(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A〜B」はとくに断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0012】
[環状オレフィン系樹脂組成物]
まず、本発明に係る実施形態の環状オレフィン系樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)と、上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内に微分散した無機微粒子(B)と、を含む。そして、上記極性基がカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種を含み、上記極性基を有するモノマー由来の構成単位は上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の高分子鎖の主鎖内部または側鎖に位置している。
ここで、無機微粒子(B)が極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内に微分散しているとは、例えば、無機微粒子(B)を含む相の平均分散径が500nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である状態をいう。無機微粒子(B)を含む相の平均分散径は、例えば、電子顕微鏡により測定することができる。
【0013】
マトリクスである極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)が高分子鎖の主鎖内部または側鎖に上記の極性基を有することにより、上記の極性基と無機微粒子(B)との相互作用により、マトリクス内での無機微粒子(B)の分散性を良好にすることができる。これにより、得られる光学部品において透明性および高屈折率を実現することが可能となる。
すなわち、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物によれば、透明性および高屈折率を有する光学部品を実現することができる。
【0014】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物中の無機微粒子(B)の含有量は、当該環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、得られる光学部品の屈折率をより一層向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、得られる光学部品の透明性や機械的特性、無機微粒子(B)の分散性をより一層向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0015】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物中の極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)の合計含有量は、当該環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0016】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物において、当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて膜厚が100μm以上300μm以下のフィルムを作製したとき、上記フィルムの波長589nmにおける屈折率(nD)が好ましくは1.545以上であり、より好ましくは1.546以上であり、さらに好ましくは1.560以上であり、特に好ましくは1.580以上である。屈折率(nD)が上記範囲内であると、得られる光学部品の光学特性を良好に保ちつつ、厚みをより薄くすることができる。
【0017】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0018】
(極性基含有環状オレフィン系共重合体(A))
本実施形態に係る極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)は、極性基を有するモノマー由来の構成単位と環状オレフィン由来の構成単位とを必須構成単位とする共重合体であり、上記極性基がカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種を含み、上記極性基を有するモノマー由来の構成単位は上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の高分子鎖の主鎖内部または側鎖に位置している。
本実施形態に係る極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)を構成する環状オレフィン化合物は特に限定はされないが、例えば、国際公開第2006/118261号の段落0037〜0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
【0019】
本実施形態に係る極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度は、得られる光学部品の透明性および屈折率を良好に保ちつつ、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは110℃〜200℃であり、より好ましくは115℃〜190℃、さらに好ましくは120℃〜180℃である。
【0020】
本実施形態に係る極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、例えば0.05〜5.0dl/gであり、好ましくは0.2〜4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.3〜2.0dl/g、特に好ましくは0.4〜2.0dl/gである。
極限粘度[η]が上記下限値以上であると、得られる成形体の機械的強度を向上させることができる。また、極限粘度[η]が上記上限値以下であると、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物の成形性を向上させることができる。
【0021】
本実施形態に係る極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)において、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、極性基を有するモノマー由来の構成単位の含有量が、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、得られる光学部品の屈折率や耐湿性、耐熱性をより一層向上させる観点から、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0022】
本実施形態に係る極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)は、極性基を有するモノマーと環状オレフィンとのランダム共重合体(A1)および環状オレフィン系重合体に極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
ここで、「グラフト」とは、主鎖である幹ポリマーに、極性基を有するモノマーを導入することをいう。「グラフト重合させた」とは、主鎖である幹ポリマーに、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することをいう。
【0023】
<ランダム共重合体(A1)>
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン由来の構成単位(a1)、下記式[I]または[II]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)および極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を有することが好ましい。
【0024】
