特許第6863798号(P6863798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863798
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】伸縮管継手及び焼却灰処理設備
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20210412BHJP
   F16L 27/10 20060101ALI20210412BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   F16L27/12 H
   F16L27/10 B
   F23J1/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-71044(P2017-71044)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173117(P2018-173117A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常森 奎多
(72)【発明者】
【氏名】菊田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】玉置 和也
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0012034(KR,A)
【文献】 独国実用新案第202013000867(DE,U1)
【文献】 特開2005−029342(JP,A)
【文献】 特開昭60−060394(JP,A)
【文献】 実開昭56−071582(JP,U)
【文献】 実開昭64−015029(JP,U)
【文献】 特開2006−266756(JP,A)
【文献】 実開昭62−143018(JP,U)
【文献】 実開平04−082537(JP,U)
【文献】 特開2000−274236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/12
F16L 27/10
F23J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状及び/又は粒状の搬送物が重力で搬送される上流側配管と下流側配管の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手であって、
下流側端部が前記下流側配管と結合される外筒と、
前記外筒に挿入され、前記外筒よりも軸方向の寸法が小さく、上流側端部が前記上流側配管と結合される内筒と、
前記外筒の上流側端部と結合された外側取付部と、前記内筒の前記上流側端部と結合された内側取付部と、前記外側取付部と前記内側取付部との間に設けられて前記内側取付部に対する前記外側取付部の変位を吸収するように伸縮可能な伸縮部とを一体的に有し、前記外筒の前記上流側端部と前記内筒の前記上流側端部との間隙を塞ぐようにそれらの間に渡された塞部材とを備え、
前記下流側配管が静止している状態において前記外筒の上流側端部の軸方向の位置と前記内筒の上流側端部の前記軸方向の位置とが実質的に同じである、
伸縮管継手。
【請求項2】
前記外筒が、前記上流側端部に設けられた上フランジと、前記下流側端部に設けられ且つ前記上フランジよりも内径の小さい下フランジと、前記上フランジと前記下フランジとを繋ぐテーパ形状の胴部とを有する、
請求項1記載の伸縮管継手。
【請求項3】
前記外筒の前記上流側端部から前記軸方向の中央部までの間に、前記外筒と前記内筒との間に流体を供給する供給管及び/又は前記外筒と前記内筒との間から流体を排出する排出管が接続された、
請求項1又は2に記載の伸縮管継手。
【請求項4】
前記外筒の前記上流側端部から前記軸方向の中央部までの間に、内部監視手段が設けられた、
請求項1〜のいずれか一項に記載の伸縮管継手。
【請求項5】
前記内筒又は前記外筒に、前記外筒と前記内筒との間を塞いでそれらの間への前記搬送物の侵入を防ぐ侵入防止部材が設けられた、
請求項1〜のいずれか一項に記載の伸縮管継手。
【請求項6】
焼却灰を処理する振動機器と、
前記振動機器へ前記焼却灰を送る配管と、
前記配管の出口と前記振動機器の入口との間に設けられた、請求項1〜のいずれか一項に記載の伸縮管継手とを備える、
