(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂で成型された第1枠材(2A)、第2枠材(2B)および方立材(6)を用い、一対の前記第1枠材(2A)および一対の前記第2枠材(2B)を矩形枠状に配置し、各々の両端の溶着面(3)を前記矩形枠状の対角方向に沿って配置し、隣接する前記第1枠材(2A)および前記第2枠材(2B)の前記溶着面(3)同士を対向させるとともに、前記方立材(6)を一対の前記第1枠材(2A)の中間部に配置し、前記方立材(6)の端部の前記溶着面(3)と一対の前記第1枠材(2A)の中間部の前記溶着面(3)とを対向させておき、対向する前記溶着面(3)の間にヒータ板(20,60)を配置し、前記ヒータ板(20,60)を前記溶着面(3)に当接させ、対向する前記溶着面(3)をそれぞれ加熱して溶融させ、前記溶着面(3)の間から前記ヒータ板(20,60)を離脱させ、溶融した前記溶着面(3)同士を圧着し、前記第1枠材(2A)、前記第2枠材(2B)および前記方立材(6)を接合する方立付き枠体(1)の製造方法であって、
前記溶着面(3)を加熱する際に、前記溶着面(3)の溶融で生じる溶融代に応じて一対の前記第1枠材(2A)を前記矩形枠状の内側向きに移動させ、
前記溶着面(3)同士を圧着する際に、一対の前記第1枠材(2A)および一対の前記第2枠材(2B)をそれぞれ前記矩形枠状の内側向きに移動させることを特徴とする方立付き枠体の製造方法。
熱可塑性樹脂で成型された第1枠材(2A)、第2枠材(2B)および方立材(6)を用い、一対の前記第1枠材(2A)および一対の前記第2枠材(2B)を矩形枠状に配置し、各々の両端の溶着面(3)を前記矩形枠状の対角方向に沿って配置し、隣接する前記第1枠材(2A)および前記第2枠材(2B)の前記溶着面(3)同士を対向させるとともに、前記方立材(6)を一対の前記第1枠材(2A)の中間部に配置し、前記方立材(6)の端部の前記溶着面(3)と一対の前記第1枠材(2A)の中間部の前記溶着面(3)とを対向させておき、対向する前記溶着面(3)の間にヒータ板(20,60)を配置し、前記ヒータ板(20,60)を前記溶着面(3)に当接させ、対向する前記溶着面(3)をそれぞれ加熱して溶融させ、前記溶着面(3)の間から前記ヒータ板(20,60)を離脱させ、溶融した前記溶着面(3)同士を圧着し、前記第1枠材(2A)、前記第2枠材(2B)および前記方立材(6)を接合する方立付き枠体(1)の製造装置であって、
前記第1枠材(2A)および前記第2枠材(2B)の端部を保持する端部保持部材(10)と、前記第1枠材(2A)の中間部を保持する中間部保持部材(50)と、前記端部保持部材(10)および前記中間部保持部材(50)を前記矩形枠状の内側向きに移動させる保持部材駆動機構(11,51)と、前記第1枠材(2A)の端部の前記溶着面(3)と前記第2枠材(2B)の端部の前記溶着面(3)との間に設置される角部ヒータ板(20)と、前記第1枠材(2A)の中間部の前記溶着面(3)と前記方立材(6)の端部の前記溶着面(3)との間に設置される中間部ヒータ板(60)と、を有し、前記角部ヒータ板(20)および前記中間部ヒータ板(60)は、前記第1枠材(2A)の内側向きの移動に伴って前記第1枠材(2A)の内側向きに移動することを特徴とする方立付き枠体の製造装置。
【背景技術】
【0002】
近年、建材として、熱可塑性樹脂製の枠材を組み立てた枠体が多用されている。このような樹脂製の枠体としては、樹脂サッシの樹脂枠、樹脂障子枠を構成する樹脂枠材などがある。
このような樹脂製の枠体の製造には、熱可塑性樹脂製の枠材を矩形枠状の四辺に配置し、各々の端部を相互に溶着することが行われている(特許文献1〜4参照)。
枠材は、それぞれの端面(溶着される溶着面となる)が枠材の長手方向に対して傾斜して形成され、これらの傾斜した溶着面同士を溶着することで、枠材は互いに交差方向に接合され、枠体のコーナー部分が形成される。例えば、溶着される枠材同士が90度となるように、溶着面の傾斜をそれぞれ45度とすることが一般的である。このような設定では、溶着面は、枠体の対角方向に沿って延びることになる。
【0003】
特許文献1には、前述した樹脂製の枠体を製造するための製造装置が記載されている。
この製造装置は、枠体となる矩形枠状の四隅に、それぞれ枠材の端部を保持する保持部材と、保持部材を矩形枠状の内側向きに移動させる保持部材駆動機構と、保持された枠材端部の傾斜した溶着面を加熱するヒータ板と、ヒータ板を溶着面に沿って移動させるヒータ板駆動機構とを備えている。
これらの各機構は、同じベース部材に支持され、枠体となる矩形枠状の四隅に設置される。ベース部材は、それぞれ四隅において枠材の縦横方向に移動可能とされ、その位置調整により多様な枠体の製造に対応することができる。
【0004】
この製造装置では、枠材の保持などの準備(準備工程)に続いて、溶着面の加熱(加熱工程)を行い、溶着面同士を圧着し(圧着工程)、形成された枠体を取り出すこと(取出工程)が行われる。
準備工程では、熱可塑性樹脂で成型された複数の枠材を矩形枠状に配置し、各々の両端の溶着面を矩形枠状の対角方向に沿って配置し、隣接する枠材の溶着面同士を対向させておく。
【0005】
加熱工程では、対向する溶着面の間にヒータ板を配置し、ヒータ板を溶着面に当接させ、溶着面を加熱する。加熱の間は、溶着面が溶融するまでには至らず、枠材の移動は行われない。溶着面の溶融が十分な状態となったら、ヒータ板による溶着面の加熱を継続するとともに、溶着面の溶融で生じる溶融代に応じて枠材を矩形枠状の内側向きに僅かに移動させる。加熱溶融に伴って、溶着面の樹脂がヒータ面に沿って展延するが、このような枠材の移動により、展延した溶融樹脂を含めた溶着面とヒータ面との接触が確保され、十分な加熱が維持される。
【0006】
加熱工程において、溶着面の溶融が十分になったら、圧着の準備を行う。先ず、枠材を矩形枠状の外側向きに移動させ、溶着面をヒータ板から離脱させる。また、ヒータ板を、溶着面の間から枠体の外側向きに後退させ、隣接する溶着面同士が直接対向した状態とする。
圧着工程では、枠材を矩形枠状の内側向きに移動させ、対向する溶着面同士を密着させ、さらに指定された力で押し付ける。これにより対向する溶着面同士が圧着され、四辺の枠材が四隅で連結され、矩形枠状の枠体が形成される。
