(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記高さ調整プレートは、上記外管の外周面に接する裏面に、上記長孔の開口縁に対応した外縁形状を有する段部が突出形成されており、この段部が上記長孔に嵌合して上下方向に沿った荷重を上記外管に伝達する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の体操装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、体操競技の段違い平行棒種目で使用される段違い平行棒は、相対的に高い位置にあるバー(高バーと呼ばれる)と相対的に低い位置にあるバー(低バーと呼ばれる)とを並行に配置した構成であり、体育館等の床面上に、複数本のワイヤを張ることによって固定される。
【0003】
高バーは、競技の規定により、バーの高さとして250cmが標準となっているが、例えば競技者の事前の申告により、260cm等の他の高さに調整した上で競技を行うことが許容されている。そのため、競技会の途中で、しばしば、バーの高さの変更が必要となる。
【0004】
また、そのほか、練習の際などは競技者の体格に合わせてバーの高さを変更したい、というニーズもある。
【0005】
従来の段違い平行棒(特に高バー)は、バーの左右両端を支持する上下方向に沿った支柱が、互いにスライド可能な外管と内管との二重構造となっており、内管に例えば5cm毎の間隔を有する複数の係止孔を開口形成するとともに、外管に単一の係止孔を開口形成しておき、これら内管および外管の係止孔を通してロックピンを挿入することで、両者を軸方向に固定する構成となっている。従って、外管に対する内管のスライド位置を変更する際には、ロックピンを一旦抜き取り、内管をスライドさせて内管側の他の係止孔を外管側の係止孔に合致させた状態で再びロックピンを挿入することととなる。
【0006】
特許文献1は、簡易な懸垂運動用の装置に関するものであるが、左右の支柱について同様の高さ調整機構の説明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
段違い平行棒の高バーは、例えば250cm〜260cmといった高所にバーが位置し、一般成人では手が届かない高さであることから、例えば、片手でバーを持ち上げながら他方の手でロックピンを抜き差しする、といった形で作業者1人で高さ調整(バーの高さの変更)を行うことは不可能である。仮に、踏み台等を用いたとしても、ロックピンの位置とバーの位置とが上下に大きく離れていることから、作業者1人では両方を同時に操作することはできない。しかも、体操競技用の段違い平行棒では、特許文献1のような懸垂運動用の装置とは異なり、バー等の各部に十分な強度や信頼性が求められることから、高さ調整の際に可動部となる内管やバー等の部分は、重量が10〜20kg程度の重量物であり、この点からも作業者1人での高さ調整は不可能である。
【0009】
また、内管の係止孔と外管の係止孔とを合致させる際にも、内管の係止孔は外部から直接には視認できず、外管の係止孔を通して内管の係止孔の位置を探す形となるので、作業性が悪い。
【0010】
そのため、実際には、3人の作業者により、1人が踏み台に乗ってバーを保持し、残りの2名が左右の支柱を担当して、それぞれロックピンの抜き差しを行う、という態様でバーの高さ変更作業を行う必要があった。
【0011】
このような課題は、高所にバーが存在する鉄棒においても基本的に同様である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、段違い平行棒の高バーあるいは鉄棒のような体操装置であって、
床から上方へ立ち上がった状態に支持される一対の外管と、
上記外管の内側にそれぞれ上下スライド可能に嵌合した一対の内管と、
この一対の内管の間に水平方向に沿って配設され、体操競技者が把持するバーと、
このバーの左右両端部と上記内管の頂部とを、上記バーの所定範囲内の角度変化を許容する態様でもってそれぞれ連結するキャップ部と、
上記外管に開口形成した長孔を覆うように該外管に取り付けられ、上下方向に沿ったスリットと、このスリットの長手方向の複数箇所において該スリットの幅を部分的に拡大したように形成された複数の係止孔と、を有する高さ調整プレートと、
