【実施例1】
【0010】
<1>全体構成
図1は、本発明の実施例1に係るベルトコンベア監視システムを示す概略構成図である。
本発明に係るベルトコンベア監視システムは、被搬送物を搬送するベルトコンベアに設けるシステムである。
本実施例に係るベルトコンベア監視システムは、ラインレーザ10と、デジタルカメラ20と、解析装置30と、蛇行修正装置40を少なくとも備えて構成する。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0011】
<2>ラインレーザ
ラインレーザ10は、ベルトコンベアのベルトAの表面に輪郭線12を描くための装置である。
本実施例では、ラインレーザ10は、ベルトコンベアの上方にあって、ベルトコンベアの往路側のベルトAに対してレーザ光11を照射するように配置している。
【0012】
<2.1>レーザ光の照射方向
レーザ光11の照射方向θ1は、水平方向を0°(180°)としたとき、0°<θ1<180°の範囲で適宜決定する。
本実施例では、レーザ光11の照射方向を鉛直方向(θ1=90°)としている。
【0013】
<2.2>レーザ光の照射タイミング
レーザ光11は、常に照射する態様としても良いし、デジタルカメラ20の撮影時にのみ照射する態様としてもよい。
【0014】
<2.3>輪郭線の一例
図2に、レーザ光11の照射箇所においてベルトAの幅方向に切断した断面図を示す。なお、
図2は搬送ローラBの直上でない箇所を切断した断面図であるため、説明の便宜上、搬送ローラBを仮想線で示している。
図2に示すように、ベルトAの表面には、ベルトAの上方に設けたラインレーザ10からのレーザ光11を略鉛直方向に向けて照射することにより輪郭線12が描かれることとなる。
この輪郭線12は、後述するデジタルカメラ20によって撮影される。
【0015】
<3>デジタルカメラ
デジタルカメラ20は、ベルトAの表面に描かれた輪郭線12を撮影するための装置である。
デジタルカメラ20の撮影データは、適宜解析装置30に送られてベルトAの蛇行判定に使用される。
【0016】
<3.1>デジタルカメラの撮影方向
デジタルカメラ20は、ラインレーザ10が位置する側から、ラインレーザ10の照射方向と異なる角度から撮影する。
これは、前記レーザ光11による輪郭線12がベルトAの表面に描かれているのか、ベルトA以外の箇所の表面に描かれているのかを、撮影データにおける輪郭線12の欠落や段差によって認識するためである。
【0017】
<3.2>デジタルカメラの画素数
デジタルカメラ20の画素数は、多ければ多いほど、画像解析の精度が向上する点で好ましいが、解析時間も長くなるため、適切な範囲で決定すれば良い。
【0018】
<4>解析装置
解析装置30は、デジタルカメラ20の撮影データに基づいてベルトAの蛇行を判定するための装置である。
解析装置30は、PCなどの情報処理装置を構成するハードウェアまたはソフトウェア、あるいはこれらの組合せによって実現することができる。
【0019】
<4.1>ソフトウェアの態様
なお、解析装置30に用いるソフトウェアは、予め判定基準を設定してあるプログラムを組み込むだけでなく、過去の判定プロセスを学習して判定基準を自律的に生成する、いわゆる人工知能型のプログラムを組み込んでおいても良い。
【0020】
<4.2>解析装置の構成例
本実施例では、解析装置30は、記憶手段31と、位置検出手段32と、蛇行判定手段33とを含んで構成する。
以下、各手段の詳細について説明する。
【0021】
<4.3>記憶手段
記憶手段31は、ベルトAの正常位置と、ベルトAの蛇行を修正するか否かを判定するためのしきい値を記憶しておくための手段である。
【0022】
<4.3.1>正常位置の記憶方法
ベルトAの正常位置を記憶しておく方法としては、蛇行していない状態で走行しているベルトAの輪郭線12をデジタルカメラ20で撮影し、この撮影データを画像処理して得られる見かけの鉛直断面図のデータを記憶しておく方法を採用できる。
