【文献】
Vascular Cell,2013年,Vol.5, No.8,pp.1-5,<doi:10.1186/2045-824X-5-8>
【文献】
The journal of clinical investigation,1999年12月,Vol.104, No.11,pp.1613-1620
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
糖尿病及び/又は肥満に罹患している対象における脳卒中の効果を低減させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を含み、ここで前記VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は
VEGF−Bに結合するか、又はVEGF−Bに特異的に結合し、かつ、VEGF−Bシグナル伝達を中和する、抗体可変領域を含むタンパク質である、
医薬組成物。
前記血栓溶解性化合物が、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ラノテプラーゼ、レテプラーゼ、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、デスモテプラーゼ及びウロキナーゼからなる群より選択される、請求項6〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
前記VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物が、VEGF−Bに対する前記抗体の可変領域のヒト化形態を含むタンパク質であるか、又は前記VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物が、VEGF−Bに対する前記抗体のヒト化形態である、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の製造において、本発明者らは、脳卒中、例えば虚血性脳卒中が承認されたマウスモデルにおけるVEGF−Bのシグナル伝達を阻害する効果を研究した。本発明者らは、脳卒中の誘発の前又は後に、VEGF−Bのアンタゴニスト(例えば、アンタゴニスト抗体)を投与することにより、この成長因子の効果を研究した。上述の研究に示唆されたことに反して、本発明者らは、脳卒中、例えば、梗塞サイズ、脳内出血スコア又は血液脳関門破壊の影響を軽減することができた。これは、脳卒中の発生を防止することとは異なる。本発明者らはまた、例えば、梗塞サイズ、出血(例えば、脳内出血)及び致死的出血の数を減少させることによって、脳卒中の血栓溶解療法の転帰を改善することもできた。本発明者らはまた、脳卒中後にVEGF−Bのアンタゴニスト(例えば、アンタゴニスト抗体)を投与することにより、血栓溶解剤が対象に安全に投与され得る時間が延長されることも示した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らの知見は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害することによって対象における脳卒中の影響を低減する方法の基礎を提供する。この知見はまた、VEGF−Bシグナル伝達を阻害することによって対象における脳卒中の効果の予防又は治療方法の基礎を提供する。
【0017】
例えば、本開示は、対象における脳卒中の効果を低減させる方法を提供するものであって、該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を対象に投与することを含む。
【0018】
本発明者らは、脳卒中を患った対象における出血の発生率を低下させることができることも見出した。従って、本開示は、脳卒中に罹患した対象における出血の発生率を低下させる方法をさらに提供するものであって、該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を投与することを含む。一例では、該方法はさらに、血栓溶解性化合物を投与することを含む。
【0019】
この知見はまた、出血、例えば脳出血を予防するために、脳卒中を患っている対象の治療を継続する、又は開始する方法の基礎を提供するものであり、該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を投与することを含む。例えば、対象は、出血、例えば、脳内出血のリスクを低減するか、又は予防するために、本明細書に開示された方法を実施した後に、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物で再治療され得る。
【0020】
本発明者らは、脳卒中に罹患した対象における致死的出血の可能性を減少させることができることも見出した。従って、本開示は、脳卒中に罹患した対象における致死的出血の可能性を低減する方法をさらに提供するものであって、該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を投与することを含む。一例では、該方法はさらに、血栓溶解性化合物を投与することを含む。
【0021】
本発明者らはまた、それらが血液脳関門の損傷又は漏出を減少させることができることを見出した。従って、本発明者らはまた、血液脳関門破壊又は漏出を予防するための方法を提供し、該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を投与することを含む。一例では、血液脳関門の損傷又は漏出は浮腫と関連する。一例では、血液脳関門の損傷又は漏出は、傷害(insult)、例えば外傷及び/又は虚血によって引き起こされる。
【0022】
本明細書中に記載される任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中の前又は後に投与される。例えば、化合物は、予防的又は治療的に投与される。一例では、化合物は、脳卒中の前に投与される。一例では、化合物は脳卒中後に投与される。
【0023】
本明細書に記載される任意の方法の一例では、化合物は脳卒中の前に投与され、かつ、脳卒中を有するリスクのある対象に投与される。
【0024】
脳卒中のリスクがある例示的な対象は、糖尿病及び/又は肥満に罹患している。例えば、糖尿病は2型糖尿病である。
【0025】
脳卒中に罹患するリスクがある対象の追加的又は代替的な特徴には、以下の特徴の1つ以上が含まれる:
・脳卒中及び/又は一時的な虚血発作を既に罹患している;
・脳卒中の家族歴がある;
・心臓病に罹患する;
・高血圧を有する;
・高血漿低密度リポタンパク質レベルを有する;
・メタボリックシンドロームを有する;
・心臓の異常を有する;及び/又は
・手術を受けたことがある。
【0026】
一例では、対象は、さらに55歳以上、例えば65歳以上、又は75歳以上である。
【0027】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中後に投与され、該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物と血栓溶解性化合物との組み合わせを投与することを含む。従って、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は治療的に投与される。
【0028】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中症状の発症の約1〜10時間後に投与される。例えば、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中症状の発症の約1〜5時間後に投与される。VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中症状の発症後約1〜4時間の間に投与される。VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中症状の発症の約1時間後に投与される。
【0029】
脳卒中の症状は、当業者には明らかであり、例えば、顔面脱力(facial weakness)、腕の脱力(arm weakness)及び/又は発声の困難性(difficulty with speech)のうちの1つ以上を含む。
【0030】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、血栓溶解性化合物の前に投与される。例えば、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、血栓溶解性化合物の約1時間前〜約10時間前に投与される。例えば、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、血栓溶解性化合物の約1時間〜約6時間前に投与される。例えば、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、血栓溶解性化合物の約2時間前〜約6時間前に投与される。例えば、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、血栓溶解性化合物の約3時間前〜約5時間前に投与される。例えば、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、血栓溶解性化合物の約4時間前に投与される。
【0031】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中症状の発症後約1時間及び血栓溶解性化合物の約4時間前に投与される。
【0032】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物の投与は、血栓溶解性化合物が対象に安全に投与され得る時間を延長する。従って、本開示はまた、血栓溶解性化合物が対象に安全に投与され得る時間を延長する方法を提供するものであって、当該方法は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を投与し、次いで、血栓溶解性化合物を投与することを含む。
【0033】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症の2時間以上後に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後3時間以上後に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後4時間以上後に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後5時間以上後に投与される。
【0034】
本明細書に記載のいずれかの方法の一例では、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の約開始〜脳卒中の症状の発症後約10時間の間に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後約4時間〜約10時間の間に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後約4時間〜約8時間の間に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後約3時間〜約6時間の間に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症後約4時間〜約6時間の間に投与される。例えば、血栓溶解性化合物は、脳卒中の症状の発症の約5時間後に投与される。
【0035】
本明細書中に記載される任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、脳卒中症状の発症の約1時間後に投与され、血栓溶解性化合物は、脳卒中症状の発症の約5時間後に投与される。
【0036】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、血栓溶解性化合物は、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ラノテプラーゼ、レテプラーゼ、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、デスモテプラーゼ及びウロキナーゼからなる群より選択される。
【0037】
本明細書に記載のいずれかの方法の一例では、対象は、空腹時血糖レベルが上昇している。例えば、対象は、150mg/dLを超える空腹時血糖レベルを有する。例えば、対象は、180mg/dLを超える空腹時血糖レベルを有する。例えば、対象は、200mg/dLを超える空腹時血糖レベルを有する。例えば、対象は、300mg/dLを超える空腹時血糖レベルを有する。例えば、対象は、400mg/dLを超える空腹時血糖レベルを有する。
【0038】
一例では、脳卒中の症状は、以下:
・梗塞サイズ;
・対象における出血の発生率の減少;
・対象の致命的な出血の可能性の減少;及び/又は
・対象の脳内出血スコアによって評価される出血スコア;及び/又は
・脳卒中後の対象における血液脳関門の損傷又は漏出、
から選択される。
【0039】
本明細書に記載のいずれかの方法の一例では、脳卒中後の対象における血液脳関門の損傷又は漏出は、脳浮腫をもたらし得る。
【0040】
上記のそれぞれを評価するための方法は、当技術分野で公知であり、及び/又は本明細書に記載されている。
【0041】
脳卒中のさらなる効果は、当技術分野で知られており、及び/又は本明細書に記載されており、例えば、麻痺、部分麻痺、不明瞭発語(slurred speech)、非協調運動(uncoordinated movement)、筋力低下、低緊張性(hypotonicity)、過緊張性(hypertonicity)又は非自発的異常運動(involuntary abnormal movement)などの運動障害を含む。
