた風向センサ31、風速センサ32及び荷重センサ33の各々から、それぞれ風向、風速及び荷重に関する検知信号が送信されてもよい。幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、バス14及び信号線2を介してヨーモータ21、ヨーブレーキ駆動アクチュエータ22、ピッチ駆動アクチュエータ23及びピッチブレーキ駆動アクチュエータ24と電気的に接続されていてもよい。
【0042】
幾つかの実施形態において、ROM13には、各風車T1〜T3の発電量からウィンドファーム1の全体出力を算出する出力算出プログラム15や、ウィンドファーム1の全体出力を最適化するための第1出力最適化プログラム16(運転制御プログラム)、第2出力最適化プログラム17(運転制御プログラム)及び第3出力最適化プログラム18(運転制御プログラム)が格納されていてもよい。これらのプログラムについては後述する。
【0043】
ここで、幾つかの実施形態におけるウィンドファーム1の出力最適化処理について詳しく説明する。本明細書で説明する幾つかの実施形態におけるウィンドファームの最適化処理は、特定のパラメータに着目した最適化処理に限られず、種々の最適化処理に適用できる。具体的には、例えば、発電出力に着目した最適化処理であってもよい。他の実施形態では、例えば、各風車Tの機械的疲労を低減するための最適化処理等であってもよい。また、その際の最適化処理に用いる手法として、従来の最適化手法の1つである同時摂動確率近似法(SPSA)を用いてもよいし、これを発展させた多解像度同時摂動確率近似法(MR−SPSA)を用いてもよい。幾つかの実施形態では、MR−SPSAをベースに、さらに発展させた最適化処理を適用することにより、ウェイクの影響を考慮してウィンドファーム1全体の出力最適化が図られる。
【0044】
まず、最適化手法の例として、同時摂動確率近似法(SPSA)及び多解像度同時摂動確率近似法(MR−SPSA)について説明する。
【0045】
SPSAでは、ウィンドファーム1内に属する個々の風車Tの全てを夫々独立の制御対象とし、それぞれに独立のパラメータ設定値を用いて制御するいわゆる高解像度モードで制御が行われる(
図5参照)。具体的には、各パラメータに対してランダム変数である正又は負の摂動を与えた後の評価値(評価関数)に基づき次の摂動を決定して与え、改善代がなくなるまで繰り返すという計算アルゴリズムに従って各風車Tの制御が行われる。
【0046】
図6は、幾つかの実施形態における基本的な制御法である同時摂動確率近似法(SPSA)の処理概念を示す模式図である。幾つかの実施形態において、
図6に示すプラント41は、例えば、複数の風車T1〜Tnを含むウィンドファーム1であってもよい。
【0047】
一般に、ウィンドファーム1等の風力発電プラントは、再生可能エネルギーを利用した発電プラントであり、例えば、風向、風速、温度、湿度、空気密度…、等の風況が刻々と変化するため、制御対象を明確に特定することが困難とされる。
【0048】
このため、幾つかの実施形態では、例えば、
図6に示すように、プラント41(Plant)を伝達関数が不明な制御対象として、該プラント41に対するコントローラ40からの入力値(Measured input)と、該入力値を入力した際におけるプラント41からの出力値(Measured output)とを測定し、出力値がコントロール目標42(Control objective)に近づいたか否かに応じて次の入力値を決定するフィードバック制御が行われる。プラント41からの出力値はまた、コントローラ40への参照入力値と比較され、その差(Measured error)がコントローラ40及びコントロール目標42に入力される。
【0049】
そして、繰り返し行われるループ制御の各ループ(以下、イタレーションとする)における制御結果(Control performance)がコントロール目標42から最適化ツール(Optimization tool)43に入力される。最適化ツール43は、第1イタレーションにおける制御結果の入力を受けて、次の第2イタレーションでのプラント41に対する入力値に関し、複数の制御パラメータに対して摂動を印加する。摂動は、最初の制御設定(例えば、θ
k)に対して、例えば、ランダム変数である+Δ
k又は−Δ
kが与えられる。幾つかの実施形態では、摂動を与える際に、全ての最適化対象の風車Tに対して同時に摂動を与えてもよい。このようにすれば、ウィンドファーム1全体として最適な制御設定に、より短時間で迅速に到達することができ、ウィンドファーム1全体の総発電出力を短時間に改善することができる。
【0050】