取出工程では、保持部材による各枠材の保持を解除し、枠体として取り出す。
このような枠体の製造装置および製造方法により、樹脂製の枠体の製造が行われている。
【0007】
前述のような枠体の製造においては、展延した溶融樹脂が枠体の表面に現れ、いわゆるバリとして品質上問題となることがある。このため、従来、展延に伴うバリ発生の問題および接合強度の問題が種々検討されている。
特許文献1では、枠材の端部の溶着面の周囲を保持部材で囲い、溶融樹脂がヒータ板の表面に沿って溶着面の外周側へ展延することを防止し、枠材の外側でのバリの発生を抑制している。
特許文献2では、枠材の端部の溶着面の周囲のうち、とくに製品の外観に影響する露出面に保持部材を当接させ、バリとなる溶融樹脂を枠材の内側に誘導している。特許文献2では、裏側に発生したバリにより接合断面積として利用し、接合強度を向上させている。
【0008】
一方、前述のように製造される枠体としては、表面に化粧用の表材が積層されることがある。このような表材つき枠体においては、前述したバリ発生の問題に加えて、表材の巻き込みによる接合強度の問題が検討されている。
特許文献3では、溶着強度が高い基材に溶着強度が低い表材が張られた枠材を接合する際に、接合部の断面において基材の領域が表材の領域より広くなるようにしている。
【0009】
前述した特許文献1〜3は、それぞれヒータ板で昇温して加熱溶融していたが、枠材の溶着面を溶融する手段としては、高周波振動あるいは摩擦による溶融も用いられる。
特許文献4では、対向する溶着面の間に加熱要素を配置するが、加熱要素は高周波振動により溶着面を溶融するものが例示されている。そして、加熱要素による溶着面の溶融が確実に継続されるように、加熱要素と枠材の保持部材とを機械的に連結し、互いに連携して対角方向に移動させる構造が採用されている。
【0010】
ところで、前述した矩形の枠体では、矩形枠状の四辺に枠材を配置し、各々の端部同士を接合して枠体としていた。
これに対し、連窓用あるいは段窓用の建材として、中間に方立を有する方立付き枠体が利用されている。
方立付き枠体は、4本の枠材(一対の第1枠材および一対の第2枠材)で矩形枠状の枠体を形成し、第1枠材の中間部同士を方立材で連結して構成される(特許文献5の
図4参照)。
【0011】
このような方立付き枠体の製造においても、コーナー部での枠材同士の接合には、前述した保持部材およびヒータ板を有する製造装置を用い、枠材の端部に形成された傾斜した溶着面同士を溶着することが行われる。
一方、方立材の接合には、方立材の端部を三角形に形成し、第1枠材の中間部にV字状溝を形成し、これらを嵌め合わせて溶着することが行われる。
【0012】
すなわち、方立材の端部には、三角形の外側に傾斜した溶着面を形成しておく。第1枠材の中間部には、方立材の端部に対応したV字状の溝を形成し、その内側に一対の傾斜した溶着面を形成しておく。
そして、方立材の三角形と第1枠材のV字状の溝とを向かい合わせ、各々の溶着面の間にヒータ板を配置し、溶着面の樹脂を加熱溶融させる。さらに、一対の第1枠材を互いに近接させ、これにより方立材の三角形の溶着面と第1枠材のV字状の溝の溶着面とを溶着させることができる。
【0013】
このような方立材の端部と第1枠材の中間部との溶着は、前述した枠体(方立のない枠体)を組立てるための四隅の溶着(第1枠材と第2枠材との溶着)と同時に行うことが望ましい。
従来の製造工程では、前述した加熱工程における加熱を伴う枠材の移動は、方立材および第2枠材の連続方向(第1枠材と交差する方向)の移動のみとされる(特許文献5の
図13参照)。
【0014】
すなわち、製造装置においては、方立材および一対の第2枠材を、方立付き枠体の完成サイズに合わせて所定間隔で並列に保持し、各々の端部を互いに整列させておく。さらに、方立材および一対の第2枠材の各端部に沿って、第1枠材を保持する。この際、一対の第1枠材は、方立付き枠体の完成サイズより大きな所定間隔で保持しておく。つまり、第1枠材は、方立材および一対の第2枠材の各端部から離れて配置しておく。
【0015】
そして、第1枠材、第2枠材および方立材の各溶着面に沿ってヒータ板を配置し、加熱を行って、各溶着面を加熱溶融させる。
加熱の際には、一対の第1枠材を互いに近接する方向へ移動させ、所定の溶融代分の溶融樹脂をヒータ板の表面に沿って展開させる。ただし、第2枠材の移動は行わない。
【0016】
加熱溶融が十分になったら、ヒータ板を待避させ、一対の第1枠材を更に近接方向へ移動させ、各々対向する溶着面同士を圧着させる。これにより、第1枠材の端部と第2枠材との接合および第1枠材の中間部と方立材との接合が同時に行われる。
以上により、一対の第1枠材および一対の第2枠材で矩形枠状が形成されるとともに、その内側に一対の第1枠材の中間部を連結する方立材が設置され、これらにより方立付き枠体が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述した従来の方立付き枠体の製造方法においては、第1枠材と第2枠材との接合部分の溶着跡を好ましい形状に整えにくいという問題があった。
すなわち、前述した従来の方立付き枠体の製造方法においては、溶着にあたって、方立材および一対の第2枠材を、方立付き枠体の完成サイズに合わせて所定間隔で並列に配置している。そして、続く加熱の間も、各々の位置は固定されたままである。一方、第1枠材では、加熱の際に、溶着代分の移動を行うようにしている。
このような設定での溶着動作においては、第2枠材の溶着面と第1枠材の溶着面とが最初に当接する位置は、最終的な第1枠材と第2枠材との接合位置から変位した位置となる。そして、溶着動作の間に、前述した変位に相当する分、第2枠材の溶着面と第1枠材の溶着面とが相対的に移動することになる。このため、溶着面における溶融樹脂が引きずられ、整った溶着跡が形成できないという問題があった。
【0019】
さらに、前述した従来の方立付き枠体の製造方法では、第1枠材と第2枠材との接合部分において、ヒータ板に沿った溶融樹脂の展延が必ずしも好ましい状態にできていなかった。
【0020】
