特許第6863844号(P6863844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863844
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】電池昇温システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20210412BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210412BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210412BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20210412BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20210412BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20210412BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20210412BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210412BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20210412BHJP
   B60L 50/50 20190101ALI20210412BHJP
【FI】
   H01M10/633
   H02J7/00 P
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H01M10/615
   H01M10/625
   H01M10/6571
   H01M10/6563
   H01M10/613
   B60L3/00 S
   B60L50/50
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-137260(P2017-137260)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-21447(P2019-21447A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】関谷 泰博
(72)【発明者】
【氏名】板井 啓祐
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−152067(JP,A)
【文献】 特開2003−209907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 − 10/667
H01M 10/42 − 10/48
H02H 7/00
H02H 7/10 − 7/20
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、
前記電源部に対し互いが並列の関係に接続された第一スイッチ部と第二スイッチ部と、
前記第一スイッチ部を介して前記電源部に接続され第一車載電池を昇温させる第一ヒータ部と、
前記第二スイッチ部を介して前記電源部に接続され第二車載電池を昇温させる第二ヒータ部と、
前記第一車載電池、前記第二車載電池の温度を個別に検出する温度検出部と、
前記第一車載電池、前記第二車載電池を個別に冷却可能な冷却部と、
前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記温度検出部が検出した前記第一、第二車載電池の温度の差に基づき前記第一及び第二スイッチ部の何れか一方のみにON固着異常が生じているか否かを判定する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記第一及び第二車載電池のうち温度の低い方の車載電池のみを前記冷却部により冷却させた上で前記温度の差に基づいた前記判定を行う
電池昇温システム。
【請求項2】
前記電源部の出力電流値を検出する電流検出部を備え、
前記演算部は、
前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記出力電流値に基づき前記第一及び第二スイッチ部の少なくとも何れか一方のON固着異常の有無を推定し、該ON固着異常があると推定した場合に前記判定を行う
請求項1に記載の電池昇温システム。
【請求項3】
前記電源部が出力電圧を変圧可能な電源部とされた
請求項1又は請求項2に記載の電池昇温システム。
【請求項4】
前記電源部が出力電圧を変圧可能な電源部とされ、
前記演算部は、
前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記第一及び第二スイッチ部をONとする条件下よりも前記電源部の出力電圧が昇圧された状態で前記第一及び第二車載電池の温度に基づき前記第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じているか否かを判定する
請求項1又は請求項2に記載の電池昇温システム。
【請求項5】
前記演算部は、
前記第一及び第二スイッチ部の何れか一方のみにON固着異常が生じているか否かの判定と前記第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じているか否かの判定について、後者の判定を行った後に前者の判定を行う
請求項4に記載の電池昇温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電池についての電池昇温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイブリッド車や電気自動車等、走行用モータを有する車両には、該走行用モータの電源に車載電池が用いられる。車載電池については、良好な充放電特性が得られるべく、温度管理が行われる。特に、プラグインハイブリッド車等、商用交流電源等の外部電源により車載電池を充電可能とした車両においては、寒冷地等の低温環境下での充電効率を高めるため、車載電池を昇温するためのヒータが備えられる。
【0003】
