特許第6863890号(P6863890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863890ヒト無調ホモログ−1(HATH1)をコードするアデノウイルスベクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863890
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】ヒト無調ホモログ−1(HATH1)をコードするアデノウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/861 20060101AFI20210412BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20210412BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20210412BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210412BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C12N15/861 ZZNA
   A61P27/16
   A61K35/761
   A61K48/00
   !C12N7/01
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-518815(P2017-518815)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-532034(P2017-532034A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015054836
(87)【国際公開番号】WO2016057868
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】62/061,748
(32)【優先日】2014年10月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512115988
【氏名又は名称】ジェンヴェック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブラフ,ダグラス イー.
(72)【発明者】
【氏名】エティレディ,ダモダー アール.
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−516027(JP,A)
【文献】 特開2011−062204(JP,A)
【文献】 特表平11−502421(JP,A)
【文献】 特開2002−330786(JP,A)
【文献】 Acta Otolaryngol.,2010年,Vol. 130, No. 2,pp. 215-222
【文献】 Gene Therapy,2011年,Vol. 18,pp. 884-890
【文献】 Cellular Reprogramming,2013年,Vol. 15, No. 1,pp. 43-54
【文献】 J. Virol.,2002年,Vol. 76, No. 8,pp. 3670-3677
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 7/00−7/08
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3の核酸配列を含む、アデノウイルスベクター。
【請求項2】
請求項1に記載のアデノウイルスベクターおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項3】
必要とするヒトの内耳に感覚細胞を発生させるために用いられるものである、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、難聴を患っているヒトに投与されるものである、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、平衡障害を患っているヒトに投与されるものである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記ヒトの内耳に1回、投与されるものである、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2014年10月9日に出願された米国仮特許出願第62/061,748号の利益を主張する。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み入れ
本明細書と同時に提出され、以下のように識別されるコンピュータ可読のヌクレオチド/アミノ酸配列リストが本明細書に全体として参照により組み入れられている:2015年9月25日に作成された「721767_ST25.TXT」という名称の1つの49,240バイトASCII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0003】
世界の人口の大部分は、生涯に聴力のいくらかの低下または平衡障害を経験する可能性が高い。米国の成人のおよそ17パーセント(3600万人)が、ある程度の難聴を報告し、米国における1,000人の子どもあたり約2〜3人が、生まれつき、耳が聞こえず、または聴力が低下している(国立聴覚伝達障害研究所(National Institute on Deafness and Other Communication Disorders)(NIDCD)からの統計)。
【0004】
聴覚および平衡の両方において、機械的刺激が、感覚有毛細胞によって神経信号へ変換されるが、その感覚有毛細胞の損傷が、多くの型の難聴および平衡障害の原因である。例えば、大きい雑音による機械的損傷は、蝸牛有毛細胞を、その有毛細胞がもはや信号を聴神経へ伝達することができないレベルまで曲げる。哺乳類有毛細胞は、自然に再生されないため、有毛細胞が損傷したならば、永久的難聴が起こり得る。聴覚障害の主な原因である音響外傷はさておき、難聴は、遺伝性症候群、細菌またはウイルス感染、処方薬の使用、および老人性難聴(老齢に伴う難聴)によっても引き起こされ得る。同様に、平衡障害、特に前庭障害は、感染、頭部傷害、薬剤使用、および年齢によって引き起こされ得る。
【0005】
難聴についての最も一般的な処置は、補聴器および人工内耳を含む。世界中でおよそ188,000人の人々が人工内耳を受けており、それは、米国において大体、41,599人の成人と25,500人の子どもを含む(NIDCD統計)。平衡障害についての処置の選択肢には、平衡再訓練、抗めまいまたは嘔吐抑制薬物療法、および前庭リハビリテーション療法が挙げられる。しかしながら、そのような治療は、その障害が進行性である場合には、長期間にわたって必要とされる可能性が高く、平衡障害についての多くの治療は、めまいの永久的な軽減をもたらさない。現在、耳における感覚有毛細胞の損失または損傷を含む障害についての効果的な薬剤処置はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、難聴および平衡障害などの感覚有毛細胞の破壊または損失に伴う障害を寛解させることができる作用物質の必要性が依然としてある。この発明はそのような作用物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、VA RNA I領域において2塩基対が欠失していること、E1領域における内因性遺伝子を機能的欠損にするようにE1領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失していること、E3領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失していること、およびE4領域における内因性遺伝子を機能的欠損にするようにE4領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失していることを例外とするが、右側の逆位末端反復(ITR)、E4領域ポリアデニル化配列、およびE4領域プロモーターが保持されている、(a)血清型5型アデノウイルスゲノム、(b)SV40初期ポリアデニル化配列、(c)ヒト無調ホモログ−1(Hath1)タンパク質をコードし、配列番号1を含む核酸配列、(d)ヒトグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ならびに(e)転写不活性スペーサー(TIS)を含むアデノウイルスベクターを提供する。エレメント(b)、(c)、および(d)は、アデノウイルスゲノムのE1領域においてアデノウイルスゲノムに対して3’から5’へ順に位置し、エレメント(e)は、アデノウイルスゲノムのE4領域において、E4ポリアデニル化配列とE4プロモーターの間に位置する。
【0008】
本発明はまた、ヒトの内耳において感覚細胞を発生させるために前述のアデノウイルスベクターを利用する組成物および方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プラスミドpAdE1(GFAP.Hath1)E3(10)E4(TIS1)の概略的マップである。
図2】アデノウイルスベクターAdGFAP.HATH1.11Dの概略的マップである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ヒト無調ホモログ−1(Hath1)タンパク質をコードする核酸配列を含む血清型5型アデノウイルスベクターを内耳へ送達することにより、感覚有毛細胞が発生し得るという発見に、少なくとも一部、基礎を置いている。
【0011】
本明細書で用いられる場合、用語「アデノウイルスベクター」は、アデノウイルスゲノムが、アデノウイルスゲノムに対して非天然である核酸配列を収容するように操作されている、アデノウイルスを指す。典型的には、アデノウイルスベクターは、非天然核酸配列のアデノウイルスへの挿入を収容するようにアデノウイルスのアデノウイルスゲノムへ1つまたは複数の突然変異(例えば、欠失、挿入、または置換)を導入することにより作製される。
【0012】
