(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像生成部は、前記右心室の前乳頭筋の位置、前記右心室の中隔縁柱が調節帯へ移行する位置、及び前記右心室の室上稜の位置のうち少なくとも2つ以上の位置を前記特徴位置として、少なくとも2つ以上の当該特徴位置を通る前記MPR画像を生成する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
前記調整部は、前記ボリュームデータに基づくレンダリング画像上で前記特徴位置を移動させる方向及び距離を指定する操作を操作者から受け付け、当該方向及び当該距離に応じて前記特徴位置を調整する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
前記出力制御部は、前記特徴位置を通る境界線により前記関心領域が分割された分割領域が前記特徴位置を通らない境界線により更に分割された複数の分割領域それぞれの前記容積情報及び前記運動情報の少なくとも一方を出力する、
請求項8に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラムを説明する。
【0008】
なお、以下では、実施形態が超音波診断装置に適用される場合を説明するが、これに限定されるものではない。実施形態は、例えば、超音波診断装置以外の医用画像診断装置や、ワークステーション等の医用画像処理装置に対しても適用可能である。医用画像診断装置としては、例えば、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT−CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET−CT装置、PET装置とMRI装置とが一体化されたPET−MRI装置、若しくはこれらの装置を複数含む装置群等が適用可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103と、心電計104とを有する。超音波プローブ101、入力装置102、ディスプレイ103、及び心電計104は、装置本体100と通信可能に接続される。
【0010】
超音波プローブ101は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
【0011】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
例えば、本実施形態では、被検体Pの3次元走査用に、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブが超音波プローブ101として装置本体100と接続される。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送受信することで2次元走査が可能である。
【0013】
入力装置102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0014】
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。また、ディスプレイ103は、装置本体100の処理状況を操作者に通知するために、各種のメッセージを表示する。また、ディスプレイ103は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。例えば、ディスプレイ103のスピーカーは、装置本体100の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音などの所定の音声を出力する。
【0015】
心電計104は、被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電波形(Electrocardiogram:ECG)を取得する。心電計104は、取得した心電波形を装置本体100に送信する。なお、本実施形態では、被検体Pの心臓の心時相に関する情報を取得する手段の一つとして、心電計104を用いる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0016】
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。
図1に示す装置本体100は、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。なお、3次元の超音波画像データは、「3次元医用画像データ」若しくは「ボリュームデータ」の一例である。
【0017】
装置本体100は、
図1に示すように、送受信回路110と、Bモード処理回路120と、ドプラ処理回路130と、画像生成回路140と、画像メモリ150と、内部記憶回路160と、処理回路170とを有する。送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、画像生成回路140、画像メモリ150、内部記憶回路160、及び処理回路170は、通信可能に互いに接続される。
【0018】
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0019】
なお、送受信回路110は、後述する処理回路170の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0021】
送受信回路110は、被検体Pの3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元方向の超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0022】
ここで、送受信回路110からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
【0023】
Bモード処理回路120は、送受信回路110から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0024】
ドプラ処理回路130は、送受信回路110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0025】
なお、
図1に例示するBモード処理回路120及びドプラ処理回路130は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路120は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路130は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0026】
画像生成回路140は、Bモード処理回路120及びドプラ処理回路130が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらを組み合わせた画像である。また、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した1走査線上のBモードデータの時系列データから、Mモード画像データを生成することも可能である。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
【0027】
ここで、画像生成回路140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路140は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路140は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0028】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0029】
