特許第6863888号(P6863888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863888ポリペプチドをコンジュゲートさせる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863888
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ポリペプチドをコンジュゲートさせる方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20210412BHJP
   C07K 1/113 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 38/05 20060101ALN20210412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20210412BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20210412BHJP
   A61K 47/50 20170101ALN20210412BHJP
   A61K 47/60 20170101ALN20210412BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20210412BHJP
   A61K 31/537 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C07K16/00
   C07K1/113ZNA
   !A61K38/05
   !A61P35/00
   !A61K39/395 D
   !A61K39/395 E
   !A61K39/395 N
   !A61K39/395 T
   !A61K39/395 C
   !A61K39/395 L
   !A61K47/50
   !A61K47/60
   !A61K47/68
   !A61K31/537
【請求項の数】17
【全頁数】95
(21)【出願番号】特願2017-517647(P2017-517647)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-535526(P2017-535526A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】US2015053397
(87)【国際公開番号】WO2016054315
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】62/058,502
(32)【優先日】2014年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ジェイムズ・クリスティー
(72)【発明者】
【氏名】チャンショウ・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ナッツァレーノ・ディマージ
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 BIOCONJUGATE CHEMISTRY,2008年,Vol. 19,pp. 759-765
【文献】 JOURNAL OF IMMUNOLOGICAL METHODS,1979年,Vol. 28, No. 3-4,pp. 233-242
【文献】 JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2000年,Vol. 43,pp. 1253-1256
【文献】 JOURNAL OF DRUG TARGETING,2011年,Vol. 19, No. 7,pp. 497-505
【文献】 FEBS LETTERS,1986年,Vol. 202, No. 2,pp. 197-201
【文献】 JOURNAL OF BIOCHEMISTRY,1976年,Vol. 79, No. 1,pp. 233-236
【文献】 BIOCONJUGATE CHEMISTRY,1993年,Vol. 4,pp. 212-218
【文献】 DRUG DELIVERY,1999年,Vol. 6, No. 2,pp. 89-95
【文献】 JOURNAL OF DRUG TARGETING,2007年,Vol. 15, No. 3,pp. 190-198
【文献】 JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2010年,Vol. 285, No. 43,pp. 33144-33153
【文献】 BIOCONJUGATE CHEMISTRY,2011年,Vol. 22,pp. 1946-1953
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンジュゲートを調製する方法であって、
a)
(i)式(IIa):
【化1】
(ii)式(IIb):
【化2】
または
(iii)式(IIIa):
【化3】
[式中、
フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有し;
mは、0または1であり;
qは、0または1から12の範囲内の整数であり;
Qは、結合またはコンジュゲーション構成要素からの残基であり;
Zは、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜30アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のC=Oを適宜有していてもよく;
は、H、固体表面またはペイロード分子であり;
は、HまたはC1〜6アルキルであり;
は、HまたはC1〜6アルキルであり;
は、HまたはC1〜6アルキルである]
のいずれかで示される分子中のマレイミド実体と、少なくとも1つのチオール基を含む抗体分子とのマイケル付加反応を実施するステップ、
b)Rがペイロード分子または固体表面である場合、式(IIa)、(IIb)、または(IIIa)の化合物と、前記抗体との反応により形成された得られたチオ−スクシンイミド実体を加水分解するステップ、または
c)RがHである場合、ペイロード、コンジュゲーション構成要素または固体表面とのコンジュゲーションを実施し、次いで式(IIa)、(IIb)、または(IIIa)の化合物と、前記抗体との反応により形成されたチオ−スクシンイミド実体を加水分解するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記分子が、式(IIa)で表されるものであり、前記基RQ(Z)C(O)−が、式(IIaa):
【化4】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるパラ位で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子が、式(IIa)で表されるものであり、基RQ(Z)C(O)−が、式(IIaa’):
【化5】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるメタ位で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マレイミド分子が、式(IIaaa):
【化6】
[式中、
Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のC=Oを適宜有していてもよい]
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基RQ(Z’)NC(O)−が、メタまたはパラ位で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分子が、式(IIb)で表されるものであり、前記基RQ(Z)C(O)−が、式(IIbb):
【化7】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるパラ位で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分子が、式(IIb)で表されるものであり、前記基RQ(Z)C(O)−が、式(IIbb’):
【化8】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるメタ位で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マレイミド実体が、式(IIbbb):
【化9】
[式中、
Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のC=Oを適宜有していてもよい]
の分子中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基RQ(Z’)NC(O)−が、前記フェニル環のメタまたはパラ位で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分子が、式(IIIa)で表されるものであり、前記基RQ(Z)−が、式(IIIaa):
【化10】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるパラ位で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分子が、式(IIIa)で表されるものであり、前記基RQ(Z)−が、式(IIIaa’):
【化11】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるメタ位で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記マレイミド分子が、式(IIIaaa):
【化12】
[式中、
Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のC=Oを適宜有していてもよい]
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ZまたはZ’が、−C1〜12アルキレン−または−(CHCHO)1〜8−を表す、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
が、毒素、薬物分子、ポリマー、抗体またはその結合断片を含む群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物分子が、アウリスタチンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記薬物分子が、チューブリシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)およびMMAF(モノメチルアウリスタチンF)を含む群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
式(IV):
【化13】
[式中、
mは、0または1であり;
Qは、結合またはコンジュゲーション構成要素からの残基であり;
Zは、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜30アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のC=Oを適宜有していてもよく;
は、H、固体表面またはペイロード分子であり、
−(Y)−X−は、下記式:
【化14】
[式中、波線は、各式の結合部位を表し、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
から選択されるリンカーであり、
は、Hまたは少なくとも1つのチオール基を含む抗体分子であり、Rは、Hまたは少なくとも1つのチオール基を含む抗体分子であり、RまたはRの少なくとも一方は、前記少なくとも1つのチオール基を含む抗体分子であり、他方は、Hであって、前記抗体分子が式(IV)の分子の残りの部分に前記少なくとも1つのチオール基を介して結合している
の分子または薬学的に許容可能なその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリペプチド、例えば、タンパク質をペイロードに、ポリペプチドを損傷させない条件下でコンジュゲートさせて安定分子を提供する方法に関する。本開示はまた、前記方法により調製され、または得られる分子およびそれを含む組成物に関する。本開示はさらに、治療法、例えば、免疫療法および/または癌治療法における、その方法から調製され、または得られた分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンジュゲーション技術は医薬に関して極めて重要であり、例えば、多数の市販の薬物/生物剤が、ポリエチレングリコール(PEG)分子にコンジュゲートされる。PEGは、一部の分子の免疫原性を低減させ、および/または分子の半減期を増加させると考えられるという点でいくつかの機能の1つを有する。市販の治療剤の例としては、ペギネサチド、ペグロチカーゼ、セルトリズマブペゴル(Cimzia)、メトキシポリエチレングリコール−エポエチンベータ(Mircera)、ペガプタニブ(Macugen)、ペグフィルグラスチム(Neulasta)、ペグビソマント(Somavert)、ペグインターフェロンアルファ−2a(Pegasys)、ドキソルビシンHClリポソーム(Doxil/Caelyx)、ペグインターフェロンアルファ−2b(PegIntron)、ペガスパルガーゼ(Oncaspar)、およびウシペグアデマーゼ(Adagen)が挙げられる。
【0003】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)も、治療分子の重要なカテゴリーである。これらは、高度に強力であり、抗体構成要素が、意図される標的に抗体構成要素により誘導されるペイロード、例えば、細胞毒素にコンジュゲートしているという点で「誘導ミサイル」と類似する。ADCの例としては、ブレンツキシマブベドチンおよびトラスツズマブエムタンシンが挙げられる。コンジュゲーション化学において形成されるリンカーは、ADCにおいて極めて重要である。
【0004】
コンジュゲーション技術の多くは、コンジュゲート分子中のスクシンイミド構成要素を与える1,4マイケル付加反応におけるマレイミド要素を用いる。しかしながら、国際公開第2013/173337号パンフレットにおいて考察されるとおり、この反応は可逆的であり、動的平衡として存在すると考えられる。すなわち、精製は、単一の純粋な実体を提供するという問題を解決しない。
【0005】
これが血漿中で生じ、コンジュゲート分子の一部が血清アルブミンにより置き換えられ得ることを示唆する一部の刊行物が存在する(Alley et al Bioconjugate Chem.2008,19,759−765)。これは、特にADCに関して問題である。
【0006】
1つの回答は、得られたスクシンイミドを加水分解することである。しかしながら、これは、相対的に苛酷な条件、例えば、50mMのホウ酸緩衝液、pH9.2および45℃、約12時間を要求する。これは、抗体凝集/分解、ならびにさらにはペイロードおよび弾頭の分解を引き起こし得る。
【0007】
この問題の解決法が、国際公開第2013/173337号パンフレット(Seattle Genetics Inc)に開示されており、それはマレイミド環中の窒素に対してベータ位におけるアミン置換基を有するマレイミド誘導体を用いる。得られたスクシンイミドは、より軽度な条件下で加水分解することができる。しかしながら、チオールコンジュゲーションステップ前に顕著なマレイミド加水分解が生じると考えられる。さらに、コンジュゲーションステップは約8の塩基性pHにおいて実施される。この条件は、タンパク質性材料、例えば、抗体および抗体断片の凝集を促進し、それによりコンジュゲーションステップにおいてこの貴重な材料の損失を引き起こし得る。さらに、ペイロードと抗体との比は、一般に、全ての抗体がコンジュゲートされることを確保するように増加させなければならない。
【0008】
アミン触媒脱コンジュゲーション機序が、Md.Rowshon Alam et al(Bioconjugate Chem 2011,22,1673−1681)による論文に開示されており、それは、Seattle Genetics方針が普遍的に適用可能でないことを示す(論文中のスキーム2参照)。
【0009】
代替的な解決法は、国際公開第2013/121175号パンフレットに提供されており、それは、いわゆるSN2反応におけるマレイミドのブロモ誘導体の使用を開示している。しかしながら、低いpH条件下で、反応種、すなわち、無水マレイン酸が再形成される、例えば、54頁参照:
【化1】
「次いで、pHを限外濾過・・・によりpH4.5変化させる。抗体コンジュゲートを37℃においてインキュベートし、アリコートを2、6、24、48および72時間後にLCMSにより分析した。ドキソルビシンがリンカー上で分解して放出され、トラスツズマブ−Fab−無水マレイン酸が形成された。」
【0010】
本発明者らは、コンジュゲートのこの不安定性、すなわち、マレイン酸環を形成する能力は、不利であると考える。それというのも、体内に多数の低pH環境が存在し、ペイロードが脱離し得るためにそれが国際公開第2013/1211175号パンフレットの分子の有用性を制限するためである。
【0011】
本開示は、調製後に安定であり、したがって、インビボ投与に好適な、特に、治療法における使用に好適な分子を提供する軽度条件を用いる方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、ペイロードにコンジュゲートしているポリペプチドを調製する方法であって、
a)式(I):
【化2】
[式中、式(I)において、
nは、0または1であり;
mは、0または1であり;
pは、0または1であり;
qは、0または1から12の範囲内の整数、例えば、1から6、例えば、2または3であり;
Qは、結合またはコンジュゲーション構成要素からの残基であり;
Xは、C0〜18アルキレンC6〜36アリール(=CR=CH−)、C0〜18アルキレンC6〜36アリール−CH=CR=CH−、C0〜18アルキレン5〜36員ヘテロアリール(−CR=CH−)、C0〜18アルキレン5〜36員ヘテロアリール−CHCR=CH−、C0〜18アルキレン−CR=CH−、C0〜18アルキレン−C≡C−であり、
アリールまたはヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有し;
Yは、オキソであり;
Zは、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜30アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8つ)が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)のオキソ置換基を適宜有していてもよく;
は、H、固体表面またはペイロード分子であり;
は、例えば、H、ハロゲン、ヒドロキシル、−C1〜6アルキル、−C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、NO、−SO、−SO、−NR、−PO、C6〜10アリールC0〜6アルキレン−、6〜10員ヘテロアリールC0〜6アルキレン−から選択される置換基であり;
は、HまたはC1〜6アルキルであり;
は、HまたはC1〜6アルキルであり;
は、HまたはC1〜6アルキルである]
で示される分子およびおよび薬学的に許容可能なその塩中のマレイミド実体と、少なくとも1つのチオール基を含むポリペプチド分子とのマイケル付加反応を実施するステップを含み、
b)Rがペイロード分子または固体表面である場合、式(I)の化合物と、前記ポリペプチドとの反応により形成された得られたチオ−スクシンイミド実体を加水分解するさらなるステップを含み、または
c)RがHである場合、ペイロードまたは固体表面とのコンジュゲーションを実施し、次いで式(I)の化合物と、前記ポリペプチドとの反応により形成されたチオ−スクシンイミド実体を加水分解するさらなるステップを含む方法が提供される。
【0013】
有利には、本開示のコンジュゲートは、酸性pH、例えば、約pH5において調製することができ、チオ−スクシンイミド加水分解は、軽度条件下で実施することができる。ある実施形態において、コンジュゲート中のチオ−スクシンイミドは、軽度条件下で急速に加水分解することができる。さらに、一度調製すると、本開示の分子は使用において安定であり、例えば、血清中で安定である。
【0014】
理論により拘束されるものではないが、不飽和系、例えば、アリール、フェニル、ビニル、アルキニルまたはそれらの組合せの共鳴能が重要であることが仮定される。それというのも、それらは軽度加水分解を容易にするためである。図1の模式図は、スクシンイミド環中の窒素に付着している不飽和系が、環中のカルボニルのいずれかにおける水による求核攻撃をいかに容易にし得るかを示す。
【0015】
一実施形態において、アリールは、1、2、3または4つのフルオロ置換基を有する。
【0016】
本明細書の開示は、前記方法から得られた、または得られる化合物/生成物にも及び、例えば、コンジュゲーション後に得られた生成物またはスクシンイミドの加水分解後に得られた生成物に及ぶ。
【0017】
一態様において、ポリペプチドおよび/またはペイロードにコンジュゲートしている本明細書に開示の化合物、例えば、式(I)、(II)、(IIa)、(IIaa)、(IIaa’)、(IIaaa)、(IIb)、(IIbb)、(IIbb’)、(IIIbbb)、(IIc)、(IIcc)、(IId)、(IIdd)、(IIddd)、(III)、(IIIa)、(IIIaa)、(IIIaa’)、(IIIaaa)、(IIIb)、(IIIbb)、(IIIc)、(IIIcc)および(IIIcc’)の化合物またはそれらの誘導体が提供される。
【0018】
一実施形態において、本明細書に例示される分子/化合物が提供される。
【0019】
一態様において、コンジュゲーション化学における、本明細書に開示の化合物の使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の化合物の加水分解の模式的表示である。
図1A】未反応mAbのスペクトルを示す。
図1B】アルキルマレイミド−PEG−ビオチンコンジュゲートのスペクトルを示す。
図2A】アルキルマレイミド−PEG−ビオチン(比較物)のスペクトルを示す。
図2B】フェニルマレイミド−PEG−ビオチンのスペクトルを示す。
図2C】フルオロフェニルマレイミド−PEG−ビオチンのスペクトルを示す。
図3】22℃におけるT289C mAbへのx−マレイミド−PEG−ビオチンのコンジュゲーション効率を示す。
図4】22℃におけるT289C mAbへのx−マレイミド−PEG−ビオチンのコンジュゲーション効率を示す。
図5】pH5.5、22℃におけるT289C mAbに対するx−マレイミド−PEG−ビオチンのコンジュゲーションキネティクスを示す。
図6】pH7.4、22℃におけるT289C mAbに対するx−マレイミド−PEG−ビオチンのコンジュゲーションキネティクスを示す。
図7】pH8.6、22℃におけるT289C mAbに対するx−マレイミド−PEG−ビオチンのコンジュゲーションキネティクスを示す。
図8】プレインキュベーション後のx−マレイミド−PEG−ビオチンとT289C mAbとの反応キネティクス:マレイミド加水分解の間接的計測を示す。
図9】pH5.5、22℃におけるマレイミド加水分解キネティクスを示す。
図10】pH7.4、22℃におけるマレイミド加水分解キネティクスを示す。
図11】pH8.6、22℃におけるマレイミド加水分解キネティクスを示す。
図12】PEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのpH7.4、22℃におけるチオスクシンイミド加水分解を示す。
図13】PEG−ビオチンT289C mAbについてのpH7.4、37℃におけるチオスクシンイミド加水分解を示す。
図14】PEG−ビオチンT289C mAbについてのpH8.6、22℃におけるチオスクシンイミド加水分解を示す。
図15】1時間のインキュベーション後のPEG−ビオチンT289C−mAbコンジュゲートについてのx−チオスクシンイミド加水分解、n=3を示す。
図16】モリブデン酸ナトリウムの存在下のPEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのx−チオスクシンイミド−PEG−ビオチン加水分解を示す。
図17】チオールを含有する緩衝液中のチオール交換に対するT289C mAbコンジュゲートの感受性を示す。
図18】BMEを含有する緩衝液中のPEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートの安定性を示す。
図19】BME負荷アッセイにおいて観察されたPEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのpH7.2、37℃におけるチオスクシンイミド加水分解を示す。
図20】BME負荷アッセイにおいて観察されたチオスクシンイミド脱コンジュゲーションおよび加水分解間の関係を示す。
図21】軽度加水分解後の緩衝液中のチオール交換に対するT289C mAbコンジュゲートの感受性を示す。
図22】mc−PAB−MMAE T289C mAb ADCの分析を示す。
図23】チオール(BME)を含有する緩衝液中のMMAE T289C mAbコンジュゲートの安定性を示す。
図24】T289C mAbコンジュゲート中のMMAE−チオスクシンイミドの加水分解を示す。
図25】チオール(BME)を含有する緩衝液中のMMAE T289C mAbコンジュゲートの安定性を示す。
図26】BME負荷において観察されたPEG−ビオチンおよびMMAEチオスクシンイミド加水分解の比較を示す。
図27】β−メルカプトエタノールの存在下の脱コンジュゲーションの比較:PEG−ビオチン対MMAEペイロードを示す。
図28】マウス血清中のMMAE−T289C ADCの安定性を示す。
図29】マウス血清中のMMAE−T289C ADCの安定性を示す。
図30】マウス血清中のインキュベーション後のMDA−MB−361癌細胞に対するADCの活性を示す。
図31】チオール結合ADCの安定化のための代替フォーマットを示す。
図32】N−フェニルマレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートの質量分析を示す。
図33】N−フルオロフェニルマレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートの質量分析を示す。
図34】N−アルキルマレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートの質量分析を示す。
図35】T289C mAbへのx−マレイミド−PEG−BCNのコンジュゲーション効率を示す。
図36】x−マレイミド−PEG−BCNコンジュゲートについてのチオスクシンイミド加水分解キネティクスを示す。
図37】mAb−BCN−Ac4GlcNAzコンジュゲートの分析を示す。
図38】貯蔵後のmAb−BCNコンジュゲートの反応性を示す。
図39】mAb−PBDコンジュゲートの分析を示す。
図40】MDA−MB−361乳癌細胞に対するmAb−BCN−PBD ADCのインビトロ活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一実施形態において、nは、0である。一実施形態において、nは、1である。一実施形態において、mは、0である。一実施形態において、mは、1である。一実施形態において、pは、0である。一実施形態において、pは、1である。
【0022】
一実施形態において、Xは、C0〜18アルキレンC6〜10アリール(=CR=CH−)、C0〜18アルキレンC6〜10アリール−CH=CR=CH−、C0〜18アルキレン5〜10員ヘテロアリール(−CR=CH−)、C0〜18アルキレン5〜10員ヘテロアリール−CHCR=CH−、C0〜18アルキレン−CR=CH−、C0〜18アルキレン−C≡C−であり、
アリールまたはヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する。