本実施形態に係る炭素原子数が2〜20であるα−オレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。このようなα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このようなα−オレフィンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量は、好ましくは30モル%以上88モル%以下、より好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。
【0026】
本実施形態に係る環状オレフィン由来の構成単位(a2)は脂環式構造を有し、下記式[I]または[II]で示される環状オレフィン由来の構成単位である。
【0027】
【化5】
上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、R
aおよびR
bは、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【0028】
R
1〜R
18ならびにR
aおよびR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0029】
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0030】
さらに上記式[I]において、R
15〜R
18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
【0032】
なお、上記例示において、1または2の番号が付された炭素原子は、上記式[I]においてそれぞれR
15(R
16)またはR
17(R
18)が結合している炭素原子を示している。また、R
15とR
16とで、またはR
17とR
18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、例えば炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
【0033】
【化7】
上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2である。またR
1〜R
19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基である。
【0034】
ハロゲン原子は、上記式[I]におけるハロゲン原子と同じ意味である。また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはアリール基およびアラルキル基等、具体的にはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等を挙げることができる。これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されていてもよい。
【0035】
ここで、R
9およびR
10が結合している炭素原子と、R
13が結合している炭素原子またはR
11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R
9およびR
13で示される基またはR
10およびR
11で示される基が互いに共同して、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−CH
2CH
2−)またはプロピレン基(−CH
2CH
2CH
2−)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。さらに、n=m=0のとき、R
15とR
12またはR
15とR
19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、例えば下記のようなn=m=0のときR
15とR
12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
【0037】
ここで、qは上記式[II]におけるqと同じ意味である。
【0038】
上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、
【化9】
(上記式中、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこのビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等が挙げられる。
【0039】
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン等のビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン誘導体等が挙げられる。
【0040】
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン等のトリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.1
2,5]−3−ウンデセン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.1
2,5]−3−ウンデセン等のトリシクロ[4.4.0.1
2,5]−3−ウンデセン誘導体、
【化10】
【0041】
(上記式中、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)およびテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等が挙げられる。
【0042】
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]−4−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]−3−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]−4,10−ペンタデカジエン等のペンタシクロペンタデカジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]−3−ヘキサデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.1
3,6.0
2,7.0
9,14]−4−ヘキサデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1
2,9.1
4,7.1
11,17.0
3,8.0
12,16]−5−エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.0
3,8.0
12,17]−5−ヘンエイコセンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.1
13,16.0
3,8.0
12,17]−5−ドコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.1
4,7.1
13,20.1
15,18.0
2,10.0
3,8.0
12,21.0
14,19]−5−ペンタコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.1
5,8.1
14,21.1
16,19.0
2,11.0
4,9.0
13,22.0
15,20]−6−ヘキサコセンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る環状オレフィン由来の構成単位(a2)は、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセンおよびヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセン誘導体から選択される少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位を含むことが好ましく、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位を含むことがより好ましく、本実施形態に係る光学部品の屈折率をさらに向上させる観点から、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンに由来する繰り返し単位を含むことがさらに好ましい。