【0042】
本明細書に記載される任意の方法の一例において、化合物(単数又は複数)は、以下の効果の1つ以上を有するのに十分な量で投与される:
・対象における梗塞サイズの縮小;
・対象の脳内出血スコアによって評価される出血スコアの低下;
・対象の血液脳関門の損傷又は漏出の減少;及び/又は
・脳卒中後の対象の脳浮腫の減少。
【0043】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、脳卒中は虚血性脳卒中である。例えば、脳卒中は脳虚血性脳卒中である。
【0044】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、VEGF−Bに結合する。
【0045】
例えば、化合物は、VEGF−Bに結合するか、又はVEGF−Bに特異的に結合し、かつ、VEGF−Bシグナル伝達を中和する、抗体可変領域を含むタンパク質である。
【0046】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、化合物は、抗体模倣物(mimetic)である。例えば、化合物は、免疫グロブリンの抗原結合ドメイン、例えば、IgNAR、ラクダ抗体又はT細胞受容体を含む、タンパク質である。
【0047】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、化合物は、ドメイン抗体(例えば、VEGF−Bに結合する重鎖可変領域のみ又は軽鎖可変領域のみを含む)又は重鎖のみの抗体(例えば、ラクダ抗体又はIgNAR)又はその可変領域である。
【0048】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、化合物は、Fvを含むタンパク質である。例えば、タンパク質は、以下からなる群より選択される:
(i)単鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv(di−scFv);又は
(iv)ダイアボディ;
(v)トリアボディ;
(vi)テトラボディ;
(vii)Fab;
(viii)F(ab’)
2;
(ix)Fv;又は
(x)抗体の定常領域、Fc又は重鎖定常ドメイン(C
H)2及び/若しくはC
H3、に連結された(i)〜(ix)の1つ。
【0049】
本明細書に記載の任意の方法の別の例において、化合物は抗体である。例示的な抗体は、完全長及び/又はネイキッド抗体(naked antibodies)である。
【0050】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、化合物は、組換え、キメラ、CDR移植、ヒト化、合成ヒト化(synhumanized)、霊長類化、脱免疫化又はヒトのタンパク質である。
【0051】
本明細書に記載のいずれかの方法の一例において、化合物は、VEGF−Bへの抗体2H10の結合を競合的に阻害する抗体可変領域を含むタンパク質である。一例において、タンパク質は、配列番号3に記載の配列を含む重鎖可変領域(V
H)及び配列番号4に記載の配列を含む軽鎖可変領域(V
L)を含む。
【0052】
一例において、化合物は、抗体2H10のヒト化可変領域を含むタンパク質である。例えば、タンパク質は、抗体2H10のV
H及び/又はV
Lの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む。例えば、タンパク質は以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号3のアミノ酸25〜34に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号3のアミノ酸49〜65に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号3のアミノ酸98〜108に示される配列を含むCDR3;
及び/又は、
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号4のアミノ酸23〜33に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸49〜55に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号4のアミノ酸88〜96に示される配列を含むCDR3。
【0053】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、化合物は、V
H及びV
Lを含むタンパク質であり、該V
H及びV
Lは、抗体2H10のヒト化可変領域である。例えば、該タンパク質は、以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号3のアミノ酸25〜34に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号3のアミノ酸49〜65に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号3のアミノ酸98〜108に示される配列を含むCDR3;
及び、
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号4のアミノ酸23〜33に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号4のアミノ酸49〜55に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号4のアミノ酸88〜96に示される配列を含むCDR3。
【0054】
当業者には明らかであるように、核酸によってコードされる配列は、発現中に産生され得るその配列の全ての変異体を含む。
【0055】
本明細書中に記載される任意の方法の一例では、前記パラグラフのいずれかの可変領域又はV
Hは、配列番号5に記載の配列を含む。
【0056】
本明細書中に記載される任意の方法の一例では、前記パラグラフのいずれかの可変領域又はV
Lは、配列番号6に記載の配列を含む。
【0057】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、化合物は抗体である。
【0058】
本明細書に記載される任意の方法の一例において、化合物は、配列番号5に記載の配列を含むV
H及び配列番号6に記載の配列を含むV
Lを含む抗体である。
【0059】
一例では、タンパク質又は抗体は、前述のタンパク質又は抗体のいずれかをコードする核酸によってコードされるタンパク質又は抗体の任意の形態である。
【0060】
一例において、タンパク質又は抗体は、以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号12を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR1;
(b)配列番号13を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号14を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR3;
及び/又は
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号15を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR1;
(b)配列番号16を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号17を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR3。
【0061】
一例において、タンパク質又は抗体は、以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号24を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR1;
(b)配列番号25を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号26を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR3;
及び/又は
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号27を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR1
(b)配列番号28を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号29を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR3。
【0062】
一例において、タンパク質又は抗体は、以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号36を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR1;
(b)配列番号37を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号43のアミノ酸配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号38を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号44のアミノ酸配列を含むCDR3;
及び/又は
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号39を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号45のアミノ酸配列を含むCDR1;
(b)配列番号40を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号41を含む核酸によってコードされる配列を含むか、又は配列番号47のアミノ酸配列を含むCDR3。
【0063】
一例では、化合物は組成物内に存在する。例えば、組成物は、本明細書に記載の抗体可変領域又はV
H又はV
L又は抗体を含むタンパク質を含む。一例では、組成物は、タンパク質又は抗体の1つ又は複数の変異体をさらに含む。例えば、コードされるC末端リジン残基を欠く変異体、脱アミド化変異体及び/又はグリコシル化変異体及び/又はピログルタミン酸を含む変異体(例えばタンパク質のN末端において)及び/又はN末端残基(例えば、抗体若しくはV領域のN末端グルタミン)欠損変異体及び/又は分泌シグナルの全部又は一部を含む変異体、を含む。コードされたアスパラギン残基の脱アミド化変異体は、イソアスパラギン酸及びアスパラギン酸アイソフォームが生成され、又は隣接するアミノ酸残基を含むスクシンアミドさえももたらし得る。コードされたグルタミン残基の脱アミド化変異体は、グルタミン酸を生じ得る。そのような配列及び変異体の異種混合物を含む組成物は、特定のアミノ酸配列が参照される場合に含まれることが意図される。
【0064】
本明細書中に記載される任意の方法の一例では、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、VEGF−Bの発現を阻害又は防止する。例えば、化合物は、アンチセンス、siRNA、RNAi、リボザイム及びDNAザイムの群から選択される。
【0065】
本明細書に記載の任意の方法の一例において、VEGF−Bは、哺乳動物VEGF−B、例えば、ヒトVEGF−Bである。
【0066】
本明細書中に記載される任意の方法の一例では、対象は哺乳動物、例えばヒトなどの霊長類である。
【0067】
本明細書に記載の治療方法は、脳卒中の効果を軽減、治療又は予防するためのさらなる化合物の投与を、追加的に含み得る。
【0068】
本開示はまた、脳卒中の効果を低減するのに使用するためのVEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を提供する。
【0069】
本開示はまた、脳卒中の効果を低減するための医薬の製造におけるVEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物の使用を提供する。
【0070】
本開示はまた、脳卒中の効果を減少させるのに使用するための説明書と共にパッケージングされた、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を含むキットを提供する。任意に、キットは追加的に、血栓溶解性化合物を含む。
【0071】
本開示はまた、血栓溶解性化合物と組み合わせて、脳卒中に罹患した対象に化合物を投与するための説明書とともにパッケージングされた、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を含むキットを提供する。
【0072】
本開示はまた、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物と組み合わせて、脳卒中を罹患した対象に化合物を投与するための説明書と共にパッケージングされた血栓溶解性化合物を含むキットを提供する。
【0073】
脳卒中及び化合物の例示的な効果は、本明細書に記載されており、前の6パラグラフに記載された開示の実施例に必要な変更を加えて適用されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0075】
配列表への鍵
配列番号1は、21アミノ酸のN末端シグナル配列を含むヒトVEGF−B
186アイソフォームのアミノ酸配列である。
配列番号2は、21アミノ酸のN末端シグナル配列を含むヒトVEGF−B
167アイソフォームのアミノ酸配列である。