前述した特許文献1あるいは特許文献2では、枠材の端部の溶着面の周囲を保持部材で囲い、溶融樹脂を枠材の内側へ誘導することで、枠体の表面におけるバリの発生を抑制している。
これらの構成において、バリの発生が完全に防止できなかったとしても、バリの程度が軽微であれば、切削などの事後加工で十分に対応することができる。
【0021】
一方、前述した加熱工程において、保持部材により枠材を枠体内側向きに移動させる際に、溶融樹脂が枠材内側へ過剰に展延してしまうことがある。
このような場合、殆どの溶融樹脂が枠材の内側に向かい、外側の溶融樹脂が不足し、枠材同士の接合部分に凹状の境界線が生じることがある。
また、表材を張った枠材においては、表材までが枠材の内側に向かい、基材の溶着部分に入り込んでしまうことがある。このような状態では、基材同士の溶着が不十分となり、接合強度の確保が十分でなくなり、製品として利用できなくなる。
【0022】
前述のような溶融樹脂の枠材内側への過剰な展延を回避するべく、加熱工程における保持部材による枠材の枠体内側向きの移動を調節することが考えられる。
しかし、枠材の枠体内側向きの移動を実行する保持部材の駆動には、制御精度上の限界がある。また、特許文献1〜3の製造装置では、枠材の枠体内側向きの移動により、溶着面がヒータ板の表面に沿って枠体の外側向きに引きずられ、とくに枠体に形成された際にコーナー部分内側となる側では、溶融樹脂の展延が主に枠材の内側向き(枠体の外側向き)となる傾向が強いという問題があった。
【0023】
従って、前述した溶融樹脂の枠材内側への過剰な展延を回避するための効果的な対策が求められていた。
一方で、前述した特許文献1〜3のような、従来の装置構成を変更することは、設備コストの面でも好ましくなく、同様の装置構成を利用できることが望まれていた。
【0024】
本発明の目的は、溶着部分の形状を整えることができる方立付き枠体の製造方法および方立付き枠体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の方立付き枠体の製造方法は、熱可塑性樹脂で成型された第1枠材、第2枠材および方立材を用い、一対の前記第1枠材および一対の前記第2枠材を矩形枠状に配置し、各々の両端の溶着面を前記矩形枠状の対角方向に沿って配置し、隣接する前記第1枠材および前記第2枠材の前記溶着面同士を対向させるとともに、前記方立材を一対の前記第1枠材の中間部に配置し、前記方立材の端部の前記溶着面と一対の前記第1枠材の中間部の前記溶着面とを対向させておき、対向する前記溶着面の間にヒータ板を配置し、前記ヒータ板を前記溶着面に当接させ、対向する前記溶着面をそれぞれ加熱して溶融させ、前記溶着面の間から前記ヒータ板を離脱させ、溶融した前記溶着面同士を圧着し、前記第1枠材、前記第2枠材および前記方立材を接合する方立付き枠体の製造方法であって、前記溶着面を加熱する際に、前記溶着面の溶融で生じる溶融代に応じて一対の前記第1枠材を前記矩形枠状の内側向きに移動させ、前記溶着面同士を圧着する際に、一対の前記第1枠材および一対の前記第2枠材をそれぞれ前記矩形枠状の内側向きに移動させることを特徴とする。
【0026】
このような本発明では、前述した従来と同様な準備、加熱および圧着の各工程を実行することにより、第1枠材、第2枠材および方立材を溶着して枠体を製造することができる。
この際、溶着面を加熱する際に、一対の第1枠材だけを矩形枠状の内側向きに移動させることで、第1枠材に接合される方立材および一対の第2枠材に対してそれぞれ同じ溶融代分の移動を行うことができる。
また、溶着面同士を圧着する際に、一対の第1枠材および一対の第2枠材をそれぞれ矩形枠状の内側向きに移動させることで、第1枠材の溶着面と第2枠材の溶着面とを同じ移動状態とすることができ、双方の溶着面の相対的な移動を解消して溶着跡を整えることができる。
【0027】
本発明の方立付き枠体の製造方法において、前記ヒータ板で前記溶着面を加熱しつつ前記第1枠材を前記矩形枠状の内側向きに移動させる際に、前記ヒータ板を前記第1枠材の前記矩形枠状の内側向きの移動に伴って移動させることが望ましい。
このような本発明では、前述した第1枠材に接合される方立材および一対の第2枠材に対してそれぞれ同じ溶融代分の移動を行うために、一対の第1枠材だけを矩形枠状の内側向きに移動させる動作を行う際に、ヒータ板を溶着面に対して同期して移動させることができ、これによりヒータ板と溶着面との接触を維持して加熱状態を継続することができる。
【0028】
本発明の方立付き枠体の製造方法において、前記ヒータ板で前記溶着面を加熱しつつ前記第1枠材を前記矩形枠状の内側向きに移動させる際に、前記第1枠材の溶着面と前記第2枠材の溶着面との間の角部ヒータ板を、前記溶着面に対して前記矩形枠状の内側向きに相対移動させることが望ましい。
【0029】
このような本発明では、角部ヒータ板で第1枠材および第2枠材の溶着面を加熱しつつ、第1枠材を矩形枠状の内側向きに移動させる際に、溶着面に対して角部ヒータ板を矩形枠状の内側向きに相対移動させることにより、角部ヒータ板に当接されている第1枠材および第2枠材の溶着面の溶融樹脂の一部は、角部ヒータ板とともに矩形枠状の内側向きに誘導される。
【0030】
つまり、従来同様の枠材の内側向きの移動により溶融樹脂が外側向きに展延されるとともに、角部ヒータ板と第1枠材および第2枠材の溶着面との相対移動により、これらの溶着面の溶融樹脂の一部は矩形枠状の内側向きに展延される。これにより、溶融樹脂の枠材内側への過剰な展延を回避できる。
とくに、第1枠材および第2枠材として表材を張った枠材を用いる際には、表材を矩形枠状の内側向きに誘導することができ、表材が枠材の内側に入り込むことを防止し、基材同士の溶着を確保することができる。
【0031】
本発明の方立付き枠体の製造方法において、前記第1枠材の前記矩形枠状の内側向きの移動速度の前記溶着面に沿った方向の成分よりも大きい速度で、前記角部ヒータ板を前記方立付き枠体の内側向きに移動させることが望ましい。
【0032】
このような本発明の設定により、角部ヒータ板に当接されている溶着面の溶融樹脂の一部を、角部ヒータ板とともに矩形枠状の内側向きに誘導する効果が得られる。例えば、溶着面および角部ヒータ板が、枠材の長手方向に対して45度とされている場合、枠材の内側向きの移動速度の1.414倍(2の平方根倍)で計算される溶着面に沿った方向成分の速度を元に、例えばその1.1倍の相対速度などと設定することができる。
