特許第6863885号(P6863885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863885
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】バンドおよび時計
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/14 20060101AFI20210412BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20210412BHJP
   A44C 5/10 20060101ALI20210412BHJP
   G04B 37/16 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   A44C5/14 N
   A44C5/02 D
   A44C5/10 F
   G04B37/16 Q
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-246102(P2017-246102)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-111038(P2019-111038A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2018年10月5日
【審判番号】不服2020-7890(P2020-7890/J1)
【審判請求日】2020年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善弘
(72)【発明者】
【氏名】天野 正男
(72)【発明者】
【氏名】竹田 茂樹
【合議体】
【審判長】 北村 英隆
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 渡邊 豊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−205260(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3015249(JP,U)
【文献】 特開2009−156578(JP,A)
【文献】 特開2010−281671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00 - 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力を有する合成樹脂製のバンド本体と、
前記バンド本体と同じ合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い補強部と、
を備え、
前記補強部は前記バンド本体の端部に埋め込まれ、前記バンド本体と前記補強部との境界面は融合され、
前記補強部は、被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して接離可能に当接する回転止め部を備え、
前記回転止め部は、前記補強部の下面に突出して設けられていることを特徴とするバンド。
【請求項2】
請求項1に記載のバンドにおいて、前記補強部と前記バンド本体との前記境界面における前記バンド本体は、その肉厚が前記バンド本体の片側半分の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とするバンド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバンドにおいて、前記補強部は、前記バンド本体の長手方向と直交する方向における中間部に、被取付部材の取付凸部が挿入して取り付けられる取付凹部が設けられていることを特徴とするバンド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバンドにおいて、前記回転止め部は、下側の肉厚が被取付部材側に位置する先端側に向けて次第に薄く形成されていることを特徴とするバンド。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバンドにおいて、前記バンド本体と前記補強部は、頭部を備える連結部材により被取付部材に連結されることを特徴とするバンド。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバンドを備えていることを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計などの腕装着装置やバッグ、鞄、衣服などに用いられるバンドおよびそれを備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計のバンドにおいては、特許文献1に記載されているように、シリコーン樹脂などの軟質材料のバンド本体の一端部に嵌着凹部を設け、この嵌着凹部に硬質材料の補強部材を嵌め込み、この状態でバンド本体の一端部を補強部材と共に腕時計ケースのバンド取付部にばね棒などの連結部材で取り付けるように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−136547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような腕時計のバンドでは、バンド本体と補強部材とが異なる材料であるため、バンド本体の一端部に設けられた嵌着凹部に硬質材料の補強部材を嵌め込んでも、バンド本体と補強部材とが分離し易い。