続いて、上記の摂動と、該摂動が与えられた第2イタレーションの制御結果とから、最適化ツール43において評価値(評価関数L)の勾配が求められ、次の制御パラメータが決定され、次のイタレーションにおけるコントローラ40へのチューニングコマンドとしてコントローラ40に送られる。これを繰り返すことにより、最適解すなわち最適化された制御設定が探索される。
【0051】
一方、MR−SPSAでは、制御対象とすべき、ウィンドファーム1内に属する全風車T(例えば、N個)を、その総数未満(例えば、M個。但し、N>M)となる幾つかのグループに分け、同一グループ内の風車Tに対して同一のパラメータ設定値を用いて制御を行う低解像度モードと、個々の風車Tの全てを夫々独立の制御対象とし、それぞれに独立のパラメータ設定値を用いて制御する高解像度モードとを状況に応じて切り替え、各パラメータに対してランダム変数である正又は負の摂動を与えた後の評価値(評価関数)に基づき、次の摂動を決定して与え、改善代がなくなるまで繰り返すという計算アルゴリズムに従って各風車Tの制御が行われる。
【0052】
また、MR−SPSAでは、最適設定解を求める反復計算の各イタレーションにおいて、低解像度モードでは摂動成分として第1摂動成分Δ
k1が用いられ、高解像度モードでは摂動成分として第2摂動成分Δ
k2が用いられる。つまり、MR−SPSAでは第1摂動成分Δ
k1と第2摂動成分Δ
k2との何れか一方が摂動として与えられる。
【0053】
上記MR−SPSAでは、最適設定解を求める反復計算の初期段階では制御モードを低解像度モードに設定し、例えば、ヨー旋回やピッチ角についてグループ毎に大まかな修正(制御設定値の更新)が行われる。そして、評価値の変化がある値以下となった際に制御モードが高解像度モードに切り替えられ、個々の風車について細部の微調整が行われる。これにより、最適設定に到達するまでの時間が短縮されてウィンドファーム全体の発電効率を上げることができる(
図5参照)。
【0054】
図7(a)及び
図7(b)は、幾つかの実施形態におけるウィンドファーム1の制御方法であって、基本的な制御法である多解像度同時摂動確率近似法(MR−SPSA)の処理概念を示す模式図であり、
図7(a)は低解像度モードの一例を示し、
図7(b)は高解像度モードの例を示す。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ウィンドファーム1は、例えば、図中の縦方向(Y方向とする)に4行、Y方向と直交する紙面横方向(X方向とする)に4列で配置された計16台の風車T1〜T16を含んでいてもよい。これらの風車T1〜T16は、X方向及びY方向において等間隔に配置されていてもよい。各風車T間の距離は、例えば、ロータ105の直系をDとしてDの倍数で表されてもよい。なお、説明の便宜上、
図7(a)及び
図7(b)中の各16台の風車には、それぞれ左上から右方向に順にT1〜T16の番号を付している。
【0055】
いま、図の左下から右上方向(例えば、風向ベクトル(x,y)=(1,1))に向けて風が吹いているとする。
この場合、風上側すなわち風向の上流側に配置される前方の風車T(例えば、
図7(a)中に破線で示す左下から3行3列の風車T5〜T7,T9〜T11及びT13〜T15をグループG1とする)に対して、風下側すなわち風向の下流側に配置される後方の風車T(例えば、
図7(a)中に破線で示す最上段及び最右列の風車T1〜T4,T8,T12及びT16をグループG2とする)は通常、前方風車Tの後流すなわちウェイクの影響により、グループG1に含まれる風車Tと比較して各々の発電出力が小さくなる。そこで、
図7(a)に示す低解像度モードでは、風上側に位置するグループG1内の各風車Tについては同グループG1内で同一の制御パラメータ(例えば、θ
k1)を用いて制御し、風下側に位置するグループG2内の各風車TについてもそれぞれグループG2内で同一の制御パラメータ(例えば、θ
k2)を用いて制御するように構成されてもよい。
なお、グループ化は上述したグループG1、G2に限られず、種々のパターンが有り得る。例えば、
図7(a)中、左から吹く風に対しては、最左列の風車T1,T5,T9及びT13を少なくとも含むグループを上流側グループG1とし、最右列の風車T4,T8,T12及びT16を少なくとも含むグループを下流側グループG2としてもよい。さらに、その他のパターンでグループ化されていてもよい。
【0056】
一方、
図7(b)に示す高解像度モードでは、全風車T(T1〜T16)のそれぞれが制御対象であり、各々の風車T1〜T16について、個別に独立した制御パラメータを用いて制御するように構成されてもよい。
【0057】
以上を踏まえ、例えば、上述した風車T1〜T16を制御対象として、風上側のグループG1と風下側のグループG2とにグループ分けして行われる低解像度モードでの処理について説明する。
幾つかの実施形態において、低解像度モードにおけるランダム変動をΔ