ヒータは、電磁リレー等のスイッチ部によって動作がON/OFFされるが、電池昇温システムの故障要因の一つとして、該スイッチ部のON固着が挙げられる。スイッチ部のON固着異常を判定するための手法として、下記特許文献1には、ヒータの温度センサを設け、ヒータの遮断指令出力後(スイッチ部のOFF指令出力後)における温度センサの検出温度に基づいてスイッチ部のON固着異常を判定する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−262740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ON固着異常の判定において、温度検出を行う温度検出部としては、サーミスタ等の温度検出素子を温度が最も高くなる位置に配置することが望ましいが、温度が高くなる部分ではヒータ部の電熱線が密になっており、電池パックの小型化を考慮するとスペースに余裕がない傾向にある。このため、温度検出素子を電熱線が疎になっている部分に配置することを余儀なくされる。
【0006】
しかしながら、電熱線が疎になっている部分に温度検出素子を配置した場合には、ON固着異常が生じている場合とそうでない場合とで検出温度の差が得られ難く、ON固着異常判定を適切に行うことが困難となる虞がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み為されたものであり、例えばヒータ部の電熱線が疎である部分に温度検出素子が配置される等、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合であっても、スイッチ部のON固着異常の判定が適正に行われるように図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電池昇温システムは、電源部と、前記電源部に対し互いが並列の関係に接続された第一スイッチ部と第二スイッチ部と、前記第一スイッチ部を介して前記電源部に接続され第一車載電池を昇温させる第一ヒータ部と、前記第二スイッチ部を介して前記電源部に接続され第二車載電池を昇温させる第二ヒータ部と、前記第一車載電池、前記第二車載電池の温度を個別に検出する温度検出部と、前記第一車載電池、前記第二車載電池を個別に冷却可能な冷却部と、前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記温度検出部が検出した前記第一、第二車載電池の温度の差に基づき前記第一及び第二スイッチ部の何れか一方のみにON固着異常が生じているか否かを判定する演算部と、を備え、前記演算部は、前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記第一及び第二車載電池のうち温度の低い方の車載電池のみを前記冷却部により冷却させた上で前記温度の差に基づいた前記判定を行うものである。
【0009】
第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、検出温度が高い方の車載電池側のスイッチ部は、ON固着異常が生じていると推察されるスイッチ部となる。このため、上記のように第一及び第二車載電池のうち温度の低い方の車載電池のみを冷却することで、第一スイッチ部側と第二スイッチ部側との検出温度差を大きくすることが可能とされる。
【0010】
上記した本発明に係る電池昇温システムにおいては、前記電源部の出力電流値を検出する電流検出部を備え、前記演算部は、前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記出力電流値に基づき前記第一及び第二スイッチ部の少なくとも何れか一方のON固着異常の有無を推定し、該ON固着異常があると推定した場合に前記判定を行う構成とすることが可能である。
【0011】
これにより、電流値に基づき少なくとも何れか一方のスイッチ部のON固着異常が推定された場合のみ、温度差に基づいたON固着異常の判定が行われる。
【0012】
上記した本発明に係る電池昇温システムにおいては、前記電源部が出力電圧を変圧可能な電源部とされた構成とすることが可能である。
【0013】
これにより、第一、第二車載電池のヒータ部のうち、温度が高い方の車載電池側、すなわちON固着異常ありと推察される車載電池側のヒータ部の発熱量を上げることが可能とされる。
【0014】
上記した本発明に係る電池昇温システムにおいては、前記電源部が出力電圧を変圧可能な電源部とされ、前記演算部は、前記第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、前記第一及び第二スイッチ部をONとする条件下よりも前記電源部の出力電圧が昇圧された状態で前記第一及び第二車載電池の温度に基づき前記第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じているか否かを判定する構成とすることが可能である。
【0015】
これにより、第一及び第二スイッチ部の片方のみにON固着異常が生じている否かの判定と共に、第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じている否かの判定が行われる。
【0016】
上記した本発明に係る電池昇温システムにおいては、前記演算部は、前記第一及び第二スイッチ部の何れか一方のみにON固着異常が生じているか否かの判定と前記第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じているか否かの判定について、後者の判定を行った後に前者の判定を行う構成とすることが可能である。
【0017】
これにより、冷却部により車載電池が冷却される前に両側ON固着異常についての判定が行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えばヒータ部の電熱線が疎である部分に温度検出素子が配置される等、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合であっても、スイッチ部のON固着異常の判定が適正に行われるように図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第一実施形態としての電池昇温システムの構成例を示したブロック図である。
図2】ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合に生じる虞のあるON固着異常の誤判定について説明するための図である。
図3】第一実施形態としてのON固着異常判定手法を採用した場合の作用について説明するための図である。
