(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記容器内の前記溶液をオーバーフローさせた状態にしてレーザ照射するか、前記容器内の前記溶液を循環させた状態にしてレーザ照射するか、又は、前記ターゲット上方の生成粒子を拡散させた状態にしてレーザ照射するかの、少なくともいずれか一つを行うことを特徴とする請求項1又は2記載の金属ナノコロイド生成方法。
容器内の溶液中に設置したターゲットにレーザ照射して金属ナノコロイドを生成する金属ナノコロイド生成装置において、前記容器は密閉性の容器であり、前記レーザ照射を行う前に所定の加圧を行う加圧手段と、前記ターゲットにレーザ光を照射するためのレーザ透過ガラスを前記容器上部に備え、前記加圧手段は、前記レーザ照射を行う前に前記溶液中の溶存酸素を不活性ガスに置換させる置換手段と、前記レーザ透過ガラスに付着する溶液を除去するエアー噴射ノズルを備えることを特徴とする金属ナノコロイド生成装置。
前記容器内の前記溶液をオーバーフローさせるオーバーフロー手段、前記容器内の前記溶液を循環させる循環手段、又は、前記ターゲット上方の生成粒子を拡散させる溶液拡散手段の、少なくともいずれか一つの手段が設けられ、前記溶液拡散手段は、前記置換手段の不活性ガス下部供給口により発生した気泡を溶液全体に拡散させる機能を有することを特徴とする請求項4又は5記載の金属ナノコロイド生成装置。
前記容器の下部側に前記溶液を供給する溶液供給口が設けられ、前記溶液供給口は前記ターゲット上方の生成粒子を拡散させる溶液拡散手段を有するとともに、前記置換手段として、前記下部側に前記不活性ガスをバブリングによって供給する不活性ガス下部供給口が設けられることを特徴とする請求項4又は5記載の金属ナノコロイド生成装置。
前記容器の側面に前記溶液を供給する溶液供給口と、前記容器から金属ナノコロイドを含む溶液をオーバーフローさせるオーバーフロー排出口と、前記オーバーフローさせた金属ナノコロイドを含む溶液を回収する回収容器とを密閉状態で備えることを特徴とする請求項4又は5記載の金属ナノコロイド生成装置。
【背景技術】
【0002】
金属ナノコロイドは1nm〜100nm程度(ナノメータオーダー)の極微細な粒子(金属コロイド、金属微粒子、金属ナノ粒子、金属ナノコロイド粒子、金属コロイド粒子)を指し、ナノ酸化チタンや金コロイドや白金コロイドや銀コロイドなどが良く知られている。コロイドとは1nm〜100nm程度の極微細な粒子が、溶液・気体・固体などの媒体中に分散している状態を指す。金属ナノコロイドの物性は、一般的な塊状のバルク金属の物性とは異なり研究が進められている。
【0003】
これらの金属ナノコロイドを生成する方法は化学的手法と物理的手法とに大別できる。化学的手法としては、金属塩の還元、ゾルゲル法、ミセル、熱分解等で大きさや形状を調節しながら合成する。
【0004】
一方で、金属ナノコロイドを生成する物理的手法として、パルスレーザアブレーションがある。パルスレーザアブレーションは、溶液中に沈められたターゲット(金属プレート)の表面にパルスレーザを照射する方法である。パルスレーザの照射により一部剥離したターゲットの物質は溶液中で金属ナノコロイドを形成する。ピコ秒やフェムト秒のパルスレーザによって、非常に短い時間内にターゲットの表面にエネルギーを与えるため、熱伝導が少ないという利点がある。また化学的手法と比較すると還元剤を用いないため、還元剤を使用することにより生じる欠点を回避できる。
【0005】
特許文献1は、「被微細化成分を配置した溶液を貯留する容器と、上記溶液を介して上記被微細化成分に照射するレーザー光を発振するためのレーザー発振装置と、上記溶液の液面に対するレーザー光の入射角度を変更自在に構成した反射ミラーと、上記レーザー発振装置から発振されたレーザー光を集光する集光レンズと、上記容器の上面を覆う蓋体と、上記蓋体又は上記容器の側面の一部を開口して形成されたレーザー光導入口であり、上記溶液の液面上方に設けられたレーザー光導入口とを備え、上記溶液の液面に対するレーザー光の入射角度が0度を超え90度未満の所定角度に設定されている(請求項1)。」ことを開示している。
【0006】
特許文献2は、「例えばクルクミン類のような難溶性物質の金属ナノ分散液に関し、保存性が改善されたナノ分散液を効率よく製造する方法を提供する。」として、「難溶性物質3の包接体5を形成可能な、例えばシクロデキストリン系化合物のようなホスト分子4を含む液状媒体2中で、難溶性物質3を含むターゲット1にパルス時間幅が1fsec〜200psec未満の超短パルスレーザ光23を照射してレーザーアブレーションすることを含むナノ分散液製造方法。」を解決手段として挙げている。
【0007】
特許文献3は、固体ターゲットの成分を分析する成分分析方法であって、上記固体ターゲットの表面の少なくとも一箇所にレーザー光を照射して、当該少なくとも一箇所から上記固体ターゲットの微粒子を生成するレーザー照射工程と、上記捕捉領域形成部内部に液体を供給する液体供給工程とを含み、上記微粒子を上記液体中に回収し、当該微粒子の成分分析を行なうことを特徴としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液中レーザーアブレーション(pulsed laser ablation in liquids: PLAL)によるナノ粒子作製においては、分散剤(界面活性剤)を含む溶媒中に、溶媒中に沈められたプレート状のターゲットにレンズで集光したパルスレーザを連続照射する。上記非特許文献によれば、金属ターゲットにレーザ照射すると、プラズマプルーム(plasma plume)が液中に向かって膨張を開始し、このプルーム中にアブレーションされた一次粒子(すなわち、イオン、原子クラスター、微粒子)が含まれているが、同時に衝撃波の発生が起こる。プラズマプルームは膨張しながら冷却され液中にエネルギーを放出する。この現象の最中にキャビテーション気泡(cavitation bubble)が発生し、成長・崩壊を繰り返すうちにさらに衝撃波を発生する。このキャビテーション気泡がナノ粒子形成に重要な役割を果たすと考えられている。すなわち、ナノ粒子の生成はキャビテーション気泡の成長・崩壊中に起こり、引き続いて更なる粒子成長や凝集が起こると想像される(非特許文献を参照)。