【0023】
<4.3.2>しきい値の設定方法
ベルトAが蛇行していると判断するためのしきい値は、ベルトA1の幅長や、ベルトコンベアの進行路の曲率などに応じてユーザーが予め設定しておくことができる。
【0024】
<4.4>位置検出手段
位置検出手段32は、デジタルカメラ20の撮影データから、ベルトAの撮影時の位置(現在位置)を求めるための手段である。
ベルトAの現在位置は、前記<4.3.1>に示したベルトAの正常位置を記憶する方法と同様に、デジタルカメラ20で輪郭線12を撮影した撮影データを画像処理することで得られる見かけの鉛直断面図のデータから求める方法などがある。
【0025】
<4.5>蛇行判定手段
蛇行判定手段33は、ベルトAの蛇行の有無を判定する手段である。
蛇行判定手段33は、記憶手段31で記憶してあるベルトAの正常位置を示すデータと、位置検出手段32で求めたベルトAの現在位置を示すデータを比較することで、ベルトAの蛇行の有無を判定し、この差分が、記憶手段31に記憶してあるしきい値を超えている場合に、蛇行修正装置40に対し、修正作業の実行を通知するよう構成する機能を有する。
【0026】
<5>蛇行修正装置
蛇行修正装置40は、ベルトAの蛇行を修正するための装置である。
蛇行修正装置40による押圧方向は、後述するようにベルトAの蛇行を修正する方向の違いや、ベルトAの中央揃え(センタリング)などによって変更する必要がある。そこで、右蛇行修正用、左蛇行修正用、センタリング用のように各用途に応じてそれぞれの蛇行修正装置40を設けても良いし、一台の蛇行修正装置40で複数用途を兼用可能に構成してもよい。
【0027】
本実施例では、蛇行修正装置40は、昇降装置41と、ローラ42とを少なくとも含む。
以下、各構成要素とその他の構成の詳細について説明する。
【0028】
<5.1>昇降装置
昇降装置41は、ローラ42を昇降させるための装構である。
昇降装置41には、油圧ピストンなどの公知の装置によってローラ42を昇降させるよう構成する。
【0029】
<5.1.1>昇降装置の移動機構および昇降方向の角度調整
さらに、昇降装置41は、昇降装置41そのものをベルトAの幅方向に対して移動可能な構成や、昇降方向の角度を調節可能な構成とすることができる。
当該構成によれば、一台の蛇行修正装置40で複数用途(右蛇行修正用、左蛇行修正用、センタリング用)を兼用することができる。
【0030】
<5.1.2>弾性材の介設
さらに、昇降装置41とローラ42との間には、バネやゴムなどの弾性材を介設しておいてもよい。42を昇降
当該構成によれば、ベルトA1がローラ42によって過剰に押圧されることを防止することができる。
【0031】
<5.2>ローラ
ローラ42は、ベルトAの位置を修正するようにベルトAを押圧するための装置である。
ローラ42の回転軸は、平面視したときに、ベルトAを搬送する搬送ソーラBの回転軸と略並行に構成する。
【0032】
<6>その他の装置
本発明に係る監視システムは、その他、以下の装置を設けることもできる。
【0033】
<6.1>移動量センサ
移動量センサ50は、ベルトコンベアの移動量(搬送速度)を検知可能な装置である。
移動量センサ50は、公知の部材を用いれば良く、詳細な説明は省略する。
移動量センサ50によるベルトコンベアの移動量(搬送速度)を把握できると、解析装置30では、デジタルカメラ20による撮影箇所から、蛇行修正装置40での蛇行修正位置Dまでの距離と、前記ベルトコンベアの搬送速度から、ラインレーザ10の照射箇所である蛇行判定位置Cから、蛇行修正領域Eまでの到達時間を求めることができる。
【0034】
<6.2>遮光手段
遮光手段(図示せず)は、ラインレーザ10によるレーザ光11の照射箇所を、照明装置や日光などのその他の光源から遮断するための装置である。
