(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧レベルの上下を判定する閾値に対して、電圧レベルが低い側の電圧レベルのペアの上下を判定する閾値が、電圧レベルが高い側の電圧レベルのペアの上下を判定する閾値よりも、同じか多くの基底に対応した電圧レベルのペアの判定を行うように割当てることを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
前記電圧レベルの上下を判定する比較器を有し、前記比較器は、閾値の数だけの固定した電圧発生手段により電圧レベルの判定を行うことを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
マルチプレクサを有し、前記マルチプレクサは、閾値数だけのスイッチを有し、前記スイッチにより電圧レベルを判定する閾値を選択することを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
多値強度変調による光通信量子暗号を用いて、データを光信号に変調して送信する光送信装置と前記光送信装置から伝送される信号を受信する光受信装置が光通信路より接続された光通信システムであって、
前記光受信装置において、データを暗号化する光信号の基底に対応して、受信した光信号を変換した電気信号の電圧レベルの上下を判定する閾値の数と基底の数との関係が、2≦閾値数≦基底数−1であることを特徴する光通信システム。
前記光受信装置において、前記電圧レベルの上下を判定する閾値に対して、電圧レベルが低い側の電圧レベルのペアの上下を判定する閾値が、電圧レベルが高い側の電圧レベルのペアの上下を判定する閾値よりも、同じか多くの基底に対応した電圧レベルのペアの判定を行うように割当てることを特徴とする請求項5記載の光通信システム。
前記光受信装置において、前記電圧レベルの上下を判定する比較器を有し、前記比較器は、閾値の数だけの固定した電圧発生手段により電圧レベルの判定を行うことを特徴とする請求項5記載の光通信システム。
前記光受信装置において、マルチプレクサを有し、前記マルチプレクサは、閾値数だけのスイッチを有し、前記スイッチにより電圧レベルを判定する閾値を選択することを特徴とする請求項5記載の光通信システム。
【背景技術】
【0002】
Yuen量子暗号は光通信量子暗号(Y−00)通信とも呼ばれ、光の量子ゆらぎ(量子ショット雑音)を特殊な変調方式によって拡散させ、盗聴者によって光信号を正確に受信できなくする通信技術であり、2値の送信データを搬送する2値の光信号を一つのセット(基底という)とし、この基底を複数M個用意し、いずれの基底を使ってデータを送るかは暗号鍵に従う擬似乱数によって不規則に決める。現実的にはM値の光信号は量子ゆらぎによって識別ができないほど信号間距離が小さく設計されているため、盗聴者は全く受信信号からデータ情報を読みとることができない。
【0003】
正規の送受信者の光変復調装置は、2値のM個の基底を共通の擬似乱数にしたがって切り換えて通信するため、正規の受信者は信号間距離の大きな2値の信号判定によってデータを読みとることができる。量子ゆらぎによるエラーは無視でき、正規の送受信者間では正確な通信が可能となる。この光変調方式による暗号は、Yuen−2000暗号通信プロトコル(Y−00プロトコルと略称される)によるYuen量子暗号と呼ばれる。
【0004】
Yuen量子暗号を用いた通信では、特許文献1に記載された光受信装置のように暗号化した光信号を電気信号に変換して、基底に対応する閾値により0/1のビット情報を読み取っている。この際に、従来の光受信装置では、基底の数だけ閾値を用意していた。
【0005】
しかしながら、高速伝送を行う場合は、受信信号と閾値信号の位相のずれが無視できなくなるため、ビットレートの高い信号を扱う場合、エラーが発生してしまうという問題がある。
【0006】
特許文献2は、そのような位相のずれを補正するために、PLL(Phase Locked Loop)回路を設けることより、位相のずれを補正し、受信データの誤りを防止している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る各実施形態を、
図1ないし
図13を用いて説明する。
【0014】
〔光通信システム概要と構成〕
先ず、
図1を用いてY−00プロトコルによる光通信システムの概要と構成について説明する。