更に、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行うことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行うことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成回路140は、「3次元のBモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。
【0030】
更に、画像生成回路140は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行う。画像生成回路140が行うレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行ってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成回路140が行うレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行う処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行う処理がある。また、画像生成回路140が行うレンダリング処理としては、ボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理やサーフェスレンダリング(SR:Surface Rendering)処理がある。
【0031】
画像メモリ150は、画像生成回路140が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、Bモード処理回路120やドプラ処理回路130が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路140を経由して表示用の超音波画像データとなる。
【0032】
なお、画像生成回路140は、超音波画像データと、当該超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査の時間とを、心電計104から送信された心電波形に対応付けて画像メモリ150に格納する。後述する処理回路170は、画像メモリ150に格納されたデータを参照することで、超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査時の心時相を取得することができる。
【0033】
内部記憶回路160は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶回路160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶回路160が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像診断を行なう医師が使用するPC(Personal Computer)や、CDやDVD等の記憶媒体、プリンター等である。
【0034】
処理回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶回路160から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、及び画像生成回路140の処理を制御する。また、処理回路170は、画像メモリ150や内部記憶回路160が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
【0035】
また、処理回路170は、取得機能171と、識別情報設定機能172と、関心領域設定機能173と、算出機能174と、断層像生成機能175と、出力制御機能176と、調整機能177とを実行する。なお、処理回路170が実行する取得機能171、識別情報設定機能172、関心領域設定機能173、算出機能174、断層像生成機能175、出力制御機能176、及び調整機能177の処理内容については、後述する。
【0036】
ここで、例えば、
図1に示す処理回路170の構成要素である取得機能171、識別情報設定機能172、関心領域設定機能173、算出機能174、断層像生成機能175、出力制御機能176、及び調整機能177が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で内部記憶回路160に記録されている。処理回路170は、各プログラムを内部記憶回路160から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路170は、
図1の処理回路170内に示された各機能を有することとなる。
【0037】
なお、本実施形態においては、単一の処理回路170にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0038】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは内部記憶回路160に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、内部記憶回路160にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0039】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、被検体Pの部位の解剖学的な特徴を示す位置に基づいて分割された領域ごとに部位の解析を行うために、以下の処理を実行する。
【0040】
なお、以下の説明では、処理回路170が3次元スペックルトラッキング(3D Speckle Tracking:3DT)法により心臓の壁運動解析を行う場合について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理回路170は、壁運動解析に限らず、心臓の容積に関する容積情報を算出することも可能である。また、処理回路170は、心臓に限らず、他の部位(臓器)についても解析可能である。
【0041】
取得機能171は、被検体Pの部位が撮像された3次元医用画像データを取得する。例えば、取得機能171は、被検体Pの心臓が撮像された3次元医用画像データを、少なくとも1心拍分取得する。なお、取得機能171は、取得部の一例である。言い換えると、取得機能171は、運動する被検体の部位が撮像された時系列的なボリュームデータを取得する。
【0042】
例えば、操作者は、セクタプローブにより、被検体Pの心臓を含む領域の3次元走査を行って、心筋が描出された3次元の超音波画像データの動画像データの撮像を行う。この動画像データは、例えば、Bモードで収集された時相ごとの超音波画像データを含む超音波画像データ群である。ここで、「時相」とは、心臓の周期的な運動における任意の1時点(タイミング)を指し、「心時相」とも称される。
【0043】
そして、画像生成回路140は、心臓の右心室の動画像データを生成し、生成した動画像データを画像メモリ150に格納する。そして、操作者は、処理対象の区間として、例えば、心電図におけるR波から次のR波までの1心拍分の区間を設定する。なお、本実施形態は、処理対象の区間が2心拍分の区間や3心拍分の区間として設定される場合であっても適用可能である。
【0044】
そして、取得機能171は、例えば、超音波画像データ群を画像メモリ150から取得する。この超音波画像データ群は、操作者が設定した1心拍分の区間に含まれる複数のフレームの3次元の超音波画像データ(ボリュームデータ)を含む。
【0045】