【0033】
なお、角部ヒータ板と溶着面との相対移動にあたっては、第1枠材および角部ヒータ板にそれぞれ駆動機構を設け、各々の移動速度を調整して相対移動を実現してもよく、例えば第1枠体と角部ヒータ板との間に駆動機構を設け、両者を直接的に移動させるような構造としてもよい。要するに、本発明においては、角部ヒータ板と溶着面とを相対移動させ、溶着面の溶融樹脂の一部を矩形枠状の内側向きに誘導できればよい。
【0034】
本発明の方立付き枠体の製造方法において、前記第1枠材、前記第2枠材および
前記方立材として、基材の表面に表材が張られたものを用い、前記ヒータ板の前記第1枠材に対する相対速度を、1.5倍以上2倍以下に設定することが望ましい。
本発明において、1.5倍以上2倍以下というヒータ板の枠体に対する相対速度の設定範囲は、溶融した表材が、角部ヒータ板の表面に沿って方立付き枠体の内側向きに展延するとともに、溶融した基材が、一部を除き角部ヒータ板の表面に沿って方立付き枠体の外側向きに展延する速度として好適であるとの知見に基づく。
【0035】
このような本発明では、基材を角部ヒータ板に沿って矩形枠状の外側および内側に展延しつつ、表材は専ら矩形枠状の内側向きに誘導することができる。従って、表材が第1枠材および第2枠材の内側に入り込むことを防止することができ、基材同士の溶着を確保することができる。
このような誘導が行われる状況は、第1枠材および第2枠材を構成する樹脂の特性、加熱温度および各部の移動速度にも依存する。従って、予めテスト加工を行い、適切な各部条件が得られるように調整することが望ましい。
【0036】
本発明の方立付き枠体の製造方法において、前記第1枠材を保持する保持部材と、前記保持部材を前記矩形枠状の内側向きに移動させる保持部材駆動機構と、前記角部ヒータ板と、前記角部ヒータ板を前記溶着面に沿って移動させる角部ヒータ板駆動機構とを有する溶着装置を用い、前記保持部材駆動機構の移動速度と、前記角部ヒータ板駆動機構の移動速度とを、それぞれ制御することで、前記溶着面に対して前記角部ヒータ板を前記方立付き枠体の内側向きに相対移動させることが望ましい。
【0037】
このような本発明では、従来の製造装置の機械的構成をそのまま利用しつつ、例えば制御装置におけるプログラム変更などにより、本発明を簡単に実現することができる。
【0038】
本発明の方立付き枠体の製造装置は、熱可塑性樹脂で成型された第1枠材、第2枠材および方立材を用い、一対の前記第1枠材および一対の前記第2枠材を矩形枠状に配置し、各々の両端の溶着面を前記矩形枠状の対角方向に沿って配置し、隣接する前記第1枠材および前記第2枠材の前記溶着面同士を対向させるとともに、前記方立材を一対の前記第1枠材の中間部に配置し、前記方立材の端部の前記溶着面と一対の前記第1枠材の中間部の前記溶着面とを対向させておき、対向する前記溶着面の間にヒータ板を配置し、前記ヒータ板を前記溶着面に当接させ、対向する前記溶着面をそれぞれ加熱して溶融させ、前記溶着面の間から前記ヒータ板を離脱させ、溶融した前記溶着面同士を圧着し、前記第1枠材、前記第2枠材および前記方立材を接合する方立付き枠体の製造装置であって、前記第1枠材および
前記第2枠材の端部を保持する端部保持部材と、前記第1枠材の中間部を保持する中間部保持部材と、前記端部保持部材および中間部保持部材を前記矩形枠状の内側向きに移動させる保持部材駆動機構と、前記第1枠材の端部の前記溶着面と前記第2枠材の端部の前記溶着面との間に設置される角部ヒータ板と、前記第1枠材の中間部の前記溶着面と前記方立材の端部の前記溶着面との間に設置される中間部ヒータ板と、を有
し、前記角部ヒータ板(20)および前記中間部ヒータ板(60)は、前記第1枠材(2A)の内側向きの移動に伴って前記第1枠材(2A)の内側向きに移動することを特徴とする。
【0040】
本発明の方立付き枠体の製造装置において、さらに、前記角部ヒータ板を前記溶着面に沿って移動させる角部ヒータ板駆動機構と、前記保持部材駆動機構の移動速度および前記角部ヒータ板駆動機構の移動速度を制御する制御装置とを有し、前記制御装置は、前記角部ヒータ板で前記溶着面を加熱しつつ前記第1枠材を前記矩形枠状の内側向きに移動させる際に、前記保持部材駆動機構の移動速度よりも前記角部ヒータ板駆動機構の移動速度を大きくし、前記溶着面に対して前記角部ヒータ板を前記矩形枠状の内側向きに相対移動させることが望ましい。
【0041】
このような本発明の製造装置では、前述した本発明の枠体の製造方法で述べた作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、加熱段階ないし圧着段階での一対の第1枠材を近接させる動作により、方立材の端部および第2枠材の端部をそれぞれ第1枠材の中間部および端部に圧着できるとともに、圧着段階で一対の第2枠材を近接させる動作により、第1枠材の溶着面と第2枠材の溶着面との相対移動を解消し、これらの溶着部分の形状を整えることができる方立付き枠体の製造方法および方立付き枠体の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、
図1に示すように、建材等に利用される方立付き枠体1を製造するために、熱可塑性樹脂製の4本の枠材2を矩形枠状に接合し、その内側に熱可塑性樹脂製の方立材6を掛け渡して接合する。このために、製造装置9において、
図2に示す製造手順が実行される。
なお、本実施形態においては、4本の枠材2のうち、方立材6が掛け渡されるものを第1枠材2Aとし、方立材6と並行に配列されるものを第2枠材2Bとする。
また、以下の説明において、方立付き枠体1を単に枠体1と呼ぶことがある。
【0045】
本実施形態で用いられる枠材2(第1枠材2Aおよび第2枠材2B)の両端には、枠材2の長手方向に対して45度に傾斜した溶着面3が形成されている。
また、本実施形態の枠材2は、
図4あるいは
図5に示すように、枠材2の主体をなす基材4の表面に、化粧用の表材5を張ったものである。枠材2では、溶着面3には専ら基材4が露出するが、枠材2の外側面となる面は表材5で覆われている。
