(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
充填圧が10MPa以上となるように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の充填剤を筒状のカラム本体部に充填する工程を備える、超臨界流体クロマトグラフィー用カラムを製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態に係る超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)用カラム充填剤は、架橋ポリマーを含むポリマー粒子を含有する。ポリマー粒子は、テトラヒドロフランを吸収したときの膨潤度及びメタノールを吸収したときの膨潤度がともに1.4以下である。
【0020】
このようなポリマー粒子を用いたSFC用カラム充填剤は、遊離脂肪酸等の分析に際し良好なピーク形状が得られるとともに、繰り返し分析に対する耐久性にも優れる。
【0021】
このような効果が得られる理由を本発明者らは以下のように考えている。まず、従来のシリカゲル担体を含有する粒子をSFC用カラム充填剤として用いて、遊離脂肪酸等の分析を行う場合、親水性基(例えば、遊離脂肪酸のカルボキシル基)とシラノール基との相互作用によりピークがテーリングしてしまう。これに対し、本実施形態に係るSFC用カラム充填剤は、シリカゲル担体を用いた場合のような問題を起こしにくく、結果として遊離脂肪酸等の分析を行った場合であっても、良好なピーク形状が得られ、耐久性も向上するものと考えられる。
【0022】
一方でポリマー粒子を用いたカラム充填剤は、一般にSFCによる分析の際に用いられる超臨界流体を吸収することによって膨潤が起こり易く、それに起因して分析時のカラム圧が過度に変化することで分析性能が低下することが考えられる。これに対し、本実施形態に係るポリマー粒子は、テトラヒドロフランを吸収したときの膨潤度及びメタノールを吸収したときの膨潤度がともに1.4以下と充分に低いため、SFCによる分析に際し超臨界流体の影響を受けにくいことに加え、ポリマー粒子をカラム本体部に充填する際、カラム充填圧を充分に高めることができることから、分析性能の低下を充分に抑制することができると考えられる。
【0023】
本実施形態に係るポリマー粒子の膨潤度は、テトラヒドロフランを吸収したときの膨潤度及びメタノールを吸収したときの膨潤度がともに1.4以下であれば特に制限されないが、超臨界流体の影響をより受けにくくするとともに分析性能の低下をより充分に抑制する観点から、1.3以下、又は1.2以下であってよい。上記膨潤度の下限は特に制限されないが、例えば1.0以上である。
【0024】
ポリマー粒子の膨潤度は、例えば、溶媒に分散させる前後の粒子の体積変化に基づいて決定することができる。膨潤度の測定方法については、後述の実施例において詳細に説明する。
【0025】
本実施形態に係るポリマー粒子の平均粒子径は、例えば、高い理論段数のカラムを得られ易いという観点から、10μm以下、5μm以下又は4μm以下であってよい。一方、ポリマー粒子の平均粒子径の下限値は、分析時のカラム圧の過度な上昇を抑制する観点から、例えば、1μm以上又は2μm以上であってよい。
【0026】
ポリマー粒子の粒子径(直径)の分散性を示す変動係数であるCV(Coefficient of Variation)値は、例えば、高い理論段数のカラムを得られ易いという観点から、25%以下、20%以下、15%以下又は10%以下であってよい。CV値の下限は、特に制限されないが、例えば、1%以上である。なお、上記平均粒子径及びCV値の調整に際しては、任意の篩等を用いて分級してもよい。
【0027】
ポリマー粒子の平均粒子径及びCV値は、以下の測定法により求めることができる。まず、対象となるポリマー粒子を、界面活性剤が添加された水に超音波分散装置を使用して分散させ、1質量%のポリマー粒子を含む分散液を作製する。続いて、上記分散液をレーザー回折散乱式又は電気抵抗法の粒度分布計を用いて測定・算出する。なお、CV値は下記式を用いて算出される。
CV(%)=(σ/D)×100
σ:標準偏差、D:平均粒子径
【0028】
ポリマー粒子の膨潤度は、例えば、該ポリマー粒子に含まれる架橋ポリマーの架橋度を調整することで制御できる。より具体的には、架橋ポリマーの架橋度を高くすることにより、ポリマー粒子の膨潤度を低くできる傾向がある。本実施形態に係る架橋ポリマーの架橋度は、例えば、50%以上、80%以上又は90%以上である。架橋度が上記範囲内であれば、超臨界流体の影響をより受けにくくするとともに分析性能の低下をより充分に抑制することができる。架橋度の上限は、特に制限されないが、例えば100%以下である。
【0029】
架橋ポリマーの架橋度は、後述する架橋性モノマーの配合量より求めることができる。具体的には、架橋度は、用いる重合性モノマー全質量を基準とした架橋性モノマーの質量割合として定義される。
【0030】