図4】第一実施形態としてのON固着異常判定手法を実現するために実行すべき処理の手順を示したフローチャートである。
図5】本発明に係る第二実施形態としての電池昇温システムの構成例を示したブロック図である。
図6】温度差に基づく片側ON固着異常判定に関して、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合に生じる虞のある誤判定についての説明図である。
図7】第二実施形態としてのON固着異常判定手法を採用した場合の作用について説明するための図である。
図8】第二実施形態としてのON固着異常判定手法を実現するために実行すべき処理の手順を示したフローチャートである。
図9】片側ON固着異常と両側ON固着異常の双方の判定を行う場合に実行すべき処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.第一実施形態としての車載温度システム>
図1は、本発明に係る第一実施形態としての電池昇温システム1の構成例を示したブロック図である。
電池昇温システム1は、例えばプラグインハイブリッド車としての車両に設けられ、それぞれが複数の電池部2を有する第一電池群3及び第二電池群4と、それぞれが複数の電熱線部5を有する第一ヒータ部6及び第二ヒータ部7と、第一電池群3に対応して設けられた第一サーミスタ8と、第二電池群4に対応して設けられた第二サーミスタ9と、第一ヒータ部6及び第二ヒータ部7の電源電圧を生成する変圧可能電源回路10と、変圧可能電源回路10と第一ヒータ部6との間に挿入された第一スイッチ部SW1と、変圧可能電源回路10と第二ヒータ部7との間に挿入された第二スイッチ部SW2とを備えている。
さらに、電池昇温システム1は、例えば商用交流電源等の外部電源と接続されたプラグを着脱自在に接続する外部電源端子TCと、外部電源端子TCに接続され外部電源からの入力電圧に基づき第一電池群3及び第二電池群4における電池部2を充電する充電部11と、電池昇温システム1の全体制御を行うBCU(Battery Control Unit)12とを備えている。
【0021】
第一電池群3及び第二電池群4において、各電池部2は、例えば電池モジュールと呼ばれる形態の二次電池群とされ、それぞれが直列接続された複数の電池セルを有して構成されている。各電池セルには、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等による電池セルを採用することができる。
図中では、第一電池群3が二つの電池部2を、第二電池群4が三つの電池部2を有する例を示しているが、第一電池群3、第二電池群4を構成する電池部2の数はこれらに限定されない。
【0022】
第一電池群3及び第二電池群4は高圧バッテリ部を構成し、車両が有する不図示の走行用モータの電源として用いられる。
なお、図中では、第一電池群3と第二電池群4が並列接続された例を示しているが、これらが直列接続された構成とすることもできる。また、図中では、第一電池群3及び第二電池群4において全ての電池部2が直列接続される例を示しているが、一部の電池部2を並列接続してもよい。
【0023】
本例では、第一電池群3、第二電池群4は、例えば車両の荷室下に配置された電池パックのケース(外筐)内において、上下に分割配置されている。例えば、第一電池群3が第二電池群4よりも上方に位置されている。
【0024】
第一ヒータ部6は、各電熱線部5が第一電池群3の近傍に配置され、第一電池群3を昇温させるヒータ部として機能する。また、第二ヒータ部7は、各電熱線部5が第二電池群4の近傍に配置されて第二電池群4を昇温させるヒータ部として機能する。
なお、第一ヒータ部6及び第二ヒータ部7は複数の電熱線部5を有して構成されることは必須でなく、単一の電熱線部5を有した構成とすることもできる。
【0025】
第一サーミスタ8は、第一電池群3の近傍に配置され、第一電池群3の温度を検出する。具体的に、本例における第一サーミスタ8は、電池パックの外筐内において第一電池群3が配置された部分を上段部分、第二電池群4が配置された部分を下段部分としたとき、上段部分に位置されている。
【0026】
第二サーミスタ9は、第二電池群4の近傍に配置され、第二電池群4の温度を検出する。本例における第二サーミスタ9は、電池パックの外筐内における上記した下段部分に位置されている。
【0027】
ここで、第一電池群3の近傍に配置された第一サーミスタ8は、第一電池群3の近傍に配置された第一ヒータ部6の発熱に伴う温度変化の影響を受ける。この意味で、第一サーミスタ8は、第一ヒータ部6の温度を検出するものであるとも換言できる。同様に、第二電池群4の近傍に配置された第二サーミスタ9は、第二電池群4の近傍に配置された第二ヒータ部7の発熱に伴う温度変化の影響を受けるものであり、第二サーミスタ9は、第二ヒータ部7の温度を検出するものであるとも換言できる。
【0028】
第一スイッチ部SW1、及び第二スイッチ部SW2は、例えば電磁リレーで構成され、変圧可能電源回路10に対し互いが並列の関係に接続されている。第一スイッチ部SW1、及び第二スイッチ部SW2は、BCU12の制御によってON/OFFされる。
【0029】
変圧可能電源回路10は、例えば入力電圧(直流電圧)をスイッチングして直流による出力電圧を得るスイッチング型のDC/DCコンバータで構成され、出力電圧を変圧可能な電源回路とされている。
図示は省略したが、変圧可能電源回路10は、第一電池群3及び第二電池群4による高圧バッテリ部の出力電圧を上記入力電圧として入力し、該入力電圧を降圧して自身の出力電圧を得る。変圧可能電源回路10の出力電圧は、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2に供給されると共に、本例では、車両に設けられた所定の補機類13に電源電圧として供給される。なお、変圧可能電源回路10からの電力供給を受ける補機類13は複数であってもよい。
変圧可能電源回路10から補機類13への電力供給が可能とされることで、補機類13による補機バッテリ(鉛蓄電池)からの持ち出し量低減を図ることができ、補機バッテリ上がりの防止が図られる。
【0030】
BCU12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)等を備えたマイクロコンピュータを有して構成され、充電部11や第一スイッチ部SW1、及び第二スイッチ部SW2の制御を行う。