焼却灰処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状や粒状の搬送物を搬送する配管系統において、搬送物が重力で搬送される箇所に設けられた接続部において、接続される配管同士の間に生じる変位を吸収する伸縮管継手、及びこれを用いた焼却灰処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図1には、例えば、石炭焚きボイラやゴミ焼却炉などで発生した焼却灰を粉砕処理する焼却灰処理設備7の概略構成が示されている。図1に示す焼却灰処理設備7では、焼却灰を細かく破砕する破砕機75と、破砕機75へ焼却灰を搬送するコンベヤ74と、破砕機75で破砕された焼却灰を収容するホッパ76とを備えている。
【0003】
上記の焼却灰処理設備7において、破砕機75として振動ミルが用いられている。一般に、振動ミルでは、ドラム(粉砕筒)を高速に振動させることでドラム内の粉砕媒体及び被粉砕物を運動させることにより、被粉砕物を微粉砕する。破砕機75は、その特性上大きく振動することから、破砕機75の入口配管78と、コンベヤ74の出口と接続された配管77との接続部には、接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手10が設けられている。特許文献1,2では、この種の伸縮管継手が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の伸縮管継手は、ルーズフランジに挿入されたラップジョイントと、ラップジョイントに挿入された円筒部と、上部が円筒部と揺動可能に接続された内筒と、内筒の下部が挿入された外筒と、ラップジョイントと外筒とを繋ぎ且つ内筒の外周を覆うベローズとから成る。
【0005】
特許文献2に記載の伸縮管継手は、内周に搬送路が形成された内筒(シュート)と、内筒の外周を覆う筒形のベローズと、ベローズの両端が固定されたビードリングとを備えている。一方のビードリングは内筒のフランジ部とともに上流側の配管と接続され、他方のビードリングは下流側の配管と接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−117607号公報
【特許文献2】特開2005−219864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2の伸縮管継手では、内筒がベローズと搬送される粉体や流体との接触を防いでいる。しかしながら、破砕機への焼却灰の供給が過多となると、破砕機へ流出できなかった焼却灰が伸縮管継手内に留まり、内筒とベローズとの間に焼却灰が侵入することがある。このようにしてベローズと高温の焼却灰とが接触すると、ゴム製のベローズは熱で劣化する。また、ベローズと焼却灰とが接触した状態で伸縮管継手に振動が加わると、焼却灰との摩擦によってベローズに摩耗や亀裂が生じる。更に、破砕機では、運転中に伸縮管継手に係る振動は規則的な縦揺れであるが、運転を停止した際に共振が起こりベローズに引張力が作用する。その結果、ベローズが数か月で破損してしまい、高い頻度でベローズの交換が行われている。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、粉状や粒状の搬送物を搬送する配管系統に用いられ、配管同士の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手を、長寿命化する技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る伸縮管継手は、
粉状及び/又は粒状の搬送物が重力で搬送される上流側配管と下流側配管の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手であって、
下流側端部が前記下流側配管と結合される外筒と、
前記外筒に挿入され、前記外筒よりも軸方向の寸法が小さく、上流側端部が前記上流側配管と結合される内筒と、
前記外筒の上流側端部と結合された外側取付部と、前記内筒の前記上流側端部と結合された内側取付部と、前記外側取付部と前記内側取付部との間に設けられて前記内側取付部に対する前記外側取付部の変位を吸収するように伸縮可能な伸縮部とを一体的に有し、前記外筒の前記上流側端部と前記内筒の前記上流側端部との間隙を塞ぐようにそれらの間に渡された閉塞部材とを備え、
前記下流側配管が振動を停止している状態において前記外筒の上流側端部の軸方向の位置と前記内筒の上流側端部の前記軸方向の位置とが実質的に同じであることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の別の一態様に係る焼却灰処理設備は、焼却灰を処理する振動機器と、
前記振動機器へ前記焼却灰を送る配管と、
前記配管の出口と前記振動機器の入口との間に設けられた前記伸縮管継手とを備えることを特徴としている。