本実施形態に係るポリマー粒子は、架橋ポリマーを含む粒子であり、架橋ポリマーは、例えば、架橋性モノマーを含む重合性モノマーを重合して形成される。すなわち、架橋ポリマーは、重合性モノマー由来の構造単位を有していてもよい。また、ポリマー粒子は、シリカ等を含んでいても良いが、ポリマー粒子における上記架橋ポリマーの含有量は、例えば、親水性の高いサンプルの分析に際しより良好なピーク形状が得られる観点、及び耐久性をより効果的に向上させる観点から、ポリマー粒子全質量を基準として80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってよい。ポリマー粒子における上記架橋ポリマーの含有量の上限は、特に制限はなく、例えばポリマー粒子全質量を基準として100質量%以下である。
【0031】
重合性モノマーは、さらに良好なピーク形状が得られるとともに、耐久性により優れるカラムを得る観点から、架橋性モノマー(多官能性モノマー)を、重合性モノマー全量を基準として50質量%以上、80質量%以上又は90質量%以上用いることが好ましい。すなわち、上述した架橋ポリマーの架橋度と同様であることが好ましい。架橋性モノマーの使用量の上限は、特に制限はなく、例えば重合性モノマー全量を基準として100質量%以下である。
【0032】
架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン等のジビニル化合物;ジアリルフタレート及びその異性体;トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体;多官能性(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
多官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジ(メタ)アクリル酸エステル、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0034】
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリロイル基を2つ有していれば特に制限はないが、例えば、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルカンジオールジ(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0036】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、L
1はアルキレン基を示す。当該アルキレン基の炭素数は、例えば、1〜20又は1〜5であってもよい。上記アルキレン基は、例えば、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、水酸基が挙げられる。また、上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。
【0037】
式(1)で表されるアルカンジオールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びグリセロールジメタクリレートが挙げられる。
【0038】
ジ(メタ)アクリル酸エステルのその他の例は、エトキシ化ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;及び(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレートを含む。
【0039】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製のNKエステル(A−TMPT−6P0、A−TMPT−3E0、A−TMM−3LMN、A−GLYシリーズ、A−9300、AD−TMP、AD−TMP−4CL、ATM−4E、A−DPH)等が、商業的に入手可能である。
【0040】
これらの架橋性モノマーのうち、架橋密度が高くなり膨潤度が小さくなりやすくなる観点から、例えば、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。すなわち、架橋ポリマーは、ジビニルベンゼン由来の構造単位及びジ(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する重合体を含んでいてもよい。
【0041】
架橋性モノマーとともに単官能性モノマーを用いてもよい。単官能性モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の単官能の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル等の含フッ素化モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本実施形態に係るポリマー粒子は、シード重合法によって得ることができる。カラムの理論段数は、通常、粒子の粒径が小さいほど大きくなるが、ポリマー粒子はシリカゲル粒子と比較して粒径の小さい粒子を形成することが困難な傾向にあると考えられる。これに対し、シード重合法によれば、粒径の小さな粒子を形成し易く、高い理論段数のカラムを得られ易いと考えられる。以下、シード重合法の一例について説明する。
