(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正手段が、前記変調光の波形情報について、前記通信データに対応する変調光を出射する期間の前および後の少なくとも一方の期間に補正用の光を出射することにより、前記差分を補正する、請求項1から6のいずれか一項に記載の照明通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記変調光が、複数波長の光を変調した変調光である。
【0011】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記照明光が、白色光である。
【0012】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記光情報が、色温度、輝度、複数波長の光強度、および色の三刺激値からなる群から選択された少なくとも一つである。
【0013】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記変調光における変調方式が、パルス幅変調方式およびパルス位置変調方式のいずれか一方であり、前記補正手段が、前記変調光の波形情報について、パルス信号の振幅を変化させることにより、前記差分を補正する。
【0014】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記演算手段が、所定期間における前記変調光の光情報と評価基準となる照明光の光情報との差分を求め、前記補正手段が、前記所定期間ごとに補正変調光の波形情報を生成し、前記所定期間が、人間の目が時間分解可能な間隔よりも短い期間である。
【0015】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記演算手段が、各パルス信号における前記変調光の光情報と評価基準となる照明光の光情報との差分を求め、前記補正手段が、パルス信号ごとに補正変調光の波形情報を生成する。
【0016】
本発明の照明通信システムは、例えば、前記補正手段が、前記変調光の波形情報について、前記通信データに対応する変調光を出射する期間の前および後の少なくとも一方の期間に補正用の光を出射することにより、前記差分を補正する。
【0017】
本発明の照明通信システムは、例えば、さらに、前記通信データを受信する受信手段を含み、前記受信手段は、前記補正変調光である前記光源からの出射光を受光する受光手段、および前記補正変調光の波形情報から前記通信データを復調する復調手段を含む。
【0018】
つぎに、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。本発明は、下記の実施形態によって何ら限定および制限されない。
【0019】
(照明通信システム)
図1に、本実施形態における照明通信システム1のブロック図を示す。
図1に示すように、本実施形態の照明通信システム1は、可視光域の光を出射する有機EL光源10と、有機EL光源10からの出射光の出射を制御する制御手段20とを含み、制御手段20は、通信データに対応する変調光の波形情報を生成する生成手段201、前記変調光の波形情報から前記変調光の光情報を演算し、評価基準となる照明光の光情報との差分を求める演算手段202、および前記差分が補正された補正変調光の波形情報を生成する補正手段203を含む。本実施形態の照明通信システム1において、有機EL光源10は、制御手段20と電気的に接続している。
【0020】
本発明において、光源は、例えば、有機EL光源、および、LED光源のいずれを用いることもできるが、好ましくは、有機EL光源である。従来、LEDの点滅をデータ送信に用いた可視光通信では、白色光のLEDを利用する場合が多く、また、LEDは極めて小さな素子を作製することが困難であることから、例えば、RGBの3波長のLEDを用いた通信装置では、大型化してしまうという問題があった。これに対し、通信装置に有機EL光源を用いる場合、透明基板上に発光素子と配線とを直接形成し、そのまま通信装置として用いることができるため、装置の小型化も容易である。また、有機EL光源は、複数の有機EL素子部を同一の基板上で形成することが可能であるため、設計上の自由度も高い。したがって、複数の光波長の有機EL光源を組み合わせて用いることにより、経済的であり、且つ、大容量の情報を通信可能な通信装置とすることができる。
【0021】
有機EL光源10は、可視光域の光を出射する有機EL光源であればよく、公知の有機EL光源を使用できる。有機EL光源10は、例えば、基板と、前記基板上に配置される有機EL素子部とを含む。
【0022】
有機EL光源10において、前記基板は、前記有機EL素子部における有機EL層の発光を透過させる透過率の高いものであることが好ましい。前記基板の形成材料としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等のガラス;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリイミド;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエーテルサルフォン;ポリ炭酸エステル;等があげられる。前記基板110の大きさ(長さおよび幅)は、特に制限されず、例えば、所望の有機EL光源10の大きさに応じて、適宜設定すればよい。前記基板の厚さも、特に制限されず、その形成材料、使用環境等に応じて、適宜設定でき、例えば、1mm以下である。
【0023】