k1とし、高解像度モードにおけるランダム変動をΔ
k2とする。幾つかの実施形態において、Δ
k2は各要素が独立したランダム変数である。一方、低解像度モードにおけるΔ
k1の要素は、例えば、Δ
k11とΔ
k12の2つのみとなる。これは、各グループ(
図7(a)に破線で示す)内の風車Tでは同一の制御設定を用いて制御されるからである。
図7(a)の各風車T1〜T16における摂動Δ
k1は順に以下の式(1)のようになる。
【0058】
[数1]
Δ
k1 =[Δ
k11 , Δ
k11 ,Δ
k11 ,Δ
k11 ,Δ
k12 ,Δ
k12 ,Δ
k12 ,Δ
k11 ,Δ
k12 ,Δ
k12 ,Δ
k12 ,Δ
k11 ,Δ
k12 ,Δ
k12, Δ
k12 ,Δ
k11]
T ・・・(1)
【0059】
このとき、
図8に示すように、例えば、制御設定は式(2)で表され、評価値Lは式(3)で表され、制御設定の更新アルゴリズムはそれぞれ式(4)〜(6)で表されるように設定されてもよい。
ここで、a
k1、a
k2、c
k1、c
k2はそれぞれゲインであり、Δ
k1、Δ
k2はそれぞれ無次元のランダム変数からなる摂動である。
つまり、幾つかの実施形態では、SPSAにおけるΔ
kに代えてΔ
k1又はΔ
k2を用いる従来のMR−SPSAと異なり、SPSAにおけるΔ
kに代えてΔ
k1及びΔ
k2を同時に用いて最適化制御が行われる。
【0060】
幾つかの実施形態では、上記の最適化制御により、例えば、
図5に太線で示すように、ウィンドファーム1の全体出力について、最適化されるまでの時間が従来のSPSAやMR−SPSAと比較してより一層短縮される。これは、上述した幾つかの実施形態では、低解像度モードと高解像度モードとを常に併用して運転されるため、低解像度モードと高解像度モードとの切換タイミングを考慮する必要がなく、風の変化に対して常に最適な摂動が与えられる制御が行われることによるものである。
なお、風の変化が少なく定常状態が長時間確保される場合の高解像度モードでは、ある一定の風況条件において制御ループを繰り返し実行して最適な制御設定となるまで収束させることが望ましいが、実際のウィンドファーム1では、風が時々刻々と変化するため、必ずしも高解像度モードで最適な制御設定まで収束させる必要がない。むしろ、刻々と変化する風に常に追従しながら、可能な限り最適な制御設定に近い設定状態において常に運用することで、ウィンドファーム1全体として発電の総出力を最適化することができる。
【0061】
続いて、上述した構成により、幾つかの実施形態において実現されるウィンドファーム1の運転方法すなわち、ウィンドファーム・コントローラ10が第1出力最適化プログラム16を実行することで実現される出力最適化制御(出力最適化処理)について説明する。なお、以下の説明では、ウィンドファーム・コントローラ10が第1出力最適化プログラム16を実行することで行われる処理内容がすなわちウィンドファーム1の運転方法となる。
【0062】
幾つかの実施形態において、複数の風車Tを含むウィンドファーム1のウィンドファーム・コントローラ10は、ROM13に格納された第1出力最適化プログラム16を読み出してRAM12に展開し、これを実行することにより、例えば、
図9に示すように、最適化対象の風車Tの各々の制御設定θ
kに摂動Δ
kを与える処理を実行する(ステップS1)。第1出力最適化プログラム16は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることで、最適化対象の風車Tの各々の制御設定に摂動を与えるための摂動付与部として機能する。次に、ウィンドファーム・コントローラ10は、上記摂動Δ
kを与えた後で、最適化対象とされた風車Tの総出力を少なくとも含む評価値Lを求める処理を実行する(ステップS2)。出力最適化プログラム16は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることにより、摂動を与えた後、最適化対象の風車Tの総出力を少なくとも含む評価値Lを求めるための評価値算出部として機能する。そして、ウィンドファーム・コントローラ10は、評価値Lの勾配に基づいて、最適化対象の風車Tの各々について制御設定θ
kを更新(ステップS3)する処理を実行してもよい。これにより、制御設定θ
kが更新されてθ
k+1となる。出力最適化プログラム16は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることにより、評価値Lの勾配に基づいて、最適化対象の風車Tの各々について制御設定θ
kを更新するための更新部として機能する。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記の摂動Δ