アデノウイルスベクターについてのウイルスゲノムの供給源は、ヒト血清型5型アデノウイルスである。ヒトアデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18、および31型)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35、および50型)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5、および6型)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39、および42〜48型)、サブグループE(例えば、血清型4型)、サブグループF(例えば、血清型40および41型)、または未分類血清型(例えば、血清型49および51型)として分類される。アデノウイルス血清型1〜51型(すなわち、Ad1〜Ad51)は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、Virginia)から入手できる。
【0013】
本発明のアデノウイルスベクターは複製欠損である。複製欠損アデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターが、典型的な宿主細胞、特に、アデノウイルスベクターに感染させられるヒトにおける細胞において、複製しないための、例えば、1つまたは複数の複製必須遺伝子機能または領域の欠損の結果として、複製に必要とされるアデノウイルスゲノムの1つまたは複数の遺伝子機能または領域の補完を必要とする。
【0014】
本明細書で用いられる場合、遺伝子機能またはゲノム領域の欠損は、核酸配列が全部または一部、破壊され(例えば、欠失し)、それにより遺伝子またはゲノム領域を「機能的欠損」にする、遺伝子の機能を消し去り、または損なうのに十分な(例えば、遺伝子産物の機能が、少なくとも約2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、または50倍、低下するような)、アデノウイルスゲノムの遺伝子材料の破壊(例えば、欠失)として定義される。遺伝子領域全体の欠失は、複製必須遺伝子機能の破壊に必要とされない場合が多い。しかしながら、1つまたは複数の導入遺伝子のためのアデノウイルスゲノムにおける十分なスペースを提供するために、1つまたは複数の遺伝子領域の大部分の除去が望ましい場合がある。この点において、アデノウイルスベクターは、望ましくは、アデノウイルスゲノムを含むが、ただし、内因性遺伝子またはゲノム領域を機能的欠損にするために1つまたは複数の複製必須遺伝子またはゲノム領域の1つまたは複数の内因性ヌクレオチドが欠失している。遺伝子材料の欠失が好ましいが、遺伝子材料の突然変異もまた、遺伝子機能を破壊するのに適切である。複製必須遺伝子機能は、アデノウイルス複製(例えば、増殖)に必要とされる遺伝子機能であり、例えば、アデノウイルス初期領域(例えば、E1、E2、およびE4領域)、後期領域(例えば、L1、L2、L3、L4、およびL5領域)、ウイルスパッケージングに関与する遺伝子(例えば、IVa2遺伝子)、およびウイルス関連RNA(例えば、VA−RNA−1および/またはVA−RNA−2)によってコードされている。
【0015】
複製欠損アデノウイルスベクターは、好ましくは、アデノウイルスゲノムの少なくとも一部を保持する。アデノウイルスベクターは、タンパク質コード領域および非タンパク質コード領域を含むアデノウイルスゲノムの任意の部分を含み得る。アデノウイルスベクターは、例えば、初期領域遺伝子(すなわち、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、および/またはE4領域)のいずれか1つによりコードされるタンパク質、またはウイルス構造タンパク質をコードする後期領域遺伝子(すなわち、L1、L2、L3、L4、およびL5領域)のいずれか1つによりコードされるタンパク質などの、任意の適切なアデノウイルスタンパク質をコードする核酸配列を含み得る。あるいは、アデノウイルスベクターは、初期領域もしくは後期領域遺伝子の、1つもしくは複数のプロモーター、転写終結配列、もしくはポリアデニル化配列、または1つもしくは複数の逆位末端反復(ITR)配列を含む、アデノウイルスゲノムの非タンパク質コード領域を含み得る。一実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、少なくとも右側の逆位末端反復(ITR)、E4領域ポリアデニル化配列、およびE4領域プロモーターを保持する。
【0016】
複製欠損アデノウイルスベクターは、増殖のためのアデノウイルスゲノムの1つまたは複数の領域において1つまたは複数の複製必須遺伝子機能の欠損を引き起こすために任意の適切な様式で改変することができる。アデノウイルスゲノムの1つまたは複数の領域の1つまたは複数の複製必須遺伝子機能の欠損の補完とは、機能的に欠損した複製必須遺伝子機能を提供するための外因性手段の使用を指す。そのような補完は、任意の適切な様式で、例えば、破壊された複製必須遺伝子機能をコードする、補完する細胞および/または外因性DNA(例えば、ヘルパーアデノウイルス)を用いることにより、もたらすことができる。
【0017】
アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの初期領域(すなわち、E1〜E4領域)のみ、アデノウイルスゲノムの後期領域(すなわち、L1〜L5領域)のみ、アデノウイルスゲノムの初期領域および後期領域の両方、または全てのアデノウイルス遺伝子(すなわち、高キャパシティアデノベクター(HC−Ad))の1つまたは複数の複製必須遺伝子機能が欠損し得る。Morsy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 965-976 (1998);Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 1645-1650 (1997);およびKochanek et al., Hum. Gene Ther., 10: 2451-2459 (1999)参照。複製欠損アデノウイルスベクターの例は、米国特許第5,837,511号明細書;同第5,851,806号明細書;同第5,994,106号明細書;同第6,127,175号明細書;同第6,482,616号明細書;および同第7,195,896号明細書、ならびに国際特許出願公開第1994/028152号パンフレット、同第1995/002697号パンフレット、同第1995/016772号パンフレット、同第1995/034671号パンフレット、同第1996/022378号パンフレット、同第1997/012986号パンフレット、同第1997/021826号パンフレット、および同第2003/022311号パンフレットに開示されている。
【0018】
アデノウイルスゲノムの初期領域には、E1、E2、E3、およびE4領域が挙げられる。E1領域は、E1AおよびE1Bの小領域を含み、E1領域における複製必須遺伝子機能の1つまたは複数の欠損には、E1AおよびE1Bの小領域の一方または両方における複製必須遺伝子機能の1つまたは複数の欠損を挙げることができ、それにより、アデノウイルスベクターが増殖するために(例えば、アデノウイルスベクター粒子を形成するために)、アデノウイルスゲノムのE1A小領域および/またはE1B小領域の補完を必要とする。E2領域は、E2AおよびE2Bの小領域を含み、E2領域における複製必須遺伝子機能の1つまたは複数の欠損には、E2AおよびE2Bの小領域の一方または両方における複製必須遺伝子機能の1つまたは複数の欠損を挙げることができ、それにより、アデノウイルスベクターが増殖するために(例えば、アデノウイルスベクター粒子を形成するために)、アデノウイルスゲノムのE2A小領域および/またはE2B小領域の補完を必要とする。
【0019】
E3領域はいかなる複製必須遺伝子機能も含まないため、E3領域の一部、または全部の欠失は、アデノウイルスベクターが増殖するために(例えば、アデノウイルスベクター粒子を形成するために)E3領域におけるいかなる遺伝子機能の補完も必要としない。本発明に関して、E3領域は、ヒトアデノウイルス5のE3領域由来の12.5Kタンパク質(NCBI参照配列AP_000218)との高相同性を有するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから始まり、ヒトアデノウイルス5のE3領域由来の14.7Kタンパク質(NCBI参照配列AP_000224.1)との高相同性を有するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームで終わる領域として定義される。E3領域は、全部もしくは一部、欠失し得、または全部もしくは一部、保持され得る。欠失のサイズは、ゲノムが最適なゲノムパッケージングサイズに厳密に適合する、アデノウイルスベクターを保持するのに合わせて作製され得る。より大きい欠失は、アデノウイルスゲノムにおいて、より大きい異種性核酸配列の挿入を収容する。本発明の一実施形態において、E3領域に存在するL4ポリアデニル化シグナル配列は保持される。
【0020】
E4領域は、複数の内因性遺伝子をコードする複数のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。ORF6、場合によってはORF3を除くE4領域のオープンリーディングフレームの全部の欠失を含むアデノウイルスベクターは、アデノウイルスベクターが増殖するために(例えば、アデノウイルスベクター粒子を形成するために)、E4領域におけるいかなる遺伝子機能の補完も必要としない。逆に、E4領域のORF6、場合によってはORF3の破壊または欠失を有する(例えば、E4領域のORF6および/またはORF3に基づいた複製必須遺伝子機能の欠損を有する)アデノウイルスベクターは、E4領域のその他のオープンリーディングフレーム、または天然E4プロモーター、ポリアデニル化配列、および/もしくは右側の逆位末端反復(ITR)のいずれかの破壊または欠失の有無に関わらず、アデノウイルスベクターが増殖するために(例えば、アデノウイルスベクター粒子を形成するために)、E4領域(特に、E4領域のORF6および/またはORF3)の補完を必要とする。
【0021】
アデノウイルスゲノムの後期領域には、L1、L2、L3、L4、およびL5領域が挙げられる。アデノウイルスベクターはまた、国際特許出願公開第2000/000628号パンフレットに論じられているように、望まれる場合には、アデノウイルスベクターを複製欠損にすることができる、主要後期プロモーター(MLP)に突然変異を有し得る。
【0022】
