特許第6863757号(P6863757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863757
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】騒音低減装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   E02D13/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-15594(P2017-15594)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123542(P2018-123542A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】島崎 傑
(72)【発明者】
【氏名】中野 知樹
(72)【発明者】
【氏名】牧田 晃介
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】津野 将馬
(72)【発明者】
【氏名】野口 武彦
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−030233(JP,U)
【文献】 特表2015−513022(JP,A)
【文献】 特開昭47−010882(JP,A)
【文献】 実開昭57−156538(JP,U)
【文献】 実開平03−040331(JP,U)
【文献】 特開昭49−020912(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01422448(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽幕と、前記遮蔽幕の一端部を保持する保持部を有するフレームと、を備え、杭打ちの際に発生する騒音を低減させ、杭及び該杭を打撃する打撃装置と分離されている騒音低減装置であって
記遮蔽幕は、前記フレームが吊下装置に吊り下げられることによって垂下し、杭を配置可能な空間を内部に形成し、
前記フレームは、環状を呈する環状部と、前記環状部に接合されて前記環状部の内側を覆う遮蔽部材と、を有し、
前記遮蔽部材の一側面には、前記吊下装置と係合可能な係合部が設けられている、騒音低減装置。
【請求項2】
遮蔽幕と、前記遮蔽幕の一端部を保持する保持部を有するフレームと、を備え、杭打ちの際に発生する騒音を低減させ、杭及び該杭を打撃する打撃装置と分離されている騒音低減装置であって
記遮蔽幕は、前記フレームが吊下装置に吊り下げられることによって垂下し、杭を配置可能な空間を内部に形成し、
前記フレームは、環状を呈する環状部を有し、
前記遮蔽幕は、前記環状部の内側に配置されて前記環状部の内側を覆う天面遮蔽幕を備える、騒音低減装置。
【請求項3】
遮蔽幕と、前記遮蔽幕の一端部を保持する保持部を有するフレームと、を備え、杭打ちの際に発生する騒音を低減させ、杭及び該杭を打撃する打撃装置と分離されている騒音低減装置であって
記遮蔽幕は、上部遮蔽幕と下部遮蔽幕とを有するとともに、前記フレームが吊下装置に吊り下げられることによって垂下し、杭を配置可能な空間を内部に形成し、
前記上部遮蔽幕は、一端部が前記保持部によって保持されるとともに、他端部が前記下部遮蔽幕の一端部を着脱自在に保持するように構成されている、騒音低減装置。
【請求項4】
前記保持部は、環状に配置されている、請求項1から3の何れか一項に記載の騒音低減装置。
【請求項5】
記保持部は、前記環状部に沿って配置されている、請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項6】
前記環状部は、多角形状を呈するように構成され、
前記保持部は、前記環状部の角部に配置されている、請求項に記載の騒音低減装置。
【請求項7】
前記遮蔽幕は、可撓性を有している、請求項1からの何れか一項に記載の騒音低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打ちの際に発生する騒音を低減させる騒音低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の基礎は、地中に埋設された杭によって支持される場合がある。このような杭の埋設方法として、打撃工法が普及している。
【0003】
先端部が閉塞された鋼管杭を用いる打撃工法などでは、杭を地中に向けて加圧するとともに、杭の内部に配置した打撃装置によって先端閉塞部を打撃することにより、杭を地盤に打ち込んでいく工法がある。一般的に、先端閉塞部は鋼製であるため、打撃の際には騒音が発生する。
【0004】
