【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態は、上側壁構造体と、これに対向する下側壁構造体とを有するケーシングシェルを備える注入液加温器に関する。ケーシングシェルは、
−上側壁構造体と下側壁構造体との間でケーシングシェルを貫通する流体流路又は通路と、
−ケーシングシェルを通過して注入液が流れるように流体流路又は通路の両端に連結された流体入口及び出口と、を取り囲む。ハウジングシェルは、熱伝導性でかつ電気絶縁性の材料で形成され、加熱要素は、ハウジングシェルに接着され、ハウジングシェルに熱結合される。流体流路又は通路は、ハウジングシェル材料との直接の物理的接触によって熱エネルギーが注入液に伝達されるように、ハウジングシェルを通過して又はハウジングシェルの周りに延在する。注入液加温器のケーシングシェルは、射出成形などの適切な製造工程によって製造された熱可塑材又はエラストマー配合材を含むことができる。ケーシングシェルは、ハウジングシェルを機械的衝撃、衝突及び外部環境の汚染物質から保護する機能を果たせる。ケーシングシェルは、流体入口及び出口における注入液の流れの方向を横切る断面に沿って長方形、楕円形又は円形の断面形状を持つことができる。
【0007】
ケーシングシェルの流体入口及び出口は、低温又は未加熱の注入液が入口へ進入し、注入液が注入液加温器を通過して流れて、加熱又は加温された注入液が出口を通過して患者へ流れるようにする。
【0008】
ハウジングシェルは、この注入液加温器において、ハウジングシェルに接着された加熱要素即ち厚膜及び/又は薄膜抵抗器の物理的キャリアとして、及びハウジングシェル材料と注入液との間の物理的接触によって熱エネルギーを注入液へ直接伝達する熱交換器又はヒートプレートとして作用することによって、有利な多目的の役割を有する。この特性により、最小限の分離部品しか製造組立する必要のないコンパクトな注入液加温器を提供できる。ハウジング材料は、広範囲の加熱要素材料特に厚膜及び薄膜抵抗器の基材として非常に適する酸化アルミニウム(Al
2O
3)、硝酸アルミニウム又は酸化ベリリウムなどのセラミック材料を含むことが好ましい。セラミック材料は、更に、優れた熱伝導性及び優れた電気絶縁性を有する。ハウジングシェルの材料は、患者へ分配される注入液と直接接触するので、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)などの生体適合性セラミック材料などの生体適合性であることが好ましいことが、当業者には分かるだろう。又は、硝酸アルミニウム又は酸化ベリリウムセラミック材料などの非生体適合性材料を使用できる。
【0009】
適切な電気絶縁性を持つために、ハウジングシェルは、公的要件を満たすために1×10
9オーム*mより大きい電気抵抗率を持つ材料を含むことが好ましい。適切な熱伝導性を持つために、ハウジングシェルは、0.5W/(m・K)より大きい、より好ましくは1.0W/(m・K)より大きい、更に好ましくは10.0W/(m・K)より大きい熱伝導率を持つ材料で製造されることが好ましい。
【0010】
ハウジングシェルは、例えばソリッド物体を成形又は機械加工することによって、単体要素として製作できる。流体流路は、要素の中央部を貫通するほぼ直線的長方形状を持つことができる。別の実施形態において、ハウジングシェルは、例えば糊付け、はんだ付け、圧入、溶接などによって個別に製造された後に接着される複数の別個の構造体を備える。この種の1つの実施形態において、ハウジングシェルは、別個の上側ハウジングシェル及び下側ハウジングシェルに形成された上側壁構造体と下側壁構造体とを備え、上側ハウジングシェルと下側ハウジングシェルは、相互に接着される。この実施形態において、流体流路は、例えば、ハウジングシェルを貫通する流体通路を形成するようにハウジングシェルの上側壁構造体と下側壁構造体の対面する表面に形成された溝又はトレンチを合わせることによって、上側ハウジングシェルと下側ハウジングシェルとの間に延在できる。流体流路は、多様な形状を持つことができるが、好ましくは、注入液とハウジングシェル(熱交換器として機能する)との間の接触面積を最大化して、注入液加温器の流体加熱キャパシティ(例えばリットル/分の単位で表される)を増大する形状を持つ。1つの実施形態において、流体流路は、入口及び出口における注入液の流れに対して垂直に延びる断面平面において蛇行する形を有する。この平面は、ハウジングシェルが平板形の構造を持つ場合には、ハウジングシェルの長手軸に対して直交できる。別の実施形態において、流体流路は、板形のハウジングシェルの長手軸に沿って延びる実質的に直線形の流路を備える。後者の実施形態において、流体流路は、注入液とハウジングシェルとの間の接触面積を最大化するために、ハウジングシェルの幅の十分な部分を貫通することが好ましい。流体流路は、0.1mm〜5cm例えば0.5mm〜2cmの高さを持つ実質的に長方形の直線的トンネルとして形成できる。ハウジングシェルが平板形構造を持つ場合、その高さは4.0cm未満、好ましくは1.0cm未満とすることができる。
