(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
面圧10MPaにて圧縮した際の、圧縮された曲げ部における前記フープ部材の曲げ角度α’が40°から120°であり、かつ該圧縮された曲げ部における該フープ部材の曲率半径r’が0.1mmから0.6mmである、請求項1から4のいずれかに記載のうず巻形ガスケット。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について図面を用いて詳述する。
【0019】
図1は、本発明のうず巻形ガスケットの一例を模式的に示す図である。
【0020】
図1の(a)に示すように、本発明のうず巻形ガスケット100(以下、単に「ガスケット100」ということがある)は、金属製フープ部材102とフィラ部材104との重ね合わせを、中心に開口部110を有するように巻回しかつ一体化させることにより構成されている。なお、
図1の(a)では、フープ部材102は、ガスケット100の外周および内周にて示されているが、後述するように、上記巻回を通じて、ガスケット面120において、フィラ部材104の端部はフープ部材102の端部よりも突出し、ガスケット面120の内部においてフィラ部材104の間に埋包された状態で配置されている。
【0021】
フープ部材102は、例えば、ステンレス鋼、鉄、ニッケル、アルミニウム等の金属で構成された、好ましくは1本の薄帯板である。入手が容易であり、かつ強度および耐熱性を備えているという理由から、フープ部材102はステンレス鋼で構成されていることが好ましい。さらに、フープ部材102の厚みは必ずしも限定されないが、例えば0.1mm〜0.2mm、好ましくは0.1mm〜0.15mmである。
【0022】
フィラ部材104は、ガスケット100内で巻回したフープ部材102の間に配置されている。フィラ部材104は、例えば、膨張黒鉛、無機ペーパー(例えば、ロックウール、セラミックファイバー等の無機繊維を含有する)、および多孔質四フッ化エチレン、ならびにそれらの組み合わせの材料で構成された、好ましくは1本のテープ状のシートである。比較的低密度であってもガスケット100に高いシール性を提供することができ、かつそれ自体が優れた耐熱性を有するという理由から、フィラ部材104は膨張黒鉛で構成されていることが好ましい。
【0023】
フィラ部材104はまた、好ましくは1.0g/cm
3〜1.2g/cm
3の密度を有する。フィラ部材104がこのような範囲内の密度を有することにより、圧縮量の大きいガスケット100とすることができる。
【0024】
ガスケット100の中央には、継手からの液体流または気体流が通過可能な開口部110が設けられている。開口部110は、好ましくは略円形または略楕円形状の形状を有する。開口部110の直径は、ガスケット100が取り付けられる配管の内径に応じて適宜設定される。
図1の(a)に示す実施形態において、ガスケット100はこのような開口部110を中心にして、フープ部材102とフィラ部材104とが径方向に重ね合わさり(すなわち、積層され)かつこれらに所定の荷重(巻上げ荷重)を負荷しながら、任意の回数をもって巻回することにより、複数のフープ部材102の層の端部と複数のフィラ部材104の層の端部とで構成されるガスケット面120がガスケット100の厚み方向の両端側の各々に形成されている。
【0025】
ガスケット面120の径方向の幅は、必ずしも限定されないが、例えば4mm〜10mm、好ましくは5mm〜8mmである。
【0026】
図1の(b)は、上記
図1の(a)に示すガスケット100のA−A方向断面図である。
【0027】
図1の(b)に示す実施形態では、ガスケット100は、開口部110の外周側にフープ部材102とフィラ部材104との重ね合わせ部分(
図1の(b)では、径方向において各々が3重の重ね合わせを有する)が設けられている。
図1の(b)において、フープ部材102はガスケット100の厚み方向に沿って、1つの曲げ部(屈曲部)112を備え、これによりV字状の断面を有する。
【0028】
ガスケット100は、ガスケット面120において、フィラ部材104の端部がフープ部材102の端部よりも突出している。つまり、ガスケット面120は、フープ部材102の端部からはみ出したフィラ部材104の端部で構成されている。このようなフィラ部材104の端部の突出による特徴は、好ましくはガスケット100におけるガスケット面120の両端面(すなわち、
図1の(b)の上側面と下側面)にて現れている。
【0029】
図2は、
図1の(b)に示すガスケット100の一部拡大断面図である。