上記内管に、該内管の軸方向と直交する方向に沿って移動可能に支持され、かつ、上記スリット内を上下にスライド可能な基端側の軸部と、上記係止孔に嵌合する中間のストッパ部と、上記高さ調整プレートの外部に露出していて作業者が把持する先端のグリップ部と、を有する棒状のストッパ部材と、
上記ストッパ部材の移動方向として上記グリップ部が外側へ引き出される引き出し方向と上記グリップ部が上記高さ調整プレート寄りに後退する後退方向との2つの方向の中で、上記ストッパ部材を
上記後退方向に付勢するばね部材と、
を備え、
上記ストッパ部材が上記ばね部材の付勢力により後退した第1の位置では上記ストッパ部が上記係止孔に嵌合して上記内管が上記外管に対し固定され、上記ストッパ部材を引き出した第2の位置では上記軸部が上記スリット内に位置し、上記グリップ部を介した上記内管の上下位置調整が可能となるように構成されている。
【0013】
このような構成では、踏み台等を用いずにバーの左右の片側ずつ高さ調整を行うことで、1人の作業者による高さ変更が可能となる。すなわち、バーの高さ変更が必要な場合、作業者は、まず、一方の側(例えば右側)のストッパ部材をグリップ部を把持して外管の半径方向へ引き出す。すると、ストッパ部材が第2の位置となり、ストッパ部材のストッパ部が高さ調整プレートの係止孔から抜け出るため、内管が外管に対し自由状態となる。また、この第2の位置では、ストッパ部材の軸部が高さ調整プレートのスリットの中を上下に移動可能である。そのため、荷重つまり内管およびバーの重量をストッパ部材が受けることとなり、作業者がグリップ部を把持して上下に操作することで、バーの位置を所望の高さに変更することができる。このとき、他方の側(例えば左側)では外管に荷重が支持されたままであるので、作業者がグリップ部を介して持ち上げる荷重は、基本的にバー等の全体の重量の半分である。また、一方の高さ変更に伴ってバーが一時的に斜めとなるが、両端のキャップ部によって内管に対するバーの僅かな角度変化が許容されるため、支障はない。
【0014】
そして、ストッパ部材(換言すればグリップ部)の高さ位置を、所望の高さ位置にある係止孔に合致させた状態で、ばね部材の付勢力を利用してストッパ部材を第1の位置まで後退させれば、ストッパ部が係止孔に嵌合し、内管と外管とが軸方向に相互に固定される。
【0015】
つまり、作業者は、グリップ部を把持して該グリップ部を外管の径方向および上下方向に操作するだけで、ロック解除、高さ変更、再ロック、の一連の作業を行うことができる。
【0016】
このようにして一方の側(例えば右側)の高さ変更が完了したら、続いて他方の側(例えば左側)の高さ変更を同様に行うことができる。従って、作業者1人で容易に高さ変更が可能である。
【0017】
本発明の好ましい一つの態様では、
上記外管は断面円形をなし、
上記外管の上記長孔とは径方向反対側の位置に、上記係止孔の高さ位置にそれぞれ対応した第2の係止孔が開口形成されており、
上記ストッパ部材が上記第1の位置にあるときに、該ストッパ部材の上記グリップ部とは反対側の端部が上記第2の係止孔に嵌合する。
【0018】
従って、ストッパ部材は外管を直径方向に貫通し、両側の2箇所で内管から外管への荷重伝達がなされる。そのため、競技中等に作用する荷重が分散し、強度や耐久性さらには固定状態での剛性が向上する。
【0019】
また、本発明の好ましい一つの態様では、
上記高さ調整プレートは、上記外管の外周面に接する裏面に、上記長孔の開口縁に対応した外縁形状を有する段部が突出形成されており、この段部が上記長孔に嵌合して上下方向に沿った荷重を上記外管に伝達する。
【0020】
すなわち、係止孔を有する高さ調整プレートは、ストッパ部材を介して内管から大きな荷重を受けるが、この荷重は、裏面の段部と長孔との嵌合を介して外管に伝達される。従って、例えば高さ調整プレートを外管に取り付けるためのネジやネジ孔に大きな荷重が作用することがなく、外管へ確実に荷重が伝達される。
【0021】