【0011】
更に別の実施形態の注入液加温器において、流体流路は、流体流路がハウジングシェルの上側壁構造体とケーシングの上側壁構造体との間に配置された第1の流路セグメントを備えるように、ハウジングシェルの周りに延在する。流路は、更に、ハウジングシェルの下側壁構造体とケーシングの下側壁構造体との間に配置された第2の流路セグメントを備える。この実施形態において、ハウジングシェルの上側及び下側壁構造体は、両方共、注入液と物理的に接触して、ハウジングシェルと注入液との間に大きな接触面積を与えて、効率的な熱エネルギーの伝達を保証する。別の実施形態において、流体流路は、ハウジングシェルの周りに延在する単一の流路セグメントのみを備えることができることが、当業者には分かるだろう。
【0012】
加熱要素は、加熱要素に提供される駆動電圧又は電流を注入液から隔離して加熱要素の電気端子又は構成要素への腐食攻撃を防止するために、上側及び/又は下側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面に接着されることが好ましい。この種の1つの実施形態において、加熱要素は、例えばスクリーン印刷又はその他の適切な接着機構によって、上側及び/又は下側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面に直接接着された薄膜抵抗器又は厚膜抵抗器を備える。従って、これらの実施形態において、上側及び下側壁構造体の電気絶縁特性は、加熱要素(1つ又は複数)を加熱するために加熱要素に与えられるDC又はAC電圧/電流から注入液を電気絶縁するために使用される。厚膜抵抗器又は薄膜抵抗器は、当然、用途の要件に応じて所望の抵抗値を与えるように直列又は並列に結合された複数の抵抗器要素又は個別の抵抗器を備えることができる。厚膜又は薄膜抵抗器は、上側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面の全体面積のかなりの部分、及び/又は、下側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面の全体面積のかなりの部分を被覆できる。厚膜又は薄膜抵抗器の合計抵抗は、例えば0.001オーム〜10Kオームの範囲で広範囲に変動する。上側壁構造体及び下側壁構造体の熱伝導性は、厚膜抵抗器において放散された熱エネルギーが流体流路へ効率よく伝導されるようにする。上側及び/又は下側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面は、厚膜又は薄膜抵抗器への電力を受け取るための1対の電気結合端子を備えることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、加熱要素は、ハウジングシェルの上側壁構造体と下側壁構造体との間に取り囲まれた充電式電池、非充電式電池、スーパーキャパシタなどの携帯用エネルギー源を備える。この実施形態は、非常時又は戦場などの現場において使用できる完全携帯用注入液加温器を提供し、患者を冷やすことなく血液などを注入ができるようにする。この注入液加温器の単純さは、小型であり軽量であることと結合して、加温器を運ぶ医療従事者にとって顕著な利点となる。
【0014】
この実施形態によれば、携帯用エネルギー源は、好ましくはハウジングシェルとの直接の物理的接触によって、流体流路に熱結合されて、携帯用エネルギー源において放散される熱エネルギー(エネルギー源の消耗に関連する)を流体流路及びこれを通過して流れる注入液へ熱伝導する。この文脈において、「直接の物理的接触」は、大気又はその他の気体物質の通路又は層が介在しない接触を意味する。ハウジングシェル、流体流路及び携帯用エネルギー源の材料、形状及び寸法は、携帯用エネルギー源のハウジングと流体流路との間の熱抵抗が、100℃/W未満、好ましくは25℃/W未満、更に好ましくは10℃/W未満であるように構成されることが好ましい。
【0015】
例えば内部インピーダンスにより携帯用エネルギー源において放散された熱エネルギーが独占的に注入液を加熱するために利用されるか、又は上述の厚膜又は薄膜抵抗器などの加熱要素において放散された熱エネルギーを補足できることが、当業者には分かるだろう。後者の場合、両方の熱源が、注入液の加熱に寄与する。このようにして、携帯用エネルギー源によって発生した過剰な熱は、周囲空気に浪費される代わりに、注入液を加温又は加熱する。従って、携帯用エネルギー源において蓄積されたエネルギーが効率よく使用される。