配列番号3は、抗体2H10のV
H由来のアミノ酸配列である。
配列番号4は、抗体2H10のV
L由来のアミノ酸配列である。
配列番号5は、抗体2H10のヒト化形態のV
H由来のアミノ酸配列である。
配列番号6は、抗体2H10のヒト化形態のV
L由来のアミノ酸配列である。
配列番号7は、抗体4E12のV
H由来のアミノ酸配列である。
配列番号8は、抗体4E12のV
Lのアミノ酸配列である。
配列番号9は、抗体2F5のV
H由来のアミノ酸配列である。
配列番号10は、抗体2F5のV
Lのアミノ酸配列である。
配列番号11は、組換えヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターのアミノ酸配列である。
配列番号12は、抗体2H10のV
L CDR1由来のヌクレオチド配列である。
配列番号13は、抗体2H10のV
L CDR2由来のヌクレオチド配列である。
配列番号14は、抗体2H10のV
L CDR3由来のヌクレオチド配列である。
配列番号15は、抗体2H10のV
H CDR1由来のヌクレオチド配列である。
配列番号16は、抗体2H10のV
H CDR2由来のヌクレオチド配列である。
配列番号17は、抗体2H10のV
H CDR3由来のヌクレオチド配列である。
配列番号18は、抗体2H10のV
L CDR1由来のアミノ酸配列である。
配列番号19は、抗体2H10のV
L CDR2由来のアミノ酸配列である。
配列番号20は、抗体2H10のV
L CDR3由来のアミノ酸配列である。
配列番号21は、抗体2H10のV
H CDR1由来のアミノ酸配列である。
配列番号22は、抗体2H10のV
H CDR2由来のアミノ酸配列である。
配列番号23は、抗体2H10のV
H CDR3由来のアミノ酸配列である。
配列番号24は、抗体2F5のV
L CDR1由来のヌクレオチド配列である。
配列番号25は、抗体2F5のV
L CDR2由来のヌクレオチド配列である。
配列番号26は、抗体2F5のV
L CDR3由来のヌクレオチド配列である。
配列番号27は、抗体2F5のV
H CDR1由来のヌクレオチド配列である。
配列番号28は、抗体2F5のV
H CDR2由来のヌクレオチド配列である。
配列番号29は、抗体2F5のV
H CDR3由来のヌクレオチド配列である。
配列番号30は、抗体2F5のV
L CDR1由来のアミノ酸配列である。
配列番号31は、抗体2F5のV
L CDR2由来のアミノ酸配列である。
配列番号32は、抗体2F5のV
L CDR3由来のアミノ酸配列である。
配列番号33は、抗体2F5のV
H CDR1由来のアミノ酸配列である。
配列番号34は、抗体2F5のV
H CDR2由来のアミノ酸配列である。
配列番号35は、抗体2F5のV
H CDR3由来のアミノ酸配列である。
配列番号36は、抗体4E12のV
L CDR1由来のヌクレオチド配列である。
配列番号37は、抗体4E12のV
L CDR2由来のヌクレオチド配列である。
配列番号38は、抗体4E12のV
L CDR3由来のヌクレオチド配列である。
配列番号39は、抗体4E12のV
H CDR1由来のヌクレオチド配列である。
配列番号40は、抗体4E12のV
H CDR2由来のヌクレオチド配列である。
配列番号41は、抗体4E12のV
H CDR3由来のヌクレオチド配列である。
配列番号42は、抗体4E12のV
L CDR1由来のアミノ酸配列である。
配列番号43は、抗体4E12のV
L CDR2由来のアミノ酸配列である。
配列番号44は、抗体4E12のV
L CDR3由来のアミノ酸配列である。
配列番号45は、抗体4E12のV
H CDR1由来のアミノ酸配列である。
配列番号46は、抗体4E12のV
H CDR2由来のアミノ酸配列である。
配列番号47は、抗体4E12のV
H CDR3由来のアミノ酸配列である。
概要
一般
【0076】
本明細書を通して、別段の記載がない限り、又は文脈上他の意味を必要としない限り、単独工程、物質の組成物、物質群、工程群又は物質の組成物群に対する参照は、それらの工程、物質の組成物、物質群、工程群又は物質の組成物群の1つ又は複数(すなわち、1つ以上)を包含するものとする。
【0077】
当業者であれば、本開示は、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更を受け易いことを理解するであろう。本開示は、そのような全ての変形及び修正を含むことが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書で個別に又は集合的に言及される又は示される工程、特徴、組成物及び化合物の全て、及び前記工程又は特徴のいずれか及び全て又は任意の2つ以上の組み合わせを含む。
【0078】
本開示は、本明細書に記載された特定の例によって限定されるものではなく、例示のみを目的とするものである。機能的に同等の製品、組成物及び方法は、明らかに本開示の範囲内にある。
【0079】
本明細書中の本開示のいずれの例も、他に特に断らない限り、本開示の任意の他の例について準用するものとする。
【0080】
特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有すると解釈される(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)。
【0081】
他に示されない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。このような技術は、例えば、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989),T.A.Brown(編者),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(編者),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1−4,IRL Press(1995 and 1996),and F.M.Ausubel et al.(編者),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience(1988,現在までの全ての改訂版を含む),Ed Harlow and David Lane(編者)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988),and J.E.Coligan et al.(編者)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在までの全ての改訂版を含む)などのソースの文献を通して記載され、説明される。
【0082】
本明細書の可変領域及びその部分、免疫グロブリン、抗体及びそのフラグメントの説明及び定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987 and 1991,Bork et al.,J.Mol.Biol.242,309−320,1994,Chothia and Lesk J.Mol Biol.196:901−917,1987,Chothia et al.Nature 342,877−883,1989 and/or or Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273,927−948,1997における議論によって、されに明らかにされ得る。
【0083】
本明細書のタンパク質又は抗体の議論は、製造及び/又は保存の間に産生されるタンパク質又は抗体の任意の変異体を含むと理解される。例えば、製造又は保存中に、抗体は脱アミド化され得(例えば、アスパラギン又はグルタミン残基で)、及び/又は変化したグリコシル化を有し得、及び/又はピログルタミン酸に変換されたグルタミン残基を有し得、及び/又は除去された若しくは「クリッピング」されたN−末端又はC−末端残基を有し得、及び/又は不完全に処理された一部又は全部のシグナル配列を有し得、結果として抗体の末端に残る。特定のアミノ酸配列を含む組成物は、記載された若しくはコードされた配列及び/又はその記載された若しくはコードされた配列の変異体の異種混合物であり得ることが理解される。
【0084】
用語「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味、又はいずれかの意味を明確に支持するために提供されるものとする。
【0085】
本明細書を通じて、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprisies)」又は「含む(comprising)」などの変形は、記載された要素、整数又は工程、又は、要素、整数若しくは工程の群を含むことを意味すると理解され、他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除するものではない。
【0086】
本明細書で使用する場合、「由来する(derived from)」という用語は、特定の整数が、必ずしもその供給源から直接ではないが、特定の供給源から得られ得ることを示すために用いられる。
選択された定義
【0087】
VEGF−Bは、VEGF−B
186及びVEGF−B
167と呼ばれる2つの主要なアイソフォームにおいて存在することが知られている。分類のみの目的であり、ヒトVEGF−B
186の非限定的な例示の配列として、NCBI参照配列:NP_003368.1、NCBIタンパク質受入番号NP_003368、P49765及びAAL79001、及び配列番号1に記載されている。本開示の文脈において、VEGF−B
186の配列は、21アミノ酸のN末端シグナル配列を欠いていてもよい(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜21に示されるように)。分類のみの目的であり、ヒトVEGF−B
167の非限定的な例示の配列として、NCBI参照配列:NP_001230662.1、NCBIタンパク質受入番号AAL79000及びAAB06274及び配列番号2に記載されている。本開示の文脈において、VEGF−B
167の配列は、21アミノ酸のN末端シグナル配列を欠いていてもよい(例えば、配列番号2のアミノ酸1〜21に示されるように)。VEGF−Bのさらなる配列は、本明細書及び/又は公的に入手可能なデータベースに提供される配列を用いて決定され得る、及び/又は標準的な技術を用いて決定され得る(例えば、Ausubel et al.,(編者),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience(1988,現在までの全ての改訂版を含む)、又は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))。ヒトVEGF−Bへの言及は、hVEGF−Bと省略することができる。一例では、VEGF−Bへの言及は、VEGF−B
167アイソフォームに対するものである。
【0088】
VEGF−Bに対する本明細書の言及は、国際公開第2006/012688号に記載のVEGF−B
10-108ペプチドも包含する。
【0089】
本明細書中で使用される場合、用語「脳卒中(stoke)」は、脳又は脳幹への血流の障害による、脳機能(単数又は複数)の喪失(通常は急速に進行する)を意味すると解釈されるものとする。障害(disturbance)は、例えば、血栓症又は塞栓症によって引き起こされる虚血(血液欠乏)であり得るか、又は出血に起因し得る。一例では、脳機能の喪失には、神経細胞死が伴う。一例では、脳卒中は、大脳又はその領域からの血液の障害又は損失によって引き起こされる。一例では、脳卒中は、24時間を超えて持続するか、又は24時間以内に死亡により中断される脳血管障害の神経学的欠損である(世界保健機関によって定義される)。24時間を超える症状の持続は、症状が24時間未満持続する一過性虚血発作(TIA)と脳卒中を分ける。脳卒中の症状には、半身麻痺(hemiplegia)(身体の片側の麻痺);不全片麻痺(hemiparesis)(身体の片側の脱力(weakness on one side of the body);顔面の筋肉脱力(muscle weakness of the face);しびれ;感覚の減少;変化した嗅覚、味覚、聴覚、又は視覚;嗅覚、味覚、聴覚、又は視力の喪失;まぶたの垂れ下がり(眼瞼下垂);眼筋の検出可能な衰弱;咽頭反射(gag reflex)の低下;嚥下能力の低下;光に対する瞳孔反応性の低下;顔面の感覚の減少;バランスの低下;眼振;呼吸数の変化;心拍数の変化;頭を片側に回す能力の減少又は回すことができない胸鎖乳突筋の衰弱;舌の脱力(weakness in the tongue);失語症(言語を話すことや理解できない);失行症(変化した随意運動);視野欠損;記憶欠損;半ネグレクト(hemineglect)又は片側空間のネグレクト(hemispatial neglect)(病変の反対側の視野側の空間への注意力欠損);混乱した思考(disorganized thinking);混乱(confusion);過剰性的ジェスチャーの発症(development of hypersexual gestures);疾病失認(anosognosia)(欠陥の存在の永続的否定);歩行困難;運動協調性の変化;めまい;不均衡(disequilibrium);意識の喪失;頭痛;及び/又は嘔吐、を含む。
【0090】
「脳卒中の効果」という用語は、梗塞サイズ、出血スコア及び/又は血液脳関門の損傷若しくは漏出の1つ以上を含むと理解される。しかしながら、この用語は、これらの効果に限定されるものではなく、対象における任意の臨床的変化などの対象における任意の変化、例えば、脳卒中に起因する、神経学的又は身体的な変化などを包含する。このような変化又は効果には、本明細書に記載の運動障害、脳機能の喪失又は症状のいずれかが含まれる。
【0091】