前記有機EL素子部は、例えば、一対の電極と、有機EL層とを有し、前記一対の電極のうちの一方の電極と、前記有機EL層と、前記一対の電極のうちの他方の電極とが、この順序で積層された積層体である。前記一対の電極は、例えば、陽極と陰極との組合せであり、前記陽極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極であり、前記陰極は、例えば、金属(例えば、アルミニウム等)等の対向電極である。前記有機EL層は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、有機ELを含む発光層、電子輸送層、電子注入層が、順次積層された積層構造等である。前記有機EL素子部は、前記基板の一方の表面に、1つが配置されてもよいし、複数(2以上)配置されてもよい。
【0024】
前記発光層は、電極から注入された電子と正孔とを再結合させ、蛍光、燐光等を発光させる層である。前記発光層は、発光材料を含む。前記発光材料は、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq
3)、ビスジフェニルビニルビフェニル(BDPVBi)、1,3−ビス(p−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾールイル)フェニル(OXD−7)、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(BPPC)、1,4ビス(N−p−トリル−N−4−(4−メチルスチリル)フェニルアミノ)ナフタレン等の低分子化合物、または、ポリフェニレンビニレン系ポリマー等の高分子化合物等があげられる。
【0025】
また、前記発光材料は、例えば、ホストとドーパントとの二成分系からなり、ホスト分子で生成した励起状態のエネルギーがドーパント分子へ移動してドーパント分子が発光する材料でもよい。このような発光材料は、具体的には、例えば、ホストのAlq
3等のキノリノール金属錯体に、ドーパントの4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、2,3−キナクリドン等のキナクリドン誘導体、もしくは、3−(2’−ベンゾチアゾール)−7−ジエチルアミノクマリン等のクマリン誘導体をドープしたもの、ホストの電子輸送性材料であるビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−4−フェニルフェノール−アルミニウム錯体に、ドーパントのペリレン等の縮合多環芳香族をドープしたもの、または、ホストの正孔輸送層材料である4,4’−ビス(m−トリルフェニルアミノ)ビフェニル(TPD)に、ドーパントのルブレン等をドープしたもの、ホストの4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチルビフェニル(CDBP)等のカルバゾール化合物に、ドーパントの白金錯体、トリス−(2フェリニルピリジン)イリジウム錯体(Ir(ppy)
3)、(ビス(4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジネート−N,C2’)ピコリネートイリジウム錯体(FIr(pic))、(ビス(2−(2’−ベンゾ(4,5−α)チエニル)ピリジネート−N,C2’)(アセチルアセトネート)イリジウム錯体(Btp
2Ir(acac))、Ir(pic)
3、Bt
2Ir(acac)等のイリジウム錯体をドープしたもの等があげられる。
【0026】
前述の発光材料は、例えば、照明通信システム1の目的とする発光色に応じて、適宜選択できる。具体的には、例えば、緑色発光の場合、Alq
3、ドーパントとしてキナクドリン、クマリン、Ir(ppy)
3等、青色発光の場合、DPVBi、ドーパントとしてペリレン、ジスチリルアリーレン誘導体、FIr(pic)等、緑〜青緑色発光の場合、OXD−7等、赤〜オレンジ色発光の場合、ドーパントとしてDCM、DCJTB、Ir(pic)
3等、黄色発光の場合、ドーパントとしてルブレン、Bt
2Ir(acac)等を選択できる。また、白色発光を得るには、前記発光材料は、例えば、ホストとしてAlq
3等、ゲストとしてDCM(橙色)等の組み合わせを選択できる。
【0027】
有機EL光源10は、例えば、それぞれ異なる色に発光する前記有機EL素子部を複数組み合わせたものであってもよい。具体的には、例えば、前記基板の表面に、赤色、緑色、青色(RGB)を発光する前記有機EL素子部をタイル状に配列し、各色の光を組み合わせることによって、白色光を得ることができる。この他にも、例えば、青色および黄色等、補色を発光する光を組み合わせることによっても、白色光を得ることができる。
【0028】
また、例えば、赤色、緑色、青色を発光する発光材料をそれぞれ含有する三層積層構造の層、青色および黄色等を発光する二層積層構造の層、および、多元共蒸着等によりこれらの発光材料が混在する一層構造の層等を、前記発光層として形成することにより、白色を発する前記有機EL素子部を得ることができる。さらに、前述の三層積層構造の層または二層積層構造の層における各色層を構成する発光材料を、例えば、順次、赤色、青色、緑色等の微細な画素を平面的に配列して形成した層を、白色発光の前記発光層とすることもできる。
【0029】
制御手段20は、前述のように、生成手段201、演算手段202、および補正手段203を含む。制御手段20は、例えば、生成手段201、演算手段202、および補正手段203を一体として含む装置(端末)であり、システムでもよい。生成手段201、演算手段202、および補正手段203は、例えば、ハードウェアであるデータ処理手段(データ処理装置)に組み込まれてもよく、ソフトウェアまたは前記ソフトウェアが組み込まれたハードウェアでもよい。前記データ処理手段は、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ等を備えてもよい。本実施形態の照明通信システム1において、生成手段201は、演算手段202に、電気的に接続され、演算手段202は、補正手段203に、電気的に接続されている。本実施形態の照明通信システム1において、制御手段20は、例えば、いずれか1つ以上の手段が分離されてもよい。