レーザ光11の照射箇所の周囲に遮光手段を設けておけば、輪郭線12をより明瞭に表示した撮影データを得ることができる。
【0035】
<7>使用方法
再度、
図1を参照しながら、本実施例に係るベルトコンベア監視システムの使用方法の一例について以下に説明する。
【0036】
<7.1>輪郭線の撮影および見かけの鉛直断面図の生成
まず、デジタルカメラ20は、ラインレーザ10で照射したレーザ光11によってベルトA上に描かれる輪郭線12を、ラインレーザ10の照射方向と異なる方向から所定間隔を空けて撮影し、解析装置30へと送信する。
解析装置30では、デジタルカメラ20から受信した撮影データを画像処理して見かけの鉛直断面図を生成する。
図3(a)に、ベルトが正常位置にある状態での、デジタルカメラによる撮影データと、解析装置で生成した見かけの鉛直断面図のイメージ図を示す。
デジタルカメラ20によって撮影された撮影データでは、ベルトAの進行方向に対して遠近を伴うように表示されている。
解析装置30では、この撮影データと、レーザ光11の照射方向θ1、およびレーザ光の照射方向から所定角度を呈するデジタルカメラの撮影角度θ2に基づいて、画像処理を行い、輪郭線12上を鉛直方向に切断したように表示した見かけの鉛直断面図を生成する。
【0037】
<7.2>蛇行の判定
さらに、解析装置30は、前記<7.1>で生成した現状のベルトAにおける見かけの鉛直断面図を、予め記憶してある、正常状態のベルトAにおける見かけの鉛直断面図と比較して、ベルトAの蛇行の有無を判定する。
図3(b)に、ベルトAが右に蛇行した状態での、デジタルカメラによる撮影データと、解析装置で生成した見かけの鉛直断面図のイメージ図を示す。
図3(a)に係る正常時の見かけの鉛直断面図と、蛇行時の見かけの直弾面図を比較すると、ベルトAの右側の端部が蛇行した分だけ右に伸びているように表示されて、輪郭線12に余剰部121が生じている。
そしてベルトAの左側の端部も右にずれており、正常時と比較して輪郭線が欠落していたり、段差が生じていたりするように表示される(欠落部122)。
解析装置30では、この輪郭線12の余剰部121や欠落部122の長さが所定の長さを超えた場合に、ベルトAの位置修正が必要な程度にベルトが蛇行していると判断する。
【0038】
<7.3>蛇行修正作業
解析装置30でベルトAの蛇行の修正を要すると判定した際には、解析装置30は、ベルトAの蛇行箇所が蛇行修正装置40の場所に達するタイミングで蛇行修正装置40に修正作業の実行を送信する。
修正作業のタイミングは、解析装置30による判定時間が短ければ直ちに行っても良いし、蛇行判定位置Cから、蛇行修正位置Dまでの距離が遠い場合には、前記した移動量センサ50によるベルトコンベアの搬送速度の情報を踏まえて、適切なタイミングで蛇行修正装置40によるローラ42の押圧作業が実行されるように設定してもよい。
【0039】
<7.3.1>蛇行修正例
図4を参照しながら、ベルトAが右側に寄った形で蛇行している場合での、蛇行修正装置40による蛇行修正方法について説明する。
まず、ベルトAの中央に位置する昇降装置41をベルトAの右側へと移動させる(
図3(a))。
その後、昇降装置41の昇降方向を直交方向から右側に鋭角を設けるように傾けた状態とする(
図3(b))。
その状態から昇降装置を伸ばして、ローラ42でベルトAを押圧する(
図3(c))。
このとき、ローラ42をベルトAに押圧する際には、ローラ42の回転軸がベルトAを搬送する回転軸と平面視して略並行状態となるため、ベルトAとローラ42との間では十分な面接触が確保できることとなり、ベルトAの一部に過大な抵抗が発生することはない。
ローラ42に押されたベルトAは一時的に沈み込んで右側に寄ったベルトを左側へと引き寄せるように作用する。
この状態でベルトAの運転を継続していると、ベルトAの蛇行が自然に解消されていき、ローラ42をベルトAから離した後もベルトAの位置が維持される(
図4(d))。