特許文献1には、このような杭打ちの際に発生する騒音を低減させる装置が開示されている。当該装置は、平板形状のアルミ板や鉛板を有している。このアルミ板等は、打撃装置であるクローラのガイドセルに対して固定され、杭であるケーシングの周囲を覆っている。アルミ板等の内側には、吸音材が配設されている。クローラのドリフターによる打撃に伴って発生する騒音は、当該吸音材によって吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−70416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の装置では、杭打ちに伴ってアルミ板が振動する。前述したように、アルミ板はクローラのガイドセルに対して固定されているため、アルミ板の振動はガイドセルに伝達される。この結果、特許文献1記載の装置では、アルミ板の内側で発生した騒音がアルミ板及びガイドセルを伝達して外部に漏出してしまい、騒音を十分に低減できないという課題があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、杭打ちの際に発生する騒音を確実に低減させることが可能な騒音低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る騒音低減装置は、遮蔽幕と、遮蔽幕の一端部を保持する保持部を有するフレームと、を備える。遮蔽幕は、フレームが吊下装置に吊り下げられることによって垂下し、杭を配置可能な空間を内部に形成する。さらに、本発明に係る騒音低減装置は、杭及び杭を打撃する打撃装置と分離されている。
【0009】
上記構成によれば、フレームから垂下した遮蔽幕の内部の空間に杭を配置し、杭の周囲を覆うことにより、杭打ちの際に発生する騒音を低減させることが可能になる。さらに、本発明に係る騒音低減装置は、杭及び杭を打撃する打撃装置と分離されている。これにより、打撃装置や、打撃された杭の振動が、騒音低減装置に伝達されることはない。したがって上記構成によれば、伝達された振動によって騒音低減装置から騒音が漏出する事態を防止することができる。この結果、杭打ちの際に発生する騒音を確実に低減させることが可能になる。
【0010】
保持部は、環状に配置されていてもよい。この構成によれば、保持部によって遮蔽幕の一端を保持することにより、垂下した遮蔽幕を環状に配置し、杭を配置可能な空間を遮蔽幕の内部に形成することができる。これにより、遮蔽幕によって杭の周囲を覆うことが可能になる。
【0011】
フレームは、環状を呈する環状部を有し、保持部は、環状部に沿って配置されていてもよい。この構成によれば、遮蔽幕を安定的に環状に配置し、遮蔽幕によって杭の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0012】
環状部は、多角形状を呈するように構成され、保持部は、環状部の角部に配置されていてもよい。この構成によれば、フレームへの遮蔽幕の保持作業を行う作業者は、保持部の位置を容易に把握することができる。また、フレームから垂下する遮蔽幕の内部には、断面が多角形状の空間が形成されるため、遮蔽幕によって杭の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0013】
フレームは、環状部に接合されて環状部の内側を覆う遮蔽部材を有し、遮蔽部材は、その一側面に、吊下装置と係合可能な係合部が設けられていてもよい。この構成によれば、環状部の内側を介して上方に伝播する騒音を、遮蔽部材によって低減させることが可能になる。また、係合部において吊下装置と係合させることで、フレームを吊り下げることが可能になる。
【0014】
騒音低減装置は、環状部の内側に配置されて環状部の内側を覆う天面遮蔽幕を備えていてもよい。この構成によれば、環状部の内側を介して上方に伝播する騒音を減衰させることが可能になる。
【0015】
遮蔽幕は、上部遮蔽幕と下部遮蔽幕とを有し、上部遮蔽幕は、一端部が保持部によって保持されるとともに、他端部が下部遮蔽幕の一端部を着脱自在に保持するように構成されていてもよい。この構成によれば、杭の全長に応じて上部遮蔽幕に対して下部遮蔽幕を着脱することにより、遮蔽幕の全長を調整することが可能になる。この結果、遮蔽幕によって杭の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0016】
遮蔽幕は、可撓性を有していてもよい。この構成によれば、杭を継ぎ足す作業を行う際等には、遮蔽幕を一時的に撓ませることにより、杭の周囲から騒音低減装置を容易に撤去することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、杭打ちの際に発生する騒音を確実に低減させることが可能な騒音低減装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る騒音低減装置を示す斜視図である。
図2図1のII−II断面を示す断面図である。
図3図1の騒音低減装置を示す平面図である。
図4図1のIV−IV断面を示す断面図である。
図5】変形例に係る騒音低減装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