なお、第1の実施形態では、典型的なスペックルトラッキング法への適用例を説明するため、複数時相に亘るボリュームデータを取得する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能171は、1時相に対応するボリュームデータを取得してもよい。したがって、例えば、取得機能171は、拡張末期(End-systole)又は収縮末期(End-Diastole)に対応する1時相のボリュームデータを取得してもよい。
【0046】
また、第1の実施形態では、取得機能171が、右心室が撮像された3次元の超音波画像データを取得して、以下の処理に用いる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能171が取得する3次元の超音波画像データは、左心室が撮像されたものでもよいし、心臓全体、或いは心臓以外の他の部位が撮像されたものであってもよい。
【0047】
また、第1の実施形態では、3次元医用画像データとして、超音波の送受信によって生成された3次元の超音波画像データが用いられる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、3次元医用画像データは、超音波診断装置以外の医用画像診断装置により生成された3次元の医用画像データであってもよい。
【0048】
識別情報設定機能172は、3次元医用画像データにおいて、被検体Pの部位の輪郭を表す複数の位置に対して各位置を識別する識別情報を設定する。なお、識別情報設定機能172は、識別情報設定部の一例である。
【0049】
例えば、識別情報設定機能172は、超音波画像データ群に含まれる少なくとも1つの超音波画像データにおける右心室の輪郭に対応する位置に、アドレス番号が付与された追跡点(構成点)を複数設定する。ここで、追跡点は、局所領域の運動情報を算出するために経時的に追跡される点であり、局所領域の輪郭を構成する構成点である。また、アドレス番号は、各追跡点を識別するために付与される番号であり、例えば、心臓の内膜における各追跡点の位置に基づいて定義される。なお、アドレス番号は、番号(数字)に限らず、例えば、文字、記号等、各追跡点の位置を識別可能な識別情報であればよい。
【0050】
なお、ここでは、一例として、右心室の内膜に対して以下の処理が実行される場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、内膜に限らず、外膜若しくは内膜と外膜の中間層に対して以下の処理が実行されてもよい。また、識別情報設定機能172は、例えば、右心室に限らず、左心室や左心房、右心房、若しくは心臓全体等、任意の所定領域に対して以下の処理が実行されてもよい。なお、本実施形態では、識別情報設定機能172は、操作者が用手的に設定した情報により、右心室の初期輪郭に対応する位置に、輪郭を構成する構成点を複数設定する。
【0051】
例えば、操作者は、取得機能171によって取得された超音波画像データ群について、任意の心時相を指定する。ここで指定される任意の心時相は、1心拍分の区間に含まれるフレームのうちの任意のフレームであり、例えば、拡張末期時相(最初のR波時相)である。そして、操作者によって任意の心時相が指定されると、識別情報設定機能172は、指定された心時相における超音波画像データに対して、3次元的な初期輪郭を設定する。
【0052】
ここで、3次元的な初期輪郭は、例えば、複数の基準MPR断面それぞれに対して入力された2次元的な輪郭線の補間処理により生成される。例えば、操作者は、心尖部を通る複数の基準MPR断面それぞれに対して、右心室の内膜の輪郭を表す輪郭線を入力する。そして、識別情報設定機能172は、それぞれの基準MPR断面に入力された輪郭線の位置を3次元の超音波画像データの座標に変換する。そして、識別情報設定機能172は、3次元の超音波画像データにおける各輪郭線の間の3次元的な輪郭形状(初期輪郭)を、各輪郭線間の空間的な補間処理により生成する。このように、識別情報設定機能172は、右心室の内膜の初期輪郭を設定する。
【0053】
図2は、第1の実施形態に係る識別情報設定機能172により設定される初期輪郭について説明するための図である。
図2には、右心室に設定される初期輪郭(VE)を例示する。
図2において、実線で示すメッシュ状構造は、右心室の内膜に設定される初期輪郭に対応し、破線で示すメッシュ状構造は、右心室の外膜に設定される初期輪郭に対応する。また、
図2には、右心室に血液が流入する流入口(VI)と、血液が流出する流出口(VO)とを例示する。
【0054】
図2に示すように、識別情報設定機能172は、任意の心時相における超音波画像データのうち、右心室の内膜に対応する位置に3次元的な初期輪郭(VE)を設定する。そして、識別情報設定機能172は、設定された初期輪郭(VE)を構成する複数の構成点に対して、アドレス番号を設定する。ここで、
図2に示す例では、構成点は、メッシュ状構造の交点の位置に対応する。識別情報設定機能172は、メッシュ状構造の交点の位置に設定される各構成点に対して、アドレス番号を設定する。
【0055】
例えば、識別情報設定機能172は、心臓の内膜の各構成点の位置をP_endo(t、h、d)と定義する。ここで、tは、1心拍分の区間に含まれるフレーム(心時相)を表し、hは、長軸方向(高さ)のアドレス番号を表し、dは、円周方向(方位)のアドレス番号を表す。なお、ここでは最初のR波時相を用いて初期断面を設定しているので、t=0である。
【0056】
また、識別情報設定機能172は、円周方向の基準位置として、例えば、右心室の三尖弁側の端部を設定し、その位置の構成点のdを0とする。つまり、この基準位置にある構成点の位置は、P_endo(0、h、0)と表される。そして、識別情報設定機能172は、基準位置の構成点から円周方向にある構成点を順に、d=0,1,2,3・・・とアドレス番号を設定する。また、識別情報設定機能172は、3次元の初期輪郭のうち、心尖部から最も遠い環状輪郭の位置を長軸方向の基準位置として、その位置の構成点のhを0とする。つまり、この基準位置にある構成点の位置は、P_endo(0、0、d)と表される。そして、識別情報設定機能172は、基準位置の構成点から心尖方向にある構成点を順に、h=0,1,2,3・・・とアドレス番号を設定する。
【0057】
このように、識別情報設定機能172は、3次元医用画像データにおける右心室の内膜に対応する位置に、アドレス番号が付与された追跡点(構成点)を複数設定する。なお、初期輪郭の設定は、上記の用手的な操作に限定されるものではなく、内膜輪郭形状の辞書データ(例えば、過去に設定された輪郭の統計データ)を用いて、識別情報設定機能172が自動的もしくは半自動的に画像中の境界を検出することとしても良い。
【0058】
関心領域設定機能173は、3次元医用画像データに対して関心領域を設定する。例えば、関心領域設定機能173は、3次元医用画像データに含まれる心臓の右心室に対応する領域に関心領域を設定する。具体的には、関心領域設定機能173は、右心室に関する境界検出手段や、用手的な境界位置の設定手段に基づき、右心室に対応する領域に関心領域を設定する(このような境界位置の抽出は一般にセグメンテーションと呼ばれる)。なお、関心領域設定機能173は、関心領域設定部の一例である。
【0059】
図3Aから
図3Cは、第1の実施形態に係る関心領域設定機能173の処理を説明するための図である。
図3Aから
図3Cには、関心領域設定機能173により設定された関心領域を例示する。ここで、
図3Aは、右心室を中隔(IVS)側から見た図であり、
図3B及び
図3Cは、右心室を自由壁(Free−wall)側から見た図である。
【0060】
図3Aから