具体的に、BCU12は、充電部11の制御として、少なくとも充電部11による充電動作のON/OFF制御を行う。このとき、BCU12は、外部電源端子TCにプラグが接続された状態(以下「プラグイン状態」と表記することもある)において、車両が停止中且つ非起動の状態(例えばスタートスイッチがOFFとされて車両制御システムがOFFしている状態)であることを条件に、充電部11による充電動作をONとさせる。
【0031】
また、BCU12は、充電部11による充電動作が行われている下で、第一サーミスタ8、第二サーミスタ9の検出温度に基づき第一ヒータ部6及び第二ヒータ部7による電池昇温動作を制御する。具体的に、BCU12は、充電部11による充電動作が行われている下で、第一サーミスタ8の検出温度値、第二サーミスタ9の検出温度値がそれぞれ閾値以下であることを条件として第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をONとさせる。また、第一サーミスタ8の検出温度値、第二サーミスタ9の検出温度値がそれぞれ閾値を超えたことに応じて、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとさせる。
【0032】
さらに、本実施形態のBCU12は、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において、第一サーミスタ8及び第二サーミスタ9の検出温度値に基づき、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2のON固着異常についての判定処理を行う。なお、該判定処理の詳細については後に改めて説明する。
【0033】
<2.第一実施形態のON固着異常判定>
ここで、第一サーミスタ8や第二サーミスタ9等の温度検出素子が第一ヒータ部6や第二ヒータ部7における電熱線が疎になっている部分に配置される等、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされる場合には、ON固着異常が生じている場合とそうでない場合とで検出温度の差が得られ難く、ON固着異常判定を適切に行うことが困難となる虞がある。
【0034】
図2は、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合に生じる虞のあるON固着異常の誤判定について説明するための図である。
図中、特性C1は、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2にON固着異常が生じた場合における第一サーミスタ8、第二サーミスタ9の検出温度値の最小値についての変化特性(時間経過に応じた変化特性)を表している。ここで言う「最小値」は、環境温度等、ヒータ部の発熱以外の要素により検出温度値が変化することを考慮した場合の最小値を意味する。例えば、車両がマイナス数十度等の寒冷地に置かれた状態での検出温度値等である。
一方、図中の特性C2は、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2にON固着異常が生じていない場合に第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2をOFFとした場合における第一サーミスタ8、第二サーミスタ9の検出温度値の最大値についての変化特性を表している。ここでの最大値は、真夏の炎天下に車両が置かれた状態での検出温度値等に相当する。
【0035】
これら特性C1、C2の対比より、ON固着異常が発生しているときの検出温度値が、ON固着異常が非発生のときの検出温度値を下回り得るということが分かる。このとき、ON固着異常の判定に用いる閾値THとしては、図示のように特性C1に合わせた値に設定すべき(つまり特性C1の最大値以下に設定すべき)であるが、この閾値THに対し、ON固着異常が非発生のときの検出温度値が上回るケースが生じ得ることから、実際にはON固着異常が生じていないにも拘わらずON固着異常有りと判定されてしまう誤判定が生じ得るものである。
【0036】
そこで、本実施形態では、上記のような誤判定の防止を図るべく、BCU12が以下のような手法でON固着異常の判定を行う。すなわち、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下で行うON固着異常判定として、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をONとする条件下よりも変圧可能電源回路10の出力電圧が昇圧された状態でON固着異常の判定を行うものである。
具体的には、上記のように変圧可能電源回路10の出力電圧が昇圧された状態、つまりは第一ヒータ部6、第二ヒータ部7の発熱量を高めた状態で、第一サーミスタ8、第二サーミスタ9の検出温度値を取得し、該検出温度値と閾値THとに基づきON固着異常の判定を行う。
【0037】
図3は、上記した本実施形態としてのON固着異常判定手法を採用した場合の作用について説明するための図である。
上記のように第一ヒータ部6、第二ヒータ部7の発熱量を高めることで、この場合における第一サーミスタ8、第二サーミスタ9の検出温度値としては、図中の特性C1’で表すように、図2に示した特性C1及び特性C2の場合の検出温度値を上回らせることができる。
この場合、判定のための閾値THは、特性C1’の最大値以下に設定すればよく、従って特性C2の最大値よりも大きな値として設定することができる。つまりこれにより、ON固着異常の誤判定防止を図ることができる。
【0038】
本例では、上記のような判定手法を実現するにあたり、BCU12が変圧可能電源回路10に対して昇圧の指示を行う。一例として、変圧可能電源回路10は、昇圧の指示がない状態では出力電圧を12V程度とするのに対し、昇圧の指示に応じて出力電圧を15V程度に高めるように構成されている。
【0039】
<3.処理手順>
図4のフローチャートは、上記により説明した第一実施形態としてのON固着異常判定手法を実現するためにBCU12が実行すべき処理の手順を示している。
ここで以下、第一サーミスタ8による検出温度値については「温度T1」、第二サーミスタ9による検出温度値については「温度T2」と表記する。
【0040】
図4に示す処理は、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下で開始される。すなわち、BCU12が第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする制御を行った以降に開始されるものである。