このため、バンド本体の嵌着凹部に補強部材を嵌め込んだ状態で、バンド本体と補強部材とを取付ピンによって取り付ける必要があるが、取付ピンによって軟質材料のバンド本体が破損し易いという問題が生じる。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、別部品を用いずに、バンド本体と補強部とを強固に一体化することができるバンドおよびそれを備えた時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、弾力を有する合成樹脂製のバンド本体と、前記バンド本体と同じ合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い補強部と、を備え、前記補強部は前記バンド本体の端部に埋め込まれ、前記バンド本体と前記補強部との境界面は融合され、前記補強部は、被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して接離可能に当接する回転止め部を備え、前記回転止め部は、前記補強部の下面に突出して設けられていることを特徴とするバンドである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、別部品を用いずに、バンド本体と補強部とを確実にかつ強固に一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
図2図1に示された腕時計のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
図3図1に示された腕時計のB−B矢視における要部を示した拡大断面図である。
図4図1に示された腕時計のバンドを示した拡大斜視図である。
図5図4に示されたバンドにおいて、腕時計ケース側のバンドの端部を示した要部の拡大斜視図である。
図6図4に示されたバンドのC−C矢視における要部を示した拡大断面図である。
図7図5に示されたバンドの補強部を示した拡大斜視図である。
図8図4に示されたバンドの変形例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図7を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、バンド2が取り付けられる被取付部材であるバンド取付部3がそれぞれ設けられている。また、この腕時計ケース1の2時側、3時側、4時側、および8時側には、スイッチ部4がそれぞれ設けられている。
【0010】
この場合、腕時計ケース1は、図1および図2に示すように、ケース本体1aと外装部材1bとを備えている。ケース本体1aは金属または硬質の合成樹脂で形成されている。外装部材1bは、金属またはウレタン樹脂などの軟質の合成樹脂で形成されている。この外装部材1bは、ケース本体1aの外周にこれを覆って配置された状態で、複数のビス1cによってケース本体1aに取り付けられている。
【0011】
この腕時計ケース1の上部開口部には、図2に示すように、時計ガラス5がガラスパッキン5aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の下部には、裏蓋6が防水パッキン6aを介して取り付けられている。また、この腕時計ケース1内には、時計モジュール7が設けられている。この時計モジュール7は、図示しないが、指針を駆動する時計ムーブメント、時刻や日付などの情報を電気光学的に表示する表示部、これらを電気的に駆動する回路部などの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
【0012】
ところで、バンド2が取り付けられるバンド取付部3は、図1図3に示すように、腕時計ケース1の側部に設けられた取付凸部8を備えている。この取付凸部8は、バンド2の長手方向と直交する幅方向の長さがバンド2の幅方向の長さよりも短く形成されている。また、この取付凸部8には、後述する連結部材9が挿入する取付孔8aがバンド2の幅方向に貫通して設けられている。
【0013】
一方、バンド2は、図2図6に示すように、バンド本体10と補強部11とを備えている。バンド本体10は、後述する合成樹脂によってほぼ帯状に形成されている。すなわち、このバンド本体10は、腕時計ケース1のバンド取付部3に取り付けられる端部10aの厚みがバンド取付部3側の先端側に向けて次第に厚くなる形状に形成され、この端部10aを除いてほぼ均一な厚さで形成されている。