本発明は、好ましくは、段違い平行棒の高バーとして適用される。その他、鉄棒など類似の体操装置にも適用が可能である。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、バーが手の届かない高所にあっても、作業者1人でグリップ部を把持して、ロック解除、高さ変更、再ロック、の一連の作業を行うことができ、左右の作業を順次に行うことで、バーの高さ変更作業を1人の作業者で実行することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を段違い平行棒の高バーに適用した実施例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
図1は、段違い平行棒の全体的な構成を示した斜視図である。段違い平行棒は、相対的に高い位置に水平方向のバー3を備えた高バー1と、相対的に低い位置に水平方向のバー4を備えた低バー2と、が並行して設けられた構成である。現行の競技の規定によれば、高バー1におけるバー3の高さが250cm、低バー2におけるバー4の高さが170cm、2本の平行なバー3,4の間の距離が180cm、であることが標準となっており、前述したように、例えば競技者の事前の申告によりバー3,4の高さの変更が可能である。
【0026】
高バー1は、後に詳細に説明するように外管6と内管7との2重管構造をなす左右一対の支柱5を有し、バー3の左右両端部がそれぞれキャップ部8を介して支柱5の上端(詳しくは内管7の上端)に支持されている。支柱5の下端(詳しくは外管6の下端)は、左右のベースブロック9の上面に、前後揺動可能に支持されている。
【0027】
低バー2は、やはり外管12と内管13との2重管構造をなす左右一対の支柱11を有し、バー4の左右両端部がそれぞれキャップ部14を介して支柱11の上端(詳しくは内管13の上端)に支持されている。支柱11の下端(詳しくは外管12の下端)は、支柱5の下端と前後方向に離れた位置においてベースブロック9の上面に前後揺動可能に支持されている。
【0028】
つまり、高バー1の支柱5も低バー2の支柱11も、バー3,4と直交する面に沿って揺動可能に支持されている。そして、高バー1の支柱5と低バー2の支柱11との間には、両者をほぼ水平方向に沿って互いに連結する幅員調節棒16が左右それぞれに設けられている。詳細には説明しないが、この幅員調節棒16は、内周に雌ネジを有する円筒状部材16aと、この円筒状部材16aの雌ネジに螺合して円筒状部材16aの中に進退する棒状のネジ部材16bと、を組み合わせたもので、高バー1側の端部に設けられたハンドル16cの回転操作によりネジ部材16bを回転させることで、全長が伸縮変化する構成となっている。これにより、高バー1の支柱5と低バー2の支柱11との間の間隔ひいてはバー3,4の間の距離の調節が可能である。なお、使用時の態様では、支柱5と支柱11は、上方へ向かうほど両者間の間隔が広くなるように、それぞれ垂直線に対し僅かに傾いている。つまり、側方から見たときに、支柱5と支柱11とが略V字形に広がっている。
【0029】
また、各々の支柱5,11は、体育館の床に固定したフック(図示せず)から延びる複数本のワイヤ17で外側斜め方向へ引っ張ることによって、固定支持されている。ワイヤ17は、フック側の部分に張力調整機構を具備し、先端部が、外管6,12の上端部にそれぞれ連係している。なお、一対のベースブロック9は、それぞれ体育館の床の所定位置に位置決めされる構造となっている。
【0030】
次に、本発明の要部である高バー1側の高さ調整機構について説明する。
【0031】
図2は、外管6と内管7の二重管構造をなす高バー1の支柱5を示している。床上のベースブロック9から上方へ立ち上がった状態に支持される外管6は、断面円形の鋼管からなり、バー3を最も低位に位置調整したときにキャップ部8付近に上端が達する長さを有する。つまり、支柱5の剛性確保のために、できるだけ長く構成されており、一般成人の身長を越える高さを有している。内管7は、同じく断面円形の鋼管からなり、かつ外管6の内径よりも僅かに小さな外径を有し、外管6の内側に上下スライド可能に嵌合している。この内管7も、支柱5の剛性確保のために長い範囲で外管6と重複するように、比較的長く構成されている。
【0032】
内管7の頂部とバー3の左右両端部とは、L字形に構成されたキャップ部8によって互いに連結されている。このキャップ部8は、
図3に示すように、水平方向の管状部分8c内に、バー3の先端に取り付けられた球状部8aと、この球状部8aを包囲する円筒状の座面を有する座部8bと、を備えており、これにより、内管7に対するバー3の角度変化が所定範囲内で許容される構成となっている。つまり、キャップ部8は、水平方向部分が一種のボールジョイントとして構成されており、バー3の揺動が可能である。なお、キャップ部8は、バー3と支柱5を含む平面の中でのみ揺動可能なヒンジ状の構成であってもよい。