kを与える工程(ステップS1)では、例えば、
図10に示すように、低解像度モードに対応するM個のグループのそれぞれについて各グループに属する風車Tの制御設定θ
kに対して与えるべき第1摂動成分Δ
k1を設定してもよい(ステップS11)。また、高解像度モードに対応するN個(但し、N>M)のグループのそれぞれについて各グループに属する風車Tの制御設定θ
kに対して与えるべき第2摂動成分Δ
k2を設定してもよい(ステップS12)。そして、少なくとも第1摂動成分Δ
k1および第2摂動成分Δ
k2を含む摂動を各々の風車Tに与えてもよい(ステップS13)。上述した幾つかの実施形態では、例えば、M=2(グループG1,G2)であり、N=16(ウィンドファーム1内の風車Tの総数)としてもよい。
【0064】
上記の構成では、低解像度モードに対応する第1摂動成分Δ
k1と、高解像度モードに対応する第2摂動成分Δ
k2との両方を含む摂動が常時、ウィンドファーム1に含まれる風車Tの各々に与えられる。そして、その後に求められた評価値Lの勾配に基づき、最適化対象の風車Tの各々について制御設定θ
kが更新される。これにより、個々の風車Tが、例えば、風向や風速の変化に対してウィンドファーム1全体として即効性のある低解像度モードでの大まかな対応と、個々の風車Tの位置における最適な制御設定θ
kに微修正する高解像度モードでの詳細な対応とを切り替えることなく並列的に行うことができるため、ウィンドファーム1全体として常時最適な応答を行うように運転することができる。したがって、第1摂動成分Δ
k1及び第2摂動成分Δ
k2の何れか一方の摂動を各々の風車Tに与えていた従来のウィンドファーム(例えば、
図5に示すSPSAやMR−SPSAを用いたウィンドファーム)に比べて、風の変動により各風車Tの最適な制御設定θ
kが変化した場合でも、新しい最適な制御設定θ
k+nに短時間で到達することができる。また、低解像度モードにおけるグループ分けの対象や高解像度モードでの最適化対象には全ての風車Tが含まれるため、一台ずつ制御設定を行っていた従来のウィンドファームに比べて、ウィンドファーム1全体の総発電出力を短時間に改善することができる。さらに、既設のウィンドファームに対してこのウィンドファームの制御装置10を追加適用することにより、小規模の改造又はアップデートで効果的にウィンドファーム1の出力最適化を実現することができる。
【0065】
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、上述した種々の最適化処理を行うに際して、さらに、各風車T間の離隔距離Dと風速Vとに基づき、風上側風車Tの後流が風下側風車Tに到達するまでの遅れ時間tを考慮し、この遅れ時間tを風下側風車Tの制御設定に反映させる処理を実行する。
【0066】
各風車T間の離隔距離Dと風速Vとを考慮する際には、風車Tの設置位置に関する設置情報、各風車Tで計測された風速情報及び風向情報等を用いる。幾つかの実施形態では、各風車Tに固有の特性を表す風車特性係数を含んでもよい。
ここで使われる風速情報は、風車Tに対する流入風速ではなく、後流風速であることが望ましい。
後流風速は、例えば、風上側風車Tのナセル112に設けられた風向・風速計(風向センサ31及び風速センサ32)により計測された風速を用いてもよいし、風下側風車Tの前方に設けられたライダー(LIDAR)により計測された風速を用いてもよい。幾つかの実施形態では、風上側風車Tへの流入風速、該風上側風車Tのピッチ角、および、該風上側風車Tに固有の風車特性係数を用いた演算処理により得られた風速を用いてもよい。
【0067】
図11を参照し、時刻t=t1において風車T1に流入する風速をV1とする。この情報に基づいて最適化された制御設定は、時刻t=t1において風車T1にとって最適であるが、風車T1の制御設定を変更した影響が風車T2以降に伝わるには時間遅れがあるため、風車T2以降の風車Tにとっては必ずしも最適でない可能性がある。したがって、風車T2、T3・・・の制御設定を、時刻t=t1において変更することは望ましくない。
【0068】
幾つかの実施形態において、風車T1の制御設定を最適化された制御設定に変更した後の風車T1の後流風速をV2とすると、風車T1の制御設定の変更の影響が風車T2に到達するまでの遅れ時間はt=D2/V2である。したがって、風車T2の制御設定変更は、時刻t=t1+D1/V2であることが望ましい。同様に、風車T3の制御設定変更は、時刻t=t1+D1/V2+D2/V3であることが望ましく、それ以降の風車T4〜Tnについても同様である。また、V2、V3・・・は時々刻々変化することから、この変化を考慮することが更に望ましい。
【0069】