【0014】
補強部11は、図2図7に示すように、バンド本体10と同じ合成樹脂で、かつ後述するように、硬度がバンド本体10の硬度よりも高い材料で形成されている。この補強部11は、バンド本体10の端部10aにインサート成型によって一体に埋め込まれている。すなわち、この補強部11は、腕時計ケース1側の先端側がバンド本体10の端部10aから露出した状態で、バンド本体10の端部10aに埋め込まれている。
【0015】
この補強部11は、図5および図6に示すように、バンド本体10の端部10aの先端側からバンド本体10にその長手方向に食い込むほぼ三角柱状に形成されている。すなわち、この補強部11は、先端側の厚みが厚く、バンド本体10の長手方向に食い込むに従って次第に厚みが薄く形成されている。
【0016】
この場合、補強部11は、図5および図6に示すように、食込み方向の長さ、つまりバンド本体10の長手方向における長さが、バンド本体10の端部10aの先端側からバンド本体10の厚みがほぼ均一になる箇所に亘る長さに形成されている。また、この補強部11は、バンド本体10の長手方向と直交する幅方向の長さが、バンド本体10の端部10aの幅方向の長さよりも少し短い長さで形成されている。
【0017】
この補強部11には、図3図7に示すように、腕時計ケース1のバンド取付部3に設けられた取付凸部8が配置される取付凹部12が設けられている。この取付凹部12は、バンド本体10の長手方向と直交する幅方向の長さが取付凸部8の長さと同じか、それよりも少し長く形成されている。また、この取付凹部12の両側に位置する各側部13は、断面形状がほぼ半円形状に形成されている。これら各側部13には、一対の連結孔14がそれぞれ取付凸部8の取付孔8aと同一軸上に対応して設けられている。
【0018】
この場合、一対の連結孔14は、図3図7に示すように、側部13の外部側に設けられた大径孔部14aと、側部13の内部側に設けられた小径孔部14bと、を備えている。大径孔部14aは、内径が取付凸部8の取付孔8aの内径よりも少し大きく形成され、軸方向の長さが小径孔部14bの軸方向の長さよりも短く形成されている。小径孔部14bは、内径が取付凸部8の取付孔8aの内径よりも少し小さく形成されている。
【0019】
また、補強部11の下面には、図2図7に示すように、回転止め部15が取付凹部12に対応した状態で、下側に突出して設けられている。この回転止め部15は、図2に示すように、腕時計ケース1のバンド取付部3の取付凸部8が補強部11の取付凹部12に配置されて、補強部11が取付凹部12の両側に位置する各側部13に連結部材9によって連結された状態で、連結部材9を中心に回転した際に、腕時計ケース1の裏蓋6の下面に接離可能に当接して、バンド本体10の端部10aの回転を規制するように構成されている。
【0020】
この場合、補強部11は、図3図5に示すように、バンド本体10の長手方向と直交する幅方向の両側に位置する各側部13の外面および回転止め部15の両側面がバンド本体10の端部10aで覆われている。このため、補強部11の各側部13を覆ったバンド本体10の端部10aには、それぞれ挿入孔10bが各側部13に設けられた一対の連結孔14と同一軸上に対応して設けられている。この挿入孔10bは、内径が側部13の連結孔14における大径孔部14aの内径とほぼ同じ大きさに形成されている。
【0021】
一方、連結部材9は、図3に示すように、第1ねじ部16と第2ねじ部17とを備えている。第1ねじ部16は、頭部16aと軸部16bとを備え、頭部16aと反対側に位置する軸部16bの端部にねじ孔16cが設けられている。頭部16aは、外径が補強部11の連結孔14における大径孔部14aの内径と同じ大きさで、軸方向の長さが連結孔14の大径孔部14aの軸方向の長さよりも少し長く形成されている。
【0022】
軸部16bは、図3に示すように、外径が連結孔14の小径孔部14bの内径と同じ大きさに形成されている。この軸部16bは、軸方向の長さが補強部11の取付凹部12の軸方向の長さよりも長く、かつ取付凹部12の両側の各側部13における一対の連結孔14の各大径孔部14a間の長さと同じか、それよりも少し短い長さに形成されている。ねじ孔16cは、内径が軸部16bの外径よりも小さく形成され、かつ軸方向の長さが連結孔14の小径孔部14bの軸方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。
【0023】
第2ねじ部17は、図3に示すように、頭部17aとねじ部17bとを備えている。頭部17aは、第1ねじ部16と同様、外径が補強部11の連結孔14における大径孔部14aの内径と同じ大きさで、軸方向の長さが連結孔14の大径孔部14aの軸方向の長さよりも少し長く形成されている。ねじ部17bは、第1ねじ部16のねじ孔16cに螺合するものであり、軸方向の長さが補強部11の連結孔14の軸方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。