Y−00プロトコルによる光通信システムでは、電気信号を光信号に変換し、光送信装置100と光受信装置200の間の光ファイバなどの伝送路を暗号化して送信するシステムである。なお、
図1には示されていないが、実際のシステムには、電気信号として送信データを光送信装置100に入力する板送信装置と、光受信装置200が出力するデータを入力するデータ受信装置が接続される。
【0015】
光送信装置100は、
図1に示されるように、Running鍵生成部104、多値信号生成部106、光源発生部108、光変調部110からなる。
【0016】
暗号鍵102は、光送信装置100と光受信装置200(暗号鍵202)の間で共有され、多値信号の遷移パターンを決めるための元になるデジタルデータである。
【0017】
Running鍵生成部104は、暗号鍵102を元データとして、擬似乱数(ランダムパターン)の性質を有するRunning鍵を生成する。
【0018】
多値信号生成部106は、送信データ(デジタルデータ)をRunning鍵に従って多値信号に変換する。
【0019】
一方、光源発生部108は、例えば、レーザダイオードなどから構成され、一定レベルの強度を有する光を発生する。そして、光変調部110により、光源発生部108の出力光を多値変調し、光多値信号を生成する。光多値信号は、例えば、強度変調の場合は、光の強度の違いより表現される。
この暗号化された光多値信号は、伝送路を介して、光受信装置200に送られる。
【0020】
次に、光受信装置200は、
図1に示されるように、Running鍵生成部204、閾値生成部206、O/E変換部208、識別器210からなる。
【0021】
光受信装置200では、伝送路を介して、送られてきた光多値信号をO/E変換部208により、電気多値信号に変換する。
【0022】
ここで、詳細は省くが、光送信装置100と光受信装置200の間の同期プロセスにより、共通のRunning鍵が使われて、閾値生成部206より、識別器210に入力される閾値が生成される。
【0023】
識別器210では、入力されてきた閾値を用いて、O/E変換部から出力される電気多値信号を識別して、送信データを復元する。
【0024】
〔本発明の基本的な考えと基底と閾値の関係〕
次に、
図2を用いて本発明の基本的な考えと基底と閾値の関係を示す図である。
本実施形態における光通信システムは、光送信装置100から光受信装置200が光ファイバを介して光信号により情報を伝送する構成である。
図2に示されように、光送信装置100は、電気信号を光信号に変換するE/O変換機構を有し、光受信装置200は、光信号を電気信号に変換するO/E変換機構と識別器を有する。
【0025】
光通信量子暗号(Y−00)通信では、上で説明したように、強度変調をするにあたり2値の光信号のセットである基底により、暗号化をする。
【0026】
基底がN個あるとすると、
図2に示されるように、i番目の基底は、ロー側の光パワーをP
ol(i)、ハイ側の光パワーをP
oh(i)として、(P
ol(i),P
oh(i))(i=1,…,N)と表現される。
【0027】
光受信装置200側では、O/E変換機構により、光信号を電気信号に変換するが、そのときの基底(P
ol(i),P
oh(i))(i=1,…,N)を、電気信号に変換したときの電圧レベルのペアが、(V
l(i),V
h(i))(i=1,…,N)となる。
【0028】
ここで、V
l(i)が、ロー側の光パワーP
ol(i)に対応するO/E変換機構により出力されるロー側電圧であり、V
h(i)が、ハイ側の光パワーP
ol(i)に対応するO/E変換機構により出力されるハイ側電圧である。そして、光受信装置200側の識別器により、送信されてきたデータがロー側にあるかハイ側にあるかを、暗号化により定まるいずれかの基底に対応する電圧を識別する閾値によって、判別する。
【0029】
ここで、電圧レベルのペア(V
l(i),V
h(i))に対応する閾値を、V
th(i)とすると、V
th(i)は、V
l(i)とV
h(i)のほぼ中間になる電圧レベルになる。
【0030】
従来の光受信装置では、基底の数Nだけ閾値を用意して、データの識別を行なっていたが、本実施形態の光受信装置では、
図2に示されように、いくつかの電圧ペアをグループとして捉え、一つの閾値で基底に対応する電圧ペアに対するデータ識別を行なおうとするものである。すなわち、閾値を、V