まず、図1及び図2を参照しながら、実施形態に係る騒音低減装置1の概要について説明する。図1は、騒音低減装置1を示す斜視図である。図2は、図1のII−II断面を示す断面図である。図1及び図2は、騒音低減装置1の使用状態を示している。
【0021】
騒音低減装置1は、図2に示される杭71,72を地中に打ち込む建築現場で使用される。杭71,72は、構造物の基礎を支持する部材であり、筒形状を呈している。杭72は、杭71の上端部に溶接等によって継ぎ足されている。
【0022】
杭71の下端部には、先端閉塞部711が設けられている。先端閉塞部711の下面は、下端部を頂点とする略円錐形状を呈している。また、先端閉塞部711の上面は、杭71の内部に向けられている。
【0023】
杭71,72は、図2に示される打撃装置90によって地中に打ち込まれる。打撃装置90は、本体91と、空気供給管92と、を有している。本体91は杭71の内部に配置され、先端閉塞部711の上面と当接している。また、空気供給管92は、杭71,72の内部を挿通し、地表に配置された不図示のポンプに接続されている。
【0024】
本体91は内部に空隙が形成されており、当該空隙には不図示のピストンが配置されている。空気供給管92は、その一端部が本体91に接続され、他端部がポンプに接続されている。当該ポンプが駆動すると、圧縮された空気が空気供給管92を介して本体91の内部に供給される。本体91の内部では、この圧縮空気によってピストンが付勢され、往復移動しながら本体91の外殻と繰り返し衝突する。
【0025】
本体91の内部においてピストンが本体91の外殻に衝撃を加えると、当該衝撃は先端閉塞部711に伝達される。先端閉塞部711は、当該衝撃を受けて地中に打ち込まれ、先端閉塞部711とともに杭71,72も埋設されていく。前述したように、杭72は杭71の上端に継ぎ足されている。このような継ぎ足しを行い、杭の全長を大きくすることにより、強固な地盤である支持層に杭71を到達させることができる。
【0026】
このように杭71,72を打ち込む際に、ピストンと本体91の外殻との衝突や、打撃装置90の本体91と先端閉塞部711との干渉により、騒音が発生する。騒音低減装置1は、このような騒音を低減させることを目的として使用される。騒音低減装置1は、杭71,72及び打撃装置90と分離されるとともに、吊下装置80によって吊り下げられた状態で使用される。
【0027】
吊下装置80は、地質調査等のための標準貫入試験に使用される装置であるが、ここでは騒音低減装置1に流用されている。吊下装置80は、やぐら81と、滑車82と、ワイヤ83と、フック84と、を有している。やぐら81は、主に3本の棒材からなる。各棒材は、その下端部が互いに異なる位置で接地するとともに、その上端部が互いに固定されている。滑車82は、やぐら81の上端部から吊り下げられている。ワイヤ83は、滑車82の外周面と当接するように配置されており、その一端にフック84が固定されている。滑車82が回動してワイヤ83を案内することにより、フック84は鉛直方向に移動することができる。
【0028】
騒音低減装置1は、この吊下装置80のフック84と係合することによって吊り下げられている。図2に示されるように、吊り下げられた騒音低減装置1は、杭71,72の周囲を覆っている。
【0029】
次に、図1から図4を参照しながら、騒音低減装置1の詳細について説明する。図3は、騒音低減装置1を示す平面図である。図4は、図1のIV−IV断面を示す断面図である。
【0030】
図1及び図2に示されるように、騒音低減装置1は、フレーム2と、遮蔽幕3と、を備えている。
【0031】
図2及び図3に示されるように、フレーム2は、環状部21と、連結部22と、係合部23と、を有している。図3に示されるように、環状部21は、比較的長い2本の棒材211と、比較的短い2本の棒材212と、を有している。棒材211,212は、いずれも断面形状が矩形で、比較的大きな剛性を有する鋼製の部材である。環状部21は、この棒材211,212のそれぞれの端部を互いに接続することにより、全体として環状に形成されている。環状部21の外形は、平面視で略長方形を呈している。
【0032】
連結部22は鋼製の部材であり、フレーム2に4つ設けられている。連結部22は、その一端部が環状部21に対して連結されている。詳細には、連結部22の一端部は、略長方形を呈する環状部21の角部に対して連結されている。各連結部22は、環状部21から上方かつ平面視で環状部21の中央部に向かって延び、その他端部が集合するように形成されている。連結部22の他端部には、係合部23が設けられている。係合部23は鋼製の部材であり、円環状を呈している。
【0033】
図2及び図3に示されるように、環状部21には複数の保持部213が設けられている。保持部213は、後述する遮蔽幕3を着脱自在に保持する部分である。保持部213として、例えば、面ファスナやフックを採用することができる。複数の保持部213は、互いに間隔を空けて配置され、環状部21の角部の外周面に配置されている。