好ましくは、複製必須遺伝子機能の1つまたは複数の欠損を含有するアデノウイルスゲノムの1つまたは複数の領域は、望ましくは、アデノウイルスゲノムの1つまたは複数の初期領域、すなわち、E1、E2、および/またはE4領域であり、任意選択で、E3領域の一部または全部の欠失を有してもよい。
【0023】
一実施形態において、E1領域における内因性遺伝子を機能的欠損にし、かつE4領域における内因性遺伝子を機能的欠損にするために、本発明のアデノウイルスベクターにおいて、E1領域およびE4領域の1つまたは複数の内因性ヌクレオチドが欠失している(E1/E4欠損型アデノウイルスベクターと表される)。本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE1領域の少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の欠失を含み得、好ましくは、E1領域の複製必須遺伝子機能の全部の欠失を含む。この点において、本発明のアデノウイルスベクターのE1領域の欠失は、E1AおよびE1B内因性遺伝子のプロモーターおよびコード領域の欠失を含み得る。E4領域の欠失は、望ましくは、E4領域の少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の欠失を含み得、好ましくは、E4領域の複製必須遺伝子機能の全部の欠失を含む。この点において、本発明のアデノウイルスベクターのE4領域の欠失は、E4領域の内因性遺伝子の全部の欠失を含み得る。アデノウイルスゲノムのE1領域およびE4領域の欠失に加えて、E3領域の1つまたは複数の内因性ヌクレオチドが、本発明のアデノウイルスベクターにおいて欠失し得、好ましくは、本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの非必須E3領域の少なくとも1つの遺伝子機能の欠失を含む(E1/E3/E4欠損型アデノウイルスベクターと表される)。血清型5型アデノウイルスゲノムのE1、E3、およびE4領域の欠失に加えて、本発明のアデノウイルスベクターはまた、望ましくは、ウイルス関連RNA(例えば、VA−RNA−1および/またはVA−RNA−2)の1つの欠失を含む。好ましくは、本発明のアデノウイルスベクターは、VA−RNA−1領域の欠失を含む。VA−RNA−1領域の欠失は、任意の適切なサイズでもよいが、望ましくは、1塩基対から10塩基対まで、好ましくは1塩基対から5塩基対まで、最も好ましくは1塩基対から3塩基対まで、または前述の値のいずれか2つによって規定される範囲である。一実施形態において、アデノウイルスベクターのVA RNA 1領域において2塩基対が欠失している。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明の血清型5型アデノウイルスベクターのゲノムは、E1領域ヌクレオチド356〜3510(両端を含む)の欠失、E3領域ヌクレオチド28,593〜30,471(両端を含む)の欠失、E4領域ヌクレオチド32,827〜35,563の欠失、ならびにVA−RNA−1領域ヌクレオチド10,594および10595の欠失を含む。しかしながら、他の欠失が適切な場合がある。例えば、複製必須E1遺伝子機能の欠損を生じさせるために、ヌクレオチド356〜3329、または356〜3510を除去することができ、アデノウイルスゲノムのE3領域からヌクレオチド28,594〜30,469を欠失させることができる。
【0025】
本発明のアデノウイルスベクターは、転写不活性スペーサー(TIS)を含む。転写不活性スペーサー配列は、単一の複製必須遺伝子機能が欠損したアデノウイルスベクター(例えば、E1欠損型アデノウイルスベクター)によって達成される成長と類似した、補完性細胞株における、複製欠損が多数重なったアデノウイルスベクター(例えば、E1/E4欠損型アデノウイルスベクター)の成長を提供する。TIS配列は、少なくとも約15ヌクレオチド長(例えば、約15ヌクレオチド長から約12,000ヌクレオチド長の間)、好ましくは約100ヌクレオチド長〜約10,000ヌクレオチド長、より好ましくは約500ヌクレオチド長〜約8,000ヌクレオチド長、さらにより好ましくは約1,500ヌクレオチド長〜約6,000ヌクレオチド長、最も好ましくは約2,000長〜約3,000ヌクレオチド長、または前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の配列などの、望ましい長さである任意のヌクレオチド配列を含有し得る。TIS配列は、翻訳領域でも非翻訳領域でもよく、かつアデノウイルスゲノムに関して天然でも非天然でもよいが、欠損領域に対して複製必須機能を回復させない。TISはまた、発現カセットを含有し得る。
【0026】
一実施形態において、転写不活性スペーサーは、ポリアデニル化配列、および/またはアデノウイルスベクターに関して非天然である遺伝子を含む。スペーサーエレメントは、例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)、ポリオーマウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、およびウシパピローマウイルス(BPV)のポリアデニル化配列などの、任意の適切なポリアデニル化配列を含み得る。好ましくは、TIS配列は、サルウイルス40(SV40)ポリアデニル化配列を含むことができる。TISに含まれる適切な非天然遺伝子の例には、pGUS、分泌性アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびヒト抗トリプシンなどのマーカータンパク質をコードする核酸配列;治療的因子;B3−19K、E3−14.7、ICP47、fasリガンド、およびCTLA4などの潜在的免疫調節因子;生物学的に不活性な配列(例えば、(i)転写されて産物を産生することがなく、または(ii)欠陥の、もしくは生物学的に不活性な産物をコードする配列);ならびに他の無害な配列(例えば、β−グルクロニダーゼ遺伝子)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0027】
好ましくは、TISは、アデノウイルスゲノムに対して5’から3’へ順に、(i)サルウイルス40(SV40)由来のポリアデニル化(ポリ(A))配列および転写終結配列、(ii)β−グルクロニダーゼ遺伝子をコードする核酸配列、ならびに(iii)ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子由来のポリアデニル化(ポリ(A))配列および転写終結配列を含む。アデノウイルスベクターにおける転写不活性スペーサーの使用は、例えば、米国特許第5,851,806号明細書および国際特許出願公開第1997/021826号パンフレットにさらに記載されている。
【0028】
アデノウイルスゲノムの全部または一部、例えば、アデノウイルスゲノムのE1、E3、およびE4領域の1つまたは複数の内因性ヌクレオチドを除去することにより、結果として生じるアデノウイルスベクターは、外因性核酸配列の挿入断片を、アデノウイルスカプシドへパッケージングする能力を保持しながら、受け入れることができる。外因性核酸配列は、その位置における挿入がアデノウイルスベクター粒子の形成を許容する限り、アデノウイルスゲノムにおいて任意の位置に挿入することができる。外因性核酸配列は、好ましくは、アデノウイルスゲノムのE1領域、E3領域、またはE4領域に位置する。
【0029】
本発明の複製欠損アデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスベクター中に存在しない遺伝子機能を提供する、補完する細胞株において産生することができるが、高力価のウイルスベクターストックを作製するために適切なレベルでのウイルス増殖を必要とされる。そのような補完する細胞株は知られており、それには、(例えば、Graham et al., J. Gen. Virol., 36: 59-72 (1977)に記載された)293細胞、(例えば、国際特許出願公開第1997/000326号パンフレット、ならびに米国特許第5,994,128号明細書および同第6,033,908号明細書に記載された)PER.C6細胞、および(例えば、国際特許出願公開第95/34671号パンフレットおよびBrough et al, J. Virol., 71: 9206-9213 (1997)に記載された)293−ORF6細胞が挙げられるが、それらに限定されない。他の適切な補完する細胞株には、発現が宿主細胞においてウイルス成長を阻害する導入遺伝子をコードするアデノウイルスベクターを増殖するために作製されている細胞が挙げられる(例えば、米国特許出願公開第2008/0233650号明細書参照)。追加の適切な補完する細胞は、例えば、米国特許第6,677,156号明細書および同第6,682,929号明細書、ならびに国際特許出願公開第2003/020879号パンフレットに記載されている。場合によっては、細胞ゲノムは、必ずしも、核酸配列の遺伝子産物が複製欠損アデノウイルスベクターの欠損の全部を補完するという核酸配列を含む必要はない。複製欠損アデノウイルスベクターにおいて欠く1つまたは複数の複製必須遺伝子機能が、ヘルパーウイルス、例えば、複製欠損アデノウイルスベクターの複製に必要とされる1つまたは複数の必須遺伝子機能をトランスに供給するアデノウイルスベクターによって供給することができる。あるいは、本発明のアデノウイルスベクターは、本発明の複製欠損アデノウイルスベクターにおいて欠く1つまたは複数の複製必須遺伝子機能を補完する非天然複製必須遺伝子を含み得る。例えば、E1/E4欠損型アデノウイルスベクターは、異なるアデノウイルス(例えば、本発明のアデノウイルスベクターとは異なる血清型のアデノウイルス、または本発明のアデノウイルスベクターとは異なる種のアデノウイルス)から得られ、またはそれに由来するE4 ORF6をコードする核酸配列を含有するように操作することができる。
【0030】