【0023】
一実施形態において、Xは、C0〜15アルキレンC6〜10アリール(−CR=CH−)、C0〜15アルキレンC6〜10アリール−CH−CR=CH−、C0〜18アルキレン5〜10員ヘテロアリール(−CR=CH−)、C0〜15アルキレン5〜10員ヘテロアリール−CHCR=CH−、C0〜15アルキレン−CR=CH−、C0〜15アルキレン−C≡C−であり、
アリールまたはヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、−(CH−O−CH−O−Rを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する。
【0024】
一実施形態において、Xは、C0〜15アルキレンC6〜10アリール(−CR=CH−)であり、アリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する。
【0025】
一実施形態において、Xは、C0〜15アルキレンC6〜10アリール(−CHCRCH−)、例えば、C0〜6アルキレンC6〜10アリール、例えば、C6〜10アリール、特にフェニルである。
【0026】
Zは、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜25アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8つ)が−O−またはNにより適宜独立して置換されていてもよく、該鎖が1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)のオキソ置換基を有していてもよい。
【0027】
一般に、アリール、例えば、フェニルは、pが1である場合を除き、マレイミド環の窒素に共有結合により直接結合している。
【0028】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、置換基をオルト、メタまたはパラ位、例えば、メタまたはパラ、例えば、パラ位で含有する「R−Q−(Z)」を有する。
【0029】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、電子供与、電子吸引および中性置換基から独立して選択される1、2、3または4つの置換基により置換されていてよい。一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、1、2、3または4つの電子吸引基により置換されている。一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、1、2、3または4つの電子供与基により置換されている。一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、中性電子特性を有する1、2、3または4つの基により置換されている。類似の置換パターンは、ヘテロアリールにも適宜当てはめることができる。
【0030】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、例えば、ハロゲン、C1〜3アルキル、トリフルオロメチル、例えば、クロロまたはフルオロから独立して選択される1、2、3または4つの置換基、特に、1、2、3または4つのフルオロ原子により置換されている。1つ以上のフルオロ原子を含有する分子は、イメージング技術、例えば、ポジトロン放出断層撮影において有用であり得る。
【0031】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、1つの置換基をオルト、メタまたはパラ位で、例えば、マレイミドに連結されている環のメタまたはパラ位で有する。
【0032】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、2つの置換基を、例えば、マレイミドに連結されている環のメタ、パラ位;メタ、オルト位;オルトパラ位;メタ、メタ位;またはオルト、オルト位で有する。
【0033】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、3つの置換基を、例えば、マレイミドに連結されている環のオルト、メタおよびパラ位;オルト、メタ、メタ位;オルト、オルト、パラ位;またはメタ、メタ、パラ位で有する。
【0034】
一実施形態において、アリール、例えば、フェニルは、置換基を有さない。
【0035】
本開示は、ヘテロアリールに適用されるアリールおよびフェニルに関する上記の置換基パターンにも及ぶ。
【0036】
一実施形態において、ヘテロアリールは、ピリジンでない。
【0037】
固体表面へのコンジュゲーションは、本開示の重要な態様である。それというのも、それはポリペプチドを、例えば、合成材料、例えば、プラスチックまたは樹脂のビーズまたはプレートに付着させて精製またはスクリーニング、例えば、高スループットスクリーニングを容易にするためである。
【0038】
一実施形態において、Rは、ペイロード分子であり、その例は、定義セクションにおいて以下に挙げられる。一実施形態において、Rは、Hである。一実施形態において、Rは、固体表面である。
【0039】
一実施形態において、nが1である本開示による方法は、式(II):
【化3】
[式中、R、Q、Z、Xおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義される]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩を用いる。
【0040】
一実施形態において、nが0である本開示による方法は、式(III):
【化4】
[式中、R、Q、Z、Xおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義される]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩を用いる。
【0041】
一実施形態において、マレイミド分子は、式(IIa):
【化5】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に存在する。
【0042】
一実施形態において、基RQ(Z)C(O)−は、式(IIaa):
【化6】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORの群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に示されるパラ位で存在する。
【0043】
一実施形態において、基RQ(Z)C(O)−は、式(IIaa’):
【化7】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORの群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に示されるメタ位で存在する。
【0044】
一実施形態において、マレイミド分子は、式(IIaaa):
【化8】
[式中、
、Q、およびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有し、Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のオキソ置換基を適宜有していてもよい]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に存在する。一実施形態において、基RQ(Z’)NC(O)−は、パラ位で存在する。一実施形態において、基RQ(Z’)NC(O)−は、メタ位で存在する。
【0045】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIb):
【化9】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の分子および薬学的に許容可能なその塩中に存在する。
【0046】
一実施形態において、基RQ(Z)C(O)−は、式(IIbb):
【化10】
[式中、Q、Z、X、Rおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義される]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に示されるパラ位で存在する。
【0047】
一実施形態において、基RQ(Z)C(O)−は、式(IIbb’):
【化11】
[式中、Q、Z、X、Rおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義される]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に示されるメタ位で存在する。
【0048】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIbbb):
【化12】
[式中、
、Qおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有し、
Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のオキソ置換基を適宜有していてもよい]
の分子および薬学的に許容可能なその塩中に存在する。一実施形態において、基RQ(Z’)NC(O)−は、フェニル環のパラ位で存在する。一実施形態において、基RQ(Z’)NC(O)−は、フェニル環のメタ位で存在する。
【0049】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIc):
【化13】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、Q、Z、R、Rおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義される]
の分子またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0050】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIcc):
【化14】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、
Q、Z、R、Rおよびmは、請求項1に上記に定義され、Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のオキソ置換基を適宜有していてもよい]
の分子またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0051】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IId):
【化15】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)Ph−は転位され、
またはQ、Z、R、Rおよびmは、請求項1に上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の分子またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0052】
一実施形態において、基RQ(Z)C(O)−は、式(IIdd):
【化16】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、
Q、Z、R、Rおよびmは、請求項1に上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に示されるパラ位で存在する。
【0053】
一実施形態において、基RQ(Z)C(O)−は、式(IIdd’):
【化17】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、
Q、Z、R、Rおよびmは、請求項1に上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に示されるパラ位で存在する。
【0054】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIddd):
【化18】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、
フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有し、
Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のオキソ置換基を適宜有していてもよい]
の分子またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。一実施形態において、基RQ(Z’)NC(O)−は、フェニル環のパラ位で存在する。一実施形態において、基RQ(Z’)NC(O)−は、フェニル環のメタ位で存在する。
【0055】
一実施形態において、式IIc、IIcc、IId、IIddの化合物またはそれらの誘導体は、E異性体として提供される。
【0056】
一実施形態において、式IIc、IIcc、IId、IIddの化合物またはそれらの誘導体は、Z異性体として提供される。
【0057】
一実施形態において、マレイミド分子は、式(IIIa):
【化19】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に存在する。
【0058】
一実施形態において、基RQ(Z)−は、式(IIIaa):
【化20】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物または薬学的に許容可能なその塩中に示されるパラ位で存在する。
【0059】
一実施形態において、基RQ(Z)−は、式(IIIaa’):
【化21】
[式中、
、Q、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル,C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に示されるメタ位で存在する。
【0060】
一実施形態において、マレイミド分子は、式(IIIaaa):
【化22】
[式中、
、Q、およびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−PO、および−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有し、
Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のオキソ置換基を適宜有していてもよい]
の化合物および薬学的に許容可能なその塩中に存在する。一実施形態において、RQ(Z’)NH−は、フェニル環のパラ位で存在する。一実施形態において、RQ(Z’)NH−は、フェニル環のメタ位で存在する。
【0061】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIIb)の分子:
【化23】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、Q、Z、R、Rおよびmは、式(I)の化合物について定義される]
またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0062】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIIbb):
【化24】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)−は転位され、
Q、Z、R、Rおよびmは、式(I)の化合物について定義され、Z’は、飽和または不飽和分枝鎖または非分枝鎖C1〜24アルキレン鎖であって、1つ以上の炭素が−O−またはNにより適宜独立して置き換えられていてもよく、該鎖が1つ以上のオキソ置換基を適宜有していてもよい]
の分子またはその異性体、および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0063】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIIc):
【化25】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)Ph−は転位され、
またはQ、Z、R、Rおよびmは、式(I)の化合物について定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の分子またはその異性体、および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0064】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIIcc):
【化26】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)Ph−は転位され、
またはQ、Z、R、Rおよびmは、式(I)の化合物について定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の分子またはその異性体および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0065】
一実施形態において、マレイミド実体は、式(IIIcc’):
【化27】
[式中、
およびRQ(Z’)NHC(O)Ph−は転位され、
またはn、Q、Z、R、Rおよびmは、式(I)の化合物について定義され、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、−COOR、−COR、−CN、−CF、−NO、−SO、−SO、−NR、−POおよび−(OCHCH−ORを含む群から独立して選択される0、1、2、3または4つの置換基を有する]
の分子またはその異性体、および薬学的に許容可能なそれらの塩中に存在する。
【0066】
一実施形態において、式IIc、IIcc、IId、IIdd、IIdd’、IIddd、IIIb、IIIbb、IIIc、IIIcc、IIIccc、IIIdの化合物またはそれらの誘導体は、E異性体として提供される。
【0067】
一実施形態において、式IIc、IIcc、IId、IIdd、IIdd’、IIddd、IIIb、IIIbb、IIIc、IIIcc、IIIccc、IIIdの化合物またはそれらの誘導体は、Z異性体として提供される。
【0068】
一実施形態において、Rは、フルオロである。
【0069】
一実施形態において、所与の構造内で適宜、断片−QZ(すなわち、mは1である)または−QZ’NH(mは1である)は、−QOC(O)(CHCHO)1〜8(CH0〜1NH、例えば、−QOC(O)(CHCHO)1〜6(CH0〜1NH、例えば、−QOC(O)(CHCHO)2、3、4、5(CH0〜1NH、より具体的には、−QOC(O)(CHCHO)NHを表す。
【0070】
一実施形態において、Qは、結合である。一実施形態において、Qは、コンジュゲーション構成要素である。コンジュゲーション構成要素は、ある分子または断片を別の分子または断片にコンジュゲートさせるために用いることができる実体である。
【0071】
一実施形態において、Qは、例えば、テトラジン、官能化テトラジン、NHSエステル(N−ヒドロキシスクシミド(succimide)エステル)、テトラフルオロフェニルエステル、およびそれらの組合せを含む群から選択される官能基を含み、またはそれである。
【0072】
一実施形態において、Qは、例えば、アルキン、テトラジン、誘導体化テトラジン、脂質、ナノ粒子、デンドリマー、金属キレート剤およびそれらの組合せを含む群から選択される重合性官能基である。
【0073】
一実施形態において、コンジュゲーション構成要素Qは、クリック化学構成要素である。クリック化学構成要素の例としては、残基Click−mates(商標)コレクション、例えば:
・Click−mates(商標)アルキン、例として5−プロパルギルオキシ−dU CEP、5−オクタジイニル−du CEP、アルキニル−修飾因子−C6−dT CEP、5−(プロパルギルオキシ)−2’−デオキシウリジン、5−(1,7−オクタジイン−1−イル)−2’−デオキシウリジン、5−オクタジイニル−TMS−dU CEP、5−オクタジイニル−TMS−dC CEP、5−オクタジイニル−dC CEP、5−オクタジイニル−TIPS−dU CEPが挙げられ;
・Click−easy(登録商標)アルキン(銅フリークリック修飾用)、例として、BCN CEP I、BCN CEP II、BCN−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルI、BCN−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルII、MFCO−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびMFCO CEPが挙げられる。本明細書において用いられる残基は、分子を1つ以上の他の分子断片(構成要素)に結合させるための関連反応が生じた後に残る構造を指す。
【0074】
一実施形態において、コンジュゲーション構成要素は、BCNである。
【0075】
一実施形態において、コンジュゲーション構成要素Qは、ビオチンである。一実施形態において、Qは、断片:
【化28】
である。
【0076】
一実施形態において、Zは、−C1〜12アルキレン、−OC(O)(CHCHO)1〜8(CH0〜1NH、例えば、−OC(O)(CHCHO)1〜6(CH0〜1NH、例えば、−OC(O)(CHCHO)2、3、4、5(CH0〜1NH、より具体的には、−OC(O)(CHCHO)NHから独立して選択される。
【0077】
一実施形態において、Z’は、−C1〜12アルキレン、−OC(O)(CHCHO)1〜8(CH0〜1、例えば、−OC(O)(CHCHO)1〜6(CH0〜1、例えば、−OC(O)(CHCHO)2、3、4、5(CH0〜1、より具体的には、−OC(O)(CHCHO)から独立して選択される。
【0078】
一実施形態において、式(I)で示される分子中のY−Xは、C(O)CHフェニル(マレイミドまたはスクシンイミド)であり、mは、0であり、Qは、結合であり、ペイロードは、アミド結合を介して断片Y−X中のオキソ基と結合している。
【0079】
一実施形態において、ペイロードは、不安定結合、例えば、ヒドラゾン(低pH放出)、ジスルフィド、イミンまたはそれらの類似物などを介して結合している。
【0080】
本明細書において式(I)の化合物について挙げられる優先事項は、本明細書に記載の他の式の化合物にも同様に適宜当てはまる。
【0081】
薬学的に許容可能な塩、例えば、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩、または有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩を使用することができる。
【0082】
一実施形態において、マレイミド実体は、ポリペプチド中の天然システインを介してコンジュゲートしている。一実施形態において、マレイミドは、ポリペプチド中に遺伝子操作されたシステイン(本明細書において遺伝子操作システインとも称される)を介してコンジュゲート中に存在する。一実施形態において、システインは、溶媒露出システインである。
【0083】
一実施形態において、1つ以上のコンジュゲーションステップ、例えば、ポリペプチドへのマレイミドのコンジュゲーションは、5から9の範囲内のpH、例えば、pH5.5から8.6、例えば、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5もしくは8.6または前記pH値の1つ以上の組合せにおいて実施する。
【0084】
一実施形態において、1つ以上のコンジュゲーションステップ、例えば、ポリペプチドへのマレイミドのコンジュゲーションは、約4から約37℃の範囲内の温度、例えば、8から37℃、8から30℃、8から25℃または21から31℃、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36もしくは37℃または1つ以上の前記温度の組合せにおいて実施する。
【0085】
一実施形態において、1つ以上のコンジュゲーションステップは、好適な緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸))、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸))、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸))を含む群から選択される緩衝液、例えば、リン酸緩衝液中で実施する。
【0086】
一実施形態において、緩衝液は、第1級アミン、例えば、TRISなどを含まない。
【0087】
一実施形態において、1つ以上のコンジュゲーション反応、例えば、ポリペプチドへのマレイミドコンジュゲーションの効率は、50%以上、例えば、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%である。
【0088】
したがって、一実施形態において、反応後に低い割合、例えば、5%以下、例えば、4、3、2、1%以下の非コンジュゲートポリペプチド(例えば、抗体)が存在する。
【0089】
一実施形態において、コンジュゲーションステップにおける式(I)の化合物および本明細書に記載の他の式の化合物とポリペプチドとの比は、1:1から5:1までそれぞれ、例えば、2:1、3:1または4:1である。
【0090】
一実施形態において、チオール−コンジュゲートは、ペイロード、ナノ粒子、または固体表面と、銅塩、還元剤、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、および/またはCu(I)安定化リガンド、例えば、2−[4−{(ビス[(1−tert−ブチル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミノ)−メチル}−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル]エチルハイドロジェンサルフェート(BTTES);トリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(TBTA);トリス[(1−ヒドロキシプロピル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(THTPA)などを使用するCu(I)触媒アジド−アルキン付加環化(CuAAC)によりさらに反応させてトリアゾール結合を形成させる。
【0091】
一実施形態において、チオール−コンジュゲートは、ペイロード、ナノ粒子、または固体表面と、環式アルキン、例えば、ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC);ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)などを使用する歪みにより促進されるアジド−アルキン付加環化(SPAAC)によりさらに反応させてトリアゾール結合を形成させる。
【0092】
一実施形態において、チオール−コンジュゲートは、ペイロード、ナノ粒子、または固体表面と、テトラジン−トランスシクロオクテン反応によりさらに反応させてジヒドロピラジン結合を形成させる。
【0093】
一実施形態において、本方法において用いられる加水分解ステップ、例えば、得られたスクシンイミドの加水分解は、7から12の範囲内のpH、例えば、pH7.4から9、例えば、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9もしくは9.0または1つ以上のそれらの組合せにおいて実施する。
【0094】
一実施形態において、緩衝液を加水分解ステップにおいて用い、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸))、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸))、MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸))を含む群から選択される緩衝液、例えば、リン酸緩衝液を用いる。