【0044】
なお、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの具体例を上記に示したが、これら化合物のより具体的な構造例としては、特開平6−228380号の段落番号[0038]〜[0058]に示された環状オレフィンの構造例や、特開2005−330465号の段落番号[0027]〜[0029]に示された環状オレフィンの構造例、特開平7−145213号公報の段落番号[0032]〜[0054]に示された環状オレフィンの構造例等を挙げることができる。本実施形態に係るランダム共重合体(A1)は、上記環状オレフィンから導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
【0045】
上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンは、例えば、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とをディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。
【0046】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)において、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの少なくとも一部は下記式[III]または[IV]で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
【0047】
【化11】
上記式[III]において、n、m、q、R
1〜R
18、R
aおよびR
bは上記式[I]と同じ意味である。
【0048】
【化12】
上記式[IV]において、n、m、p、qおよびR
1〜R
19は上記式[II]と同じ意味である。
【0049】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量は、好ましくは10モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下である。
上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。また、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。
【0050】
本実施形態に係る極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基を有するモノマー由来の構成単位の構成単位である。
極性基を有するモノマーとしては上記の極性基を有するモノマーであれば特に限定されないが、例えば、下記式(1)により示されるモノマーが挙げられる。
CH
2=CH−R
1−Xp (1)
上記式(1)中、pは1以上3以下の正の整数、好ましくは1である。
R
1は炭素数0以上の炭化水素基、好ましくは2以上の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以上20以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数5以上15以下の炭化水素である。
Xはカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基であり、より好ましくはカルボキシル基、ヒドロキシル基および酸無水物基から選択される少なくとも一種の極性基であり、さらに好ましくはカルボキシル基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも一種の極性基である。
【0051】
上記極性基を有するモノマーの具体例としては、特開平2−51510号公報の11頁〜17頁に記載されている化合物のうち、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基を有する化合物等が挙げられる。
これらの極性基を有するモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、環状オレフィンとの共重合性に優れる観点から、アクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸(ウンデシレン酸)、11−ドデセン酸、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、ウンデセノールおよび11−ドデセン−1−オールから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル酸、4−ペンテン酸、6−ヘプテン酸、9−デセン酸、10−ウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、10−ウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0052】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)において、ランダム共重合体(A1)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、極性基を有するモノマー由来の構成単位の含有量がランダム共重合体(A1)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、得られる光学部品の屈折率や耐湿性、耐熱性をより一層向上させる観点から、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0053】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンおよび上記極性基を有するモノマーを用いて、例えば、特開平2−51510号公報や特許第3817015号公報、特許第5594712号公報に記載の製造方法により製造することができる。
【0054】
<グラフト共重合体(A2)>
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)は、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたものであることが好ましい。
また、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体は、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体であってもよいし、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体であってもよい。
【0055】
上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、上記ランダム共重合体(A1)で説明したα−オレフィンと同様のものを用いることができる。そのため、ここでは説明を省略する。
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量は、好ましくは10モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下である。
上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。また、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。
【0056】
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、上記ランダム共重合体(A1)で説明したα−オレフィンと同様のものを用いることができる。そのため、ここでは説明を省略する。
