特許第6863860号(P6863860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863860
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】検出装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20210412BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20210412BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20210412BHJP
   B60L 3/08 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   H04B1/59
   H04B1/16 Z
   B61L3/12 A
   B60L3/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-163973(P2017-163973)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-41347(P2019-41347A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 晃
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】図子 博紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕希
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−121400(JP,A)
【文献】 特開2011−097715(JP,A)
【文献】 特開平08−058588(JP,A)
【文献】 特開2015−50858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
H04B 1/16
B60L 3/08
B61L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置され、当該移動体が移動することによって移動経路に配置された電磁結合用回路に接近した場合に、送信波の電磁結合を検出することで前記電磁結合用回路を検出する検出装置であって、
所定周波数間隔の複数の周波数信号を含み、隣接する周波数帯が重ならないように設定されたN個(N≧2)の周波数帯の各周波数信号を合成することで、前記所定周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信信号を生成する送信回路部と、
前記送信信号に応じた前記送信波を出力する出力用コイルと、前記出力用コイルからの出力に応じて入力信号が誘起される入力用コイルとを有し、前記電磁結合用回路に接近した場合に、前記電磁結合用回路の回路定数によって前記N個の周波数帯のうちの何れかの周波数帯の基準周波数が選択周波数として選択されることで、前記入力信号のうち、前記選択周波数を含む前記周波数帯内の何れかの周波数信号の信号レベルが相対的に高く、他の周波数信号の信号レベルが相対的に低くなるように前記入力信号が誘起されるコイル部と、
前記入力信号を周波数解析し、信号レベルが相対的に高い周波数信号が前記入力信号に含まれている場合に、当該高い信号を含む周波数帯の基準周波数を前記選択周波数とする前記電磁結合用回路に接近したことを検出する受信回路部と、
を備えた検出装置。
【請求項2】
前記所定周波数は、前記N個の周波数帯の基準周波数の公約数である、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記所定周波数は、1kHz以下であり、
前記N個の周波数帯の基準周波数は、10kHz以上である、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記送信回路部は、前記所定周波数を可変に設定する間隔周波数設定部を有する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記間隔周波数設定部は、前記移動体の移動速度に基づいて前記所定周波数を設定する、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
移動体に設置され、当該移動体が移動することによって移動経路に配置された電磁結合用回路に接近した場合に、送信波の電磁結合を検出することで前記電磁結合用回路を検出する検出装置の作動方法であって、
所定周波数間隔の複数の周波数信号を含み、隣接する周波数帯が重ならないように設定されたN個(N≧2)の周波数帯の各周波数信号を合成することで、前記所定周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信信号を生成することと、
出力用コイルから前記送信信号に応じた前記送信波を出力することと、