本発明のアデノウイルスベクターは、ヒト無調ホモログ−1(Hath1)タンパク質をコードする核酸配列を含む。Hath1は、無調関連因子である。無調関連因子は、耳において支持細胞を感覚有毛細胞へ分化転換する、塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックス(bHLH)ファミリーの転写因子のタンパク質である。そのタンパク質の塩基性ドメインは、DNA結合およびタンパク質機能に関与する。無調関連因子は、様々な動物および昆虫に見出され、それには、マウス(マウス無調ホモログ−1(Math1))、ニワトリ(ニワトリ無調ホモログ−1(Cath1))、アフリカツメガエル(アフリカツメガエル無調ホモログ−1(Xath1))、およびヒト(ヒト無調ホモログ−1(Hath1))が挙げられる。Math1およびHath1のような無調関連タンパク質は、有毛細胞発生に必須であることが示されており、耳において有毛細胞再生を刺激することができる(例えば、Groves et al., Annu. Rev. Neurosci., 36: 361-381 (2013)参照)。Hath1は、例えば、Ben-Arie et al., Human Molecular Genetics, 5, 1207-1216 (1996);ならびに Mulvaney, J. and Dabdoub, A, J. Assoc. Res. Otolaryngol., 13(3): 281-289 (2012)において、さらに特徴づけられ、無調関連因子は、一般的に、国際特許出願第00/73764号パンフレットに記載されている。
【0031】
Hath1核酸およびアミノ酸配列は、例えば、それぞれ、GenBank受託番号U61148(GI No.1575354)およびAAB41305.1(GI No.1575355)として公的に入手可能である。好ましくは、本発明のアデノウイルスベクターは、Hath1タンパク質をコードする配列番号1を含む核酸配列を含む。
【0032】
Hath1タンパク質をコードする核酸配列は配列番号1を含むが、その核酸配列の多くの改変および変異(例えば、突然変異)が、本発明に関して、可能であり、かつ適切である。無調関連因子の機能は、そのタンパク質のヘリックス−ループ−ヘリックス(HLH)部分、特にHLHドメインの塩基性領域に依存すると考えられている(Chienら, Proc. Natl. Acad. Sci., 93, 13239-13244 (1996))。したがって、Hath1タンパク質をコードする核酸配列の任意の改変は、望ましくは、Hath1タンパク質の機能が保持または増強されるように、そのタンパク質の塩基性ドメインの外側に位置する。
【0033】
Hath1タンパク質をコードする核酸配列に加えて、本発明のアデノウイルスベクターは、好ましくは、宿主細胞において核酸配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、配列内リボソーム進入部位(IRES)などの発現制御配列を含む。例示的な発現制御配列は当技術分野において知られており、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, California (1990)に記載されている。理想的には、Hath1コード核酸配列は、プロモーターおよびポリアデニル化配列へ作動可能に連結されている。プロモーターは、望ましくは、組織特異的プロモーター、すなわち、所定の組織において優先的に活性化され、その結果として、それが活性化された組織において遺伝子産物の発現を生じるプロモーターである。本発明のアデノウイルスベクターに用いられる組織特異的プロモーターは、Hath1コード核酸配列が発現することになっている標的組織または細胞型に基づいて選択することができる。本発明のアデノウイルスベクターに用いられる好ましい組織特異的プロモーターは、支持細胞または感覚有毛細胞に特異的である。有毛細胞において特異的に活性化される組織特異的プロモーターには、例えば、無調プロモーターまたはミオシンVIIaプロモーターが挙げられる。支持細胞において特異的に活性化される組織特異的プロモーターには、例えば、hes−1プロモーターおよびヒトグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターが挙げられる。好ましい実施形態において、プロモーターは、配列番号2を含むヒトGFAPプロモーターである。ヒトGFAPタンパク質は、中枢神経系のアストロサイト、非ミエリン形成シュワン細胞、および他の選ばれた細胞型において主に発現する可溶性構造タンパク質である。内耳の解剖学的形態内において、GFAP発現は、主に、その感覚器官の支持細胞(すなわち、コルチ器官のダイテルス細胞および指骨細胞、管膨大部内に位置する細胞、ならびに卵形嚢/球形嚢班における分水嶺外領域の支持細胞)に制限される。
【0034】
本発明に用いることができる組織特異的プロモーターの他の例には、BRN.3Cプロモーター、BRN 3.1プロモーター、POU ORF3因子プロモーター、BRK1プロモーター、BRK3プロモーター、コーディンプロモーター、ノギンプロモーター、ジャギド1プロモーター、ジャギド2プロモーター、およびノッチ1プロモーターが挙げられる。
【0035】
タンパク質産生を最適化するために、Hath1コード核酸配列はさらに、Hath1コード配列の下流にポリアデニル化配列を含む。任意の適切なポリアデニル化配列を用いることができ、それには、合成の最適化された配列、ならびにウシ成長ホルモン(BGH)、ポリオーマウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、およびウシパピローマウイルス(BPV)のポリアデニル化配列が挙げられる。ポリアデニル化配列は、好ましくは、サルウイルス40(SV40)初期RNA産物についてのポリアデニル化配列である、SV40初期ポリアデニル化配列である(例えば、Carswell, S. and Alwine, J.C., Mol. Cell. Biol., 9(10): 4248-4258 (1989)参照)。プロモーターおよびポリアデニル化配列に加えて、Hath1をコードする核酸配列は、望ましくは、その核酸配列が、それが導入される細胞において適切に発現するように正しく配置された適切な転写シグナル(および必要に応じて、翻訳シグナル)の全部を含む。望ましい場合には、核酸配列はまた、mRNA産生を促進するためにスプライス部位(すなわち、スプライス受容部位およびスプライス供与部位)を組み入れることができる。
【0036】
組織特異的プロモーター、Hath1タンパク質をコードする核酸配列、およびSV40初期ポリアデニル化配列は、アデノウイルスベクターの産生が妨害されず、かつHath1コード核酸配列が宿主細胞において効率的に発現する限り、任意の適切な配向で本発明のアデノウイルスベクター内に位置することができる。一般的に、プロモーターは、Hath1コード核酸配列の上流に位置し、SV40初期ポリアデニル化配列は、Hath1コード核酸配列の下流に位置する。一実施形態において、アデノウイルスベクターは、以下のように、アデノウイルスゲノムに対して5’から3’へ順に前述のエレメントを含み得る:組織特異的プロモーター(例えば、ヒトGFAPプロモーター)、Hath1タンパク質をコードする核酸配列、およびSV40初期ポリアデニル化配列。あるいは、アデノウイルスベクターは、以下のように、アデノウイルスゲノムに対して3’から5’へ順に前述のエレメントを含み得る:SV40初期ポリアデニル化配列、Hath1タンパク質をコードする核酸配列、および組織特異的プロモーター(例えば、ヒトGFAPプロモーター)。Hath1タンパク質をコードする核酸配列、加えて、それに作動的に連結された、組織特異的プロモーターおよびSV40初期ポリ(a)配列は、その位置における挿入がアデノウイルスベクター粒子の形成を許容する限り、アデノウイルスゲノムにおいて任意の位置に挿入することができる。好ましくは、Hath1コード核酸配列は、アデノウイルスゲノムのE1領域またはE4領域に位置する。好ましい実施形態において、アデノウイルスゲノムのE1領域が、アデノウイルスゲノムに対して3’から5’へ順に、SV40初期ポリアデニル化配列、Hath1タンパク質をコードする核酸配列、およびヒトGFAPプロモーターに置き換えられる。
【0037】
本発明のアデノウイルスベクターは、例えば配列番号3の核酸配列を含み得る。
【0038】
本発明は、本明細書に記載されたアデノウイルスベクター、およびそのための担体(例えば、薬学的に許容される担体)を含む組成物を提供する。組成物は、望ましくは、担体、好ましくは生理学的に(例えば、薬学的に)許容される担体、およびアデノウイルスベクターを含む、生理学的に許容される(例えば、薬学的に許容される)組成物である。本発明に関する範囲内で、任意の適切な担体を用いることができ、そのような担体は、当技術分野においてよく知られている。担体の選択は、一つには、組成物の特定の使用(例えば、動物への投与)、および組成物を投与するのに用いられる特定の方法により決定される。理想的には、複製欠損アデノウイルスベクターに関して、医薬組成物は、好ましくは、複製可能なアデノウイルスを含まない。医薬組成物は、任意選択で、無菌でもよい。
【0039】
適切な組成物には、抗酸化剤、バッファー、および静菌剤を含有することができる水性および非水性等張性滅菌溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含むことができる水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。組成物は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数回用量の密閉容器において提供することができ、使用直前の滅菌液体担体、例えば、水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存することができる。即席の溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。好ましくは、担体は、緩衝生理食塩水である。より好ましくは、アデノウイルスベクターは、投与前の損傷からアデノウイルスベクターを保護するように製剤化された組成物の一部である。例えば、組成物は、ガラス製品、シリンジ、または針などの、アデノウイルスベクターを調製し、保存し、または投与するために用いられるデバイスにおいて、アデノウイルスベクターの損失を低下させるように製剤化することができる。組成物は、アデノウイルスベクターの光感受性および/または温度感受性を減少させるように製剤化することができる。この目的を達成するために、組成物は、好ましくは、例えば上記のものなどの、薬学的に許容される液体担体、およびポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される安定化剤を含む。そのような組成物の使用は、アデノウイルスベクターの保存可能期間を延ばし、それの投与を容易にする。アデノウイルスベクター含有組成物のための製剤は、例えば、米国特許第6,225,289号明細書、米国特許第6,514,943号明細書、および国際特許出願公開第2000/034444号パンフレットにさらに記載されている。