図3Cに示すように、関心領域設定機能173は、超音波画像データに含まれる心臓の右心室に対応する領域に関心領域を設定する。この関心領域は、中隔側の流入部(RVIT Sept)、中隔側の流出部(RVOT Sept)、中隔側の心尖部(Apical Sept)、自由壁側の流出部(RVOT Free)、自由壁側の心尖部(Apical Free)、側壁側の流入部(RVIT Lat)、及び下壁側の流入部(RVIT Inf)の7つのセグメント(分割領域)に分割されている。
【0061】
ここで、関心領域設定機能173により設定される関心領域の分割位置は、生体において解剖学的な特徴を示す生体ランドマーク位置(特徴位置)に対応づけられている。右心室を例にすると、右心室内腔の右室リング(以下、「RV(Right Ventricle)リング」とも表記)と称される筋肉束の構造により、流入口側の領域(以下、「流入部」とも表記)と流出口側の領域(以下、「流出部」とも表記)との2領域に解剖学的に分けられる。このため、右心室に設定する関心領域の分割位置は、RVリング上にある生体ランドマーク位置に対応づけられることで解剖学的に意味のある位置と成り得る。
【0062】
図4A及び
図4Bは、RVリングの位置について説明するための図である。
図4Aには、右心室の自由壁を展開して右心室内腔の様子を示した解剖モデル図を例示する。
図4Aにおいて、奥側に中隔、右側に流入口、左側に流出口がそれぞれ図示される。また、
図4Bには、RVリング上にある2つのランドマーク位置を通る断面(この例では心室の短軸断面に相当する)の模式図を例示する。
図4Bにおいて、左側に右心室、右側に左心室がそれぞれ図示される。
【0063】
RVリングは
図4A中のRVリングで示した位置にある。そして、右室リングの位置を規定する主な生体ランドマークとしては、
図4A及び
図4Bに示すように3つある。これらの部位は、流入口と流出口との間の内壁の頂点である室上稜(同図では「室上稜位置」と称した)、右室自由壁側の前乳頭筋(Anterior Papillary muscle:同図では「AP位置」と称した)、そして右心室中隔側の中隔縁柱(Trabecula Septomarginalis)が調整帯(Moderator Band)に移行する部位(同図では「MB位置」と称した)である(RVリングについては非特許文献1を参照:非特許文献1「Alternative Pacingの実際と解剖学的知識」第34回埼玉不整脈ペーシング研究会抄録集、第31頁第1欄第28行目〜第33項第1欄第14行目、井川 修)。
【0064】
これらの生体ランドマークは、RVリングを形成する筋肉束のなかでも特徴的な構造物である。特にMB位置とAP位置は、右室心腔内(血液エコーなので低輝度となる)に突出した比較的高輝度な構造物として超音波画像データ中に描出される。また、室上稜位置は、右心室の流入部と流出部とを結ぶ底面の頂点位置として容易に同定される。
【0065】
そこで、第1の実施形態において、関心領域設定機能173により設定される関心領域の分割位置は、生体において解剖学的な特徴を示す生体ランドマーク位置(特徴位置)に対応づけられている。具体的には、MB位置は、関心領域を、中隔側の流入部(RVIT Sept)、中隔側の流出部(RVOT Sept)、及び中隔側の心尖部(Apical Sept)の3セグメントに分割する位置に対応する(
図3A参照)。また、AP位置は、関心領域を、自由壁側の流出部(RVOT Free)、側壁側の流入部(RVIT Lat)、及び自由壁側の心尖部(Apical Free)の3セグメントに分割する位置に対応する(
図3B参照)。
【0066】
このように、関心領域設定機能173は、生体ランドマーク位置により分割位置が規定される関心領域を、3次元医用画像データに設定する。すなわち、関心領域設定機能173は、複数の分割領域に分割される関心領域であって、分割領域の分割位置のうち少なくとも一つに対して部位の解剖学的な特徴を示す特徴位置が予め対応づけられた関心領域を、3次元医用画像データに対して設定する。言い換えると、関心領域設定機能173は、関心領域へ少なくとも1つ以上の解剖学的な特徴を示す特徴位置を設定する。なお、関心領域における生体ランドマーク位置は、例えば、過去に設定された輪郭の統計データに基づいてプリセットされており、関心領域設定機能173が関心領域を設定することで、関心領域における生体ランドマーク位置は、統計的に尤もらしい位置に初期設定される。また、関心領域における生体ランドマーク位置は、後述する処理により調節可能である。
【0067】
算出機能174は、3次元医用画像データから、関心領域に関する容積を表す容積情報及び関心領域に関する運動機能を表す運動情報の少なくとも一方を算出する。例えば、算出機能174は、複数の構成点が設定された初期時相における超音波画像データと、次の時相における超音波画像データとを用いてパターンマッチングを含む追跡処理を行うことで、超音波画像データ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の構成点の位置を追跡する。なお、算出機能174は、算出部の一例である。言い換えると、算出機能174は、ボリュームデータを用いて、追跡を含む処理により被検体の関心領域に関する容積情報と運動情報の少なくとも一方の情報を算出する。
【0068】
例えば、算出機能174は、ボリュームデータ群に含まれるフレームt=0のボリュームデータに対して、初期輪郭に対応する位置に複数の構成点が設定されると、パターンマッチングを含む処理によって、他のフレームtにおける各構成点の位置を追跡する。具体的には、算出機能174は、複数の構成点が設定済みのフレームのボリュームデータと、そのフレームと隣り合うフレームのボリュームデータとの間で、繰り返しパターンマッチングを行う。すなわち、算出機能174は、t=0のボリュームデータにおける心臓の内膜の各構成点P_endo(0、h、d)を起点として、t=0,1,2,3・・・の各フレームのボリュームデータにおける各構成点P_endo(t、h、d)の位置を追跡する。この結果、算出機能174は、1心拍分の区間に含まれる各フレームについて、心臓の内膜を構成する各構成点の座標情報を求める。
【0069】
そして、算出機能174は、各超音波画像データ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の構成点の位置を用いて、複数の超音波画像データごとに組織の運動を表す運動情報を算出する。
【0070】
ここで、算出機能174によって算出される運動情報の代表例としては、例えば、各構成点の1フレームごとの局所心筋変位[mm]、2点間の距離の変化率である局所心筋ストレイン[%]、或いはこれらの時間変化である局所心筋速度[cm/s]及び局所心筋ストレインレート[1/s]等が挙げられる。しかしながら、運動情報は、これらのパラメータに限定されるものではなく、各フレームにおける複数の構成点の座標情報を用いて算出可能なパラメータであればよい。例えば、これらの運動情報は、成分分離されてもよい。右心室の場合には、例えば、長軸(Longitudinal)方向に成分分離されたLongitudinal Strain(LS)や、円周(Circumferential)方向に成分分離されたCircumferential Strain(CS)等の指標が用いられる。これらの指標は、右心室の2次元画像(長軸像や短軸像)を用いた2次元のスペックルトラッキング法により算出される。また、3次元のスペックルトラッキング法においては、局所的な面積変化率(AC:Area Change ratio)が定義されてもよい。ACは成分分離が不要であるため、右心室のように複雑な形状であっても安定的な解析を可能にする。
【0071】