【0012】
上記伸縮管継手及び焼却灰処理設備においては、伸縮管継手の閉塞部材と、伸縮管継手の下流側端部である外筒の下流側端部との、軸方向の距離をより大きく離すことができる。これにより、下流側配管から伸縮管継手内へ溢れ出た搬送物と閉塞部材との接触を回避し、また、閉塞部材が搬送物から受ける物理的、化学的、及び熱的影響を抑えることができる。その結果、閉塞部材の劣化が抑えられ、伸縮管継手を長寿命化することができる。
【0013】
また、上記伸縮管継手において、前記外筒が、上流側端部に設けられた上フランジと、下流側端部に設けられ且つ前記上フランジよりも内径の小さい下フランジと、前記上フランジと前記下フランジとを繋ぐテーパ形状の胴部とを有していてよい。
【0014】
これにより、内筒に対する外筒の軸方向と垂直な方向への変位可能範囲を確保しつつ、伸縮管継手へ溢れ出た搬送物を外筒から下流側配管へ還流させることができる。
【0015】
また、上記伸縮管継手において、前記外筒の上流側端部から前記軸方向の中央部までの間に、前記外筒と前記内筒との間に流体を供給する供給管及び/又は前記外筒と前記内筒との間から流体を排出する排出管が接続されていてよい。
【0016】
これにより、外筒と内筒との間の空隙に供給管を通じて流体を供給したり、外筒と内筒との間の空隙から排出管を通じて流体を排出することができる。
【0017】
また、上記伸縮管継手において、前記外筒の上流側端部から前記軸方向の中央部までの間に、内部監視手段が設けられていてよい。
【0018】
これにより、従来はブラックボックスであった外筒と内筒との間を、伸縮管継手を分解せずとも、内部監視手段を利用して観察・監視することができる。
【0019】
また、上記伸縮管継手において、前記内筒又は前記外筒に、前記外筒と前記内筒との間を塞いでそれらの間への前記搬送物の侵入を防ぐ侵入防止部材が設けられていてよい。
【0020】
これにより、前記外筒と前記内筒との間への搬送物の侵入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粉状や粒状の搬送物を搬送する配管系統に用いられ、配管同士の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手を、長寿命化する技術を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、焼却灰処理設備の概略構成を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
図3図3は、閉塞部材を軸方向から見た図である。
図4図4は、変形例1に係る閉塞部材を採用した伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
図5図5は、変形例2に係る閉塞部材を軸方向から見た図である。
図6図6は、内筒に対する外筒の高さ位置の異なる伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
図7図7は、侵入防止部材が設けられた伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手10が採用された焼却灰処理設備7の概略構成を示す図である。焼却灰処理設備7は、例えば、石炭焚きボイラやゴミ焼却炉などで生じた焼却灰を細かく破砕する処理を行うものである。
【0024】
図1に示す焼却灰処理設備7は、破砕機75と、焼却灰を破砕機75へ搬送するコンベヤ74と、破砕機75で破砕された焼却灰が投入されるホッパ76とを備えている。
【0025】
コンベヤ74と破砕機75との間は、粒状又は礫状の焼却灰を搬送する配管系統で接続されている。この配管系統には、破砕機75の入口と結合された振動管78と、振動管78の上流側に設けられた固定管77と、固定管77と振動管78とを接続する伸縮管継手10とが含まれている。なお、この明細書及び特許請求の範囲において「上流」と「下流」は、配管系統で搬送される搬送物(焼却灰)の流動方向の上流と下流とにそれぞれ対応している。固定管77は伸縮管継手10から見て「上流側配管」であり、振動管78は伸縮管継手10から見て「下流側配管」である。
【0026】
固定管77は、破砕機75の上流側機器(例えば、コンベヤ74又は図示されない他の石炭処理に用いられる機器)が設置された構造物(図示せず)に対し固定されている。一方、振動管78は、破砕機75のドラムの振動に伴って振動する。そのため、固定管77と振動管78との接続部には、振動管78の振動に起因する変位が生じる。伸縮管継手10は、固定管77と振動管78との接続部に生じる変位を吸収する。なお、固定管77と振動管78とが共に可動の場合にも本発明に係る伸縮管継手10を適用し得る。