【0030】
生成手段201は、通信データに対応する変調光の波形情報を生成する。前記波形情報は、例えば、前記変調光の波形の情報、および、前記波形となるように前記補正変調光を出力するための電流値の情報である。生成手段201において、前記通信データを変調する方式は、例えば、パルス幅変調(PWM)方式、およびパルス位置変調(PPM)方式があげられる。具体的な前記通信データの変調方法については、後述する。
【0031】
生成手段201は、例えば、1色の光について通信データに対応する変調光の波形情報を生成してもよいし、複数種類の色の光について通信データに対応する変調光の波形情報を生成してもよい。後者の場合、生成手段201は、複数の異なる通信データを、それぞれ、前記各色の光に割り当ててもよいし、1つの通信データを分離し、前記各色の光に割り当ててもよい。
【0032】
生成手段201が、1つの通信データを分離し、前記各色の光に割り当て、前記各色の光について通信データに対応する変調光の波形情報を生成する場合、本実施形態の照明通信システム1は、例えば、分離手段を含み、前記分離手段が、1つの通信データを、前記各色の光に割り当ててもよい。前記分離手段および後述する多重手段は、例えば、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ等である。そして、生成手段201は、前記各色の光について、前記分離手段により割り当てられた通信データに対応する変調光の波形情報を生成する。
【0033】
図2は、前記通信データに対応する光がRGBの3種類の光である場合の、通信データの流れを示すブロック図である。
図2に示すように、前記分離手段(分離回路)において、通信データ(送信データ)は3つに分けられ、それぞれの通信データが、有機EL光源10から出射されるRGBの3種類の光に割り当てられる。そして、制御手段20(駆動回路)により、前記割り当てられた通信データに対応する補正変調光の波形情報が生成される。そして、有機EL光源10から、前記補正変調光が、それぞれ出射される。また、後述するように、受信手段30(受光受信回路)は、カラーフィルタ(CF)を備えるフォトディテクタ(PD)により、通信データに対応する前記補正変調光を受信し、RGBの3種類の前記補正変調光から、それぞれの前記通信データを復調する。そして、3つに分けられた前記通信データは、多重手段(多重回路)において、1つの通信データ(受信データ)に戻される。
【0034】
演算手段202は、生成手段201において生成された前記変調光の波形情報から、前記変調光の光情報を演算し、さらに、前記変調光の光情報と、評価基準となる照明光の光情報との差分を求める。
【0035】
前記光情報は、例えば、色温度(K)、輝度、複数波長の光強度、および色の三刺激値である。色温度は、例えば、色度と言い換えることもでき、輝度は、例えば、光束、明るさ、および光強度と言い換えることもできる。
【0036】
前記照明光は、例えば、白色光であり、具体的には、昼光色(約6500K)、昼白色(約5000K)、電球色(約3000K)、白色(約4200K)、および温白色(約3500K)があげられる。また、照明通信システム1がデザイン照明や自動車用照明に用いられる場合には、前記照明光は、例えば、白色光以外の光であってもよい。前記照明光の輝度は、例えば、100〜10000cd/m
2である。
【0037】
演算手段202は、例えば、前記変調光が、複数種類の色の光を組み合わせた光である場合、前記複数種類の色の光を足し合わせた光の光情報と、前記評価基準となる照明光の光情報との差分を求めてもよいし、前記複数種類の色の光のそれぞれの光情報と、前記評価基準となる照明光を複数の光に分けたときのそれぞれの光情報との差分を求めてもよい。
【0038】
補正手段203は、演算手段202において求められた、前記変調光の光情報と評価基準となる照明光の光情報との前記差分に基づき、前記差分が補正された補正変調光の波形情報を生成する。
【0039】
前記補正により、例えば、前記補正変調光を、評価基準となる照明光との比較において、光情報に差がない、または差が小さい光とすることができる。すなわち、前記補正変調光が、照明光として必要な条件を満たす光となる。
【0040】
一般に、人間の目の時間分解能は約50ms〜100ms程度であるため、前記分解可能な時間間隔よりも短い間隔で光が点滅した場合、人は、光が連続点灯していると認識する。また、前記分解可能な時間間隔よりも短い間隔で異なる波長の光が点灯した場合、人は、前記異なる波長の光が合成された1種類の光として認識する。したがって、補正手段203は、前記人間の目が時間分解可能な間隔よりも短い期間を所定期間とし、前記所定期間において、その期間における前記差分を補正することが好ましい。これにより、人が、前記補正変調光を、照明光として違和感なく認識することができる。また、例えば、複数の色の光を組み合わせた光を用いる場合も、前記所定期間における各色の光情報の差分を補正することにより、前記補正変調光の色のばらつきを抑えることができる。前記所定期間(補正の1周期)は、例えば、5×10
−9〜100ms、1×10
−8〜50ms、2×10
−8〜16.7msである。
【0041】
補正手段203は、例えば、前記変調光が、複数種類の色の光を組み合わせた光である場合、各色の光について補正を行うことが好ましい。補正手段203は、前記複数種類の色の光について補正を行う場合、例えば、各色の変調光の輝度をそれぞれ変化させることにより、前記複数種類の色の光を足し合わせた光の色温度の差分を補正することができる。また、例えば、各色の変調光の輝度を一律に変化させることにより、前記複数種類の色の光を足し合わせた光の輝度の差分を補正することができる。
