特許第6863747号(P6863747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863747
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】減圧乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20210412BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20210412BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20210412BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   F26B5/04
   F26B9/06 A
   B05C9/12
   H01L21/68 N
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-419(P2017-419)
(22)【出願日】2017年1月5日
(65)【公開番号】特開2018-109473(P2018-109473A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米田 高志
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 学
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−076211(JP,A)
【文献】 特開2004−241702(JP,A)
【文献】 特開2015−159248(JP,A)
【文献】 特開2009−111234(JP,A)
【文献】 米国特許第06499367(US,B1)
【文献】 国際公開第2008/114337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
B05C 9/12
F26B 9/06
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された塗布膜を減圧環境下で乾燥させる減圧乾燥装置であって、
基板が収容される基板収容部を形成するチャンバ部と、
前記基板収容部に収容される基板を所定の高さ位置に保持するキャッチピンと、
供給された基板を前記キャッチピンに載置させるとともに、前記キャッチピン上の基板を排出させるリフトピンと、
を備え、
基板が前記キャッチピンに保持された状態で前記基板収容部が減圧環境下にある場合にはチャンバ部内に収容され、前記基板収容部の減圧環境を大気圧に戻す際に前記キャッチピンに保持された基板に当接して基板の支持を補助するサポートピンをさらに備え
前記チャンバ部には、前記基板収容部内に前記キャッチピンが取り付けられるプレート部を有しており、このプレート部には、前記サポートピンが挿通するサポートピン挿通孔が形成され、前記基板収容部が減圧環境下では、前記サポートピンは、前記サポートピン挿通孔の高さ位置以下になるように収容され、前記基板収容部が減圧環境下から大気圧に戻す際には、前記サポートピンが挿通孔から突出して基板に当接することを特徴とする減圧乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置により基板上に形成された塗布膜を大気圧よりも小さい圧力の減圧環境下で乾燥させる減圧乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、塗布装置により基板上にレジスト液が均一に塗布されることによって塗布膜が形成され、その後、減圧乾燥装置により塗布膜を乾燥させることにより生産される。
【0003】
減圧乾燥装置は、チャンバ部の基板収容部に基板が収容された状態で、基板収容部を減圧させることにより基板上の塗布膜を乾燥させるようになっている(下記特許文献1参照)。具体的には、図8に示すように、減圧乾燥装置は、チャンバ部100を有しており、このチャンバ部100は、チャンバ本体101とチャンバ蓋部102とによって構成され、チャンバ蓋部102がチャンバ本体101に当接し閉じた状態で基板Wを収容する基板収容部104が形成される(図8(a))。チャンバ本体101には、基板Wを所定の高さ位置に保持するキャッチピン103と、このキャッチピン103トは別に基板Wを基板収容部104に供給、又は基板収容部104から排出するリフトピン105(が設けられており、図8(b)に示すように、ロボットハンド等(不図示)により基板Wが供給されるとリフトピン105が上昇して基板Wを受け取り、さらに下降することにより基板Wをキャッチピン103に載置するようになっている。
【0004】