枠材2のうち、第1枠材2Aの中間部には、方立付き枠体1の内側となる側に切欠きによるV字形状3Vが形成され、このV字形状3Vは枠材2の長手方向に対して45度に傾斜した一対の溶着面3により形成されている。
【0046】
本実施形態で用いられる方立材6の両端には尖った三角形状3Tが形成され、この三角形状3Tは方立材6の長手方向に対して45度に傾斜した一対の溶着面3により形成されている。
方立材6の端部の三角形状3Tと前述した第1枠材2Aの中間部のV字形状3Vとは互いに対応した形状とされ、三角形状3TをV字形状3Vの内側に挿入することで、各々の一対の溶着面3同士が密着可能である。
本実施形態の方立材6は、枠材2と同様に、基材4の表面に化粧用の表材5を張って形成されている。
【0047】
図1において、製造装置9は、方立付き枠体1に対応した矩形枠状の四辺に、それぞれ枠材2を保持する。この際、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bは、それぞれ一対が対向する辺縁に配置される。そして、前述した矩形枠状の中央に、第1枠材2Aの中間部同士を結ぶように、方立材6を保持する。
この状態で、製造装置9は、前述した矩形枠状の四隅の角部において第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3同士を溶着するとともに、同時に方立材6の溶着面3と第1枠材2Aの中間部の溶着面3同士を溶着することで、各枠材2および方立材6を接合し、これにより方立付き枠体1を形成する。
このような操作を行うために、製造装置9は、以下の構成を備えている。
【0048】
製造装置9には、方立付き枠体1に対応した矩形枠状の四隅に、それぞれ隣接する二辺の枠材2を保持するためのベース部材8が設置されている。
【0049】
ベース部材8は、図示しない駆動機構により、相互の距離を調整可能であり、これにより任意の長さの枠材2を用いて各種サイズの枠体1を製造することができる。
ベース部材8には、枠材2の端部を保持するための保持部材10(端部保持部材10)と、端部保持部材10を移動させるための保持部材駆動機構11(端部保持部材駆動機構11)とが、それぞれ2つ(第1枠材2Aの保持用および第2枠材2Bの保持用)設置されている。
【0050】
端部保持部材10は、それぞれブロック状に形成され、各々には枠材2の端部を挿通可能な保持孔12が形成されている。
端部保持部材10は、保持孔12が開口する側面のうち一方が45度に傾斜した傾斜面13とされている。枠材2の端部を保持孔12に挿通させた際、傾斜面13は枠材2の溶着面3と同一平面に配置することができる。
【0051】
これらの傾斜面13は、枠体1の対角方向に沿って配置され、2つの端部保持部材10は互いの傾斜面13同士を所定間隔で向かい合わせに配置されている。
なお、端部保持部材10は、保持孔12を通る分割面で2分割可能であり、枠材2の保持および枠体1となった状態での取り外しは、端部保持部材10を分割することで行う。
【0052】
端部保持部材駆動機構11は、電動モータおよびボールねじ等を用いて高精度な位置決めが可能な駆動機構であり、端部保持部材10をそれぞれが保持する枠材2と交差する方向(枠体1の矩形枠状の外側から内側へ向かう方向)へ移動させることができる。
【0053】
ベース部材8には、端部保持部材10で保持された枠材2の溶着面3を加熱するヒータ板20(角部ヒータ板20)と、角部ヒータ板20を移動させるためのヒータ板駆動機構21(角部ヒータ板駆動機構21)とが設置されている。
【0054】
角部ヒータ板20は、例えば電気ヒータを内蔵した板状の部材であり、外部からの電力供給により表面が昇温され、電力供給の断続により加熱あるいは停止を切り替え可能である。
角部ヒータ板20は、同じベース部材8に設置された2つの端部保持部材10の傾斜面13の間に配置される。角部ヒータ板20の表面は、枠体1の対角方向に沿って配置され、両側の傾斜面13に対して一定の間隔をおいて向かい合わせに配置されている。
【0055】
角部ヒータ板駆動機構21は、電動モータおよびボールねじ等を用いて高精度な位置決めが可能な駆動機構であり、角部ヒータ板20を端部保持部材10の傾斜面13に沿った方向(枠体1の対角方向)へ移動させることができる。
【0056】
製造装置9は、第1枠材2Aの中間部に方立材6を接合するための構成として、保持部材40(方立材保持部材40)、保持部材50(中間部保持部材50)およびヒータ板60(中間部ヒータ板60)を備えている。
【0057】
製造装置9は、端部保持部材10で保持された第1枠材2AのV字形状3Vに対向する部位に、それぞれ方立材6を保持するための方立材保持部材40を備えている。
方立材保持部材40は、ブロック状に形成されかつ保持孔42を有する点で、前述した端部保持部材10と同様である。ただし、端部保持部材駆動機構11に相当する構成はなく、方立材保持部材40の位置は固定されている。
【0058】
製造装置9は、端部保持部材10で保持された第1枠材2Aの中間部において、V字形状3Vの周辺部位を保持するために、中間部保持部材50を備えている。
中間部保持部材50は、ブロック状に形成されかつ保持孔52を有する点で、前述した端部保持部材10と同様である。
さらに、中間部保持部材50には保持部材駆動機構51(中間部保持部材駆動機構51)が接続され、この中間部保持部材駆動機構51により、第1枠材2AのV字形状3Vを、方立材6の三角形状3Tに向けて移動させることができる。
【0059】
このような方立材保持部材40および中間部保持部材50により、方立材6の端部の三角形状3Tを形成する一対の溶着面3は、端部保持部材10で保持された第1枠材2AのV字形状3Vの一対の溶着面3に、それぞれ所定間隔で対向配置される。
これらの三角形状3TおよびV字形状3Vの間には、V字状の中間部ヒータ板60が配置されている。
【0060】
中間部ヒータ板60は、前述した角部ヒータ板20を2枚接合してV字状に形成したものであり、三角形状3Tの一対の溶着面3およびV字形状3Vの一対の溶着面3の間に設置され、各々を密着されることにより、各溶着面3を加熱して溶融させることができる。