【0042】
補正手段203は、例えば、後述する記憶手段に記憶された情報を参照してもよい。具体的な補正の方法については、後述する。
【0043】
本実施形態の照明通信システム1は、例えば、さらに、前記評価基準となる照明光の光情報を記憶する記憶手段を含んでもよい。前記記憶手段は、例えば、データベース、サーバ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)等である。
【0044】
前記記憶手段は、例えば、電流値に対応する前記光情報を、参照テーブルとして記憶してもよい。この場合、制御手段20は、前記記憶手段に記憶された前記参照テーブルに基づき、前記光源からの出射光の出射を制御することができる。
【0045】
本実施形態の照明通信システム1は、例えば、さらに、通信データを受信する受信手段30を含んでもよい。受信手段30は、例えば、前記補正変調光である前記光源からの出射光を受光する受光手段301、および前記補正変調光の波形情報から前記通信データを復調する復調手段302を含む。
【0046】
受信手段30は、例えば、受光手段301、および復調手段302を一体として含む装置(端末)であり、システムでもよい。本実施形態の照明通信システム1において、受光手段301は、復調手段302に、電気的に接続されている。本実施形態の照明通信システム1において、受信手段30は、例えば、それぞれの手段が分離されてもよい。
【0047】
受光手段301は、有機EL光源10から出射された前記補正変調光を受光できればよく、例えば、受光波長の異なるPIN−フォトダイオード、PIN−フォトダイオードおよびアバランシェフォトダイオードの前面にカラーフィルタを備えたカラーセンサ、CMOSモノリシックフォトICおよびCCD等のイメージセンサ、ならびにフォトレジスタ等のフォトディテクタがあげられる。有機EL光源10から出射される光が、複数種類の光を組み合わせた光である場合、受光手段301は、例えば、各光を分光するためのカラーフィルタを配置したフォトディテクタとしてもよいし、カラーセンサを用いてもよい。受光手段301は、例えば、前記補正変調光をカラーフィルタにより定められた波長域(色)の光として受光し、これを前記色ごとの電気信号に変換する。
【0048】
復調手段302は、受光手段301において受光された、前記通信データに対応する前記補正変調光の波形情報から、前記通信データを復調する。具体的には、復調手段302は、受光手段301により変換された前記色ごとの電気信号から、元の通信データを復調する。復調手段302において、前記通信データを復調する方式は、例えば、生成手段201における、前記通信データを変調する方式に対応した方式である。復調手段302は、例えば、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ等である。
【0049】
本実施形態の照明通信システム1は、通信データを受信する受信手段30を含むことにより、有機EL光源10により出射された前記補正変調光から、通信データを受信することができる。本実施形態の照明通信システム1において、受信手段30は、必須の構成要素ではなく、受信手段30は、照明通信システム1に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0050】
本実施形態の照明通信システム1は、例えば、データの通信を行わない期間においては、有機EL光源10を照明装置としてのみ用いることもできる。そして、例えば、照明通信システム1がデータを送信する場合、送信すべき通信データが制御手段20に供給されることにより、制御手段20が、前記通信データに基づき、有機EL光源10からの出射光の出射を制御する。これにより、前記通信データに対応する補正変調光が、有機EL光源10から出射される。
【0051】
(照明通信方法)
図3に、本実施形態における照明通信方法のフローチャートを示す。本実施形態の照明通信方法は、例えば、つぎのように実施する。
図3に示すように、本実施形態の照明通信方法における制御工程は、S1ステップ(生成工程)、S2ステップ(演算工程)、S3ステップ(補正工程)、およびS4ステップ(出射工程)を含む。本実施形態の照明通信方法は、例えば、本実施形態の照明通信システム1を用いて実施することができる。本実施形態の照明通信方法は、例えば、本実施形態の照明通信システム1の記載を援用できる。
【0052】
生成工程S1では、通信データを変調し、前記通信データに対応する変調光の波形情報を生成する。前記通信データを変調する方式は、前述のように、例えば、パルス幅変調(PWM)方式、およびパルス位置変調(PPM)方式があげられる。パルス幅変調方式は、パルス信号を発生させる周期を一定にし、パルス幅と前記通信データ信号とを対応させることにより、前記通信データ信号を変調光の波形情報に変調する変調方式である。また、パルス位置変調方式は、パルス幅を一定にし、一定周期におけるパルス信号の時間的な位置と前記通信データ信号とを対応させることにより、前記通信データ信号を変調光の波形情報に変調する変調方式である。
【0053】
パルス位置変調方式は、例えば、4値パルス位置変調(4PPM)方式、および反転パルス位置変調(I−4PPM)方式があげられる。4PPM方式は、一定時間を1シンボル時間として定義し、それを4つのスロットに等分し、1シンボル時間につき1スロットにパルス信号を発生させる。そして、通信データの情報は、1シンボルの中で、どのスロットにパルス信号が存在するかという情報に変換される。パルス信号は、1スロット幅を有する1つのパルス信号でもよいし、1スロット中に複数のパルスを発生させてもよい。後者の場合、例えば、1スロット当たり、割り当てた2ビットの情報を送信することができる。4PPM変調方式は、通信データを変調することにより、必ず1スロット分だけ点灯させ、パルスの位置のみで信号を送信するため、誤り率が小さい。また、パルス信号の振幅が一定であり、且つ一定期間中に1回点灯するため、複数波長の光を組み合わせた変調光であっても、各色における輝度が一定となることから、色温度の補正を簡単に行うことができる。一方、I−4PPM方式は、4PPM方式における、パルスがある位置とパルスがない位置とを入れ替え、点灯時間を長くしたものである。4PPM方式は、無変調時と比べて、輝度が約1/4となるのに対し、I−4PPM方式は、無変調時と比べて、輝度を約3/4とすることができる。このため、I−4PPM方式は、パルス信号の振幅が等しい場合、より明るい輝度で通信を行うことができる。