前記出力用コイルからの出力に応じて入力用コイルに誘起される入力信号であって、前記電磁結合用回路に接近した場合に、前記電磁結合用回路の回路定数によって前記N個の周波数帯のうちの何れかの周波数帯の基準周波数が選択周波数として選択されることで、前記入力信号のうち、前記選択周波数を含む前記周波数帯内の何れかの周波数信号の信号レベルが相対的に高く、他の周波数信号の信号レベルが相対的に低くなる前記入力信号を入力することと、
前記入力信号を周波数解析し、信号レベルが相対的に高い周波数信号が前記入力信号に含まれている場合に、当該高い信号を含む周波数帯の基準周波数を前記選択周波数とする前記電磁結合用回路に接近したことを検出することと、
を含む検出装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁結合用回路を検出する検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁結合用回路を内蔵する地上子を軌道に配置し、車上側で地上子を検出して列車の停止制御や速度制御、また位置検知等を行う技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。車上側は、車上子を介して送信信号を送信し、車上子が地上子と接近したときに当該地上子の電磁結合用回路と電磁結合することを利用して地上子を検出するとともに、地上側からの情報を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−160161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような電磁結合を利用した地上子(より正確には地上子内の電磁結合用回路)の検出では、情報を伝送する伝送帯域や伝送経路によっては信号が大きく減衰し、正常な情報伝送ができない事態が起こり得た。そのため、減衰の大きい伝送帯域や伝送経路に合わせて送信信号の増幅率を高くする必要があり、その分回路規模の拡大や消費電力の増大を招く問題があった。
【0005】
なお、電磁結合用回路を検出する検出装置の一例として、電磁結合用回路を内蔵する地上子を、検出装置である車上装置が検出する鉄道用途の技術を挙げたが、鉄道用途以外の技術用途においても同様の問題が生じ得た。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、電磁結合用回路を検出する検出装置の技術において、電磁結合によるエネルギー伝達を効率よく行って、装置の小型化および低消費電力化を実現することを目的として考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
移動体に設置され、当該移動体が移動することによって移動経路に配置された電磁結合用回路に接近した場合に、送信波の電磁結合を検出することで前記電磁結合用回路を検出する検出装置であって、
所定周波数間隔の複数の周波数信号を含み、隣接する周波数帯が重ならないように設定されたN個(N≧2)の周波数帯の各周波数信号を合成することで、前記所定周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信信号を生成する送信回路部と、
前記送信信号に応じた前記送信波を出力する出力用コイルと、前記出力用コイルからの出力に応じて入力信号が誘起される入力用コイルとを有し、前記電磁結合用回路に接近した場合に、前記電磁結合用回路の回路定数によって前記N個の周波数帯のうちの何れかの周波数帯の基準周波数が選択周波数として選択されることで、前記入力信号のうち、前記選択周波数を含む前記周波数帯内の何れかの周波数信号の信号レベルが相対的に高く、他の周波数信号の信号レベルが相対的に低くなるように前記入力信号が誘起されるコイル部と、
前記入力信号を周波数解析し、信号レベルが相対的に高い周波数信号が前記入力信号に含まれている場合に、当該高い信号を含む周波数帯の基準周波数を前記選択周波数とする前記電磁結合用回路に接近したことを検出する受信回路部と、
を備えた検出装置である。
【0008】
また、他の発明として、
移動体に設置され、当該移動体が移動することによって移動経路に配置された電磁結合用回路に接近した場合に、送信波の電磁結合を検出することで前記電磁結合用回路を検出する検出装置の作動方法であって、
所定周波数間隔の複数の周波数信号を含み、隣接する周波数帯が重ならないように設定されたN個(N≧2)の周波数帯の各周波数信号を合成することで、前記所定周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信信号を生成することと、
出力用コイルから前記送信信号に応じた前記送信波を出力することと、
前記出力用コイルからの出力に応じて入力用コイルに誘起される入力信号であって、前記電磁結合用回路に接近した場合に、前記電磁結合用回路の回路定数によって前記N個の周波数帯のうちの何れかの周波数帯の基準周波数が選択周波数として選択されることで、前記入力信号のうち、前記選択周波数を含む前記周波数帯内の何れかの周波数信号の信号レベルが相対的に高く、他の周波数信号の信号レベルが相対的に低くなる前記入力信号を入力することと、