また、右心室の機能評価のために臨床で良く用いられている運動情報としては、Mモードで計測するTAPSE(三尖弁輪収縮期移動量)がある。Mモードは1次元の解析であるため、TAPSEでは三尖弁輪付近の一部について、超音波プローブの方向へ向かう変位成分が観察される。一方、3次元スペックルトラッキング法であれば、右心室の全領域をカバーする変位の情報が得られる。この際の変位の方向としては、関心領域(右心室)を基準とした長軸方向や、壁厚(Radial)方向の変位成分が検出可能である。また、右心室の複雑な形状に左右されにくい指標として、方向への成分分離を行わない移動距離D(D=sqrt((Px(n)−Px(n0))^2+(Py(n)−Py(n0))^2+(Pz(n)−Pz(n0))^2))を用いてもよい。ただし、(Px(n),Py(n),Pz(n))は追跡点Pの位置を示し、nは時相を示し、n0は基準時相を示す。
【0072】
なお、算出機能174によって算出された運動情報は、算出に用いた各構成点(追跡点)に与えられる。具体的には、例えば、心臓の内膜の各構成点から算出される運動情報は、V_endo(t、h、d)と定義される。そして、算出機能174は、算出した運動情報をボリュームデータ群ごとに画像メモリ150に格納する。
【0073】
また、算出機能174は、心臓のポンプ機能の指標として、容積情報を算出する。例えば、算出機能174は、右心室を含む関心領域の容積情報を算出する。なお、算出機能174が容積情報を算出する場合の領域は、適宜変更可能である。
【0074】
このように、算出機能174は、超音波画像データ群について、心臓の容積情報及び運動情報の少なくとも一方を含む情報を算出する。
【0075】
断層像生成機能175は、3次元医用画像データから、部位の解剖学的な特徴を示す特徴位置を通る断面の画像データである断面像データを生成する。例えば、断層像生成機能175は、超音波画像データから、生体ランドマーク位置を通る断面象データを生成する。具体的には、断層像生成機能175は、超音波画像データ群に含まれる任意の時相の超音波画像データから、関心領域の分割位置であるMB位置及びAP位置の2点を通るMPR画像データを生成(再構成)する。なお、断層像生成機能175は、断層像生成部の一例である。また、断層像生成部は、画像生成部の一例である。
【0076】
例えば、断層像生成機能175は、MB位置及びAP位置の2点に加え、任意のセグメント境界点の計3点を通る断面のMPR画像データを生成する。ここで、任意のセグメント境界点は、例えば、自由壁側の心尖部(Apical Free)、側壁側の流入部(RVIT Lat)、及び下壁側の流入部(RVIT Inf)の各セグメントを分割する位置の境界点である。このセグメント境界点は、MB位置及びAP位置の2点からの距離が離れているため、断層像生成機能175は、右心室の短軸断面(心尖部アプローチにおけるC面)に近い傾きのMPR画像データを生成することができる。
【0077】
図5は、第1の実施形態に係る断層像生成機能175の処理を説明するための図である。
図5には、断層像生成機能175により生成されたMPR画像50を例示する。
【0078】
図5に示すように、断層像生成機能175は、短軸断面に近い傾きのMPR画像50を生成する。ここで、MPR画像50は、MB位置及びAP位置の2点を通るので、MB位置及びAP位置を描出可能である。そこで、断層像生成機能175は、MB位置を示すMBマーカ51と、AP位置を示すAPマーカ52とを生成する。
【0079】
このように、断層像生成機能175は、少なくともMB位置及びAP位置の2点を通るMPR画像データを生成する。断層像生成機能175により生成されたMPR画像データは、後述する出力制御機能176によってディスプレイ103に表示される。言い換えると、画像生成部としての断層像生成機能175は、特徴位置を少なくとも1つ以上通るMPR画像を生成する。
【0080】
出力制御機能176は、断面像データに基づく表示画像を表示させるとともに、特徴位置に基づいて関心領域が分割された分割領域に対応する容積情報及び運動情報の少なくとも一方を出力する。例えば、出力制御機能176は、特徴位置を通る境界線により関心領域が分割された複数の分割領域それぞれの容積情報及び運動情報の少なくとも一方を出力する。また、出力制御機能176は、特徴位置を通らない境界線により更に分割された複数の分割領域それぞれの容積情報及び運動情報の少なくとも一方を出力する。なお、出力制御機能176は、出力制御部の一例である。言い換えると、出力制御機能176は、MPR画像を表示させるとともに、特徴位置を境界として含む少なくとも一方の情報を出力する。
【0081】
図6は、第1の実施形態に係る出力制御機能176により表示される表示画面の一例を示す図である。
図6の左上には、断面像データに基づくMPR画像50を例示する。また、
図6の右上には、超音波画像データのレンダリング処理により生成されるレンダリング画像60を例示する。また、
図6の下側には、A面、B面、レベル3〜7のC面の各断面象が表示される。ここで、A面は心尖四腔像、B面は右心室の流入部においてA面に概直交ずる右室冠状面画像(Coronal View)を示す長軸方向のMPR像を示す。また、C面は長軸方向に概直交する短軸断面であって、本例では内部的に9つのレベルを有しており、C3、C5、C7は各々のレベルに相当するMPR像を示す。
【0082】
図6の左上に示すように、出力制御機能176は、断層像生成機能175によって生成された断面像データに基づいて、表示用のMPR画像50を生成し、ディスプレイ103に表示させる。また、出力制御機能176は、MPR画像50上に、MB位置を示すMBマーカ51と、AP位置を示すAPマーカ52と重畳表示させる。これにより、操作者は、MPR画像50を閲覧することにより、MPR画像がMB位置及びAP位置の2点を正しく通っているか否かを判断することができる。例えば、MB位置及びAP位置は超音波画像では高輝度に描出されるので、操作者は、MBマーカ51及びAPマーカ52の周辺位置の輝度を確認することで、MPR画像がMB位置及びAP位置の2点を正しく通っているか否かを判断することができる。更にこのMPR断面においては、MB位置とAP位置を両端とする調節帯が右心室腔内に視認される場合もあり、MB位置とAP位置の妥当性の判断に役立つ。なお、MBマーカ51及びAPマーカ52は、第1標識の一例である。
【0083】
また、
図6の右上に示すように、出力制御機能176は、MPR画像50に対応する心時相の関心領域に対してサーフェスレンダリング処理を行って、レンダリング画像60を生成し、ディスプレイ103に表示させる。また、出力制御機能176は、レンダリング画像60上に、中隔壁側のMB位置を示すMBマーカ61を重畳表示させる。これにより、操作者は、レンダリング画像60を閲覧することにより、レンダリング画像60におけるMB位置を立体的に把握することができる。また、特に図示しないが、本サーフェスレンダリングによるレンダリング画像60の背面には、自由壁側のAP位置を示すAPマーカ62も存在している。レンダリング画像60の視点位置を回転させることで背面を表示し、自由壁側の様子を観察すれば、MB位置同様にAP位置についても立体的に把握することが可能となる。なお、MBマーカ61は、第2標識の一例である。
【0084】
また、出力制御機能176は、算出機能174によって算出された局所の壁運動情報をカラーコードに変換し、レンダリング画像60にマッピングするのが好適である。あるいは、出力制御機能176は、算出機能174によって算出された関心領域の頂点アドレス上で定義される局所の壁運動情報について、関心領域に含まれる7つのセグメントごとに平均値を算出する。そして、出力制御機能176は、算出した平均値に関する時間変化曲線を作成して表示する。これにより、出力制御機能176は、セグメントごとに右心室の機能解析を提供することができる。
【0085】
なお、