【0030】
図2に示す複数周回巻き回されたフープ部材102において、曲げ部112,112b,112c,112dは、ガスケット100の厚み方向において、好ましくは互いに略同一の高さとなるように設けられている。また、隣り合うフープ部材102の各最短距離(すなわち、曲げ部112から曲げ部112bまでの最短距離、曲げ部112bから曲げ部112cまでの最短距離、および曲げ部112cから曲げ部112dまでの最短距離;これらは各フィラ部材104の厚みに相当する)は、好ましくは略同一である。
【0031】
ここで、本発明のうず巻形ガスケットが、継手に設けられたフランジ間で高いシール性を有するためには、フランジを締め付けた際に、当該締め付けに伴ってガスケットが充分な圧縮量を伴って圧縮され得ること(すなわち、ガスケットの締め付け荷重に対してガスケットが充分に変形可能であること)が重要であると考えられる。そして、本発明のガスケットが充分な圧縮量を有するためには、ガスケットを構成するフープ部材およびフィラ部材のそれぞれが、高い圧縮量を有すること(すなわち、ガスケットの締め付け荷重に対してフープ部材およびフィラ部材の変形量がそれぞれ大きいこと)ことが必要となるとも考えられる。
【0032】
このような観点から、まず、フープ部材102の圧縮量を高める点について検討する。
【0033】
図3は、
図1の(b)に示すガスケット100から取り出したフープ部材102の断面図である。
【0034】
図3に示すフープ部材102は、曲げ部112で2つのフープ直線部114,116が屈曲するように構成されている。そして、フープ直線部114,116は略同じ長さLを有することが好ましい。言い換えれば、曲げ部112は好ましくはフープ直線部114,116の中央に位置するように設けられている。また、
図3では、曲げ部112はフープ直線部114,116によって角度αが形成され、そして曲げ部112は曲率半径rを有するように記載されている。ここで、本明細書中に用いられる用語「曲率半径r」は、曲げ部を構成するフープ部材の内側曲線から導き出される曲率半径を言い、曲げ部における仮想円の中心Oからフープ直線部114または116に下ろした垂線との交点までの距離に相当する。さらに、用語「フープ部材の内側曲線」とは、曲げ部にて交差する2つのフープ直線部114,116がなす角度のうち、鋭角または鈍角が形成された側(内周側)のフープ部材102の表面(内周面)から得られる曲線と言い、曲げ部にて交差する2つのフープ直線部114,116がなす角度のうち、優角が形成された側(外周側)のフープ部材102の表面(外周面)から得られる曲線(フープ部材の外側曲線)とは区別される。
【0035】
フープ部材102の圧縮量を高めるためには、ガスケット100を構成するフープ部材102に作用する曲げモーメントを大きく、かつ曲げ部に生じる応力集中を大きくして塑性変形させることが有効である。すなわち、フープ部材102に作用する曲げモーメントを大きくするには、フープ直線部114、116におけるガスケット100の半径方向の長さL
x=L×cos(α/2)を大きくすればよく、かつ曲げ部112に生じる応力集中を大きくするには、曲げ部112の曲率半径rを小さくすればよい。このことから、仮に、フープ直線部114,116の長さLが固定されている場合は、(当該L
xを大きくするために)フープ部材102の曲げ部112の角度αを小さく、かつ曲率半径rを小さくすれば、フープ部材102に作用する曲げモーメントを大きくすることが達成され得る。
【0036】
次に、フィラ部材104の圧縮量を高める点について検討する。
【0037】
フィラ部材104の圧縮量を高めるためには、ガスケット100の締め付け前の状態において、フィラ部材104の密度が小さく、ガスケット100の締め付けによってフィラ部材104の密度を変動させることが有効である。これは、例えば、フープ部材102とフィラ部材104との重ね合わせを巻回する際に負荷される巻上げ荷重を小さくすることにより達成され得る。
【0038】
このようにして、フープ部材102およびフィラ部材104のそれぞれについての圧縮量を向上させることが可能である。
【0039】
しかし、フープ部材102の曲げ部112の角度αおよび/または曲率半径rが小さく、かつガスケット100の巻上げ荷重が小さ過ぎると、フィラ部材104がフープ部材の形状102に追従するように変形することができない場合が想定され、その場合に、例えば、曲げ部112にてフープ部材102とフィラ部材104との間に隙間が生じるおそれがある。そして、当該隙間がガスケット100内に多数存在すると、それらがシール対象の流体の漏れ経路となって漏洩の原因になることが考えられる。