中間部ヒータ板60は、中間ベース部材61に支持され、中間ベース部材61にはヒータ板駆動機構62(中間部ヒータ板駆動機構62)が接続されている。
【0061】
ヒータ板駆動機構62は、中間部ヒータ板60を、第1枠材2Aおよび方立材6にそれぞれ直交する方向(
図1の表示と直交する方向)に移動させ、これにより中間部ヒータ板60を三角形状3TおよびV字形状3Vの間隔部分から待避させることができる。
なお、中間部ヒータ板駆動機構62は、中間部ヒータ板60を、三角形状3TおよびV字形状3Vの間隔内にある前進位置から待避位置まで駆動できればよく、ボールねじ等の高精度な駆動機構である必要なく、より簡易な駆動機構あるいはエアシリンダ等で構成することができる。
【0062】
製造装置9は、前述した保持部材駆動機構11,51、ヒータ板20,60、ヒータ板駆動機構21,62を制御する制御装置7を有する。
制御装置7は、予め登録された動作プログラムに基づいて各部を制御するコンピュータシステムであり、本実施形態では
図2に示す手順で各部を動作させることで、枠材2および方立材6を溶着して方立付き枠体1を製造することができる。
【0063】
図2には、制御装置7により実行される製造装置9における動作手順が示されている。
方立付き枠体1の製造にあたっては、先ず、準備工程S1により、接合すべき枠材2(第1枠材2A,第2枠材2B)および方立材6を、製造装置9にセットする。
【0064】
準備工程S1では、制御装置7からの指令により、保持部材駆動機構11,51が作動し、それぞれ保持部材10,50を所定の装着位置まで後退(枠体1の外側向きに移動)させる(処理S11,S12)。
この際、ヒータ板駆動機構21,62は、枠体1の外側の後退位置に維持しておく。
【0065】
保持部材10,50が装着位置で停止したら、制御装置7は作業者による指示を待機する。
この間に、作業者が、製造装置9に4本の枠材2(一対の第1枠材2Aと一対の第2枠材2B)および方立材6を順次搬入する。そして、搬入した第1枠材2Aおよび第2枠材2Bは、その両端をそれぞれ一対の保持部材10に保持させる。また、搬入した方立材6の両端を、それぞれ保持部材40に保持させる(処理S13)。
【0066】
これらの枠材2および方立材6のセットができたら、作業者の操作により、制御装置7での処理が再開され、加熱工程S3が実行される。
【0067】
加熱工程S3では、角部において、制御装置7からの指令により、ヒータ板駆動機構21が作動し、角部ヒータ板20を前進(枠体1の内側向きに移動)させ、端部保持部材10で向かい合わせに保持されている第1枠材2Aの溶着面3と第2枠材2Bの溶着面3との間隔に、角部ヒータ板20を導入してゆく(処理S21)。
並行して、角部ヒータ板20においては、制御装置7からの指令により、加熱が開始されて表面が昇温される(処理S22)。
【0068】
また、第1枠材2Aの中間部において、制御装置7からの指令により、中間部ヒータ板駆動機構62が作動し、中間部ヒータ板60を前進させ、三角形状3TおよびV字形状3Vの間隔内、つまり方立材保持部材40および中間部保持部材50で向かい合わせに保持されている三角形状3Tの溶着面3とV字形状3Vの溶着面3との間に配置する(処理S23)。
並行して、中間部ヒータ板60においては、制御装置7からの指令により、加熱が開始されて表面が昇温される(処理S24)。
【0069】
ヒータ板20,60の昇温が進む間に、制御装置7からの指令により、端部保持部材駆動機構11が作動し、第1枠材2Aの保持部材10を、所定の加熱終了位置Ph1に向けて前進(枠体1の内側向きに移動)させ、第2枠材2Bの保持部材10を、所定の加熱接触位置Ps2に向けて前進(枠体1の内側向きに移動)させる(処理S25,S26)。
第1枠材2Aの保持部材10が加熱終了位置Ph1よりも手前の通過点である加熱接触位置Ps1に到達し、かつ第2枠材2Bの保持部材10が加熱接触位置Ps2に到達すると、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3は、それぞれヒータ板20,60の表面に面接触した状態とされる(処理S27)。そして、加熱の進行に伴って、各々の溶着面3は表面から所定深さまで加熱されてゆく(処理S28)。
【0070】
角部ヒータ板20による第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの端部の溶着面3の加熱(処理S22)、および中間部ヒータ板60によるV字形状3Vおよび三角形状3Tの溶着面3の加熱(処理S24)を継続しつつ、制御装置7からの指令により、第1枠材2Aを駆動する端部保持部材駆動機構11および中間部保持部材駆動機構51、さらに角部ヒータ板20を駆動する角部ヒータ板駆動機構21は連続して作動される。
【0071】
第1枠材2Aの端部保持部材駆動機構11および中間部保持部材駆動機構51は、第1枠材2Aの保持部材10を、前述した加熱接触位置Ps1(処理S25)から連続して更に前進(枠体1の内側向きに、一対の第1枠材2A同士が近接する方向へ移動)させる。この前進は、加熱工程S3の間の移動距離の合計が所定の溶融代Dhとされる(処理S31)。
この前進により、各々の溶着面3の溶融樹脂は、圧迫されて角部ヒータ板20および中間部ヒータ板60の表面に沿って展延する(処理S32)。
【0072】
第1枠材2Aの端部保持部材駆動機構11および中間部保持部材駆動機構51の前進による溶着面3の展延は、専ら枠体1の外向きに生じる。
図3に示すように、端部保持部材10が前進する動き10Mがあると、
図4および
図5に示すように、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの端部は、それぞれ角部ヒータ板20の表面のうち、枠体1の外側向き(
図4および
図5の左上方向)に押し曲げられる。これにより、溶着面3の溶融樹脂は、枠体1の外側向きの展延部31を生じる。
【0073】
このような枠体1の外向きの展延に対し、本実施形態では、角部ヒータ板20を溶着面3に対して相対移動させることで、枠体1の内側向きの展延を発生させる。
角部ヒータ板駆動機構21は、角部ヒータ板20を加熱終了位置Ph1まで前進(枠体1の内側向きに移動)させる。この前進は、加熱工程S3の間の移動距離の合計が所定の調整量Da(Da=Ph1−Ps1)とされる(処理S33)。