【0027】
以下、伸縮管継手10の詳細な構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手10を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。なお、振動管78が静止している状態で、伸縮管継手10は回転体であり、この回転体の回転の軸の延伸方向と平行な方向を伸縮管継手10の「軸方向X」と称し、転体の回転の軸を伸縮管継手10の「軸心」と称する。伸縮管継手10は、軸方向Xと搬送物の流動方向とが平行となるように配管系統に配置されている。
【0028】
図2に示す伸縮管継手10は、外筒21と、外筒21に内挿された内筒22と、外筒21と内筒22との間を塞ぐ閉塞部材24とから構成されている。内筒22の内部が、伸縮管継手10における搬送物の搬送路20となる。
【0029】
外筒21は、軸方向Xに延びる金属製の筒体であって、上流側端部に設けられた上フランジ21aと、下流側端部に設けられた下フランジ21bと、上フランジ21aと下フランジ21bとを繋ぐ胴部21cとからなる。
【0030】
外筒21の下フランジ21bは、振動管78の上流側端部に設けられた入口フランジ78aとボルト等で結合される。従って、外筒21は振動管78と一体的に変位する。
【0031】
上フランジ21aの内径は下フランジ21bの内径よりも大きい。胴部21cは、このように内径の異なる上フランジ21aと下フランジ21bとを滑らかに繋ぐ、下窄まりのテーパ形状を呈している。このような外筒21では、内筒22に対する外筒21の軸方向Xと垂直な方向への変位可能範囲を確保しつつ、外筒21から振動管78へ搬送物を速やかに移動又は搬送させることができる。
【0032】
内筒22は、軸方向Xに延びる金属製の筒体であって、上流側端部に設けられた上フランジ22aと、胴部22bとからなる。内筒22の上フランジ22aは、固定管77の下流側端部に設けられた出口フランジ77aとボルト等で結合される。
【0033】
内筒22の胴部22bの下流側端部の軸方向Xの位置は、外筒21の下フランジ21bの軸方向Xの位置より若干上流側にある。内筒22の胴部22bの外径は、外筒21の下フランジ21bの内径よりも小さい。従って、外筒21の内周と、外筒21に概ね同心状に内挿された内筒22の外周との間には半径方向の間隙が存在する。この間隙の大きさは、内筒22と変位時の外筒21との干渉を避けるため、内筒22の下流側端部において、内筒22に対する外筒21の水平方向の最大変位量よりも大きいことが望ましい。この間隙は空隙であってよいが、図7に示すように、この間隙に、ゴムなどの弾性変形可能な及び/又は変位追従性のある素材で成る侵入防止部材25が設けられてもよい。侵入防止部材25は、内筒22の下流側端部又はその近傍に設けられていてもよいし、外筒21に設けられていてもよい。或いは、侵入防止部材25は、内筒22の下流側端部又はその近傍と外筒21の内周との間に架け渡されていてもよい。図7に示す例では、侵入防止部材25は、平面視において円周方向へ連続又は不連続な環状を呈し、その内周縁が内筒21の下流側端部に固定されている。
【0034】
図3は、閉塞部材24を軸方向Xから見た図である。図2及び図3に示すように、閉塞部材24は平面視において中空の円盤形状を呈している。閉塞部材24の内径は、内筒22の上フランジ22aの内径と実質的に同じである。また、閉塞部材24の外径は、外筒21の上フランジ21aの外径と実質的に同じである。但し、閉塞部材24の外径は、閉塞部材24の外縁を、外筒21の上フランジ21aと固定リング23との間に挟み込むことができる大きさであれば、筒21の上フランジ21aの外径より小さくても又は大きくてもよい。
【0035】
閉塞部材24は、外筒21の上流側端部に設けられた上フランジ21aと内筒22の上流側端部に設けられた上フランジ22aとの間隙を塞ぐように、上フランジ21aと上フランジ22aの間に渡されている。上記構成の伸縮管継手10において、振動管78が静止している状態で、内筒22の上フランジ22aの軸方向Xの位置と、外筒21の上フランジ21aの軸方向Xの位置とは、概ね同じである。
【0036】
閉塞部材24は、外周側から順に、外側取付部241、伸縮部243、及び内側取付部242が一体的に形成されている。
【0037】