【0040】
これに対し、本発明者は、締付け時のガスケット100の圧縮量を低下させず、かつフープ部材102とフィラ部材104との間に隙間を生じさせないための特定の条件を、曲げ部の角度αおよび曲率半径rを用いて見出した。
【0041】
すなわち、ガスケット100では、そのままの状態(すなわち、圧縮していない状態)において、曲げ部を構成する角度がα(°)であり、かつ該曲げ部の曲率半径がr(mm)である場合に、以下の式(I):
【0043】
で表されるVが0.5〜2.4、好ましくは0.6〜1.8の範囲内にある。上記式(I)で表されるVがこのような範囲内を満足することにより、ガスケット100は、フープ部材102およびフィラ部材104のそれぞれに対する圧縮量を向上させるとともに、曲げ部112等にてフープ部材102とフィラ部材104との間に隙間が生じることを防止する。その結果、ガスケット100は充分な圧縮量を伴って圧縮され得、継手に設けられたフランジ間に高いシール性を提供することができる。
【0044】
なお、ガスケット100では、上記のような継手に設けられたフランジ間に高いシール性を提供することができるとの理由から、
図3に示す曲げ部112の角度αは、好ましくは鋭角または鈍角であり、より好ましくは鈍角であってもよい。あるいは、ガスケット100において、
図3に示す曲げ部112の角度αは、好ましくは80°〜140°、より好ましくは90°〜130°を有していてもよい。
【0045】
また、ガスケット100では、上記のような継手に設けられたフランジ間に高いシール性を提供することができるとの理由から、
図3に示す曲げ部112の曲率半径rは、好ましくは0.2mm〜1.2mm、より好ましくは0.3mm〜0.9mmを有していてもよい。
【0046】
さらに、ガスケット100では、例えば、面圧10MPaにて圧縮した状態では、当該圧縮された曲げ部112の角度α’が好ましくは40°〜120°、より好ましくは50°〜110°を有する。なお、ガスケット100において、当該角度α’は圧縮前の曲げ部112の角度αよりも小さく(α’<α)なるように設計されている。またさらに、ガスケット100では、例えば、面圧10MPaにて圧縮した状態では、当該圧縮された曲げ部112の曲率半径r’が好ましくは0.1mm〜0.6mm、より好ましくは0.1mm〜0.3mmを有する。なお、本発明において、当該曲率半径r’は圧縮前の曲げ部112の半径rよりも小さい(r’<r)。本発明では、当該圧縮された曲げ部112の角度α’および曲率半径r’のそれぞれが、これらの関係を満たしていることにより、フープ部材102の圧縮量が向上するとともに、曲げ部112等にてフープ部材102とフィラ部材104との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0047】
ガスケット100は、全体として好ましくは2.1g/cm
3〜2.4g/cm
3の密度を有する。ガスケット全体の密度がこのような範囲を満足することにより、フープ部材102としてステンレス鋼およびフィラ部材104として膨張黒鉛を用いた場合に圧縮量の大きいガスケット100を作製することができる。
【0048】
図4は、本発明のうず巻形ガスケットの他の例を模式的に示す断面図である。
【0049】
図4に示す実施形態では、本発明のうず巻形ガスケット200(以下、単に「ガスケット200」ということがある)は、開口部210の外周側にフープ部材202とフィラ部材204との重ね合わせ部分(
図4では、径方向において各々が3重の重ね合わせを有する)が設けられている。
図4において、フープ部材202はガスケット200の厚み方向に沿って3つの曲げ部(屈曲部)(すなわち、
図4に示す上方から下方にかけて、第1の曲げ部212、第2の曲げ部214、および第3の曲げ部216)を有し、全体としてW字状の断面を有する。
【0050】
図5は、
図4に示すガスケット200の一部拡大断面図である。
【0051】
図5に示す複数周回巻き回されたフープ部材202において、第1の曲げ部212,212b,212c,212dは、ガスケット200の厚み方向において、好ましくは互いに略同一の高さとなるように設けられている。また、第2の曲げ部214,214b,214c,214dもまた、ガスケット200の厚み方向において、好ましくは互いに略同一の高さとなるように設けられている。さらに、第3の曲げ部216,216b,216c,216dもまた、ガスケット200の厚み方向において、好ましくは互いに略同一の高さとなるように設けられている。
【0052】