図6では、図示の都合上、MBマーカ51及びAPマーカ52を黒丸印で図示したが、実際には互いに異なる色(若しくは形状)により区別して表示することが好ましい。例えばMBマーカ51はピンク色、APマーカ52は水色とする。これにより、操作者は、MPR画像50において、MB位置とAP位置とを判別しやすくなる。
【0086】
また、レンダリング画像60上のMBマーカ61と、APマーカ62の表示色について、各々をMPR上のMBマーカ51及びAPマーカ52の表示色と合致させておくのが好適である。これにより、操作者は、MPR画像50とレンダリング画像60の双方において、MB位置とAP位置との対応を認識しやすくなる。
【0087】
また、第1の実施形態では、短軸断面に近い傾きのMPR画像50を生成する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、断層像生成機能175は、前述の3点を通る断面ではなく、3点を通る曲面のCurved−MPR画像データを生成してもよい。この場合はapicalレベルのセグメント境界位置に相当するMPRの画像が得られる。
【0088】
また、例えば、断層像生成機能175は、室上稜位置を支点として、MB位置とAP位置の3点を通るMPR画像データを生成してもよい。この場合、表示されるMPR画像には、RVリングが描出され得る。また、断層像生成機能175は、MB位置、AP位置、及び室上稜位置の3点を通る曲面のCurved−MPR画像データを生成してもよい。この場合、右心室の流入部と流出部とを分ける面を明示することができる。そして、このMPR位置で右心室の関心領域を分割すれば、例えば流入部と流出部各々の容積を解析することが可能となる。なお、室上稜位置は、右心室の心基部側の輪郭の頂点位置(心尖部に最も近い位置)として算出可能である。このMPR面だと、必ず室上稜を支点として通るものの、支点からの角度の異なるどのMPR面で見ても流出部の高輝度な楕円腔を切っているように見えるため、MB移行位置と前乳頭筋の2つの生体ランドマークが実際にMPR面内に含まれているか否かをMPR表示上で確認するのが困難な場合がある。
【0089】
そこで、例えば、断層像生成機能175は、第1の実施形態によるMB位置及びAP位置の2点を通るMPR像と、上述した室上稜を支点として通るMPR像の両方を表示する。この際に、後者のMPR像におけるMB位置及びAP位置の2点は、前者のMPR像の各々の位置に対応している。そして、前者のMPR表示を用いてMB位置及びAP位置の2点の位置を正確に定めた後に、後者のMPR表示を用いれば、右室リングの位置を規定する3つの生体ランドマーク位置を通るMPRが容易に得られるようになる。
【0090】
なお、後述するように、MB位置及びAP位置は、調整機能177によって調整(移動)される。この場合、断層像生成機能175は、生体ランドマーク位置であるMB位置及びAP位置が調整されるごとに、調整後の生体ランドマーク位置を用いて断面像データを生成する。そして、出力制御機能176は、断層像生成機能175によって断面像データが生成されるごとに、生成された断面像データに基づく表示画像を表示させる。
【0091】
調整機能177は、操作者による操作を受け付けて、受け付けた操作に応じて、識別情報が設定された位置上で特徴位置を調整する。例えば、調整機能177は、3次元医用画像データに基づくレンダリング画像上で特徴位置を移動させる方向及び距離を指定する操作を操作者から受け付け、その方向及び距離に応じて特徴位置を調整する。なお、調整機能177は、調整部の一例である。
【0092】
図7A及び
図7Bは、第1の実施形態に係る調整機能177の処理を説明するための図である。
図7Aには、出力制御機能176によりディスプレイ103に表示されるレンダリング画像60を例示する。このレンダリング画像60上には、キーボード様の位置調整用GUIとして、アイコン70及びアイコン71が表示される。アイコン70は、AP位置を調整するためのキー形状のGUIであり、「A」のマークが表示されている。アイコン71は、MB位置を調整するためのキー形状のGUIであり、「M」のマークが表示されている。また、
図7Bには、アイコン71を用いてMB位置を調整する様子を示す。なお、
図7A及び
図7Bでは、レンダリング画像60上でMBマーカ61の位置を移動させることにより、MB位置を調整する場合を説明するが、AP位置を調整する場合の処理も同様である。また、
図7A及び
図7Bの説明において、MBマーカ61の調整前の位置(アドレス番号)は、(t0,h0,d0)である。
【0093】
図7Aに示すように、調整機能177は、AP位置を調整するためのアイコン70と、MB位置を調整するためのアイコン71とをレンダリング画像60上に表示させる。ここで、MB位置を調整する場合、操作者は、アイコン71を選択する操作を行う。アイコン71を選択する操作を操作者から受け付けると、調整機能177は、MB位置を調整対象として設定する。そして、調整機能177は、MBマーカ61を移動可能な方向をレンダリング画像60上に表示させる。
図7Aに示す例では、調整機能177は、MBマーカ61を移動可能な方向として、上方向の矢印と、下方向の矢印と、右方向の矢印と、左方向の矢印とをMBマーカ61の周囲に表示させる。
【0094】
図7Bに示すように、調整機能177は、操作者によるマーク72の操作に応じて、MBマーカ61の位置を、アドレスが設定された位置(構成点)上で調整する。
図7Bの例では、操作者がドラッグ操作により「M」のマーク72を右方向に移動させた場合を説明する。この場合、調整機能177は、マーク72の右方向への移動に応じて、MBマーカ61を右方向に移動させる。具体的には、調整機能177は、マーク72の移動方向と移動距離とに応じて、MBマーカ61のアドレス番号を変更する。例えば、マーク72の右方向への移動が、円周方向の「正の方向」に対応し、移動距離が「3」に対応する場合には、調整機能177は、MBマーカ61の円周方向の位置に「+3」を加算する。これにより、調整機能177は、MBマーカ61の位置(t0,h0,d0)を(t0,h0,d0+3)に変更する。
【0095】
このように、調整機能177は、操作者による操作に応じて、アドレス番号が設定された位置上で生体ランドマーク位置を調整する。そして、生体ランドマーク位置が調整されると、断層像生成機能175は、調整後の生体ランドマーク位置を用いて断面像データを生成する。そして、出力制御機能176は、断層像生成機能175によって断面像データが生成されるごとに、生成された断面像データに基づく表示画像を表示させる。
【0096】
なお、生体ランドマーク位置を調整する処理は、上記の説明に限定されるものではない。例えば、上記の説明では、マーク72の移動方向とMBマーカ61の移動方向とが一致する場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、マーク72の移動方向とMBマーカ61の移動方向とが対応づけられていれば、必ずしも両者の移動方向が一致していなくてもよい。
【0097】
また、生体ランドマーク位置を移動させる方向及び距離を指定する操作を操作者から受け付けるための構成は、
図7A及び
図7Bに例示の構成に限定されるものではない。例えば、キーボードの操作によって移動させる方向及び距離を指定する操作を受け付けてもよい。例えば、操作者がキーボードの「M」キーを押下したまた矢印キーの「右」キーを3回押下すると、調整機能177は、MBマーカ61を円周方向に「+3」移動させる旨の操作として受け付けてもよい。また、操作者がキーボードの「A」キーを押下したまた矢印キーを操作すると、調整機能177は、APマーカ62を移動させる旨の操作として受け付けてもよい。
【0098】
図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示す処理手順は、例えば、運動情報の解析を開始する旨の指示を操作者から受け付けた場合に開始される。