【0095】
一実施形態において、1つ以上の加水分解ステップ、例えば、スクシンイミドの加水分解は、約4から約37℃の範囲内の温度、例えば、8から37℃、8から30℃、8から25°Cまたは21から31℃、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36もしくは37℃または1つ以上の前記温度の組合せにおいて実施する。
【0096】
一実施形態において、本方法における1つ以上の反応、例えば、コンジュゲーション反応は、触媒の存在下で実施する。触媒の例としては、遷移金属触媒、例えば、銅、スズ、無機酸化物、例えば、モリブデン酸塩が挙げられる。
【0097】
一実施形態において、本方法における1つ以上の反応、例えば、コンジュゲーション反応は、触媒を用いない。
【0098】
広範な条件下で、加水分解がコンジュゲーション後に高度に効率的に生じるため、コンジュゲーションおよび加水分解が同一反応において連続的に生じるように条件を容易に選択することができることにも留意すべきである。実際、ステップの数を最小化する場合にこれは望ましい。あるいは/さらに、下流ステップ(例えば、濾過、貯蔵、緩衝液交換、カラム上での精製)のための条件は、コンジュゲートが加水分解されることを確保するように選択することができる。一実施形態において、加水分解は、低pHおよび低温の組合せを用いない。
【0099】
本開示はまた、加水分解された分子、例えば、本方法から調製された、または得られる分子に及ぶ。一実施形態において、分子は、式(IV):
【化29】
[式中、
Q、R、Zおよびmは、式(I)の化合物について上記に定義され、
は、Hまたはポリペプチド残基であり、Rは、Hまたはポリペプチド残基であり、RまたはRの少なくとも一方は、ポリペプチド残基であり、他方は、Hである]
のものおよび薬学的に許容可能なその塩である。
【0100】
加水分解は、スキーム1:
【化30】
[式中、Pは、ポリペプチドを表す]
に示される2つの位置の1つにおいて生じ得る。
【0101】
本開示は、本明細書の方法から得られた、または得られる化合物/分子に及ぶ。
【0102】
一実施形態において、調製された分子は、安定であり、または例えば、物理的、化学的および熱的に安定である。物理的不安定性の証拠は、例えば、定型的な技術、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーにより計測することができる凝集である。化学的不安定性の証拠は、例えば、分子の分解または崩壊、例えば、ペイロードの脱離である。熱的不安定性の証拠は、例えば、変性である。
【0103】
一実施形態において、本開示の加水分解された分子において、ベータ−メルカプトエタノールとのインキュベーション後のペイロードの20%以下の損失、例えば、10%以下の損失、例えば、5%以下の損失が存在する。一実施形態において、損失は、1から36時間、例えば、2から24時間の期間にわたり生じる。
【0104】
一実施形態において、本開示の加水分解された分子において、血清(例えば、ネズミ血清またはウシ血清)とのインキュベーション後のペイロードの20%以下の損失、例えば、10%以下の損失、例えば、5%以下の損失が存在する。一実施形態において、損失は、1から36時間、例えば、24時間の期間にわたり生じる。
【0105】
一実施形態において、例えば、血清のインキュベーション時のIC50により計測される効力の低減は、20%以下、例えば、10%以下、例えば、5%以下、より具体的には、4%、3%、2%または1%である。
【0106】
定義
マイケル付加(本明細書におい、1,4−マイケル付加とも称される)は、アルファ−ベータ不飽和カルボニル化合物へのカルボアニオンまたは他のアニオンの求核付加である。
【0107】
本明細書において使用されるアルキルは、直鎖または分枝鎖アルキル、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、およびtert−ブチルを指す。一実施形態において、アルキルは、直鎖アルキルを指す。アルキルは、末端基、すなわち、鎖の末端における基である。C1〜6アルキルは、C、C、C、C、CおよびCを含む。
【0108】
本明細書において使用されるアルコキシは、直鎖または分枝鎖アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシを指す。本明細書において用いられるアルコキシは、酸素原子がアルキル鎖内に局在する実施形態、例えば、−CHCHOCHまたは−CHOCHにも及ぶ。一実施形態において、アルコキシは、酸素を介して分子の残部に結合している。一実施形態において、本開示は、直鎖アルコキシに関する。
【0109】
本明細書において用いられるアリールは、少なくとも1つの芳香環を含むCからC36炭素環系、例えば、CからC10炭素環系、例えば、ナフチレン、フェニル、インデン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロナフチレン、アズレン、例えば、ナフチレンまたはフェニル、例えば、フェニルを指す。
【0110】
ヘテロアリールは−O−またはNおよびSから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)のヘテロ原子を含む5〜36員芳香族炭素環または二環系である。ヘテロアリールの例としては、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、または1、2、3および1、2、4トリアゾールが挙げられる。二環系において、ヘテロアリールの定義は、少なくとも1つの環がヘテロ原子を含有し、少なくとも1つの環が芳香族である場合に充足する。ヘテロアリールは、分子の残部に炭素環またはヘテロ原子を含む環を介して結合していてよい。
【0111】
本明細書において使用されるオキソは、C=Oを指し、通常、C(O)として表される。
【0112】
少なくとも1つの炭素(例えば、1、2または3つの炭素、好適には、1または2つ、特に1つ)がO、Nから選択されるヘテロ原子により置き換えられており、該鎖が1つ以上の基、オキソ基により適宜置換されている飽和または不飽和、分枝鎖または非分枝鎖C1〜25アルキレン鎖に関して、ヘテロ原子は第1級、第2級または第3級炭素、すなわち、CH、−CH−または−CH−または分枝鎖炭素基を技術的に適宜置き換えることができることは当業者に明らかである。この定義は、この言語が1から25の炭素以外の長さの鎖に関して用いられる場合にも当てはまる。
【0113】
アルキレンは、結合基、すなわち、分子の他の部分/構成要素にそれぞれの末端において結合している基である。C1〜25アルキレンは、C、C、C、C、C、C、C、CまたはC、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24およびC25を含む。
【0114】
0は、「特徴部」が不存在である場合である。
【0115】
本明細書において用いられるハロまたはハロゲンは、ヨード、ブロモ、クロロまたはフルオロ、例えば、フルオロを指す。
【0116】
本明細書において用いられるコンジュゲートは、2つの化合物または分子または断片を一緒に結合させることにより形成される化合物/分子を指す。
【0117】
本明細書において用いられる加水分解は、水分子の添加により環または分子を開裂させる反応を指す。
【0118】
本明細書において用いられる電子吸引基は、それが付着している実体から電子を吸引(または電子を誘引)する置換基を指す。
【0119】
本明細書において用いられる電子供与基は、それが付着している実体に電子を「供与」する置換基を指す。
【0120】
本開示に関する中性基は、変化自体に関連しないが、電子供与または吸引特性を指す。これらの基は、それらが付着している実体に対する電子特性に影響しない。
【0121】
本開示において使用されるポリペプチド
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、直鎖でも分枝鎖でもよく、それは、改変アミノ酸を含み得、それは、非アミノ酸により中断されていてよい。この用語は、天然にまたは介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、もしくは任意の他の操作もしくは改変、例えば、標識構成要素とのコンジュゲーションにより改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例として、例えば、非天然アミノ酸など)および当分野において公知の他の改変を含有するポリペプチドも含まれる。これは、本開示のポリペプチドが抗体をベースとするためであることが理解される。
【0122】
本明細書において用いられるポリペプチドは、少なくとも1つのチオール基を含む二次または三次構造を有し、または有さない5つ以上のアミノ酸の配列を指す。したがって、本開示において、用語「ポリペプチド」は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を含む。これらは、特に記載のない限り、互換的に使用される。
【0123】
一実施形態において、ポリペプチドは、タンパク質である。タンパク質は、一般に、二次および/または三次構造を含有し、単量体または多量体の形態であり得る。
【0124】
一実施形態において、タンパク質は、単鎖または会合鎖としての抗体またはその結合断片である。
【0125】
本明細書において互換的に使用される用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、全抗体および任意の抗原結合断片またはそれらの単鎖を含む。
【0126】
典型的な抗体は、ジスルフィド結合により相互連結されている少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVH、VH領域、またはVHドメインとして略記)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3または4つの定常ドメイン、CH1、CH2、CH3、およびCH4を含む。Fc領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチド、およびその断片を含む。したがって、IgGについて、「Fc領域」は、CH2およびCH3ならびに場合により、それらのドメインに対するフレキシブルヒンジ領域N末端の全部または一部を指す。用語「Fc領域」は、単離されたこの領域、または抗体、抗体断片、もしくはFc融合タンパク質に関するこの領域を指し得る。
【0127】
それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVL、VL領域、またはVLドメインとして略記)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。
【0128】
VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FW)と称されるより保存されている領域が散在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに下位分類することができる。それぞれのVHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置された3つのCDRおよび4つのFWから構成される:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4。フレームワーク領域は、それらのそれぞれのVHおよびVL領域により指定することができる。したがって、例えば、VH−FW1は、VHの第1のフレームワーク領域を指す。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、宿主組織または因子、例として、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典補体系の第1成分(C1q)への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0129】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位(結合部位とも称される)を介して標的、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または上記の組合せを認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子またはその抗原結合断片を意味する。本明細書において使用される用語「抗体」は、インタクトポリクローナル抗体、インタクトモノクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片)、単鎖抗体断片(scFvおよびジスルフィド安定化scFv(dsFv))、少なくとも2つの異なる抗体から生成される多重特異的抗体、例えば、二重特異的抗体または抗体断片から形成される多重特異的抗体(例えば、PCT出願公開の国際公開第96/27011号パンフレット,国際公開第2007/024715号パンフレット国際公開第2009018386号パンフレット、国際公開第2009/080251号パンフレット、国際公開第2013006544号パンフレット、国際公開第2013/070565号パンフレット、および国際公開第2013/096291号パンフレット参照)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原結合断片を含む融合タンパク質、および抗原結合断片を含む任意の他の改変免疫グロブリン分子を、その抗体が所望の生物学的活性を示す限り、包含する。
【0130】
抗体は、任意の5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、またはアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、aまたはx)、G2m(n)、G3m(g、b、またはc)、Am、Em、およびKm(1、2または3))のものであり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造および三次元立体配置を有する。抗体は、任意の哺乳動物、例として、限定されるものではないが、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウスなど、または他の動物、例えば、鳥類(例えば、ニワトリ)から誘導することができる。
【0131】
用語「抗原結合断片」は、インタクト抗体の抗原決定可変領域を含む断片を指す。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片により実施され得ることは、当分野において公知である。抗体断片の例としては、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、scFv、直鎖抗体、単鎖抗体、および抗体断片から形成される多重特異的抗体が挙げられる。
【0132】
したがって、一実施形態において、本発明において使用される抗体は、全長重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子またはその断片を含み得、限定されるものではないが、Fab、改変Fab、Fab’、改変Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VHまたはVLまたはVHH)、scFv、二価、三価または四価抗体、ビス−scFv、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、それらの組合せおよび上記のいずれかのエピトープ結合断片であり得る。
【0133】
具体的に企図される他の抗体は、区別されるモノクローナル抗体の所定の混合物である「オリゴクローナル」抗体である。例えば、PCT出願公開の国際公開第95/20401号パンフレット;米国特許第5,789,208号明細書および米国特許第6,335,163号明細書参照。好ましくは、オリゴクローナル抗体は、1つ以上のエピトープに対する抗体の所定の混合物からなり、単一細胞中で生成される。より好ましくは、オリゴクローナル抗体は、共通の軽鎖と対合して複数の特異性を有する抗体を生成し得る複数の重鎖を含む(例えば、PCT出願公開の国際公開第04/009618号パンフレット)。単一標的分子上の複数のエピトープを標的化することが望ましい場合、オリゴクローナル抗体は特に有用である。当業者は、どのタイプの抗体または抗体の混合物が意図される目的および所望の必要性に適用可能であるかを知っており、または決定し得る。
【0134】
本開示における使用に具体的に企図される他の部分は、小型遺伝子操作タンパク質ドメイン、例えば、足場(例えば、米国特許出願公開第2003/0082630号明細書および米国特許出願公開第2003/0157561号明細書参照)である。足場は、公知の天然存在、非抗体ドメインファミリー、具体的には、タンパク質細胞外ドメインをベースとし、典型的には、小サイズ(約100から約300AA)で、挿入、欠失または他の置換を可能とする高い立体構造トレランスの可変ドメインと会合している高度に構造化されたコアを含有する。これらの可変ドメインは、任意の標的化タンパク質のための推定結合界面を作出し得る。一般に、一般的なタンパク質足場の設計は、2つの主要なステップからなる:(i)所望の特徴部を有する好適なコアタンパク質の選択および(ii)高い構造可変性を許容するドメインの一部または全部の突然変異誘発による複雑なコンビナトリアルライブラリーの生成、適切なフォーマット(すなわち、ファージ、リボソーム、細菌、または酵母)のこれらのライブラリーのディスプレイおよび所望の結合特徴(例えば、標的特異性および/または親和性)を有する突然変異誘発足場についてのライブラリーのスクリーニング。親足場の構造は、高度に多様であり得、高度に構造化されたタンパク質ドメイン、例として、限定されるものではないが、FnIIIドメイン(例えば、AdNectin、例えば、Protein Eng.Des.Sel.18、435−444(2005)、米国特許出願公開第2008/00139791号明細書、および国際公開第2005/056764号パンフレット参照、TN3、例えば、国際公開第2009/058379号パンフレットおよび国際公開第2011/130324号パンフレット参照);プロテインAのZドメイン(Affibody、例えば、Protein Eng.Des.Sel.17,455−462(2004)および欧州特許出願公開第1641818A1号明細書参照);LDL受容体からのドメインA(アビマー、例えば、Nature Biotechnology 23(12),1556−1561(2005)およびExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6)、909−917(June 2007)参照);アンキリンリピートドメイン(DARPin、J.Mol.Biol.332,489−503(2003)、PNAS(2003)およびBiol.369、(2007)および国際公開第02/20565号パンフレット);C型レクチンドメイン(テトラネクチン、例えば、国際公開第02/48189号パンフレット参照)を含む。所望により、2つ以上のそのような遺伝子操作足場ドメインを一緒に結合させて多価結合タンパク質を形成させることができる。個々のドメインは、使用/疾患適応症に応じて単一タイプのタンパク質またはいくつかのタンパク質を標的化し得る。
【0135】
実質的に任意の分子(またはその一部、例えば、サブユニット、ドメイン、モチーフまたはエピトープ)は、部分、例として、限定されるものではないが、内在性膜タンパク質、例として、イオンチャネル、イオンポンプ、Gタンパク質共役受容体、構造タンパク質;接着タンパク質、例えば、インテグリン;トランスポーター;シグナル伝達に関与するタンパク質および脂質固定タンパク質、例として、Gタンパク質、酵素、例えば、キナーゼ、例として、膜固定キナーゼ、膜結合酵素、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、脂肪酸合成酵素、消化酵素、例えば、ペプシン、トリプシン、およびキモトリプシン、リゾチーム、ポリメラーゼ;受容体、例えば、ホルモン受容体、リンホカイン受容体、モノカイン受容体、成長因子受容体、サイトカイン受容体;サイトカインなどにより標的化し、および/またはそれに取り込むことができる。
【0136】
一部の態様において、本開示において用いられるポリペプチドは、例えば、、BMP1、BMP2、BMP3B(GDF10)、BMP4、BMP6、BMP8、CSF1(M−CSF)、CSF2(GM−CSF)、CSF3(G−CSF)、EPO、FGF1(αFGF)、FGF2(βFGF)、FGF3(int−2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST−2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、FGFR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、FGFR6、IGF1、IGF2、IGF1R、IGF2R、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNAR1、IFNAR2、IFNB1、IFNG、IFNW1、FIL1、FIL1(EPSILON)、FIL1(ZETA)、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、IL2RA、IL1R1、IL1R2、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL17RA、IL17RB、IL17RC、IL17RD、IL18R1、IL20RA、IL20RB、IL21R、IL22R、IL22RA1、IL23R、IL27RA、IL28RA、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、ACVRL1、GFRA1、LTA(TNF−ベータ)、LTB、TNF(TNF−アルファ)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4−1BBリガンド)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM−L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF10A(Trail受容体)、TNFRSF10B(Trail受容体2)、TNFRSF10C(Trail受容体3)、TNFRSF10D(Trail受容体4)、FIGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、KDR、FLT1、FLT4、NRP1、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIF1、HGF、LEP(レプチン)、PTN、ALKおよびTHPOの中から選択される成長因子、サイトカイン、サイトカイン関連タンパク質、成長因子、受容体リガンドまたは受容体の全部または一部(例えば、サブユニット、ドメイン、モチーフまたはエピトープ)を標的化し、および/または取り込む。
【0137】
一部の態様において、本開示において用いられるポリペプチドは、例えば、CCL1(I−309)、CCL2(MCP−1/MCAF)、CCL3(MIP−1a)、CCL4(MIP−1b)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP−3)、CCL8(mcp−2)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(MCP−4)、CCL15(MIP−1d)、CCL16(HCC−4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP−3b)、CCL20(MIP−3a)、CCL21(SLC/エクソダス(exodus)−2)、CCL22(MDC/STC−1)、CCL23(MPIF−1)、CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン−3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCL1(GRO1)、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GRO3)、CXCL5(ENA−78)、CXCL6(GCP−2)、CXCL9(MIG)、CXCL10(IP10)、CXCL11(I−TAC)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYD1)、SCYE1、XCL1(リンホタクチン)、XCL2(SCM−1b)、BLR1(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCR1(CKR1/HM145)、CCR2(mcp−1RB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR−L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBI1)、CCR8(CMKBR8/TER1/CKR−L1)、CCR9(GPR−9−6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L−CCR)、XCR1(GPR5/CCXCR1)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR−L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Ra)、IL8RB(IL8Rb)、LTB4R(GPR16)、TCP10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5R1、CSF3、GRCC10(C10)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HIF1A、IL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREM1、TREM2、およびVHLの中から選択されるケモカイン、ケモカイン受容体、またはケモカイン関連タンパク質の全部または一部(例えば、サブユニット、ドメイン、モチーフまたはエピトープ)を標的化し、および/または取り込む。
【0138】