「脳卒中症状の発症」という用語は、対象又は他の人が、脳卒中の1つ又は複数の症状を認識する時間を指すと理解される。適切な症状が本明細書に記載される。
【0092】
本明細書で使用される用語「出血の発生(incidence of hemorrhage)」は、対象又は対象の集団で罹患した出血の数又は大きさを意味すると理解される。従って、対象における出血の発生の減少とは、対象における出血の数又はサイズの減少、又は対象が脳卒中の結果として1つ以上の出血に罹患する可能性の低下であり得る。
【0093】
「致死的出血の可能性(likelihood of lethal hemorrhage)」という用語は、化合物(単数又は複数)が投与された対象が、化合物(単数又は複数)が投与されていない脳卒中に罹患した対象よりも、出血の結果として死亡する可能性が低いことを意味すると理解される。明らかに、そのような可能性は、各対象のための並列比較を必要とするのではなく、母集団データに基づいて計算することができる。この用語は、脳卒中の結果としての死の可能性を低減するための明示的な支援も提供する。すなわち、本開示は、脳卒中の結果として死亡の可能性を低減する方法をさらに提供する。脳卒中の影響を低減することに関して上述の全ての方法工程は、そのような方法に等しく適用されるとみなされる。
【0094】
用語「血液脳関門(blood brain barrie)」は、中枢神経系の脳外細胞液から循環血液を分離する高度に選択的な透過性障壁を意味するものと解釈すべきである。血液脳関門の損傷(breakdown)又は漏出(leakage)は、脳の細胞外空間又は脳浮腫における体液の蓄積をもたらし得る。血液脳関門の損傷は、外傷性脳損傷又は虚血性脳卒中、癌、又は髄膜炎(meningitis)若しくは脳炎(encephalitis)による脳炎症(brain inflammation)などの非外傷性損傷に起因し得る。
【0095】
用語「血栓溶解性化合物」は、血管の閉塞を制限するために1つ又は複数の血栓の破壊を誘発又は仲介又は増強する化合物を意味すると解釈される。血栓溶解性化合物は、プラスミンによる二次線維素溶解を刺激することによって作用し得る。例示的な血栓溶解剤には、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、アニストレプラーゼ(APSAC)、ストレプトキナーゼ(SK)、スタフィロキナーゼ(SAK)、デスモテプラーゼ又はウロキナーゼ(uPA)が含まれる。
【0096】
一例において、血栓溶解性化合物は、「組織プラスミノーゲン活性化因子」又はtPAである。tPAは、プラスミノーゲンのプラスミンへの変換を触媒することによって血栓の分解に関与するセリンプロテアーゼである。一例において、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、組換え技術を用いて製造することができる。従って、それは、例えば、配列番号11に記載の配列を含む組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(r−tPA)であり得る。例示的なtPAには、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、ラノテプラーゼ又はテネクテプラーゼが含まれる。
【0097】
本明細書中で使用される場合、血栓溶解性化合物の「有効な投与」(又は類似)との言及は、血栓溶解性化合物の投与が、臨床的に有効な結果、すなわち、VEGF−Bシグナル伝達の阻害剤が投与されるとともに、同一の血栓溶解性化合物が同じ様式(例えば、同じ時間で、及び/又は類似の血糖レベルを有する患者で)で投与される対象又は対象の集団に見られるものと比較して、脳卒中の効果を低下させる改善を提供すること、を意味する。
【0098】
本明細書の記載に基づいて当業者に明らかであるように、化合物の「組み合わせ」を投与することを検討する場合、本開示は、化合物を単一の組成物として投与すること、化合物を同時に投与すること(ただし、別々の組成物として)又は化合物を順次投与することを意図する。
【0099】
「組換え」という用語は、人工的な遺伝子組換えの産物を意味すると理解されるべきである。従って、抗体可変領域を含む組換えタンパク質という文脈において、この用語は、B細胞の成熟の間に生じる天然の組換えの産物である、対象の体内で天然に存在する抗体を包含しない。しかし、そのような抗体が単離された場合、それは抗体可変領域を含む単離されたタンパク質と考えられるべきである。同様に、タンパク質をコードする核酸が単離され、組換え手段を用いて発現される場合、得られるタンパク質は抗体可変領域を含む組換えタンパク質である。組換えタンパク質はまた、例えばそれが発現する細胞、組織又は対象内に存在する場合、人工的組換え手段によって発現されるタンパク質を包含する。
【0100】
「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続アミノ酸又は互いに共有結合若しくは非共有結合した一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)、を含む。例えば、一連のポリペプチド鎖は、適切な化学的又はジスルフィド結合を用いて共有結合させることができる。非共有結合の例には、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が含まれる。
【0101】
用語「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」は、先のパラグラフから、ペプチド結合によって連結された一連の連続したアミノ酸を意味すると理解される。
【0102】
当業者であれば、「抗体」は、一般に、複数のポリペプチド鎖、例えば、軽鎖可変領域(V
L)を含むポリペプチド及び重鎖可変領域(V
H)を含むポリペプチドからなる可変領域を含むタンパク質であると考えられることを認識するであろう。抗体はまた、一般に定常ドメインを含み、その一部は定常領域に配置することができ、重鎖の場合には定常領域には定常フラグメント又は結晶化可能フラグメント(Fc)が含まれる。V
H及びV
Lは、1つ又はいくつかの密接に関連する抗原に特異的に結合することができる抗原結合領域を含むFvを形成するように相互作用する。一般に、哺乳類の軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、哺乳類の重鎖はα、δ、ε、γ又はμである。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1及びIgA
2)又はサブクラスであり得る。用語「抗体」は、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、合成ヒト化抗体(synhumanized antibodies)及びキメラ抗体も包含する。
【0103】
「完全長抗体」、「無処理抗体(intact antibody)」又は「全抗体(whole antibody)」という用語は、抗体の抗原結合フラグメントとは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために、交換可能に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列改変体であり得る。
【0104】
本明細書中で使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合することができ、かつ、相補性決定領域(CDR);すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3、及びフレームワーク領域(FRs)を含む、本明細書で定義される抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を指す。例示的な可変領域は、3つのCDRと共に、3つ又は4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3及び任意にFR4)を含むものである。IgNARに由来するタンパク質の場合は、当該タンパク質はCDR2を欠いていてもよい。V
Hは重鎖の可変領域を指す。V
Lは軽鎖の可変領域を指す。
【0105】
本明細書中で使用される場合、用語「相補性決定領域」(別名CDR;すなわちCDR1、CDR2及びCDR3)は、その存在が抗原結合に必要な抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、典型的にCDR1、CDR2及びCDR3として同定される3つのCDR領域を有する。CDR及びFRに割り当てられたアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987 and 1991 or other numbering systems in the performance of this disclosure,e.g.,the canonical numbering system of Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917,1987;Chothia et al.Nature 342,877−883,1989;及び/又は、Al−Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927−948,1997;the IMGT numbering system of Lefranc et al.,Devel.And Compar.Immunol.,27:55−77,2003;又は、the AHO numbering system of Honnegher and Plukthun J.Mol.Biol.309:657−670,2001に従って定義され得る。
【0106】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0107】
本明細書中で使用される場合、用語「Fv」は、V
L及びV
Hが会合し、抗原結合部位を有する、すなわち、抗原に特異的に結合することができる複合体を形成する、複数のポリペプチド又は単一のポリペプチドを含む、任意のタンパク質を意味するものである。抗原結合部位を形成するV
H及びV
Lは、単一のポリペプチド鎖又は異なるポリペプチド鎖に存在し得る。さらに、本開示のFv(及び本開示の任意のタンパク質)は、同一の抗原に結合してもよい、又は、結合しなくてもよい複数の抗原結合部位を有してもよい。この用語は、抗体から直接得られたフラグメント、並びに組換え手段を用いて産生されたそのフラグメントに対応するタンパク質を包含するものと解すべきである。いくつかの例において、V
Hは重鎖定常ドメイン(C
H)1に連結されない、及び/又はV
Lは軽鎖定常ドメイン(C
L)に連結されない。例示的なFv含有ポリペプチド又はタンパク質には、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ若しくはより高次の複合体、又は定常領域若しくはそのドメイン(C
H2又はC
H3ドメイン)に連結された前述の任意のもの、例えば、ミニボディ、を含む。「Fabフラグメント」は、抗体の一価抗原結合フラグメントからなり、全抗体を酵素パパインで消化してインタクトな軽鎖と重鎖の一部からなるフラグメントを得ることにより製造され得る、又は、組換え手段を用いて生産され得る。抗体の「Fab’フラグメント」は、全抗体をペプシンで処理した後、還元して、インタクトな軽鎖並びにV
H及び単一の定常ドメインを含む重鎖の一部からなる分子を得ることにより得ることができる。この方法で処理された抗体当たり2つのFab’フラグメントが得られる。Fab’フラグメントはまた、組換え手段によって産生され得る。抗体の「F(ab’)
2フラグメント」は、2つのジスルフィド結合によって共に保持された2つのFab’フラグメントの二量体からなり、還元を伴わずに抗体分子全体を酵素ペプシンで処理することによって得られる。「Fab
2」フラグメントとは、例えば、ロイシンジッパー又はC
H3ドメインを用いて連結された2つのFabフラグメントを含む組換えフラグメントである。「単鎖Fv」又は「scFv」とは、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域が、適切な柔軟性ポリペプチドリンカーによって共有結合された、抗体の可変領域フラグメント(Fv)を含む組換え分子である。
【0108】
本明細書中で使用される場合、タンパク質又はその抗原結合部位と抗原との相互作用に関して「結合する」という用語は、相互作用が、抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、一般にタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識し、結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、エピトープ「A」(又は遊離の非標識「A」)を含有する分子が標識「A」及びタンパク質を含む反応において存在すると、抗体に結合する標識「A」の量を減少させる。
【0109】
本明細書中で使用される場合、用語「特異的に結合する(specifically binds)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」とは、本開示のタンパク質が、より高頻繁に、より迅速に、より長い期間及び/又はより高い親和性で、抗原又はそれを発現する細胞に、別の抗原又は細胞よりも、反応する又は会合することを意味するものである。例えば、タンパク質は、VEG−Bに、他の増殖因子(例えば、VEGF−A)に対するものより、又は、多反応性天然抗体(すなわち、ヒトにおいて天然に見出される様々な抗原に結合することが知られている天然に存在する抗体)によって一般的に認識される抗原よりも、実質的により高い親和性で(例えば、20倍又は40倍又は60倍又は80倍〜100倍又は150倍又は200倍)結合する。一般的に、ただし必ずしも必要ではないが、結合への言及は、特異的結合を意味し、各用語は他の用語に対し、明示的な支持を提供するものと理解される。