【0054】
演算工程S2では、前記変調光の波形情報から、前記変調光の光情報を演算する。また、前記変調光の光情報と、評価基準となる照明光の光情報との差分を求める。前記変調光の光情報の演算は、例えば、予め、電流値に対する各光源の発光スペクトルから、所定の電流値において得られる光情報を算出しておき、前記対応関係を記憶しておくことにより、前記対応関係に基づき、前記変調光の波形情報から、前記変調光の光情報を求めることができる。
【0055】
補正工程S3では、前記差分に基づき、前記差分が補正された補正変調光の波形情報を生成する。補正工程S3における補正の例を、以下に、図面を用いて説明する。以下の説明において、1色の光について補正を行う例を示すが、本発明は、これには限定されず、複数種類の色の光について、それぞれ、同様に補正を行うことができる。
【0056】
補正工程S3における前記差分の補正の一例を、前記変調光がパルス幅変調方式による変調光である場合について、
図4に示す。
図4において、(A)は、パルス幅変調方式による前記変調光の波形を示し、(B)および(C)は、前記変調光の輝度が補正された、補正変調光の波形を示す。
図4(A)〜(C)において、横軸は時間を示し、縦軸はパルス信号の振幅を示す。
図4において、所定時間におけるパルス信号の積分値が、所定時間における前記変調光の輝度に対応する。
図4(A)に示すように、パルス幅変調方式により変調された前記変調光において、前記通信データ信号は、各パルス信号におけるパルス幅に対応している。また、前記変調光において、パルス信号の周期および振幅は一定である。補正工程S3において、例えば、パルス信号の振幅を変化させることで、前記変調光の輝度を変化させることができる。具体的には、
図4(B)に示すように、補正工程S3において、例えば、所定期間(補正の1周期)における前記変調光の輝度が、評価基準となる照明光の輝度と比較して不足している場合、所定期間におけるパルス信号の振幅を所定の値だけ大きくすることにより、前記変調光の輝度を大きくすることができる。また、補正工程S3において、例えば、所定期間における前記変調光の輝度が、評価基準となる照明光の輝度と比較して過剰である場合、所定期間におけるパルス信号の振幅を所定の値だけ小さくすることにより、前記変調光の輝度を小さくすることができる。なお、
図4(B)において、各パルス信号の振幅をそれぞれ同じ値だけ変化させているが、各パルス信号の振幅をそれぞれ異なった値だけ変化させてもよい。この場合、例えば、各パルス信号から得られる輝度が一定となるように、各パルス信号の振幅を変化させることができる。一方、
図4(C)に示すように、補正工程S3において、例えば、各パルス信号について、前記変調光の輝度と評価基準となる照明光の輝度とを比較し、前記変調光の輝度が不足している場合、前記各パルス信号の振幅を所定の値だけ大きくすることにより、前記変調光の輝度を大きくし、前記変調光の輝度が過剰である場合、前記各パルス信号の振幅を所定の値だけ小さくすることにより、前記変調光の輝度を小さくすることができる。
【0057】
このように、パルス幅変調方式による変調光を補正する場合、前記差分に基づき、変調光におけるパルス信号の振幅を変化させればよいため、例えば、補正の計算を簡単にすることができる。また、例えば、4PPM方式と比較して、各周期における発光期間(パルス幅)の割合が比較的大きいため、前記変調光の輝度を大きくする場合に、パルス信号の振幅により前記変調光の輝度を大きくしなくても済み、有機EL光源への負荷を抑えることができ、有機EL光源の長寿命化を図ることができる。
【0058】
つぎに、補正工程S3における前記差分の補正の別の一例を、前記変調光がパルス位置変調方式による変調光である場合について、
図5に示す。
図5において、(A)は、パルス位置変調(4PPM)方式による前記変調光の波形を示し、(B)は、前記変調光の輝度が補正された、補正変調光の波形を示す。
図5(A)および(B)において、横軸は時間を示し、縦軸はパルス信号の振幅を示す。
図5において、所定時間におけるパルス信号の積分値が、所定時間における前記変調光の輝度に対応する。
図5(A)に示すように、パルス位置変調方式により変調された前記変調光において、前記通信データ信号は、一定周期におけるパルス信号の時間的な位置に対応している。また、前記変調光において、パルス信号のパルス幅および振幅は一定である。補正工程S3において、例えば、パルス信号の振幅を変化させることで、前記変調光の輝度を変化させることができる。具体的には、
図5(B)に示すように、補正工程S3において、例えば、前記変調光の輝度が、評価基準となる照明光の輝度と比較して不足している場合、パルス信号の振幅を所定の値だけ大きくすることにより、前記変調光の輝度を大きくすることができる。また、補正工程S3において、例えば、前記変調光の輝度が、評価基準となる照明光の輝度と比較して過剰である場合、パルス信号の振幅を所定の値だけ小さくすることにより、前記変調光の輝度を小さくすることができる。
【0059】
このように、パルス位置変調方式による変調光を補正する場合、パルス信号の振幅およびパルス幅が一定であり、且つ、一定期間(1シンボル期間)中のパルス回数も一定であるため、補正の演算を簡単にすることができ、補正のデータ量も小さくすることができる。