【0033】
バー3は、体操競技者が把持するために、丸棒状に構成されており、例えば、繊維強化プラスチック等から形成されている。
【0034】
図2および
図4に示すように、外管6の上部の外周面、詳しくは、一対の支柱5のそれぞれ外側へ向かう面に、高さ調整機構の主要部をなす高さ調整プレート21が取り付けられている。この高さ調整プレート21を含む高さ調整機構は、踏み台等を用いずに一般成人による高さ変更の操作が可能なように、一般成人の上半身付近の高さ位置に配置されている。
【0035】
図5,
図6は、高さ調整機構の分解斜視図である。また、
図7は、高さ調整機構の組立状態における外管6長手方向に沿った断面図、
図8は、外管6と直交する面に沿った断面図、である。
【0036】
外管6には、上下方向に沿って細長く延びた長孔22が開口形成されている。高さ調整プレート21は、強度を有する鋼や超合金等の金属材料を用いて例えばロストワックス法により比較的厚肉な部材として一体に鋳造したものであって、全体として上下に細長い形状をなし、かつ外管6の断面形状に対応した円弧に近似した断面形状を有している。この高さ調整プレート21は、上記長孔22を覆い得る大きさを有し、長孔22を覆うようにして外管6に取り付けられている。詳しくは、両側の計6箇所の耳部25において、ネジ23により外管6に取り付けられている。ここで、外管6の外周面に接する高さ調整プレート21の裏面には、
図6に示すように、長孔22の開口縁に対応した外縁形状を有する段部24が突出形成されており、外管6に取り付けた状態では、この段部24が長孔22の内周に殆ど隙間なく嵌合(
図8参照)している。これにより、後述するように高さ調整プレート21が受ける上下方向に沿った荷重は、段部24および長孔22の嵌合を介して外管6に伝達される。換言すれば、ネジ23は、高さ調整プレート21を外管6に固定しているものの、上下方向の大きな荷重を負担するものではない。
【0037】
高さ調整プレート21には、
図5,
図6に拡大して示すように、幅方向の中央に、上下方向に沿って延びた細長いスリット27が貫通形成されている。そして、このスリット27の開口幅を部分的に拡大した形で複数の係止孔28が設けられいる。この係止孔28は、スリット27の長手方向(つまり上下方向)の複数箇所に、等間隔で設けられている。具体的な一例としては、5cm毎に計6個の係止孔28が配置されている。個々の係止孔28は、円形をなしている。つまり、円形の係止孔28がスリット27に重なって形成されているため、外観形状としては、スリット27の幅が上下両端を含む6箇所において左右に円弧形に膨らんだ形となっている。これらのスリット27および係止孔28が開口する高さ調整プレート21の幅方向中央部分は、長円形の座面29として平面に形成されている。
【0038】
また、外管6の高さ調整プレート21とは径方向で反対側となる周面には、高さ調整プレート21の係止孔28に個々に対応した高さ位置に、第2の係止孔として、円形をなす内側係止孔30が開口形成されている(
図6参照)。具体的な一例としては、上下方向に5cm間隔で計6個の内側係止孔30が配列されている。
【0039】
上記の高さ調整プレート21の係止孔28および内側係止孔30に対し、内管7には、内管7の径方向に沿った棒状のストッパ部材31が配置されている。このストッパ部材31は、
図5〜
図8に示すように、小径軸部32aと大径軸部32bとフランジ部32cとを有する軸部材32と、この軸部材32を円柱状ブロック40に保持するためのナット部材33と、軸部材32の小径軸部32aに嵌合装着されるとともにネジ35により固定される円筒状のストッパ部34と、小径軸部32aの先端に取り付けられた球形のグリップ部36と、から構成されている。また、このストッパ部材31を後退方向へ付勢するためのコイルスプリング37を備えている。このコイルスプリング37は、軸部材32の大径軸部32bの径に対応している。
【0040】