【0110】
本明細書中で使用される場合、用語「中和する」は、タンパク質が、VEGF−R1を介して細胞内でVEGF−Bシグナル伝達を遮断、低減又は妨げることができることを意味すると解釈されるべきである。中和を決定するための方法は、当該分野で公知であり、及び/又は本明細書に記載されている。
【0111】
本明細書で使用する「予防すること(preventing)」、「予防する(prevent)」又は「予防(prevention)」という用語は、本開示の化合物を投与することによって、状態の少なくとも1つの症状の発症をそれによって停止又は妨害することを含む。
【0112】
本明細書中で使用される場合、用語「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」は、本明細書に記載のタンパク質を投与して、それによって、特定の疾患若しくは状態の少なくとも1つの症状を軽減若しくは排除するか、又はその疾患若しくは状態の進行を遅延させることを含む。
【0113】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」は、ヒトを含む任意の動物、例えば哺乳動物を意味すると解釈されるものとする。例示的な対象としては、ヒト及び非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されない。例えば、対象はヒトである。
脳卒中の影響の低減
【0114】
本明細書の開示は、例えば、対象における脳卒中の1つ以上の効果を減少させる方法を提供するものであって、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物を対象に投与することを含む。
【0115】
一例では、対象は、糖尿病に罹患している。例えば、糖尿病に罹患している対象は、臨床的に承認された糖尿病のマーカーを有し、例えば:
・空腹時血糖レベルが、7nmol/L又は126mg/dl以上であること;
・糖尿病の症状を伴う11.1nmol/L又は200mg/dl以上の普段の(casual)血漿グルコース(1日のうちの任意の時間に採取)。
・2時間間隔で測定した経口糖負荷試験(OGTT)値が11.1nmol/L又は200mg/dl以上。OGTTは、2時間又は3時間の時間間隔にわたって行われる。
【0116】
一例では、対象は1型糖尿病に罹患している。
【0117】
一例では、対象は2型糖尿病に罹患している。
【0118】
本開示の方法は、中枢神経系における任意の形態の虚血に容易に適用され得る。例えば、対象は、網膜虚血の徴候(単数又は複数)及び/又は症状を呈し得る。従って、本開示の方法は、中枢神経系における虚血、例えば、網膜虚血の影響を低減することに適用されると考えられる。
【0119】
一例では、対象は、脳卒中のリスクがあるが、脳卒中の発症はまだ起こっていない。対象は、対照集団よりも脳卒中発症のリスクが高い場合、リスクがある。対照集団は、診断されていないか、又は脳卒中の家族歴を有する一般集団(例えば、年齢、性別、人種及び/又は民族によって一致)から無作為に選択された1人又は複数の対象を含み得る。対象は、その脳卒中に関連する「リスク因子」がその対象に関連することが判明した場合、脳卒中のリスクがあるとみなすことができる。リスク因子は、例えば対象の集団に関する統計的又は疫学的研究を通じて、所与の障害に関連する任意の活動、形質(trait)、事象又は特性を含み得る。従って、潜在的なリスク因子を特定する研究が、対象が具体的に含まれていなくても、対象は脳卒中のリスクがあると分類することができる。例えば、心臓外科手術を受けていない対象と比較して心臓外科手術を受けた対象の集団において、一過性の脳虚血発作の頻度が増加しているので、心臓手術を受けた対象は、一過性の脳虚血発作(又は脳卒中)のリスクがある。
【0120】
一例では、脳卒中のリスクがある対象には、脳又は中枢神経系の外科的処置、例えば血管内手術、クリッピング、ステント留置又はマイクロカテーテル法が施されることが含まれる。このような対象はまた、脳に供給する血管(すなわち、頚動脈及び頸静脈などの脳を心臓に接続する血管)又は網膜に血液を供給する動脈に影響を及ぼす身体の他の場所の手術を受ける患者も含まれる。例示的なクラスの対象は、脳動脈瘤を治療するための血管内手術を受ける対象である。これらのタイプの外科手術を受けている対象は、脳卒中リスクが高い。
【0121】
一例では、脳卒中のリスクがある対象には、喫煙者、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症の患者も含まれる。特に高リスクの対象は、前脳卒中(prior stroke)、軽度脳卒中(minor stroke)、又は一過性虚血発作を有する者である。
【0122】
上述のように、本開示の方法は、以下の効果の1つ以上を達成する:
・対象の梗塞サイズの縮小;
・対象の脳内出血スコアによって評価される出血スコアの低下;及び/又は
・対象の血液脳関門の損傷又は漏出の減少;及び/又は
・脳卒中後の対象の大脳浮腫の減少。
【0123】
梗塞サイズを評価するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、echnetium−99m sestamibi単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、コンピュータ断層撮影法、又は磁気共鳴画像法が挙げられる。
【0124】
脳内出血スコアを評価する方法は、例えば、Hemphil et al.,Stroke,32:891−897、2001に記載されている。脳出血、例えば脳内出血の存在は、例えばMRI又はCTスキャンを使用して、測定され得る。
【0125】
血液脳関門の損傷/漏出/浸透性は、MRIを用いて、場合によりトレーサーを用いて検出することもできる。
【0126】
一例では、本開示の方法は、当技術分野で知られているか、又は本明細書に記載されている任意の脳卒中症状を軽減する。
【0127】
当業者には明らかであるように、対象における脳卒中の症状又は効果における「減少(reduction)」とは、脳卒中に罹患しているが本明細書に記載の方法で治療を受けていない別の対象と比較される。これは、必ずしも2つの対象を並べて比較する必要はない。むしろ集団データは信頼され得る。例えば、本明細書に記載された方法を用いて治療を受けていない脳卒中に罹患している対象の集団(任意に、治療された対象に対する類似の対象の集団(例えば、年齢、体重、糖尿病状態、血糖レベル))が評価され、平均値は、本明細書に記載の方法で治療された対象又は対象の集団の結果と比較される。
VEGF−Bシグナル伝達阻害剤
抗体可変領域を含むタンパク質
【0128】
例示的なVEGF−Bシグナル伝達阻害剤は、抗体可変領域を含み、例えば、VEGF−Bに結合し、VEGF−Bシグナル伝達を中和する抗体若しくは抗体フラグメントである。
【0129】
一例では、抗体可変領域は、VEGF−Bに特異的に結合する。
【0130】
適切な抗体及びその可変領域を含むタンパク質は、当技術分野で公知である。
【0131】
例えば、抗VEGF−B抗体及びそのフラグメントは、国際公開第2006/012688号に記載されている。
【0132】
一例において、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、VEGF−Bへの2H10の結合を競合的に阻害する抗体又はその抗原結合フラグメントである。一例では、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、抗体2H10又はそのキメラ、CDR移植若しくはヒト化版(version)又はその抗原結合フラグメントである。これに関して、抗体2H10は、配列番号3に示される配列を含むV
H、及び配列番号4に示される配列を含むV
Lを含む。この抗体の例示的なキメラ及びヒト化版は、国際公開第2006/012688号に記載される。
【0133】
一例では、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、配列番号5に示される配列を含むV
H、及び配列番号6に示される配列を含むV
Lを含む。
【0134】
一例において、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、VEGF−Bへの4E12の結合を競合的に阻害する抗体、又はその抗原結合フラグメントである。一例では、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、抗体4E12又はそのキメラ、CDR移植若しくはヒト化版又はその抗原結合フラグメントである。これに関して、抗体4E12は、配列番号7に示される配列を含むV
H、及び配列番号8に示される配列を含むV
Lを含む。
【0135】
一例では、化合物は、抗体4E12のヒト化可変領域を含むタンパク質である。例えば、タンパク質は、抗体4E12のV
H及び/又はV
Lの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む。例えば、タンパク質は、以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号7のアミノ酸25〜34に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号7のアミノ酸49〜65に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号7のアミノ酸98〜105に示される配列を含むCDR3;
及び/又は
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号8のアミノ酸24〜34に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号8のアミノ酸50〜56に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号8のアミノ酸89〜97に示される配列を含むCDR3。
【0136】
一例では、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、VEGF−Bへの2F5の結合を競合的に阻害する抗体又はその抗原結合フラグメントである。一例では、抗VEGF−B抗体又はそのフラグメントは、抗体2F5又はそのキメラ、CDR移植若しくはヒト化版又はその抗原結合フラグメントである。これに関して、抗体2E5は、配列番号9に示される配列を含むV
H、及び配列番号10に示される配列を含むV
Lを含む。
【0137】
一例において、化合物は、抗体2F5のヒト化可変領域を含むタンパク質である。例えば、タンパク質は、抗体2F5のV
H及び/又はV
Lの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を含む。
【0138】
例えば、タンパク質は、以下を含む:
(i)以下を含むV
H:
(a)配列番号9のアミノ酸25〜34に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号9のアミノ酸49〜65に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号9のアミノ酸98〜107に示される配列を含むCDR3;
及び/又は
(ii)以下を含むV
L:
(a)配列番号10のアミノ酸24〜34に示される配列を含むCDR1;
(b)配列番号10のアミノ酸50〜56に示される配列を含むCDR2;及び
(c)配列番号10のアミノ酸89〜96に示される配列を含むCDR3。
【0139】
別の例では、抗体又はその可変領域を含むタンパク質は、例えば当技術分野で知られているか、又は本明細書に簡単に記載されているような標準的な方法を用いて産生される。
免疫ベース方法
【0140】
抗体を産生するために、任意に適切な又は所望のアジュバント及び/又は医薬的に許容される担体で任意に製剤化された、VEGF−B又はそのエピトープ含有フラグメント若しくは部分又はその修飾形態又はそれをコードする核酸(「免疫原」)は、注射可能な組成物の形態で対象(例えば、非ヒト動物対象(例えば、マウス、ラット、ニワトリなど))に投与される。例示的な非ヒト動物は、マウス動物(例えば、ラット又はマウス)などの哺乳動物である。注射は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、又は他の既知の経路であり得る。必要に応じて、免疫原は、何回も投与される。抗体の調製及び特徴付けのための手段は、当技術分野で公知である(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照)。マウスにおいて抗VEGF−B抗体を産生する方法は、国際公開第2006/012688号に記載されている。
【0141】
ポリクローナル抗体の産生は、免疫後の様々な時点で、免疫した動物の血液をサンプリングすることによってモニターすることができる。所望の抗体力価を達成するために必要であれば、第2のブースター注射を行ってもよい。適切な力価が達成されるまで、ブースティング及び力価測定の工程を繰り返す。所望のレベルの免疫原性が得られたら、免疫した動物から採血し、単離して保存した血清、及び/又は動物を用いてモノクローナル抗体(mAb)を生成する。
【0142】