すなわち、基板Wがチャンバ部100の基板収容部104に供給された状態では、基板Wの裏面にキャッチピン103が当接することによって支持される。そして、キャッチピン103に支持された状態で基板収容部104を排気させると、基板収容部104が減圧環境下になることにより、基板W上の塗布膜を形成する溶媒が蒸発し塗布膜を乾燥させることができる。そして、乾燥後は、キャッチピン103に支持された状態のまま基板収容部104を大気圧に戻した後、チャンバ蓋部102を開き、リフトピン105を上昇させて基板Wをキャッチピン103から離し、ロボットハンド等がリフトピン105に支持された基板Wを受け取ることにより乾燥後の基板Wがチャンバ部100から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−329303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、タクトタイムの短縮を図るため、塗布膜を乾燥させた後は、基板収容部104に連通する弁を早急に開放させることにより、基板収容部104を減圧状態から大気圧状態にすぐに戻して基板Wを減圧乾燥装置から排出させる。しかし、基板収容部104を減圧状態から大気圧状態に急速に戻すと、基板収容部104内に気流が発生することにより基板Wが振動する(図5(a)参照)。近年では、非常に薄い基板Wが用いられているため、気流により基板Wが振動すると、その撓みの影響により基板Wが破損するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、減圧環境下の基板収容部を急速に大気圧状態に開放しても、基板の振動を抑え、基板が破損するのを防止できる減圧乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の減圧乾燥装置は、基板上に形成された塗布膜を減圧環境下で乾燥させる減圧乾燥装置であって、基板が収容される基板収容部を形成するチャンバ部と、前記基板収容部に収容される基板を所定の高さ位置に保持するキャッチピンと、供給された基板を前記キャッチピンに載置させるとともに、前記キャッチピン上の基板を排出させるリフトピンと、を備え、基板が前記キャッチピンに保持された状態で前記基板収容部が減圧環境下にある場合にはチャンバ部内に収容され、前記基板収容部の減圧環境を大気圧に戻す際に前記キャッチピンに保持された基板に当接して基板の支持を補助するサポートピンをさらに備え
前記チャンバ部には、前記基板収容部内に前記キャッチピンが取り付けられるプレート部を有しており、このプレート部には、前記サポートピンが挿通するサポートピン挿通孔が形成され、前記基板収容部が減圧環境下では、前記サポートピンは、前記サポートピン挿通孔の高さ位置以下になるように収容され、前記基板収容部が減圧環境下から大気圧に戻す際には、前記サポートピンが挿通孔から突出して基板に当接することを特徴としている。
【0009】
上記減圧乾燥装置によれば、基板収容部を減圧環境下から大気圧状態に戻す際に、キャッチピンで支持された基板をサポートピンで補助的に支持するため、減圧環境下から大気圧状態に戻す際に基板収容部に気流が発生しても、サポートピンにより基板が振動するのを抑え、振動により基板が破損するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の減圧乾燥装置によれば、減圧環境下の基板収容部を急速に大気圧状態に開放しても、基板の振動を抑え、基板が破損するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における減圧乾燥装置のチャンバ蓋部とチャンバ本体が閉じた状態を示す図である。
図2】上記減圧乾燥装置のチャンバ蓋部とチャンバ本体が離間した状態を示す図である。
図3】上記減圧乾燥装置のプレート部を上方から見た図である。
図4】基板をキャッチピンで支持した状態を示す図である。
図5】基板をキャッチピンで支持した状態を示す図であり、(a)は気流によりキャッチピンのみで支持される基板に撓みが生じた状態を示す図であり、(b)は基板がキャッチピン及びサポートピンにより支持された状態を示す図である。
図6】上記減圧乾燥装置の動作を示すフローチャートである。
図7】基板収容部を減圧環境から大気圧に戻す状態を示す図である。
図8】従来の減圧乾燥装置を示す図であり、(a)はチャンバ蓋部とチャンバ本体が閉じた状態を示す図であり、(b)は。チャンバ蓋部とチャンバ本体が離間した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0014】
図1図2は、本発明の一実施形態における減圧乾燥装置を概略的に示す図であり、図1は、減圧乾燥装置のチャンバ蓋部10とチャンバ本体20が閉じた状態を示す図であり、図2はチャンバ蓋部10とチャンバ本体20が離間した状態を示す図である。
【0015】
図1図2に示すように、減圧乾燥装置は、基板W上に形成されたレジスト液などの塗布膜を乾燥させるものであり、基板Wを収容するチャンバ部2と、このチャンバ部2を減圧させる吸引減圧部3とを備えている。そして、チャンバ部2に基板Wを収容した状態でチャンバ部2内を減圧環境に維持することにより基板W上に形成された塗布膜を乾燥できるようになっている。
【0016】
なお、以下の説明では、図1における紙面上側を減圧乾燥装置の上方、図1における紙面下側を減圧乾燥装置の下方として説明を進めることとする。
【0017】
チャンバ部2は、チャンバ本体20とチャンバ蓋部10とを備えている。チャンバ蓋部10は、チャンバ本体20に対して開閉できるように形成されており、チャンバ蓋部10が閉状態では、図1に示すように、チャンバ蓋部10とチャンバ本体20とで基板Wを収容する基板収容部30が形成されるようになっている。