【0043】
シード重合法は、シード粒子の存在下、重合性モノマーをシード重合させる方法であり、より具体的には、シード粒子を、重合性モノマーを含む乳化液中で膨潤させた後(シード粒子に重合性モノマーを吸収させた後)、重合性モノマーを重合する方法である。すなわち、本実施形態に係るポリマー粒子は、シード粒子に重合性モノマーを吸収させた後、上記重合性モノマーを重合して得られる粒子であってよい。
【0044】
シード粒子としては、例えば、(メタ)アクリレート系粒子、スチレン系粒子等が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリレート系粒子は、(メタ)アクリル酸エステルの重合により得ることができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
スチレン系粒子は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーの重合により得ることができる。これらスチレン系モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
シード粒子は、上記(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系モノマー、並びに他のモノマーを組み合わせて用いてもよい。他のモノマーとしては、例えば、アリルアルコール、フタル酸アリル、アリルエーテル等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
シード粒子は、上記モノマーを用いて、例えば、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法等の公知の方法で合成することができる。
【0049】
シード粒子の平均粒子径は、得られるポリマー粒子の設計粒子径に応じて調製することができる。シード粒子の平均粒子径は、重合性モノマーの吸収時間を短縮する観点から、例えば、2.0μm以下又は1.5μm以下であってよい。シード粒子の平均粒子径は、均一且つ真球に近いシード粒子を効率的に得られる観点から、例えば、0.1μm以上又は0.5μm以上であってよい。これらの観点から、シード粒子の平均粒子径は、0.1〜2.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましく、0.5〜1.5μmであることがさらに好ましい。
【0050】
シード粒子の粒子径(直径)の分散性を示す変動係数であるCV(Coefficient of Variation)値は、例えば、得られるポリマー粒子の均一性を充分に確保する観点から、10%以下又は7%以下であってよい。シード粒子のCV値の下限は、特に制限されないが、例えば、1%以上である。
【0051】
シード粒子の平均粒子径及びCV値は、上述したポリマー粒子の平均粒子径及びCV値の測定法と同様の方法により求めることができる。
【0052】
なお、上述したポリマー粒子は、その平均粒子径が、シード粒子の平均粒子径に対して、例えば、2〜10倍又は2.5〜7倍となるように調整してもよい。ポリマー粒子の平均粒子径を上記の範囲で調整することにより、ポリマー粒子の単分散性が得られ易くなる。
【0053】
以下、シード粒子に重合性モノマーを吸収させ、次いで、重合性モノマーを重合する方法の一例を具体的に説明する。
【0054】
まず、重合性モノマーと水性媒体とを含む乳化液に、シード粒子を添加する。シード粒子は、乳化液に直接添加してもよく、シード粒子を水性分散体に分散させた状態で添加してもよい。
【0055】
乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、重合性モノマーを水性媒体に添加して、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により水性媒体に分散させることで、乳化液を得ることができる。
【0056】
水性媒体としては、水、又は水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれを用いてもよい。
【0057】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0058】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0059】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0060】
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0061】