【0024】
これにより、連結部材9は、図1図3に示すように、バンド本体10の端部10aに埋め込まれた補強部11の取付凹部12に腕時計ケース1のバンド取付部3の取付凸部8が配置されて、補強部11の両側の各側部13の連結孔14が取付凸部8の取付孔8aに同一軸上に対応した状態で、バンド本体10の挿入孔10b、補強部11の連通孔14、およびバンド取付部3の取付孔8aに挿入されることにより、バンド本体10の端部10aの補強部11と腕時計ケース1のバンド取付部3とを連結するように構成されている。
【0025】
すなわち、連結部材9は、図3に示すように、バンド本体10の端部10aの一方の挿入孔10bから補強部11の一方の側部13の連結孔14を通して第1ねじ部16の軸部16bが取付凸部8の取付孔8aに挿入され、バンド本体10の端部10aの他方の挿入孔10bから補強部11の他方の側部13の連結孔14を通して第2ねじ部17のねじ部17bが取付凸部8の取付孔8aに挿入され、この状態で第1ねじ部16の軸部16bに設けられたねじ孔16cに螺合するように構成されている。
【0026】
また、この連結部材9は、図3に示すように、取付凸部8の取付孔8a内において、第1ねじ部16のねじ孔16cに第2ねじ部17のねじ部17bが螺合して締め付けられた際に、第1ねじ部16の頭部16aが一方の側部13における連結孔14の大径孔部14aに挿入され、第2ねじ部17の頭部17aが他方の側部13における連結孔14の大径孔部14aに挿入されるように構成されている。
【0027】
これにより、連結部材9は、図3に示すように、第1ねじ部16のねじ孔16cに第2ねじ部17のねじ部17bが螺合して締め付けられることにより、第1ねじ部16と第2ねじ部17とによって補強部11の両側の各側部13がバンド取付部3の取付凸部8に押し当てられてバンド取付部3の取付凸部8を挟み付けることにより、バンド本体10の端部10aの補強部11を腕時計ケース1のバンド取付部3に取り付けるように構成されている。
【0028】
ところで、バンド本体10は、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの弾力を有する合成樹脂によって形成されている。補強部11は、バンド本体10と同じ合成樹脂で、かつ硬度がバンド本体10の硬度よりも高い材料で形成されている。すなわち、バンド本体10は、フッ素樹脂の場合、JIS-A硬度が70〜75°であり、補強部11は、JIS-A硬度が90〜95°である。これにより、補強部11は、強度がバンド本体10よりも高く形成されている。
【0029】
この補強部11は、図4に示すように、先端側がバンド本体10の端部10aから露出した状態で、バンド本体10の端部10aにインサート成型によって一体に埋め込まれることにより、バンド本体10との境界面が相互に融合されている。すなわち、バンド本体10と補強部11とは、硬度が異なっていても、同じ材料であることにより、バンド本体10と補強部11との境界面が確実に融合される。このため、バンド本体10と補強部11とは、プライマーなどの下地処理や接着剤などを用いずに、密着強度が確保されるように形成されている。
【0030】
この場合、バンド本体10の端部10aは、図5および図6に示すように、補強部11の食込み側の肉厚が厚く、補強部11の露出側に向かうに従って肉厚が次第に薄くなるように形成されている。すなわち、バンド本体10の端部10aは、補強部11の両側の各側部13における上側の肉厚が腕時計ケース1側に位置する先端側に向けて次第に薄く形成されている。
【0031】
すなわち、先端側に位置するバンド本体10の端部10aの肉厚は、図5および図6に示すように、インサート成型が可能な最小限の厚さで薄く形成されている。つまり、バンド本体10の片側半分の厚さ(表面側の半分の厚さ)よりも薄く形成されている。この場合、バンド本体10の端部10aは、先端側の肉厚が薄くても、バンド本体10と補強部11との境界面が融合されていることにより、補強部11から剥離しないように形成されている。
【0032】
また、バンド本体10の端部10aは、補強部11の回転止め部15の下側の肉厚が腕時計ケース1側に位置する先端側に向けて次第に薄く形成されている。すなわち、先端側に位置するバンド本体10の端部10aの肉厚も、インサート成型が可能な最小限の厚さで薄く形成されている。
【0033】
つまり、バンド本体10の端部10aは、バンド本体10の片側半分の厚さ(表面側の半分の厚さ)よりも薄く形成されている。この場合にも、バンド本体10の端部10aは、先端側の肉厚が薄くても、バンド本体10と補強部11との境界面が融合されていることにより、補強部11から剥離しないように形成されている。
【0034】
次に、この腕時計のバンド2の作用について説明する。