ここで、従来装置では、散乱によりレーザ光を安定してターゲットに照射させることができない問題や、酸化されやすい元素からなる金属ナノコロイドなどでは、金属ナノコロイド生成中に酸化してしまう問題を有していた。レーザ光が散乱する原因としては、容器内の溶液に気泡が発生することや、生成粒子の凝集等がある。前記気泡としては、レーザーアブレーション加工で発生する気泡(照射されたターゲットが固体→昇華→気体に変化する際に発生する気泡)や、ターゲット表面に付着する気泡や、溶液表面が波立つときの気泡などである。また、気泡が崩壊するとき溶液が飛散することでレーザ光が散乱する場合もある。以上のように、従来装置では、レーザ照射角度等を制御するものはあるが(特許文献5)、容器を工夫して、レーザ照射を安定かつ効率的にするものはなかった。
そして、本願発明者の研究によれば、溶液中の溶存酸素が酸化防止を阻害する要因になっている。そのため、従来装置では、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の磁性体や窒化アルミニウム等、酸化しやすい物質を生成しようとすると、生成中に酸化してしまう問題を有し、当初の物性を維持したままナノコロイド生成をすることが極めて困難だった。
また上記の問題を解決するには装置が必要な部材が増え、大型化・高コスト化していた。
【0011】
そこで本発明の目的は、レーザ照射の安定性と効率性を高めて金属ナノコロイドを生成すると同時に、従来極めて生成が困難であった酸化しやすい物質(磁性体や窒化アルミニウム等)の酸化を防止し元の物性を維持させたまま金属ナノコロイド化させ、小型化及び低コスト化を実現した金属ナノコロイドの生成方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、レーザ照射の安定性や効率を妨げる様々な要因を突き止め、以下の手段により解決できることを見出した。第1に、溶液中の気泡の発生や膨張、そしてこれに起因する溶液中や溶液面に生じるターゲット上方の気泡、ならびに液面の波立ち等は、密閉容器を加圧することで抑制した。第2に、生成粒子の滞留は、溶液を循環させたりオーバーフローさせたりすることで抑制した。第3に、容器上部の蓋に取り付けられるレーザ透過ガラスに付着する溶液は、加圧を兼ねるエアーにより除去した。第4に、レーザ照射前の不活性ガス置換(バブリング)で生じた気泡は、レーザ照射前の溶液の攪拌・拡散により抑制した。そして更にこの溶液の攪拌・拡散をレーザ照射中にも行うことで、レーザ照射中に生じる溶液中や溶液面に生じるターゲット上方の気泡や、生成粒子の滞留も抑制可能とした。このようにして、容器の構造を改良することで、格段にレーザ照射の安定性や効率を向上させることができることを見出した。
また本願発明者は、容器内の生成粒子の酸化は、レーザ照射前に容器内へ不活性ガスを供給して溶液中の溶存酸素を置換することにより解決できることを見出した。そして溶液中の不活性ガス置換はバブリングすることで効率的に行うものとして置換の効率化を図った。
更に、不活性ガス置換と、密閉容器の加圧と、レーザ透過ガラスに付着する溶液のエアー除去は、不活性ガスだけで解決可能であることを見出した。そして置換手段を加圧手段として使用し、これにエアー除去のためのエアー噴射ノズルを一体化させることで、レーザ照射の安定性や効率性に影響を与える多くの要因や、生成粒子の酸化の問題を一度に解決するとともに、小型化と低コスト化を果たした装置を開発した。
【0013】
本発明の金属ナノコロイド生成方法は、容器内の溶液中に設置したターゲットにレーザ照射して金属ナノコロイドを生成する金属ナノコロイド生成方法において、前記溶液中の溶存酸素を不活性ガスに
置換手段により置換し、前記容器を密閉して前記不活性ガスで所定の加圧を
行うとともに、前記ターゲットにレーザ光を照射するためのレーザ透過ガラスを前記容器上部に備え、前記レーザ透過ガラスに付着する溶液をエアー噴射ノズルにより除去しながら、レーザ照射することを特徴とする。
また、容器内の溶液中に設置したターゲットにレーザ照射して金属ナノコロイドを生成する金属ナノコロイド生成方法において、前記溶液中の溶存酸素を不活性ガスに置換手段により置換し、前記容器を密閉して前記不活性ガスで所定の加圧を行うとともに、前記容器の下部側に設けられた不活性ガス下部供給口により発生した気泡を容器全体に拡散させて、レーザ照射することを特徴とする。
本発明の金属ナノコロイド生成装置は、容器内の溶液中に設置したターゲットにレーザ照射して金属ナノコロイドを生成する金属ナノコロイド生成装置において、前記容器は密閉性の容器であり、前記レーザ照射を行う前に所定の加圧を行う加圧手段と
、前記ターゲットにレーザ光を照射するためのレーザ透過ガラスを前記容器上部に備え、前記加圧手段は、前記レーザ照射を行う前に前記溶液中の溶存酸素を不活性ガスに置換させる置換手段
と、前記レーザ透過ガラスに付着する溶液を除去するエアー噴射ノズルを備えることを特徴とする。