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、重合性モノマーの重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0062】
乳化液は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、重合性モノマーに予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、重合開始剤と重合性モノマーとを別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。
【0063】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、例えば、重合性モノマー100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用することができる。
【0064】
乳化液は、シード粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を含んでいてもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)及びポリビニルピロリドンが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、重合性モノマー100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0065】
その他、乳化液は、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤を含むことで、重合性モノマーが乳化液中で乳化重合するのを防ぐことができる。
【0066】
シード粒子を乳化液へ添加した後、シード粒子を膨潤させて重合性モノマーを吸収させる。この吸収は、通常、シード粒子を添加した後の乳化液を、室温で1〜24時間撹拌することで行うことができる。また、乳化液を30〜50℃程度に加温することにより重合性モノマーの吸収を促進することができる。
【0067】
シード粒子は、重合性モノマーを吸収することにより膨潤する。シード粒子に対する重合性モノマーの混合割合は、特に制限されないが、例えば、所望の平均粒子径を有するポリマー粒子を効率的に作製する観点から、シード粒子100質量部に対して800質量部以上又は1500質量部以上であってよい。一方、例えば、水性媒体中で重合性モノマーが独自に懸濁重合することを抑制し、目的とする平均粒子径を有するポリマー粒子を効率的に作製する観点から、重合性モノマーの混合割合は、シード粒子100質量部に対して100000質量部以下又は35000質量部以下であってよい。なお、重合性モノマーのシード粒子への吸収が終了したか否かは、光学顕微鏡を用いてシード粒子を観察して粒径の拡大を確認することにより判定できる。
【0068】
続いて、シード粒子に吸収させた重合性モノマーを重合させることで、ポリマー粒子を得ることができる。
【0069】
重合温度は、重合性モノマーの種類に応じて、適宜選択することができるが、例えば、25〜110℃又は50〜100℃であってよい。重合反応は、シード粒子が充分に膨潤し、重合性モノマーが充分に吸収され、重合開始剤を用いる場合には当該重合開始剤が充分に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。シード重合が終了した後は、必要に応じて重合液から遠心分離又はろ過により水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥することでポリマー粒子が単離される。
【0070】
なお、ポリマー粒子は、例えば、多孔構造を有する粒子(多孔質粒子)であってもよい。多孔質粒子を得る場合、シード重合における重合時に相分離を促し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、重合性モノマーに対して不活性であり、水性媒体に対して不溶性又は難溶性の(例えば、水への25℃における溶解度が3%以下の)有機溶媒を用いることができる。
【0071】
このような有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等の脂肪族又は芳香族エステル、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素など、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、ヘキサン、オクタン、デカン、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール等の難溶性アルコール類などが挙げられる。
【0072】
これらは得られる重合体の基となる重合性モノマーの種類によって適宜選択でき、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