【0040】
組成物はまた、形質導入効率を増強するように製剤化することができる。加えて、当業者は、アデノウイルスベクターが、他の治療剤または生物学的活性物質と共に組成物中に存在し得ることを認識しているだろう。例えば、イブプロフェンまたはステロイドなどの炎症を制御する因子は、アデノウイルスベクターのインビボ投与に伴う腫脹および炎症を低減するために、組成物の一部でもよい。抗生物質、すなわち、殺菌剤および抗真菌剤は、既存の感染を処置し、および/または遺伝子移入手順に伴う感染などの将来的な感染のリスクを低下させるために存在し得る。
【0041】
本発明はまた、必要とするヒトの内耳に感覚細胞を発生させる方法を提供する。この方法は、本明細書に記載された本発明のアデノウイルスベクターを含む組成物を投与するステップを含み、その際、Hath1タンパク質をコードする核酸配列が発現し、内耳における感覚細胞が発生する。本明細書で用いられる場合、用語「処置」、「処置すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。好ましくは、効果は、治療的であり、すなわち、その効果が、疾患、および/または疾患に起因し得る有害症状を部分的に、または完全に治癒させる。この目的を達成するために、本発明の方法は、「治療有効量」の組成物をヒトに投与するステップを含む。「治療有効量」は、所望の治療的結果を達成するのに、必要な投薬回数および期間において、有効な量を指す。治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する本発明のアデノウイルスベクターの能力などの因子によって変わり得る。例えば、本発明の組成物の治療有効量は、ヒトにおいて難聴または平衡障害を処置するレベルでのHath1タンパク質の発現を生じる量である。
【0042】
あるいは、薬理学的および/または生理学的効果は、予防的であり得、すなわち、その効果は、疾患またはその症状を完全に、または部分的に防ぐ。この点において、本発明の方法は、本発明のアデノウイルスベクターを含む組成物の「予防有効量」を投与するステップを含む。「予防有効量」は、所望の予防的結果(例えば、疾患発生の防止)を達成するのに、必要な投薬回数および期間において、有効な量を指す。治療的または予防的効力は、処置された患者の定期的アセスメントによってモニターすることができる。
【0043】
適切な用量および投与計画は、当業者に知られた通常の範囲発見技法によって決定することができる。望ましくは、アデノウイルスベクターの単回用量は、アデノウイルスベクターの約1×10個以上の粒子(粒子単位(pu)とも呼ばれる)、例えば、アデノウイルスベクターの約1×10個以上の粒子、約1×10個以上の粒子、約1×10個以上の粒子、約1×10個以上の粒子、または約3×10個以上の粒子を含む。代替として、または追加として、アデノウイルスベクターの単回用量は、アデノウイルスベクターの約3×1014個以下の粒子、例えば、アデノウイルスベクターの約1×1013個以下の粒子、約1×1012個以下の粒子、約3×1011個以下の粒子、約1×1011個以下の粒子、約1×1010個以下の粒子、または約1×10個以下の粒子を含む。したがって、アデノウイルスベクターの単回用量は、前述の値のいずれか2つによって規定される範囲でのアデノウイルスベクターの粒子の量を含み得る。例えば、アデノウイルスベクターの単回用量は、アデノウイルスベクターの1×10〜1×1014個の粒子、1×10〜1×1012個の粒子、1×10〜1×1011個の粒子、3×10〜3×1011個の粒子、1×10〜1×1012個の粒子、1×10〜1×1011個の粒子、1×10〜1×1010個の粒子、または1×1010〜1×1012個の粒子を含み得る。言い換えれば、アデノウイルスベクターの単回用量は、例えば、アデノウイルスベクターの約1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、3×10pu、4×10pu、1×10pu、2×10pu、3×10pu、4×10pu、1×1010pu、2×1010pu、3×1010pu、4×1010pu、1×1011pu、2×1011pu、3×1011pu、4×1011pu、1×1012pu、2×1012pu、3×1012pu、または4×1012puを含み得る。もちろん、他の投与経路は、治療的効果を達成するのにより少ない、またはより多い用量を必要とする可能性がある。投薬量および投与経路の任意の必要な変更は、当技術分野において公知の日常的技術を用いて、当業者により決定され得る。
【0044】
内耳の構造の内部空間は限られている。内耳構造へ直接投与される医薬組成物の体積は、過剰な組成物を強いることは感覚上皮を損傷することになるので、注意深くモニターすべきである。ヒト患者について、投与される体積は、好ましくは、組成物の約1μl〜約500μl(例えば、約10μlから約400μlまで)である。例えば、約10μlから約200μlまで(例えば、約15μl、20μl、30μl、40μl、50μl、60μl、70μl、80μl、90μl、100μl、125μl、150μl、175μl、または前述の値のいずれか2つによって規定される範囲)の組成物を投与することができる。一実施形態において、内耳構造、例えば、蝸牛または半規管の全液体内容物は、医薬組成物で置き換えられる。別の実施形態において、本発明の方法の発現ベクターを含む医薬組成物が、内耳構造へ、機械的外傷が最小化されるように、ゆっくり放出される。
【0045】
本発明の方法の一実施形態において、Hath1をコードするアデノウイルスベクターを含む組成物は、望ましくは、所定の処置期間の間、ヒトの内耳へ1回だけ投与される。言い換えれば、本発明の方法は、単回用量の本発明のアデノウイルスベクターのヒトの内耳への投与を含む。他の実施形態において、組成物を、ヒトの内耳へ2回以上(すなわち、複数回)投与することが有利な場合がある。したがって、本発明は、ヒトの内耳への2回以上の用量の本発明のアデノウイルスベクターの投与を提供する。例えば、本発明のアデノウイルスベクターを含む組成物は、同じ耳へ少なくとも2回、投与することができる。組成物が、ヒトの内耳へ複数回、投与される場合、組成物の最初およびその次の投与に対するヒトの応答に依存して、各投与は、何日間、何週間、何カ月間、またはさらに何年間、隔てられ得る。例えば、複数回投与は、約1週間〜約4週間(例えば、2週間または3週間)、または約30日間〜約90日間(例えば、約40日間、約50日間、約60日間、約70日間、約80日間、または前述の値のいずれか2つによって規定される範囲)、隔てられ得る。しかしながら、組成物の複数回投与(例えば、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上の投与)は、Hath1タンパク質をコードする核酸配列が十分発現し、かつ内耳における感覚細胞が発生する限り、任意の適切な日数(例えば、投薬間に2日間、7日間、10日間、14日間、21日間、28日間、35日間、42日間、49日間、56日間、63日間、70日間、77日間、85日間、またはそれ以上)、月数(例えば、投薬間に1カ月間、3カ月間、6カ月間、または9カ月間)、または年数(例えば、投薬間に1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、またはそれ以上)、隔てられ得る。
【0046】
組成物は、望ましくは、難聴および平衡障害などの内耳における感覚有毛細胞の損失、損傷、または欠如に伴う障害を処置するためにヒトに投与される。この点において、組成物は、難聴もしくは平衡障害を患っているヒト、または難聴と平衡障害の両方を患っているヒトに投与することができる。難聴は、細菌またはウイルス感染、遺伝、物理的傷害、音響外傷などによるコルチ器官の有毛細胞の損傷によって引き起こされ得る。難聴は容易に同定されるが、平衡障害は、他の病気に簡単に起因して、幅広い種類の合併症として現れる。平衡障害の症状には、失見当識、めまい、回転性めまい、悪心、霧視、不器用、および高頻度の転倒が挙げられる。本発明の方法によって処置される平衡障害は、好ましくは、感覚有毛細胞の損傷または欠如による機械的刺激の神経インパルスへの機能障害性変換を含む末梢前庭障害(すなわち、前庭器の妨害)を含む。実施形態において、組成物は、重度〜最重度の両側性難聴を処置するためにヒトに投与される。
【0047】
組成物は、当技術分野において知られた任意の適切な方法を用いて、ヒトの内耳に投与することができる。ヒトにおける内耳は、2つの主要な部分:(a)聴覚専用の蝸牛、および(b)平衡専用の前庭系を含む通路の系である骨迷路で構成されている。組成物は望ましくは、蝸牛もしくは前庭系に、または蝸牛と前庭系の両方に投与される。投与経路を問わず、本発明のアデノウイルスベクターは、内耳の感覚上皮、例えば、蝸牛および/または前庭系の感覚上皮に到達しなければならない。したがって、最も直接的な投与経路は、内耳の構造の内部へのアクセスを可能にする外科的手順を必要とする。蝸牛開窓術(cochleostomy)による接種は、聴覚に関連した内耳の領域に直接的な発現ベクターの投与を可能にする。蝸牛開窓術は、例えばKawamoto et al., Molecular Therapy, 4(6), 575-585 (2001)に記載されているようにアブミ骨動脈の下の耳嚢において、蝸牛壁に穴を開けること、およびアデノウイルスベクターを含む組成物の放出を含む。内リンパコンパートメントへの投与は、聴覚に関与する内耳の部位に組成物を投与するのに特に有用である。あるいは、組成物は、管開窓術(canalostomy)により半規管に投与することができる。管開窓術は、前庭系および蝸牛における導入遺伝子発現を提供するが、蝸牛開窓術は、前庭空間における効率的な形質導入として提供するものではない。蝸牛空間への直接的注射が有毛細胞への機械的損傷を生じ得るため、管開窓術を用いると、蝸牛機能への損傷のリスクは低下する(Kawamoto et al.、前記)。投与手順はまた、液体(例えば、人工的外リンパ)の下で実施することができ、その液体は、アポトーシス阻害剤または抗炎症薬などの、処置または投与手順の副作用を軽減するための因子を含むことができる。
【0048】