バンド2を製作する場合には、予め、補強部11を成型する。このときには、補強部11をフッ素樹脂で成型する場合には、JIS-A硬度が90〜95°のフッ素樹脂によって成型する。また、バンド本体10を成型する場合には、インサート成型によって補強部11をバンド本体10の端部10aに埋め込む。
【0035】
このときには、バンド本体10を補強部11の硬度よりも低いフッ素樹脂、つまりJIS-A硬度が70〜75°のフッ素樹脂によって成型する。このため、バンド本体10の端部10aに埋め込まれた補強部11は、バンド本体10よりも硬度が高いので、バンド本体よりも強度が高くなり、この強度の高い補強部11によってバンド本体10の端部10aの強度が補強される。
【0036】
これにより、補強部11がバンド本体10の端部10aに一体に埋め込まれる。このときには、バンド本体10と補強部11とは、硬度が異なっていても、同じ材料であることにより、バンド本体10と補強部11との境界面が確実にかつ強固に融合される。このため、バンド本体10と補強部11とは、プライマーなどの下地処理や接着剤などを用いずに、密着強度が確保されて、確実にかつ強固に一体化される。
【0037】
この場合、バンド本体10の端部10aは、補強部11の食込み側の肉厚が厚く、補強部11の露出側に向かうに従って肉厚が次第に薄くなるように形成される。すなわち、バンド本体10の端部10aは、補強部11の両側の各側部13における上側の肉厚が腕時計ケース1側に位置する先端側に向けて次第に薄く形成されている。
【0038】
この場合には、先端側に位置するバンド本体10の端部10aの肉厚がインサート成型可能な最小限の厚さで薄く形成される。このように肉厚が薄く形成されても、補強部11に対する密着強度が確保されているので、バンド本体10の端部10aにおける肉厚の薄い箇所が補強部11から剥離することがない。
【0039】
また、バンド本体10の端部10aは、補強部11の回転止め部15の下側の肉厚が腕時計ケース1側に位置する先端側に向けて次第に薄く形成されている。この場合にも、先端側に位置するバンド本体10の端部10aの肉厚がインサート成型可能な最小限の厚さで薄く形成されている。このように肉厚が薄く形成されても、補強部11に対する密着強度が確保されているので、バンド本体10の端部10aにおける肉厚の薄い箇所が補強部11から剥離することがない。
【0040】
このように形成されたバンド2を腕時計ケース1のバンド取付部3に取り付ける場合には、まず、バンド本体10の端部10aに埋め込まれた補強部11の取付凹部12に腕時計ケース1のバンド取付部3の取付凸部8を配置する。このときには、バンド本体10の端部10aの両側に設けられた各挿入孔10b、および補強部11の両側の各側部13に設けられた一対の連結孔14を取付凸部8の取付孔8aに同一軸上に対応させる。
【0041】
この状態で、バンド本体10の端部10aの一方の挿入孔10bから補強部11の一方の側部13の連結孔14を通して、連結部材9の第1ねじ部16の軸部16bを取付凸部8の取付孔8aに挿入させる。また、バンド本体10の端部10aの他方の挿入孔10bから補強部11の他方の側部13の連結孔14を通して、連結部材9の第2ねじ部17のねじ部17bを取付凸部8の取付孔8aに挿入させる。
【0042】
そして、第1ねじ部16のねじ孔16cに第2ねじ部17のねじ部17bを螺合させて締め付ける。すると、第1ねじ部16の頭部16aが一方の側部13における連結孔14の大径孔部14aに挿入され、第2ねじ部17の頭部17aが他方の側部13における連結孔14の大径孔部14aに挿入される。
【0043】
これにより、補強部11の両側の各側部13が、第1ねじ部16の頭部16aと第2ねじ部17の頭部17aとによって、バンド取付部3の取付凸部8に押し当てられて取付凸部8を挟み付ける。このため、バンド本体10の端部10aの補強部11が腕時計ケース1のバンド取付部3に取り付けられる。
【0044】
このように、腕時計ケース1のバンド取付部3にバンド2が取り付けられた際には、バンド本体10の端部10aとこの端部10aに埋め込まれた補強部11とは、連結部材9を中心に上下方向に回転する。このときには、補強部11の下面に突出して設けられた回転止め部15が腕時計ケース1の裏蓋6に接離可能に当接して、バンド本体10の端部10aの回転が規制される。
【0045】
このように、この腕時計のバンド2によれば、弾力を有する合成樹脂製のバンド本体10と、このバンド本体10と同じ合成樹脂で、かつ硬度がバンド本体10の硬度よりも高い補強部11と、を備え、この補強部11がバンド本体10の端部10aに埋め込まれ、バンド本体10と補強部11との境界面が融合されていることにより、別部品を用いずに、バンド本体と補強部とを確実にかつ強固に一体化することができる。
【0046】
すなわち、この腕時計のバンド2では、補強部11の硬度がバンド本体10の硬度よりも高いので、補強部11の強度をバンド本体10よりも高めることができる。このため、補強部11の先端側をバンド本体10の端部10aから露出させた状態で、バンド本体10の端部10aに補強部11をインサート成型によって一体に埋め込むことにより、バンド本体10の端部10aを補強部11によって強度を補強することができる。