また、容器内の溶液中に設置したターゲットにレーザ照射して金属ナノコロイドを生成する金属ナノコロイド生成装置において、前記容器は密閉性の容器であり、前記レーザ照射を行う前に所定の加圧を行う加圧手段を有し、前記加圧手段は、前記レーザ照射を行う前に前記溶液中の溶存酸素を不活性ガスに置換させる置換手段と、前記容器の下部側に設けられた不活性ガス下部供給口により発生した気泡を容器全体に拡散させて、レーザ照射することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、容器を密閉して所定の加圧を行うことで、レーザ照射をした際の気泡の発生や膨張を抑制できる。そのためこれに派生して生じる溶液中のターゲットに付着する気泡、ターゲット上方の浮上する気泡、溶液面で流動する気泡及びその飛散、ならびに溶液面の波立ちの抑制を行うことができ、最終的にレーザ照射の安定性や効率性を改善できる。
本発明によれば、レーザ照射を行う前に溶液中の溶存酸素を不活性ガスに置換することで、抗酸化剤を使用しなくとも生成粒子の酸化を防止できる。従来ナノコロイド生成が困難だったサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石等の磁性体や窒化アルミニウムを酸化させることなく生成することができる。
本発明によれば、溶液中の溶存酸素を不活性ガスにより置換し、容器を密閉して不活性ガスにより加圧した状態としてからレーザ照射することにより、不活性ガスだけで溶存酸素の除去と容器内の加圧を行うことができる。したがって置換手段を加圧手段として使用することができ、容器内の気泡の発生・膨張と、生成粒子の酸化とを同時に抑制し、装置の小型化を図ることができる。
【0015】
本発明の金属ナノコロイド生成方法は、容器内の溶液をオーバーフローさせた状態にしてレーザ照射するか、容器内の溶液を循環させた状態にしてレーザ照射するか、又は、ターゲット上方の生成粒子を拡散させた状態にしてレーザ照射するかの、少なくともいずれか一つを行うことを特徴とする。
本発明の金属ナノコロイド生成装置は、容器内の溶液をオーバーフローさせるオーバーフロー手段、容器内の溶液を循環させる循環手段、又は、ターゲット上方の生成粒子を拡散させる溶液拡散手段の、少なくともいずれか一つの手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、容器内の溶液をオーバーフロー手段によってオーバーフローさせた状態にしてレーザ照射することで水位が一定となりレーザ照射が安定化する。また溶液のオーバーフロー、溶液の循環、および溶液の拡散により、溶液中の気泡や生成粒子の循環が促されてその滞留を防止できるため、レーザ照射の安定性やレーザ照射効率を向上させることができる。
【0017】
本発明の金属ナノコロイド生成装置は、容器の下部側に溶液を供給する溶液供給口が設けられ、溶液供給口はターゲット上方の生成粒子を拡散させる溶液拡散手段を有するとともに、置換手段として、下部側に不活性ガスをバブリングによって供給する不活性ガス下部供給口が設けられることを特徴とする。
ここで容器の下部とは容器の側面部及び/又は底部を含む。
【0018】
本発明によれば、溶液供給口が容器下部側に位置して溶液拡散手段を有し、溶液拡散手段が溶液面と同じ高さ位置に配されて、ターゲット上方の生成粒子を拡散させることで、溶液供給機能と生成粒子や気泡の拡散機能が一体化された構造となる。したがってレーザ照射中に外部から溶液を供給すると同時にターゲット上方の生成粒子を攪拌してその拡散を行うことができ、更には装置の小型化を図ることができる。
本発明によれば、容器の下部側に活性ガス下部供給口を設けて溶液中に接続させ、さらにバブリングを行うことで、不活性ガスによる置換の効率化を図り、迅速な溶存酸素の除去を可能とした。
【0019】
本発明の金属ナノコロイド生成装置は、容器の側面に溶液を供給する溶液供給口と、容器から金属ナノコロイドを含む溶液をオーバーフローさせるオーバーフロー排出口と、オーバーフローさせた金属ナノコロイドを含む溶液を回収する回収容器とを密閉状態で備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、これらの溶液供給口、オーバーフロー排出口、回収容器が密閉状態とされていることで、酸化しやすい物質も、酸化を防いだ状態で回収して保存することができる。
【0021】
本発明の金属ナノコロイド生成装置は、溶液拡散手段が、置換手段の不活性ガス下部供給口により発生した気泡を溶液全体に拡散させる機能を有することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、前記溶液拡散手段はレーザ照射中のみならず、レーザ照射前に置換手段である不活性ガス下部供給口からのバブリングによって生じた気泡も拡散可能である。
【0023】
本発明の金属ナノコロイド生成装置は、前記ターゲットにレーザ光を照射するためのレーザ透過ガラスを前記容器上部に備えるとともに、前記加圧手段は、前記レーザ透過ガラスに付着する溶液を除去するエアー噴射ノズルを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、エアー噴射ノズルによりレーザ透過ガラスに向けてエアーを噴射することで、飛散した溶液がレーザ透過ガラスに付着することを防止したり、飛散した溶液を除去したりすることができる。
本発明によれば、置換手段を兼ねる加圧手段が、その一部にレーザ透過ガラスに付着する溶液を除去するエアー噴射ノズルを一体化して備えることで、不活性ガスだけを用いて、不活性ガス置換と、密閉容器の加圧と、レーザ透過ガラスに付着する溶液のエアー除去を同時に行うことができる。このことによりレーザ照射の安定性や効率性に影響を与える多くの要因や、生成粒子の酸化の問題を一度に解決するとともに、小型化と低コスト化を果たすことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、レーザ照射の安定性と効率性を高めて金属ナノコロイドを生成すると同時に、従来極めて生成が困難であった酸化しやすい物質(鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等を含む合金系の磁性体や窒化アルミニウム等)の酸化を防止し元の物性を維持させたまま金属ナノコロイド化させ、小型化及び低コスト化を実現した金属ナノコロイドの生成方法及びその装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態を以下に説明する。