【0018】
チャンバ蓋部10は、チャンバ本体20とともにチャンバ部2内に基板収容部30を形成するものである。チャンバ蓋部10は、チャンバ本体20に対して開閉できるようになっており、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に対して、昇降動作可能に形成されている。すなわち、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に対して上昇することによって開状態が形成され、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に対して下降し当接することによって閉状態が形成される。このチャンバ蓋部10は、チャンバ本体20に保持された基板Wを覆う形状を有しており、チャンバ本体20と対面する平板状の平板部11と、この平板部11の外周縁からチャンバ本体20側に突出し、保持された基板Wを囲む形状を有する側壁部12とを有している。すなわち、チャンバ蓋部10がチャンバ本体20に当接した状態では、チャンバ蓋部10の側壁部12がチャンバ本体20に当接することにより、基板Wを収容可能な基板収容部30が形成されるようになっている。
【0019】
チャンバ蓋部10の平板部11の基板収容部30側は、平滑な平坦状に形成されている。すなわち、基板収容部30を吸引した際に発生する気流(大気の流れ)が妨げられないように形成されている。また、平板部11の外部側には、リブ(不図示)が取付けられており、基板収容部30が減圧された場合に平板部11が変形するのを防止できるようになっている。これにより、基板収容部30内の大気が吸引されて基板収容部30内が減圧された場合であっても、平板部11の基板収容部30側が平坦度を維持することができ、基板収容部30の気流の乱れによって生じる乾燥ムラの発生を抑えることができるようになっている。
【0020】
また、側壁部12の基板収容部30側は、平板部11と同様に平滑な平坦状に形成されており、基板収容部30の大気の流れが妨げられないように形成されている。また、側壁部12には、チャンバ本体20の基部21と当接する面にシール部材13(図2参照)が設けられている。このシール部材13は、保持された基板Wを囲むように環状に形成されている。したがって、チャンバ蓋部10を下降させてチャンバ本体20に当接させた場合に、シール部材13がチャンバ本体20に当接して押圧されることにより、基板収容部30が密封状態にすることができる。
【0021】
また、チャンバ本体20は、塗布膜が形成された基板Wを保持するものである。チャンバ本体20は、上方が開放された箱状部材であり、チャンバ本体20内に基板Wを保持することができる。具体的には、チャンバ本体20は、ベース部24に支持される平板形状のプレート部22を有しており、このプレート部22上に基板Wを載置することができる。すなわち、プレート部22には、複数のキャッチピン23が設けられており、このキャッチピン23の先端部分に基板Wが載置されることにより基板Wが支持されて保持されるようになっている。
【0022】
このキャッチピン23は、図4に示すように、先端部分が先鋭形状に形成された直線状のピン部材であり、キャッチピン23がプレート部22に垂直な姿勢で固定されている。キャッチピン23の先端部分は、すべて同じ高さに調整されており、先端部分に基板Wが載置されると、基板Wが乾燥位置に位置するように調整されている。
【0023】
このキャッチピン23は、本実施形態では、基板W上の塗布膜が形成される領域(塗布領域S)から外れる位置に設けられている。すなわち、図3に示すように、キャッチピン23は、基板Wの塗布領域Sから外れるように、塗布領域Sの外側部分、及び、塗布領域S同士の間に複数本、所定間隔で配置されている。そして、キャッチピン23に基板Wが載置されると、基板Wがほぼ水平な姿勢で支持されるようになっている(図4参照)。ここで、仮に塗布領域Sにキャッチピン23が当接した状態で乾燥させると、その当接位置と当接していない他の領域とでは温度差が生じて乾燥環境が異なるため、その位置に塗布膜の乾燥ムラが生じる要因となる。そのため、キャッチピン23は、塗布領域S外に位置するように配置し、塗布領域Sにキャッチピン23が当接することによる塗布膜の発生を抑えることができるようになっている。
【0024】
また、チャンバ本体20には、リフトピン25が設けられている。このリフトピン25は、ロボットハンド等の基板Wの搬送装置と、キャッチピン23との間で基板Wの受け渡しを行うためのものである。このリフトピン25は、通常、チャンバ本体20に埋設されており、基板Wが搬入された場合、基板Wを搬出する場合にチャンバ本体20から突出して基板Wを支持するように形成されている。
【0025】
すなわち、プレート部22には、複数のピン孔25aが形成されており、このピン孔25aからリフトピン25が延伸して突出することにより、この突出した複数のリフトピン25の先端部分に基板Wが載置されることにより基板Wが保持されるようになっている。本実施形態では、図3に示すように、プレート部22の外縁部分に位置するキャッチピン23と、塗布領域Sの間に位置するキャッチピン23との間に位置するように設けられている。