これらの有機溶媒の配合量は、重合反応を安定化させ、所望の多孔質粒子が得られる観点から、重合性モノマー100質量部に対して5〜300質量部、20〜200質量部又は50〜100質量部であってよい。
【0074】
上述した方法により得られたポリマー粒子は、カラム充填剤としてSFC用カラムに充填される。
図1は、SFC用カラムの一実施形態を示す図である。
図1に示されるSFC用カラム10は、カラム本体部11と、接続部12と、上述した本実施形態に係るカラム充填剤13とを備えている。接続部12は、カラム本体部11をSFC装置に接続するために、カラム本体部11の両端に配置される。カラム充填剤13は、筒状のカラム本体部11に充填されている。カラム本体部11及び接続部12の材質は、特に制限されず、ステンレスであってもよく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂であってもよいが、カラムの耐圧性の観点から、ステンレスであることが好ましい。
【0075】
本実施形態に係るSFC用カラム10は、上述した本実施形態に係るポリマー粒子を含むカラム充填剤13をカラム本体部11に充填する工程を経て製造される。
【0076】
カラム充填剤13を上記SFC用カラム10におけるカラム本体部11に充填する際に用いる溶媒としては、ポリマー粒子(カラム充填剤)が分散する溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、THF、アセトニトリル、クロロホルム、エチレングリコール及び流動パラフィンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を任意の割合で組み合わせて用いることができる。
【0077】
カラム充填剤13を上記SFC用カラム10に充填する際のカラム充填圧は、より良好なピーク形状が得られるとともに、耐久性にも充分に優れたカラムを製造する観点から、例えば、10MPa以上又は15MPa以上となるようにしてもよい。カラム充填圧は、カラム充填剤13の変形及びカラムの破損を抑制する観点から、例えば、60MPa以下又は50MPA以下となるようにしてもよい。
【0078】
上述した本実施形態に係るSFC用カラムは、遊離脂肪酸等の分析及び農薬等の分析及びその分取に特に適している。また、繰り返し分析に対する耐久性にも優れる。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、本実施形態に係るカラム充填剤を充填したカラムは、SFC用カラムの他、例えば、液体クロマトグラフィー用カラムとしても好適に使用できる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
<シード粒子の合成>
500mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル70g、オクタンチオール2.1g、及びイオン交換水370gを入れ、窒素でバブリングするとともに撹拌羽根で攪拌しながら30℃で1時間保温した。その後、ペルオキソ二硫酸カリウム0.875g及びイオン交換水30gを加え、70℃で6時間反応させ、シード粒子を形成させた。反応液を冷却した後、反応液中の塊状物及び微粒子を除去して、シード粒子のスラリー(固形分濃度:3.5質量%)を得た。塊状物は、目開き75μmの篩を用いて取り除いた。微粒子は、塊状物を取り除いた後の反応液(篩を通過したスラリー)を遠心脱水機で処理し、デカンテーションで上澄み液を廃棄することにより取り除いた。
【0082】
得られたスラリー中のシード粒子の平均粒子径及び粒子径のCV値(変動係数)を、粒度分布測定機(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:MT−3300EX II)で粒度分布を測定することにより算出した。得られたシード粒子の平均粒子径は750nmであり、CV値は、6.4%であった。
【0083】
<ポリマー粒子の合成>
2Lのセパラブルフラスコに、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン(純度94%)100g、有機溶媒としてトルエン36g及びジエチルベンゼン36gを仕込んで得られた混合物に、重合開始剤として過酸化ベンゾイル7.0gを溶解させた。次いで、イオン交換水1240g、エタノール96g及び界面活性剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミンを40質量%含む水溶液32g、並びに重合禁止剤としてアスコルビン酸0.12gをさらに加えた後、超音波ホーンで10分間超音波分散させて乳化液を得た。得られた乳化液に、撹拌羽根で攪拌しながら、シード粒子スラリー77gとイオン交換水27gとを加え、30℃で24時間保温した。次いで、分散安定剤としてポリビニルアルコールを6質量%含む水溶液120gを加え、窒素でバブリングしながら80℃で8時間重合させた後、冷却した。得られた粒子を、イオン交換水/メタノール混合液、アセトンで洗浄した後、目開き5μmの篩で湿式分級して凝集物を除去した。凝集物を除去した後のスラリーから粒子をろ別し乾燥することにより、ポリマー粒子を得た。重合性モノマー全質量を基準としたジビニルベンゼンの質量割合から算出された架橋ポリマーの架橋度は、94%であった。また、得られたポリマー粒子の平均粒子径及び粒子径のCV値(変動係数)を、粒度分布測定機(ベックマンコールター社製、商品名:マルチサイザー4e)で粒度分布を測定することにより算出した。得られたポリマー粒子の平均粒子径は3.1μmであり、CV値は18%であった。