外側取付部241は、外筒21の上フランジ21aと固定リング23との間に、ガスケット33,34を介して挟み込まれており、外筒21の上フランジ21aと結合されている。上フランジ21a、ガスケット33,34、閉塞部材24の外側取付部241、及び固定リング23は、図示されないボルト等の締結具によって締結されている。なお、閉塞部材24がゴムなどの上フランジ21aと固定リング23との間に挟まれて圧縮変形可能な素材で形成されている場合には、ガスケット33,34は省略されてもよい。
【0038】
内側取付部242は、内筒22の上フランジ22aと固定管77の出口フランジ77aとの間に、ガスケット31,32を介して挟み込まれており、内筒22の上フランジ22aと結合されている。上フランジ22a、ガスケット31,32、閉塞部材24の内側取付部242、及び出口フランジ77aは、図示されないボルト等の締結具によって締結されている。なお、閉塞部材24がゴムなどの上フランジ22aと出口フランジ77aとの間に挟まれて圧縮変形可能な素材で形成されている場合には、ガスケット31,32は省略されてもよい。
【0039】
伸縮部243は、内側取付部242に対する外側取付部241の軸方向X及び半径方向の変位を吸収するように伸縮する。図2に示す伸縮部243は、ゴム製、樹脂製、又は布製であって、半径方向に蛇腹が形成されたものである。本実施形態のように搬送物が高温である場合には、伸縮部243には耐熱性を有する材料が用いられる。
【0040】
但し、伸縮部243の形状は、蛇腹状に限定されない。例えば、図4に示すように、閉塞部材24(24A)の伸縮部243の面材が伸縮性を有するゴム製や樹脂製であれば、伸縮部243が平面状であってもよい。また、例えば、図5に示すように、閉塞部材24(24B)の伸縮部243が、ゴム製、樹脂製、又は布製から成る面材に、螺旋状の芯材29が取り付けられたものであってもよい。この場合、伸縮部243の面材は伸縮代を賄うために芯材29同士の間で半径方向に撓んでいてもよい。なお、芯材29は、螺旋状に代えて網目状などの態様で面材に取り付けられていてもよい。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態に係る焼却灰処理設備7は、焼却灰を処理する振動機器である破砕機75と、破砕機75へ焼却灰を送る配管(固定管77)と、この配管の出口と破砕機75の入口(振動管78)との間に設けられた伸縮管継手10とを備えている。そして、本実施形態の伸縮管継手10は、上流側配管である固定管77と下流側配管である振動管78の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手10であって、下流側端部が振動管78と結合される外筒21と、外筒21に挿入され、上流側端部が固定管778と結合される内筒22と、外筒21の上流側端部と内筒22の上流側端部との間隙を塞ぐようにそれらの間に渡された、伸縮性を有する閉塞部材24とを備えている。そして、固定管77及び振動管78が静止している状態で、外筒21の上流側端部の軸方向Xの位置と内筒22の上流側端部の軸方向Xの位置とが実質的に同じであることを特徴としている。但し、上記の固定管77と振動管78の接続部では、粉状及び/又は粒状の搬送物が重力で搬送される。
【0042】
上記構成の伸縮管継手10では、閉塞部材24は伸縮管継手10の軸方向Xに対し直交する面内にある。しかも、閉塞部材24は、伸縮管継手10において、その下流側端部を形成している外筒21の下フランジ21bから軸方向Xへ最も離れた位置にある。搬送物が伸縮管継手10に満杯になったときに初めて閉塞部材24と搬送物が接触する。よって、閉塞部材24と搬送物との接触や、それにより生じる摩擦を極力避けることができる。
【0043】
このように、閉塞部材24と、伸縮管継手10の下流側端部との軸方向Xの距離をより大きく離すことで、振動管78から伸縮管継手10内へ溢れ出た搬送物と閉塞部材24との接触を回避し、また、閉塞部材24が搬送物から受ける物理的、化学的及び熱的影響を抑えることができる。その結果、閉塞部材24の物理的、化学的及び熱的な劣化を抑えることができる。これにより、内筒の外側にベローズが設けられた従来の伸縮管継手と比較して、伸縮管継手10を長寿命化することができる。
【0044】
なお、伸縮管継手10の軸方向Xの寸法を抑える観点から、振動管78が静止している状態で、伸縮管継手10の内筒22の上フランジ22aの軸方向Xの位置と外筒21の上フランジ21aの軸方向Xの位置とは、概ね同じであることが望ましい。但し、本発明は、内筒22の上フランジ22aの軸方向Xの位置と外筒21の上フランジ21aの軸方向Xの位置とが厳密に同一であることには限定されない。即ち、図6に示すように、外筒21の上流側端部の軸方向Xの位置と内筒22の上流側端部の軸方向Xの位置との差が、閉塞部材24の母線Lが軸方向Xからθ°傾き、θ°が所定の範囲内にあれば、閉塞部材24の劣化を抑えることができる。なお、閉塞部材24の母線Lは、閉塞部材24の一方の主面(図6では下面)において、内側取付部242の外周縁と外側取付部241の内周部とを結ぶ直線で規定できる。