【0028】
(本実施形態の金属ナノコロイド生成装置100)
図1は本実施例の金属ナノコロイド生成装置100を断面からみて例示した構造図である。本実施例の金属ナノコロイド生成装置100は、容器1内の溶液S中に設置したターゲットTに向かってレーザ照射して金属ナノコロイドを生成金属ナノコロイド生成装置100はレーザ光Lを照射するためのレーザヘッド2を備え、レーザヘッド2は集光レンズ2aと、光スキャナとしてガルバノスキャナ2bを備える。レーザヘッド2は、レーザ光Lを発生させるレーザ発振器3と、レーザ発振器3の温度管理を行うチラー4(冷却水循環装置)と、レーザ発振器3を外部のパソコン5(制御部)によって制御するためのコントローラ6等が接続されて操作される。
【0029】
容器1は密閉性の容器(密閉容器1)であり、密閉容器上部1aと密閉容器下部1bがクランプ7で連結されており、周囲が円筒状の壁で構成される。周囲の壁には、レーザ照射を行う前に溶液S中の溶存酸素(溶存ガス)を不活性ガスに置換して除去する不活性ガス上部供給口8(置換手段)が設けられている。また不活性ガス上部供給口8は容器1の加圧手段としても使用されるものであり、レーザ照射を行う前に容器1を密閉して不活性ガス上部供給口8から不活性ガスを供給して所定の加圧を行うことができる。
【0030】
容器1の下部1b側(側面または底面)には溶液Sを供給する溶液供給口9と溶液排出口10が設けられる。溶液供給口9は、ターゲットT上方の生成粒子を拡散させるための溶液拡散手段11を有し、溶液拡散手段11は溶液供給口9の溶液S中に接続する側に設けられ、溶液供給機能と生成粒子や気泡の拡散機能が一体化された構造となっている。例えば溶液供給口9は溶液S中に接続させターゲットT上方に溶液Sを供給できるようにターゲットTよりも位置を高くして構成することで、ターゲットT上方の生成粒子を拡散させることができる。溶液拡散手段11の内径は溶液供給口9の内径よりも細く、溶液拡散手段11はノズル形状とされ、生成粒子や気泡を含む溶液Sが攪拌・拡散しやすい構造とされている。なお溶液拡散手段11は、溶液面と同じ高さ位置に配することで溶液面に滞留する生成粒子や気泡をより拡散させやすくなる。また溶液拡散手段11は、オーバーフロー手段12と同様の高さ位置として、溶液Sの波立ちを抑えてもよい。容器1内において溶液排出口10は溶液供給口9よりも下方に設け、溶液排出後に容器1内に残存する溶液量を抑える。
【0031】
不活性ガス下部供給口13はエアレーションエレメント13aを備え、容器1の下部1b側に不活性ガスをバブリングによって供給する置換手段となる。バブリングにより溶液Sを攪拌混合し溶存酸素を効率的に除去する。このようにして不活性ガス下部供給口13を溶液S中に接続し、レーザ照射前に不活性ガス下部供給口13を介して溶液S中で不活性ガスをバブリングにより供給することで、溶液S中の溶存酸素を効率的に不活性ガスに置換して除去する。
【0032】
本実施の形態では不活性ガス下部供給口13は加圧手段として用いてはいないが、加圧手段として用いてもよい。この場合、容器1内の溶存酸素を不活性ガスに置換した後に、ガス排出口14を閉じて、不活性ガス下部供給口13から不活性ガスの供給を行うことで容器1内の加圧ができる。このように、置換手段として用いられる不活性ガス上部供給口8と不活性ガス下部供給口13は、容器1内の気体G中に接続する不活性ガス上部供給口8だけではなく、容器1内の溶液S中に接続する不活性ガス下部供給口13も加圧手段として使用できる。
【0033】
溶存酸素を除去する方法としては、不活性ガス置換(アルゴンや窒素等の不活性ガスを供給して、容器1内の気体G中の酸素と溶液S中の溶存酸素を除去する)による方法の他、加熱沸騰脱気、超音波脱気、真空減圧脱気、遠心脱気、又はこれらを複数組み合せた脱気により、溶液S中の溶存酸素を除去しても良い。不活性ガス置換をバブリングによって行う場合、バブリングによる気泡がレーザ照射の妨げとなるため、レーザ照射時にはバブリングを停止させることが好ましい。
【0034】
密閉容器下部1b側のターゲット設置台1d上にはターゲットTが配置され、密閉容器上部1aの蓋1cにはターゲットTにレーザ光Lを照射するためのレーザ透過ガラス15が取り付けられている。レーザ透過ガラス15はレーザ光Lを通過させるガラス製またはサファイア製の板であり、その内側に溶液Sが付着するとレーザ照射効率等に影響する。そのため不活性ガス上部供給口8(加圧手段)は、レーザ透過ガラス15に付着する溶液Sを除去するエアー噴射ノズル16を備える。エアー噴射ノズル16は、密閉容器1内部の気体Gが存在する空間にエアー噴射できるように配設され、密閉容器1内部のレーザ透過ガラス15表面にエアーを噴射する。またエアー噴射ノズル16は、レーザ透過ガラス15に付着した溶液Sを除去する他、レーザ照射中に飛散する溶液Sがレーザ透過ガラス15に付着することを防止する。エアー噴射ノズル16により、レーザ透過ガラス15の溶液Sの除去と、エアーによる付着防止の両方を実施する場合、一つのノズルで実施してもよく、個別のノズルを設けて実施してもよい。付着防止のためのエアー噴射ノズル16は、エアーを扇形状、あるいは平射形状でレーザ透過ガラス15に対して水平に噴射する。