幾つかの実施形態では、最適化して得られた制御設定(例えば、各風車T間の風速比)を各風車Tへ指令する際に、風車T間の離隔距離Dと風速Vとを考慮し、前方風車Tの制御設定の変化による影響が到達するまで、後方風車Tは、前回の指令値を保持し、前方風車Tの制御設定変更の影響が到達した後に、制御設定の変更を行ってもよい。
【0070】
続いて、上述した構成により、幾つかの実施形態において実現されるウィンドファーム1の運転方法すなわち、ウィンドファーム・コントローラ10が第2出力最適化プログラム17を実行することで実現される上記の時間遅れを考慮した出力最適化制御(出力最適化処理)について説明する。なお、以下の説明では、ウィンドファーム・コントローラ10が第2出力最適化プログラム17を実行することで行われる処理内容がすなわちウィンドファーム1の運転方法となる。
【0071】
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、ROM13に格納された第2出力最適化プログラム17を読み出してRAM12に展開し、これを実行することにより、例えば、
図12に示すように、最適化対象の風車Tのうち少なくとも一つの設定変更風車Tの制御設定を変更してもよい(ステップS101)。第2出力最適化プログラム17は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることで、最適化対象の風車Tのうち少なくとも一つの設定変更風車Tの制御設定を変更するための設定変更部として機能する。次に、ウィンドファーム・コントローラ10は、最適化対象の風車Tのうち各々の設定変更風車Tよりも下流側に位置する1以上の風下側風車Tの各々について、設定変更風車Tの制御設定の変更の影響が風下側風車Tに到達するまでの遅れ時間を算出してもよい(ステップS102)。第2出力最適化プログラム17は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることで、最適化対象の風車Tのうち各々の設定変更風車Tよりも下流側に位置する1以上の風下側風車Tの各々について、設定変更風車Tの制御設定の変更の影響が風下側風車Tに到達するまでの遅れ時間を算出するための遅れ時間算出部として機能する。次に、ウィンドファーム・コントローラ10は、最適化対象の風車Tの総出力を少なくとも含む評価値を求めてもよい(ステップS103)。第2出力最適化プログラム17は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることで、最適化対象の風車Tの総出力を少なくとも含む評価値Lを求めるための評価値算出部として機能する。次に、ウィンドファーム・コントローラ10は、評価値Lに基づいて、最適化対象の風車Tのうち1以上の風車Tについて制御設定を更新してもよい(ステップS104)。第2出力最適化プログラム17は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることで、評価値Lに基づいて、最適化対象の風車Tのうち1以上の風車Tについて制御設定を更新する設定更新部として機能する。
幾つかの実施形態では、ウィンドファーム・コントローラ10は、評価値Lを求めるステップにおいて、設定変更風車Tの制御設定の変更時点から遅れ時間tを経過した後の風下側風車Tの各々の出力を用いて最適化対象の風車Tの総出力を算出し、該総出力の算出結果から評価値Lを求めてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、最適化対象の風車Tのうち設定変更風車Tの制御設定が変更されると、設定変更風車Tの下流側に位置する1以上の風下側風車Tの各々について、設定変更風車Tに加えられた設定変更の影響が各々の風下側風車Tに到達するまでの遅れ時間tが算出される。また、設定変更風車Tの制御設定の変更時点から遅れ時間tを経過した後における風下側風車Tの各々の出力を用いて最適化対象の風車Tの総出力が算出され、該総出力の算出結果に基づいて評価値Lが求められる。そして、求められた評価値Lに基づいて、最適化対象の風車Tのうち1以上の風車Tについて制御設定が更新される。したがって、上流側風車Tに加えられた設定変更の影響が、下流側風車Tに到達するタイミングにおける風下側風車Tの出力を考慮して求められた評価値Lに基づいて該下流側風車Tの制御設定が変更されるため、ウィンドファーム1の実情に則したより適切な評価値Lを得ることができる。これにより、上流側風車Tに加えた設定変更による下流側風車Tへの影響を適切に考慮しながら、ウィンドファーム1全体の発電総出力の最適化目標を設定することが可能となる。さらに、既設のウィンドファームに対してこのようなウィンドファーム・コントローラ10を追加適用することにより、小規模の改造で効果的にウィンドファーム1の出力最適化を実現することができる。