【0041】
図4において、BCU12はステップS101で、変圧可能電源回路10に対する昇圧指示を行う。すなわち、変圧可能電源回路10に出力電圧を昇圧させる指示を行う。
続くステップS102でBCU12は、待機処理として所定時間待機する処理を行い、ステップS103で温度T1及び温度T2を取得する。
なお、図示は省略したが、ステップS103で温度T1及び温度T2を取得したことに応じ、BCU12は変圧可能電源回路10に昇圧の停止指示を行う。
【0042】
さらに、BCU12はステップS104で、温度T1が閾値TH1以上で且つ温度T2が閾値TH2以上であるか否かを判定する。
温度T1が閾値TH1以上で且つ温度T2が閾値TH2以上でなければ、BCU12はこの図に示す処理を終える。一方、温度T1が閾値TH1以上で且つ温度T2が閾値TH2以上であれば、BCU12はステップS105に進み、両側ON固着異常と判定する。すなわち、第一スイッチ部SW1と第二スイッチ部SW2の両方にON固着異常が生じているとの判定結果を得る。
【0043】
なお、上記では温度T1、T2ごとに異なる閾値THを用いたが、共通の閾値THを用いることもできる。
【0044】
<4.第一実施形態の変形例>
上記では、ON固着異常の判定にあたりBCU12が変圧可能電源回路10に昇温指示を行うものとしたが、第一実施形態としてのON固着異常判定手法を実現するにあたり、BCU12が該昇温指示を行うことは必須ではない。
【0045】
例えば、変圧可能電源回路10から補機類13までの距離が長い、つまりこれらの間の電気配線長が長くされる場合には、該配線長に起因した電圧降下を考慮し、少なくとも車両の起動中(つまり補機類13の起動中)に変圧可能電源回路10が出力電圧を昇圧する構成とすることが考えられる。例えば、変圧可能電源回路10が外部電源端子TCへのプラグインの有無を表す情報に基づき、出力電圧の昇圧をON/OFFする構成とすることが考えられる。具体的には、プラグインされていない状態でのみ、昇圧をONするものである。
このような構成が採られた場合、変圧可能電源回路10は、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において出力電圧の昇圧を行うことになる(上述のように電池昇温は充電中を条件として行われるため)。
【0046】
上記のように変圧可能電源回路10が第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下で出力電圧を昇圧する構成とされることで、ON固着異常の判定にあたってBCU12が変圧可能電源回路10に昇圧指示を行う必要をなくすことが可能とされる。具体的に、上記の例では、BCU12によるON固着異常の判定をプラグインされていない状態で行うこととされている場合において、昇圧指示を行う必要がなくなる。
従って、昇圧指示のための処理を不要とでき、BCU12の処理負担軽減を図ることができる。
【0047】
なお、BCU12の昇圧指示を不要とするための構成は上記で例示した構成に限定されず、変圧可能電源回路10が、BCU12からの指示の有無に拘わらず、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において出力電圧を昇圧するように構成されていればよい。
【0048】
また、上記では、第一サーミスタ8及び第二サーミスタ9としての複数の温度検出素子を設けた場合を例示したが、第一実施形態において、サーミスタ等の温度検出素子は一つのみとすることもできる。
【0049】
また、第一実施形態においては、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2や第一ヒータ部6及び第二ヒータ部7のように、スイッチ部とヒータ部を複数設けることは必須ではない。例えば、電磁リレー等による単一のスイッチ部を設け、第一ヒータ部6と第二ヒータ部7の並列接続回路を該スイッチ部を介して変圧可能電源回路10と接続する構成とすることが考えられる。或いは、単一のヒータ部を単一のスイッチ部を介して変圧可能電源回路10と接続する構成とすることも考えられる。
【0050】
<5.第一実施形態のまとめ>
上記のように第一実施形態の電池昇温システム(1)は、車載電池を昇温させるヒータ部(第一ヒータ部6、第二ヒータ部7)と、車載電池の温度検出を行う温度検出部(第一サーミスタ8、第二サーミスタ9)と、ヒータ部の電源とされた変圧可能な電源部(変圧可能電源回路10)と、電源部からヒータ部に対する出力電圧をON/OFFするスイッチ部(第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2)と、スイッチ部をOFFとする条件下において、温度検出部の温度検出結果に基づきスイッチ部のON固着異常について判定を行う演算部(BCU12)と、を備え、演算部は、スイッチ部をONとする条件下よりも電源部の出力電圧が昇圧された状態において、温度検出結果に基づく判定を行うものである。
【0051】
これにより、スイッチ部をOFFとする条件下で行われるスイッチ部のON固着異常判定は、スイッチ部をONとする条件下よりも電源部の出力電圧が昇圧された状態で行われる。このため、この場合のON固着異常判定は、ON固着異常が生じていない状態でスイッチ部がONされる場合よりもヒータ部の発熱量が大きくされた状態で行われる。
従って、例えばヒータ部の電熱線が疎である部分に温度検出素子が配置される等、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合であっても、ON固着異常時における検出温度が高くなるようにすることができ、スイッチ部のON固着異常判定が適正に行われるように図ることができる。
【0052】
また、第一実施形態の電池昇温システムにおいては、スイッチ部として、電源部に対し互いが並列の関係に接続された複数のスイッチ部を備え、ヒータ部として、それぞれが異なるスイッチ部を介して電源部に接続された複数のヒータ部を備えている。
【0053】
これにより、複数の位置で昇温を行うことが可能とされると共に、一つのスイッチ部が故障を来しても他のスイッチ部に接続されたヒータ部については適正にON/OFF制御を行うことが可能とされる。
すなわち、複数位置での昇温を可能とすることによる車載電池の昇温効率向上を図りつつ、昇温動作についての故障耐性の向上を図ることができる。
【0054】