【0035】
(レーザ照射までの準備手順)
本願装置のレーザ照射までの操作手順を以下に説明する。まずクランプ7を外して、密閉容器上部1aを取り外してターゲットTを密閉容器1内に配置する。密閉容器上部1aを元に戻してクランプ7を閉める。第1バルブ17a〜第4バルブ17dやポンプ17eを操作して、溶液供給口9から溶液Sを密閉容器1内に供給する。次に、不活性ガス下部供給口13から不活性ガスによってバブリングを行い溶液Sの溶存酸素を除去する。溶存ガスを不活性ガスで置換した後は、バブリングによる気泡がレーザ照射の妨げとならないよう、バブリングを停止する。そしてノズル形状の溶液拡散手段11(溶液拡散ノズル)によってターゲットT上方に溶液供給をすることで不活性ガス下部供給口13(置換手段)からのバブリングにより発生した気泡を溶液S全体に拡散させる。バブリングにより生じた気泡を拡散又は消失させてからレーザ照射することで、レーザ照射を安定的かつ効率的に行うことができる。
【0036】
(レーザ光Lについて)
レーザ光Lは特に限定されないが、酸化防止の観点からパルス光を発生できるレーザ(パルスレーザ)が好ましい。例えば、レーザ光Lのパルス幅がアト秒からナノ秒の、アト秒レーザ、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザ、ナノ秒レーザ等を用いることができる。アト秒、フェムト秒、ピコ秒のパルスレーザを用いる場合熱が生じにくい。そして非熱加工の他に多光子吸収が起こるため波長と材料の相性を気にせずにアブレーション加工が可能である。このアブレーション製法は、分散剤(界面活性剤)を含む溶媒中に、例えば金属ターゲットTを配置して、溶液S中でレーザーアブレーションを行う。装置コストを安価に抑えつつ、粒度分布幅を狭く均一にするためには、ナノ秒レーザ(ナノパルスレーザ)を用いることが好ましい。
ターゲットTに対するレーザ光Lの条件としては、好ましくは、レーザ波長は355〜1070nmであり、ワーキングディスタンス(集光レンズ2a先端からターゲットT表面までの距離。)は50〜250mmであり、スポット径は5〜50μmであり、パルスエネルギは50〜800μJであり、パルス幅は30ns以下であり、パルス周波数は10kHz以上であり、走査速度は5mm/sec以上であり、照射時間は30分以下とする。これにより、粒径が小さく、粒度分布が幅狭くなる。また、より好ましくは、レーザ波長:532nm、パルス周波数:50kHz、パルス幅:20ns、スポット径:12μm、パルスエネルギ:200〜600μJ、溶液面からターゲットT表面までの距離:6mm、走査速度:500mm/sec、照射時間:15分とする。これによりさらに粒径が小さく、粒度分布が幅狭く均一となる。なお使用する集光レンズ2aの焦点距離は、好ましくは50〜250mmである。
【0037】
レーザ光Lの照射強度は上記条件の他、ターゲットTがレーザ光Lによってアブレーション現象が生じるエネルギー密度であれば良く、レーザの出力とパルス幅の値によってパルスエネルギの値を調節する。スポット径は細かな粒子を生成するためには小さい方が好ましい。走査速度は金属ナノコロイドの粒度分布幅が狭く均一になるように等速であることが好ましく、パルス周波数が10kHz以下の場合、金属ナノコロイドの生成効率が低下するため避けることが望ましい。
レーザ光Lを走査(スキャン)するために使用される光スキャナは、走査速度が5mm/sec以上となるものであれば良い。例えばレーザ光Lを反射させるためのミラーを回転(往復揺動)させてレーザ光Lを走査するガルバノスキャナ2b(ガルバノミラー)や、ミラーを振動させてレーザ光Lを走査するMEMS光スキャナ等が使用される。なお、光スキャナは内部のミラーを操作してレーザ光Lを移動させるもので、ロボット等の動作振動がなく溶液Sに波立ちが生じにくい。XY軸ロボット等に搭載してロボットの操作によりレーザ光Lを移動させるものを使用してもよい。
【0038】
(レーザ光Lの照射方法について)
レーザ光Lの照射方法について、特に限定はされないが、レーザ透過ガラス15の外部から垂直下にレーザ照射して、ターゲットTに平行に線を引くように照射する。例えばターゲットT上部の1サイクル目の照射開始点から直線的にパルス照射して所定間隔離して平行に直線照射箇所を形成し、第1の直線照射箇所と第2の直線照射箇所の中間位置に第3の直線照射箇所を平行に形成してゆく方法で行う。
【0039】
(ターゲットTについて)
本発明において、ターゲットTは金属または金属合金を含むプレートとするが、金属ナノコロイドを生成するものであれば何でも良い。例えば、既存の方法で製造された磁性体(フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等)や、窒化アルミニウム、金、白金、チタン、銀などからなる金属プレート(金属板)とし、純度も特に限定されない。ただし、不純物をなるべく含まない金属ナノコロイドを生成するためには金属純度は高いものが良い。例えば純度99%以上が好ましく、純度99.5%以上がより好ましい。
ターゲットTに対してレーザ照射を繰り返すと、ターゲットT表面に照射痕の凹凸が形成される(不図示)。凹凸が形成されると、レーザ光Lが備える集光レンズ2aからターゲットT表面までの距離がレーザスポット毎に異なることになり、金属ナノコロイドの粒径の均一性に影響を及ぼす。従ってターゲットTの使用にあたっては以下の条件に従うことが好ましい。(1)金属ナノコロイドの粒子の粒度分布幅が35nmを超えたら、新品のターゲットT又はターゲットTの裏面を使用する。(2)ターゲットTが高価な場合は、ターゲットT表面(照射面)を研磨またはレーザクリーニングし、凹凸部を平坦にした後に、パルスレーザ照射する。(3)平行な加工軌跡の場合、ターゲットTを有効利用するために、レーザ照射の1サイクル終了後に、2サイクル目のスタート位置をスポット径分オフセットした位置にし、その後もサイクル毎に同様のオフセットを繰り返す。なお、(3)の方法をとることで、ターゲットTの未照射面に液中アブレーション加工を施すことが可能となり、またターゲットT全体を対象に満遍なく照射を行うことが出来る。また(1)の方法については新品のターゲットTの使用時に最も均一な粒径が得られることが試験で確認されている。