一部の態様において、本開示において用いられるポリペプチドは、例えば、レニン;成長ホルモン、例として、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VII因子、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子(TF)、およびフォンウィルブランド因子;抗凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲンアクチベーター、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−アルファおよびベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(活性化調節型の正常T細胞発現および分泌物(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管阻害因子;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、ベータ−ラクタマーゼ;DNアーゼ;IgE;細胞毒性Tリンパ球性関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA−4;インヒビン;アクチビン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、またはNT−6)、または神経成長因子;上皮成長因子(EGF);インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD34、CD40、CD40L、CD52、CD63、CD64、CD80およびCD147;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子;ウイルス抗原、例えば、例えば、AIDSエンベロープの一部、例えば、gp120;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;細胞接着分子、例えば、LFA−1、Mac 1、p150.95、VLA−4、ICAM−1、ICAM−3およびVCAM、a4/p7インテグリン、および(Xv/p3インテグリン、例として、その1つまたは複数のサブユニットのいずれか、インテグリンアルファサブユニット、例えば、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、アルファ7、アルファ8、アルファ9、アルファD、CD11a、CD11b、CD51、CD11c、CD41、アルファIIb、アルファIELb;インテグリンベータサブユニット、例えば、CD29、CD18、CD61、CD104、ベータ5、ベータ6、ベータ7およびベータ8;インテグリンサブユニット組合せ、例として、限定されるものではないが、αVβ3、αVβ5およびα4β7;アポトーシス経路のメンバー;IgE;血液群抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインC;Eph受容体例えば、EphA2、EphA4、EphB2など;ヒト白血球抗原(HLA)例えば、HLA−DR;補体タンパク質、例えば、補体受容体CR1、C1Rqおよび他の補体因子、例えば、C3、およびC5;糖タンパク質受容体、例えば、GpIbα、GPIIb/IIIaおよびCD200の中から選択されるタンパク質の全部または一部(例えば、サブユニット、ドメイン、モチーフまたはエピトープ)を標的化し、および/または取り込む。
【0139】
癌抗原、例として、限定されるものではないが、ALK受容体(プレイオトロフィン受容体)、プレイオトロフィン、KS1/4汎癌抗原;卵巣癌抗原(CA125);前立腺酸性ホスフェート(acid phosphate);前立腺特異的抗原(PSA);黒色腫関連抗原p97;黒色腫抗原gp75;高分子量黒色腫抗原(HMW−MAA);前立腺特異的膜抗原;癌胎児性抗原(CEA);多形上皮ムチン抗原;ヒト乳脂肪球抗原;結腸直腸腫瘍関連抗原、例えば、CEA、TAG−72、CO17−1A、GICA19−9、CTA−1およびLEA;バーキットリンパ腫抗原−38.13;CD19;ヒトBリンパ腫抗原−CD20;CD33;黒色腫特異的抗原、例えば、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2およびガングリオシドGM3;腫瘍特異的移植型細胞表面抗原(TSTA);ウイルス誘導腫瘍抗原、例として、T抗原、DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原;癌胎児性抗原−アルファ−フェトプロテイン、例えば、結腸のCEA、5T4癌胎児性栄養芽層糖タンパク質および膀胱腫瘍癌胎児性抗原;分化抗原、例えば、ヒト肺癌抗原L6およびL20;線維肉腫の抗原、ヒト白血病T細胞抗原−Gp37;ネオ糖タンパク質;スフィンゴ脂質;乳癌抗原、例えば、EGFR(上皮増殖因子受容体);NY−BR−16、NY−BR−16;HER2抗原(p185HER2)およびHER3;多形上皮ムチン(PEM);悪性ヒトリンパ球抗原−APO−1;分化抗原、例えば、胎児赤血球中に見出されるI抗原;成人赤血球中に見出される一次内胚葉I抗原;着床前胚;胃腺癌中に見出されるI(Ma);乳房上皮中に見出されるM18、M39;骨髄性細胞中に見出されるSSEA−1;VEP8;VEP9;Myl;VIM−D5;結腸直腸癌中に見出されるD156−22;TRA−1−85(血液型H);精巣および卵巣癌中に見出されるSCP−1;結腸腺癌中に見出されるC14;肺腺癌中に見出されるF3;胃癌中に見出されるAH6;Yハプテン;胚性癌細胞中に見出されるLey;TL5(血液型A);A431細胞中に見出されるEGF受容体;膵臓癌中に見出されるE1系列(血液型B);胚性癌細胞中に見出されるFC10.2;胃腺癌抗原;腺癌中に見出されるCO−514(血液型Lea);腺癌中に見出されるNS−10;CO−43(血液型Leb);A431細胞のEGF受容体中に見出されるG49;結腸腺癌中に見出されるMH2(血液型ALeb/Ley);結腸癌中に見出される19.9;胃癌ムチン;骨髄性細胞中に見出されるT5A7;黒色腫中に見出されるR24;胚性癌細胞中に見出される4.2、GD3、D1.1、OFA−1、GM2、OFA−2、GD2、およびM1:22:25:8ならびに4〜8細胞期胚中に見出されるSSEA−3およびSSEA−4;皮膚T細胞リンパ腫抗原;MART−1抗原;シアリ(Sialy)Tn(STn)抗原;結腸癌抗原NY−CO−45;肺癌抗原NY−LU−12バリアントA;腺癌抗原ART1;腫瘍随伴性脳−精巣−癌抗原(腫瘍および神経細胞の共通抗原(onconeuronal antigen)MA2;傍腫瘍性神経抗原);神経腫瘍腹側抗原2(Neuro−oncological ventral antigen 2)(NOVA2);肝細胞癌抗原遺伝子520;腫瘍関連抗原CO−029;腫瘍関連抗原MAGE−C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE−B1(MAGE−XP抗原)、MAGE−B2(DAM6)、MAGE−2、MAGE−4a、MAGE−4bおよびMAGE−X2;癌−精巣抗原(NY−EOS−1);ならびに上記に列記されたポリペプチドのいずれかの断片に特異的に結合し、および/またはそれを含む部分も企図される。
【0140】
一実施形態において、用いられるポリペプチドは、組換え体である。「組換え」ポリペプチドまたはタンパク質は、組換えDNA技術を介して産生されるポリペプチドまたはタンパク質を指す。遺伝子操作宿主組織中で発現される組換え産生ポリペプチドおよびタンパク質は、任意の好適な技術により分離され、分別され、または部分的もしくは実質的に精製された天然または組換えポリペプチドと同様に本開示の目的のために単離されているとみなす。本明細書に開示のポリペプチドは、当分野において公知の方法を使用して組換え産生することができる。あるいは、本明細書に開示のタンパク質およびペプチドは、化学合成することができる。
【0141】
ペイロード分子
本明細書において用いられるペイロードは、ポリペプチドへのコンジュゲーションによる標的領域位置への「送達」を目的とする分子または構成要素を指す。一般に、ペイロードは、一般に、例えば、毒素、例えば、細胞毒素、例えば、化学療法剤、薬物、プロドラッグ、酵素、免疫調節剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、サイトカイン、ホルモン、抗体またはその断片、合成また天然存在ポリマー、核酸およびその断片、例えば、DNA、RNAおよびそれらの断片(例えば、アンチセンス分子または遺伝子)、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子およびレポーター基、例えば、蛍光化合物またはNMRもしくはESR分光法により検出することができる化合物からなる群から選択されるエフェクター分子である。
【0142】
一実施形態において、ペイロードは、毒素、薬物、放射性核種、免疫調節剤、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、成長因子、腫瘍壊死因子、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、siRNA、RNAi、マイクロRNA、ペプチド核酸、光活性治療剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、非天然アミノ酸、ペプチド、脂質、ポリマー、炭水化物、足場分子、蛍光タグ、可視化ペプチド、ビオチン、血清半減期延長剤、捕捉タグ、キレート剤、固体担体、またはそれらの組合せを含む群から選択される。
【0143】
一実施形態において、ペイロードは、薬物分子(本明細書において薬物とも称される)である。本開示において使用される薬物分子の例としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位錯体、ビンカアルカロイド、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、ドキソルビシン、ドキソルビシンアナログ、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗有糸分裂薬、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテオソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤、メトトレキセート、CPT−11、またはそれらの組合せが挙げられ、それらにおいてコンジュゲーションが存在する。
【0144】
特定の態様において、薬物は、アミフォスチン、シスプラチン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、メクロレタミン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、ドキソルビシンリポ、ゲムシタビン、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトテシン(SN38)、ゲフィチニブ、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシルアロマターゼ阻害剤、およびそれらの組合せである。
【0145】
一実施形態において、薬物は、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイドおよびスラミンを含む群から選択される。
【0146】
一実施形態において、毒素は、細胞毒素または細胞毒性剤、例として、細胞に有害な(例えば、細胞を殺傷する)任意の薬剤を含む。例としては、アプリジン、アナストロゾール、アザシチジン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブスルファン、コンブレスタチン、カルムスチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムプロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにそれらのアナログまたはホモログが挙げられる。
【0147】
一実施形態において、薬物(この場合、細胞毒素とも)は、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、カルボプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名ダウノマイシン)およびドキソルビシンまたはドキソルビシングルクロニド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアミシンまたはデュオカルマイシン)、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含む。
【0148】
一部の態様において、薬物は、アウリスタチン(米国特許第5,635,483号明細書;米国特許第5,780,588号明細書)、例えば、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)またはMMAF(モノメチルアウリスタチンF)である。他の態様において、薬物は、ドラスタチンまたはドラスタチンペプチド性アナログまたは誘導体である。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管ダイナミクス、GTP加水分解、ならびに核および細胞分裂を妨害し(Woyke et al.,Antimicrob.Agents and Chemother.45:3580−3584(2001))、抗癌活性を有することが示されている(米国特許第5,663,149号明細書)。ドラスタチンまたはアウリスタチン薬物部分は、コンジュゲート化合物にペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して付着させることができる。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる国際特許出願公開の国際公開第2002/088172号パンフレット参照。
【0149】
他の態様において、薬物は、メイタンシノイドである。一部の態様において、メイタンシノイドは、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM3)またはN2’−デアセチル−N2’(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4)である。メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初に西アフリカ低木メイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から単離された(米国特許第3,896,111号明細書)。続いて、ある微生物も、メイタンシノイド、例えば、メイタンシノールおよびC−3メイタンシノールエステルを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号明細書)。合成メイタンシノールならびにその誘導体およびアナログは、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第4,137,230号明細書;米国特許第4,248,870号明細書;米国特許第4,256,746号明細書;米国特許第4,260,608号明細書;米国特許第4,265,814号明細書;米国特許第4,294,757号明細書;米国特許第4,307,016号明細書;米国特許第4,308,268号明細書;米国特許第4,308,269号明細書;米国特許第4,309,428号明細書;米国特許第4,313,946号明細書;米国特許第4,315,929号明細書;米国特許第4,317,821号明細書;米国特許第4,322,348号明細書;米国特許第4,331,598号明細書;米国特許第4,361,650号明細書;米国特許第4,364,866号明細書;米国特許第4,424,219号明細書;米国特許第4,450,254号明細書;米国特許第4,362,663号明細書;および米国特許第4,371,533号明細書に開示されている。
【0150】
メイタンシノイド薬物部分は、抗体薬物コンジュゲート中の魅力的な薬物部分である。それというのも、それらは(i)発酵または化学改変、発酵産物の誘導体化による調製に相対的に利用しやすいため、(ii)抗体への非ジスルフィドリンカーを介するコンジュゲーションに好適な官能基による誘導体化を受けやすいため、(iii)血漿中で安定であるため、および(iv)種々の腫瘍細胞系に対して有効であるためである。メイタンシノイドを含有するコンジュゲート、それを作製する方法、およびその治療的使用は、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,208,020号明細書、米国特許第5,416,064号明細書および欧州特許第0425235B1号明細書;Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996)(DM1と命名されるメイタンシノイドを含む免疫コンジュゲートを記載);ならびにChari et al.,Cancer Research 52:127−131(1992)に開示されている。
【0151】
メイタンシノイドは当分野において周知であり、公知技術により合成し、または天然源から単離することができる。好適なメイタンシノイドは、例えば、米国特許第5,208,020号明細書に開示されている。例示的なメイタンシノイド薬物部分としては、改変芳香族環を有するもの、例えば、C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号明細書)(アンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製);C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号明細書および米国特許第4,307,016号明細書)(ストレプトミセス属(Streptomyces)またはアクチノミセス属(Actinomyces)を使用する脱メチル化またはLAHを使用する脱塩素化により調製);およびC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号明細書)(塩化アシルを使用するアシル化により調製)ならびに他の位置における改変を有するものが挙げられる。例示的なメイタンシノイド薬物部分としては、改変を有するもの、例えば、メイタンシノールとH2SまたはP2S5との反応により調製されるC−9−SH(米国特許第4,424,219号明細書);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号明細書);ノカルディア属(Nocardia)から調製されるC−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH2OHまたはCH2OAc)(米国特許第4,450,254号明細書);ストレプトミセス属(Streptomyces)によるメイタンシノールの変換により調製されるC−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号明細書);トレウイア・ヌディフロラ(Trewia nudiflora)から単離されるC−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号明細書および米国特許第4,315,929号明細書);ストレプトミセス属(Streptomyces)によるメイタンシノールの脱メチル化により調製されるC−18−N−デメチル(米国特許第,362,663号明細書および米国特許第4,322,348号明細書);およびメイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製される4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号明細書)も挙げられる。メイタンシン化合物上の多くの位置は、結合のタイプに応じて結合位置として有用であることが公知である。例えば、エステル結合の形成のため、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルにより修飾されているC−14位、ヒドロキシル基により修飾されているC−15位およびヒドロキシル基を有するC−20位が全て好適である。
【0152】
一部の態様において、薬物は、カリケアミシンである。抗生物質のカリケアミシンファミリーは、サブピコモル濃度において二本鎖DNA分解を産生し得る。カリケアミシンファミリーのコンジュゲートの調製については、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,712,374号明細書、米国特許第5,714,586号明細書、米国特許第5,739,116号明細書、米国特許第5,767,285号明細書、米国特許第5,770,701号明細書、米国特許第5,770,710号明細書、米国特許第5,773,001号明細書、米国特許第5,877,296号明細書を参照。使用することができるカリケアミシンの構造的アナログとしては、限定されるものではないが、γ1I、α2I、α3I、N−アセチル−γ1I、PSAGおよびθ11が挙げられる(Hinman et al.,Cancer Research 53:3336−3342(1993),Lode et al.,Cancer Research 58:2925−2928(1998)およびAmerican Cyanamidの上記米国特許)。
【0153】
一部の態様において、薬物は、チューブリシンである。チューブリシンは、粘液細菌種から単離された天然生成物のクラスのメンバーである(Sasse et al.,J.Antibiot.53:879−885(2000))。細胞骨格相互作用剤として、チューブリシンは、チューブリン重合を阻害し、細胞周期停止およびアポトーシスをもたらす有糸分裂毒である(Steinmetz et al.,Chem.Int.Ed.43:4888−4892(2004);Khalil et al.,ChemBioChem.7:678−683(2006);Kaur et al.,Biochem.J.396:235−242(2006))。チューブリシンは、任意の臨床関連慣習的化学療法薬、例えば、エポチロン、パクリタキセル、およびビンブラスチンの細胞成長阻害を上回る非常に強力な細胞毒性分子である。さらに、これらは多剤耐性細胞系に対して強力である(Domling et al.,Mol.Diversity 9:141−147(2005))。これらの化合物は、癌細胞系のパネルに対して試験される高い細胞毒性を示し、IC50値は低ピコモル範囲内であり;したがって、それらは、抗癌治療薬として興味深い。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる国際特許出願公開の国際公開第2012019123号パンフレット参照。チューブリシンコンジュゲートは、例えば、米国特許第7,776,814号明細書に開示されている。
【0154】
一部の態様において、薬物は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)である。PBDは、比較的小さい分子であり、一部は、DNAの副溝中の特異的配列を認識し、それに共有結合する能力を有し、したがって、抗生物質/抗腫瘍活性を示す。多数のPBDおよびそれらの誘導体、例えば、PBD二量体(例えば、SJG−136またはSG2000)、C2−不飽和PBD二量体、C2アリール置換を有するピロロベンゾジアゼピン二量体(例えば、SG2285)、加水分解により活性化されるPBD二量体プロドラッグ(例えば、SG2285)、およびポリピロール−PBD(例えば、SG2274)が、当分野において公知である。PBDは、それぞれが参照により全体として本明細書に組み込まれる国際特許出願公開の国際公開第2000/012507号パンフレット、国際公開第2007/039752号パンフレット、国際公開第2005/110423号パンフレット、国際公開第2005/085251号パンフレット、および国際公開第2005/040170号パンフレット、ならびに米国特許第7,612,062号明細書にさらに開示されている。
【0155】
一部の態様において、毒素は、例えば、アブリン、ブルシン、シクトキシン、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、志賀毒素、内毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、炭疽菌毒素、コレラ毒素、ファルカリノール、アルファ毒素、ゲルダナマイシン、ゲロニン、ロタウストラリン、リシン、ストリキニーネ、テトロドトキシン、サポニン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌腸毒素A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、緑膿菌外毒素、緑膿菌内毒素、またはそれらの組合せを含む。他の態様において、毒素は、例えば、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、アブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ツルレイシ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)阻害剤、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシン、トリコテセン、またはそれらの組合せを含む。例えば、国際特許出願公開の国際公開第1993/021232号パンフレット参照。
【0156】
一部の態様において、キレート剤は、DTPA、EC、DMSA、EDTA、Cy−EDTA、EDTMP、DTPA、CyDTPA、Cy2DTPA、BOPTA、DTPA−MA、DTPA−BA、DTPMP、DOTA、TRITA、TETA、DOTMA、DOTA−MA、HP−DO3A、pNB−DOTA、DOTP、DOTMP、DOTEP、DOTPP、DOTBzP、DOTPME、HEDP、DTTP、N3Sトリアミドチオール、DADS、MAMA、DADT、N2S4ジアミンテトラチオール、N2P2ジチオール−ビスホスフィン、6−ヒドラジノニコチン酸、プロピレンアミンオキシム、テトラアミン、シクラム、またはそれらの組合せである。
【0157】
一実施形態において、薬物は、アウリスタチン、チューブリシンまたはピロロベンゾジアゼピン(PBD)である。
【0158】
一実施形態において、アウリスタチンは、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)またはMMAF(モノメチルアウリスタチンF)である。
【0159】
一実施形態において、薬物は、メイタンシノイド、例えば、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)、N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM3)またはN2’−デアセチル−N2’(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシン(DM4)である。
【0160】
放射性核種の例としては、H、11C、13N、15O、18F、32P、33P、35S、47Sc、51Cr、54Mn、57Co、58Co、59Fe、62Cu、65Zn、67Cu、67Ga、68Ge、75Br、75Se、76Br、77Br、77As、80mBr、85Sr、89Sr、90Y、95Ru、97Ru、99Moおよび99mTc、103Pd、103mRh、103Ru、105Rh、105Ru、107Hg、109Pd、109Pt、111Ag、111In、112In、113mIn、113Sn、115In、117Sn、119Sb、121mTe、121I、122mTe、125mTe、125I、126I、131I、133I、133Xe、140La、142Pr、143Pr、149Pm、152Dy、153Sm、153Gd、159Gd、161Ho、161Tb、165Tm、166Dy、166Ho、167Tm、168Tm、169Er、169Yb、175Yb、177Lu、186Re、188Re、188W、189mOs、189Re、192Ir、194Ir、197Pt、198Au、199Au、201Tl、203Hg、211At、211Bi、211Pb、212Pb、212Bi、213Bi、215Po、217At、219Rn、221Fr、223Ra、224Ac、225Ac、225Fm、252Cfならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0161】
一実施形態において、放射性核種は、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn)、またはそれらの組合せを含み、またはそれからなる群から選択される。
【0162】
一実施形態において、放射性核種は、本開示のコンジュゲート化合物にキレート剤により付着している。
【0163】
一実施形態において、Rは、例えば、アルブミン、アルブミン結合ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド(CTP)のβサブユニット、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、XTEN、アルブミン結合小分子、またはそれらの組合せを含む血清半減期延長剤である。
【0164】