【0060】
補正工程S3における前記差分の補正のさらなる別の一例を、前記変調光がパルス幅変調方式およびパルス位置変調方式による変調光である場合について、
図6に示す。
図6において、(A)は、パルス幅変調方式による前記変調光について、前記変調光の輝度が補正された、補正変調光の波形を示す。また、(B)は、パルス位置変調(4PPM)方式による前記変調光について、前記変調光の輝度が補正された、補正変調光の波形を示す。
図6において、横軸は時間を示し、縦軸はパルス信号の振幅を示す。
図6において、所定時間におけるパルス信号の積分値が、所定時間における前記変調光の輝度に対応する。
図6に示すように、補正工程S3において、例えば、前記通信データに対応する変調光を出射する期間(信号伝送期間)の前および後の少なくとも一方の期間(補正期間)に補正用の光を出射することにより、前記差分を補正することができる。具体的には、補正工程S3では、例えば、演算工程S2において演算された、前記変調光の輝度と評価基準となる照明光の輝度との差分を、前記補正期間に割り当てることにより、補正変調光の輝度、すなわち、所定時間におけるパルス信号の積分値が、前記評価基準となる照明光の値となるように補正する。ここで、補正に用いる信号の振幅は、例えば、前記通信データ信号の振幅と同じである。この場合、例えば、前記差分を、前記補正期間におけるパルス信号のパルス幅の大きさに対応させることにより、補正を行うことができる。前記補正に用いる信号は、前記補正期間中、複数回のパルス信号であってもよいし、一回の信号であってもよい。
【0061】
補正工程S3において、前記信号伝送期間の前および後の少なくとも一方の前記補正期間に補正用の光を出射する場合、前記信号伝送期間と前記補正期間との割合は、特に制限されず、例えば、前記信号伝送期間の割合が、0(通信を行わない場合)〜99%、0〜80%、0〜50%である。
【0062】
このように、前記通信データ信号を伝送する期間の前後に補正期間を含むことにより前記変調光を補正する場合、補正に用いる信号および前記通信データ信号の振幅を一定とすることができるため、有機EL光源の発光輝度を一定とすることができる。これにより、有機EL光源が瞬間的に著しい高輝度となることが避けられるため、有機EL光源の長寿命化を図ることができる。また、補正に用いる信号および前記通信データ信号の振幅を一定とすることができるため、信号を受信する側において、フォトダイオードのスライスレベルや感度の調整等が不要となる。また、前記通信データ信号を信号伝送期間に割り当て、補正用の信号を前記補正期間に割り当てることから、補正の情報を各通信データ信号に振り分ける必要がないため、補正のデータ量を小さくすることができ、補正の演算を簡単にすることができる。
【0063】
以上、補正工程S3における前記差分の補正について、例をあげて説明したが、補正工程S3において、例えば、前記各補正方法のうち、2つ以上の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0064】
つぎに、本実施形態の照明通信方法の一例を、有機EL光源が複数種類の色の光を組み合わせた光源であり、前記光情報が光の三刺激値である場合について、具体的に説明する。
【0065】
まず、予め、有機EL光源から出射される各光についての電流値に対する発光スペクトルから、所定の電流値における光の三刺激値(XYZ)、および、各光の前記光の三刺激値を加算して得られる、加法混色時の光の三刺激値を求める。そして、これらの電流値、各光の三刺激値、および加法混色時の光の三刺激値についての対応情報を、参照テーブル(LUT)に割り当てておく。例えば、RGB各色8ビットの参照テーブルを参照する場合では、各色256階調、約1677万通りの制御を行うことができる。なお、FRC(フレームレートコントロール)を用いて、色のデータ数(ビット数)を減らしてもよい。光の三刺激値(XYZ)は、下記式(1)により求めることができる。式(1)において、P(λ)は分光スペクトル、Q(λ)は発光スペクトル、x(λ)、y(λ)、z(λ)は等色関数である。
【数1】
【0066】
また、予め、前記有機EL光源を照明光として用いる場合の、評価基準となる光情報の値を取得しておく。例えば、前記有機EL光源が、5000Kの昼白色と定格光束を満たす光を出射する場合の、光の三刺激値、および、これに対応する電流値を求めておく。
【0067】
そして、生成工程S1において、通信データに対応する変調光を生成し、演算工程S2において、前記変調光について光の三刺激値を求め、この値と、予め取得しておいた、評価基準となる光の三刺激値との差分を求める。
【0068】
補正工程S3では、前記差分に基づき、前記参照テーブルを参照し、各光についての補正後の光の三刺激値を演算する。そして、前記補正後の光の三刺激値に基づき、各光について、補正変調光の波形情報を演算し、電流値を出力する。
【0069】
ここで、前記補正において、前述のように、前記変調光におけるパルス信号の振幅(発光強度)を変化させる場合は、パルス信号の振幅を変化させることにより補正を行い、前記変調光におけるパルス信号の振幅を一定とする場合は、発光時間を変化させることにより補正を行う。前記補正は、前記変調光の発光強度および発光時間の両方を変化させることにより行ってもよい。
【0070】
なお、上記光の三刺激値XYZを、正規化変換して、
x=X/(X+Y+Z) y=Y/(X+Y+Z) z=1−x−y
とし、輝度(光束)情報のYと合わせて、xyYの値を用いることによっても、同様に補正を行うことができる。この場合、xy色度図を用いることにより、照明光のxy色度座標(例えば、昼白色(0.3457,0.3585)や、昼光色(0.3127,0.3290))との関係を確認しやすくなる。