【0040】
(溶液Sについて)
溶液Sとしては、蒸留水や脱イオン水などの精製水、超純水、またはアルコールやヘキサンなどの有機溶媒を使用することができる。溶液Sの種類は特に限定されないが、照射するレーザ光Lの波長を吸収しにくい溶液S(すなわち吸光度が小さい溶液S)で、例えば脱イオン水やメタノール、エタノールなどが好ましい。またメタノールやエタノールは不純物を含むため、不純物が少ない金属ナノコロイドを生成する場合は、精製水、超純水などが好ましい。なお、後述するように、酸化防止の観点から水に希釈したクエン酸液等を使用しても良い。
【0041】
(溶液Sの供給方法について)
図2は溶液Sの供給方法と、オーバーフロー手段12を説明するための構造図である。
図2では、供給容器18内の溶液Sを、密閉した容器1に供給するまでの経路を矢印で示す。溶液供給時は、第1バルブ17aと第4バルブ17dを開き、第2バルブ17bと第3バルブ17cを閉じてポンプ17eを作動させることで、溶液供給口9から溶液Sを密閉した容器1内に供給する。
【0042】
(オーバーフロー手段12について)
図2では、密閉した容器1内の溶液Sを、オーバーフロー用の回収容器12dに回収するまでの経路を矢印で示している。本実施の形態の金属ナノコロイド生成装置100は、容器1の側面に溶液Sを供給する溶液供給口9と、容器1から金属ナノコロイドを含む溶液Sをオーバーフローさせるオーバーフロー排出口12aと、オーバーフローさせた金属ナノコロイドを含む溶液Sを回収する回収容器12dとを密閉状態で備える。
【0043】
容器1内の溶液Sをオーバーフローさせるオーバーフロー手段12は、オーバーフロー開口12bと、オーバーフロー排出口12aと、第5バルブ12c(オーバーフロー用)と、回収容器12d(オーバーフロー用)とからなる。本実施の形態では容器1内の溶液Sをオーバーフロー手段12によってオーバーフローさせた状態にしてレーザ照射することで水位が一定(液面からターゲットT表面までの距離が一定)となり、生成粒子の滞留も防ぐことができるため、レーザ照射が安定化する。オーバーフロー手段12はレーザ照射前に限らず、レーザ照射中、レーザ照射後に使用しても良い。
【0044】
オーバーフロー開口12bは容器1の壁に取り付けられており、オーバーフロー開口12bの高さ位置によってオーバーフローの水位が決定する。オーバーフロー開口12bの高さ位置を調節して容器1内の溶液Sの水位を調節してもよい。また溶液供給の速度やオーバーフロー開口12bの内径によってオーバーフロー速度が決定する。例えば溶液供給の速度を増加させ、オーバーフロー開口径を大きくすることでオーバーフロー速度が増加し、生成粒子の滞留が抑えられる。溶液供給の速度を低下させ、オーバーフロー開口径を小さくすることでオーバーフロー速度が低下させることもできる。オーバーフローした溶液Sはオーバーフロー排出口12aから容器1の外に流れる。
【0045】
循環手段17を有さず、オーバーフロー手段12により生成粒子を回収する場合、例えば容器1の側面または底面に配置した溶液供給口9から溶液Sを供給する。溶液Sは、容器1内を循環せずに常に新しい溶液S(生成粒子の混合なし)を供給し、容器1から金属ナノコロイドを含む溶液Sをオーバーフロー手段12によってオーバーフローさせることによって回収容器12dに生成粒子(金属ナノコロイドを含む溶液S)を回収する。一回の生成粒子が十分多く、生成粒子の滞留が問題となる場合、使用される手法として有効である。なお、容器1内の加圧状態を維持するため、回収容器12dの加圧状態も調整される。
【0046】
(循環手段17について)
図3は循環手段17及び溶液循環時の流れを説明するための構造図である。
図3の矢印は容器1内の溶液Sが循環する経路を示している。本実施の形態では、レーザ照射前に循環手段17によって容器1内の溶液Sを循環させた状態にしてからレーザ照射してもよく、循環手段17の使用により生成粒子の滞留を防ぐことができるため、レーザ照射が安定化する。循環手段17はレーザ照射前に限らず、レーザ照射中、レーザ照射後に使用することもできる。
【0047】
循環手段17は、第1バルブ17a〜バルブ17dと、ポンプ17eからなる。密閉性の循環手段17は、
図3に示すように、第1バルブ17aが溶液供給口9に管で連結され、第2バルブ17bが溶液排出口10に管で連結している。第4バルブ17dは供給容器18に管で連結し、第3バルブ17cは回収容器19(循環手段用)に管で連結する。第1バルブ17aと第3バルブ17cを連結する管と、第2バルブ17bと第4バルブ17dを連結する管とはポンプ17eを備えた管によって連結されている。循環手段17である第1バルブ17a〜バルブ17dとポンプ17eに、これらの管と、溶液供給口9、溶液排出口10、供給容器18、回収容器19が備えられた構造とすることで、溶液Sを供給し、溶液Sを循環させ、生成粒子を回収する循環システムとして構成できる。
【0048】