一方、隣り合うフープ部材202の第1の曲げ部の最短距離(すなわち、第1の曲げ部212から第1の曲げ部212bまでの最短距離、第1の曲げ部212bから第1の曲げ部212cまでの最距離、および第1の曲げ部212cから第1の曲げ部212dまでの最短距離)は、好ましくは略同一である。また、隣り合うフープ部材202の第2の曲げ部の最短距離(すなわち、第2の曲げ部214から第2の曲げ部214bまでの最短距離、第2の曲げ部214bから第2の曲げ部214cまでの最距離、および第2の曲げ部214cから第2の曲げ部214dまでの最短距離)は、好ましくは略同一である。さらに、隣り合うフープ部材202の第3の曲げ部の最短距離(すなわち、第3の曲げ部216から第3の曲げ部216bまでの最短距離、第3の曲げ部216bから第3の曲げ部216cまでの最距離、および第3の曲げ部216cから第3の曲げ部216までの最短距離)は、好ましくは略同一である。
【0053】
図6は、
図4に示すガスケット200から取り出したフープ部材202の断面図である。
【0054】
図6に示すフープ部材202は、第1の曲げ部212で2つのフープ直線部218,220が屈曲し、第2の曲げ部214で2つのフープ直線部220,222が屈曲し、そして第3の曲げ部216で2つのフープ直線部222,224が屈曲するように設けられている。そして、フープ直線部218,220,222,224の各長さは、好ましくは以下のいずれか:
(1)フープ直線部218,220,222,224の各長さが、互いに略同一である;
(2)フープ直線部218,224の各長さが互いに略同一であり、そしてフープ直線部220,222の各長さが互いに略同一である;
(3)フープ直線部218,220の各長さが互いに略同一であり、そしてフープ直線部222,224の各長さが互いに略同一である。
の関係を有する。
【0055】
また、
図6に示すフープ部材202では、第1の曲げ部212は、フープ直線部218,220によって角度α
1が形成され、そして第1の曲げ部212は、中心O
1を仮想円の中心とする、曲率半径r
1を有するように形成されている。また、第2の曲げ部214は、フープ直線部220,222によって角度α
2が形成され、そして第2の曲げ部214は、中心O
2を仮想円の中心とする、曲率半径r
2を有するように形成されている。さらに、第3の曲げ部216は、フープ直線部222,224によって角度α
3形成され、そして第3の曲げ部216は、中心O
3を仮想円の中心とする、曲率半径r
3を有するように形成されている。
【0056】
なお、本発明においては、角度α
1、α
2、およびα
3はそれぞれが独立しており、好ましくは80°〜140°、より好ましくは90°〜130°である。角度α
1、α
2、およびα
3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
本発明においては、曲率半径r
1、r
2、およびr
3はそれぞれが独立しており、好ましくは0.2mm〜1.2mm、より好ましくは0.3mm〜0.9mmである。曲率半径r
1、r
2、およびr
3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
本発明では、
図6に示すフープ部材202を構成する角度と曲率半径との組み合わせ(すなわち、α
1とr
1との組み合わせ;α
2とr
2との組み合わせ;ならびにα
3とr
3との組み合わせ)のうち、いずれか1つの組み合わせを、角度α(°)および曲率半径r(mm)として表した場合、
図4に示すガスケット200もまた、以下の式(I):
【0060】
で表されるVが0.5〜2.4、好ましくは0.6〜1.8の範囲内にあるように構成されている。上記式(I)で表されるVがこのような範囲内を満足することにより、
図4に示すガスケット200もまた、フープ部材202およびフィラ部材204のそれぞれに対する圧縮量を向上させるとともに、例えば、第1の曲げ部212等においてフープ部材202とフィラ部材204との間に隙間が生じることを防止する。その結果、ガスケット200は充分な圧縮量を伴って圧縮され得、継手に設けられたフランジ間に高いシール性を提供することができる。
【0061】
図7は、
図1の(b)に示すガスケット100を配管継手に配置した状態を模式的に説明するための断面図である。
【0062】
ガスケット100は、例えば、2つの配管継手712,714のフランジ間に配置される。その後、配管継手712,714のフランジに設けられた孔716,718にボルトを通してフランジをナットで締め付けて固定することにより、ガスケット100は配管継手712,714のフランジに対して馴染み性を奏し、かつ配管継手712,714の間の接続に高いシール性を付与することができる。