【0034】
遮蔽幕3は、可撓性を有するシート状の部材である。遮蔽幕3は、第1上部遮蔽幕31uと、第2上部遮蔽幕32uと、第1下部遮蔽幕31bと、第2下部遮蔽幕32bと、をそれぞれ2枚ずつ有している。さらに、遮蔽幕3は、1枚の天面遮蔽幕35を有している。
【0035】
図4に示されるように、第1下部遮蔽幕31b、第2下部遮蔽幕32bは、表面材36,37と、吸音材38,39と、を有している。表面材36,37は、ポリエステル生地やポリウレタン生地によって形成されており、その外形は略長方形を呈している。吸音材38,39は、グラスウール等によって形成されており、表面材36,37の一側面に貼着されている。このように表面材及び吸音材からなる構成は、第1上部遮蔽幕31u、第2上部遮蔽幕32u及び天面遮蔽幕35についても同様である。したがって、第1上部遮蔽幕31u等の構成については説明を省略する。
【0036】
図2及び図3に示されるように、2枚の第1上部遮蔽幕31u及び第2上部遮蔽幕32uは、それぞれの一端部が、環状部21に設けられている複数の保持部213によって保持されている。第1上部遮蔽幕31uは、その短辺が、環状部21の棒材211に沿うように保持される。また、第2上部遮蔽幕32uは、その短辺が、環状部21の棒材212に沿うように保持される。
【0037】
2枚の第1上部遮蔽幕31u及び第2上部遮蔽幕32uの他端部には、複数の保持部34が設けられている。保持部34として、例えば、面ファスナやフックを採用することができる。複数の保持部34は、互いに間隔を空けて配置されている。
【0038】
2枚の第1下部遮蔽幕31b及び第2下部遮蔽幕32bは、その一端部が、複数の保持部34によって着脱自在に保持されている。第1下部遮蔽幕31bは、その短辺が、第1上部遮蔽幕31uの短辺に沿うように保持される。また、第2下部遮蔽幕32bは、その短辺が、第2上部遮蔽幕32uの短辺に沿うように保持される。
【0039】
天面遮蔽幕35は、その4辺が、環状部21の棒材211,211と、棒材212,212と、によって保持されている。これにより、天面遮蔽幕35は、環状部21の棒材211,211間と、棒材212,212間と、を跨ぎ、環状部21の内側を覆うように配置される。
【0040】
このように構成された騒音低減装置1は、図1及び図2に示されるように、吊下装置80のフック84を、フレーム2の係合部23に係合させて使用される。フック84を係合部23に係合させた状態でワイヤ83を牽引すると、フレーム2が吊り下げられる。これにより、フレーム2から遮蔽幕3が垂下する。
【0041】
吊下装置80によってフレーム2が吊り下げられると、第1上部遮蔽幕31u,31uが間隔を空けて互いに対向する。同様に、第2上部遮蔽幕32u,32uも、間隔を空けて互いに対向する。これにより、第1上部遮蔽幕31u,31u及び第2上部遮蔽幕32u,32uは、図2に示されるように、その内部に空間S1を形成する。空間S1は、鉛直方向に延びる略直方体形状の間隙である。
【0042】
また、第1上部遮蔽幕31u,31uの下方では、第1下部遮蔽幕31b,31bが間隔を空けて互いに対向する。同様に、第2下部遮蔽幕32b,32bも、間隔を空けて互いに対向する。これにより、第1下部遮蔽幕31b,31b及び第2下部遮蔽幕32b,32bは、図2に示されるように、その内部に空間S2を形成する。空間S2は、鉛直方向に延びる略直方体形状の間隙である。空間S2は、上述した空間S1と一体となることで、全体として1つの略直方体形状の間隙を形成する。
【0043】
次に、騒音低減装置1の作用効果について説明する。
【0044】
騒音低減装置1の構成によれば、フレーム2から垂下した遮蔽幕3の内部の空間S1,S2に杭71,72を配置し、杭71,72の周囲を覆うことにより、杭打ちの際に発生する騒音を低減させることが可能になる。さらに、騒音低減装置1は、杭71,72及び杭71,72を打撃する打撃装置90と分離されている。これにより、打撃装置90や、打撃された杭71,72の振動が、騒音低減装置1に伝達されることはない。したがって上記構成によれば、伝達された振動によって騒音低減装置1から騒音が漏出する事態を防止することができる。この結果、杭打ちの際に発生する騒音を確実に低減させることが可能になる。
【0045】
保持部213は、環状に配置されている。この構成によれば、保持部213によって遮蔽幕3の一端を保持することにより、垂下した遮蔽幕3を環状に配置し、杭71,72を配置可能な空間S1,S2を遮蔽幕3の内部に形成することができる。これにより、遮蔽幕3によって杭71,72の周囲を覆うことが可能になる。
【0046】
フレーム2は、環状を呈する環状部21を有している。保持部213は、環状部21に沿って配置されている。この構成によれば、遮蔽幕3を安定的に環状に配置し、遮蔽幕3によって杭71,72の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0047】