【0016】
ハウジングシェルは、高さ2.0cm未満好ましくは1.0cm未満の高さを持つ平板形構造体を持つことができる。
【0017】
本発明の別の形態は、上側壁構造体と、これに対向する下側壁構造体とを有するケーシングシェルを備える注入液加温器に関する。流体流路又は通路は、上側壁構造体と下側壁構造体との間でケーシングシェルを貫通する。流体入口及び出口は、ケーシングシェルを通過して注入液が流れるように流体流路又は通路の両端に連結される。加熱要素は、注入液に熱エネルギーを伝達するために流体流路に熱結合され、充電式電池、非充電式電池、スーパーキャパシタなどの携帯用エネルギー源を備える。本発明のこの形態は、例えば、非常時又は戦場など様々な有利な現場使用のために完全携帯用注入液加温器を提供し、患者を冷やすことなく流体又は血液を注入できるようにする。携帯用注入液加温器の単純さは、小型である及び軽量であることと結合して、加温器を運ぶ医療従事者にとって顕著な利点となる。ケーシングシェルは、射出成形によって製作された熱可塑材又はエラストマー配合材を含むことができる。ケーシングシェルは、加熱要素及び携帯用エネルギー源を完全に取り囲み又は封入して、加熱要素及びエネルギー源を衝撃及び衝突及び外部環境の汚染物質から保護できる。携帯用エネルギー源は流体流路に熱結合されるので、例えば携帯用エネルギー源の内部インピーダンスによりエネルギー源において放散された熱エネルギーは、周囲空気に浪費される代わりに、注入液へ伝達されて注入液を加熱する。従って、携帯用エネルギー源に蓄積されたエネルギーは、効率良く使用されるので、携帯用エネルギー源のサイズ、重量及びエネルギー蓄積キャパシティを小さくするか、又は所定のサイズ、重量又はキャパシティに対してより高いエネルギー蓄積キャパシティの携帯用エネルギー源を提供できるようにする。携帯用エネルギー源と流体流路との間の熱結合は、エネルギー源と流路との間の、直接又は間接の物理的接触によって与えられることが好ましい。この文脈において、「直接又は間接の物理的接触」とは、大気空気又は他の気体物質の通路又は層が介在しない接触、例えば、以下に説明する電気絶縁性かつ熱伝導性のエネルギー源ハウジング等が介在しない接触、を意味する。携帯用エネルギー源と注入液との間の熱抵抗は、100℃/W未満、好ましくは25℃/W未満、更に好ましくは10℃/W未満である。
【0018】
携帯用エネルギー源は、周りを取り囲む電気絶縁性でかつ熱伝導性のエネルギー源ハウジングの中に取り囲まれる。エネルギー源ハウジングは、ケーシングシェル内部に配置されることが好ましい。後者の実施形態において、エネルギー源ハウジングとケーシングシェルは、例えば全ての側面においてエネルギー源ハウジングを取り囲む流体流路を形成するように、同軸に芯合わせすることができる。後者の場合、流体流路は、携帯用エネルギー源から注入液への熱エネルギーの伝達を最大化するように、エネルギー源ハウジングの全周囲の周りに延在する又はこれを取り巻く。同時に、携帯用エネルギー源の効率的な液体冷却が得られる。
【0019】
エネルギー源ハウジング及びケーシングシェルの各々は、実質的に円形、楕円形又は長方形の断面形状を持つことができる。流体流路は、エネルギー源ハウジングの外面とケーシングシェルの上側及び下側壁構造体との間に形成できる。エネルギー源ハウジングは、ハウジングシェルの材料に関連して上に説明したセラミック材料のいずれでも含むことができることが、当業者には分かるだろう。加熱要素は、更に、例えばスクリーン印刷によって、流体流路とは反対側の、エネルギー源ハウジングの表面に、直接接着された薄膜又は厚膜抵抗器を備えることができる。
【0020】
エネルギー源ハウジングは、充電式又は非充電式電池のシェル又はケーシングによって形成されるか、又は既存の別個のバッテリシェル(1つ又は複数)を取り囲む別個のハウジングとして形成されて、別個のバッテリコンパートメントを形成できる。
【0021】