本実施の形態の容器1としては、循環手段17によって溶液Sが絶えず循環しており、溶液Sの流速は水面に波が立たない速さとし、水面からターゲットT表面までの最短距離は常に一定に保たれていることが好ましい。精製した金属ナノコロイドが回収されず溶液S中に滞留する場合、レーザ照射の阻害要因になる。このことによりターゲットTへのエネルギーが不均一となり、金属ナノコロイドの生成が不安定化し、金属ナノコロイドの粒度分布が幅広かつ不均一となる。溶液Sの流速は好ましくは0.1ml/secとし、水面からターゲットT表面までの距離は6mm以下とする。
【0049】
循環手段17は、溶液供給口9から供給される溶液Sの量である溶液供給量と、溶液排出口10から排出される溶液Sの量である溶液排出量とを調節することで、容器1内の溶液Sの水位や循環速度を調節することができる。溶液供給速度と溶液排出速度を等速にして循環させることで、オーバーフロー手段12を使用する場合と同様に、水位が一定(液面からターゲットT表面までの距離が一定)となり、生成粒子の滞留も防ぐことができるため、レーザ照射が安定化する。
その他、溶液供給量を溶液排出量よりも多くすることで水位を上昇させることができ、溶液供給量を溶液排出量よりも少なくすることで水位を低下させることができる。溶液供給量と溶液排出量を共に増加させることで循環速度を増加させ、溶液供給量と溶液排出量を共に低下させることで循環速度を低下させてもよい。
【0050】
オーバーフロー手段12を有さず、循環手段17により生成粒子の生成・回収する場合、まず溶液Sの供給を行う。これは第1バルブ17aと第4バルブ17dを開き、第2バルブ17bと第3バルブ17cを閉じてポンプ17eを作動させることで行う。溶液Sの供給の後は、第1バルブ17aと第2バルブ17bを開き、第3バルブ17cと第4バルブ17dを閉じてポンプ17eを作動させることで、溶液Sは溶液供給口9、溶液排出口10、及び管を通って装置内を循環する。またレーザ照射により生成粒子が作成される。循環手段17を用いることで循環手段17内部にも溶液Sが存在することとなる。そのためトータルの溶液量が増え溶液中の生成粒子濃度が低下し、レーザ照射阻害が生じにくくなる。この手法は一回の生成粒子が少ない場合に使用される手法である。これにより生成粒子が十分作成された後、後述するバルブ17a〜17dの開閉操作とポンプ17eの動作により回収を行う。
【0051】
(金属ナノコロイドを含む溶液Sの回収方法について)
図4は溶液回収時のバルブ17a〜17dの開閉操作とポンプ17eの動作を説明するための構造図である。
図4の矢印は容器1内の溶液が回収容器19に回収されるまでの経路を示している。溶液回収時には、第2バルブ17bと第3バルブ17cを開き、第1バルブ17aと第4バルブ17dを閉じてポンプ17eを作動させて、回収容器19に生成粒子を回収する。
【0052】
本実施の形態ではオーバーフロー手段12と循環手段17を別々に説明したが、これらは同時に使用されても良い。本実施の形態ではレーザ照射を安定化させるためには一定の水位で行うことが望ましいが、前述のようにオーバーフロー手段12と循環手段17とは、溶液Sの水位を制御できるようにしてもよい。また前述のようにオーバーフロー手段12によるオーバーフロー速度や、循環手段17による循環速度を調節できるようにしてもよく、循環速度を増加させることで生成粒子の拡散や生成粒子の回収効率を向上させることができる。
【0053】
不活性ガス上部供給口8と不活性ガス下部供給口13とによって、容器1内に不活性ガスを供給し、容器1内の溶存酸素を除去した状態にするとともに容器1内を加圧する。暫くして、循環手段17やオーバーフロー手段12を稼働させて、レーザ照射を行ってナノコロイドを生成して、生成したナノコロイドを回収する。
【0054】
本実施形態において、オーバーフロー手段12や循環手段17を用いる場合、上述のように所定の加圧を行い、溶存酸素を不活性ガスに置換して除去した上で行うことが好ましく、レーザ照射の安定化やターゲットTの酸化防止を行うことができる。好ましくは溶液面からターゲットT表面までの距離が6mm以下になるようにターゲットTを設置し、レーザ光はナノ秒レーザを用いて等速でスキャン(走査)する。レーザ照射時には溶液面からターゲットTまでの距離やレーザ光Lの屈折率を一定に保つ他、溶液は気泡や波立ちが発生しないようにしたり、生成粒子が滞留しないようにすることが好ましい。以上の理由から、容器1内の溶液をオーバーフロー手段12によりオーバーフローさせた状態にしてレーザ照射するか、容器1内の溶液を循環手段17により循環させた状態にしてレーザ照射するか、又は、ターゲットT上方の生成粒子を溶液供給口9に配された溶液拡散手段11により拡散させた状態にしてレーザ照射するかの、少なくともいずれか一つを行うことが好ましい。
【0055】
(レーザ光L阻害の阻害要因と対策)
レーザ光Lの阻害要因(レーザ光Lの進路上の阻害要因)を検討してまとめたものを表1に示す。表2は、表1の有効な対策の種類である対策1〜4の具体的内容を説明したものであり、対策を実現するための装置構成を示している。
【0058】
表1に示したようにレーザ光Lの阻害要因には、溶液中のターゲットT上方の気泡の発生や膨張(要因1)、溶液面の波立ち(要因2)、溶液面の気泡(要因3)、生成粒子のターゲットT上方の滞留(要因4)、レーザ透過ガラス15の付着物(溶液面の気泡崩壊による飛散により付着)(要因5)等がある。
【0059】
要因1のターゲットT上方の気泡の発生や膨張に関しては、不活性ガス上部供給口8(加圧手段)により不活性ガスを供給すること(対策1)により改善できる。
要因2の溶液面の波立ちに関しては、不活性ガス上部供給口8(加圧手段)により圧力制御をして気泡の発生を抑えること(対策1)により改善できる。
要因3の溶液面の気泡の発生に関しては、不活性ガス上部供給口8(加圧手段)により圧力制御をして気泡の発生を抑えること(対策1)と、溶液拡散手段11により気泡の撹拌・拡散を行うこと(対策4)により改善できる。