【0026】
そして、ベース部24には、ピン孔25aに対応する位置にピン収容部が形成されており、このピン収容部にリフトピン25が埋設されている。そして、複数のリフトピン25が平板部材26(図3における破線)で一体化されており、この平板部材がベース部24の内部に設けられた駆動装置(不図示)により昇降動作できるように構成されている。したがって、この駆動装置を駆動させることにより、リフトピン25が昇降動作するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。
【0027】
本実施形態では、リフトピン25がベース部24内に収容される収容位置と、プレート部22から突出しロボットハンド等の搬送装置との間で基板Wの受渡しを行う基板受渡位置(図2参照)と、減圧乾燥工程を行う乾燥位置(図1参照)に停止できるように設定されている。すなわち、ロボットハンド等と基板Wの受け渡しを行う場合には、リフトピン25が基板受渡位置に位置した状態で停止する。そして、基板Wがリフトピン25の先端部分に載置された後、リフトピン25を下降させて基板Wが乾燥位置に到達すると、その乾燥位置でリフトピン25が停止する。すなわち、この乾燥位置には、キャッチピン23の先端部分が位置しており、リフトピン25の先端部分が乾燥位置に達すると、基板Wがリフトピン25からキャッチピン23に受け渡しされる。そして、乾燥位置からさらにリフトピン25を下降させると、基板Wが完全にキャッチピン23に載置され、基板Wがリフトピン25からキャッチピン23に受け渡される。なお、このピン収容部にはシールが設けられており、リフトピン25が突出した状態であってもピン収容部から基板収容部30の大気の漏れを防止できるようになっている。
【0028】
また、プレート部22には、キャッチピン23及びリフトピン25トとは別に、サポートピン4が挿通するサポートピン挿通孔4aが形成されている。このサポートピン4は、基板収容部が減圧環境下から大気圧に戻す際に、基板Wが振動するのを抑えるためのものである。サポートピン4は、先端部分が先鋭状の棒状部材であり、ベース部24内に収容されている。すなわち、ベース部24には、リフトピン25が収容されるピン収容部とは別にサポートピン収容部が形成されており、このサポートピン収容部に収容されている。そして、サポートピン4は、ベース部24の内部に設けられた駆動装置(不図示)と接続されており、この駆動装置を駆動させることにより、サポートピン4が昇降動作するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。本実施形態では、サポートピン収容部に収容される収容位置と、乾燥位置の基板Wを支持する乾燥位置とに停止できるようになっている。すなわち、サポートピン4が収容位置に位置した状態で基板Wが乾燥位置で乾燥処理が行われた後、基板収容部が減圧環境下から大気圧に戻す際に、サポートピン4が突出して乾燥位置で停止することにより、基板Wの裏面にサポートピン4の先端部分が当接することにより基板Wを支持することができ、キャッチピン23による基板Wの支持を補助することができる(図1図7)。すなわち、基板収容部が減圧環境下から大気圧に戻すと基板収容部に急速な気流が発生することにより、図5(a)に二点鎖線で示すように基板Wに振動が生じ、サポートピン4のみによる支持が不安定になる。そこで、サポートピン4により基板Wを裏面から支持することにより、基板Wの支持点が増加するためキャッチピン23のみの場合に比べて支持状態が安定し、基板Wを安定して保持することができる(図5(b))。
【0029】
また、チャンバ部2には、吸引減圧部3が設けられており、吸引減圧部3により基板収容部30を減圧させることができる。吸引減圧部3は、吸引力を発生させる真空ポンプ31と、この真空ポンプ31と基板収容部30とを連結する吸引配管32とを有している。すなわち、吸引配管32が基板収容部30と吸引連結部33で連結されており、真空ポンプ31を作動させると吸引配管32を通じて吸引連結部33に吸引力が発生し、基板収容部30の大気が吸引される。これにより基板収容部30は、大気圧よりも小さい所定の圧力に減圧されるようになっている。
【0030】
また、本実施形態における吸引連結部33は、チャンバ部2の底面中央部分であって、キャッチピン23により乾燥位置に保持された基板Wの中心位置に対向する位置に1つのみ設けられている。したがって、基板収容部30の大気は、基板Wの中心位置に対向する位置に向かう気流が発生し、吸引連結部33を通じて排気される。なお、本実施形態では、1つの孔で構成される吸引連結部33が基板Wの中心位置に対向する位置に1つのみ設けられているが、複数の孔から構成される吸引連結部33であってもよい。この場合であっても、複数の孔から構成される吸引連結部33の排気領域の中心位置が、保持された基板Wの中心位置と対向する位置に設けてあれば、基板Wの全周に亘って均一な吸引力を発生させることができる。
【0031】