【0073】
図13に示すように、いくつかの実施形態において、少なくとも一つの設定変更風車Tは、第1設定変更風車T(例えば、風車T1)と、第1設定変更風車Tよりも下流側に位置する第2設定変更風車T(例えば、風車T2)とを含んでもよい。幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、制御設定を変更するステップ(ステップS101)では、第1設定変更風車Tの制御設定の変更の影響が第2設定変更風車Tに到達するまで、第2設定変更風車Tの制御設定の前回値を保持し(ステップS111)、第1設定変更風車Tの制御設定の変更の影響が第2設定変更風車Tに到達したとき(例えば、時刻t=t1+D1/V2)、第2設定変更風車Tの制御設定を変更してもよい(ステップS112)。
【0074】
上記の構成によれば、第1設定変更風車Tにおける制御設定の変更の影響が、該第1設定変更風車Tよりも風向の下流側に位置する第2設定変更風車Tに到達するまで、第2設定変更風車Tでは前回の制御設定値が保持される。つまり、第1設定変更風車Tにおける制御設定の変更の影響が第2設定変更風車Tに到達するまでの遅れ時間tが経過する前には第2設定変更風車Tの制御設定が変更されることがなく、上記遅れ時間tが経過した後に第2設定変更風車Tの制御設定が変更される。したがって、第1設定変更風車Tに対する制御設定の変更の影響に対して、第2設定変更風車Tでは適切なタイミングで制御設定を変更することができる。これにより、ウィンドファーム1全体の発電総出力の最適化を図ることができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、遅れ時間tは、設定変更風車Tと下流側風車Tとの間の距離Dと、設定変更風車Tの下流側の風速V(後流風速)と、に基づいて算出されてもよい。このようにすれば、設定変更風車Tの制御設定が変更されたことによる影響が下流側風車Tに到達するまでの遅れ時間tを算出する際の精度をより適切なものとすることができる。これにより、ウィンドファーム1全体の発電総出力の最適化を図ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、制御設定は、各々の風車Tの発電出力指令、ピッチ角指令又は方位指令の少なくとも1つを含んでもよい。このようにすれば、各々の風車Tの発電出力指令、ピッチ角指令又は方位指令の少なくとも1つを含む制御設定の変更による影響が下流側風車Tに到達するまでの遅れ時間tを適切に考慮しながら、ウィンドファーム1全体の発電総出力の最適化を図ることができる。
【0077】
上述した幾つかの実施形態によれば、複数の風車Tと、これら複数の風車Tを制御するウィンドファーム・コントローラ10と、を備えたウィンドファーム1が実現される。すなわち、上流側風車Tに加えた設定変更による下流側風車Tへの影響の遅れ時間tを適切に考慮しながら、ウィンドファーム1全体の発電総出力の最適化目標を設定することが可能となる。
【0078】
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、風力発電機を最適化目標に従って最適化する際に、風車T間の離隔距離Dと風速Vとを考慮し、前方風車Tの制御設定の変化による影響が到達した後に、最適化目標(評価関数値L)の評価を開始してもよい。
具体的には、時刻t=t1において風車T1に流入する風速をV1とし、時刻t=t1において風車T1に対して最適な制御設定を行ったとする。風車T1が制御設定を変更した影響が風車T2以降に伝わるには時間遅れがあるため、一定の時間は風車T2の制御設定は新たに求めた最適な制御設定へ変更することは望ましくない。このため更に、最適化目標(評価関数Lの値)の算出も、一定の時間を置いた後に開始することが望ましい。
【0079】
幾つかの実施形態において、風車T1の制御設定を最適化された制御設定へ変更した後の風車T1の後流風速をV2とすると、風車T2の最適化目標(評価関数値)算出開始は、時刻t=t1+D1/V2であることが望ましい。同様に、風車T3の最適化目標(評価関数値)算出開始は、時刻t=t1+D1/V2+D2/V3であることが望ましく、それ以降の風車T4〜Tnについても同様である。また、V2、V3・・・は時々刻々変化することから、この変化を考慮することが更に望ましい。
幾つかの実施形態において、最適化目標(評価関数Lの値)としては、各風車の発電出力(P1, P2, P3, ・・・)の時間平均を合計した平均総出力などを用いてもよい。