【0071】
電流値に対する各発光スペクトルから、色の三刺激値XYZと、それらを加算し得られる加法混色時の三刺激値を求めて記憶しておくことにより、複雑な演算処理を簡単な配列の参照処理で置き換えることができ、処理の効率化を図ることが可能となる。このように、制御手段20は、その都度演算を行う代わりに、配列から目的のデータを取り出すことで、計算の負担を軽減し、効率よく処理を行うことができる。
【0072】
また、前記補正変調光の波形情報を算出する方法として、前記変調光と照明光とにおける、各光源の輝度および色度座標の差分を基に、直接、前記差分に対応する各光源のパルス信号の振幅(発光強度)および発光時間を演算してもよい。
【0073】
前記演算は、以下のように行う。まず、各光源の電流値と、色度座標との関係式を取得しておく。つぎに前記変調光の色度座標および輝度を求め、前記変調光の色度座標および輝度と、照明光の色度座標および輝度との差分を求める。前記差分から、前記差分に対応する、各光源のパルス信号の振幅および/または発光時間を算出する。これを、前記変調光のパルス信号の振幅および/または発光時間に足し合わせる。そして、前記関係式に基づき、電流値を算出する。このようにして、補正変調光の波形情報を生成することができる。
【0074】
出射工程S4では、補正工程S3において前記差分が補正された補正変調光の波形情報に基づき、前記補正変調光を光源から出射させる。前記光源は、例えば、有機EL光源である。
【0075】
このように、本実施形態の照明通信方法によれば、前記制御工程が、S1ステップ(生成工程)、S2ステップ(演算工程)、S3ステップ(補正工程)、およびS4ステップ(出射工程)を含むことにより、照明光として必要な光情報の条件を満たした前記補正変調光を出射することができる。
【0076】
本実施形態の照明通信方法は、例えば、通信データを受信するS5ステップ(受信工程)を含んでもよく、前記受信工程S5は、例えば、前記補正変調光である前記光源からの出射光を受光する受光工程、および前記補正変調光の波形情報から前記通信データを復調する復調工程を含んでもよい。これにより、前記光源から出射された前記補正変調光に含まれる前記通信データを取得することができる。なお、本実施形態の照明通信方法において、受信工程S5は、必須の構成要素ではなく、受信工程S5は、本実施形態の照明通信方法に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0077】
(有機EL光源)
図7に、有機EL光源の一例として、基本的な発光単位ひとつあたりの回路図を示す。1発光単位には、2つのTFT(薄膜トランジスタ)と1つの保持容量(蓄積容量、キャパシタ)が設けられている。2つのTFTのうちの一方は、この発光単位を選択するための選択用TFTであり、他方は、有機ELの発光に必要な電流を流すための駆動用TFTである。
【0078】
図7において、アドレス線(選択線)に選択電圧を印加すると、選択用TFTがONとなり、点灯信号のデータに応じた電圧が、データ線(信号線)を通じて駆動用TFTのゲート電極に印加される。同時に、保持容量にも印加および充電される、すなわち、データが書き込まれる。これにより、選択信号がOFFとなっても、保持容量に書き込まれた電圧によって、駆動用TFTのゲート電圧が維持される。この保持容量の電圧に対応した有機ELの設定電流が、電源線から有機EL素子へ供給されることにより、有機EL素子が発光する。この状態は、次の書き込みが行われるまで保持することができるため、有機EL素子は、その間、一定の輝度を保つことができる。
【0079】
このように、有機ELの発光強度を駆動用TFTにより制御する場合、TFTの閾値電圧や移動度等の特性がばらつくことにより、発光輝度のばらつきが生じるため、その補償(補正)が必要となる。前記補償は、例えば、補正用のTFTやキャパシタを追加する、カレントミラー回路を形成する、電流または電圧のプログラムを行う等、公知の方法により行うことができる。
【0080】
図8に、上記ばらつきの補償を行う回路構成として、2個のTFTと1個の保持容量からなる構成により、有機EL素子を駆動する一例を示す。この方法は、電源電圧をパルス化し、データ線に信号電圧と基準電圧とを印加することにより補償を行うことから、例えば、有機EL光源の発光パルス信号によりデータを伝送する可視光通信に適した方法である。
図7および8において、Vadressは、アドレス線電位で、選択用TFTのゲート線電位(画素選択信号)を示す。Vccは、有機ELを発光させるための電源線電位(電源供給電圧)で、電圧を変化させることにより、駆動用TFTのしきい値電圧の補正も行う。Vcathは有機ELの陰極電圧、Vrefはしきい値補正に使用する基準電圧、Vsigは表示させたい信号のデータ電圧、Vthは駆動用TFTのしきい値電圧を表す。しきい値の補正を行う前段階において、VccをLow電位とすることで、駆動用TFTのソース電位および有機ELのアノードがVccと同電位となり、同時に、駆動用TFTのゲートおよび保持容量の電位も低下し、発光が停止する。データ線(信号線)にVrefを印加した状態で選択信号Vadress(アドレス線)をONとし、駆動用TFTのゲートおよび保持容量の電位にVrefを書き込む。この時、駆動TFTのゲート−ソース間電圧Vgsは、Vgs=Vref−Vcc>Vthとなっている。しきい値の補正工程では、電源供給線をLow電位からVccに上げることで駆動用TFTのドレイン−ソース間に電流が流れ、駆動用TFTのソース電位が上昇する。駆動TFTのゲート−ソース間電圧(Vgs)がしきい値(Vth)となる電圧(Vref−Vcc=Vth)まで、駆動用TFTのソース電位および有機ELのアノードが上昇し、しきい値が補正される。
【0081】