要因4の生成粒子のターゲットT上方の滞留に関しては、循環手段17やオーバーフロー手段12により溶液Wの循環を行うこと(対策2)と、溶液拡散手段11により気泡の撹拌・拡散を行うこと(対策4)により改善できる。
要因5のレーザ透過ガラス15の付着物(溶液面の気泡崩壊による飛散により溶液付着)に関しては、エアー噴射ノズル16によりレーザ透過ガラス15の付着物の除去・付着防止を行うこと(対策3)で改善できる。
【0060】
(生成粒子の酸化要因と対策)
生成粒子の酸化要因と対策を検討してまとめたものを表3に示す。表4は、表3の有効な対策の種類である対策A、Bの具体的内容を説明したものであり、対策を実現するための装置構成を示している。
【0063】
表3に示したように生成粒子の酸化要因には、容器1内の溶存酸素(溶存ガス)の存在(要因A)がある。
【0064】
要因Aの溶存酸素(溶存ガス)の存在に関しては、不活性ガス上部供給口8(置換手段)により気体G中へ不活性ガス供給し置換を行うこと(対策A)や、不活性ガス下部供給口13(置換手段)により、液中でバブリングして不活性ガスを供給し置換すること(対策B)により改善できる。
【0065】
(レーザ光Lの阻害防止と生成粒子の酸化防止の両用途に兼用される装置構成)
上述のように、不活性ガス上部供給口8(加圧手段)は、レーザ光Lの阻害防止と生成粒子の酸化防止の両用途に兼用可能である。
すなわち不活性ガス上部供給口8(加圧手段)は、レーザ光Lの阻害要因1〜3である、ターゲットT上方の気泡の発生や膨張(要因1)、溶液面の波立ち(要因2)、溶液面の気泡(要因3)に関して、圧力制御による加圧により改善する。
また不活性ガス上部供給口8(加圧手段)は更にエアー噴射ノズル16を有することで、レーザ光Lの阻害要因5である、レーザ透過ガラス15の付着物(溶液面の気泡崩壊による飛散により付着)(要因5)に関して、レーザ透過ガラス15の付着物の除去・付着防止(対策3)により改善する。
【0066】
なお、本実施の形態ではレーザ照射の他にも、容器1の振動や溶液の撹拌などの要因によっても何らかの気泡や波立ちが生じる場合がある。したがって本実施の形態において、気泡や波立ちを解消する方法は、加圧手段や溶液拡散手段11に限定はされない。気泡や波立ちを解消する方法として、例えば(1)溶液Wの流速を0.1ml/sec以下とする、(2)移動テーブルを使用せず振動させない構成とする、(3)溶液Sを循環させる場合に、容器1中の溶液Sをオーバーフローさせる方法で循環させる、(4)予め求めた液面の振動モデルに基づいて、液面の気泡の発生や波立ちを制振するようフィードバック制御を行う機構を備える等の方法がある。本実施の形態では、容器1やその周辺は一切動くことがなく、レーザ光Lのみが走査して動作する。なお、回転装置を容器1の下方に配置することで回転可能にすることもできる。
【0067】
(実験)
本実施の形態の実験として、容器1は密閉性の容器を使用して加圧手段による所定の加圧を行うとともに、溶液S中の溶存酸素を置換手段により除去した状態にしてからターゲットTにレーザ照射する実験を実施した。そして、容器1内の溶液Sを循環手段17で循環させた状態にしてレーザ照射する実験(実験1)を行った。結果、容器1内の溶存ガスを除去することで酸化防止に効果があるとともに、所定の加圧状態にすることで、溶液中の気泡の発生・膨張や、溶液の波立ち等が抑制されて、レーザ照射効率が向上することが確かめられた。具体的にはサマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の磁性体や窒化アルミニウムを酸化させることなく生成することができた。次に、ターゲットT上方の生成粒子を溶液拡散手段11により拡散させて滞留を解消しても(実験2)、レーザ照射の安定性や効率が良くなった。そして、レーザ透過ガラス15に付着する溶液を除去するエアー噴射ノズル16により溶液の付着防止を行っても(実験3)、レーザ照射の安定性や効率性が良くなった。なお溶液Sをオーバーフローや循環させた状態でレーザ照射する実験でも、レーザ照射の安定性や効率が良くなった。
【0068】
酸化防止効果のある溶液
次に、溶液として水に希釈したクエン酸液等のナノ粒子の分散剤を使用した実験を行った。水に希釈したクエン酸液は、ナノ粒子の分散剤(表面修飾剤)として利用されているが、酸化防止にも効果を発揮するかどうか実験したところ、酸化防止効果がみられた。また、その他の溶液として、1−ドデカンチオール、1−ドデカンチオールを添加したテトラエチレングルコール、ならびにドーパミン及びノルアドレナリンなどのカテコールアミン希釈液、オレイン酸についても実験を行い、酸化防止効果を得た。分散剤としては、界面活性剤が利用可能であるが、極性溶媒である水とエタノールなどの溶媒を用いる場合には、PVPなどの水溶性ポリマー、クエン酸などが、非極性溶媒の有機溶媒を用いる場合には、オレイン酸などのカルボン酸、オレイルアミンなどのアミン類、ドデカンチオールなどのチオール類などが使用可能である。なお、本発明の製造方法では、原材料が酸化しやすい元素であっても、これに対する製剤(抗酸化剤)は添加せずに、容器1の密閉性を利用して、酸化させることなく磁性体や窒化アルミニウムによる金属ナノコロイドの生成も可能にする。
【0069】
以上から、本発明では、密閉容器1内を加圧するとともに不活性ガスで置換することにより、生成される粒子の酸化を防止し、レーザ光Lの照射安定性と効率性を向上させることができる。また酸化防止効果のある溶媒としてオレイン酸を使用することで、酸化防止効果を向上させることができる。このようにして、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の磁性体や窒化アルミニウムを酸化させることなく効率的に生成することができる。