【0099】
ステップS101において、処理タイミングか否かを判定する。例えば、入力装置102は、運動情報の解析を開始する旨の指示を操作者から受け付け、受け付けた指示を処理回路170へ送る。処理回路170は、入力装置102により転送された指示を受け付けると、処理タイミングであると判定し(ステップS101肯定)、ステップS102以降の処理を開始する。なお、処理タイミングでない場合には(ステップS101否定)、ステップS102以降の処理は開始されず、処理回路170の各処理機能は待機状態である。
【0100】
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、取得機能171は、3次元医用画像データを取得する。例えば、取得機能171は、被検体Pの心臓が撮像された3次元医用画像データを、少なくとも1心拍分取得する。
【0101】
ステップS103において、関心領域設定機能173は、対象部位の関心領域を設定する。例えば、関心領域設定機能173は、3次元医用画像データに対してセグメンテーションを行って、右心室に対応する領域を検出する。そして、関心領域設定機能173は、検出した領域に、生体ランドマーク位置(MB位置及びAP位置)により分割位置が規定される関心領域を設定する。
【0102】
ステップS104において、識別情報設定機能172は、関心領域の輪郭上の複数の位置にアドレス番号を設定する。例えば、識別情報設定機能172は、超音波画像データ群に含まれる少なくとも1つの超音波画像データにおける右心室の輪郭に対応する位置に、アドレス番号が付与された追跡点(構成点)を複数設定する。
【0103】
ステップS105において、算出機能174は、3次元医用画像データから、関心領域に関する容積情報及び関心領域に関する運動情報の少なくとも一方を算出する。例えば、算出機能174は、複数の構成点が設定された初期時相における超音波画像データと、次の時相における超音波画像データとを用いてパターンマッチングを含む追跡処理を行うことで、超音波画像データ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の構成点の位置を追跡する。
【0104】
ステップS106において、断層像生成機能175は、対象部位の生体ランドマーク位置を通るMPR画像を生成する。例えば、断層像生成機能175は、超音波画像データから、関心領域の分割位置であるMB位置及びAP位置の2点を通るMPR画像データを生成(再構成)する。
【0105】
ステップS107において、出力制御機能176は、MPR画像及びレンダリング画像を表示させる。例えば、出力制御機能176は、断面像データに基づくMPR画像50と、超音波画像データのレンダリング処理により生成されるレンダリング画像60とをディスプレイ103に表示させる。また、出力制御機能176は、複数の分割領域それぞれの運動情報をカラーコードに変換し、レンダリング画像60にマッピングする。
【0106】
ステップS108において、出力制御機能176は、生体ランドマーク位置を示すマーカを、MPR画像及びレンダリング画像に重畳表示させる。例えば、出力制御機能176は、MPR画像50上に、MB位置を示すMBマーカ51と、AP位置を示すAPマーカ52と重畳表示させる。また、出力制御機能176は、レンダリング画像60上に、MB位置を示すMBマーカ61を重畳表示させる。
【0107】
ステップS109において、処理回路170は、処理が終了したか否かを判定する。例えば、入力装置102は、処理を終了する旨の指示を操作者から受け付け、受け付けた指示を処理回路170へ送る。処理回路170は、入力装置102により転送された指示を受け付けると、処理が終了したと判定し(ステップS109肯定)、
図8の処理を終了する。なお、処理が終了していない場合には(ステップS109否定)、処理回路170は、ステップS110の処理へ移行する。
【0108】
ステップS109が否定されると、ステップS110において、調整機能177は、生体ランドマーク位置の変更指示を受け付けたか否かを判定する。例えば、操作者がドラッグ操作により「M」のマーク72を右方向に移動させると、調整機能177は、MB位置の変更指示を受け付けたと判定し(ステップS110肯定)、ステップS111の処理へ移行する。なお、変更指示を受け付けない場合には(ステップS110否定)、ステップS109の処理へ移行する。
【0109】
ステップS110が肯定されると、ステップS111において、調整機能177は、アドレス番号が設定された位置上で、生体ランドマーク位置を変更する。例えば、調整機能177は、マーク72の右方向への移動に応じて、MBマーカ61を右方向に移動させ、ステップS106の処理へ移行する。つまり、断層像生成機能175は、調整後の生体ランドマーク位置を用いて断面像データを生成する。そして、出力制御機能176は、断層像生成機能175によって断面像データが生成されるごとに、生成された断面像データに基づく表示画像を表示させる。このように、調整機能177は、生体ランドマーク位置の変更指示を受け付けるごとに(ステップS110肯定)、ステップS106〜S108の処理を繰り返し実行する。
【0110】
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、取得機能171は、被検体の部位が撮影された3次元医用画像データを取得する。関心領域設定機能173は、3次元医用画像データに対して関心領域を設定する。算出機能174は、3次元医用画像データから、関心領域に関する容積を表す容積情報及び関心領域に関する運動機能を表す運動情報の少なくとも一方を算出する。断層像生成機能175は、3次元医用画像データから、部位の解剖学的な特徴を示す特徴位置を通る断面の画像データである断面像データを生成する。出力制御機能176は、断面像データに基づく表示画像を表示させるとともに、特徴位置に基づいて関心領域が分割された分割領域に対応する容積情報及び運動情報の少なくとも一方を出力する。これによれば、超音波診断装置1は、解剖学的な特徴を示す位置上に関心領域の分割位置を正しく設定することを支援することができる。
【0111】
例えば、右心室は、解剖学的には、右室リング(RVリング)と呼ばれるリング状の筋肉束により流入部と流出部の2領域に分けられる。したがって、心筋ストレインや容積等により、右心室の機能を解析する場合には、右心室を流入部と流出部とで分けて解析することが求められる。また、より詳細な局所の壁運動解析を行う場合には、流入部と流出部とに分割した上で、更に細分化することが適切と考えられる。ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、RVリングの生体ランドマーク位置により分割位置が規定される関心領域を、3次元医用画像データに対して設定する。このため、超音波診断装置1は、容積情報や運動情報を、RVリングで分割される流入部及び流出部の2領域で解析したり、流入部及び流出部を更に細分化した領域で解析することが容易となる。
【0112】
また、例えば、超音波診断装置1は、生体ランドマーク位置を通るMPR画像データを生成し、表示する。このため、超音波診断装置1は、常に、生体ランドマーク位置をMPR画像上に表示することができる。更に、生体ランドマーク位置に対応するマーカをMPR画像上に表示する。これによれば、操作者は、MPR画像に表示される生体ランドマークの構造とマーカ表示位置を比較して確認することで、生体ランドマーク位置が正しい位置にあるか否かを容易に確認することができる。
【0113】