【0047】
この場合、バンド本体10は、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの弾力を有する合成樹脂、例えばJIS-A硬度が70〜75°のフッ素樹脂によって形成され、補強部11は、バンド本体10と同じ合成樹脂で、かつ硬度がバンド本体10の硬度よりも高い材料、例えばJIS-A硬度が90〜95°のフッ素樹脂で形成されていることにより、バンド本体10の端部10aを補強部11によって確実に補強することができる。
【0048】
また、バンド本体10と補強部11とは、硬度が異なっていても、同じ材料であるので、バンド本体10の端部10aに補強部11をインサート成型によって一体に埋め込むことにより、バンド本体10と補強部11との境界面を確実にかつ良好に融合させることができる。このため、プライマーなどの下地処理や接着剤などを用いずに、バンド本体10と補強部11との密着強度を高めることができる。
【0049】
また、この腕時計のバンド2では、補強部11とバンド本体10との境界面におけるバンド本体10の肉厚がインサート成型可能な最小限の厚さで薄く形成されていることにより、デザイン性を高めることができる。この場合、バンド本体10の端部10aの肉厚を薄く形成しても、補強部11に対する密着強度が確保されているので、バンド本体10の端部10aにおける肉厚の薄い箇所が補強部11から剥離することがない。このため、バンド本体10の端部10aの強度を補強部11によって高めることができる。
【0050】
また、この腕時計のバンド2では、バンド本体10の長手方向と直交する幅方向における補強部11の中間部に、被取付部材である腕時計ケース1の取付凸部8が挿入して取り付けられる取付凹部12が設けられていることにより、バンド本体10を腕時計ケース1に取り付ける際に、補強部11の取付凹部12に腕時計ケース1の取付凸部8を配置させることができ、これによりバンド本体10の端部10aに埋め込まれた補強部11によってバンド本体10を腕時計ケース1に確実にかつ強固に取り付けることができる。
【0051】
すなわち、この腕時計のバンド2では、補強部11の取付凹部12に腕時計ケース1の取付凸部8を配置させた状態で、補強部11の取付凹部12の両側に位置する各側部13と腕時計ケース1の取付凸部8とを連結部材9によって簡単にかつ確実に連結することができるので、連結部材9によってバンド本体10が破損することなく、バンド本体10を腕時計ケース1に確実にかつ良好に取り付けることができる。
【0052】
この場合、腕時計ケース1の取付凸部8には取付孔8aが設けられ、補強部11の取付凹部12の両側に位置する各側部13には一対の連結孔14が設けられ、バンド本体10の端部10aの両側には各挿入孔10bが設けられているので、これらバンド本体10の端部10aの各挿入孔10b、補強部11の一対の連結孔14、および取付凸部8の取付孔8aに連結部材9を挿入させることにより、バンド本体10を腕時計ケース1に確実にかつ良好に取り付けることができる。
【0053】
すなわち、連結部材9は、第1ねじ部16と第2ねじ部17とを備え、第1ねじ部16が頭部16aとねじ孔16cが設けられた軸部16bとを備え、第2ねじ部17は頭部17aとねじ部17bとを備えていることにより、第1ねじ部16と第2ねじ部17とをバンド本体10の端部10aの各挿入孔10b、補強部11の一対の連結孔14、および取付凸部8の取付孔8aに連結部材9を挿入させることにより、バンド本体10を腕時計ケース1に確実にかつ良好に取り付けることができる。
【0054】
この場合、連結部材9は、バンド本体10の端部10aの一方の挿入孔10bから補強部11の一方の側部13の連結孔14を通して、第1ねじ部16の軸部16bを取付凸部8の取付孔8aに挿入させると共に、バンド本体10の端部10aの他方の挿入孔10bから補強部11の他方の側部13の連結孔14を通して、第2ねじ部17のねじ部17bを取付凸部8の取付孔8aに挿入させることにより、第1ねじ部16のねじ孔16cに第2ねじ部17のねじ部17bを螺合させて締め付けることができる。
【0055】
このため、この連結部材9は、第1ねじ部16のねじ孔16cに第2ねじ部17のねじ部17bを螺合させて締め付けることにより、第1ねじ部16の頭部16aと第2ねじ部17の頭部17aとによって補強部11の両側の各側部13をバンド取付部3の取付凸部8に押し当てて、補強部11の両側の各側部13でバンド取付部3の取付凸部8を挟み付けることができる。
【0056】
これにより、連結部材9は、バンド本体10の端部10aの補強部11を腕時計ケース1のバンド取付部3に確実にかつ強固に取り付けることができる。第1ねじ部16の頭部16aと第2ねじ部17の頭部17aのように、頭部を備えたねじであってもバンド本体10の端部10aの肉厚を薄く形成でき、バンド本体10の端部10aの補強部11を腕時計ケース1のバンド取付部3に確実にかつ強固に取り付けることができる。