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量は、好ましくは30モル%以上88モル%以下、より好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。
【0057】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)において、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基を有するモノマー由来の構成単位の構成単位である。
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)における極性基を有するモノマーとしては上記の極性基を有するモノマーであれば特に限定されないが、例えば、上記ランダム共重合体(A1)で説明した極性基を有するモノマーや、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
これらの極性基を有するモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、環状オレフィン系重合体へのグラフトのし易さの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0058】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)において、グラフト共重合体(A2)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、極性基を有するモノマー由来の構成単位の含有量が、グラフト共重合体(A2)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、得られる光学部品の屈折率や耐湿性、耐熱性をより一層向上させる観点から、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0059】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)は、例えば、特開平5−320258号公報や特公平7−13084号公報等に記載の製造方法により製造した環状オレフィン系重合体に対し、例えば特開2016−056318号公報や国際公開第2008/059938号、国際公開第2010/050437号等に記載の方法で、上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合することにより得ることができる。
【0060】
(無機微粒子(B))
本実施形態に係る無機微粒子(B)としては極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内に微分散するものであれば特に限定されないが、得られる光学部品の屈折率の向上効果に優れる点から、ジルコニア;チタニア;アルミナ;Zr、Ti、Hf、Al、Znおよびランタノイド類等の酸化物または窒化物;複合金属の酸化物または窒化物;等が挙げられる。これらの中でもジルコニア、チタニアおよびアルミナが好ましい。これらは一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してよい。これらの中でも、屈折率の向上効果により一層優れる点から、ジルコニアおよびチタニアが好ましく、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の劣化を防止できる観点から、ジルコニアがより好ましい。
【0061】
無機微粒子(B)の平均粒子経D
50は、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましく、20nm以下が特に好ましい。
無機微粒子(B)の平均粒子経D
50は特に限定されないが、例えば1nm以上である。
無機微粒子(B)の平均粒子経D
50は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。
【0062】
(その他の成分)
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系安定剤、高級脂肪酸金属塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、塩酸吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、スリップ剤、核剤、可塑剤、難燃剤、リン系安定剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
【0063】
(環状オレフィン系樹脂組成物の調製方法)
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて混練する方法;極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)を共通の溶媒に溶解または分散させて混合した後に溶媒を蒸発させる方法;等の方法により得ることができる。
これらの中でも、得られる光学部品の透明性をより一層良好にできる観点から、極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)を共通の溶媒に溶解または分散させて混合した後に溶媒を蒸発させる方法が好ましい。
【0064】
[成形体および光学部品]
次に、本発明に係る実施形態の成形体について説明する。
本実施形態に係る成形体は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を用いて成形されている。
本実施形態に係る成形体は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物により構成されているため、透明性および高屈折率を有している。そのため像を高精度に識別する必要がある光学系において、光学部品として好適に用いることができる。光学部品とは光学系機器等に使用される部品であり、具体的には、眼鏡レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ、撮像用レンズ、センサーレンズ、プリズム、プロジェクタレンズ、導光板、車載カメラレンズ等が挙げられる。本実施形態に係る光学部品は、特に撮像用レンズとして好適に用いることができる。
【0065】
本実施形態に係る成形体を光学用途に使用する場合、光線を透過させることが必須であるので、光線透過率が良好であることが好ましい。光線透過率は用途に応じて分光光線透過率または全光線透過率により規定される。
【0066】
全光線、あるいは複数波長域での使用が想定される場合、全光線透過率が良いことが必要であり、反射防止膜を表面に設けていない状態での全光線透過率は85%以上、好ましくは88〜93%である。全光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。全光線透過率の測定方法は公知の方法が適用でき、測定装置等も限定されないが、例えば、ASTM D1003に準拠して、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を厚み3mmのシートに成形し、ヘーズメーターを用いて、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成形して得られるシートの全光線透過率を測定する方法等が挙げられる。
【0067】
また、特定波長域のみで利用される光学系、例えば、レーザー光学系の場合、全光線透過率が高くなくても、該波長域での分光光線透過率が良ければ使用することができる。この場合、使用波長における、反射防止膜を表面に設けていない状態での分光光線透過率は好ましくは85%以上、さらに好ましくは86%〜93%である。分光光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。また、測定方法および装置としては公知の方法が適用でき、具体的には分光光度計を例示することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る成形体は、450nm〜800nmの波長の光の光線透過率に優れる。