内耳への別の直接的投与経路は、正円窓を通して、正円窓への注射かまたは局所的適用のいずれかによる。正円窓を介しての投与は、アデノウイルスベクターを外リンパ空間へ送達するのに特に好ましい。蝸牛および前庭のニューロンならびに蝸牛感覚上皮における導入遺伝子発現が、正円窓を介しての発現ベクターの投与後に観察されている(Staecker et al., Acta Otolaryngol, 121, 157-163 (2001))。別の実施形態において、組成物は、外リンパ空間へ組成物を送達するために、卵円窓を通しての迷路内(IL)注入により内耳に投与することができる。ある特定の場合には、支持細胞のアデノウイルスベクターへの十分な曝露を確実にするために、複数回の適用を施し、および/または複数の経路を用いること、例えば、管開窓術および蝸牛開窓術を用いることが、適切となり得る。本発明の組成物の内耳への特に好ましい送達方法は、例えば、米国特許第7,387,614号明細書に記載されている。
【0049】
本発明のアデノウイルスベクターを含む組成物は、スポンジ、網、機械的リザーバもしくはポンプ、または機械的インプラントなどの、アデノウイルスベクターの制御放出または持続放出を可能にするデバイス中、またはデバイス上に存在することができる。例えば、(Jero et al., Hum. Gene Ther., 12: 539-548 (2001)に記載されているように)アデノウイルスベクターを含む組成物中に浸された生体適合性スポンジまたはゲルフォームを、正円窓に隣接して置くことができ、その正円窓を通して、発現ベクターが浸透して、蝸牛に達する。別の実施形態において、ミニ浸透圧ポンプを用いて、長期間(例えば、5〜7日間)にわたってアデノウイルスベクターの持続放出を提供することができ、それにより、アデノウイルスベクターを含む低体積の組成物が投与されることを可能にし、そのことは、内因性感覚細胞への機械的損傷を防ぐことができる。組成物はまた、例えば、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、テレフタル酸ビス−2−ヒドロキシエチル(BHET)などのポリホスホエステル、または乳酸−グリコール酸共重合体を含む持続放出製剤(例えば、米国特許第5,378,475号明細書参照)の形で投与することができる。
【0050】
好ましくはないが、本発明のアデノウイルスベクターを含む組成物は、非経口的に、筋肉内に、静脈内に、または腹腔内に投与することができる。患者に非経口的に投与される場合には、アデノウイルスベクターは、望ましくは、支持細胞などの感覚上皮細胞へ特異的に向けられる。例えば、アデノウイルスベクターは、外因性有毛細胞の発生を促進して、損傷した内因性有毛細胞に置き換わるように、瘢痕感覚上皮に向けることができる。アデノウイルスベクターは、突起(fiber)、ペントン、またはヘキソンの領域を除去すること、様々な天然または非天然のリガンドをコートタンパク質の部分へ挿入することなどにより、潜在的宿主細胞上の受容体に対する発現ベクターの結合特異性または認識を変化させるように改変することができる。当業者は、非経口投与が、適切な宿主細胞へ発現ベクターを効果的に送達するために大量の用量または複数回の投与を必要とし得ることを認識しているだろう。
【0051】
一実施形態において、本発明の方法は、約20μLから90μLの間を含む単回用量の(アデノウイルスベクターの5.0×1011粒子(vp)/mLの濃度での)本発明の組成物をヒトへ迷路内(IL)注入によって投与することを含む。
【0052】
一実施形態において、本発明の方法は、約20μLから90μLの間を含む単回用量の(アデノウイルスベクターの5.0×1011粒子(vp)/mLの濃度での)本発明の組成物をヒトへ、約10μL/分から約20μL/分の間の注入速度での迷路内(IL)注入によって投与することを含む。
【0053】
本発明の方法は、他の治療様式を含む処置計画の一部となり得る。例えば、本発明の方法は、1つまたは複数の薬物または手術で処置された、処置されることになっている、または処置されるだろうヒトに実施することができる。加えて、本発明の方法は、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、E2F、および細胞周期上方制御因子などの、内耳における支持細胞の増殖を誘導する増殖剤と共に用いることができる。本発明の方法はまた、人工内耳(cochlear implant)などの聴覚装置の埋め込みと共に実施することができる。
【0054】
内耳における感覚細胞(例えば、有毛細胞)の発生は、当技術分野において知られた様々な手段を用いて決定することができる。例えば、感覚有毛細胞は、走査電子顕微鏡により、または(免疫化学法により検出される有毛細胞特異的タンパク質である)ミオシンVIIaの検出により、検出することができる。しかしながら、感覚有毛細胞の単なる存在は、必ずしも、環境的刺激を認識するための機能システムを意味するわけではない。機能的感覚細胞は、機械的刺激が、脳によって認識される神経インパルスへ変換されるように、神経路へ作動可能に繋がれなければならない。したがって、有毛細胞発生の検出は、Hath1コード核酸配列の標的組織への発現の成功を決定するのに適切であるが、感覚細胞の発生は、好ましくは、ヒト対象による知覚の向上をもたらす。この点において、対象自覚の試験は、知覚の変化の指標である。
【0055】
音を検出する対象の能力の変化は、聴覚学者によって一般的に実施されるトーンテストなどの単純な聴覚検査の実施によってアセスメントすることができる。たいていの哺乳類において、異なる周波数に対する反応は、知覚の変化を示す。ヒトにおいて、言語の理解もまた適切である。例えば、対象が、話を理解することができないが、聴くことはできる。知覚の変化は、言語を背景雑音から識別することなどの音刺激の異なる型を区別する能力、および話を理解することにより、示される。語音聴取閾値検査および弁別試験がそのような評価に有用である。
【0056】
平衡、運動認知、および/または運動刺激に対する応答のタイミングの変化の評価もまた、様々な技術を用いて達成することができる。前庭機能は、運動刺激に対する応答の大きさ(利得)、または応答の開始のタイミング(位相)を比較することにより測定することができる。動物は、知覚の向上を評価するために強膜サーチコイルを用いて、前庭動眼反射(VOR)利得および位相について試験することができる。電気眼振検査(ENG)は、例えば、移動または点滅光、身体整復、半規管内部の流体運動などの刺激に応答した眼球運動を記録する。回転椅子または動く歩道を用いた運動の間の平衡の評価もまた、これに関して有用である。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、多少なりともその範囲を限定するものとは解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0058】
この実施例は、本発明の血清型5型アデノウイルスベクターを作製する方法を示す。
【0059】
E1、E3、およびE4領域の欠失を含み、かつHath1タンパク質をコードする血清型5型アデノウイルスゲノムを含むアデノウイルスベクターを、例えば、米国特許第6,475,757号明細書に記載されたADFAST(商標)プロトコールを用いて構築した。ADFAST(商標)手順を用いて、血清型5型アデノウイルスベクターゲノム全体をコードするプラスミドを構築した。最終ベクターゲノムの単一の遺伝的クローンの単離を、細菌における2つの連続的コロニー成長ステップにより達成した。このAdFAST(商標)プラスミドを、アデノウイルスベクター成長のために補完する哺乳類細胞への導入におけるウイルスベクターへ変換した。その後、アデノウイルスベクターストックを作製するために、連続継代による増殖を続いて実施した。Hath1発現血清型5型アデノウイルスベクターを構築するためのステップは、下記に要約されている。
【0060】
プラスミドの構築
pAd3511gfa2.HATH1.svと表示されるプラスミドを、制限酵素で消化し、GFAP.HATH1発現カセットをゲル抽出した。E1、E3、およびE4領域における欠失、ならびにSV40のポリ(A)と転写終結配列、β−グルクロニダーゼ遺伝子、およびウシ成長ホルモン遺伝子(BGH)のポリ(A)と転写終結配列を含有する転写不活性スペーサーを有する血清型5型アデノウイルスゲノムを含む基本プラスミド(pAdE1(BN)E3(10)E4(TIS1)と表示される)を直線化し、精製した。pAdE1(BN)E3(10)E4(TIS1)プラスミドを、大腸菌(E. coli)においてGFAP.HATH1発現カセットと相同組換えして、プラスミドpAdE1(GFAP.Hath1)E3(10)E4(TIS1)を得た。
【0061】
完全長アデノウイルスベクタープラスミドのクローン性を確実にするために、pAdE1(GFAP.Hath1)E3(10)E4(TIS1) ADFAST(商標)プラスミドDNAの一定分量を用いて、限界段階希釈によりDH10B大腸菌(E. coli)を形質転換した。明確に規定され、かつ単離されたコロニーを、最少コロニーを含有する最大希釈のプレートから選択した。ミニプレッププラスミドDNAを調製し、RFLP分析によりプラスミド完全性を確認するために、HindIII+SpeIで消化した。陽性の対応するミニプレップDNAを用いて、別の一連の限界希釈物を作製し、その後、それを用いてDH10B大腸菌(E. coli)を形質転換した。最少コロニーを含有するプレート上の単一コロニーからの液体培養物の一定分量を用いて、ミニプレップDNAを作製し、それについて、ApaIを用いて、プラスミド完全性をさらに確認した。陽性クローンの残りの液体培養物を用いて、LB−カナマイシンプレートに画線した。HISPEED(商標)プラスミドMaxiキット(Qiagen、Venlo、The Netherlands)によるEndoFree ADFAST(商標)プラスミドDNAの調製のために製造会社のプロトコールに従って、単一の細菌形質転換体を増殖した。生じたプラスミド調製物を、BglI、EcoRV、HindIII、KpnI、およびBamHI+PacI制限酵素消化により確認した。pAdE1(GFAP.Hath1)E3(10)E4(TIS1)のマップは図1に示されている。その後、pAdE1(GFAP.Hath1)E3(10)E4(TIS1)のDNA配列を決定した。
【0062】
ベクター変換