モノクローナル抗体は、本開示によって企図される例示的な抗体である。一般に、モノクローナル抗体の産生は、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下で対象(例えば、げっ歯類、例えばマウス又はラット)を免疫原で免疫することを含む。いくつかの例では、ヒト抗体を発現するように遺伝子操作され、マウス抗体タンパク質を発現しないマウスを免疫して、抗体を産生する(例えば、PCT/UA2007/008231及び/又はLonberg et al.,Nature 368(1994):856−859に記載されるように)。免疫後、抗体を産生する体細胞(例えば、Bリンパ球)を、不死細胞、例えば、不死性骨髄腫細胞と融合させる。そのような融合細胞(ハイブリドーマ)を産生するための種々の方法は、当該分野で公知であり、例えば、Kohler and Milstein,Nature 256,495−497,1975に記載されている。次いで、ハイブリドーマ細胞を、抗体産生に十分な条件下で培養することができる。
【0143】
本開示は、抗体を産生するための他の方法、例えばABL−MYC技術(例えば、Largaespada et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,166,91−96,1990に記載されている)を企図する。
ライブラリベースの方法
【0144】
本開示はまた、VEGF−B結合抗体又はその可変領域を含むタンパク質を同定するために、抗体又はその抗原結合ドメイン(例えば、それらの可変領域を含む)を含むタンパク質のライブラリーのスクリーニングを包含する。
【0145】
本開示によって企図されるライブラリーの例には、ナイーブライブラリー(非暴露対象由来)、免疫化ライブラリー(抗原で免疫された対象由来)又は合成ライブラリーが含まれる。抗体又はその領域(例えば、可変領域)をコードする核酸は、従来の技術(例えば、Sambrook and Russell,eds,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed,vols.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)でクローニングし、当技術分野で公知の方法を用いてタンパク質のコード化及びディスプレイに使用した。タンパク質のライブラリーを作製するための他の技術は、例えば、米国特許第6300064号明細書(例えば、Morphosys AGのHuCALライブラリー);米国特許第5885793号明細書;米国特許第6204023号明細書;米国特許第6291158号明細書;又は米国特許第6248516号明細書に記載されている。
【0146】
本開示のタンパク質は、可溶性分泌タンパク質であってもよく、又は細胞又は粒子(例えば、ファージ又は他のウイルス、リボソーム又は胞子)の表面上の融合タンパク質として提示されてもよい。種々のディスプレイライブラリーフォーマットは当該分野で公知である。例えば、ライブラリーは、インビトロディスプレイライブラリー(例えば、リボソームディスプレイライブラリー、共有ディスプレイライブラリ(covalent display library)又はmRNAディスプレイライブラリ、例えば米国特許第7270969号明細書に記載されている)である。さらに別の例では、ディスプレイライブラリは、抗体の抗原結合ドメインを含むタンパク質が、ファージ上で発現されるファージディスプレイライブラリーであり、例えば、米国特許第6300064号明細書;米国特許第5885793号明細書;米国特許第6204023号明細書;米国特許第6291158号明細書;又は米国特許第6248516号明細書に記載される。他のファージディスプレイ方法は、当技術分野で公知であり、本開示によって企図される。同様に、細胞ディスプレイの方法は、例えば、米国特許第5516637号明細書に記載されているような、細菌ディスプレイライブラリ;例えば米国特許第6423538号明細書に記載されているような、酵母ディスプレイライブラリ;又は哺乳類ディスプレイライブラリなどの開示によって企図される。
【0147】
ディスプレイライブラリをスクリーニングするための方法は、当技術分野で公知である。一例では、本開示のディスプレイライブラリは、例えばScopes(In:Protein purification:principle and practice,Third Edition,Springer Verlag,1994)に記載されているように、親和性精製を用いてスクリーニングされる。親和性精製の方法は、典型的には、ライブラリーによってディスプレイされた抗原結合ドメインを含むタンパク質を標的抗原(例えば、VEGF−B)と接触させ、洗浄後、抗原に結合したままのドメインを溶出することを含む。
【0148】
スクリーニングによって同定された任意の可変領域又はscFvは、必要に応じて、完全抗体に容易に修飾される。可変領域又はscFvを完全抗体に改変又は再フォーマットするための例示的な方法は、例えば、Jones et al.,J.Immunol.Methods.354:85−90,2010;又はJostock et al.,J.Immunol.Methods,289:65−80,2004に記載されている。或いは、又は追加的に、標準的なクローニング方法は、Ausubel et al.(In:Current Protocols in Molecular Biology.Wiley Interscience,ISBN 047 150338,1987)及び/又はSambrook et al.(In:Molecular Cloning:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York,Third Edition 2001)に記載されているようなものが使用される。
脱免疫化、キメラ化、ヒト化、合成ヒト化、霊長類化及びヒトタンパク質
【0149】
本開示のタンパク質は、ヒト化タンパク質であってもよい。
【0150】
「ヒト化タンパク質」という用語は、ヒト様可変領域を含むタンパク質を指すものと理解されるものであって、それは、ヒト抗体由来のFR上に移植された又は挿入された、非ヒト種(例えば、マウス又はラット又は非ヒト霊長類)由来の抗体由来のCDRを含むものである(このタイプの抗体は、「CDR移植抗体」とも呼ばれる)。ヒト化タンパク質は、ヒトタンパク質の1つ以上の残基が、1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されているタンパク質、及び/又はヒトタンパク質の1つ以上のFR残基が対応する非ヒト残基によって置換されているタンパク質も含む。ヒト化タンパク質はまた、ヒト抗体又は非ヒト抗体のいずれにも見出されない残基を含み得る。タンパク質の任意のさらなる領域(例えば、Fc領域)は、一般にヒトである。ヒト化は、当該分野で公知の方法、例えば米国特許第5225539号明細書、米国特許第6054297号明細書、米国特許第7566771号明細書又は米国特許第5585089号明細書を使用して実施することができる。用語「ヒト化タンパク質」はまた、例えば、米国特許第7732578号明細書に記載されるような超ヒト化タンパク質(super−humanized protein)も包含する。
【0151】
本開示のタンパク質は、ヒトタンパク質であってもよい。本明細書で使用される「ヒトタンパク質」という用語は、ヒトにおいて、例えばヒト生殖系列又は体細胞において見出される可変、及び任意に定常抗体領域を有する、又はそのような領域を用いて作製されたライブラリー由来のタンパク質を指す。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基、インビトロでのランダム又は部位特異的変異(特にタンパク質の少数の残基、例えばタンパク質の1、2、3、4又は5残基における、保存的置換又は変異を含む変異)によって導入される変異を含むことができる。これらの「ヒト抗体」は、必ずしもヒトの免疫応答の結果として生成する必要はなく、組換え手段(例えば、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニング)、及び/又はヒト抗体定常領域及び/又は可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物によって(例えば、マウス)、及び/又はガイドされた選択を使用して(例えば、又は米国特許第5565332号明細書に記載されているように)、生成され得る。この用語はまた、そのような抗体の親和性成熟形態も包含する。本開示の目的のために、ヒトタンパク質はまた、1以上のCDRが、例えば米国特許第6300064号明細書及び/又は米国特許第6248516号明細書に記載されているようにランダム若しくはセミランダムである、ヒト抗体由来のFR、又はヒトFRのコンセンサス配列由来の配列を含むFRを含むタンパク質を含むと考えられる。
【0152】
本開示のタンパク質は、合成ヒト化タンパク質であってもよい。用語「ヒト化タンパク質(synhumanized)」は、国際公開第2007/019620号に記載の方法によって調製されたタンパク質を指す。合成ヒト化タンパク質は、抗体の可変領域を含み、ここで可変領域は、新世界霊長類(New World primate)抗体可変領域由来のFR及び非新世界霊長類(non−New World primate)抗体可変領域由来のCDRを含む。例えば、合成ヒト化タンパク質は、抗体の可変領域を含み、ここで可変領域は、新世界霊長類抗体可変領域由来のFR及びマウス若しくはラット抗体由来のCDRを含む。
【0153】
本開示のタンパク質は、霊長類化タンパク質であってもよい。「霊長類化タンパク質(primatized protein)」は、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)の免疫後に生成される抗体由来の可変領域(単数又は複数)を含む。任意に、非ヒト霊長類抗体の可変領域をヒト定常領域に連結して、霊長類化抗体を産生する。霊長類化抗体を産生するための例示的な方法は、米国特許第6113898号明細書に記載されている。
【0154】
一例において、本開示のタンパク質は、キメラタンパク質である。「キメラタンパク質」という用語は、抗原結合ドメインが特定の種(例えば、マウス又はラットのようなネズミ)又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属するタンパク質であって、タンパク質の残りの部分は他の種(例えば、ヒト又は非ヒト霊長類など)に由来するタンパク質又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属するタンパク質であるものを指す。一例において、キメラタンパク質は、非ヒト抗体(例えばマウス抗体)由来のV
H及び/又はV
Lを含み、抗体の残りの領域はヒト抗体由来であるキメラ抗体である。そのようなキメラタンパク質の産生は、当技術分野で公知であり、標準的な手段(例えば、米国特許第6331415号明細書;米国特許第5807715号明細書;米国特許第4816567号明細書及び米国特許第4816397号明細書に記載されている)によって達成され得る。
【0155】
本開示はまた、例えば国際公開第2000/34317号及び国際公開第2004/108158号に記載されるような脱免疫化タンパク質も企図する。脱免疫された抗体及びタンパク質は、1つ又は複数のエピトープ、例えば、B細胞エピトープ又はT細胞エピトープが除去されている(すなわち変異している)ことにより、対象が抗体又はタンパク質に対する免疫応答を起こす可能性を低減する。
抗体可変領域を含む他のタンパク質
【0156】
本開示はまた、以下のような抗体の可変領域又は抗原結合ドメインを含む他のタンパク質を企図する:
(i)抗体のV
H又はV
Lの全部又は一部を含む単一ポリペプチド鎖である、単一ドメイン抗体(例えば、米国特許第6248516号明細書を参照);
(ii)ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ(例えば米国特許第5844094号明細書及び/又は米国特許出願公開第2008152586号に記載されているような);
(iii)scFv(例えば米国特許第5260203号明細書に記載されているような);
(iv)ミニボディ(例えば米国特許第5837821号明細書に記載されているような);
(v)「キー及びホール(key and hole)」二重特異性タンパク質(米国特許第5731168号明細書に記載されるような);
(vi)ヘテロコンジュゲートタンパク質(例えば米国特許第4676980号明細書に記載されているような);
(vii)例えば米国特許第4676980号明細書に記載されているような、化学的架橋剤を用いて産生されたヘテロコンジュゲートタンパク質;
(viii)Fab’−SHフラグメント(例えば、Shalaby et al,J.Exp.Med.,175:217−225,1992に記載されるような);又は
(ix)Fab
3(例えば、EP19930302894に記載のような)。
定常ドメイン融合
【0157】
本開示は、抗体の可変領域及び定常領域又はFc又はそのドメイン、例えばC
H2及び/又はC
H3ドメイン、を含むタンパク質を包含する。適切な定常領域及び/又はドメインは当業者には明らかであり、及び/又はこのようなポリペプチドの配列は公的に入手可能なデータベースから容易に入手可能である。Kabatらはまた、いくつかの好適な定常領域/ドメインの記載を提供する。
【0158】
定常領域及び/又はそのドメインは、二量体化、例えばFcRn(新生児Fc受容体)に結合することによる血清半減期の延長、抗原依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗原依存性細胞食作用(ADCP)などの、生物学的活性を提供するために有用である。
【0159】
本開示はまた、変異型定常領域又はドメインを含むタンパク質を企図する(例えば、米国特許第7217797号明細書;米国特許第7217798号明細書;又は米国特許出願公開第20090041770号(増加した半減期を有する)、或いは、米国特許出願公開第2005037000号(増加したADCC)に記載されているような)。
安定化タンパク質
【0160】