第1の及び第2の形態に関連して上に説明した注入液加温器の各々は、出口又は出口付近など流体流路内の適切な位置で注入液の温度を測定するための温度センサを備えることができる。制御器回路は、作動上温度センサ及び加熱要素に結合されて、加熱要素の瞬間的な電力消費を制御できる。制御器回路は、温度センサからの温度データに基づいて注入液の所望の又は目標の温度に応じて加熱要素の電力消費を調節するように作られる。制御器回路は、デジタル信号プロセッサなどのプログラマブルマイクロプロセッサ及び制御アルゴリズムを実行する適切なプログラムコード又は命令を備えることが好ましい。プログラマブルマイクロプロセッサは、好ましくは適切なインプット及びアウトプットポート及びEEPROM又はフラッシュメモリなどの周辺デバイスを備える、既成の業界基準のマイクロプロセッサとすることができる。但し、制御器回路は、FPGAデバイス又は専用集積回路(ASIC)に組み込まれた組合せロジック及びメモリを備える配線接続の回路などの適切に構成されたプログラマブルロジックによっても実施できることが、当業者には分かるだろう。制御器回路は、上側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面に、又は下側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面に、接着されることが好ましい。制御器回路は、十分な表面積が利用可能である場合、上側又は下側壁構造体の厚膜抵抗器と同じ表面に配置できる。本発明の上述の実施形態に従って制御器回路のキャリアとしてハウジングシェルを使用すると、注入液加温器のサイズを更に縮小でき、注入液加温器の製造時に組み立てなければならない分離部品の数を減少できる。本発明のいくつかの実施形態において、制御器回路は、加熱要素において電力を消費するために加熱要素へ変調駆動信号を与えるように構成された1つ又はそれ以上の半導体トランジスタ及び/又は半導体ダイオードを備える。半導体トランジスタは、1つ又はそれ以上のパワーMOSトランジスタ又はIGBTを備えることができる。制御器回路は、既知量の電力が加熱要素において放散されるように、加熱要素例えば厚膜抵抗器を横切ってPWM(パルス幅変調)駆動信号を与えるように半導体トランジスタを制御する。制御器回路は、PWM駆動信号のデューティサイクルを調節することによって加熱要素において消費される電力量を調節するように作ることができる。また、加熱要素の作動時に制御器回路の1つ又はそれ以上の半導体トランジスタ及び/又は半導体ダイオードにおいて放散される過剰な熱エネルギーも、半導体を、上側及び/又は下側壁構造体の、流体流路とは反対側の表面に接着することによって、流体流路に伝達できる。過剰な熱エネルギーは、1つ又はそれ以上の半導体トランジスタ及び/又は半導体ダイオードにおける抵抗性及び容量性寄生損によって生じる。
【0022】
温度センサは、加熱又は加温された注入液の温度を正確に測定できるように、流体流路において例えば出口に又は出口付近に配置された半導体型センサを備えることができる。注入液温度データは、デジタルコード化されたフォーマットで又は制御器回路においてアナログ−デジタル変換器(A/Dコンバータ)によってサンプル化されるアナログ電圧、チャージ又は電流信号として、制御器回路に送信できる。
【0023】
温度センサの有利な実施形態は、厚膜抵抗器又は薄膜抵抗器、好ましくは加熱要素の厚膜又は薄膜抵抗器を備える。厚膜抵抗器の抵抗は高い温度依存度を持つので、抵抗器は温度感知に特に有用であり、制御器回路は、厚膜抵抗器の瞬間的抵抗を測定するように作れる。制御器は、適切な計算アルゴリズムによって又はルックアップテーブルによって、瞬間的抵抗測定値から抵抗器の温度を測定できる。更に、厚膜抵抗器及びハウジングシェルの上側又は下側壁構造体が流体流路と良好な熱接触を持つ場合、厚膜抵抗器の温度は注入液の温度とほぼ同じなので、抵抗器の温度は注入液温度の優れた推定値である(設定された補正率で調整できる)。
【0024】
本発明の別の第3の形態は、患者への投与時に注入液を加温する方法に関する。方法は、
−上述の形態又はその実施形態のいずれかに従った注入液加温器を用意するステップと、
−例えば腕輪又はテープを用いて患者に注入液加温器を固定するステップと、
−出口を患者の静脈に挿入されたVenflon(登録商標)又はIVカテーテルに接続するステップと、
−入口を所定容量の注入液を含む注入液バッグ又は容器に接続するステップと、を含む。必要な場合、短い延長チューブを出口とVenflon又はIVカテーテルとの間に挿入できる。同様に、入口と注入液バッグ又は容器との間に延長チューブを連結できる。
【0025】
本発明の注入液加温器を非常にコンパクトな寸法で製造できることは、テープ、絆創膏、包帯、ゴムバンドなどの適切な接着装置又は物質を用いて注入液加温器を患者の体に例えば脚又は腕に直接都合よく固定できるようにする。これによって、注入液送達工程が単純化され、偶発的な外れのリスクが最小化される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態について、添付図面に関連して更に詳しく説明する。