【0084】
得られたポリマー粒子について、テトラヒドロフラン(THF)を吸収したときの膨潤度及びメタノールを吸収したときの膨潤度を以下の方法にしたがって測定した。まず、真空乾燥機で60℃、3時間以上乾燥させたポリマー粒子1gを10mlメスシリンダに投入し、20回以上タッピングして静置した後、ポリマー粒子の見かけ上の体積(Vd ml)を、メスシリンダの目盛を読み取ることで測定した。その後、当該メスシリンダに、ポリマー粒子と溶媒とを合わせた総量が10mlとなるように上記溶媒を添加した。室温(20℃)で24時間以上静置した後、メスシリンダの底部に堆積したポリマー粒子の見かけ上の体積(Vw ml)を、メスシリンダの目盛を読み取ることで測定し、次式により膨潤度(S)を算出した。
S=Vw/Vd
テトラヒドロフラン(THF)を吸収したときの膨潤度は1.32であり、メタノールを吸収したときの膨潤度は1.31であった。実施例1のポリマー粒子(充填剤)の性状を表1にまとめて示す。
【0085】
<SFC用カラムの作製>
100mLビーカに上記で得られたポリマー粒子1.3gと、THF12.7gとを添加し、超音波処理をしながら粒子を分散混合し、充填用スラリーを調製した。次いで、4.6mmφ×150mmのステンレスカラムを取り付けたステンレスパッカーに充填用スラリーを流し込み、密閉した後、プランジャー式充填ポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名:PU713ポンプ)で18MPaに加圧することにより、カラム内にポリマー粒子を充填し、SFC用カラムを作製した。
【0086】
<特性評価>
上記で作製したSFC用カラムをSFC装置に取り付け、下記の条件で遊離脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びエイコサン酸各1mg/Lの混合物)の分析を行った。また、カラムの耐久性を確認するため、分析は繰り返し行った。
図2に、10回目の分析を行った際の分析結果を示す。繰り返し分析を行った場合でも、ミリスチン酸のピーク1、パルミチン酸のピーク2、ステアリン酸のピーク3及びエイコサン酸のピーク4は、いずれも良好な形状を有しており、耐久性も良好であることが示された。
【0087】
[分析条件]
移動相A液:CO
2
移動相B液:2−プロパノール
グラジエント条件:0→8分:B液5%→60%、8→12分:B液60%→5%
カラム温度:40℃
流速:1.5mL/分
背圧:15MPa
注入量:1μL
検出器:質量分析計(株式会社島津製作所製、商品名:LCMS−8060)
【0088】
(実施例2)
<シード粒子の合成>
実施例1と同様の方法によりシード粒子を合成した。
【0089】
<ポリマー粒子の合成>
3Lのセパラブルフラスコに、架橋性モノマーとしてグリセロールジメタクリレート(純度93%)81g、有機溶媒として酢酸ブチル73g及びイソアミルアルコール48gを仕込んで得られた混合物に、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを溶解させた。次いで、イオン交換水1530g、及び界面活性剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミンを40質量%含む水溶液12gをさらに加えた後、超音波ホーンで10分間超音波分散させて乳化液を得た。得られた乳化液に、撹拌羽根で攪拌しながら、シード粒子スラリー14gとイオン交換水122gとを加え、30℃で1時間保温した。次いで、分散安定剤としてポリビニルアルコールを6質量%含む水溶液121gを加え、窒素でバブリングしながら78℃で5時間重合させた後、冷却した。得られた粒子を、イオン交換水、イオン交換水/メタノール混合液、メタノールで洗浄した後、目開き5μmの篩で湿式分級して凝集物を除去した。凝集物を除去した後のスラリーから粒子をろ別し乾燥することにより、ポリマー粒子を得た。重合性モノマー全質量を基準としたグリセロールジメタクリレートの質量割合から算出されたポリマー粒子の架橋度は、93%であった。また、得られたポリマー粒子の平均粒子径及び粒子径のCV値(変動係数)を、粒度分布測定機(ベックマンコールター社製、商品名:マルチサイザー4e)で粒度分布を測定することにより算出した。得られたポリマー粒子の平均粒子径は3.5μmであり、CV値は7%であった。
【0090】