円柱状ブロック40は、内管7の強度・剛性を損なうことなくストッパ部材31を堅固に支持するために内管7の内側に装填された円柱形をなす金属製ブロックであり、直径方向に段付の貫通孔41が貫通形成されている。この貫通孔41の一方の開口端には、円環状に座面42が加工されており、かつ貫通孔41の開口端側の部分の内周面には、雌ネジ43が加工されている。内管7には、この円柱状ブロック40に対応して、上記座面42に対応する円形の開口部44が設けられているとともに、側方に、上下2つの円形の小孔45がそれぞれ貫通形成されている。円柱状ブロック40は、内管7内に装填された状態で、小孔45を通して側方から計4個のネジ46を取り付けることにより、ネジ46の頭部が小孔45にそれぞれ係合し、これによって内管7に固定保持されている。また、円柱状ブロック40の貫通孔41の先端側の開口に対応して、内管7には、開口部44と径方向反対側に、開口部44よりも小径な円形の開口部47が設けられている。
【0041】
ストッパ部材31の主要部をなす軸部材32は、大径軸部32bに装着したコイルスプリング37とともに、円柱状ブロック40の貫通孔41に、該貫通孔41の軸方向に沿って移動可能なように装填されている。換言すれば、軸部材32は、内管7の軸方向と直交する方向に沿って移動可能に支持されている。そして、貫通孔41の雌ネジ43にナット部材33を螺合させることによって、軸部材32が抜け止めされている。この状態において、コイルスプリング37は、両端がナット部材33とフランジ部32cとに圧接しており、これによって軸部材32は常に後退方向に付勢されている。また、フランジ部32cは、貫通孔41の段部41aに当接しており、これにより、後退方向の限界位置が規定される。このようにフランジ部32cが段部41aに当接した状態(すなわちストッパ部材31が第1の位置にあるとき)において、軸部材32のフランジ部32cからさらに延びた延長部端部32dが内管7の開口部47を通して突出し、外管6の内側係止孔30に嵌合するようになっている。
【0042】
円筒状をなす上記ストッパ部34は、高さ調整プレート21の係止孔28に対応した径、換言すれば、スリット27の幅よりも大きくかつ係止孔28に嵌合し得る大きさの径を有している。これに対し、大径軸部32bの径は、ストッパ部34の径よりも小さく、スリット27の幅に対応している。つまり、大径軸部32bは、スリット27内を上下にスライド可能である。ストッパ部34は、大径軸部32b側の端部にテーパ面34aを有し、このテーパ面34aを介して、ストッパ部34の外周面と大径軸部32bの外周面とが段差なく連続している。なお、ストッパ部材31がコイルスプリング37の付勢力によって初期位置(第1の位置)に後退しているときに、円筒状のストッパ部34は、その長さの一部が高さ調整プレート21の座面29から突出している。
【0043】
高さ調整プレート21の外部に露出するグリップ部36は、例えば硬質合成樹脂等から構成されており、ストッパ部34から突出した小径軸部32aの先端に取り付けられている。一例では、小径軸部32aに雄ネジが加工してあり、グリップ部36のネジ孔がこれに螺合している。このグリップ部36は、作業者がしっかりと把持できる適当な大きさ(例えば直径数cm程度)に形成されている。なお、球形に限らず、棒状あるいはハンドル型等の他の形状のグリップ部であってもよい。
【0044】
図7および
図8の断面図は、いずれもストッパ部材31がコイルスプリング37の付勢力によって後退した初期位置(第1の位置)にあるときの状態を示しており、この状態では、大径軸部32bとグリップ部36との間にあるストッパ部34が高さ調整プレート21の係止孔28に嵌合している。同時に、上述したように、軸部材32の延長部端部32dが外管6の内側係止孔30に嵌合している。従って、内管7が外管6に対し軸方向に固定される。つまり、高さ調整機構がロック状態となる。このロック状態でバー3において競技がなされると、比較的大きな荷重が内管7から高さ調整機構を介して外管6へ伝達されることとなるが、ストッパ部材31(軸部材32)の両端の2箇所で内管7と外管6とが連結されていることから、荷重が分散する。またストッパ部34を介して高さ調整プレート21に作用する荷重は、前述したように裏面の段部24から外管6の長孔22に伝達されるので、確実に荷重を支承することができる。
【0045】
一方、グリップ部36を把持してストッパ部材31をコイルスプリング37の付勢力に抗して引き出すと、