なお、光学部品として用いる場合、公知の反射防止膜を表面に設けることにより、光線透過率をさらに向上させることができる。
【0069】
本実施形態に係る成形体は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等の種々の形態で使用することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成型して成形体を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは230℃〜330℃の範囲で適宜選択される。
【0070】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明の参考形態の例を付記する。
[1]
極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)と、上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内に微分散した無機微粒子(B)と、を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記極性基がカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種を含み、
上記極性基を有するモノマー由来の構成単位は上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の高分子鎖の主鎖内部または側鎖に位置している環状オレフィン系樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)中の上記極性基を有するモノマー由来の構成単位の含有量が、上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、0.1モル%以上20モル%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記無機微粒子(B)がジルコニア、チタニアおよびアルミナから選択される少なくとも一種を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記無機微粒子(B)の平均粒子径D50が1nm以上100nm以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、上記無機微粒子(B)の含有量が5質量%以上50質量%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)が、上記極性基を有するモノマーと環状オレフィンとのランダム共重合体(A1)および環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)から選択される少なくとも一種を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[7]
上記[6]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)が、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン由来の構成単位(a1)、下記式[I]または[II]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)および上記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を有するランダム共重合体(A1)を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【化1】
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
【化2】
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
[8]
上記[7]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記ランダム共重合体(A1)中の上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[9]
上記[7]または[8]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記ランダム共重合体(A1)中の上記α−オレフィン由来の構成単位(a1)がエチレンに由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[10]
上記[7]乃至[9]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基を有するモノマーが下記式(1)により示されるモノマーを含む環状オレフィン系樹脂組成物。
CH2=CH−R1−Xp (1)
(上記式(1)中、pは1以上3以下の正の整数であり、R1は炭素数0以上の炭化水素基であり、Xはカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基である)
[11]
上記[10]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基を有するモノマーがウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる少なくとも1種を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[12]
上記[6]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)が、下記式[I]または[II]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【化3】
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
【化4】
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
[13]
上記[12]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記グラフト共重合体(A2)中の上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[14]
上記[12]または[13]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記グラフト共重合体(A2)が、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン由来の構成単位(a1)をさらに有する環状オレフィン系樹脂組成物。
[15]
上記[12]乃至[14]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基を有するモノマーがアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[16]
上記[1]乃至[15]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて膜厚が100μm以上300μm以下のフィルムを作製したとき、
前記フィルムの波長589nmにおける屈折率(nD)が1.545以上である環状オレフィン系樹脂組成物。
[17]
上記[1]乃至[16]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物を用いた成形体。
[18]
上記[17]に記載の成形体を含む光学部品。
[19]
上記[18]に記載の光学部品において、
眼鏡レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ、撮像用レンズ、センサーレンズ、プリズム、プロジェクタレンズ、導光板または車載カメラレンズである光学部品。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0072】
<触媒の合成>