さらに、第一実施形態の電池昇温システムにおいては、演算部は、温度検出部による温度検出値と閾値(TH1、TH2)との大小関係を比較した結果に基づき判定を行っている。
【0055】
これにより、例えば温度検出値が閾値よりも大きいか否かの判定処理等、簡易な処理によりON固着異常判定を行うことが可能とされる。
従って、ON固着異常判定に係る処理負担の軽減を図ることができる。
【0056】
さらにまた、第一実施形態の電池昇温システムにおいては、電源部は、演算部からの指示に応じて昇圧を行っている。
【0057】
これにより、電源部の昇圧を少なくとも判定に必要とされる期間のみ行わせることが可能とされる。
従って、電源部が判定に不要とされる無闇な昇圧を行わないように図ることができ、消費電力の削減を図ることができる。
【0058】
また、第一実施形態の電池昇温システムにおいては、電源部は、演算部からの指示の有無に拘わらず、スイッチ部をOFFとする条件下において出力電圧を昇圧する。
【0059】
これにより、判定にあたって演算部が電源部に昇圧を指示する必要をなくすことが可能とされる。
従って、昇圧指示のための処理を不要とでき、演算部の処理負担軽減を図ることができる。
【0060】
<6.第二実施形態としての電池昇温システム>
図5は、本発明に係る第二実施形態としての電池昇温システム1Aの構成例を示したブロック図である。
なお以下の説明において、既に説明済みとなった部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
電池昇温システム1Aは、第一実施形態の電池昇温システム1と比較して、第一ファン15、第二ファン16、ファン駆動部17、及び電流検出部18が追加され、BCU12に代えてBCU12Aが設けられた点が異なる。
【0062】
図示は省略するが、この場合の電池昇温システム1Aには、第一電池群3、第二電池群4を個別に冷却可能な冷却回路が設けられており、第一ファン15は第一電池群3側の冷却回路に送風可能なファンとされ、第二ファン16は第二電池群4側の冷却回路に送風可能なファンとされている。
ファン駆動部17は、BCU12Aからの指示に基づき、これら第一ファン15と第二ファン16を個別に駆動可能とされる。
【0063】
電流検出部18は、変圧可能電源回路10の出力電流値、具体的には変圧可能電源回路10から第一スイッチ部SW1と第二スイッチ部SW2との並列接続回路側に流れる出力電流値を検出する。
【0064】
BCU12Aは、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2や充電部11の制御をBCU12と同様に行うと共に、ファン駆動部17に対する指示を行って第一ファン15と第二ファン16についての駆動制御を行う。すなわち、電池冷却制御を行う。該電池冷却制御としては、温度T1と温度T2を用いた制御とされ、例えば温度T1、温度T2の値に応じて、それぞれ第一ファン15、第二ファン16の駆動状態を制御することで、温度T1、温度T2に応じて第一電池群3、第二電池群4の冷却状態を変化させる態様により行われる。
また、BCU12Aは、以下で説明する第二実施形態としてのON固着異常判定のための処理を行う。
【0065】
ここで、第二実施形態は、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2のうち一方のみにON固着異常が生じているか否か(つまり片側ON固着異常が生じているか否か)を判定するものである。
具体的には、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において、温度T1と温度T2との差(以下「温度差ΔT」と表記)と所定の閾値THdとの大小関係を比較した結果に基づき、ON固着異常の判定を行う。ここで、温度差ΔTは、温度T1と温度T2の差の絶対値であり、本例では、温度差ΔTが閾値THd以上であるか否かを判別することにより片側ON固着異常の発生有無を判定する。
【0066】
但し、上記のように温度差ΔTに基づくON固着異常判定を行うにあたっても、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合には、誤判定を招来する虞がある。
【0067】
図6は、温度差ΔTに基づく片側ON固着異常判定に関して、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合に生じる虞のある誤判定についての説明図である。
図中、特性C3は、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の何れか一方のみにON固着異常が生じた場合における温度差ΔTの最小値についての変化特性を表している。この特性C3は、第一ヒータ部6又は第二ヒータ部7による加熱以外の外的な要因によって温度差ΔTにもたらされる影響が最小とされた場合の特性となる。
一方、図中の特性C4は、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の何れにもON固着異常が生じていない場合に第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2をOFFとした場合における温度差ΔTの最大値についての変化特性を表している。この特性C4は、第一電池群3と第二電池群4のうち何れか一方の電池群側のみが何らかの外的な要因により偏って加熱又は冷却されている場合等の特性となる。
【0068】
これら特性C3、C4の対比より、片側ON固着異常が発生しているときの温度差ΔTが、片側ON固着異常が非発生のときの温度差ΔTを下回り得ることが分かる。このとき、閾値THdとしては、図示のように特性C3に合わせた値に設定すべき(つまり特性C3の最大値以下に設定すべき)であるが、この閾値THdに対し、片側ON固着異常が非発生のときの温度差ΔTが上回るケースが生じ得ることから、実際には片側ON固着異常が生じていないにも拘わらず片側ON固着異常有りと判定されてしまう誤判定が生じ得るものである。
【0069】
そこで、第二実施形態では、上記のような誤判定の防止を図るべく、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において、温度T1と温度T2のうち温度の低い方側の電池群のみを第一ファン15、第二ファン16のうち対応するファンにより冷却させた上で、温度差ΔTに基づく片側ON固着異常の判定を行う。
【0070】