つぎに、データ信号の書き込みと移動度の補正を行う。この工程では、駆動用TFTのゲートおよび保持容量の電位が所望のデータ電圧になり、同時に、駆動TFTの能力に応じて移動度の補正が行われる。具体的には、データ線(信号線)の電圧がVsigの期間に、選択信号Vadress(アドレス線)により、選択用TFTのゲート電圧をVoffからVonに上げ、駆動用TFTのゲートをデータ線に接続する。駆動用TFTのゲート電圧がVsigとなり、このとき、有機EL素子のアノードの電圧は、有機EL素子の閾値電圧Vthelよりも小さく、有機EL素子は非点灯状態である。そのため、駆動用TFTのドレイン−ソース間の電流は、有機EL素子の容量成分(平行平板コンデンサ)に流れ、素子容量が充電されるので、駆動用TFTのソース電圧VsがΔVだけ上昇し、その後、駆動用TFTのゲート−ソース間電圧VgsがVsig+Vth−ΔVとなる。このようにして、書き込みと同時に移動度の補正が行われる。ここで、駆動用TFTの移動度が大きいほど、ΔVも大きくなるため、発光前に電位差VgsをΔVだけ小さくすることにより、有機EL素子ごとに配置された駆動用TFTの移動度のばらつきを補正することができる。
【0082】
つぎに、選択信号Vadress(アドレス線)のゲート電圧をVonからVoffに下げる。その結果、駆動用TFTのゲートがフロート状態となり、駆動用TFTのドレイン−ソース間に電流が流れ、ソース電圧Vsが上昇し、有機EL素子がしきい値と移動度が補償された状態で発光することができる。これにより、出射工程では、しきい値と移動度が補償された状態で有機ELが発光する。
【0083】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、データ通信を行うと同時に、例えば、照明光として必要な明るさ等の条件を満たした光を出射可能な新たな照明通信システムを提供することができる。
【0085】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0086】
(付記1)
可視光域の光を出射する光源、および、
前記光源からの出射光の出射を制御する制御手段を含み、
前記光源が、有機EL光源またはLED光源であり、
前記制御手段は、
通信データに対応する変調光の波形情報を生成する生成手段、
前記変調光の波形情報から前記変調光の光情報を演算し、評価基準となる照明光の光情報との差分を求める演算手段、および、
前記差分が補正された補正変調光の波形情報を生成する補正手段を含み、
前記補正変調光の波形情報に基づき、前記補正変調光を光源から出射させることを特徴とする照明通信システム。
【0087】
(付記2)
前記演算手段が、所定期間における前記変調光の光情報と評価基準となる照明光の光情報との差分を求め、
前記補正手段が、前記所定期間ごとに補正変調光の波形情報を生成し、
前記所定期間が、人間の目が時間分解可能な間隔よりも短い期間である、付記1記載の照明通信システム。
【0088】
(付記3)
前記補正手段が、通信データに対応する各パルス信号から得られる輝度が一定となるように、前記パルス信号の振幅を変化させる、付記2記載の照明通信システム。
【0089】
(付記4)
可視光域の光を出射する光源からの出射光の出射を制御する制御工程を含み、
前記光源が、有機EL光源またはLED光源であり、
前記制御工程は、
通信データに対応する変調光の波形情報を生成する生成工程、
前記変調光の波形情報から前記変調光の光情報を演算し、評価基準となる照明光の光情報との差分を求める演算工程、
前記差分が補正された補正変調光の波形情報を生成する補正工程、および、
前記補正変調光を、光源から出射させる出射工程を含むことを特徴とする照明通信方法。
【0090】
(付記5)
前記変調光が、複数波長の光を変調した変調光である、付記4記載の照明通信方法。
【0091】
(付記6)
前記照明光が、白色光である、付記4または5記載の照明通信方法。
【0092】
(付記7)
前記光情報が、色温度、輝度、複数波長の光強度、および色の三刺激値からなる群から選択された少なくとも一つである、付記4から6のいずれかに記載の照明通信方法。
【0093】
(付記8)
前記変調光における変調方式が、パルス幅変調方式またはパルス位置変調方式であり、
前記補正工程が、前記変調光の波形情報について、パルス幅信号の振幅を変化させることにより、前記差分を補正する、付記4から7のいずれかに記載の照明通信方法。
【0094】
(付記9)
前記演算工程において、所定期間における前記変調光の光情報と評価基準となる照明光の光情報との差分を求め、
前記補正工程において、前記所定期間ごとに補正変調光の波形情報を生成し、
前記所定期間が、人間の目が時間分解可能な間隔よりも短い期間である、付記4から8のいずれかに記載の照明通信方法。
【0095】
(付記10)
前記補正工程において、通信データに対応する各パルス信号から得られる輝度が一定となるように、前記パルス信号の振幅を変化させる、付記9記載の照明通信方法。
【0096】
(付記11)
前記演算工程において、各パルス信号における前記変調光の光情報と評価基準となる照明光の光情報との差分を求め、
前記補正工程において、パルス信号ごとに補正変調光の波形情報を生成する、付記4から8のいずれかに記載の照明通信方法。
【0097】
(付記12)
前記補正工程において、前記変調光の波形情報について、前記通信データに対応する変調光を出射する期間の前および後の少なくとも一方の期間に補正用の光を出射することにより、前記差分を補正する、付記4から11のいずれかに記載の照明通信方法。
【0098】
(付記13)
さらに、前記通信データを受信する受信工程を含み、
前記受信工程は、
前記補正変調光である前記光源からの出射光を受光する受光工程、および
前記補正変調光の波形情報から前記通信データを復調する復調手段
を含む、付記4から12のいずれかに記載の照明通信方法。