本開示の中和タンパク質は、IgG4定常領域又は安定化IgG4定常領域を含み得る。「安定化された(stabilized)IgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換、半抗体(half−antibody)のFabアーム交換若しくは形成を生じる傾向、又は半抗体を形成する傾向を減少させるために改変されたIgG4定常領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換(Fab arm exchange)」とは、IgG4重鎖及び結合された軽鎖(半分子)が、別のIgG4分子由来の重鎖−軽鎖対と交換されている、ヒトIgG4のタンパク質改変の一種を指す。従って、IgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを獲得し得る(その結果、二重特異性分子が得られる)。Fabアーム交換は、インビボで自然に起こり、精製血球又は還元型グルタチオンなどの還元剤によってインビトロで誘導することができる。「半抗体(half antibody)」は、IgG4抗体が解離してそれぞれ単一の重鎖及び単一の軽鎖を含む2つの分子を形成する場合に形成される。
【0161】
一例において、安定化されたIgG4定常領域は、Kabatの系(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,1987 and/or 1991)に従って、位置241のヒンジ領域のプロリンを含む。この位置は、EUナンバリングシステムによるヒンジ領域の位置228に対応する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,2001 and Edelman et al.,Proc.Natl.Acad.USA,63,78−85,1969)。ヒトIgG4では、この残基は、一般にセリンである。プロリンに対するセリンの置換後、IgG4ヒンジ領域は配列CPPCを含む。これに関して、当業者は、「ヒンジ領域」が、抗体の2つのFabアーム上に可動性を付与するFc領域及びFab領域を連結する抗体重鎖定常領域のプロリンリッチ部分であることを認識するであろう。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。それは、一般に、Kabatのナンバリングシステムに従って、ヒトIgG1のGlu226からPro243への伸長として定義される。重鎖間ジスルフィド(S−S)結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによって、他のIgGアイソタイプのヒンジ領域をIgG1配列と整列させることができる(例えば国際公開第2010/080538号を参照)。
追加のタンパク質ベースVEGF−Bシグナル伝達阻害剤
【0162】
VEGF−Bとその受容体との生産的相互作用を妨害し得る他のタンパク質には、変異型VEGF−Bタンパク質が含まれる。
【0163】
一例では、阻害剤は、VEGF−Bに結合する(及び、例えば、VEGF−Aに実質的に結合しない)VEGF−R1の1つ以上のドメインを含む可溶性タンパク質である。一例では、可溶性タンパク質は、IgG1抗体などの、抗体の定常領域をさらに含む。例えば、可溶性タンパク質は、抗体のFc領域、及び任意に抗体(例えばIgG1抗体)のヒンジ領域、をさらに含む。
【0164】
一例において、タンパク質阻害剤は、抗体模倣物、例えば、抗体に類似した様式で標的タンパク質に結合する可変領域を含むタンパク質スキャフォールド(protein scaffold)である。例示的な抗体模倣物の説明は、以下の通りである。
免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメント
【0165】
本開示の化合物の例は、免疫グロブリンの可変領域、例えば、T細胞受容体又は重鎖免疫グロブリン(例えば、IgNAR、ラクダ科動物抗体(camelid antibody))を含むタンパク質である。
重鎖免疫グロブリン
【0166】
重鎖免疫グロブリンは、重鎖を含むが軽鎖を含まない限りにおいて、免疫グロブリン(例えば、抗体)の多くの他の形態とは構造的に異なる。従って、これらの免疫グロブリンは、「重鎖のみ抗体(heaby chain only antibodies)」とも呼ばれる。重鎖免疫グロブリンは、例えば、ラクダ科動物及び軟骨魚類において見出される(IgNARとも呼ばれる)。
【0167】
天然に存在する重鎖免疫グロブリンに存在する可変領域は、従来の4鎖(4−chain)抗体に存在する重鎖可変領域(「V
Hドメイン」と称される)及び従来の4鎖抗体に存在する軽鎖可変領域(「V
Lドメイン」と称される)と区別するために、一般的には、ラクダ科動物Igでは「V
HHドメイン」及びIgNAR中ではV−NARと呼ばれる。
【0168】
重鎖免疫グロブリンは、関連抗原に高親和性でかつ高い特異性で結合するためには、軽鎖の存在を必要としない。これは、単一ドメイン結合フラグメントが、発現が容易であり、一般に安定で可溶性である、重鎖免疫グロブリンに由来し得ることを意味する。
【0169】
ラクダ科動物由来の重鎖免疫グロブリン及びその可変領域、並びにその産生及び/又は単離及び/又は使用のための方法の一般的な記載は、とりわけ、以下の参考文献:国際公開第94/04678号、国際公開第97/49805号及び国際公開第97/49805号に見出される。
【0170】
軟骨魚類由来の重鎖免疫グロブリン及びその可変領域、並びにそれらの産生及び/又は単離及び/又は使用のための方法の一般的な説明は、とりわけ、国際公開第2005/118629号に見出される。
V様(V−Like)タンパク質
【0171】
本開示の化合物の例は、T細胞受容体である。T細胞受容体は、抗体のFvモジュールと同様の構造に結合する2つのVドメインを有する。Novotny et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8646−8650,1991は、いかにしてT細胞受容体の2つのVドメイン(アルファ及びベータと呼ばれる)を融合させて、一本鎖ポリペプチドとして発現させることができ、そしてさらに、抗体scFvに直接類似した疎水性を減少させるために表面残基をどのように改変するか、について記載している。2つのVα及びVβドメインを含む一本鎖T細胞受容体又は多量体T細胞受容体の産生を記載する他の刊行物には、国際公開第1999/045110又は国際公開第2011/107595が含まれる。
【0172】
抗原結合ドメインを含む他の非抗体タンパク質には、一般に単量体であるV様ドメインを有するタンパク質が含まれる。そのようなV様ドメインを含むタンパク質の例には、CTLA−4、CD28及びICOSが含まれる。このようなV様ドメインを含むタンパク質のさらなる開示は、国際公開第1999/045110に含まれる。
アドネクチン(Adnectins)
【0173】
一例において、本開示の化合物は、アドネクチンである。アドネクチンは、ループ領域が抗原結合を与えるように改変されている、ヒトフィブロネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型(
10Fn3)ドメインをベースにしている。例えば、
10Fn3ドメインのβサンドイッチの一端の3つのループは、アドネクチンが抗原を特異的に認識することを可能にするように設計され得る。さらなる詳細については、米国特許出願公開第20080139791号明細書又は国際公開第2005/056764号を参照されたい。
アンチカリン(Anticalins)
【0174】
さらなる例において、本開示の化合物は、アンチカリンである。アンチカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質などの小さな疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質のファミリーである、リポカリンに由来する。リポカリンは、抗原に結合するように設計され得る円錐構造の開放端に複数のループを有する、強固なβシート二次構造を有する。そのような設計されたリポカリンは、アンチカリンとして知られている。アンチカリンのさらなる説明については、米国特許第7250297B1又は米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。
アフィボディ
【0175】
さらなる例において、本開示の化合物は、アフィボディである。アフィボディは、抗原に結合するように設計され得る、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来するスキャフォールドである。Zドメインは、約58個のアミノ酸の3つのらせん状束からなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化によって生成されている。さらなる詳細については、欧州特許第1641818号明細書を参照されたい。
アビマー(Avimers)
【0176】
さらなる例において、本開示の化合物は、アビマー(Avimer)である。アビマーは、Aドメインスキャフォールドファミリー由来のマルチドメインタンパク質である。約35アミノ酸の天然ドメインは、規定されたジスルフィド結合構造をとる。多様性(diversity)は、Aドメインのファミリーによって示される自然の変種(variation)をシャッフルすることによって生成される。さらなる詳細については、国際公開第2002088171号を参照されたい。
DARPins
【0177】
さらなる例において、本開示の化合物は、設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)である。DARPinは、内在性膜タンパク質(integral membrane protein)の細胞骨格への付着を媒介するタンパク質ファミリーであるアンキリン(Ankyrin)に由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのαヘリックスとβターンからなる33残基のモチーフである。それらは、各リピートの最初のαヘリックス及びβターンの残基をランダム化することによって、異なる標的抗原に結合するように設計され得る。それらの結合界面は、モジュールの数を増加させることによって増加させることができる(親和性成熟の方法)。さらなる詳細については、米国特許出願公開第20040132028号明細書を参照されたい。
タンパク質の生産方法
組換え発現
【0178】
組換えタンパク質の場合、組換えタンパク質をコードする核酸を発現ベクターにクローニングすることができ、次いでそれを宿主細胞、例えば、抗体を別に産生しない大腸菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又はサルCOS細胞などの哺乳動物細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、又は骨髄腫細胞にトランスフェクトされる。本開示のタンパク質を発現するために使用される例示的な細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞又はHEK細胞である。これらの目的を達成するための分子クローニング技術は当該分野で公知であり、例えば、Ausubel et al.,(編者),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience(1988,現在までの全ての改訂版を含む)、又はSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている。多種多様なクローニング及びインビトロ増幅法は、組換え核酸の構築に適している。組換え抗体を産生する方法も当技術分野で公知である。米国特許第4816567号明細書又は米国特許第5530101号明細書を参照のこと。
【0179】
単離後、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は無細胞系若しくは細胞における発現のために、核酸が、発現構築物又は発現ベクター中のプロモーターに作動可能に連結されて挿入される。
【0180】
本明細書中で使用される場合、用語「プロモーター」は、その最も広い意味で取られ、例えば、発生の及び/又は外部の刺激に応答して、又は組織特異的様式で、核酸の発現を変化させるさらなる調節エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)を伴う又は伴わず、正確な転写開始に必要なTATAボックス又は開始因子エレメントを含むゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。本文脈において、用語「プロモーター」はまた、作動可能に連結される核酸の発現を付与、活性化又は増強する組換え、合成又は融合核酸、又は誘導体を記載するためにも使用される。例示的なプロモーターは、前記核酸の発現をさらに増強するための、並びに/又は前記核酸の空間的発現及び/若しくは一時的発現を変化させるための、1つ又は複数の特異的調節エレメントのさらなるコピーを含むことができる。
【0181】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結される(operably linked to)」とは、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように、核酸にプロモーターを配置することを意味する。
【0182】