上記の構成とすれば、上流風車Tの制御設定変更の影響が下流風車Tへ伝わるまでの伝達遅れ(遅れ時間t)を考慮することで、最適化目標(評価関数Lの値)の算出が適性化される。これにより、各風車Tの制御設定が最適化され、ウィンドファーム1の総発電出力を改善することができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、ローカル制御装置LCは、各々の風車Tのオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各々の風車Tのカットアウト制御の少なくとも一つの制御を行うように構成されていてもよい。
具体的には、幾つかの実施形態において、ローカル制御装置LCは、ROM53に格納された安全制御プログラム55を読み出してRAM52に展開し、これを実行することにより、例えば、
図14に示すように、各々の風車Tのオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各々の風車Tのカットアウト制御の少なくとも一つの制御を行ってもよい(ステップS201)。安全制御プログラム55は、ウィンドファーム・コントローラ10に上記の処理を実現させることで安全制御部として機能してもよい。
【0081】
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、複数の風車Tの最適化処理を行うとともに、最適化処理の結果に基づいて各々の風車Tのピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも一つを各々のローカル制御装置LCに与えるように構成されていてもよい。
具体的には、幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、複数の風車Tの最適化処理を行ってもよい(ステップS202)。幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、最適化処理の結果に基づいて各々の風車Tのピッチ角、出力、方位角又は風向偏差の少なくとも一つの制限値を各々のローカル制御装置LCに与えてもよい(ステップS203)。
幾つかの実施形態において、ローカル制御装置LCは、ステップS203でウィンドファーム・コントローラ10から与えられた制限値に基づき、各風車Tのピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも一方を更新する処理を実行してもよい(ステップS204)。
【0082】
上記のように構成すれば、複数の風車Tに対応付けてそれぞれ設けられた複数のローカル制御装置LCにより、各風車Tのオーバースピード又はオーバーパワーの少なくとも一方を防止する制御、または、各風車Tのカットアウト制御のうち少なくとも一方の制御が行われる。また、ウィンドファーム・コントローラ10により、複数の風車Tの最適化処理が行われるとともに、該最適化処理の結果に基づいて各風車Tのピッチ角又は出力に関する制限値、方位角又は風向偏差に関する指令値の少なくとも1つが各ローカル制御装置LCに与えられる。つまり、ウィンドファーム・コントローラ10から各ローカル制御装置LCに対して、各風車Tのピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値のうち1以上が与えられる。これにより、既設のウィンドファームに対して各ローカル制御装置LCの機能を変更することなく発電出力を最適化するウィンドファーム・コントローラ10を追加設置することができる。したがって、既設のウィンドファームにおける各風車Tの安全性に影響を与えずに、各風車Tの最適化処理を通じてウィンドファーム1の総発電出力を改善することができる。
【0083】
幾つかの実施形態において、各々のローカル制御装置LCは、各々の風車Tの運転データの一次処理を行い、該一次処理の結果をウィンドファーム・コントローラ10に送るように構成されてもよい。具体的には、幾つかの実施形態において、各々のローカル制御装置LCは、例えば、
図15に示すように、各々の風車Tの運転データの一次処理を行い(ステップS205)、該一次処理の結果をウィンドファーム・コントローラ10に送ってもよい(ステップS206)。このようにすれば、各風車Tの運転データの一次処理が各々のローカル制御装置LCで行われ、該一次処理の結果がウィンドファーム・コントローラ10に送られる。したがって、複数のローカル制御装置LCに接続されるウィンドファーム・コントローラ10において各風車Tの運転データの一次処理を行う必要がない。これにより、ウィンドファーム・コントローラ10における演算負荷を低減することができるため、最適化処理を円滑に行うことができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、複数の風車Tの出力を含む運転データの一次処理を開始するように複数のローカル制御装置LCにデータ処理開始指令を送るためのデータ処理開始指令部(図示省略)を含んでもよく、各々のローカル制御装置LCは、データ処理開始指令部から送信されたデータ処理開始指令に基づき、各々の風車Tの運転データの一次処理を行い、一次処理の結果をウィンドファーム・コントローラ10に送るように構成されてもよい。