また、吸引配管32には、この吸引配管32を開閉する開閉弁35とは別に、吸引調節弁36が設けられている。この吸引調節弁36は、基板収容部30の吸引流量を調節するものである。すなわち、真空ポンプ31が作動した状態で吸引調節弁36を調節することにより、基板収容部30の吸引量を調節することができる。具体的には、真空ポンプ31の作動中に吸引調節弁36を開放すると基板収容部30から吸引される吸引量が最大になり基板収容部30の圧力を急速に減圧させることができる。また、吸引調節弁36を絞ることにより吸引量を低下させ、吸引調節弁36の開放時に比べて基板収容部30の減圧速度を低下させることができる。
【0032】
また、チャンバ部2には、リリース弁6が設けられている。このリリース弁6は、開閉のみを行うことができ、チャンバ部2で乾燥処理が終了した後、基板収容部30の減圧状態を解放することができる。すなわち、減圧乾燥工程後、このリリース弁6を開くことにより、基板収容部30を一気に大気圧状態に戻すことができる。
【0033】
次に、本実施形態における減圧乾燥装置を用いた乾燥処理動作について図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
まず、ステップS1により、基板搬入工程が行われる。具体的には、チャンバ本体20のリフトピン25が基板受渡位置で停止しており、前工程で塗布膜が形成された基板Wがロボットハンド等によりリフトピン25上に載置される。そして、リフトピン25が下降し、乾燥位置において停止する。すなわち、リフトピン25で支持されている基板Wがキャッチピン23で支持されることを確認し、リフトピン25がさらに下降することにより、基板Wがリフトピン25からキャッチピン23に受け渡される。なお、リフトピン25は、収容位置で停止する。そして、チャンバ蓋部10が下降してチャンバ本体20に当接することにより、基板収容部30が形成され、基板Wが基板収容部30内でキャッチピン23上に保持される(図1)。
【0035】
次に、ステップS2により、減圧乾燥工程が行われる。具体的には、吸引減圧部3の真空ポンプ31を作動させ、吸引調節弁36を絞って緩やかに排気し減圧する。すなわち、基板収容部30には大量の大気が存在しているため、排気による大気の流れが形成されると塗布膜に乾燥ムラが形成される虞がある。その気流による乾燥ムラ影響するのを抑えるため、基板収容部30内の大気を緩やかに排気する。その後、吸引調節弁36を開放して急速に排気する。すなわち、塗布膜に対して基板収容部30の排気による気流の影響が少ないと判断できる時点で吸引調節弁36を開放し急排気を行う。なお、本実施形態では、緩排気から急排気に切り替えるタイミングは、時間で制御されている。そして、基板収容部30が基板W上の塗布膜を形成する溶媒の飽和蒸気圧に維持されることにより、塗布膜の乾燥が行われる。
【0036】
次に、ステップS3により、減圧解除工程が行われる。具体的には、吸引減圧部3の吸引動作を停止させ、リリース弁6を開状態にする前に、サポートピン4を突出させることにより基板Wを支持させる(図7)。すなわち、基板Wをキャッチピン23で支持すると共に、サポートピン4によって補助的に基板Wを支持させる。そして、リリース弁6を開状態にすることにより基板収容部30を一気に大気圧に戻す。これにより、今まで減圧環境に維持された基板収容部30に大気が入り込んで気流が発生するが、基板Wがキャッチピン23トサポートピン4で支持されているため、気流が流れることによる基板Wの振動が抑制され、振動による基板Wの撓みから基板Wが破損するのを抑えることができる。
【0037】
次に、ステップS4により、基板排出工程が行われる。すなわち、基板収容部が大気圧に戻った後、チャンバ蓋部10を上昇させる。そして、リフトピン25を基板受渡位置まで上昇させてロボットハンド等により基板Wを排出させる。
【0038】
このように、基板収容部を減圧環境下から大気圧状態に戻す際に、キャッチピン23で支持された基板Wをサポートピン4で補助的に支持するため、減圧環境下から大気圧状態に戻す際に基板収容部に気流が発生しても、サポートピン4により基板Wが振動するのを抑え、振動により基板Wが破損するのを抑えることができる。そして、減圧環境による減圧乾燥工程中は、サポートピン4が収容されており基板Wに当接していないため、サポートピン4が基板Wに当接することによる乾燥ムラの発生を回避することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、サポートピン4が圧環境下から大気圧状態に戻す際以外は、サポートピン収容部に収容されている例について説明したが、サポートピン収容部に完全に収容されていなくてもよく、基板Wに当接していない位置で待機するものであってもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、図3にサポートピン4が配置される一例について説明したが、塗布領域Sの大きさ、数に応じて、基板Wの振動を抑えるのに適した位置に自由に配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
2 チャンバ部
3 吸引減圧部
4 サポートピン
23 キャッチピン
25 リフトピン
30 基板収容部
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8