前記入力信号を周波数解析し、信号レベルが相対的に高い周波数信号が前記入力信号に含まれている場合に、当該高い信号を含む周波数帯の基準周波数を前記選択周波数とする前記電磁結合用回路に接近したことを検出することと、
を含む検出装置の作動方法を構成してもよい。
【0009】
第1の発明等によれば、電磁結合用回路の選択周波数として選択され得るN個の各周波数帯の基準周波数の周波数成分を含み、合成する周波数信号の間隔周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信信号を生成して、当該送信信号に応じた送信波をコイル部の出力用コイルから出力することができる。そして、コイル部の入力用コイルに誘起される入力信号を周波数解析し、他の周波数信号と比べて信号レベルが相対的に高い周波数信号が入力信号に含まれている場合に、それを含む周波数帯の基準周波数を選択周波数とする電磁結合用回路への接近を検出できる。これによれば、減衰の大きい伝送帯域や伝送経路に合わせて送信信号の増幅率を高くしなくても、所定の時間間隔で現れる信号レベルの高いピークレベル部分の送出時に電磁結合によるエネルギー伝達を効率よく行い、電磁結合用回路を適正に検出することが可能となる。したがって、装置の小型化および低消費電力化が実現できる。
【0010】
また、第2の発明として、
前記所定周波数は、前記N個の周波数帯の基準周波数の公約数である、
第1の発明の検出装置を構成してもよい。
【0011】
第2の発明によれば、後述するように、所定周波数を基準周波数の公約数とすることで、所定周波数に対応する時間間隔で高いピークレベルが現れる送信信号を生成することが可能となる。
【0012】
また、第3の発明として、
前記所定周波数は、1kHz以下であり、
前記N個の周波数帯の基準周波数は、10kHz以上である、
第1又は第2の発明の検出装置を構成してもよい。
【0013】
また、第4の発明として、
前記送信回路部は、前記所定周波数を可変に設定する間隔周波数設定部を有する、
第1〜第3の何れかの発明の検出装置を構成してもよい。
【0014】
第4の発明によれば、合成する周波数信号の間隔周波数を可変に設定して送信信号を生成することができる。
【0015】
また、第5の発明として、
前記間隔周波数設定部は、前記移動体の移動速度に基づいて前記所定周波数を設定する、
第4の発明の検出装置を構成してもよい。
【0016】
第5の発明によれば、送信信号に現れるピークレベルの時間間隔を、移動体の移動速度に応じて調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車上装置の構成例を示すブロック図。
図2】送信信号生成部の構成例を示すブロック図。
図3】送信信号の生成を説明する図。
図4】送信信号の包絡線の一例を示す模式図。
図5】基準周波数について生成される周波数信号を示す図。
図6】地上子の検出を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。以下では、移動体を列車とし、列車に設置される車上装置へ本発明の検出装置を適用する例を示す。また、地上子は電磁結合用回路を内蔵して構成されているが、本実施形態の説明においては実質的に地上子が電磁結合用回路に相当することとなるため、電磁結合用回路のことを地上子として説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0019】
図1は、本実施形態における車上装置1の構成例を示すブロック図である。また、図2は、車上装置1の送信回路部5を構成する送信信号生成部51の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、車上装置1は、列車の車体底部に設けられる車上子3と、送信回路部5と、受信回路部7とを備える。
【0020】
本実施形態の車上装置1は、軌道に沿って配置された地上子を検出して列車の停止制御や速度制御、また位置検知等を行うATS(Automatic Train Stop)車上装置であり、車上子3が地上子に接近したときに車上子3が当該地上子と電磁結合することを利用して、列車が地上子の配置位置を通過したこと等を検出する。そのために、車上装置1は、所定の周波数成分を含む送信波を車上子3から連続的に出力するとともに、車上子3からの入力信号に生じる変化を常時解析して当該電磁結合を検出する。
【0021】
ここで、地上子は、上述した通り車上子3からの送信波と電磁結合する電磁結合用回路に相当しており、共振回路であるLC回路を構成しているため、その回路定数(コイルのインダクタや、コンデンサの容量)によって選択周波数が予め設定される。選択周波数は、N個(N≧2)の基準周波数のうちの何れか1つの基準周波数とされる。基準周波数は、10kHz以上の周波数として予め設定される。本実施形態では例えばN=9とされ、地上子には、10kHz以上の異なる9個の基準周波数f1〜f9のうちの何れか1つが選択周波数として設定される。