エフェクター分子がポリマーである場合、それは、一般に、合成または天然存在ポリマー、例えば、適宜置換されている直鎖もしくは分枝鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレンもしくはポリオキシアルキレンポリマーまたは分枝鎖もしくは非分枝鎖多糖、例えば、ホモもしくはヘテロ多糖であり得る。
【0165】
上記合成ポリマー上に存在し得る具体的な任意選択置換基としては、1つ以上のヒドロキシ、メチルまたはメトキシ基が挙げられる。
【0166】
具体的な天然存在ポリマーとしては、ラクトース、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸塩、セルロースアミロース、デキストラン、グリコゲンまたはそれらの誘導体が挙げられる。
【0167】
一部の実施形態において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、分枝鎖PEG、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、炭水化物、多糖、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリエチレン−co−無水マレイン酸、ポリスチレン−co−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)、2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)である。一部の実施形態において、ポリマーは、ポリエチレングリコールである。本発明の一実施形態において、ポリエチレングリコールは、300から10,000,000、500から100,000、1000から50,000、1500から30,000、2,000から20,000Da、3,000から5,000Da、および4,000から5,000Daの分子量範囲を有する。他の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約1,000Da、約1,500Da、約2,000Da、約3,000Da、約4,000Da、約5,000Da、約10,000Da、または約20,000Daの分子量を有する。
【0168】
一実施形態において、Rまたはポリペプチド(特にR)は、可視化標識を含む。可視化標識としては、限定されるものではないが、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素、放射性同位体、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0169】
一実施形態において、可視化標識は、可視化ペプチドである。一部の態様において、可視化ペプチドは、インビトロ、インビボ、エクスビボ、または任意のそれらの組合せのコンジュゲート化合物の可視化または局在化を可能とする。一部の態様において、可視化ペプチドは、例えば、ビオチンアクセプターペプチド、リポ酸アクセプターペプチド、蛍光タンパク質、重ヒ素色素のライゲーションまたは準安定テクネチウムをコンジュゲートさせるためのシステイン含有ペプチド、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベース近接アッセイのためのユーロピウム包接化合物をコンジュゲートさせるためのペプチド、または任意のそれらの組合せである。一部の態様において、蛍光タンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または任意のそれらの組合せである。一部の態様において、蛍光タンパク質は、フィコビリタンパク質、またはその誘導体である。
【0170】
蛍光タンパク質、特にフィコビリタンパク質は、タンデム色素により標識された標識試薬を作出するために有用である。これらのタンデム色素は、蛍光タンパク質および発光スペクトルが蛍光タンパク質吸収スペクトルの波長からさらにシフトする場合により大きいストークスシフトを得る目的のためのフルオロフォアを含む。これは、発光蛍光が最大に最適化される場合、換言すると、皆無かそれに近い発光が蛍光タンパク質により再吸収される場合、試料中の低い量の標的を検出するために有効であり得る。この作業のため、蛍光タンパク質およびフルオロフォアは、エネルギー移動ペアとして機能し、蛍光タンパク質はフルオロフォアが吸収する波長において発光し、次いでフルオロフォアが、蛍光タンパク質のみを用いて得ることができたものよりも蛍光タンパク質から遠い波長において発光する。機能的組合せは、当分野において公知のフィコビリタンパク質およびスルホローダミンフルオロフォア、またはスルホン化シアニンフルオロフォアであり得る。フルオロフォアはエネルギードナーとして機能することもあり、蛍光タンパク質はエネルギーアクセプターである。
【0171】
他の態様において、重ヒ素色素は、4’,5’−ビス(1,3,2−ジチオアルソラン−2−イル)フルオレセイン(FlAsH)である。一部の態様において、ビオチンアクセプターペプチドは、アビジンおよびストレプトアビジンベース試薬のコンジュゲーションを容易にする。一部の態様において、リポ酸アクセプターペプチドは、結合したリポ酸へのチオール反応性プローブのコンジュゲーションまたは蛍光リポ酸アナログの直接的ライゲーションを容易にする。
【0172】
一実施形態において、Rまたはポリペプチド(特にR)は、蛍光タグを含む。一部の態様において、蛍光タグは、例えば、フルオレセイン型色素、ローダミン型色素、ダンシル型色素、リサミン型色素、シアニン型色素、フィコエリスリン型色素、Texas Red型色素、または任意のそれらの組合せを含む。本明細書に開示のシステイン遺伝子操作抗体またはその抗原結合断片へのコンジュゲーションに好適なフルオロフォアとしては、限定されるものではないが、ピレン(対応する誘導体化合物のいずれかを含む)、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールまたはベンズインドール、オキサゾールまたはベンズオキサゾール、チアゾールまたはベンゾチアゾール、4−アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)、シアニン(任意の対応する化合物を含む)、カルボシアニン(任意の対応する化合物を含む)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチレート、アントラニレート、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(任意の対応する化合物を含む)、キサンテン(任意の対応する化合物を含む)、オキサジン(任意の対応する化合物を含む)またはベンズオキサジン、カルバジン(任意の対応する化合物を含む)、フェナレノン、クマリン(対応する開示化合物を含む)、ベンゾフラン(対応する化合物を含む)およびベンズフェナレノン(任意の対応する化合物を含む)ならびにそれらの誘導体が挙げられる。本明細書において使用されるオキサジンとしては、レゾルフィン(任意の対応する化合物を含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、およびそれらのベンゾ置換アナログ、または任意のそれらの組合せが挙げられる。
【0173】
ある態様において、フルオロフォアとしては、例えば、、キサンテン(ロドール、ローダミン、フルオレセインおよびそれらの誘導体)クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン、ボラポリアザインダセン、または任意のそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態において、このようなフルオロフォアは、例えば、スルホン化キサンテン、フッ素化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ素化クマリン、スルホン化シアニン、または任意のそれらの組合せである。ALEXA FLUOR(登録商標)、DYLIGHT(登録商標)、CY DYES(登録商標)、BODIPY(登録商標)、OREGON GREEN(登録商標)、PACIFIC BLUE(登録商標)、IRDYES(登録商標)、FAM(登録商標)、FITC(登録商標)、およびROX(登録商標)の商品名のもと販売され、一般に公知の色素も挙げられる。
【0174】
本明細書に開示のリンカー「Z」を介して付着しているフルオロフォアの選択は、最終化合物の吸収および蛍光発光特性を決定する。使用することができるフルオロフォア標識の物理的特性としては、限定されるものではないが、スペクトル特徴(吸収、発光およびストークスシフト)、蛍光強度、寿命、分極および光退色速度、またはそれらの組合せが挙げられる。これらの物理的特性の全てを使用してあるフルオロフォアを別のものから区別し、それにより多重化分析を可能とすることができる。ある態様において、フルオロフォアは、480nmよりも長い波長における吸収最大を有する。一部の態様において、フルオロフォアは、488nmから514nm(特にアルゴンイオンレーザー励起源の出力による励起に好適)においてもしくはその近くで、または546nm(特に水銀アークランプによる励起に好適)の近くで吸収する。一部の態様において、フルオロフォアは、組織または生物全体の適用についてNIR(近赤外領域)中で発光し得る。蛍光標識の他の所望の特性としては、例えば、抗体の標識を細胞または生物(例えば、生存動物)中で実施すべき場合、細胞浸透性および低い毒性を挙げることができる。
【0175】
一実施形態において、Rまたはポリペプチド(特にR)は、捕捉タグを含む。一部の態様において、捕捉タグは、ビオチンまたはHis6タグである。ビオチンは、有用である。それというのも、それは酵素系中で機能して検出可能なシグナルをさらに増幅させ得、単離目的のための親和性クロマトグラフィー中で使用することができるタグとしても機能し得るためである。検出目的のため、ビオチンについての親和性を有する酵素コンジュゲート、例えば、アビジン−HRPを使用することができる。
【0176】
続いて、ペルオキシダーゼ基質を添加して検出可能なシグナルを生成することができる。ビオチンに加え、他のハプテン、例として、ホルモン、天然存在および合成薬物、汚染物質、アレルゲン、エフェクター分子、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学中間産物、ヌクレオチドなどを使用することができる。
【0177】
一実施形態において、Rは、酵素を含む。酵素は、有効な標識である。それというのも、検出可能なシグナルの増幅を得ることができ、アッセイ感度の増加をもたらすためである。酵素自体は検出可能な応答を生成しないことが多いが、それが適切な基質により接触される場合に基質を分解するように機能し、その結果、変換された基質が蛍光、発色または発光シグナルを生成する。酵素は、検出可能なシグナルを増幅させる。それというのも、標識試薬上の1つの酵素が、検出可能なシグナルに変換される複数の基質をもたらし得るためである。酵素基質は、計測可能な生成物、例えば、発色、蛍光または化学ルミネセンスを生じさせるように選択する。このような基質は、当分野において広く使用され、当分野において公知である。
【0178】
一部の実施形態において、発色または蛍光発生基質および酵素の組合せは、酸化還元酵素、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼおよび基質、例えば、区別される色を生じさせる3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)および3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)(それぞれ、褐色および赤色)を使用する。検出可能産物を生じさせる他の発色オキシドレダクターゼ基質としては、限定されるものではないが、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、4−クロロ−1−ナフトールが挙げられる。蛍光発生基質としては、限定されるものではないが、ホモバニリン酸または4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、還元フェノキサジンおよび還元ベンゾチアジン、例として、Amplex(登録商標)Red試薬およびそのバリアントならびに還元ジヒドロキサンテン、例として、ジヒドロフルオレセインおよびジヒドロローダミン、例として、ジヒドロローダミン123が挙げられる。
【0179】
本開示は、チラミド試薬であるペルオキシダーゼ基質を用いることに及び、それは、酵素の作用前に固有に検出可能であり得るが、チラミドシグナル増幅(TSA)として記載される方法におけるペルオキシダーゼの作用により「位置固定される」という点で、ペルオキシダーゼ基質のユニーククラスを表す。これらの基質は、顕微鏡観察、フローサイトメトリー、光学走査および蛍光光度法によるそれらの後続の検出のために細胞、組織またはアレイである試料中の標的を標識するために広く活用される。
【0180】
本開示は、発色(および一部の場合、蛍光発生)基質および酵素組合せに及び、それは、ホスファターゼ酵素、例えば、酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ、またはそのようなホスファターゼの組換え型を、発色基質、例えば、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)、6−クロロ−3−インドリルホスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルホスフェート、p−ニトロフェニルホスフェート、もしくはo−ニトロフェニルホスフェートとの、または蛍光発生基質、例えば、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリニルホスフェート(DiFMUP、米国特許第5,830,912号明細書)フルオレセインジホスフェート、3−O−メチルフルオレセインホスフェート、レゾルフィンホスフェート、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)ホスフェート(DDAOホスフェート)、もしくはELF97、ELF39もしくは関連ホスフェートとの組合せで使用することもある。
【0181】
本開示はまた、グリコシダーゼ、特にベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼおよびベータ−グルコシダーゼを含むRに及び、それらは追加の好適な酵素である。適切な発色基質としては、限定されるものではないが、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルベータ−D−ガラクトピラノシド(X−gal)および類似のインドリルガラクトシド、グルコシド、ならびにグルクロニド、o−ニトロフェニルベータ−D−ガラクトピラノシド(ONPG)およびp−ニトロフェニルベータ−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。一部の実施形態において、蛍光発生基質としては、レゾルフィンベータ−D−ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニドおよびそれらの構造バリアント、4−メチルウンベリフェリルベータ−D−ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルベータ−D−ガラクトピラノシドならびにフッ素化クマリンベータ−D−ガラクトピラノシドが挙げられる。
【0182】
追加の酵素としては、限定されるものではないが、ヒドロラーゼ、例えば、コリンエステラーゼおよびペプチダーゼ、オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼおよびシトクロムオキシダーゼ、ならびに好適な基質が公知のレダクターゼが挙げられる。
【0183】
酵素および化学ルミネセンスを生成するその適切な基質は、本開示の分子中への取り込みに有用である。これらとしては、限定されるものではないが、天然および組換え形態のルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられる。ホスファターゼ、グリコシダーゼおよびオキシダーゼのための化学ルミネセンス生成基質、例えば、安定なジオキセタン、ルミノール、イソルミノールおよびアクリジニウムエステルを含有するものは、さらに生産性がある。そのような異種部分は核酸である。核酸は、DNA、RNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA、ヘアピンまたは核酸模倣体、例えば、ペプチド核酸からなる群から選択することができる。ある態様において、コンジュゲート核酸は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000以上の塩基対である。コンジュゲート核酸は、一本鎖であり得る。種々の態様において、コンジュゲート核酸は、二本鎖であり得る。一部の態様において、コンジュゲート核酸は、オープンリーディングフレームをコードする。一部の態様において、コンジュゲート核酸によりコードされるオープンリーディングフレームは、アポトーシス誘導タンパク質、ウイルスタンパク質、酵素、または腫瘍抑制タンパク質に対応する。細胞へのこのような核酸の送達のための技術は、当分野において公知である。
【0184】
他の定義
提供される実施形態を詳述する前に、本開示は具体的な組成物にもプロセスステップにも限定されるものではなく、それ自体変動し得ることを理解すべきである。本明細書および付属の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が特に明示しない限り、複数の参照物を含む。用語「a」(または「an」)は、ならびに用語「1つ以上の」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0185】
さらに「および/または」は、本明細書で使用される場合、他方を伴ってまたは伴わずに、2つの規定の特徴部または構成要素のそれぞれを具体的に開示すると解釈すべきである。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」などの語句において使用されるおよび/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むものとする。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句において使用される用語「および/または」は、以下の態様のそれぞれを包含するものとする:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0186】
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関する技術分野の当業者が一般に理解するものと同一の意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei−Show、2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999、Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示において使用される用語の多くについて一般的辞書を当業者に提供する。
【0187】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(SI)により容認された形式で表示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を包含する。特に記載のない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向で、左から右に記載される。本明細書に提供される見出しは、本開示の種々の態様を限定するものではなく、本明細書を全体として参照することにより把握され得るものである。したがって、この直後に定義される用語は、本明細書を全体として参照することにより、さらに完全に定義される。
【0188】
アミノ酸は、それらの一般に公知の三文字記号、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会により推奨される一文字記号のいずれかにより、本明細書において言及される。同様にヌクレオチドは、それらの一般に認められた一文字コードにより言及される。
【0189】
用語「対象」は、特定の治療のレシピエントになり得る任意の動物(例えば、哺乳動物)、例として、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを指す。典型的には、用語「対象」および「患者」は、ヒト対象への言及において互換的に使用することができる。
【0190】
用語「医薬組成物」は、活性成分(例えば、本明細書に開示のコンジュゲート化合物)の生物学的活性が有効であることを許容するような形態であり、組成物が投与される対象に対して許容されない毒性である追加の構成要素を含有しない製剤を指す。このような組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。このような組成物は、無菌であり得る。
【0191】
本明細書に開示のコンジュゲート化合物の「有効量」は、具体的に記述される目的を実施するために十分な量である。「有効量」は、記述される目的に関して経験的に、および定型的に決定することができる。
【0192】
用語「治療有効量」は、対象または哺乳動物における疾患または障害を「治療する」ために有効な本明細書に開示のコンジュゲート化合物または他の薬物の量を指す。
【0193】
語「標識」は、本明細書において使用される場合、「標識された」コンジュゲート化合物を生成するために本明細書に開示の遺伝子操作抗体またはその断片(例えば、システイン遺伝子操作抗体またはその断片)に直接または間接的にコンジュゲートしている検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体により検出可能であり得(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物または組成物の化学変化を触媒し得る。
【0194】
例えば、「治療する」または「治療」または「治療すること」という用語は、(1)診断された病態または障害の症状を治癒し、減速させ、軽減し、および/またはその進行を停止させる治療的措置、ならびに(2)標的化される病状または障害の発症を予防し、および/または遅延させる予防(prophylactic)または予防(preventative)的措置の両方を指す。したがって、治療を必要とされる者としては、すでに障害を有する者;障害に罹患しやすい者;および障害を予防すべき者が挙げられる。ある態様において、患者が、例えば、疾患または病態、例えば、あるタイプの癌の完全、部分的または一過的寛解を示す場合、対象は、本開示の方法により疾患または病態、例えば、癌について良好に「治療」される。
【0195】
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー、例として、DNAおよびRNAを指す。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/もしくはそれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびそれらのアナログを含み得る。
【0196】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、宿主細胞中に目的の1つ以上の遺伝子または配列を送達し、一部の態様において、発現し得る構築物を指す。ベクターの例としては、限定されるものではないが、ウイルス性ベクター、ネイキッドDNAもしくはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン縮合剤と会合しているDNAもしくはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAもしくはRNA発現ベクター、ならびにある真核細胞、例えば、プロデューサー細胞が挙げられる。
【0197】
本明細書において使用される用語「〜を含む」は、本明細書に関して「例として、〜が挙げられる」と解釈すべきである。
【0198】
本明細書において使用される「本開示において用いられる」は、本開示の方法において用いられること、本開示の中間体を含む分子中で用いられること、またはその両方を、使用される用語の文脈に応じて適宜指す。
【0199】
言語「含む」によりどの態様が本明細書に記載されようとも、「〜からなる」および/または「本質的に〜からなる」に関して記載される他の点で類似の態様も提供されることが理解される。
【0200】
本明細書に記載の任意の積極的実施形態またはそれらの組合せは、消極的除外、すなわち、ディスクレーマーを基礎とし得る。
【0201】
組成物
本開示は、本明細書に記載の分子(例えば、本開示の加水分解された分子)を含む組成物、特に、本開示の分子および医薬賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物(または診断組成物)に及ぶ。
【0202】
組成物は、通常、薬学的に許容可能な担体を通常含む無菌医薬組成物の一部として供給される。本発明の医薬組成物は、ワクチン配合物に関して薬学的に許容可能なアジュバントをさらに含み得る。
【0203】
本開示はまた、前記組成物を調製する方法、例えば、本開示の分子、例えば、本開示の加水分解された分子を、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体の1つ以上と一緒に添加し、混合することを含む、医薬または診断組成物の調製に及ぶ。
【0204】
本開示の抗体は、医薬もしくは診断組成物中の唯一の活性成分であり得、または他の活性成分を伴い得る。
【0205】
医薬組成物は、好適には、治療有効量の本開示による分子を含む。本明細書において使用される用語「治療有効量」は、標的疾患もしくは病態を治療、改善もしくは予防するため、または検出可能な治療もしくは予防効果を示すために必要とされる治療剤の量を指す。治療有効量は、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタもしくは霊長類のいずれかにおいて最初に推定することができる。動物モデルを使用して適切な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。次いで、このような情報を使用してヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0206】
ヒト対象のための正確な治療有効量は、病状の重症度、対象の全身健康状態、対象の年齢、体重および性別、食事ならびに投与時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性および治療法に対するトレランス/応答に依存する。この量は定型的な実験により決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、治療有効量は、0.01mg/kgから50mg/kg、例えば、0.1mg/kgから20mg/kgである。医薬組成物は、所定量の本発明の活性薬剤を用量ごとに含有する単位投与形態で簡便に提供することができる。本開示の分子が投与される実際の用量は、治療すべき病態の性質、例えば、存在する疾患/炎症の程度および分子が予防的に使用されるか既存の病態を治療するために使用されるかに依存する。
【0207】
組成物は、患者に個々に投与することができ、または他の薬剤、薬物もしくはホルモンとの組合せで(例えば、同時に、連続的にまたは別個に)投与することができる。
【0208】
薬学的に許容可能な担体は、それ自体、組成物を受ける個体に有害な抗体の産生を誘導すべきでなく、毒性であるべきでない。好適な担体は、大型の緩慢に代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であり得る。
【0209】