(シクロペンタジエニル)チタン(ジ−t−ブチルケチミド)ジクロライド(CpTiNCtBu
2Cl
2)は、特許第4245801号公報に従って合成した。
【0073】
<極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の製造>
[製造例1]
攪拌装置を備えた容積2000mlのガラス製反応容器に不活性ガスとして窒素を100NL/hの流量で30分間流通させた後、シクロヘキサン(シクロヘキサン、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンおよび10−ウンデセノールの合計が1000mlとなる量)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(以下、テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)および10−ウンデセノールを表1に記載の割合で加えた後に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(12.4mmol、濃度1.0mM/mL)を加えた。次いで回転数600rpmで重合溶媒を攪拌しながら溶媒温度を50℃に昇温した。溶媒温度が所定の温度に達した後、流通ガスを窒素からエチレンに切り替え、エチレンを100NL/hの供給速度で反応容器に流通させ、10分経過した後に、(シクロペンタジエニル)チタン(ジ−t−ブチルケチミド)ジクロライドのトルエン溶液(0.016mmol)およびメチルアルミノキサン(4.8mmol)のトルエン溶液反応をガラス製反応容器に添加し、重合を開始させた。
20分間経過した後、メタノール5mlおよびアセチル酢酸をAl濃度に対して20当量となるよう添加して重合を停止させ、エチレン、テトラシクロドデセンおよび10−ウンデセノールの共重合体を含む重合溶液を得た。その後、反応容器に1.0mol/Lの塩酸水溶液を500ml加え、50℃で1時間600rpmで撹拌した。油層と水層を分液した後、油層を体積で約3倍のアセトンを入れたビーカーに攪拌下加えて共重合体を析出させ、さらに析出した共重合体を濾過により濾液と分離した。得られた溶媒を含む重合体を130℃で10時間減圧乾燥を行ったところ、白色パウダー状のエチレン・テトラシクロドデセン・ウンデセノール共重合体(極性基含有環状オレフィン系共重合体(A−1))8.86gが得られた。
【0074】
[製造例2]
シクロヘキサン、トリイソブチルアルミニウムおよび10−ウンデセノールの添加量を表1に記載の値に変更した以外は、製造例1と同様に操作を行い、表1に記載の量のエチレン・テトラシクロロデセン・ウンデセノール共重合体(極性基含有環状オレフィン系共重合体(A−2))を得た。
【0075】
[製造例3および4]
10−ウンデセノールの代わりにウンデシレン酸を表1に記載の割合で用い、(シクロペンタジエニル)チタン(ジ−t−ブチルケチミド)ジクロライド、メチルアルミノキサン、シクロヘキサンおよびトリイソブチルアルミニウムの添加量を表1の値に変更した以外は、製造例1と同様に操作を行い、表1に記載の量のエチレン・テトラシクロロデセン・ウンデシレン酸共重合体(極性基含有環状オレフィン系共重合体(A−3)および(A−4))をそれぞれ得た。
【0076】
[製造例5]
500mlのガラス製反応容器を用い、反応液の総量を250mlとし、各成分の添加量を表1の値に変更し、後処理における1.0mol/Lの塩酸水溶液を250ml使用した以外は、製造例1と同様に操作を行い、表1に記載の量のエチレン・テトラシクロロデセン・ウンデシレン酸共重合体(極性基含有環状オレフィン系共重合体(A−5))を得た。
【0077】
[製造例6]
三井化学社製APL6015T(100質量部)に、無水マレイン酸(和光純薬社製)1.5質量部およびt−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂社製、商品名パーブチルZ)1.5質量部をアセトンに溶解させた溶液をブレンドした。その後、二軸混練機(株式会社テクノベル製、KZW15)を用いて樹脂温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量25g/分にて溶融変性を行った。押出しの際、ラジカル開始剤、溶剤および未反応の無水マレイン酸は真空脱気した。押出された溶融状態のストランドは冷却後にペレット化して極性基含有環状オレフィン系共重合体(A−6)を得た。
【0078】
【表1】
【0079】
<実施例および比較例>
各実施例および比較例において、各種物性は下記の方法によって測定または評価し、得られた結果を表2および3に示す。
【0080】
[環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルムの作製]
製造例1〜6で合成した極性基含有環状オレフィン系共重合体、JSR社製アートン(極性基としてエステル基を含む環状オレフィン系重合体)および三井化学社製APL6509T(極性基を含まない環状オレフィン系共重合体)をトルエンにそれぞれ溶解させて10wt%の溶液をそれぞれ調製した。そこに、pixelligent社製のジルコニアナノ粒子のトルエン分散液(PCPG−50−TOL、ジルコニアナノ粒子の平均粒子径D
50:10nm)を、ジルコニアナノ粒子が重合体に対して表2および3の割合になるように加え、マグネチックスターラーで室温で1時間撹拌し、ガラス板に流涎させ、バーコートした。90℃、1時間間乾燥させた後、さらに130℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した。ガラス板から塗布膜を剥離させ、140〜160℃、3〜10MPa、10分間プレスした。得られたフィルムを2cm角に裁断後、160℃、10MPa、10〜30分の条件でプレスして膜厚100〜300μmの有環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルムをそれぞれ得た。
【0081】
[ヘイズおよび全光線透過率]
スガ試験機株式会社製のダブルビーム方式ヘーズコンピューターHZ−2を用いて、JIS K−7105に基づいてヘイズおよび全光線透過率をそれぞれ測定し、以下の基準でそれぞれ評価した。
(1)全光線透過率の評価
◎:90%以上
○:80%以上90%未満
×:80%未満
(2)ヘイズの評価
◎:10%未満
○:10%以上15%未満
×:15%以上
【0082】
[ガラス転移温度Tg(℃)]
島津サイエンス社製、DSC−6220を用いてN
2(窒素)雰囲気下で測定した。常温から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に5分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で−20℃まで降温した後に5分間保持した。そして10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する際の吸熱曲線から極性基含有環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0083】
[屈折率]
屈折率計(アタゴ社製、多波長アッベ屈折率計、DR−M2)を用いて、中間液としてアタゴ社製RE−1199(イオウヨウ化メチレン溶液(nD:1.78))を用いて波長589nmにおける屈折率(nD)をそれぞれ測定した。
【0084】
[極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)を構成する各構成単位の含有量の測定方法]
環状オレフィン、10−ウンデセノールおよびウンデシレン酸の含有量は、日本電子社製「ECA500型」核磁気共鳴装置を用い、下記条件で測定することにより行った。
溶媒:重テトラクロロエタン
サンプル濃度:50〜100g/l−solvent
パルス繰り返し時間:5.5秒
積算回数:6000〜16000回
測定温度:120℃
上記のような条件で測定した
13C−NMRスペクトルにより、環状オレフィン、10−ウンデセノールおよびウンデシレン酸の含有量を定量した。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】