また、例えば、超音波診断装置1は、操作者による操作に応じて、生体ランドマーク位置を調整するとともに、調整後の生体ランドマーク位置を用いてMPR画像データを生成し、表示する。これによれば、超音波診断装置1は、生体ランドマーク位置を操作者が所望する位置に調整することができる。具体的には、入力された被検者データにおける画像中の生体ランドマーク位置の個人差に対して、操作者は、生体ランドマーク位置の調整に伴って更新されるMPR画像と生体ランドマーク位置に対応するマーカ表示を確認することで、マーカ表示位置が、MPR画像中で適切な生体ランドマークの構造位置と合致するように設定することが可能となる。これにより、生体ランドマーク位置の個人差に対しても、操作者が適切なランドマーク位置を決定できるようになる。
【0114】
なお、上記の実施形態では、生体ランドマーク位置として、MB位置及びAP位置を用いる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、生体ランドマーク位置として、MB位置及びAP位置のうちの一方を用いる場合であってもよい。
【0115】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0116】
(生体ランドマーク位置の移動可能方向の明示)
例えば、超音波診断装置1は、生体ランドマーク位置の移動可能方向を明示してもよい。
図9は、その他の実施形態に係る調整機能177の処理を説明するための図である。
図9には、出力制御機能176によりディスプレイ103に表示されるレンダリング画像を例示する。
図9のレンダリング画像には、
図7Aに例示した「A」のアイコン70及び「M」のアイコン71に加え、「F」のアイコン、「I」のアイコン、及び「O」のアイコンが表示されている。なお、「F」のアイコンは、自由壁部の側壁側の流入部(RVIT Lat)及び下壁側の流入部(RVIT Inf)の境界位置を左右(円周方向)に変更するためのアイコンである。また、「I」のアイコンは、右心室の流入部の下端位置(三尖弁レベル)を上下(長軸方向)に変更するためのアイコンである。また、「O」のアイコンは、右心室の流出部の下端位置(肺動脈弁レベル)を上下(長軸方向)に変更するためのアイコンである。
【0117】
図9に示すように、「F」のアイコンは、上下方向に3つの領域に分かれている。この3つの領域のうち、上段の領域と下段の領域は灰色で示されている。この灰色の領域は、「F」のマークが移動不可能な領域であることを示す。つまり、「F」のアイコンにおいて、「F」のマークは、上下方向には移動不可能であり、左右方向にのみ移動可能であることを示す。
【0118】
また、「I」及び「O」のアイコンは、左右方向に3つの領域に分かれている。この3つの領域のうち、左側の領域と右側の領域は灰色で示されている。つまり、「I」及び「O」のアイコンにおいて、「I」及び「O」の各マークは、左右方向には移動不可能であり、上下方向にのみ移動可能であることを示す。
【0119】
このように、調整機能177は、「F」、「I」及び「O」のアイコンのように、それぞれの生体ランドマーク位置の移動可能方向を示すアイコンを操作者に提供することができる。
【0120】
(Dynamic−MPR表示)
また、例えば、超音波診断装置1は、上述した処理を用いてDynamic−MPR表示を行ってもよい。
【0121】
例えば、取得機能171は、部位が時系列順に撮像された複数の3次元医用画像データを取得する。そして、断層像生成機能175は、複数の3次元医用画像データそれぞれから、各3次元医用画像データにおける特徴位置を通る断面像データをそれぞれ生成する。出力制御機能176は、各3次元医用画像データから生成された各断面像データを時系列順に表示させる。
【0122】
例えば、生体ランドマーク位置は、上述した追跡処理により全時相にわたって対応づけられている。そこで、断層像生成機能175は、時系列順の超音波画像データ群に含まれる複数の超音波画像データそれぞれにおける生体ランドマーク位置を特定する。そして、断層像生成機能175は、各超音波画像データにおいて特定した各生体ランドマーク位置に対して、各生体ランドマーク位置を通るMPR画像をそれぞれ生成する。そして、出力制御機能176は、生成した各MPR画像を時系列順に表示させる。このため、超音波診断装置1は、時系列順に動的に変化する生体ランドマーク位置を通るMPR画像の動画像を提供することができる。
【0123】
(厚み付きMPR表示)
また、例えば、超音波診断装置1は、生体ランドマーク位置を通るMPR画像を、厚み付きMPR画像として生成し、表示してもよい。
【0124】
例えば、断層像生成機能175は、3次元医用画像データから、特徴位置を通り所定の厚みを有する断面の画像データである厚み付き断面像データを生成する。具体的には、断層像生成機能175は、5mm等の設定値に基づく厚み(MPR断面に垂直な方向)の中で輝度値の平均値を求めてMPR画像を再構成する。これによれば、表示されるMPR画像に生体ランドマーク位置の信号が含まれる頻度が高まるので、生体ランドマーク位置の正しい位置を探索する際に、生体ランドマーク位置の判別が容易となる。
【0125】
(レンダリング画像上のマーカの非表示)
また、例えば、上記の実施形態では、レンダリング画像60上にMBマーカ61を表示する場合を示したが、これに限らず、MBマーカ61は表示されていなくてもよい。この場合においても、例えば、操作者は、MPR画像50に描出されたMB位置やAP位置を確認することで、生体ランドマーク位置の妥当性を判断することができる。また、生体ランドマーク位置を調整可能であれば、操作者は、生体ランドマーク位置を変更することで正しいと思われる位置を探索することができる。この場合、生体ランドマーク位置を1アドレスずつ変更する構成が好適である。具体的には、調整機能177は、キーボードの「M」キーを押下しながら上下左右の矢印キーを1回押下する操作を受け付けると、MB位置を矢印キーの対応する方向に1アドレス分移動させる。また、調整機能177は、キーボードの「A」キーを押下しながら上下左右の矢印キーを1回押下する操作を受け付けると、MB位置を矢印キーの対応する方向に1アドレス分移動させる。このように、超音波診断装置1は、レンダリング画像上にマーカを表示しなくとも、生体ランドマーク位置を1アドレスずつ移動させることで、正しい生体ランドマーク位置の探索を容易とする。
【0126】
(Polar Mapによる3次元的な関心領域の表示)
上述の実施例では、MB位置やAP位置を3次元的に閲覧する表示手段として(サーフィス)レンダリング画像60を用いる例を示した。これ以外にも3次元的な関心領域全体の様子を一度に閲覧できる表示手段として、左心室で広く知られているPolar Mapによる表示を右心室に適用しても構わない。この場合は、右心室用に構成されたPolar Map上で、MB位置やAP位置に対応した位置にMBマーカやAPマーカを表示するのが好適である。
【0127】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0128】
また、上記の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0129】
また、上記の実施形態で説明した医用画像処理方法は、予め用意された医用画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用画像処理方法は、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用画像処理方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0130】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被検体の部位の解剖学的な特徴を示す位置に基づいて分割された領域ごとに部位の解析を行うことができる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。