【0063】
なお、上記実施形態の説明において、
図1〜
図7には、フープ部材102,202の断面V字またはW字の曲げ部112〜112d,212〜212d,216〜216dが外径側に変位する曲げ形状を示したが、本発明のうず巻形ガスケットは、例えば、
図8に示すように、曲げ部312,312b,312c,312dが内径側に変位するガスケット300の形態を有していてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0065】
(実施例1:W字の断面形状を有するフープ部材を用いた試験ガスケットの作製と評価)
厚み0.13mmおよび幅7.1mmのSUS304帯鋼を絞り加工することにより、断面形状が、表1に示す曲げ部の角度および曲率半径を有し、かつW字状であるフープ部材を作製した。なお、作製したW字の断面形状を有するフープ部材は、
図6に示す角度α
1、α
2およびα
3がすべて同一であり、かつフープ直線部218,220,222,224がすべて同一のものであった。このフープ部材の片面に、厚み1.0mmおよび幅7.5mmの膨張黒鉛テープを重ね、加圧ロールにて10kgfの荷重を負荷しながら、うず巻状に3回成巻した試験ガスケットを各フープ部材(曲げ部の角度αおよび曲率半径rの異なる各フープ部材)について複数個ずつ作製した。なお、得られた試験ガスケットでは、中央に直径49mmの開口部を有し、かつ試験ガスケットの外周および内周は上記フープ部材と同様のSUS304帯鋼を用いた補強を行った。その結果、作製された全ての試験ガスケットにおいて、フィラ部材の密度は1.0〜1.2g/cm
3の範囲内であり、そして試験ガスケット全体の密度は2.1〜2.4g/cm
3の範囲内であった。
【0066】
得られた試験ガスケットについて、万能試験機(株式会社島津製作所製UH−300KNA)により、10MPaの面圧で圧縮し、その際の圧縮量(変化量)を
ダイヤルゲージ(株式会社共和電業製DT−20D)にて測定した。各試験ガスケットについて、圧縮量が1.8mm〜2.2mmの範囲内であった場合を「○」と判定し、当該範囲を逸脱する場合を「×」と判定した。得られた結果を「圧」と記載した欄にて表1に示す。
【0067】
その後、各試験ガスケットを直径方向に沿って切断し、フープ部材とフィラ部材との巻回による積層断面の状態を目視で観察した。フープ部材とフィラ部材との間に隙間が確認されなかった場合を「○」と判定し、当該隙間が確認された場合を「×」と判定した。得られた結果を「隙」と記載した欄にて表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、フープ部材の曲げ部の角度αが90°〜130°の範囲内であり、かつ曲率半径rが0.3mm〜0.9mmの範囲内である場合には、太線で囲まれた部分を除く試験ガスケット(表1中、「(i)」のカテゴリーに分類したガスケット)について、1.8mm〜2.2mmの範囲内の適切な圧縮量を有し、かつフープ部材とフィラ部材との間に隙間が生じておらず、ガスケットとして良好なものであると判断した。なお、この良好であると判断されたガスケットはいずれも、V値が0.5〜2.4の範囲内にあることがわかる。
【0070】
これに対し、表1中、「(ii)」のカテゴリーに分類した試験ガスケットは、フープ部材とフィラ部材との間に隙間を生じ、そして表1中、「(iii)」のカテゴリーで分類した試験ガスケットは、圧縮量が目標範囲(1.8mm〜2.2mm)よりも小さくなっていたことがわかる。
【0071】
次いで、上記で得られたカテゴリー(i)、(ii)および(iii)の試験ガスケットをそれぞれ、直径方向に沿って半分に切断した。切断した試験ガスケットについて、万能試験機(株式会社島津製作所製UH−300KNA)により、10MPaの面圧で圧縮し、その圧縮の際のフープ部材の曲げ部の角度α’および曲率半径’を断面観察することにより測定した。
【0072】
当該圧縮の際のカテゴリー(i)の試験ガスケットでは、いずれも曲げ部の角度α’が40°〜120°の範囲内にあり、その曲率半径r’は0.1mm〜0.6mmの範囲内にあった。また、当該圧縮の際のカテゴリー(ii)の試験ガスケットでは、いずれも曲げ部の角度α’が40°〜110°の範囲内にあり、その曲率半径r’は0.1mm〜0.2mmの範囲内にあった。さらに、当該圧縮の際のカテゴリー(iii)の試験ガスケットでは、いずれも曲げ部の角度α’が100°〜130°の範囲内にあり、その曲率半径r’は0.6mm〜1.0mmの範囲内にあった。得られた結果を表2に示す。