18μgの内毒素を含まないpAdE1(GFAP.HATH1)E3(10)E4(TIS1)を、PacI制限エンドヌクレアーゼを含む300μL中で消化し、フェノールクロロホルムイソアミルアルコール(PCI)により精製した。簡単に述べれば、100uLのPCIを制限反応物に加え、激しい反転により混合し、微量遠心管中、13,000RPMで2分間、回転させ、上部の水相を新しいチューブに移した。30μL(0.1体積)の5M NaClおよび800μLの無水エタノールの添加によりDNAを沈殿させ、氷上で10分間、インキュベートし、その後、微量遠心管中、13,000RPMで10分間、回転させ、上清をデカントした。ペレットを、500μLの70%エタノールで洗浄し、遠心分離し、上記のようにデカントし、DNAペレットを風乾した。DNAを30μL TE中に再懸濁し、DNA濃度を、260nmでの吸光度によって決定した。293−ORF6細胞に、4μgのPacI消化および精製されたDNAを、POLYFECT(商標)試薬(Qiagen、Venlo、The Netherlands)を用いて、トランスフェクションし、37℃、5%COで、3日間、インキュベートした。(3サイクルの凍結融解により生じた)トランスフェクション可溶化液を用いて連続継代を開始し、高力価の可溶化液が生じた。PCRによる確認後、その高力価の可溶化液を用いて、AdGFAP.HATH1.11Dアデノベクターを増加させた。
【0063】
AdGFAP.HATH1.11Dアデノウイルスベクターの構築
GV501A(そのマップは図2に示されている)およびCGF166とも呼ばれる、アデノウイルスベクターAdGFAP.HATH1.11Dを構築するために、ADFAST(商標)プラスミドpAdE1(GFAP.HATH1)E3(10)E4(TIS1)を、制限エンドヌクレアーゼPacIで消化し、標準手順を用いて293−ORF6細胞へトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞由来のアデノベクター可溶化液を、5回、連続継代して、AdGFAP.HATH1.11D/GV501A可溶化液の力価および体積を増加させ、高力価(HT2)ストックを作製した。GV501Aトランスフェクションおよび構築に用いられる293−ORF6細胞を、他の活性からの隔離を保証するために、アクセスを制限した細胞培養室において維持した。加えて、AdGFAP.HATH1.11D/GV501Aのトランスフェクション、連続継代、および産生を、隔離およびアクセスの制限を維持する手順の下、隔離したウイルス培養室において行った。AdGFAP.HATH1.11D/GV501Aベクターの同定および完全性を、HT2継代時点でPCR分析により確認した。その後、HT2可溶化液を用いて、アデノベクターストック増量を生じさせた。
【0064】
Hath1導入遺伝子発現アッセイ
AdGFAP.HATH1.11Dベクターを、マウス卵形嚢モデルにおけるHATH1駆動性感覚細胞再生に基づいて、機能的導入遺伝子発現について認証した。この実験の結果は、AdGFAP.HATH1.11Dベクターが、感覚細胞再生を誘導する能力があり、それゆえに、機能的HATH1タンパク質を産生することを示した。加えて、AdGFAP.HATH1.11Dを、改変型Hath1 mRNA発現アッセイを用いて、Hath1導入遺伝子mRNAの発現について試験した。アッセイは、293細胞をAdGFAP.HATH1.11Dに感染させ、感染から24時間後、全RNAを単離することを含んだ。Hath1特異的mRNA発現を、半定量的RT−PCR方法によって測定した。このアッセイの結果は、観察されたそのRNA/DNAおよびDNAのみのプライマーおよびプローブに基づいたHath1発現の証拠を示した。
【0065】
この実施例の結果は、E1領域およびE4領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失しており、かつSV40初期ポリアデニル化配列、ヒトGFAPプロモーターに作動可能に連結されたHath1コード核酸配列、および転写不活性スペーサー(TIS)を含む血清型5型アデノウイルスベクターの生成を確認している。
【実施例2】
【0066】
この実施例は、ヒトにおいて聴覚および前庭機能を向上させるために迷路内(IL)注入により送達されたCGF166(AdGFAP.HATH1.11D)の安全性、耐容性、および潜在能力を評価するために設計された臨床試験を記載する。
【0067】
臨床治験は、重度〜最重度の両側性難聴を有し、手術をしない耳において無傷の前庭機能を有する患者における、非盲検、単回用量、系列的コホートを利用する3パート試験である。患者は、登録前に、非変動性の重度〜最重度両側性難聴を立証されていることが必要とされる。最大45人の患者が、この3パート、6つのコホートの治験に登録され得る。
【0068】
治験のパートAは、20μL CGF166濃度(5.0×1011個のウイルス粒子(vp)/mL)の単回IL投与後の安全性および耐容性、ならびに潜在能力をアセスメントすることになる。処置された各患者の後(処置後約4週間)、次の各患者に投薬する前に、安全性データ審査が完了することができるように、患者登録はずらされる。
【0069】
治験のパートBは、4つのコホートの患者(n=3/コホート;合計12人の患者)において同じCGF166濃度(5.0×1011vp/mL)の最高4つの考え得る注入体積(20μLから90μLn間)を評価するための体積漸増設計を含む。全ての用量体積は、治験安全性データに基づいて変更を受けることになる。
【0070】
次の各コホートは、前のコホートにおいて送達された体積が、安全審査委員会(Safety Review Committee)(SRC)によって決定される場合、安全で、かつ耐容性があるとみなされた後のみ、投薬される。加えて、各コホートにおける最初の患者のスケジューリングおよび投薬は、各コホートにおいて残りの2人の患者を処置することの間に少なくとも4週間の間隔を置くようにずらされる。
【0071】
パートBにおいて決定された、安全性および耐容性が最も高い体積が、パートCの患者におけるIL注入に用いられる。合計20人の患者が、本研究のパートCに必要とされる。パートAおよびBについて記載されたものと類似した安全性審査が、5人の被験者の1ブロックが、最初の4週間の研究アセスメントを完了するたびに、行われる。
【0072】
患者は、治験の全てのパート(A〜C)において、プロトコールに必要な同じアセスメントおよび来院スケジュールを受けることになる。試験のパートCは、予備的安全性および耐容性が、パートAおよびBにおける患者において、CGF166および関連した送達方法について確立された時点でのみ、開始する。
【0073】
治験期間は、63日のスクリーニング期間、続いて、1〜3日のベースラインアセスメント期間および院内外科的投薬/手術後アセスメント期間(およそ6〜14日間)、続いて投薬後6カ月のアセスメント期間からなる。加えて、パートA〜Cにおける全ての投薬された被験者は、別個の5年の安全性追跡調査治験に登録する機会に関して通知される。
【0074】
スクリーニング期間の間、潜在的患者の適格性が、治験センターにおいて検証される。
【0075】
潜在的患者は、健康診断、MRI、既往歴/現病歴、および臨床検査に基づいて、プロトコールに必要な手術を受ける前に、計画された治療に対する適応度について評価される。スクリーニング期間の間、潜在的患者はまた、処置前の、生活の質、聴覚、および前庭機能の試験を受ける。
【0076】
要求される検証およびアセスメントを完了するために、スクリーニング期間の間の少なくとも2回の外来が見込まれる。全てのスクリーニングアセスメントが、1回の来院で完了することができる場合には、それは認められる。患者および診療所のスケジュール、ならびに再検証および可能性のある再検査の必要性の結果が出るまで、追加のスクリーニング外来(すなわち、2回より多い来院)が許可される。
【0077】
スクリーニングアセスメントに基づいて、一方の耳が治験対象耳として選択され、試験によって要求される手術を受ける。治験対象耳の選択基準は以下を含む:(1)純音聴力検査および音声認識スコアにより決定される場合のより重度の難聴を有する耳、ならびに(2)両方の耳の難聴の重症度が等しい場合には、治験対象耳は、治験医師の好みによって選択される。
【0078】
スクリーニング来院を終了した時点で、適格患者は、ベースラインの来院および手術の予定が決定される。
【0079】
ベースライン(−3日目〜−1日目)
適格患者は、ベースライン(−3日目〜−1日目)において治験センターに戻り、手術前の準備、および処置前の機能アセスメントを受ける。
【0080】
1日目来院
1日目、治験対象患者は、プロトコールに必要なアセスメントを受け、内耳の前庭階外リンパ空間への治験薬の送達のためのアブミ骨切除術を受ける。手術および治験薬注入の完了時点において、治験対象患者は、外科センターの術後施設において回復し、手術後の評価およびアセスメントを受ける。治験対象患者は、外科センターの入院棟か、または外科センターに近い事前に決められた仮設住宅のいずれかに移動し得る。
【0081】
2日目〜6日目の来院
治験対象患者は、手術後の次の5日間(2日目〜6日目)、経過観察され、プロトコールに必要な安全性追跡評価を受ける。治験対象患者は、長期モニタリングを必要とする有意な有害事象がない場合には、自宅へ退院する。患者は、14日目の来院の終了まで、提供された住宅に留まるという選択肢を有する。その後の来院の予定は、退院する前に治験対象患者について決定される。
【0082】
14日目来院
治験対象患者は、治験センターに戻って、耳から外科用パッキングを取り除いてもらい、治験により要求されるアセスメントも受ける。患者は、全ての治験により要求される評価の終了時点に自宅または地元の民家へ退院する。患者は、次の予定された来院を教えてもらう。
【0083】
追跡調査および治験来院(4週間ごと)の終了
治験センターへの毎月の各来院の間、治験対象耳の術後回復が、モニターおよび評価される。治験対象患者はまた、各来院の間、治験により要求される安全性、生活の質、聴覚、および前庭機能の試験を受ける。体内分布血液試料もまた各来院の間に収集される。免疫原性試験のための試料は、血液ログの通りに収集される。術後6カ月目の来院の終了(治験来院の終わり)時点において、長期のモニタリングを必要とする有意な有害事象がない場合には、治験対象患者は、治験を完了したとみなされ、自宅へ退院する。
【0084】
全ての投薬された患者は、別個の延長/追跡調査治験に参加することが見込まれる。
【0085】
安全性データ審査