【0022】
車上子3は、送信回路部5(出力用トランス59)から入力される送信信号に応じた送信波を出力する出力用コイル(1次コイル)31と、出力用コイル31からの出力に応じて入力信号が誘起される入力用コイル(2次コイル)33とを有するコイル部である。
【0023】
送信回路部5は、送信信号生成部51と、間隔周波数設定部53と、DA変換部55と、アンプ部57と、出力用トランス59とを備える。
【0024】
送信信号生成部51は、図2に示すように、周波数帯信号生成部511(f1周波数帯信号生成部511−1〜f9周波数帯信号生成部511−9)と、合成波生成部513とを備える。各周波数帯信号生成部511は、それぞれ対応する基準周波数f1〜f9に係る周波数帯信号(f1周波数帯信号〜f9周波数帯信号)を生成する。そして、合成波生成部513は、f1周波数帯信号〜f9周波数帯信号を合成して送信信号を生成する。この送信信号生成部51は、例えば、所定のクロック信号生成器やFPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて実現することができる。
【0025】
図3は、送信信号生成部51による送信信号の生成を説明する図であり、横軸を周波数とし、縦軸を信号レベルとして、合成のもととなる周波数信号を示している。また、図4は、横軸を時間とし、縦軸を信号レベルとして、送信信号の包絡線の一例を模式的に示した図である。
【0026】
先ず、周波数帯信号生成部511は、対応する基準周波数を含むように設定されるN個(本実施形態ではN=9)の周波数帯の周波数信号を用いて、その基準周波数に係る周波数帯信号を生成する。具体的には、基準周波数f1〜f9をそれぞれ含む周波数帯(f1周波数帯〜f9周波数帯)は、隣接する周波数帯が重ならないように設定される。そして、周波数帯信号生成部511は、対応する周波数帯に含まれる複数の周波数信号であって、所定周波数間隔の周波数信号(信号波形は任意に設計することが可能であり、例えば正弦波信号とすることができるが、三角波信号や矩形波信号を採用することとしてもよい)を積算して合成し、周波数帯信号を生成する。図3では、合成する周波数信号の間隔周波数を200Hzとして例示している。具体的には、間隔周波数は、各基準周波数f1〜f9の公約数となる値として設定される。周波数帯信号生成部511は、この間隔周波数を用いて例えば基準周波数f1を含むf1周波数帯の複数の周波数信号を生成し、これらを合成して周波数帯信号を生成する。ただし周波数信号として基準周波数f1自身を含んでもよいし、含まなくてもよい。本実施形態では、この間隔周波数の値は間隔周波数設定部53によって設定され、設定された間隔周波数と、周波数帯の幅とによって、合成される周波数信号の数が決まる。間隔周波数の値が大きければ周波数信号の数は少なく、小さければ多くなる。
【0027】
例えば、f1周波数帯信号生成部511−1は、基準周波数f1を含むf1周波数帯f11〜f1n内の200Hz間隔の周波数信号S11〜S1nを生成することで、f1周波数帯信号を生成する。f2周波数帯信号生成部511−2〜f9周波数帯信号生成部511−9も同様の要領で、合成のもととなる周波数信号S21〜S2n,・・・,S91〜S9nをそれぞれ生成して合成し、f2周波数帯信号〜f9周波数帯信号を得る。
【0028】
続いて、合成波生成部513は、f1周波数帯信号〜f9周波数帯信号を重畳させるように積算して合成し、それらの合成波となる送信信号を得る。この送信信号には、図4に示すように、間隔周波数に対応する時間間隔で信号レベルの高いピークレベルが現れる。例えば間隔周波数を200Hzとした場合、地上子の選択周波数として設定され得る基準周波数f1〜f9の周波数成分を含み、200Hzの逆数で求まる約5msec間隔でピークレベルPを有する送信信号が得られる。周波数帯信号生成部511が生成する1つ1つの周波数信号のレベルは小さいものの、全ての周波数信号が合成されることで高いピークレベルが現れることとなる。
【0029】
ここで、間隔周波数の周期で送信信号に高いピークが現れるのは、合成のもととなる周波数信号S21〜S2n,・・・,S91〜S9nの各々の位相が、間隔周波数の周期で元の位相に戻るからである。図5は、基準周波数と、当該基準周波数について生成される周波数信号との関係を示す図である。図5では、一部の周波数信号をA0,A1,A2,・・・,Akと表記しており、そのうちの周波数信号A0が、基準周波数の周波数信号に対応している。
【0030】
上記したように、間隔周波数(所定周波数間隔)Δfは、基準周波数f1〜f9の公約数となる値として設定される。そのため、例えば基準周波数f1に着目すると、基準周波数f1と間隔周波数Δfとには次式(1)の関係が成り立ち、この場合の周波数信号A0は、間隔周波数Δfを用いて次式(2)で表すことができる。
f1/Δf=m (m:自然数) …(1)
A0(=f1)=mΔf …(2)
【0031】
したがって、基準周波数がf1の場合の周波数信号A1,A2,・・・,Akは、次式(3)〜(5)等で表すことができる。