図9に示すように、ストッパ部材31の第2の位置として、大径軸部32bが高さ調整プレート21のスリット27ないし係止孔28と重なり合う位置関係となる。また同時に、軸部材32の延長部端部32dが内側係止孔30から抜け出た状態となる。なお、グリップ部36を過度に強く引っ張った場合でも、軸部材32の位置はナット部材33によって所定の位置(第2の位置)に規制されるので、大径軸部32bがスリット27の位置に対応した所定の状態となる。そのため、係止孔28および内側係止孔30によるロックが解除され、内管7が外管6に対し上下にスライド可能となる。つまり、バー3の高さ変更が可能となる。
【0046】
このようにストッパ部材31をロック解除位置まで引き出して内管7を外管6に対し上下にスライドさせたときには、ストッパ部材31の大径軸部32bが、高さ調整プレート21のスリット27を通して上下に移動可能である。
【0047】
また、ストッパ部材31は、コイルスプリング37の付勢力によって常に後退方向(つまりロック方向)へ付勢されているので、内管7を上下にスライドさせて所望の高さ位置としたところでグリップ部36を離せば、ストッパ部34が係止孔28に嵌合し、かつ同時に延長部端部32dが内側係止孔30に嵌合して、再びロック状態となる。このとき、大径軸部32bの外周面とストッパ部34の外周面とがテーパ面34aを介して連続しているので、ストッパ部材31は容易にかつ滑らかに移動する。
【0048】
次に、例えばバー3の高さを250cmから260cmへ変更する場合を例にとって、具体的な高さ変更作業の作業手順を説明する。なお、この作業は、1人の作業者によって行う。
【0049】
高さ調整機構による高さ変更の事前作業として、図示していないが、最初に幅員調節棒16の長さを縮小させる。この作業は、左右の幅員調節棒16について順次に行う。この幅員調節棒16の縮小により、高バー1と低バー2とに張られているワイヤ17の張力が低下する。つまり、ワイヤ17が緩くなり、内管7と外管6との間の摺動抵抗が抑制される。なお、ワイヤ17の張力が高い状態では、内管7と外管6とが強く密接するので、軸方向に相対移動させることは困難である。
【0050】
ワイヤ17の張力を緩めた後に、一方の側、例えば右側の支柱5について、グリップ部36を把持してストッパ部材31を引き出し、ロック解除する。これにより内管7が上下方向に自由状態となるので、グリップ部36を把持して上方へ10cm持ち上げる。このとき、作業者が把持するグリップ部36には、内管7やバー3の重量が作用するが、他方の側(左側)では、支柱5によって荷重が支えられているので、作業者が負担する荷重は、基本的に内管7やバー3の重量の半分に過ぎない。また、
図10に示すように、バー3が支柱5に対し僅かに傾いた状態となるが、このときの角度変化は、左右のキャップ部8によって吸収可能である。
【0051】
所定量つまり10cm持ち上げた状態で、それまで引き出していたグリップ部36をコイルスプリング37の付勢力を利用しつつ後退させれば、前述したように、テーパ面34aを有するストッパ部34が自然に係止孔28(260cmに対応した係止孔28)に嵌合する。これにより、内管7と外管6とが再びロック状態となるので、一方の側の高さ変更が完了する(
図10参照)。
【0052】
次に、他方の側つまり左側の支柱5について、同様の作業を行う。つまり、グリップ部36を引き出してロック解除した後に、10cmだけ上方へ持ち上げ、かつグリップ部36を後退させて再ロックする。これにより、他方の側の高さ変更が完了する。
【0053】
その後、左右の幅員調節棒16を元の長さにまで伸長させれば、一連の高さ変更作業が全て完了する。
【0054】
このように、上記実施例によれば、従来は3人で行っていた高バー1の高さ変更作業を1人で行うことが可能となる。また、踏み台等を用いることなく、床の上に立った自然な態勢で、ロック解除、高さ変更、再ロック、の一連の作業を行うことができる。しかも、競技に際して、支柱5として必要な強度・剛性ならびに耐久性を十分に確保することができる。
【0055】
なお、低バー2については、バー4が一般成人の手の届く高さにあることから、本発明のような高さ調整機構の必要性は低く、従って、図示例の段違い平行棒では、従来のロックピンの抜き差しによる単純な高さ調整機構が用いられている。勿論、上記実施例の高さ調整機構を低バー2側に採用することも可能である。