パートAにおける各患者(コホート1)に投薬する前、およびパートBにおける2人の残りの患者(コホート2〜5)に投薬する前に、全ての安全性および耐容性データの審査、ならびに選択された聴覚および前庭機能データの審査を行う。審査用としてみなされるデータは、SRC Charterに概要を示されているように、投薬後4週間まで入手可能なデータである。安全性および耐容性は、そのコホートにおける残りの患者について進めるために良好とアセスメントされなければならない。コホート2〜5について、残りの2人の患者に投薬するという決定は、SRCによってなされる。著しい有害事象または安全性の懸念が、計画された用量レベルの1つにおいて見出される場合には、次の計画される用量レベルは変更され得る。
【0086】
1つのコホートの終了の後で、かつ次のコホートへ進む前に、全ての安全性および耐容性データ、ならびに限定された聴覚および前庭データの審査は、CGF166の投薬を受け、かつ少なくとも4週間の治験アセスメントを完了している全ての患者について実施される。安全性および耐容性は、次のコホートへ進むために良好としてアセスメントされなければならない。この決定はSRCによってなされる。著しい有害事象または安全性の懸念が、計画された用量レベルの1つにおいて見出される場合には、次の計画される用量レベルは変更され得る。
【0087】
パートCについて、上記の安全性審査は、5人の被験者それぞれが治験アセスメントの最初の4週間を完了した時に、実施される。
【0088】
所見
パートA、B、およびCの下で20〜40μLの本発明の組成物で処置された最初の患者は、それぞれ、0〜3個の間の有害事象(全て、追跡調査の2〜6カ月間にわたって、軽度〜中等度として分類された)を報告している。中等度として分類された全ての事象を含む最も有害な事象は、本処置に関連するものではないと思われた。加えて、本組成物での処置後、検査値において臨床的に有意な変化はなかった。これらの結果は、本発明の組成物が、ヒトに投与された場合、安全であることを示している。
【0089】
この実施例は、ヒトにおいて難聴を処置するための本発明のアデノウイルスベクターの安全性および効力を評価するために設計された臨床プロトコールを記載する。
【0090】
本明細書に引用された、刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、あたかも各参考文献が、参照により組み入れられているように個々に、かつ具体的に示され、かつ本明細書に全体として示されているかのように、同じ程度で参照により本明細書に組み入れられている。
【0091】
本発明を記載することに関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「1つの(a)」、および「1つの(an)」、および「その(the)」、および「少なくとも1つの」の使用、ならびに類似した指示物は、本明細書において他に指示がなく、または文脈によって明らかに否定されることがない限り、その単数形と複数形の両方を網羅するように解釈されるものとする。後に1つまたは複数の項目のリストが続く、用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「AおよびBの少なくとも1つ」)は、本明細書において他に指示がなく、または文脈によって明らかに否定されることがない限り、列挙された項目から選択される1つの項目(AまたはB)、または列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(AおよびB)を意味するように解釈されるものとする。用語「含むこと(comprising)」、「有すること(having)」、「含むこと(including)」、および「含有すること(containing)」は、他に規定がない限り、制約がない用語(すなわち、「挙げられるが、それらに限定されない」ことを意味する)として解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で他に指示がない限り、その範囲内に入るそれぞれ別個の値を個々に参照する簡潔な方法としての役割を果たすことを単に意図され、それぞれ別個の値が、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書へ組み入れられる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書において他に指示がなく、または文脈によって明らかに否定されることがない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提供されたありとあらゆる例、または例示的な言いまわし(例えば、「などの(such as)」)の使用は、単に、本発明をより良く明らかにすることを意図され、他に主張がない限り、本発明の範囲に限定を与えるものではない。本明細書におけるいかなる言語も、任意の主張されていない要素を示す場合、本発明の実施に必須であると解釈されるべきではない。
【0092】
本発明を行うために本発明者らが知っている最良の様式を含め、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変更は、前述の説明を読めば、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が、必要に応じてそのような変更を採用することを予想しており、本発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載されたものとは異なったように実施されることを意図している。したがって、この本発明は、適用法によって認められているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての改変および等価物を含む。さらに、ありとあらゆる変更における上記の要素のいかなる組み合わせも、本明細書で他に指示がなく、または文脈によって明らかに否定されることがない限り、本発明に包含される。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1](a)VA RNA I領域において2塩基対が欠失していること、E1領域における内因性遺伝子を機能的欠損にするようにE1領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失していること、E3領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失していること、およびE4領域における内因性遺伝子を機能的欠損にするようにE4領域の1個または複数の内因性ヌクレオチドが欠失していることを例外とするが、右側の逆位末端反復(ITR)、E4領域ポリアデニル化配列、およびE4領域プロモーターが保持されている、血清型5型アデノウイルスゲノム、
(b)SV40初期ポリアデニル化配列、
(c)ヒト無調ホモログ−1(Hath1)タンパク質をコードし、配列番号1を含む核酸配列、
(d)ヒトグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ならびに
(e)転写不活性スペーサー(TIS)
を含むアデノウイルスベクターであって、エレメント(b)、(c)、および(d)が、アデノウイルスゲノムのE1領域においてアデノウイルスゲノムに対して3’から5’へ順に位置し、エレメント(e)が、アデノウイルスゲノムのE4領域において、E4ポリアデニル化配列とE4プロモーターの間に位置する、前記アデノウイルスベクター。
[2]アデノウイルスゲノムが、内因性プロモーターならびにE1AおよびE1B遺伝子のコード領域を含まない、[1]に記載のアデノウイルスベクター。
[3]アデノウイルスゲノムが、血清型5型アデノウイルスゲノムのE1領域の内因性ヌクレオチド356〜3510(両端を含む)を含まない、[2]に記載のアデノウイルスベクター。
[4]アデノウイルスゲノムが、血清型5型アデノウイルスゲノムのE3領域の内因性ヌクレオチド28,593〜30,471(両端を含む)を含まない、[1]〜[3]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクター。
[5]アデノウイルスゲノムがE4領域コード配列のいずれも含まない、[1]〜[4]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクター。
[6]アデノウイルスゲノムが、血清型5型アデノウイルスゲノムのE4領域の内因性ヌクレオチド32,827〜35,563(両端を含む)を含まない、[5]に記載のアデノウイルスベクター。
[7]VA RNA 1領域における2塩基対の欠失が、血清型5型アデノウイルスゲノムの内因性ヌクレオチド10,594および10,595の欠失である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクター。
[8]ヒトグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターが配列番号2を含む、[1]〜[7]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクター。
[9]転写不活性スペーサー(TIS)が、アデノウイルスゲノムに対して5’から3’へ順に、(i)サルウイルス40(SV40)由来のポリアデニル化(ポリ(A))配列および転写終結配列、(ii)β−グルクロニダーゼ遺伝子をコードする核酸配列、ならびに(iii)ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子由来のポリアデニル化(ポリ(A))配列および転写終結配列を含む、[1]〜[8]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクター。
[10]配列番号3の核酸配列を含む、[1]〜[9]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクター。
[11][1]〜[10]のいずれか一つに記載のアデノウイルスベクターおよび薬学的に許容される担体を含む組成物。
[12]必要とするヒトの内耳に感覚細胞を発生させる方法であって、[11]に記載の組成物を前記ヒトの内耳に投与するステップを含み、その際、Hath1タンパク質をコードする核酸配列が発現し、内耳における感覚細胞が発生する、前記方法。
[13]前記組成物が、難聴を患っているヒトに投与される、[12]に記載の方法。
[14]前記組成物が、平衡障害を患っているヒトに投与される、[12]に記載の方法。
[15]前記組成物が、前記ヒトの内耳に1回、投与される、[12]〜[14]のいずれか一つに記載の方法。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]