図7は、第二実施形態としてのON固着異常判定手法を採用した場合の作用について説明するための図である。
上記のように温度の低い方側の電池群のみを冷却させることで、この場合における温度差ΔTは、図中の特性C3’で表すように、図6に示した特性C3及び特性C4の場合の温度差ΔTを上回るようにすることができる。
この場合、判定のための閾値THdは、特性Cd’の最大値以下に設定すればよく、従って特性C4の最大値よりも大きな値として設定することができる。つまりこれにより、片側ON固着異常の誤判定防止を図ることができる。
【0071】
ここで、本例では、上記のような冷却を伴う判定を行うに先立ち、先ずは変圧可能電源回路10の出力電流値に基づいて第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の少なくとも何れかにON固着異常が生じているか否かの推定を行う。具体的に、BCU12Aは、電流検出部18が検出した出力電流値と所定の基準電流値との差に基づき、上記の推定を行う。
ここで、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の双方がON固着異常を来していない場合と、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の少なくとも何れかにON固着異常が生じている場合とでは、電流検出部18による検出値に変化が生じる。具体的に、電流検出部18による検出値は、後者の場合の方が大きくなる。
そこで、本例では、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の双方がON固着異常を来していない場合に対応した電流検出部18による検出値を上記の基準電流値として定め、該基準電流値を予めBCU12Aに設定しておく。そして、BCU12Aは、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下において、電流検出部18が検出した出力電流値と基準電流値との差(以下「差ΔA」と表記)を計算し、該差ΔAの大きさに基づいて第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の少なくとも何れかにON固着異常が生じているか否かを推定する。例えば、差ΔAが所定値以上であれば第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の少なくとも何れかにON固着異常が生じているとの推定結果を得る。
なお本例において、差ΔAは絶対値として求める。
【0072】
本例において、BCU12Aは、上記のように第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の少なくとも何れかにON固着異常が生じているとの推定結果が得られたことに応じて、上述した温度差ΔTに基づく片側ON固着異常の判定処理を行う。
【0073】
<7.処理手順>
図8のフローチャートは、第二実施形態としてのON固着異常判定手法を実現するためにBCU12Aが実行すべき処理の手順を示している。
図8に示す処理としても、先の図4に示した処理と同様、第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする条件下で開始される。すなわち、BCU12Aが第一スイッチ部SW1及び第二スイッチ部SW2をOFFとする制御を行った以降に開始されるものである。
【0074】
先ず、BCU12はステップS201の電流値取得処理として、電流検出部18による検出値を取得し、続くステップS202で基準電流値との差ΔAを計算する。
【0075】
差ΔAを計算したことに応じ、BCU12AはステップS203で差ΔAよりON固着が推定されるか否かを判別する。具体的に本例では、差ΔAが所定値以上であるか否かを判別することにより、第一スイッチ部SW1、第二スイッチ部SW2の少なくとも何れかにON固着異常が生じていると推定されるか否かを判別する。
【0076】
例えば、差ΔAが所定値以上でなく、ON固着異常が推定されないと判別した場合、BCU12Aはこの図に示す処理を終える。すなわち、変圧可能電源回路10の出力電流値に基づきON固着異常がないと推定される場合は、以下で説明する温度差ΔTに基づいた片側ON固着異常の判定が行われない。
【0077】
一方、例えば差ΔAが所定値以上であり、ON固着異常が推定されると判別した場合、BCU12AはステップS204で温度T1及び温度T2を取得し、続くステップS205で温度が低い方の冷却回路におけるファンを作動させる処理を行う。すなわち、温度T1の方が低ければ第一ファン15を、また温度T2の方が低ければ第二ファン16を作動させるようにファン駆動部17に対する指示を行う。
【0078】
さらに、続くステップS206でBCU12Aは、待機処理として所定時間待機する処理を行った上で、ステップS207で温度T1及び温度T2を取得し、ステップS208で温度差ΔTを計算し、ステップS209で温度差ΔTが閾値THd以上であるか否かを判定する。
温度差ΔTが閾値THd以上であれば、BCU12AはステップS210で片側ON固着異常と判定し、この図に示す処理を終える。一方、温度差ΔTが閾値THd以上でなければ、BCU12AはステップS210をパスしてこの図に示す処理を終える。
【0079】
なお、ステップS204で温度T1、T2を取得するにあたり、BCU12Aは第一実施形態の場合と同様に変圧可能電源回路10に対して出力電圧の昇圧指示を行うこともできる。
これにより、片側ON固着異常が生じている場合における温度差ΔTをさらに大きくすることができ、片側ON固着異常の誤判定防止効果を高めることができる。
【0080】
<8.第二実施形態の変形例>
ここで、第二実施形態においては、片側ON固着異常の判定と共に、第一実施形態と同様の手法により両側ON固着異常の判定を行うこともできる。
図9のフローチャートは、片側ON固着異常と両側ON固着異常の双方の判定を行う場合にBCU12Aが実行すべき処理の手順を示している。
図示のようにこの場合は、先の図4に示したステップS101〜S105の処理を行った上で、図8に示したステップS201〜S210の処理を行っている。なおこの場合、ステップS105の判定処理で否定結果が得られた際には、BCU12AはステップS201に処理を進める。
【0081】
図9に示す処理により、BCU12Aは両側ON固着異常と片側ON固着異常とを判定し分けることができる。
【0082】