【0074】
角部ヒータ板駆動機構21における調整量Daは、前述した第1枠材2Aの端部保持部材駆動機構11および中間部保持部材駆動機構51における移動(処理S31)での溶融代Dhの1.414倍(2の平方根)よりも大きく設定されている。
このような設定により、角部ヒータ板20の表面は、第1枠材2Aの溶着面3に対して、枠体1の内側向き(
図4の右下方向)へ相対移動することになる(
図4参照)。
一方、第2枠材2Bは、この時点では移動しないため、角部ヒータ板20の表面は、第2枠材2Bの溶着面3に対して、枠体1の内側向き(
図4の右下方向)へ相対移動することになる(
図5参照)。
このような角部ヒータ板駆動機構21の前進が行われることで、前述した角部の溶着面3の展延(処理S32)では、溶融樹脂の一部が、枠体1の内向きに生じる。
【0075】
図3に示すように、角部ヒータ板20が前進する動き20Mがあると、
図4および
図5に示すように、溶着面3の溶融樹脂の一部は、角部ヒータ板20の表面に沿って枠体1の内側向き(
図4および
図5の右下方向)に引きずられ、前述した展延部31とは逆向きの展延部32を生じる。
展延部32は、主に当該側に張られている表材5の溶融樹脂で形成され、基材4の溶融樹脂の一部も含まれる。
【0076】
このように、本実施形態の加熱工程S3では、端部保持部材駆動機構11、中間部保持部材駆動機構51およびヒータ板駆動機構21により、第1枠材2Aの端部保持部材10および角部ヒータ板20の移動が行われ、とくに角部ヒータ板20の表面が溶着面3に対して枠体1の内側向きに相対移動することで、通常の展延部31に加えて、枠体1の内側向きの展延部32を形成することができる。
【0077】
一方、中間部ヒータ板60の表面においては、V字形状3Vおよび三角形状3Tの溶着面3での溶融が進行するとともに、第1枠材2Aの前進(処理S31、端部保持部材駆動機構11および中間部保持部材駆動機構51による)により、溶融樹脂が中間部ヒータ板60の表面に展延する。
この際、中間部ヒータ板60については、中間部ヒータ板駆動機構62による溶融に伴う前進は行われない。
【0078】
加熱工程S3における処理S31〜S33が完了したら、制御装置7は、第1枠材2Aの端部保持部材駆動機構11を離脱位置Pd1まで後退させる(処理S34)とともに、第2枠材2Bの端部保持部材駆動機構11を離脱位置Pd2まで後退させ(処理S35)、保持部材10およびこれに保持された第1枠材2Aおよび第2枠材2Bを枠体1の外側へ僅かに変位させ、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3(
図4および
図5の展延部31,32を含む)を角部ヒータ板20の表面から離脱させ、第1枠材2Aおよび方立材6の溶着面3を中間部ヒータ板60の表面から離脱させる(処理S36)。
【0079】
さらに、制御装置7は、角部ヒータ板駆動機構21および中間部ヒータ板駆動機構62を所定の待避位置まで後退させる(処理S37,S38)。この時点で、ヒータ板20,60の加熱(処理S22,S24)を停止する。
これらにより加熱工程S3が完了する。
【0080】
加熱工程S3が完了したら、制御装置7は圧着工程S4を実行する。
圧着工程S4では、第1枠材2Aの端部保持部材駆動機構11および中間部保持部材駆動機構51を再び前進させ(処理S41)、第1枠材2A同士を近接させるとともに、第2枠材2Bの端部保持部材駆動機構11についても再び前進させ(処理S42)、第2枠材2B同士を近接させる。
第1枠材2A同士を近接させることにより、角部で対向する第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3同士が圧着されるとともに、第1枠材2Aの中間部(V字形状)および方立材6の端部(三角形状)の溶着面3同士が圧着される(処理S43)。
さらに、本実施形態では、第2枠材2Bについても互いに近接させることにより、角部で圧着される第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3を互いに整った位置で圧着させることができる。
【0081】
図6に示すように、第1枠材2Aは、端部の溶着面3に第2枠材2Bの溶着面3が対向配置される。また、第1枠材2Aの中間部のV字形状3Vには、方立材6の三角形状3Tが導入され、各々の溶着面3が互いに対向配置される。
これらの溶着面3は、加熱工程S3にて十分加熱され、溶着面3には溶着に必要な溶融樹脂が生成されている。
この状態で、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bには、前述した処理S42の第1枠材2A同士を近接させる動き11M、および前述した処理S43の第2枠材2B同士が近接する動き12Mが加えられる。
【0082】
図7に示すように、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bは、それぞれ動き11M,12Mにより、処理S34,S35における離脱位置Pd1,Pd2から圧着位置Pc1,Pc2まで前進する。
圧着位置Pc1,Pc2は、それぞれ第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの方立付き枠体1における最終位置つまり設計位置とされる。
離脱位置Pd1,Pd2は、それぞれ第1枠材2Aおよび第2枠材2Bが動き11M,12Mにより前進する量つまり圧着代だけ、圧着位置Pc1,Pc2より後退した位置に設定される。
【0083】
従って、本実施形態の圧着工程S4においては、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bが動き11M,12Mにより前進する際に、各々の溶着面3は相対移動することがなく、各々の溶融樹脂は互いに同じ相対位置のまま圧着される。
図8に示すように、このような圧着動作により、加熱工程S3で溶融されていた第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3(
図4および