得られたポリマー粒子の膨潤度を実施例1と同様の方法で測定したところ、テトラヒドロフラン(THF)を吸収したときの膨潤度は1.05であり、メタノールを吸収したときの膨潤度は1.37であった。実施例2のポリマー粒子(充填剤)の性状を表1にまとめて示す。
【0091】
<SFC用カラムの作製>
100mLビーカに上記で得られたポリマー粒子2.4gと、超純水13.6gとを添加し、超音波処理をしながら粒子を分散混合し、充填用スラリーを調製した。次いで、4.6mmφ×150mmのステンレスカラムを取り付けたステンレスパッカーに充填用スラリーを流し込み、密閉した後、プランジャー式充填ポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名:PU713ポンプ)で18MPaに加圧することにより、カラム内にポリマー粒子を充填し、SFC用カラムを作製した。
【0092】
<特性評価>
上記で作製したSFC用カラムをSFC装置に取り付け、下記の条件で各100μg/Lの濃度のチオファノックススルホン、カルボフラン及びプロポキスルを含む混合試料の分析を行った。また、カラムの耐久性を確認するため、分析は繰り返し行った。1回目の分析を行った際のチオファノックススルホン、カルボフラン及びプロポキスルの分析結果を、それぞれ
図3(a)〜(c)に示す。また、繰り返し分析後(20回目)のそれぞれの分析結果を
図3(d)〜(f)に示す。チオファノックススルホンのピーク5、カルボフランのピーク6及びプロポキスルのピーク7の形状は、繰り返し分析を行った場合でも良好であった。
【0093】
[分析条件]
移動相A液:CO
2
移動相B液:メタノール
グラジエント条件:0→10分:B液5%→80%、10→13分:B液80%→5%
カラム温度:40℃
流速:2.0mL/分
背圧:15MPa
注入量:1μL
検出器:質量分析計(株式会社島津製作所製、商品名:LCMS−8060)
【0094】
<特性評価>
上記で作製したSFC用カラムをSFC装置に取り付け、下記の条件で以下の農薬混合標準溶液(林純薬工業株式会社製、商品名:PL2005 Pesticide GC−MS Mix I,II,III,IV,V,VI,7と、PL2005 Pesticide LC−MS Mix I,II,III,4,5,6,7,8,9,10と、53 Polar Pesticides Mix(for STQ method))の一斉分析を行った。また、カラムの耐久性を確認するため、分析は繰り返し行った。
図4(a)に、14回目の繰り返し分析の際のクロマトグラムを示し、
図4(b)及び(c)に、上記農薬の成分の1種であるジクロルボス及びメタクリフォスのピークを示す。繰り返し分析を行った場合でも、上記農薬におけるいずれの成分も分析可能で、耐久性も良好であった。特に、農薬成分の1種であるジクロルボスのピーク8及びメタクリフォスのピーク9の形状は、いずれも良好であった。
【0095】
[分析条件]
移動相A液:CO
2
移動相B液:2−プロパノール
グラジエント条件:0→20分:B液2%→80%、20→25分:B液80%、25→30分:B液80%→2%
カラム温度:40℃
流速:0.35mL/分
背圧:15MPa
注入量:1μL
検出器:質量分析計(株式会社島津製作所製、商品名:LCMS−8060)
【0096】
(比較例1)
<ポリマー粒子の合成>
重合開始剤として過酸化ベンゾイル14g、重合性モノマーとしてスチレン59g、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン(純度60%)48g、並びに有機溶媒としてトルエン46g、ジエチルベンゼン46g及びドデカン16gを、溶媒(0.1%メチルセルロース水溶液725mL、10%第3リン酸カルシウムスラリー730mL、1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.06mL)に分散し、ホモジナイザーで30分間処理し、平均粒子径7μm程度の油滴を調製した。この液を撹拌しながら80℃に昇温し、7時間重合を行った。重合終了後、塩酸を添加し第3リン酸カルシウムを溶解した。その後水及びメタノールで洗浄し、粒子を目開き10μm及び5μmの篩で湿式分級して10μm以上の粒子、5μ以下の粒子を除去した。この粒子をろ別し乾燥することにより、ポリマー粒子を得た。得られたポリマー粒子の架橋度を算出したところ、27%であった。また、得られたポリマー粒子の平均粒子径は7.1μmであり、CV値は25%であった。
【0097】
得られたポリマー粒子の膨潤度を実施例1と同様の方法で測定したところ、テトラヒドロフラン(THF)を吸収したときの膨潤度は2.26であり、メタノールを吸収したときの膨潤度は1.93であった。比較例1のポリマー粒子(充填剤)の性状を表1にまとめて示す。
【0098】
<SFC用カラムの作製>