なお、上記では、片側ON固着異常の判定と両側ON固着異常の判定とについて、後者の判定を先に行う例を挙げたが、前者の判定を後者の判定よりも先に行うこともできる。
このとき、図9で例示するように両側ON固着異常の判定を行った後に片側ON固着異常の判定を行うものとすれば、第一ファン15又は第二ファン16によって第一電池群3又は第二電池群4が冷却される前に両側ON固着異常についての判定が行われることになり、両側ON固着異常の判定精度向上を図ることができる。
【0083】
ここで、第二実施形態において、第一ヒータ部6、第二ヒータ部7の電源を変圧可能な電源とすることは必須でない。
【0084】
<9.第二実施形態のまとめ>
上記のように第二実施形態の電池昇温システム(1A)は、電源部(変圧可能電源回路10)と、電源部に対し互いが並列の関係に接続された第一スイッチ部(SW1)と第二スイッチ部(SW2)と、第一スイッチ部を介して電源部に接続され第一車載電池(第一電池群3)を昇温させる第一ヒータ部(6)と、第二スイッチ部を介して電源部に接続され第二車載電池(第二電池群4)を昇温させる第二ヒータ部(7)と、第一車載電池、第二車載電池の温度を個別に検出する温度検出部(第一サーミスタ8及び第二サーミスタ9)と、第一車載電池、第二車載電池を個別に冷却可能な冷却部(第一ファン15及び第二ファン16)と、第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、温度検出部が検出した第一、第二車載電池の温度の差に基づき第一及び第二スイッチ部の何れか一方のみにON固着異常が生じているか否かを判定する演算部(BCU12A)と、を備え、演算部は、第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、第一及び第二車載電池のうち温度の低い方の車載電池のみを冷却部により冷却させた上で温度の差に基づいた判定を行うものである。
【0085】
第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、検出温度が高い方の車載電池側のスイッチ部は、ON固着異常が生じていると推察されるスイッチ部となる。このため、上記のように第一及び第二車載電池のうち温度の低い方の車載電池のみを冷却することで、第一スイッチ部側と第二スイッチ部側との検出温度差を大きくすることが可能とされる。
従って、例えばヒータ部の電熱線が疎である部分に温度検出素子が配置される等、ヒータ部の発熱に対する温度検出部の感度が低くされた場合であっても、片側ON固着異常時における両スイッチ部間の検出温度差を大きくすることができ、スイッチ部のON固着異常の判定が適正に行われるように図ることができる。
【0086】
また、第二実施形態の電池昇温システムにおいては、電源部の出力電流値を検出する電流検出部を備え、演算部は、第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、出力電流値に基づき第一及び第二スイッチ部の少なくとも何れか一方のON固着異常の有無を推定し、該ON固着異常があると推定した場合に判定を行っている。
【0087】
これにより、電流値に基づき少なくとも何れか一方のスイッチ部のON固着異常が推定された場合のみ、温度差に基づいたON固着異常の判定が行われる。
従って、温度差に基づく判定に起因した冷却動作が無闇に行われることの防止を図ることができ、判定に係る消費電力の削減を図ることができる。
【0088】
さらに、第二実施形態の電池昇温システムにおいては、電源部が出力電圧を変圧可能な電源部とされている。
【0089】
これにより、第一、第二車載電池のヒータ部のうち、温度が高い方の車載電池側、すなわちON固着異常ありと推察される車載電池側のヒータ部の発熱量を上げることが可能とされる。
従って、両スイッチ部間の検出温度差をより大きくすることができ、片側ON固着異常の判定精度の向上を図ることができる。
【0090】
さらにまた、第二実施形態の電池昇温システムにおいては、電源部が出力電圧を変圧可能な電源部とされ、演算部は、第一及び第二スイッチ部をOFFとする条件下において、第一及び第二スイッチ部をONとする条件下よりも電源部の出力電圧が昇圧された状態で第一及び第二車載電池の温度に基づき第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じているか否かを判定している。
【0091】
これにより、第一及び第二スイッチ部の片方のみにON固着異常が生じている否かの判定と共に、第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じている否かの判定が行われる。
従って、第一及び第二スイッチ部について、片側ON固着異常と両側ON固着異常とを判定し分けることができる。
【0092】
また、第二実施形態の電池昇温システムにおいては、演算部は、第一及び第二スイッチ部の何れか一方のみにON固着異常が生じているか否かの判定と第一及び第二スイッチ部の両方にON固着異常が生じているか否かの判定について、後者の判定を行った後に前者の判定を行っている。
【0093】
これにより、冷却部により車載電池が冷却される前に両側ON固着異常についての判定が行われる。
従って、両側ON固着異常の判定精度向上を図ることができる。
【0094】
<10.その他変形例>
以上、本発明に係る各実施形態について説明したが、本発明は上記した具体例に限定されず多様な構成を採り得るものである。
例えば、上記では、本発明がプラグインハイブリッド車に適用される例を挙げたが、本発明を適用する車両としては、エンジンを備えることは必須ではなく、車輪の駆動源として電動モータのみを備えた電動車としての車両が含まれる。本発明は、車載電池を昇温するヒータ部及びヒータ部の動作をON/OFFするためのスイッチ部を少なくとも有する車両に広く好適に適用できるものである。
【符号の説明】
【0095】
1、1A 電池昇温システム、2 電池部、3 第一電池群、4 第二電池群、5 電熱線部、6 第一ヒータ部、7 第二ヒータ部、8 第一サーミスタ、9 第二サーミスタ、SW1 第一スイッチ部、SW2 第二スイッチ部、10 変圧可能電源回路、11 充電部、12、12A BCU(Battery Control Unit)、15 第一ファン、16 第二ファン、17 ファン駆動部、18 電流検出部、TC 外部電源端子
図1
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