治療組成物中の薬学的に許容可能な担体は、液体、例えば、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールをさらに含有し得る。さらに、助剤物質、例えば、湿潤剤および乳化剤またはpH緩衝物質がそのような組成物中に存在し得る。このような担体により、医薬組成物を患者による摂取のために錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤および懸濁液として配合することができる。
【0210】
好適な投与形態としては、非経口投与に好適な形態、例えば、注射または注入によるもの、例えば、ボーラス注射または連続注入によるものが挙げられる。生成物が注射または注入用である場合、それは油性または水性ビヒクル中の懸濁液剤、液剤、またはエマルジョンの形態をとり得、それは配合剤、例えば、懸濁化剤、保存剤、安定剤および/または分散剤を含有し得る。あるいは、本開示の分子は、適切な無菌液体による使用前の再構成のための乾燥形態であり得る。
【0211】
本開示による配合物において、好適には、最終配合物のpHは、抗体の等電点の値と類似せず、例えば、配合物のpHが7である場合、8〜9以上のpIが適切であり得る。理論により拘束されるものではないが、これは、最終的に、改善された安定性を有する最終配合物を提供し得、例えば、抗体は溶液中で残留することが考えられる。
【0212】
本発明の医薬組成物は、任意数の経路、例として、限定されるものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)(例えば、国際公開第98/20734号パンフレット参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内または直腸経路により投与することができる。皮下噴射器を使用して本発明の医薬組成物を投与することもできる。典型的には、治療組成物は、注射剤として、溶液剤または懸濁液剤のいずれかとして調製することができる。注射前の液体ビヒクル中の液剤、または懸濁液剤に好適な固体形態を調製することもできる。
【0213】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内もしくは筋肉内送達により達成することができ、または組織の間質腔に送達される。組成物は、病変中に投与することもできる。投薬治療は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであり得る。
【0214】
組成物はポリペプチドを含み、したがって、それは消化管中の分解を受けやすい場合があることが認識される。したがって、消化管を使用する経路により組成物を投与すべき場合、組成物は、ポリペプチドを分解から保護するが、組成物が消化管から吸収されたら抗体を放出する薬剤を含有することが必要である。
【0215】
薬学的に許容可能な担体の詳細な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)において入手可能である。
【0216】
一実施形態において、配合物は、吸入を含む局所投与のための配合物として提供される。
【0217】
好適な吸入製剤としては、吸入散剤、噴射ガスを含有する計量エアロゾルまたは噴射ガスを有さない吸入液剤が挙げられる。活性物質を含有する本開示による吸入散剤は、上記の活性物質のみからなり、または上記の活性物質と生理学的に許容可能な賦形剤との混合物からなり得る。
【0218】
これらの吸入散剤は、単糖(例えば、グルコースまたはアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖および多糖(例えば、デキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム)またはこれらと互いとの混合物を含み得る。好適には単糖または二糖が使用され、特にラクトースまたはグルコースが使用されるが、それらの水和物の形態に限らない。
【0219】
肺中の堆積のための粒子は、10ミクロン未満、例えば、1〜9ミクロン、例えば、0.1から5μm、特に1から5μmの粒子サイズを要求する。活性成分(例えば、抗体)の粒子サイズは、最重要である。
【0220】
吸入エアロゾルを調製するために使用することができる噴射ガスは、当分野において公知である。好適な噴射ガスは、炭化水素、例えば、n−プロパン、n−ブタンまたはイソブタンおよびハロ炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタンの塩素化および/またはフッ素化誘導体の中から選択される。上記の噴射ガスは、それら自体で、またはそれらの混合物で使用することができる。
【0221】
特に好適な噴射ガスは、TG11、TG12、TG134aおよびTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)およびTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)およびそれらの混合物が特に好適である。
【0222】
噴射ガスを含有する吸入エアロゾルは、他の成分、例えば、共溶剤、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、酸化防止剤、滑沢剤およびpH調整手段も含有し得る。これら全ての成分は当分野において公知である。
【0223】
本発明による噴射ガスを含有する吸入エアロゾルは、最大5重量%の活性物質を含有し得る。本発明によるエアロゾルは、例えば、0.002から5重量%、0.01から3重量%、0.015から2重量%、0.1から2重量%、0.5から2重量%または0.5から1重量%の活性成分を含有する。
【0224】
あるいは、肺への局所投与は、例えば、デバイス、例えば、噴霧器、例えば、圧縮器に接続された噴霧器(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.,Richmond,Va.により製造されたPari Master(登録商標)圧縮器に接続されたPari LC−Jet Plus(登録商標)噴霧器)を用いる溶液剤または懸濁液剤配合物の投与によるものでもあり得る。
【0225】
本開示の分子は、溶媒中で分散させて、例えば、液剤または懸濁液剤の形態で送達することができる。これは、適切な生理学的溶液、例えば、生理食塩水または他の薬理学的に許容可能な溶媒または緩衝溶液中で懸濁させることができる。
【0226】
治療懸濁液剤または液剤配合物は、1つ以上の賦形剤も含有し得る。賦形剤は当分野において周知であり、それとしては、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液および重炭酸緩衝液)、アミノ酸、ウレア、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールが挙げられる。液剤または懸濁液剤は、リポソームまたは生分解性マイクロスフェア中に封入することができる。配合物は、一般に、無菌製造プロセスを用いて実質的に無菌形態で提供される。
【0227】
これは、当業者が精通する方法による、配合物のために使用される緩衝溶媒/溶液の濾過による産生および滅菌、無菌緩衝溶媒溶液中の分子の無菌懸濁、および無菌容器中への配合物の分散を含み得る。
【0228】
治療
本開示はまた、治療有効量の本開示による分子または組成物、例えば、それを含む医薬組成物を投与することにより、治療が必要とされる患者を治療する方法に及ぶ。
【0229】
一実施形態において、治療において使用される、特に、本明細書に記載の疾患または病態、例えば、癌の治療において使用される本開示の分子またはそれを含む組成物が提供される。
【0230】
一実施形態において、本明細書に記載の病態または疾患、例えば、癌を治療するための医薬品の製造における、本開示の分子またはそれを含む組成物の使用が提供される。
【0231】
したがって、本発明の分子は、病態の治療および/または予防において有用である。
【0232】
したがって、例えば、医薬配合物中で治療有効量を投与することにより治療において使用される本発明による分子が提供される。一実施形態において、本開示による分子は、例えば、吸入により肺に局所投与される。
【0233】
本発明により提供される抗体は、疾患または障害、例として、炎症疾患および傷害、免疫疾患および障害、線維障害および癌の治療において有用である。
【0234】
用語「炎症疾患」または「障害」および「免疫障害または障害」は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、スティル病、マックス・ウェルズ病、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、SLE(全身性エリテマトーデス)、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、血管炎、I型糖尿病、移植および移植片対宿主病を含む。
【0235】
用語「線維障害」は、特発性肺線維症(IPF)、全身性硬化症(または強皮症)、腎線維症、糖尿病性腎症、IgA腎症、高血圧症、末期腎不全、腹膜線維症(連続携行式腹膜透析)、肝硬変、加齢黄斑変性(ARMD)、網膜症、心反応性線維症、瘢痕化、ケロイド、火傷、皮膚潰瘍、血管形成術、冠状動脈バイパス外科手術、関節形成および白内障手術を含む。
【0236】
用語「癌」は、皮膚中に見出される上皮、またはより一般に、身体器官の内層、例えば、乳房、卵巣、前立腺、結腸、肺、腎臓、膵臓、胃、膀胱または腸から生じる悪性新生物を含む。癌は、隣接組織中に浸潤し、遠位器官、例えば、骨、肝臓、肺または脳に拡散(転移)する傾向がある。
【0237】
治療すべき対象は、動物であり得る。しかしながら、1つ以上の実施形態において、組成物は、ヒト対象への投与に適合される。
【実施例】
【0238】
以下の実施例は、本明細書においてT289Cと称されるモノクローナル抗体を用いる。
ACGlcNAz テトラアシル化N−アジドアセチルグルコサミン
ADC 抗体薬物コンジュゲート
BCN ビシクロ[6.1.0]ノニン
BME β−メルカプトエタノール
DTT ジチオトレイトール
MMAE トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン
PAB パラ−アミノベンジルアルコール
【0239】
実施例1 マレイミドプロピオニル−PEG−ビオチンの合成
【化31】
ビオチン−PEG7アミン(1)(100mg、0.168mmol)の無水ジクロロメタン(7mL)中撹拌溶液に、N2下で室温においてマレイミドプロピオン酸NHSエステル(2)(49.2mg、0.186mmol、1.1当量)を添加した。1時間撹拌した後、TLC分析は反応の完了を示し、そのとき1NのHCl(2mL)を添加した。有機溶液を分離し、塩水により洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。真空下での蒸発後に得られた粗製生成物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジクロロメタン中MeOHの段階勾配(v/v=1:30、1:20および1:10)により溶出させて目的化合物マレイミドプロプリオニル(proprionyl)−PEG7−ビオチン(3)(65mg、0.087mmol、52%の収率)ワックス状固体として得た。1H NMR(CDCl3)d 7.01(br s,1H)、6.96(br s,1H)、6.70(s,2H)、5.86(s,1H)、5.06(s,1H)、4.51(m,1H)、4.33(m,1H)、3.84(t,J=7.2Hz,2H)、3.62−3.66(m、24H)、3.53(m,4H)、3.40(m,4H)、3.15(m,1H)、2.88−2.96(m,1H)、2.73(d,J=12.6Hz,1H)、2.52(t,J=7.2Hz,2H)、2.24(t,J=7.0Hz,2H)、1.66(m,4H)、1.45(m,2H)。
【0240】
実施例2 マレイミドフェニルアセチル−PEG−ビオチンの合成
【化32】
ビオチン−PEG−NH(1)(0.25g、0.42mmol)およびマレイミドフェニル酢酸NHSエステル(4)(0.2g、0.609mmol)のアセトニトリル(10mL)中混合物を、N下で周囲温度において一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、得られた残留物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、v/v 1:30、1:20、1:10:1および1:5の比におけるジクロロメタンからジクロロメタン中MeOH)の段階勾配により溶出させて油状物(70mg、.087mmol、21%の収率)としての標的生成物マレイミドフェニルアセチル−PEG−ビオチン(5)をH NMRにより示される3:1の比における所望生成物および加水分解形態の190mgの混合物ならびに15mgの1:2混合物とともに得た。H NMR(CDCl)d 7.41、7.30(AB型、JAB=8.3Hz,4H)[7.64、7.24(AB型、JAB=9.2Hz,4H)微量構成要素]、6.85(s,2H)[6.23(d,J=7.5Hz,1H)、6.47(d,J=7.5Hz,1H)、微量構成要素]、6.63(br s,1H)、6.55(br s,1H)、5.83(s,1H)、5.18(s,1H)、4.49(m,1H)、4.31(m,1H)、3.63−3.40(m,34H)、3.15(m,1H)、2.90(d−AB型、JAB=12.9、J=4.7Hz,1H)、2.72(AB型、JAB=12.9Hz,1H)、2.22(t,J=7.1Hz,2H)、1.68(m,4H)、1.46(m,2H).MS(ESI)m/z 830(M+Na)、825(M+NH、ベースピーク)、808(M+1)。
【0241】
実施例3 2−フルオロ−5−マレイミドフェニル−PEG−ビオチンの合成
【化33】
ビオチン−PEG7−NH2(1)(0.1g、0.168mmol、1当量)および2−フルオロ−5−マレイミドフェノール酸NHSエステル(6)(0.084g、0.252mmol、1.5当量)のジクロロメタン(1mL)中混合物を、N2下で周囲温度において一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、得られた残留物をLH20カラム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製し、MeOH/ジクロロメタン(v/v 1:1)により溶出させてHPLCにより示される約10%の加水分解形態を含有する油状物(28mg、0.034mmol、20.5%の収率)としての標的生成物2−フルオロ−5−マレイミドフェニル−PEG7−ビオチン(7)を得た。3:2の比における所望生成物および加水分解形態の追加の90mgの混合物も得た。1H NMR(CDCl3)d 8.05(dd,J=6.7、2.9Hz,1H)、7.47(dd,J=4.5、2.7Hz,1H)、7.23(m,1H)[8.20(m,1H)、7.46(m,1H)、7.19(m,1H)、微量構成要素]、6.88(s,2H)[6.45、6.24(AB型、JAB=12.9Hz,2H)、微量構成要素]、6.63(br s,1H)、6.05(s,1H)、4.49(m,1H)、4.31(m,1H)、3.66−3.54(m、32H)、3.43(m,2H)、3.14(m,1H)、2.90(d−AB型、JAB=12.7、J=5.0Hz,1H)、2.73(AB型、JAB=12.7Hz,1H)、2.22(m,2H)、1.73(m,4H)、1.44(m,2H)。MS(ESI)m/z 835(M+Na)、829(M+NH4)、813(M+1、ベースピーク)。
【0242】
実施例4 x−マレイミド−PEG−ビオチンをmAbにコンジュゲートさせるための一般手順
【化34】
式中、xは、式(I)の化合物について上記に定義されるXを表し、場合により、式(I)の化合物について定義されるYをさらに含む。
【0243】
x−マレイミド−PEG−ビオチンを、いくつかのステップでmAb(FcのT289C突然変異を含む)にコンジュゲートさせた。最初に、5mLの10mMのPBS、pH7.2中1.6mg/mLのmAb溶液(8mgのmAb、53.3nM、1当量)を43μLの水中50mMのTCEP溶液(2.15μmol、40当量)と合わせ、次いで37℃において1時間穏やかに混合することにより、mAbを軽度に還元して遊離スルフヒドリルを生成した。還元mAbをslide−a−lizer透析カセット(10KのMWCO)に移し、PBS、1mMのEDTA、pH7.2〜7.8に対して数回の緩衝液交換で4℃において24時間透析した。ジヒドロアスコルビン酸(21μLのDMSO中50mMの原液、1.1μmol、20当量)を添加し、次いで室温において4時間穏やかに混合することにより、還元mAbを酸化して内部ジスルフィドを再形成した。1Mのリン酸ナトリウム(pH5.5について一塩基性、pH8.6について二塩基性、またはpH7.4に調整された原液)を、100mMの最終リン酸塩濃度および1.3mg/mLのmAb濃度まで添加することにより、酸化mAb溶液を所望pHに調整した。次に、1.15mLのmAb溶液(1.5mg、10nmol、1当量)をバイアル中にアリコート化し、次いでx−マレイミド−PEG−ビオチン原液(2μLのDMAc中10mMの原液、20nmol、2当量)を添加した。反応混合物を短時間ボルテックスに供し、さらに所望の時間量インキュベートし、次いでN−アセトリ(acetly)システイン(10μLの水中100mMの溶液、1μmol、100当量)を添加し、さらに15分間インキュベートして未反応マレイミドをクエンチした。全てのコンジュゲーション反応は、周囲雰囲気下で室温(22℃)において実施した。mAbに対する2当量のx−マレイミド−PEG−ビオチン=mAb中に含有される遊離システインに対する1当量のx−マレイミド−PEG−ビオチンであることに留意されたい。この一般手順を、必要に応じて改変して所望の反応化学量論(すなわち、異なるマレイミド:mAbフィード)を達成した。
【0244】
RP−HPLCカラム(Agilent Poroshell 300SB−C3;5um、2.1mm×75mm;部品番号660750−909)を備えるAgilent 6520B Q−TOF質量分析計を使用してADC試料を分析した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)パラメータは以下のとおりであった:流速、0.4ml/分;移動相AはHPLCグレードHO中0.1%(v/v)のギ酸であり、移動相Bはアセトニトリル中0.1%(v/v)ギ酸であった。カラムを90%のA/10%のB中で平衡化し、さらにそれを使用してADC試料を脱塩し、次いで40%のA/60%のB中で溶出させた。質量スペクトルデータを100〜3000m/z、陽性極性、350℃のガス温度、48lb/inの噴霧器圧、および5,000Vのキャピラリー電圧について収集した。販売業者により供給された(Agilent v.B.04.00)MassHunter Qualitative Analysisソフトウェアを使用してデータを分析し、デコンボリュートスペクトルからのピーク強度を使用して反応物質および生成物の相対比率;ならびに反応キネティクスを導出した。
【0245】
実施例5 コンジュゲーション効率および加水分解の割合の計算
コンジュゲーション効率の計算
デコンボリュート質量スペクトルのピーク強度から以下の数式:
【数1】
を使用してコンジュゲーション効率および薬物:抗体比(DAR)を計算した。
【0246】
T289C mAbコンジュゲーションチオスクシンイミドについての加水分解率の計算方法
デコンボリュート質量スペクトルのピーク強度から以下の数式:
【数2】
を使用して加水分解率値を計算した。
【0247】
実施例6 半減期計算
導出された速度定数から数式4を使用して偽一次反応(加水分解および脱コンジュゲーション)について、および数式5を使用して二次反応(コンジュゲーション)について半減期を計算した:
【数3】
【0248】
実施例7 1当量のマレイミド:チオールにおけるx−マレイミド−PEG−ビオチンコンジュゲーションの分析
x−マレイミド−PEG−ビオチンmAbコンジュゲートをLC/MS分析のために、PBS pH7.2により0.2mg/mLに希釈し、次いで50μLのmAb溶液を5μLのTCEP(水中0.5M)と合わせることにより調製した。この混合物を室温において5分間インキュベートしてジスルフィド結合を還元してからLC/MS中のインジェクトした(15μL)。代表的なデータを図1Aおよび1Bに示す。
【0249】
【表1】
【0250】
実施例8 0.5当量のマレイミド:チオールにおけるx−マレイミド−PEG−ビオチンコンジュゲーションの分析
x−マレイミド−PEG−ビオチンmAbコンジュゲートを、実施例7に上記のとおり調製し、ただし、1当量のマレイミド:mAbを使用した。1当量のx−マレイミド−PEG−ビオチンは、0.5当量のx−マレイミド−PEG−ビオチン:チオールに等しいことに留意されたい。
【0251】
1)アルキルマレイミド−PEG−ビオチン(比較物)図2A参照
【0252】
【表2】
【0253】
2)フェニルマレイミド−PEG−ビオチン 図2B参照
【0254】
【表3】
【0255】
3)フルオロフェニルマレイミド−PEG−ビオチン 図2C参照
【0256】
【表4】
【0257】
このデータは、分析方法が信頼性があること、すなわち、50%の反応フィードが約50%のコンジュゲーションを生じさせたことを示す。
【0258】
実施例9 22℃におけるT289C mAbへのx−マレイミド−PEG−ビオチンのコンジュゲーション効率
x−マレイミド−PEG−ビオチンmAbコンジュゲートを上記のとおり調製し、2当量のx−マレイミド−PEG−ビオチン:mAbを使用した。2当量のx−マレイミド−PEG−ビオチン:mAbは、1当量のx−マレイミド−PEG−ビオチン:チオールに等しいことに留意されたい。反応生成物を還元グリコシル化質量分析により分析し、数式1を使用してコンジュゲーション効率を計算した。結果を図3および図4に示す。
【0259】
実施例10 pH5.5、22℃におけるx−マレイミド−PEG−ビオチンとT289C mAbとのコンジュゲーションキネティクス
コンジュゲーションデータをモル濃度の単位で分析して速度定数を決定した。二次速度定数を1/[SH]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図5に示す。
【0260】
実施例11 pH7.4、22℃におけるx−マレイミド−PEG−ビオチンとT289C mAbとのコンジュゲーションキネティクス
コンジュゲーションデータをモル濃度の単位で分析して速度定数を決定した。二次速度定数を、1/[SH]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図6に示す。
【0261】
実施例12 pH8.6、22℃におけるx−マレイミド−PEG−ビオチンとT289C mAbとのコンジュゲーションキネティクス
コンジュゲーションデータをモル濃度の単位で分析して速度定数を決定した。二次速度定数を、1/[SH]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図7に示す。
【0262】
T289C mAbへのコンジュゲーションについてのx−マレイミド−PEG−ビオチンキネティクスのまとめ
【0263】
【表5】
【0264】
文献比較:
1)pH7.0におけるN−エチルマレイミドとシステインとの反応、k=1.62×10−1−1
Li,J.;Xu,Q.;Cortes,D.;et al.Reaction of cysteins substituted in the amphipathic N−terminal tail of a bacterial potassium channel with hydrophilic and hydrophobic maleimides.PNAS 2002,99(18),11605−11610.
2)pH7.0におけるN−エチルマレイミドとβ−メルカプトエタノールとの反応、k=0.71×10−1−1
Mosser,G.N−Substituted maleimide inactivation of the response of taste cell stimulation.J.Neurobiol.1976,7(5),457−468.
【0265】
実施例13 プレインキュベーション後のx−マレイミド−PEG−ビオチンとT289C mAbとの反応キネティクス:マレイミド加水分解の間接的計測
x−マレイミド−PEG−ビオチンを、異なるpHの緩衝溶液中でプレインキュベートしてそれらの経時的な安定性およびチオールコンジュゲーション効率を評価した。このアッセイは、マレイミド加水分解を間接的にモニタリングする。それというのも、加水分解されたマレイミドはチオールに対して反応性でないためである。T289C FC突然変異を有する抗体を上記のとおり還元および酸化し、50mMのリン酸ナトリウムpH7.4を含有するPBS中で1.5mg/mLに調整した。20μLのx−マレイミド−PEG−ビオチン溶液(DMAc中10mM溶液)を所望のpHにおいて180μLの緩衝液と合わせることにより、マレイミド溶液を緩衝液(100mMのリン酸ナトリウム、pH5.5、7.4、8.6)中で調製し(最終x−マレイミド−PEG−ビオチン濃度=1mM)、22℃において所定の時間間隔インキュベートしてからmAbと反応させた。コンジュゲーション反応のため、267μLのmAb(1.5mg/mL、2.7nmol、1当量)を5.3μLの緩衝液インキュベートされたx−マレイミド−PEG−ビオチン溶液(5.4nmol、2当量)と合わせた。マレイミド溶液の添加は、mAb溶液のpHに影響を与えなかった。コンジュゲーション反応を22℃においてpH7.4において1.5時間進行させた。反応後、試料をDTTにより室温において5分間還元し、質量分析により分析した。数式1を使用してコンジュゲーション率を計算した。結果を図8に示す。
【0266】
このデータは、マレイミド反応性が加水分解に起因して経時的に消失することを示す。マレイミド加水分解の速度は、N−アリールマレイミドの場合に増加する。全体として、マレイミド加水分解はチオール−マレイミドコンジュゲーションよりも緩慢であり、それはなぜN−アリールマレイミドについての効率的なコンジュゲーションがpH8.6において観察されたかを説明する。以下のデータを使用して半減期を比較することができる。
【0267】
実施例14 pH5.5、22℃におけるマレイミド加水分解キネティクス
マレイミド加水分解データをモル濃度の単位でも分析して速度定数を決定した。偽一次速度定数をln[マレイミド]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図9に示す。
【0268】
実施例15 pH7.4、22℃におけるマレイミド加水分解キネティクス
マレイミド加水分解データをモル濃度の単位でも分析して速度定数を決定した。偽一次速度定数をln[マレイミド]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図10に示す。
【0269】
実施例16 pH8.6、22℃におけるマレイミド加水分解キネティクス
マレイミド加水分解データをモル濃度の単位でも分析して速度定数を決定した。偽一次速度定数をln[マレイミド]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図11に示す。
【0270】
x−マレイミド加水分解キネティクスのまとめ
【0271】
【表6】
【0272】
文献比較:
1)pH7.6、25℃におけるN−フェニルマレイミドの加水分解kobs=7×10−5−1
Oleksandr,K.;Leriche,G.;et al.Selective Irreversible chemical tagging of cystein with 3−arylpropiolonitriles.Bioconjug.Chem.2014,25、202−206.
2)pH8.38、30℃におけるマレイミド(非置換)の加水分解、kobs=1.51×10−4−1
Khan,M.N.Kinetics and mechanism of the alkaline hydrolysis of maleimide.J.Pharm.Sci.1984,73(12),1767−1171.