図5参照)は、互いの展延部31および展延部32同士が圧着され、広い面積で基材4同士の溶着が得られるとともに、展延部32側の表材5同士が接続される。
【0084】
このような圧着状態は、本実施形態において第2枠材2Bについても圧着代分の前進(
図2の処理S42)を行うことによる。
もし、圧着動作において、従来のように第2枠材2Bの圧着代分の前進を行わない場合、次のような状況が生じる。
【0085】
図9において、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bは、前述した
図6と略同様に配置されている。
ただし、
図10にも示すように、第2枠材2Bは、動き12M(
図6および
図7参照)を行わないため、圧着前の状態で既に最終位置である圧着位置Pc2に配置されている。
【0086】
この状態で、圧着動作として、第1枠材2Aを動き11Mによって前進させると、第2枠材2Bは動きがなく、第1枠材2Aの溶着面3は、第2枠材2Bの溶着面3に対して相対移動し、変位13Mを生じる。
図11に示すように、このような変位13Mが生じることで、第1枠材2Aの溶着面3は、その展延部32(
図4および
図5参照)が第2枠材2Bの溶着面3の途中に接触し、さらなる変位13Mによって展延部31側に引きずられる。一方、第2枠材2Bの溶着面3は、全体的に第1枠材2Aによって第2枠材2Bの外側に押し出される。
【0087】
その結果、第1枠材2Aと第2枠材2Bとの溶着部分は、互いに溶着面3がずれ、とくに各枠材の外側に露出して現れる展延部32がきちんと接合されず、また各々の表材5も不連続になり、外観性を損なう可能性がある。
これに対し、
図8にも示したように、本実施形態の圧着によれば、溶着部分を整った状態にすることができる。
【0088】
圧着工程S4が完了したら、取出工程S5を実行する。
取出工程S5では、作業者が全ての保持部材10,40,50を分割し、一体化された方立付き枠体1を取り出す。
【0089】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
本実施形態では、準備工程S1、加熱工程S3、圧着工程S4および取出工程S5を順次実行することにより、第1枠材2A、第2枠材2Bおよび方立材6を溶着して方立付き枠体1を製造することができる。
【0090】
加熱工程S3において、溶着面を加熱する際に、一対の第1枠材2Aだけを矩形枠状の内側向きに移動させること(処理S31)で、第1枠材2Aに接合される方立材6および一対の第2枠材2Bに対してそれぞれ同じ溶融代分の移動を行うことができる。
【0091】
圧着工程S4において、第1枠材2Aと第2枠材2Bおよび方立材6の溶着面3同士を圧着する際に、一対の第1枠材2Aおよび一対の第2枠材2Bをそれぞれ矩形枠状の内側向きに移動(動き11M,12M、
図7参照)させることで、第1枠材2Aの溶着面3と第2枠材2Bの溶着面3とを同じ移動状態とすることができ(
図8参照)、双方の溶着面3の相対的な移動を解消して溶着跡を整えることができる。
【0092】
また、本実施形態では、加熱工程S3において、角部ヒータ板20で溶着面3を加熱しつつ、第1枠材2Aを互いに近接させる(方立付き枠体1の矩形枠状の内側向きに移動させる)際に、溶着面3に対して角部ヒータ板20を矩形枠状の内側向きに相対移動させる。この相対移動により、角部ヒータ板20に当接されている溶着面3の溶融樹脂の一部を、角部ヒータ板20とともに矩形枠状の内側向きに誘導することができる。
【0093】
つまり、加熱工程S3の説明で、
図4および
図5により説明したように、溶着面3には、第1枠材2Aの内側向きの動き10Mにより、方立付き枠体1の外側向きの展延部31が形成される。また、角部ヒータ板20の内側向きの動き20Mにより、角部ヒータ板20と溶着面3とが相対移動し、溶着面3の溶融樹脂の一部が内側向きに展延され、展延部32が形成される。
つまり、溶着面3の溶融樹脂が、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの内部へ過剰に展延することを回避できる。
【0094】
本実施形態では、基材4に表材5を張った枠材2を用いるが、溶着面3において溶融した表材5は、専ら方立付き枠体1の内側向きの展延部32側へ誘導することができる。これにより、表材5が展延部31内に入り込むことを防止でき、展延部31においては基材4同士の溶着を確保することができる。
【0095】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は、本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態では、溶着面3の加熱にあたって、加熱工程S3では、加熱の初期段階から第1枠材2Aの保持部材10の加熱終了位置Ph1までの連続した移動を開始したが、加熱接触位置Ps1で一旦止めて予熱加熱を行ってもよい。例えば、第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの保持部材10を、それぞれ所定の加熱接触位置Ps1,Ps2まで前進させ、これらの位置に止めて第1枠材2Aおよび第2枠材2Bの溶着面3がそれぞれヒータ板20,60の表面に面接触した状態とし、各々の溶着面3が表面から所定深さまで加熱されてゆく予備加熱工程(処理S21〜S28に相当)と、前述した予備加熱工程における予備加熱が開始されて所定時間経過したら、制御装置7からの指令により、前述した処理S31〜S38を行う本加熱工程との双方を加熱工程S3として行ってもよい。
【0096】
前述した実施形態では、製造装置9に対する枠材2(第1枠材2A,第2枠材2B)および方立材6の搬入、および一体化された方立付き枠体1の取り出しを、作業者が行うとしたが、自動搬送装置などを組み合わせてもよい。
前述した実施形態では、制御装置7により各工程の進行を行ったが、この際、所定時間の経過に基づく進行制御に限らず、加熱に伴う溶着面3の昇温を測定し、これらを確認して次の工程に進むような制御を行ってもよい。
【0097】
前述した実施形態では、枠材2および方立材6として、基材4に表材5を張ったものを用いたが、表材5がない基材4だけの枠材2を用いてもよい。