A1=f1+Δf=mΔf+Δf=Δf(m+1) …(3)
A2=f1+2Δf=mΔf+2Δf=Δf(m+2) …(4)
・・・
Ak=f1+kΔf=mΔf+kΔf=Δf(m+k) (k:自然数) …(5)
【0032】
ところで、間隔周波数Δfの周期(=1/Δf)が基準周波数f1の何周期分なのかを計算すると、基準周波数f1の周期は1/mΔfであるから、次式(6)に示すように、基準周波数f1のちょうどm周期分が隔周波数Δfの1周期と一致する。
(1/Δf)/(1/mΔf)=m …(6)
【0033】
同様に周波数信号A1,A2,・・・,Akの周期についても求めると、例えば周波数信号A1では、次式(7)に示すように、そのm+1周期分が隔周波数Δfの1周期と一致し、周波数信号Akであれば、次式(8)に示すように、m+k周期分が間隔周波数Δfの1周期と一致する。
(1/Δf)/(1/(Δf(m+1))=m+1 …(7)
(1/Δf)/(1/(Δf(m+k))=m+k …(8)
【0034】
この関係は、基準周波数f2〜f9でも同様であり、間隔周波数Δfを基準周波数f1〜f9の公約数とすることで、各基準周波数f1〜f9について生成される周波数信号S11〜S1n,・・・,S91〜S9nは、全て間隔周波数Δfの周期で位相が元に戻る(例えば図5の例では90度)。よって、これら周波数信号S11〜S1n,・・・,S91〜S9nを合成した波形、つまり送信信号の波形には、間隔周波数Δfの周期で必ずピークが現れる。ここでは、A0を基準周波数として説明したが、A0が基準周波数である必要はなく、間隔周波数Δfが基準周波数f1〜f9の公約数であれば、Δfの周期で全ての周波数信号S21〜S2n,・・・,S91〜S9nの各々の位相が元の位相に戻る。
【0035】
なお、初期位相は、図5に例示したように、正弦波90度にすると好適である。周波数信号S11〜S1n,・・・,S91〜S9nの合成時に現れるピークが最も高くなるからである。ただし、間隔周波数Δfが基準周波数f1〜f9に対して十分小さいため、例えば初期位相を0度としてもピーク値に実用上の大きな差はなく、90度に限定する必要はない。また、合成する周波数信号S11〜S1n,・・・,S91〜S9nは同期する必要があるが、これらは所定のクロック信号生成器やFPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて同一の発振源から分周して実現されるので、おのずと同期する。
【0036】
図1に戻り、間隔周波数設定部53は、間隔周波数を可変に設定する。本実施形態では、間隔周波数設定部53には、運転台等から列車速度が随時入力される。間隔周波数設定部53は、この列車速度に基づいて間隔周波数を設定する。
【0037】
上記したように、送信信号のピークレベルは、間隔周波数の逆数の時間間隔で現れる。一方で、列車の通過に伴い車上子3が地上子に接近している間に送信波のピークレベル部分が出力されれば、信号レベルが高いピークレベルの送信信号を地上子に送信することができる。したがって、間隔周波数を大きい値にしてピークレベルが現れる時間間隔を短く調整すれば、列車の高速走行時においても、ピークレベルの送信信号を地上子に送信できる。これに対し、間隔周波数を小さい値にすれば合成する周波数信号の数を増やすことができ、周波数帯信号生成部511が生成する1つ1つの周波数信号のレベルが同じ場合には、より信号レベルの高いピークレベルが現れる送信信号を生成できる。
【0038】
そこで、間隔周波数設定部53は、列車速度が速いほど間隔周波数を大きく、遅いほど間隔周波数を小さくして間隔周波数を設定する。例えば、予め高速域/中速域/低速域の速度域毎に対応する間隔周波数の値を設定しておき、列車速度が何れの速度域に属するのかに応じて間隔周波数を設定する。より詳細には、各速度域の間隔周波数は、各基準周波数f1〜f9の公約数となる値として予め定められる。そして、何れの間隔周波数の値も、1kHz以下で、低速域から順に段階的に大きい値とすると好適である。
【0039】
DA変換部55は、合成波生成部513からの送信信号をアナログ信号に変換する。変換後の送信信号は、アンプ部57に出力される。アンプ部57は、DA変換部55からの送信信号を増幅する。増幅された送信信号は、出力用トランス59を介して車上子3の出力用コイル31に出力される。
【0040】
受信回路部7は、入力用トランス71と、AD変換部73と、BPF75と、FFT部77と、地上子検出部79とを含む。この受信回路部7は、入力用コイル33からの入力信号を入力用トランス71を介してAD変換部73に出力し、デジタル信号に変換する。変換後の入力信号は、BPF75に出力される。
【0041】
BPF(Band Pass Filter)75は、AD変換部73からの入力信号に対して所定の周波数帯域の周波数成分を通過させ、帯域外の周波数成分を遮断する。通過させる周波数帯域は、f1周波数帯〜f9周波数帯を含む周波数帯域として設定される。BPF75を通過した入力信号は、FFT部77に出力される。
【0042】