【0273】
このデータは、マレイミド加水分解がチオール−マレイミドコンジュゲーションよりもかなり緩慢であることを示し、したがって、N−アリールマレイミドは、コンジュゲーションに有用な試薬である。pH8.6におけるF−フェニルマレイミドの最も極端な例においても、マレイミド加水分解半減期は6分である一方、チオールコンジュゲーションは15秒で完了する。
【0274】
実施例17 x−マレイミド−PEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのチオスクシンイミド加水分解キネティクス
x−マレイミド−PEG−ビオチンmAbコンジュゲートを緩衝溶液中でインキュベートし、LC/MSにより経時的にモニタリングしてチオスクシンイミド加水分解を観察した。最初に、T289C Fc突然変異を含有するmAb(0.75mg、5nmol、1当量)を、577mLのPBS、pH7.2中のx−マレイミド−PEG−ビオチン(50nmol、5mLのDMAC中10mMの原液、10当量)と反応させた。コンジュゲーション反応を5分間進行させ、次いでN−アセチルシステイン(500nmol、4mLの水中100mMの原液、100当量)によりクエンチし、さらに5分間インキュベートした。次いで、反応混合物を、所望のpHにおいて0.5mMのEDTAおよび1Mのリン酸ナトリウムを含有するPBSと合わせて0.65mg/mLのmAb、100mMのリン酸塩、0.5MのEDTAおよび150mMのNaClの最終濃度を達成した。試料調製後、アリコートを取り出し、75mMのリン酸緩衝液pH5.5により1:3希釈して初回時点試料を得た。次いで、試料を、所定の時点において取り出されたアリコートと所望の条件においてさらにインキュベートした。全ての試料を、75mMのリン酸緩衝液pH5.5により直ちに1:3希釈して加水分解反応を停止させた。次いで、試料を滅菌濾過し、TCEPにより還元し、LC/MSにより分析した。チオスクシンイミド加水分解を、質量スペクトル中のmAbコンジュゲートピークへの18amuの付加により確認した。デコンボリュート質量スペクトル中のピーク強度および数式3を使用して加水分解の半定量的分析を実施し、それはT=0計測値を使用するバックグラウンドサブトラクションを含む。次いで、データをチオスクシンイミド(M)の経時的損失に変換し、ln[チオスクシンイミド]対秒としてプロットした。ベストフィット直線の傾きは、チオスクシンイミド加水分解についての偽一次速度定数を生じさせた。1時間、n=3におけるチオスクシンイミド加水分解を決定するための追加の実験を実施した。
【0275】
実施例18 PEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのpH7.4、22℃におけるチオスクシンイミド加水分解
チオスクシンイミド加水分解データをモル濃度の単位でも分析して速度定数を決定した。偽一次速度定数をln[マレイミド]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図12に示す。
【0276】
実施例19 PEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのpH7.4、37℃におけるチオスクシンイミド加水分解
チオスクシンイミド加水分解データをモル濃度の単位でも分析して速度定数を決定した。偽一次速度定数をln[マレイミド]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図13に示す。
【0277】
実施例20 PEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのpH8.6、22℃におけるチオスクシンイミド加水分解
チオスクシンイミド加水分解データをモル濃度の単位でも分析して速度定数を決定した。偽一次速度定数をln[マレイミド]対時間のプロットから作成された曲線の傾きおよび線形回帰分析から決定した。結果を図14に示す。
【0278】
T289C mAb−PEG−ビオチンコンジュゲートについてのチオスクシンイミド加水分解キネティクスのまとめ
【0279】
【表7】
【0280】
このデータは、N−アリールチオスクシンイミドの加水分解が、標準的なコンジュゲーション手順の大幅な変更なしで製造に容易に適用することができるタイムスケールで生じることを示す。例えば、pH7.4、22℃における24時間のペイロードコンジュゲーションの実施は、コンジュゲーションおよびチオスクシンイミド加水分解の両方を1ステップで可能とする。
【0281】
実施例21 1時間のインキュベーション後のPEG−ビオチンT289C−mAbコンジュゲートについてのx−チオスクシンイミド加水分解、n=3
結果を、平均±標準偏差、n=3としてプロットされた図15に示す。このデータは、単一試料キネティクス実験について観察された傾向を拡張された試料セットについて裏付ける。チオスクシンイミド加水分解の容易性は、以下のとおり環上部の窒素に付着している化学物質に依存する:N−アルキル<<N−フェニル<N−フルオロフェニル。これらの実験についての相対誤差は、典型的には、5%未満であった。
【0282】
実施例22 モリブデン酸ナトリウムの存在下のPEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのx−チオスクシンイミド加水分解
モリブデン酸ナトリウムを含有する緩衝溶液中でx−マレイミド−PEG−ビオチンmAbコンジュゲートをインキュベートしてこの化合物がチオスクシンイミド加水分解を増加させ得るか否かを調査した。試料を上記のとおりLC/MSにより経時的にモニタリングしてチオスクシンイミド加水分解を観察した。最初に、T289C Fc突然変異を含有するmAb(0.5mg、3.3nmol、1当量)をx−マレイミド−PEG−ビオチン(50nmol、5mLのDMAC中10mMの原液、15当量)と0.365mLのPBS、pH7.2中で反応させた。コンジュゲーション反応を5分間進行させ、次いでN−アセチルシステイン(500nmol、4mLの水中100mMの原液、151当量)によりクエンチし、さらに5分間インキュベートした。次いで、反応混合物を、所望のpHにおいて1Mのモリブデン酸ナトリウムを含有する1MのPBSと合わせて100mMのリン酸塩および100mMのモリブデン酸塩の最終濃度を達成した。モリブデン酸塩の添加後、混合物を22℃において1時間インキュベートした。1時間後、試料を75mMのリン酸緩衝液pH6.5により1:5希釈して加水分解を停止させた。次いで、試料を滅菌濾過し、TCEPにより還元し、LC/MSにより分析した。チオスクシンイミド加水分解を、質量スペクトル中のmAbコンジュゲートピークへの18amuの付加により確認した。デコンボリュート質量スペクトル中のピーク強度および数式3を使用して加水分解の半定量的分析を実施した。結果を図16に示す。
【0283】
加水分解の顕著な向上が2つの試料について観察された:
A)F−フェニルマレイミド−PEG−ビオチン pH5.5
B)F−フェニルマレイミド−PEG−ビオチン pH7.4
【0284】
【表8】
【0285】
このデータは、N−フルオロフェニルチオスクシンイミドのみがモリブデン酸塩触媒加水分解に応答性であり、他のものは応答性でないことを示す。さらに、触媒効果は、予測されるとおり高pHにおいて縮小する。
【0286】
実施例23 チオールを含有する緩衝液中のチオール交換に対するT289C mAbコンジュゲートの感受性
β−メルカプトエタノール(BME)を含有する水性緩衝液とビオチン−mAbコンジュゲートをインキュベートして脱コンジュゲーションに対するチオスクシンイミド結合を負荷した。上記のとおりT289C突然変異を含有するmAbにx−マレイミド−PEG−ビオチンをコンジュゲートさせたが、わずかに改変した。コンジュゲーション反応を、1当量のx−PEG−マレイミド:チオールにおいて22℃において15分間実施し、次いで直ちに0.5mMのEDTAを含有する1×PBS pH7.2により0.2mg/mL(1.33μMのmAb)に希釈した。N−アセチルシステインクエンチングステップは省略した。BME含有試料のため、BMEを1%v/v(143mM)の最終濃度まで添加した。試料を周囲雰囲気下で撹拌せずに37℃においてさらにインキュベートした。アリコートを種々の時点において取り出し、滅菌濾過し、DTTにより還元し、次いでLC/MSにより分析した。コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解の率を質量スペクトルのピーク高さからそれぞれ数式1および数式2を使用して決定した。脱コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解データをln[濃度]対時間(秒)としてプロットして偽一次速度定数をベストフィット直線の傾きから得た。結果を図17に示す。
【0287】
実施例24 BMEを含有する緩衝液中のPEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートの安定性
【0288】
【表9】
【0289】
【表10】
【0290】
結果を図18に示す。このデータは、1)遊離チオールの存在下で異なるチオスクシンイミドタイプ間で変動安定性が観察されたことを示す。より速く加水分解する種は、より少ない脱コンジュゲーションを示し、2)N−アルキルチオスクシンイミドは、遊離チオールを欠く単純緩衝液中で脱コンジュゲートした。
【0291】
さらに、このデータはN−フルオロフェニルチオスクシンイミドの場合に急速な脱安定化をいかなる特別な処理もなしでコンジュゲーション直後に達成することができることを示す。
【0292】
実施例25 BME負荷アッセイにおいて観察されたPEG−ビオチンT289C mAbコンジュゲートについてのpH7.2、37℃におけるチオスクシンイミド加水分解
結果を図19に示す。
【0293】
【表11】
【0294】
このデータは、N−フェニルおよびN−フルオロフェニルチオスクシンイミドが最初の24時間で完全に加水分解することを示し、他の加水分解データと一致する。N−アルキルチオスクシンイミドはより緩慢に加水分解する。
【0295】
実施例26 BME負荷アッセイにおいて観察されたチオスクシンイミド脱コンジュゲーションおよび加水分解間の関係
結果を図20に示す。
【0296】
【表12】
【0297】
このデータを、左軸上に脱コンジュゲーションとして、および右軸上に加水分解としてプロットする。加水分解および脱コンジュゲーションは、明確に関連する。より高速の加水分解は、脱コンジュゲーションの最大量を制限する。
【0298】
実施例27 軽度加水分解後の遊離チオールの存在下のmAb−ビオチンコンジュゲートの安定性
β−メルカプトエタノール(BME)を含有する水性緩衝液中でビオチン−mAbコンジュゲートをインキュベートして脱コンジュゲーションに対するチオスクシンイミド結合を負荷した。この実験において、チオスクシンイミドコンジュゲートを、軽度塩基性条件における短時間のインキュベーションに供して安定性負荷前のチオスクシンイミド加水分解を容易にした。上記のとおりT289C突然変異を含有するmAbにx−マレイミド−PEG−ビオチンをコンジュゲートさせたが、わずかに改変した。コンジュゲーション反応を1当量のx−PEG−マレイミド:チオールにおいて22℃において15分間実施し、次いで、N−アセチルシステイン(mAbに対して100当量)によりクエンチし、さらに5分間反応させた。反応混合物を、10%v/vのリン酸ナトリウム(1M、二塩基性)の添加によりpH8.6に調整し、次いで37℃において1時間インキュベートした。次いで、反応物を、0.5mMのEDTAを含有するPBS(pH7.2)に対して4℃において24時間透析した。透析後、mAb濃度をA280計測値(NanoDrop)により確認し、0.5mMのEDTAを含有する1×PBS pH7.2により試料を0.2mg/mL(1.33μMのmAb)に希釈した。BME含有試料のため、BMEを1%v/v(143mM)の最終濃度まで添加した。試料を周囲雰囲気下で撹拌せずに37℃においてさらにインキュベートした。アリコートを種々の時点において取り出し、滅菌濾過し、DTTにより還元し、次いでLC/MSにより分析した。コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解の率を質量スペクトルのピーク高さからそれぞれ数式1および数式2を使用して決定した。脱コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解データをln[濃度]対時間(秒)としてプロットして偽一次速度定数をベストフィット直線の傾きから得た。
【0299】
実施例28 軽度加水分解後の緩衝液中のチオール交換に対するT289C mAbコンジュゲートの感受性
【0300】
【表13】
【0301】
【表14】
【0302】
このデータは、1)軽度加水分解によりN−アリールチオスクシンイミドが完全に安定化したが、N−アルキルチオスクシンイミドによっては完全に安定化しなかったことを示す。さらに、この実験からのN−アルキルチオスクシンイミドのチオール媒介脱コンジュゲーションについての偽一次速度定数は、前加水分解なしの実験からの値に密接に一致する(データは再現性を示した)。
【0303】
実施例29 N−アルキルマレイミド−Val−Cit−PAB−MMAEの合成
【化35】
マレイミドカプロイル−バリン−シトルリン−p−アミノベンジルカルボニル−モノ−メチル−アウリスタチン−E(mc−ValCit−PABC−MMAE)を、改変を有する文献の方法により調製した。したがって、文献方法に従って新たに調製されたmc−Val−Cit−p−アミノベンジルアルコールp−ニトロフェニルカルボネート(8)(265mg、0.36mmol、1.5当量)、MMAE(9)(169mg、0.24mmol、1当量)およびN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(6.48mg、0.048mmol、0.2当量)の混合物をDMF(5mL)中で室温で2分間撹拌し、次いでピリジン(38mg、0.48mmol、2当量)を添加した。24時間撹拌した後、揮発性有機物を真空下で除去した。得られた残留物を酢酸エチルおよびメタノール(1L)により粉砕してmc−Val−Cit−PAB−MMAE(10)を白色粉末(220mg、0.17mmol、71%の収率)として得、それは通常、RP−HPLC分析による>95%の純度であった。必要に応じて、さらなる精製をC18逆相分取HPLCまたはサイズ排除カラムクロマトグラフィーにより実施することができる。エレクトロスプレー(ES)−MS m/z1339(M+Na、ベースピーク)、1317(M+1)。
【0304】
参照文献:1)Doronina SO,Toki BE,Torgov MY,Mendelsohn BA,Cerveny CG,Chace DF,DeBlanc RL,Gearing RP,Bovee TD,Siegall CB,Francisco JA,Wahl AF、Meyer DL,Senter PD.Development of potent monoclonal antibody auristatin conjugates for cancer therapy.Nat Biotechnol.2003;21:778−784.
2)Dubowchik GM,Firestone RA,Padilla L,Willner D,Hofstead SJ,Mosure K,Knipe JO,Lasch,SJ,Trail PA.Cathepsin B−labile dipeptide linkers for lysosomal release of doxorubicin from internalizing immunoconjugate:model studies of enzymatic drug release and antigen−specific in vitro anticancer activity.Bioconjug Chem.2002;13:855−869.
【0305】
実施例30 N−フェニルアセチルマレイミド−Val−Cit−PAB−MMAEの合成
【化36】
Val−Cit−PAB−MMAE(100mg、0.089mmol)およびマレイミドフェニル酢酸NHSエステル(4)(43.8mg、0.133mmol)のDMF(1mL)中撹拌溶液に、N下で周囲温度においてDIPEA(57.5mg、0.445mmol)を添加した。一晩撹拌した後、MS分析は、生成物形成を示し、少量の出発材料が存在することを示した。混合物をLH−20カラム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により最初に分離し、MeOH/ジクロロメタン(v/v1:1)により溶出させた。分画をMSによりモニタリングし、所望の生成物を有する分画を合わせた。真空下の蒸発乾固後、25mg(0.0187mmol、21%の収率)の油状材料を得た。MSは、m/z1391(M+Cl+Na)、1369(M+Cl、ベースピーク)、1360(M+Na)および1337(M+1)においてイオンのクラスターを示した一方、HPLCは、約2:1の比における2つのピークを示した。半分取HPLCによるさらなる精製により、それぞれ5mgおよび6mgの2つの主要な分画を蒸発後に得た。しかしながら、これら2つの試料は、本質的に同一のHPLCおよびMSを示した。
【0306】
実施例31 N−フェニルマレイミドVal−Cit−PAB−MMAE T289C mAbコンジュゲートの調製
【化37】
N−フェニルアセチルマレイミド−Val−Cit−PAB−MMAEを、いくつかのステップでmAb(FcのT289C突然変異を含む)にコンジュゲートさせた。最初に、5mLの10mMのPBS、pH7.2中1.6mg/mLのmAb溶液(8mgのmAb、53.3nM、1当量)を43μLの水中50mMのTCEP溶液(2.15μmol、40当量)と合わせ、次いで37℃において1時間穏やかに混合することにより、mAbを軽度に還元して遊離スルフヒドリルを生成した。還元mAbをslide−a−lizer透析カセット(10KのMWCO)に移し、PBS、1mMのEDTA、pH7.2〜7.8に対して数回の緩衝液交換で4℃において24時間透析した。ジヒドロアスコルビン酸(21μLのDMSO中50mMの原液、1.1μmol、20当量)を添加し、次いで室温において4時間穏やかに混合することにより、還元mAbを酸化して内部ジスルフィドを再形成した。酸化mAb溶液(2.5mL、27nmol、1当量)を、10%v/vのDMSOと合わせ、次いでN−フェニルアセチルマレイミド−Val−Cit−PAB−MMAE(27μLのDMSO中10mMの原液、270nmol、10当量)を添加した。反応を1時間混合しながら室温において進行させ、次いでN−アセチルシステイン(21μLの水中100mMの原液、2.2μmol、80当量)を添加して反応を停止させた。次いで、反応混合物を蒸留水により3倍希釈し、CHTクロマトグラフィーに供して遊離非コンジュゲート薬物を除去した(Bio−Scale Mini Cartridge CHT Type II40μm媒体カラム)。ADCを、緩衝液A(10mMのリン酸塩、pH7.0)から緩衝液B(2MのNaClを含有する10mMのリン酸塩、pH7.0)への勾配により25分間にわたり溶出させた。CHTクロマトグラフィー後、試料を0.5mMのEDTAが補給された1×PBS、pH7.2にslide−a−lyzerカセット中の4℃における透析により緩衝液交換した。軽度加水分解に供された試料のため、10%v/vのリン酸ナトリウム溶液(1M、二塩基性)を添加し、その溶液を37℃において1時間インキュベートした。次いで、加水分解された試料を、0.5mMのEDTAが補給された1×PBS(pH7.2)に対する透析により緩衝液交換した。ADCを、上記のとおり還元グリコシル化LC/MSにより特徴付けした。それぞれ数式1および数式2を使用してコンジュゲーション効率およびDARを計算した。
【化38】
N−アルキルマレイミド−Val−Cit−PAB−MMAEを、N−フェニルマレイミド−Val−Cit−PAB−MMAE(上記参照)と同一の様式でmAb(FcのT289C突然変異を含む)にコンジュゲートさせた。
【0307】
実施例32 mc−PAB−MMAE T289C mAb ADCの分析
x−マレイミド−Val−Cit−PAB−MMAE−T289C mAbコンジュゲートについての代表的な還元グリコシル化質量分析データを、図22に示す。
【0308】
【表15】
【0309】
MMAE T289C mAbコンジュゲーションデータのまとめ
【0310】
【表16】
【0311】
【表17】
【0312】
【表18】
【0313】
実施例32 チオールを含有する緩衝液中のMMAE−T289C mAbコンジュゲートの安定性
β−メルカプトエタノール(BME)を含有する水性緩衝液中でMMAE−mAbコンジュゲートをインキュベートしてチオール交換反応に対するチオスクシンイミド結合を負荷した。上記のとおりT289C突然変異を含有するmAbにMMAEをコンジュゲートさせた。コンジュゲーション後、コンジュゲートをCHTクロマトグラフィーにより直ちに精製して非コンジュゲート薬物を除去した。次いで、試料を短時間の透析(Slide−a−lizerカセット、10kDaのMWCO、4℃、2時間)に供して0.5mMのEDTAを含有する1×PBS、pH7.2に緩衝液を交換した。透析後、0.5mMのEDTAを含有する1×PBS pH7.2により試料を0.2mg/mL(1.33μMのmAb)に希釈した。BME含有試料のため、BMEを1%v/v(143mM)の最終濃度まで添加した。試料を周囲雰囲気下で撹拌せずに37℃においてさらにインキュベートした。アリコートを種々の時点において取り出し、滅菌濾過し、DTTにより還元し、次いでLC/MSにより分析した。コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解の率を質量スペクトルのピーク高さからそれぞれ数式1および数式2を使用して決定した。脱コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解データをln[濃度]対時間(秒)としてプロットして偽一次速度定数をベストフィット直線の傾きから得た。