環状部21は、四角形状を呈するように構成され、保持部213は、環状部21の角部に配置されている。この構成によれば、フレーム2への遮蔽幕3の保持作業を行う作業者は、保持部213の位置を容易に把握することができる。また、フレーム2から垂下する遮蔽幕3の内部には、断面が四角形状の空間が形成されるため、遮蔽幕3によって杭71,72の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0048】
フレーム2は、複数の連結部22を有する。複数の連結部22は、その一端部が環状部21の互いに異なる部位に対して連結されるとともに、他端部が集合するように形成される。複数の連結部22の他端部に、吊下装置80と係合可能な係合部23が設けられている。この構成によれば、係合部23において吊下装置80と係合させることで、フレーム2を吊り下げることが可能になる。また、環状部21は複数の部位で連結部22と連結されているため、吊り下げられた環状部21の姿勢を安定させることができる。この結果、フレーム2から垂下する遮蔽幕3の内部に安定的に空間S1,S2を形成し、遮蔽幕によって杭71,72の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0049】
騒音低減装置1は、環状部21の内側に配置されて環状部21の内側を覆う天面遮蔽幕35を備えている。この構成によれば、環状部21の内側を介して上方に伝播する騒音を減衰させることが可能になる。
【0050】
遮蔽幕3は、第1上部遮蔽幕31u及び第2上部遮蔽幕32uと、第1下部遮蔽幕31b及び第2下部遮蔽幕32bと、を有する。第1上部遮蔽幕31u及び第2上部遮蔽幕32uは、一端部が保持部213によって保持されるとともに、他端部が第1下部遮蔽幕31b及び第2下部遮蔽幕32bを着脱自在に保持する。この構成によれば、杭71,72の全長に応じて第1上部遮蔽幕31u及び第2上部遮蔽幕32uに対して第1下部遮蔽幕31b及び第2下部遮蔽幕32bを着脱することにより、遮蔽幕3の全長を調整することが可能になる。この結果、遮蔽幕3によって杭71,72の周囲を確実に覆うことが可能になる。
【0051】
また、遮蔽幕3は、可撓性を有している。したがって、杭72を継ぎ足す作業を行う際等には、遮蔽幕3を一時的に撓ませることにより、杭71の周囲から騒音低減装置1を容易に撤去することが可能になる。
【0052】
次に、変形例に係る騒音低減装置1Aについて、図5を参照しながら説明する。この騒音低減装置1Aは、前述した実施形態に係る騒音低減装置1と同様に、杭打ちの際に発生する騒音を低減させる。騒音低減装置1Aは、その構成の一部が騒音低減装置1のものと異なる。騒音低減装置1Aの構成のうち、騒音低減装置1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0053】
図5は、騒音低減装置1Aを示す斜視図であり、騒音低減装置1Aの上端部を拡大して示している。騒音低減装置1Aのフレーム2Aは、遮蔽部材24を有している。遮蔽部材24は、鋼製の部材であり、全体として矩形の平板形状を呈している。遮蔽部材24の下面は、環状部21の上面に対して接合されている。これにより、遮蔽部材24は、環状部21の内部を覆っている。
【0054】
また、遮蔽部材24の上面の中央部には、係合部23Aが設けられている。係合部23Aは鋼製の部材であり、円環状を呈している。
【0055】
この騒音低減装置1Aの構成によれば、環状部21の内側を介して上方に伝播する騒音を、遮蔽部材24によって低減させることが可能になる。また、係合部23Aにおいて吊下装置80(図1参照)と係合させることで、フレームを吊り下げることが可能になる。
【0056】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【0057】
例えば、上記実施形態では、遮蔽幕3は、第1上部遮蔽幕31u、第2上部遮蔽幕32u、第1下部遮蔽幕31b及び第2下部遮蔽幕32bから成る。つまり、フレーム2の各側面において、遮蔽幕3は鉛直方向に2枚に分割されている。しかしながら、本発明はこの形態に限定されるものではなく、遮蔽幕3が鉛直方向に3枚以上に分割される形態も本発明の範囲に包含される。
【0058】
また、上記変形例では、遮蔽部材24は、全体として矩形の平板形状を呈している。しかしながら、本発明はこの形態に限定されるものではない。遮蔽部材24の形状は、例えば円板形状や円錐形状等、フレーム2の形状に応じて適宜選択することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,1A:騒音低減装置 2:フレーム 21:環状部 213:保持部 22:連結部 23,23A:係合部 24:遮蔽部材 3:遮蔽幕 31u:第1上部遮蔽幕(上部遮蔽幕) 32u:第2上部遮蔽幕(上部遮蔽幕) 31b:第1下部遮蔽幕(下部遮蔽幕) 32b:第2下部遮蔽幕(下部遮蔽幕) 35:天面遮蔽幕 71,72:杭 80:吊下装置
図1
図2
図3
図4
図5