【0073】
さらに、カテゴリー(i)の試験ガスケットを、配管継手のFFフランジ間に挟持し、当該フランジを所定の締付け圧力で固定した。次いで、この配管継ぎ手に内圧49kPaで、流体として圧縮空気を通過させ、挟持部分からの漏洩する流体の量(漏洩量)を質量流量計により測定した。流体を通したカテゴリー(i)の試験ガスケットはすべて5cc/分以下の漏洩量を示し、ガスケットとして優れたシール性能を有していることを確認した。得られた結果を表2に示す。
【0074】
さらに、表1にてカテゴリー(ii)または(iii)と記載した試験ガスケットについて、上記と同様にしてFFフランジ間での流体の漏洩量を測定した。カテゴリー(ii)および(iii)の試験ガスケットはいずれも、5cc/分を超える漏洩量を有し、上記(i)の試験ガスケットと比較してシール性能が劣ることを確認した。得られた結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すように、上記で作製された試験ガスケットのうち、V値が0.5〜2.4の範囲内を有するカテゴリー(i)のガスケットは、目標範囲(1.8mm〜2.2mm)の圧縮量を満足し、フープ部材とフィラ部材との間の隙間がなく、かつ優れたシール性能を有することがわかる。
【0077】
(実施例2:V字の断面形状を有するフープ部材を用いた試験ガスケットの作製と評価)
実施例1と同様のSUS304帯鋼を絞り加工することにより、断面形状が、表1に示すような種々の曲げ部の角度および曲率半径を有し、かつV字状であるフープ部材を作製した。なお、作製したV字の断面形状を有するフープ部材は、
図3に示すフープ直線部114,116が同一のものであった。このフープ部材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、試験ガスケットを作製した。
【0078】
得られた試験ガスケットについて、実施例1と同様にして圧縮量を測定しかつ積層断面の状態を観察した。その結果、式(I)より算出されるV値が0.5〜2.4の範囲内にあった試験ガスケットが、1.8mm〜2.2mmの範囲内の適切な圧縮量を有し、かつフープ部材とフィラ部材との間に隙間が生じておらず、良好なものであることを確認した。
【0079】
また、V値が0.5〜2.4の範囲内にあった試験ガスケットについて、実施例1と同様にしてFFフランジ間での流体の漏洩量を測定した。当該範囲内にあった試験ガスケットはいずれも、5cc/分未満の漏洩量を有し、シール性能に優れていることを確認した。
【0080】
(実施例3:フィラ部材を変更した試験ガスケットの作製と評価)
フィラ部材として、膨張黒鉛テープの代わりに、厚み1.0mmおよび幅7.5mmの無機ペーパー(ロックウールを主材料とするもの)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、当該フィラ部材と、断面形状が表1に示すような種々の曲げ部の角度および曲率半径を有し、かつW字状であるフープ部材とを用いた試験ガスケット(RW)を作製した。
【0081】
一方、フィラ部材として、膨張黒鉛テープの代わりに、厚み1.0mmおよび幅7.5mmの無機ペーパー(セラミックファイバーを主材料とするもの)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、当該フィラ部材と、断面形状が表1に示すような種々の曲げ部の角度および曲率半径を有し、かつW字状であるフープ部材とを用いた試験ガスケット(CF)を作製した。
【0082】
得られた試験ガスケット(RW)および(CF)について、実施例1と同様にして圧縮量を測定しかつ積層断面の状態を観察した。その結果、いずれのフィラ部材を用いた場合でも、式(I)より算出されるV値が0.5〜2.4の範囲内にあった試験ガスケットが、1.8mm〜2.2mmの範囲内の適切な圧縮量を有し、かつフープ部材とフィラ部材との間に隙間が生じておらず、良好なものであることを確認した。
【0083】
また、上記試験ガスケット(RW)および(CF)のうち、V値が0.5〜2.4の範囲内にあった試験ガスケットについて、実施例1と同様にしてFFフランジ間での流体の漏洩量を測定した。当該範囲内にあった試験ガスケットはいずれも、実施例1で得られたV値が0.5〜2.4の範囲内を有するカテゴリー(i)のガスケットよりも流体の漏洩量が増加しており、当該カテゴリー(i)のガスケットに匹敵するほどのシール性能は得られなかったことを確認した。