【0314】
実施例33 チオール(BME)を含有する緩衝液中のMMAE T289C mAbコンジュゲートの安定性
結果を図23に示す。
【0315】
【表19】
【0316】
【表20】
【0317】
このデータは、MMAEがチオール含有緩衝液中で脱コンジュゲートすること、およびN−アルキルマレイミドを用いて調製されたコンジュゲートが、N−フェニルマレイミドとコンジュゲートしているMMAEよりも安定でないことを示す。
【0318】
実施例34 T289C mAbコンジュゲート中のMMAE−チオスクシンイミドの加水分解
結果を図24に示す。
【0319】
【表21】
【0320】
このデータは、N−アルキルマレイミドとコンジュゲートしているMMAEが、遊離チオールの存在下でN−フェニルマレイミドとコンジュゲートしているMMAEよりも安定でないことを示す。速度定数を計算するために使用されたlnプロットは示さない。
【0321】
実施例35 チオール(BME)を含有する緩衝液中のMMAE T289C mAbコンジュゲートの安定性
結果を図25に示す。
【0322】
【表22】
【0323】
このデータは、1)N−アルキルマレイミドとコンジュゲートしているMMAEが、遊離チオールの存在下でN−フェニルマレイミドとコンジュゲートしているMMAEよりも安定でないこと、2)N−アルキルマレイミドMMAEコンジュゲートが、PEG−ビオチンアナログよりも軽度加水分解に感受性でないこと、3)軽度加水分解がN−アルキルマレイミド−MMAEコンジュゲートの安定性を改善しないこと、4)N−フェニルマレイミド−MMAEコンジュゲートが軽度加水分解に極めて応答性であるが、このステップは高い安定性を達成するために必要ではないこと、5)N−フェニルマレイミドが、N−アルキルマレイミドよりも、同一の精製プロセスに供した場合に有意に自然に加水分解することを示す。
【0324】
実施例36 BME負荷において観察されたPEG−ビオチンおよびMMAEチオスクシンイミド加水分解の比較
結果を図26に示す。
【0325】
【表23】
【0326】
このデータは、緩慢に加水分解するチオスクシンイミドが、マレイミド上流の化学物質により有意に影響を受けることを示す。親水性PEG−ビオチン化学物質が、疎水性MMAEペイロードと比較して加水分解速度を約3〜5倍増加させた。
【0327】
実施例37 β−メルカプトエタノールの存在下の脱コンジュゲーションの比較:PEG−ビオチン対MMAEペイロード
結果を図27に示す。
【0328】
【表24】
【0329】
実施例38 マウス血清中のMMAE−T289C ADCの安定性
MMAE ADCをマウス血清中でインキュベートして脱コンジュゲーションに対するチオスクシンイミド結合を負荷した。T289C突然変異を含有するmAbにMMAEをコンジュゲートさせて上記の所望のADCを生成した。薬物コンジュゲーション後、ADCをCHTクロマトグラフィーにより直ちに精製して非コンジュゲート薬物を除去した。次いで、試料を短時間の透析(Slide−a−lizerカセット、10kDaのMWCO、4℃、2時間)に供して0.5mMのEDTAを含有する1×PBS、pH7.2に緩衝液を交換した。透析後、mAb濃度をA280計測値(NanoDrop)により決定し、次いで正常マウス血清(Jackson Immunoresearch)に添加して最終濃度の0.2mg/mL(1.33μMのmAb)を達成した。血清に添加されたADCの総容量は、10%未満であった。ADC血清混合物を滅菌濾過し、密封容器中で撹拌せずに37℃においてインキュベートした。アリコートを種々の時点において取り出し、冷凍した。コンジュゲートおよび非コンジュゲートヒト抗体をマウス血清から、FC特異的抗ヒトIgG−アガロース樹脂(Sigma−Aldrich)を使用する免疫沈降により回収した。最初に、樹脂をPBSにより2回、IgG溶出緩衝液により1回リンスし、次いでPBSによりさらに2回リンスした。次いで、ADC−マウス血清試料を抗ヒトIgG樹脂(100μLのADC−血清混合物、50μLの樹脂スラリー)と合わせ、室温において15分間穏やかに混合した。樹脂を遠心分離により回収し、次いでPBSにより2回洗浄した。樹脂ペレットを100μLのIgG溶出緩衝液(Thermoscientific)中で再懸濁させ、室温において5分間さらにインキュベートした。樹脂を遠心分離により除去し、次いで20μLの1Mのトリス、pH8.0を上清に添加した。回収されたヒト抗体溶液を滅菌濾過し、DTTにより還元し、次いでLC/MSにより分析した。コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解の率を質量スペクトルのピーク高さからそれぞれ数式1および数式2を使用して決定した。脱コンジュゲートmAbおよびチオスクシンイミド加水分解データをln[濃度]対時間(秒)としてプロットして偽一次速度定数をベストフィット直線の傾きから得た。
【0330】
結果を図28に示す。
【0331】
【表25】
【0332】
このデータは、1)N−フェニルマレイミドを用いて調製されたADCがN−アルキルマレイミドを用いて調製されたADCよりも安定であること、2)N−フェニルチオスクシニド(thiosuccinide)の加水分解がN−アルキルチオスクシンイミドの加水分解よりも早く生じること、3)N−アルキルチオスクシンイミドについてチオール脱コンジュゲーションがチオスクシンイミド加水分解よりもわずかに緩慢に生じることを示し、したがって、完全な脱コンジュゲーションは観察されず、速度は可溶性および不溶性ペイロードについて類似である。可溶性ペイロードの場合、観察された最大脱コンジュゲーションはより低く、これはより高いチオスクシンイミド加水分解速度に起因すると推定される。
【0333】
図29Aは、pH7.2、37℃+BMEにおけるアルキルチオスクシンイミド脱コンジュゲーションおよび加水分解を示す。このデータは、脱コンジュゲーションがチオスクシンイミド加水分解に結びつくことを示す。最大チオスクシンイミド加水分解後の脱コンジュゲーションのプラトーが達成され、それはBME負荷実験と一致する。
【0334】
図29Bは、平均+/−標準偏差(n=3)としての37℃における7日間のマウス血清中のADC脱コンジュゲーションを示す。この実験は、1つの時点について三つ組で実施された上記と同一の血清安定性アッセイである。データは、N−アルキルマレイミドVal−Cit−PAB−MMAE ADCがN−フェニルマレイミドVal−Cit−PAB−MMAE ADCよりも安定でないことを示す。この実験についての相対誤差は、典型的には、10%未満であった。
【0335】
実施例39 マウス血清中のインキュベーション後のMDA−MB−361癌細胞に対するADCの活性
高い5T4発現を有するMDA−MB−361乳癌細胞をこれらの試験に使用した。10%のFBSを有する80μLのRPMI1640中で細胞を96ウェル平底プレート中に2,000個のMDA−MB−361細胞/ウェルにおいてプレーティングした。細胞を一晩接着させた。被験物質を培養培地中で希釈することにより、5×濃度のそれぞれのADCを調製した。50ng/mLの最終用量曲線範囲が0.76pg/mLに段階的な1:4段階希釈系列で下がるように、20マイクロリットルのそれぞれの被験物質を細胞に二つ組で添加した。処理細胞を37℃/5%のCOにおいて6日間培養し、細胞生存率をPromegaからのCellTiter−Glo Luminescent Viability Assayにより評価した。100μLの再構成されたCTG試薬をそれぞれのウェルに添加し、室温において10分間軽度に振盪させ、Perkin Elmer EnVisionルミノメーターを使用して560nmにおけるそれぞれの試料の吸光度を読み取った。細胞生存率を以下の式:(処理試料の平均ルミネセンス/未処理対照試料の平均ルミネセンス)×100により計算した。GraphPad Prismソフトウェアによりロジスティック非線形回帰分析を使用してIC50値を決定した。
【0336】
結果を、平均±相対誤差、n=2として示される図30に示す。このデータは、ADC効力が安定な(N−フェニル)ADCについて保存され、不安定な(N−アルキルマレイミド)ADCにおいて損失することを示す。
【0337】
実施例40 チオスクシンイミド安定化およびペイロードコンジュゲーションのためのヘテロ二官能性リンカー
【化39】
【0338】
アルキル−またはN−アリールベースマレイミドおよびPEG−BCN官能性の両方を含む一連のヘテロ二官能性リンカーを調製した。BCN基は、「銅フリークリックコンジュゲーション」として公知の反応においてアジドに対して反応性である。
【0339】
実施例41 N−フルオロフェニルマレイミド−PEG−BCNの合成
【化40】
還流下の氷冷AcOH中の無水マレイン酸(10a、0.313g、3.19mmol)および5−アミノ−2−フルオロ安息香酸(11b、0.5g、3.22mmol)の反応により、粗製9c(0.72g)を黄色固体として後処理後に提供した。粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに精製して0.21g(0.89mmol、28%の収率)の9cを淡黄色固体として得た。
【化41】
NHS活性化マレイミド(6)を(13)から現場調製し、精製せずに使用した。したがって、(13)(0.137g、0.582mmol)を、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.074g、0.64mmol)とDME(5mL)中のDCC(0.144g、0.698mmol)の存在下で室温において1時間反応させた。濾過による沈殿固体(DCU)の除去後、活性化エステル(6)を含有する濾液を、エンド−2(0.2g、0.485mmol)のDME(2mL)中溶液中に室温において滴加しながらN下で撹拌した。1時間後、TLCおよびMS分析は、反応の完了を示した。過剰のDMEを真空下で濃縮し、得られた粗製残留物をN下でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチルにより溶出させ、次いでDCM中4%のMeOHにより溶出させて(14)(0.24g、0.38mmol、78.6%の収率)を淡黄色油状物として提供した。H NMRおよびMSデータは、化学構造を裏付けた:HPLCは、94%の純度を示した。MS(ESI)m/z 629.3(M+1)、647.8(M+HO)、652.8(M+Na、ベースピーク)。
【0340】
実施例42 N−フェニルマレイミド−PEG−BCN合成
【化42】
DME(5mL)中の(4)(0.191g、0.582mmol)およびエンド−2(0.2g、0.485mmol)間の反応を室温においてN下で1時間で完了させ、それはTLCおよびMSの両方により示された。過剰DMEを真空下で除去し、粗製残留物をN圧下でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチルにより溶出させ、次いでDCM中4%のMeOHにより溶出させた。生成物を含有する分解をプールし、真空下で濃縮した。残留物をDCM中に溶解させ、N下でバイアルに移した。過剰の溶媒をNバブリングにより除去して(15)(0.26g、85%の収率)を淡黄色油状物として提供した。H NMRおよびMSデータは、化学構造を裏付け、残留溶媒の汚染物質が伴った。MS(ESI)m/z 626.5(M+1)、643.5(M+HO)、648.8(M+Na、ベースピーク)。
【0341】
実施例43 x−マレイミド−PEG−BCNをmAbにコンジュゲートさせるための一般手順
【化43】
x−マレイミド−PEG−BCNを、いくつかのステップでmAb(FcのT289C突然変異を含む)にコンジュゲートさせた。最初に、5mLの1.6mg/mLの10mMのPBS、pH7.2中mAb溶液(8mgのmAb、53.3nM、1当量)を43μLの水中50mMのTCEP溶液(2.15μmol、40当量)と合わせ、次いで37℃において1時間穏やかに混合することにより、mAbを軽度に還元して遊離スルフヒドリルを生成した。還元mAbをslide−a−lizer透析カセット(10KのMWCO)に移し、PBS、1mMのEDTA、pH7.2〜7.8に対して数回の緩衝液交換で4℃において24時間透析した。ジヒドロアスコルビン酸(21μLのDMSO中50mMの原液、1.1μmol、20当量)を添加し、次いで室温において4時間穏やかに混合することにより、還元mAbを酸化して内部ジスルフィドを再形成した。酸化mAb溶液をPBSの添加により1.3mg/mLのmAbに調整した。次に、1.15mLのmAb溶液(1.5mg、10nmol、1当量)をバイアル中にアリコート化し、次いでx−マレイミド−PEG−BCN原液(DMAc中10mMの原液、20nmol、2当量)を添加した。反応混合物を短時間ボルテックスに供し、22℃において1時間インキュベートし、次いでN−アセトリ(acetly)システイン(10μLの水中100mMの溶液、1μmol、100当量)を添加し、さらに15分間インキュベートして未反応マレイミドをクエンチした。全てのコンジュゲーション反応は、周囲雰囲気下で室温(22℃)において実施した。mAbに対する2当量のx−マレイミド−PEG−BCN=mAb中に含有される遊離システインに対する1当量のx−マレイミド−PEG−BCNであることに留意されたい。この一般手順を、必要に応じて改良して所望の反応化学量論(すなわち、異なるマレイミド:mAbフィード)を達成した。コンジュゲートを還元グリコシル化質量分析により分析し、数式1を使用してコンジュゲーション効率を決定した。
【0342】
実施例44 N−フェニルマレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートの質量分析
4当量の架橋剤において調製されたN−フェニル−PEG−BCN−mAbコンジュゲートについての代表的な質量分析データを、図31および表25に示す。
【0343】
【表26】
【0344】
N−フェニル−マレイミド−PEG−BCNは、T289C突然変異を含むmAbに効率的および特異的にコンジュゲートした。最大10モル当量の架橋剤について重鎖に対しても軽鎖に対しても追加のコンジュゲーションは観察されなかった。
【0345】
実施例45 N−フルオロフェニルマレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートの質量分析
4当量の架橋剤において調製されたN−フルオロフェニル−PEG−BCN−mAbコンジュゲートについての代表的な質量分析データを、図32および表26に示す。
【0346】
【表27】
【0347】
N−フルオロフェニル−マレイミド−PEG−BCNは、T289C突然変異を含むmAbに効率的および特異的にコンジュゲートした。最大10モル当量の架橋剤について重鎖に対しても軽鎖に対しても追加のコンジュゲーションは観察されなかった。
【0348】
実施例46 N−アルキルマレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートの質量分析
4当量の架橋剤において調製されたN−アルキル−PEG−BCN−mAbコンジュゲートについての質量分析データのまとめを、図33および以下に示す。
【0349】
【表28】
【0350】
N−アルキル−マレイミド−PEG−BCNは、T289C突然変異を含むmAbに効率的および特異的にコンジュゲートした。最大10モル当量の架橋剤について重鎖に対しても軽鎖に対しても追加のコンジュゲーションは観察されなかった。
【0351】
実施例47 T289C mAbへのx−マレイミド−PEG−BCNのコンジュゲーション効率
結果を図35に示す。全ての架橋剤は、T289C突然変異を含むmAbに効率的にコンジュゲートした。完全なコンジュゲーションは、2当量超のマレイミドで観察される。
【0352】
実施例48 PEG−BCNコンジュゲートについてのチオスクシンイミド加水分解キネティクス
x−マレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲートを緩衝溶液中でインキュベートし、LC/MSにより経時的にモニタリングしてチオスクシンイミド加水分解を観察した。0.5mMのEDTAを含有する1×PBS、pH7.2によりコンジュゲートT289C mAbを0.22mg/mLに希釈し、次いでジチオトレイトールを添加(水中0.5Mの原液)して42mMの最終濃度を達成した。試料をLC/MSオートサンプラー中に22℃において配置し、定期的にインジェクトした。チオスクシンイミド加水分解を、質量スペクトル中のmAbコンジュゲートピークへの18amuの付加により確認した。デコンボリュート質量スペクトル中のピーク強度および数式3を使用して加水分解の半定量的分析を実施し、それはT=0計測値を使用するバックグラウンドサブトラクションを含む。次いで、データをチオスクシンイミド(M)の経時的損失に変換し、ln[チオスクシンイミド]対秒としてプロットした。ベストフィット直線の傾きは、チオスクシンイミド加水分解についての偽一次速度定数を生じさせた。これらの結果を図36および表28に示す。
【0353】
【表29】
【0354】
X−マレイミド−PEG−BCNコンジュゲートは、PEG−ビオチンコンジュゲートについて観察されたものと同様の傾向で加水分解し;すなわち、F−フェニルチオスクシンイミド>フェニルチオスクシンイミド>>アルキルチオスクシンイミドである。
【0355】
実施例49 T289C mAbへのペイロードの逐次付加
【化44】
N−フェニル−マレイミド−PEG−BCN−mAbコンジュゲート(100μLの0.5mMのEDTAを有するPBS中1.3、mg/mLの溶液、0.87nmol)を、ACGlcNAz(1μLのDMSO中500mMの原液、500nmol)と合わせた。反応溶液を撹拌せずに室温において22℃において1時間インキュベートした。長期反応性試験のため、0.5mMのEDTAを有するPBS、pH7.2中で4℃においてmAb−BCNコンジュゲートを貯蔵し、アリコートを取り出し、上記のとおりACGlcNAzと反応させた。コンジュゲートを還元グリコシル化質量分析により分析し、数式1を使用してコンジュゲーション効率を決定した。
【0356】
mAb−BCN−Ac4GlcNAzコンジュゲートの分析を、図37に示す。BCN基は、ACGlcNAzと完全に反応した。
【0357】
実施例50 貯蔵後のmAb−BCNコンジュゲートの反応性
結果を図38および表29に示す。
【0358】
【表30】
【0359】
BCNの定量的反応は、全ての試料について観察された。未反応mAb−BCNは、質量分析により検出することができなかった。BCN基は、コンジュゲーションおよび4℃における貯蔵の21日後を超えて反応性の損失を示さない。
【0360】
実施例51 BCN修飾mAbへのアジド−PBDのコンジュゲーション
【化45】
N−フェニル−マレイミド−PEG−BCN−T289C mAbコンジュゲートを上記のとおり調製し(1.5mg/mLのmAb)、アジド−PBDとの反応まで4℃において貯蔵した。PBDコンジュゲーションのため、mAb溶液を最初にDMSOと合わせて30%v/vのDMSOおよび1.05mg/mLのmAb−BCNの最終濃度を達成した。次に、mAb−BCN/DMSO溶液(1.89mL、13nmolのmAb、1当量)をバイアルに移し、アジド−PBDを添加した(16μLのDMSO中10mMの原液、160nmol、12当量)。反応混合物を37℃において1時間インキュベートし、次いで22℃において18時間インキュベートした。反応混合物を最初に透析(10KのMWCOのslide−a−lyzerカセット、0.5mMのEDTAを有する1×PBS、pH7.2、4℃、18時間)により精製し、次いで上記のとおりCHTクロマトグラフィーにより精製した。反応生成物を還元グリコシル化質量分析により分析した。それぞれ数式1および数式2を使用してコンジュゲーション効率およびDARを計算した。
【0361】
実施例52 mAb−PBDコンジュゲートの分析
5T4標的化T289C mAb−N−フェニルマレイミド−PEG−BCNコンジュゲートについての代表的な質量分析データを、図38に示す。
【0362】
【表31】
【0363】
実施例53 MDA−MB−361乳癌細胞に対するmAb−BCN−PBD ADCのインビトロ活性
高い5T4発現を有するMDA−MB−361乳癌細胞をこれらの試験に使用した。10%のFBSを有する80μLのRPMI1640中で細胞を96ウェル平底プレート中に2,000個のMDA−MB−361細胞/ウェルにおいてプレーティングした。細胞を一晩接着させた。被験物質を培養培地中で希釈することにより、5×濃度のそれぞれのADCを調製した。50ng/mLの最終用量曲線範囲が0.76pg/mLに段階的な1:4段階希釈系列で下がるように、20マイクロリットルのそれぞれの被験物質を細胞に三つ組で添加した。処理細胞を37℃/5%のCOにおいて6日間培養し、細胞生存率をPromegaからのCellTiter−Glo Luminescent Viability Assayにより評価した。100μLの再構成されたCTG試薬をそれぞれのウェルに添加し、室温において10分間軽度に振盪させ、Perkin Elmer EnVisionルミノメーターを使用して560nmにおけるそれぞれの試料の吸光度を読み取った。細胞生存率を以下の式:(処理試料の平均ルミネセンス/未処理対照試料の平均ルミネセンス)×100により計算した。GraphPad Prismソフトウェアによりロジスティック非線形回帰分析を使用してIC50値を決定した。
【0364】
結果を図40および表25に示す。
【0365】
【表32】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図18
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図40