FFT部77は、BPF75からの入力信号について高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)による周波数解析を行い、周波数スペクトルを算出する。周波数解析結果は、地上子検出部79に出力される。
【0043】
地上子検出部79は、FFT部77による周波数解析結果に基づいて、車上子3が地上子に接近したことを検出する。ここで、車上子3が地上子に接近して当該地上子と電磁結合すると、車上子3の入力用コイル33には、当該地上子の選択周波数を基準周波数とする周波数帯内の何れかの周波数信号の信号レベルが相対的に高く、他の周波数信号の信号レベルが相対的に低くなるように入力信号が誘起される。そこで、地上子検出部79は、入力信号の周波数解析結果から、前述のように車上子3が地上子と電磁結合したことで相対的に高い信号レベルとなっている周波数信号の有無を判定する。そして、信号レベルが相対的に高い周波数信号が入力信号に含まれている場合に、当該高い信号を含む周波数帯の基準周波数を選択周波数とする地上子に接近したことを検出する。この地上子検出部79は、例えばDSP(Digital Signal Processor)を用いて実現することができる。
【0044】
図6は、地上子検出部79による地上子の検出を説明する図であり、上段(a)は、車上子3が地上子に接近していないときの入力信号の周波数解析結果の模式図である。一方、下段(b)は、選択周波数として基準周波数f1が選択された地上子に車上子3が接近し、当該地上子と電磁結合したときの周波数解析結果の模式図である。なお、図6では、各周波数帯内の周波数信号を15本として示している。図6の例では、f1周波数帯内の周波数信号S17の信号レベルが他の周波数信号の信号レベルと比べて相対的に高くなっている。この場合、地上子検出部79は、周波数解析結果から、入力信号に他と比べて相対的に高い信号S17が含まれていると判定し、そのf1周波数帯の基準周波数f1を選択周波数とする地上子への接近を検出することとなる。相対的に高い信号S17の検出方法は、いわゆるピーク信号の検出技術を採用することができ、例えばピーク信号を検出したとしても所定の閾値条件を満足しない場合にはピーク信号では無いと判断することで、誤判定を回避することができる。検出結果は、列車に搭載された不図示の列車制御部に出力され、当該列車制御部が行う列車の停止制御や速度制御、また位置検知等に用いられる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、車上装置1は、地上子の選択周波数として選択され得る基準周波数f1〜f9の周波数成分を含み、間隔周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信信号を生成して、当該送信信号に応じた送信波を出力することができる。そして、入力用コイル33に誘起される入力信号を周波数解析し、他の周波数信号と比べて信号レベルが相対的に高い周波数信号が入力信号に含まれている場合に、それを含む周波数帯の基準周波数を選択周波数とする地上子に接近したことを検出することができる。これによれば、生成する1つ1つの周波数信号は信号レベルが小さくて済む。すなわち、上述した特異な周波数間隔で周波数信号が生成されて合成される結果、間隔周波数に対応する時間間隔でピークレベルが現れる送信波となるため、車上装置1と地上子との間の信号送受に係るエネルギー伝達を効率よく実現することができ、車上装置1の小型化および低消費電力化を実現することができる。
【0046】
なお、上記した実施形態では、移動体を列車とし、列車に搭載される車上装置へ本発明の検出装置を適用する例を挙げて説明したが、本発明の検出装置は、例えば自動車やバス等、列車以外の移動体にも適用が可能である。例えば、バス専用道を走行するBRT(Bus Rapid Transit)システムのバスに適用し、バス専用道に沿って配置された電磁結合回路を内蔵する地上子を検出することでその走行位置や当該位置における規制速度等を検出するといったことが可能となる。
【0047】
また、上記した実施形態では、地上子(電磁結合回路)には、1つの周波数帯の基準周波数が選択周波数として設定されているとして説明したが、2つ以上の周波数帯それぞれの基準周波数が選択周波数として設定されていることとしてもよい。その場合でも、隣接する周波数帯が重ならないように設定されているため、検出装置である車上装置1は、問題なく、選択周波数を検出することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 車上装置、3 車上子、31 出力用コイル、33 入力用コイル、5 送信回路部、51 送信信号生成部、511(511−1〜511−9) 周波数帯信号生成部(f1周波数帯信号生成部〜f9周波数帯信号生成部)、513 合成波生成部、53 間隔周波数設定部、55 DA変換部、57 アンプ部、59 出力用トランス、7 受信回路部、71 入力用トランス、73 AD変換部、75 BPF、77 FFT、79 地上子検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6