【0057】
さらに、この腕時計のバンド2では、補強部11が腕時計ケース1に対して接離可能に当接する回転止め部15を備えていることにより、腕時計ケース1に連結部材9によってバンド本体10が取り付けられた状態で、連結部材9を中心にバンド本体10の端部10aが回転しても、回転止め部15によってバンド本体10の端部10aの回転を規制することができる。
【0058】
すなわち、この腕時計のバンド2では、腕時計ケース1のバンド取付部3にバンド2が取り付けられた状態で、バンド本体10の端部10aとこの端部10aに埋め込まれた補強部11とが連結部材9を中心に上下方向に回転しても、補強部11の下面に突出して設けられた回転止め部15を腕時計ケース1の裏蓋6に接離可能に当接させることができるので、バンド本体10の端部10aの回転を確実にかつ良好に規制することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、バンド本体10を同じ色の材料で形成した場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば図8に示す変形例のように、バンド本体10の厚み方向において、表面側の半分B1と裏面側の半分B2とで材料の色が異なるように形成しても良い。
【0060】
また、表面側の半分B1と裏面側の半分B2とで材料の硬度を変えても良い。この場合、表面側の半分B1の硬度は、裏面側の半分B2の硬度よりも高く、補強部11の硬度が一番高く形成すれば良い。つまり、硬度の高い順に、補強部11、表面側の半分B1、裏面側の半分B2となれば良い。また、バンド本体10と補強部11とで材料の色が異なるように形成しても良い。このようにすれば、バンド2のカラー化を図ることができ、デザイン性を高めることができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、連結部材9が第1ねじ部16と第2ねじ部17とを備えた構造である場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば金属ピンやばね棒などであっても良い。
【0062】
さらに、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は、必ずしも腕時計である必要はなく、例えば腕に装着して使用する腕装着装置、または看板やバッグ、あるいは衣服などのバンドにも適用することができる。
【0063】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0064】
(付記)
請求項1に記載の発明は、弾力を有する合成樹脂製のバンド本体と、前記バンド本体と同じ合成樹脂で、かつ硬度が前記バンド本体の硬度よりも高い補強部と、を備え、前記補強部は前記バンド本体の端部に埋め込まれ、前記バンド本体と前記補強部との境界面は融合されていることを特徴とするバンドである。
【0065】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバンドにおいて、前記補強部と前記バンド本体との前記境界面における前記バンド本体は、その肉厚が前記バンド本体の片側半分の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とするバンドである。
【0066】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のバンドにおいて、前記補強部は、前記バンド本体の長手方向と直交する方向における中間部に、被取付部材の取付凸部が挿入して取り付けられる取付凹部が設けられていることを特徴とするバンドである。
【0067】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のバンドにおいて、前記補強部は、前記被取付部材に連結部材によって取り付けられた際に、前記被取付部材に対して接離可能に当接する回転止め部を備えていることを特徴とするバンドである。
【0068】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のバンドにおいて、前記バンド本体と前記補強部は、頭部を備える連結部材により被取付部材に連結されることを特徴とするバンドである。
【0069】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のバンドを備えていることを特徴とする時計である。
【符号の説明】
【0070】
1 腕時計ケース
2 バンド
3 バンド取付部
5 時計ガラス
6 裏蓋
8 取付凸部
8a 取付孔
9 連結部材
10 バンド本体
10a 端部
10b 挿入孔
11 補強部
12 取付凹部
13 側部
14 連結孔
15 回転止め部
16 第1ねじ部
17 第2ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8