【0045】
閉塞部材24の母線Lの軸方向Xからの傾きθ°の範囲は、伸縮管継手10が設置される状況に応じて決定することができる。例えば、図6に示すように、搬送物が伸縮管継手10の軸方向Xの全体寸法H0に対して、H0の下流側端部を規定する下流側端面から3/5H0程度まで溜まる傾向がある場合には、振動管78が静止している状態で、閉塞部材24の軸方向Xの寸法Hが全体寸法H0の1/5程度になるようにしてよい。なお、伸縮管継手10の軸方向Xの全体寸法H0は、外筒21の下流側端部から閉塞部材24の上流側端部(内側取付部242)までの軸方向Xの寸法としてよい。また、閉塞部材24の軸方向Xの寸法Hは、閉塞部材24の下流側端部(外側取付部241)から上流側端部(内側取付部242)までの軸方向Xの寸法としてよい。
【0046】
また、前述の通り、閉塞部材24と伸縮管継手10の下流側端部との距離が軸方向Xに離れていることから、伸縮管継手10の内筒22と外筒21の間であって閉塞部材24の近傍では、搬送物が存在しない空隙が維持される。そこで、本実施形態に係る伸縮管継手10では、この空隙を有効に利用している。
【0047】
図2に示すように、伸縮管継手10において、外筒21の上流側端部から軸方向Xの中央部までの間に、管28が接続されている。この管28は、外筒21と内筒22との間に流体を供給する供給管及び/又は外筒21と内筒22との間から流体を排出する排出管として機能することができる。管28は、外筒21の胴部21cにおいて、上フランジ21aに近接した位置と接続されることが望ましい。
【0048】
この管28を利用して、内筒22と外筒21の間にエアを供給することで、伸縮管継手10の内部を加圧して、伸縮管継手10の詰まりを解消することができる。また、管28を利用して、内筒22と外筒21の間に粉体や液体状の化学物質(薬剤など)を供給して、搬送物を改質したり搬送路20の環境を変化させたりすることもできる。更に、管28を利用して、内筒22と外筒21の間且つ閉塞部材24の近傍において、空気の導入や排出を行って、閉塞部材24の雰囲気が当該閉塞部材24に与える物理的、化学的及び熱的影響を抑えることもできる。
【0049】
また、伸縮管継手10において、外筒21の上流側端部から軸方向Xの中央部までの間に、内部監視手段の一つである覗き窓27が設けられている。覗き窓27には、搬送物や粉塵等の付着を防止する機能(例えば、帯電防止機能)を備えたガラスが嵌め込まれている。覗き窓27は、外筒21の胴部21cにおいて、上フランジ21aに近接した位置に設けられることが望ましい。
【0050】
この覗き窓27を利用して、従来はブラックボックスであった伸縮管継手10の内部を、伸縮管継手10の外部から観察することができる。例えば、伸縮管継手10を分解せずとも、覗き窓27を通じて閉塞部材24の摩耗の程度を確認することが可能である。なお、内部監視手段は、外筒21と内筒22の間の状態を観察・監視できるものであれば、覗き窓27に限定されない。例えば、覗き窓27に代えて、外筒21と内筒22の間を撮像するカメラや温度検出器などの監視手段が外筒21の上流側端部から軸方向Xの中央部までの間に設けられてもよい。
【0051】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る伸縮管継手は、上記実施形態に限定されず、粉状や粒状の搬送物を搬送する配管系統において、搬送物が重力で搬送される箇所に設けられた接続部において、接続される配管同士の間に生じる変位を吸収する伸縮管継手に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
7 :焼却灰処理設備
10 :伸縮管継手
20 :搬送路
21 :外筒
21a :上フランジ
21b :下フランジ
21c :胴部
22 :内筒
22a :上フランジ
22b :胴部
23 :固定リング
24 :閉塞部材
241 :外側取付部
242 :内側取付部
243 :伸縮部
27 :覗き窓
28 :管(供給管及び/又は排出管)
29 :芯材
25 :侵入防止部材
31〜34 :ガスケット
74 :コンベヤ
75 :破砕機
76 :ホッパ
77 :固定管(上流側配管)
77a :出口フランジ
78 :振動管(下流側配管)
78a :入口フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7