100mLビーカに上記で得られたポリマー粒子1.3gと、THF7.1gとを添加し、超音波処理をしながら粒子を分散混合し、充填用スラリーを調製した。次いで、4.6mmφ×150mmのステンレスカラムを取り付けたステンレスパッカーに充填用スラリーを流し込み、密閉した後、プランジャー式充填ポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名:PU713ポンプ)で3.2MPaに加圧することにより、カラム内にポリマー粒子を充填し、SFC用カラムを作製した。
【0099】
<特性評価>
上記で作製したSFC用カラムをSFC装置に取り付け、実施例1と同様の条件で脂肪酸分析を行った。
図5(a)に、1回目の分析を行った際の分析結果を示し、
図5(b)に11回目の分析を行った際の分析結果を示す。
図5(a)に示すように、1回目の分析であっても、ミリスチン酸のピーク1、パルミチン酸のピーク2、ステアリン酸のピーク3及びエイコサン酸のピーク4は、いずれもブロードな形状となり、それぞれのピークが重なった状態が観察された。さらに
図5(b)に示すように、繰り返し分析によりピークがよりブロードとなるとともに、ピークの割れ及びノイズが発生し、耐久性も不良であることが示された。
【0100】
(比較例2)
<ポリマー粒子の合成>
重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル6g、重合性モノマーとしてNKエステルM−90G(新中村化学工業株式会社製、商品名)を480g及び架橋性モノマーとしてNKエステルA−TMM−3L(新中村化学工業株式会社製、商品名)を720g、並びに有機溶媒として酢酸n−ブチル1000g及びn−オクタン40gを、溶媒(0.1%メチルセルロース水溶液14.6L、10%第3リン酸カルシウムスラリー5.5L、1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液1mL)に分散し、ホモジナイザーで30分間処理し、平均粒子径9μm程度の油滴を調製した。この液を撹拌しながら80℃に昇温し、7時間重合を行った。重合終了後、塩酸を添加し第3リン酸カルシウムを溶解した。その後水及びメタノールで洗浄し、目開き10μm及び8μmの篩で湿式分級して10μm以上の粒子、8μm以下の粒子を除去した。この粒子をろ別し乾燥することにより、ポリマー粒子を得た。得られたポリマー粒子の架橋度を算出したところ、60%であった。また、得られたポリマー粒子の平均粒子径は9.4μmであり、CV値は12%であった。
【0101】
得られたポリマー粒子の膨潤度を実施例1と同様の方法で測定したところ、テトラヒドロフラン(THF)を吸収したときの膨潤度は1.01であり、メタノールを吸収したときの膨潤度は1.47であった。比較例1のポリマー粒子(充填剤)の性状を表1にまとめて示す。
【0102】
<SFC用カラムの作製>
100mLビーカに上記で得られたポリマー粒子2.5gと、アセトニトリル8.4g、水8.4gとを添加し、超音波処理をしながら粒子を分散混合し、充填用スラリーを調製した。次いで、4.6mmφ×150mmのステンレスカラムを取り付けたステンレスパッカーに充填用スラリーを流し込み、密閉した後、プランジャー式充填ポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名:PU713ポンプ)で7MPaに加圧することにより、カラム内にポリマー粒子を充填し、SFC用カラムを作製した。
【0103】
<特性評価>
上記で作製したSFC用カラムをSFC装置に取り付け、実施例2と同様の条件でチオファノックススルホン、カルボフラン及びプロポキスルの分析を行った。1回目の分析を行った際のチオファノックススルホン、カルボフラン及びプロポキスルの分析結果を、それぞれ
図6(a)〜(c)に示す。また、繰り返し分析後(22回目)のそれぞれの分析結果を
図6(d)〜(f)に示す。
図6(d)〜(f)に示されるように、チオファノックススルホンのピーク5、カルボフランのピーク6及びプロポキスルのピーク7の形状は、繰り返し分析後にブロードな形状となり、耐久性が不良であることが示された。
【0104】
(比較例3)
市販のシリカ粒子(株式会社島津製作所製、商品名:Shim−pack UC−RP,P/N 227−30403−01、粒子径:5μm)を用いて、下記条件で実施例3と同様の農薬試料を分析した。
図7(a)及び(b)に、上記分析を行った際の上記農薬成分の1種であるジクロルボス及びメタクリフォスのピークを示す。ジクロルボスのピーク8及びメタクリフォスのピーク9は、いずれもピークの割れが認められ、良好な分析ができないことが認められた。
【0105】
[分析条件]
移動相A液:CO
2
移動相B液:メタノール
グラジエント条件:0→12分:B液5%→10%、12→20分:B液10%→80%、20→25分:B液80%、25→30分:B液80%→5%
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
背圧:15MPa
注入量:1μL
検出器:質量分析計(株式会社島津製作所製、商品名:LCMS−8060)
【0106】
【表1】