具体的には、幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、例えば、
図15に示すように、複数の風車Tの出力を含む運転データの一次処理を開始するように複数のローカル制御装置LCにデータ処理開始指令を送ってもよい(ステップS211)。各々のローカル制御装置LCは、ウィンドファーム・コントローラ10から送信されたデータ処理開始指令に応じて、各々の風車Tの運転データの一次処理を行い(ステップS212)、該一次処理の結果をウィンドファーム・コントローラ10に送ってもよい(ステップS213)。このようにすれば、データ処理開始指令部としてのウィンドファーム・コントローラ10により送信されたデータ処理開始指令に応じて、各ローカル制御装置LCが、複数の風車Tの出力を含む運転データの一次処理を行い、該一次処理の結果が各ローカル制御装置LCからウィンドファーム・コントローラ10に送信される。これにより、ウィンドファーム・コントローラ10の操作者は、必要に応じて必要なタイミングで各風車Tの運転データを収集することができるとともに、収集した一次処理の結果に基づき、例えば、各風車Tのピッチ角又は出力に関する制限値、もしくは、方位角又は風向偏差に関する指令値のうち少なくとも一方を各ローカル制御装置LCに送信することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、最適化処理を行うステップ(ステップS202参照)において、例えば、上述した
図12に示したように、最適化対象の風車Tのうち少なくとも一つの設定変更風車Tの制御設定を変更し(ステップS101参照)、最適化対象の風車Tのうち各々の設定変更風車Tよりも下流側に位置する1以上の風下側風車Tの各々について、設定変更風車Tの制御設定の変更の影響が風下側風車に到達するまでの遅れ時間tを算出し(ステップS102参照)、最適化対象の風車Tの総出力を少なくとも含む評価値Lを求め(ステップS103参照)、評価値Lに基づいて、最適化対象の風車Tのうち1以上の風車Tについて制御設定を更新してもよい(ステップS104参照)。
幾つかの実施形態において、ウィンドファーム・コントローラ10は、例えば、上述した
図13に示したように、評価値Lを求める際(ステップS103参照)、設定変更風車Tの制御設定の変更時点から遅れ時間tを経過した後の風下側風車Tの各々の出力を用いて最適化対象の風車Tの総出力を算出し(ステップS111参照)、該総出力の算出結果から評価値Lを求めてもよい(ステップS112参照)。
【0086】
以上説明した幾つかの実施形態によれば、ウィンドファーム・コントローラ10は、複数のローカル制御装置LCからの情報収集を行うSCADAサーバ4とは別の制御装置として、ネットワークハブ3を介して複数のローカル制御装置LCにそれぞれ接続される。つまり、SCADAサーバ4とは別にウィンドファーム・コントローラ10を設けることにより、既設のウィンドファームにおける複数の風車Tにそれぞれ対応する複数のローカル制御装置LC、SCADAサーバ4及びこれらの接続を集中的に中継するネットワークハブ3の機能を変更することなく、ネットワークハブ3にウィンドファーム・コントローラ10を追加設置するという簡易な構成で、既設のウィンドファームの運転を最適化することができる。
【0087】
なお、上述した幾つかの実施形態に係るウィンドファーム・コントローラ10は、複数の情報処理装置を備えてもよい。これらの情報処理装置は、それらの各処理を分散して行ってもよい。
また、上述した幾つかの実施形態の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上述した種々の処理を行ってもよい。
【0088】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read−only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD(Compact Disc)−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0089】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0090】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。