th(j)(j=1,…,n)、nは、閾値の数としたときに、n<Nとするものである。
【0031】
〔閾値数=nの場合の光受信装置の構成〕
次に、
図3を用いて本実施形態の閾値数=nの場合の光受信装置の構成について説明する。
光受信装置200は、
図3に示されるように、O/E変換部1、線形増幅部2、Comparator3(比較器)、Multiplexer4、Basis Selector5、Seed Key6、LFSR(Liner Feedback Sift Register)7、S/P変換部8、Decoder9からなる。
【0032】
O/E変換部1では、光送信装置100からの光信号を電気信号に変換する。次に、線形増幅部2では、O/E変換部1から出力される電気信号を線形増幅する。
【0033】
次に、Comparator3(比較器)では、線形増幅部2で線形増幅された電気信号と閾値V
th(j)を比較する。
ここで、Comparator3のV
th(1),V
th(2),…,V
th(n)の閾値は固定(固定閾値)で、V
th(1)は、電圧レベルが低い電圧レベルペアに対する閾値(以下、「LSB側の閾値」という)、V
th(n)は、電圧レベルが高い電圧レベルペアに対する閾値(以下、「MSB側の閾値」という)とする。
【0034】
Seed Key6は、暗号鍵であり、光送信装置100が所有する暗号鍵と同一のものが用いられる。LFSR7では、暗号鍵を伸長したRunning鍵を生成する。LFSR7は、光送信装置100のRunning鍵生成部104で用いられるLFSRと同一のものでなければならない。S/P変換部8では、LFSR7の出力信号をSerial−Parallel変換する。
【0035】
Basis Selector5では、Seed Key6及びLFSR7にて作成された基底に対応するComparator出力を選択し、固定閾値と比較された出力がDecoder9に入力されるようにMultiplexer4を制御する。
【0036】
Multiplexer4では、基底に対応するComparator出力をDecoder9に割り当てる。
【0037】
Decoder9では、光送信装置100で施したランダマイゼーションを元に戻し、データを復調する。
【0038】
〔基底数=8、閾値数=2の場合の光受信装置の構成と閾値の選択〕
次に、
図4ないし
図6を用いて基底数=8、閾値数=2の場合の光受信装置の構成と閾値の選択について説明する。
基底数=8、閾値数=2の場合の光受信装置200の構成は、
図4に示されるように、
図3において、n=2とした場合に該当する。S/P変換部8では、A,B,Cの信号を出力し、Basis Selector5の第1基底選択部51では、S
1を出力し、第2基底選択部52では、S
2を出力する。
【0039】
LSFR7の出力と、基底の関係と、Basis Selector5の出力は、
図6に示されるようになる。ここで、基底番号は、♯0〜♯7の8個としている。
ここで、LSFR7の出力とBasis Selector5の出力は、以下の(式1)で表現される。
【0041】
基底数=8、閾値数=2の場合の基底と閾値の関係は、
図5に示されるように、LSB側の基底番号♯0〜♯3の四つの基底が、V
th(1)で、0/1の判断をされ、MSB側の基底番号♯4〜♯7の四つの基底が、V
th(2)で、0/1の判断をされることになる。
【0042】
〔基底数=8、閾値数=3の場合の光受信装置の構成と閾値の選択〕
次に、
図7ないし
図9を用いて基底数=8、閾値数=3の場合の光受信装置の構成と閾値の選択について説明する。
基底数=8、閾値数=3の場合の光受信装置200の構成は、
図7に示されるように、
図3において、n=3とした場合に該当する。S/P変換部8では、A,B,Cの信号を出力し、Basis Selector5の第1基底選択部51では、S
1を出力し、第2基底選択部52では、S
2を出力し、第3基底選択部53では、S
3を出力する。
【0043】
LSFR7の出力と、基底の関係と、Basis Selector5の出力は、
図9に示されるようになる。ここで、基底番号は、♯0〜♯7の8個としている。
ここで、LSFR7の出力とBasis Selector5の出力は、以下の(式2)で表現される。
【0045】
基底数=8、閾値数=3の場合の基底と閾値の関係は、
図8に示されるように、LSB側の基底番号♯0〜♯2の三つの基底が、V
th(1)で、0/1の判断をされ、MSB側の基底番号♯6〜♯7の二つの基底が、V
th(3)で、0/1の判断をされ、その中間にある基底番号♯3〜♯5の三つの基底が、V
th(2)で、0/1の判断をされることになる。
【0046】
ここで、閾値を基底の割り当て方法について説明する。
先ず、基底数を閾値数で割り、商の数(整数)の基底を、各閾値に割り当てる。基底を閾値に割り当てるということは、その基底における0/1の判断がその閾値に基づいて行なわれることを意味する。そして、余りの割当てられなかった基底は、LSB側(電圧レベルが低い側の基底)からMSB側(電圧レベルが高い側の基底)に向かって、順次割り当てる。
【0047】
これを基底数=8、閾値数=3の場合に具体的に説明すると以下のようになる。
先ず、基底数/閾値数の商=int(8/3)=2であり、V
th(1),V
th(2),V
th(3)に共に二つの基底を割り当てる。
【0048】
次に、基底数/閾値数の余り=基底数mod閾値数=8mod3=2を計算する。
そして、LSB側の閾値V
th(1)と中間の閾値V
th(2)に、さらに各々一つの基底を割り当てる。
【0049】
したがって、LSB側の閾値V
th(1)に割当てられた基底の数は、三つ、中間の閾値V
th(2)に割当てられた基底の数は、三つ,MSB側の閾値V
th(3)に割当てられた基底の数は、二つになる。
【0050】
〔基底数=8、閾値数=4の場合の光受信装置の構成と閾値の選択〕
次に、
図10ないし
図12を用いて基底数=8、閾値数=4の場合の光受信装置の構成と閾値の選択について説明する。
基底数=8、閾値数=4の場合の光受信装置200の構成は、
図10に示されるように、
図3において、n=4とした場合に該当する。S/P変換部8では、A,B,Cの信号を出力し、Basis Selector5の第1基底選択部51では、S
1を出力し、第2基底選択部52では、S
2、第3基底選択部53では、S
3を出力し、第2基底選択部54では、S
4を出力する。
【0051】
LSFR7の出力と、基底の関係と、Basis Selector5の出力は、
図12に示されるようになる。ここで、基底番号は、♯0〜♯7の8個としている。
ここで、LSFR7の出力とBasis Selector5の出力は、以下の(式3)で表現される。
【0053】
基底数=8、閾値数=4の場合の基底と閾値の関係は、
図11に示されるように、LSB側の基底番号♯0,♯1の二つの基底が、V
th(1)で、0/1の判断をされ、MSB側の基底番号♯6,♯7の二つの基底が、V
th(4)で、0/1の判断をされ、その中間の基底番号♯2,♯3の二つの基底が、V
th(2)で、0/1の判断をされ、基底番号♯4,♯5の二つの基底が、V
th(3)で、0/1の判断をされることになる。
【0054】
〔基底数と閾値数の関係の考察と本実施形態の光受信装置の特徴〕
次に、
図13の計算結果を用いて基底数と閾値数の関係について説明する。
基底数=2048、BER(Bit Error Rate)=1E−12の条件の基で、閾値数=2048の光受信装置の光入出力パワーを基準(0[dB])としたときのPower Penaltyは、
図13に示されるようになる。このグラフによると閾値数>10以上は、0.1[dB]以下であり、十分よい結果が得られており、閾値数=2では、2.65[dB]、閾値数=3では1.42[dB]である。したがって、発明者は、この条件の基で、閾値数2以上の閾値数をとれば問題ないと思料する。
【0055】
以上の述べてきたように、本実施形態の光受信装置では、基底数と閾値数の関係を以下の(式4)のようにとる。
【0057】
従来技術に係る光受信装置では、基底数=閾値数ととり、かつ、閾値をDA(Digital Analog)コンバータにより生成していた。
【0058】
本実施形態の光受信装置では、閾値は、上記の(式4)の条件の下で、Comparator3内で固定の閾値V
th(j)(j=1,…,n)を有しているために、簡単な回路構成で、高速伝送においても受信信号と閾値信号の位相のずれが生じることは少ない。
【0059】
かつ、基底と閾値の割当てを、LSB側の基底に多く割当てることにしている。これにより、消光比が大きい所で0/1を判断する基底の数が多くなるために、伝送特性の向上を見込むことができる。
また、暗号化方法や光送信装置の構造を変更することもないので、従来技術と比較して、暗号強度が低下することは生じない。