細胞における発現のための多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、以下の1つ以上を含むが、これに限定されない:シグナル配列、抗体をコードする配列(例えば、本明細書で提供される情報に由来する)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。当業者は、抗体の発現に適した配列を知っているであろう。例示的なシグナル配列は、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、α因子リーダー又は酸性ホスファターゼリーダー)又は哺乳動物分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)を含む。
【0183】
哺乳動物細胞において活性な例示的プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期プロモーター(CMV−IE)、ヒト伸長因子1−αプロモーター(EF1)、小型核RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α−ミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター(Adenovirus major late promoter)、β−アクチンプロモーター;CMVエンハンサー/β−アクチンプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーター若しくはその活性フラグメントを含むハイブリッド調節エレメントを含む。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(293細胞、又は懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0184】
酵母細胞における、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びサッカロマイセス・ポンベ(S.pombe)を含む群から選択される酵母細胞などにおける発現に適した典型的なプロモーターには、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、又はTEF1プロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0185】
単離された核酸又はそれを含む発現構築物を、発現のために細胞に導入するための手段は、当業者に公知である。所与の細胞に使用される技法は、既知の成功した技法に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段には、マイクロインジェクション、DEAE−デキストランを介したトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco、MD、米国)及び/又はセルフェクチン(Gibco、MD、米国)を使用するなどのリポソームによって媒介されるトランスフェクション、PEG媒介DNA取り込み、エレクトロポレーション及びDNAコーティングしたタングステン若しくは金粒子(Agracetus Inc.、WI、米国)などを使用するなどの微粒子衝突を含む。
【0186】
抗体を産生するために使用される宿主細胞は、使用される細胞のタイプに依存して、様々な培地中で培養され得る。Ham’s Fl0(Sigma)、最小必須培地(Minimal Essential Medium)((MEM)(Sigma))、RPM1−1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)のような市販の培地は、哺乳類細胞の培養に適している。本明細書で論じる他の細胞タイプを培養するための方法は、当技術分野で公知である。
タンパク質の精製
【0187】
産生/発現後、本開示のタンパク質は、当該分野で公知の方法を用いて精製される。そのような精製は、非特異的タンパク質、酸、脂質、炭水化物などを実質的に含まない本開示のタンパク質を提供する。一例では、タンパク質は、調製物中のタンパク質の約90%超(例えば、95%、98%又は99%)が本開示のタンパク質である調製物中に存在する。
【0188】
ペプチド生成の標準的な方法は、本開示の単離されたタンパク質を得るために採用され、限定されないが、様々な高圧(又は高速)液体クロマトグラフィー(HPLC)及び非HPLCポリペプチド単離プロトコル、例えば分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、相分離法(phase separation methods)、電気泳動分離、沈殿法、塩析イン/アウト法(salting in/out methods)、イムノクロマトグラフィー法、及び/又は他の方法が含まれる。
【0189】
一例において、アフィニティー精製は、標識を含む融合タンパク質を単離するために有用である。アフィニティークロマトグラフィーを使用してタンパク質を単離する方法は、当技術分野で公知であり、例えばScopes(In:Protein purification:principle and practice、Third Edition、Springer Verlag,1994)に記載されている。例えば、標識に結合する抗体又は化合物(ポリヒスチジンタグの場合、これは、例えばニッケル−NTAであり得る)は、固体支持体上に固定化される。次いで、タンパク質を含む試料を、結合が起こるのに十分な時間及び条件下で、固定された抗体又は化合物に接触させる。未結合又は非特異的に結合したタンパク質を洗浄するために洗浄した後、タンパク質は溶出される。
【0190】
抗体のFc領域を含むタンパク質の場合、プロテインA又はプロテインG又はその改変形態をアフィニティー精製に使用することができる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖Fc領域を含む精製タンパク質を単離するのに有用である。プロテインGは全てのマウスFcアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される。
核酸ベースVEGF−Bシグナル伝達阻害剤
【0191】
本開示の一例では、本開示の任意の実施例による本明細書に記載の治療及び/又は予防方法は、VEGF−Bの発現を減少させることを含む。例えば、このような方法は、核酸の転写及び/又は翻訳を減少させる化合物を投与することを含む。一例では、化合物は、核酸、例えば、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、PNA、干渉RNA、siRNA、マイクロRNAである。
アンチセンス核酸
【0192】
「アンチセンス核酸」という用語は、本開示の任意の例において本明細書に記載されるポリペプチドをコードする特異的mRNA分子の少なくとも一部に相補的であって、mRNA翻訳のような転写後事象を妨害することができるDNA又はRNA又はその誘導体(例えば、LNA又はPNA)、又はその組み合わせを意味すると解釈されるべきである。アンチセンス法の使用は、当技術分野で公知である(例えば、Hartmann and Endres(編者)、Manual of Antisense Methodology、Kluwer(1999)参照)。
【0193】
本開示のアンチセンス核酸は、生理学的条件下で標的核酸にハイブリダイズする。アンチセンス核酸は、構造遺伝子又はコード領域に対応する配列、又は遺伝子発現若しくはスプライシングを制御する配列に対応する配列を含む。例えば、アンチセンス核酸は、VEGF−B、又は5’−非翻訳領域(UTR)又は3’−UTR又はこれらの組み合わせをコードする核酸の標的コード領域に対応してもよい。それは転写中又は転写後に、例えば標的遺伝子のエキソン配列にのみスプライスされ得るイントロン配列に部分的に相補的であってもよい。アンチセンス配列の長さは、例えばVEGF−Bをコードする核酸の少なくとも19個の連続したヌクレオチド、例えば少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチドであるべきである。全遺伝子転写物に相補的な全長配列が使用されてもよい。長さは100〜2000ヌクレオチドであり得る。標的転写物に対するアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも90%、例えば95〜100%であるべきである。
【0194】
VEGF−Bに対する例示的なアンチセンス核酸は、例えば国際公開第2003/105754号に記載されている。
触媒核酸
【0195】
「触媒核酸(catalytic nucleic acid)」という用語は、明確な基質を特異的に認識し、この基質の化学修飾を触媒する、DNA分子若しくはDNA含有分子(当該技術分野では「デオキシリボザイム」又は「DNAザイム(DNAzyme)」としても知られている)又はRNA若しくはRNA含有分子(「リボザイム」又は「RNAザイム(RNAzyme)」としても知られる)をいう。触媒核酸中の核酸塩基は、塩基A、C、G、T(及びRNAの場合はU)であり得る。
【0196】
典型的には、触媒核酸は、標的核酸の特異的認識のためのアンチセンス配列、及び核酸切断酵素活性(本明細書では「触媒ドメイン」とも呼ばれる)を含む。本開示において有用なリボザイムのタイプは、ハンマーヘッドリボザイム及びヘアピンリボザイムである。
RNA干渉
【0197】
RNA干渉(RNAi)は、特定のタンパク質の産生を特異的に阻害するために有用である。理論によって制限されることなく、この技術は、目的の遺伝子のmRNA又はその一部(本件の場合、VEGF−BをコードするmRNA)と本質的に同一の配列を含むdsRNA分子の存在に依存する。好都合なことに、dsRNAは、組換えベクター宿主細胞中の単一のプロモーターから産生され得、ここで、センス及びアンチセンス配列は、ループ構造を形成する無関係な配列を伴って、センス及びアンチセンス配列がハイブリダイゼーションしてdsRNA分子を形成することを可能にする無関係の配列に隣接する。本開示の適切なdsRNA分子の設計及び産生は、特に国際公開第99/32619号、国際公開第99/53050号、国際公開第99/49029号及び国際公開第01/34815号を考慮すると、当業者の能力の範囲内である。
【0198】
ハイブリダイズするセンス配列及びアンチセンス配列の長さはそれぞれ、少なくとも19の連続したヌクレオチド、例えば、少なくとも30又は50ヌクレオチド、例えば少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチドであるべきである。全遺伝子転写物に対応する全長配列を使用してもよい。長さは、100〜2000ヌクレオチドであり得る。標的とされる転写物に対するセンス配列及びアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも85%、例えば少なくとも95%、例えば95〜100%であるべきである。
【0199】
例示的な低分子干渉RNA(「siRNA」)分子は、標的mRNAの約19〜21個の連続したヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。例えば、siRNA配列は、ジヌクレオチドAAで始まり、約30〜70%(例えば、30〜60%、例えば40〜60%、例えば約45〜55%)のGC含有量を含み、それが導入される哺乳動物のゲノム中の標的以外の任意のヌクレオチド配列に対して、例えば標準的なBLAST検索によって決定されるように、高いパーセンテージ同一性を有さないものである。VEGF−Bの発現を低下させる典型的なsiRNAは、Santa Cruz Biotechnology又はNovus Biologicalsから市販されている。
【0200】
VEGF−Bの発現を低下させる短いヘアピンRNA(shRNA)も当技術分野で公知であり、Santa Cruz Biotechnologyから市販されている。
スクリーニングアッセイ
【0201】
VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、例えば、以下に記載するように、当該分野で公知の技術を用いて同定することができる。同様に、本明細書に記載の方法での使用に適したVEGF−Bシグナル伝達阻害剤の量は、例えば以下に記載するように、当技術分野で公知の技術を用いて決定又は推定することができる。
中和アッセイ
【0202】
VEGF−Bに結合し、シグナル伝達を阻害する化合物については、中和アッセイを使用することができる。
【0203】
一例では、中和アッセイは、検出可能に標識された可溶性VEGF−R1の存在下若しくは非存在下で、VEGFと化合物とを接触させること、或いは、VEGF−R1を発現する細胞若しくは可溶性VEGF−R1の存在下又は非存在下で、検出可能に標識されたVEGF−Bと化合物とを接触させること、を含む。次いで、VEGF−R1に結合したVEGF−Bのレベルを評価する。化合物の非存在下と比較した、化合物の存在下での結合したVEGF−Bのレベル低下は、化合物がVEGF−R1とVEGF−Bの結合を阻害し、結果としてVEGF−Bシグナル伝達を阻害することを示す。
【0204】
別の中和アッセイは、国際公開第2006/012688に記載されており、固体支持体上に固定化された第二のIg様ドメインを含むVEGF−R1のフラグメントを、化合物とプレインキュベートした組換えVEGF−Bの亜飽和濃度と接触させることを含む。未結合タンパク質を除去するために洗浄した後、固定化されたタンパク質を抗VEGF−B抗体と接触させ、結合した抗体の量(固定化したVEGF−Bの指標)を決定する。化合物の非存在下でのレベルと比較した結合抗体のレベルを低下させる化合物は、VEGF−Bシグナル伝達の阻害剤と考えられる。
【0205】
別の例では、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物は、増殖することについてVEGF−Bシグナル伝達に依存する細胞、例えば、ヒトエリスロポエチン受容体の細胞内ドメイン及びVEGF−R1の細胞外ドメインを含むキメラ受容体を発現するために、国際公開第2006/012688に記載のように改変されたBaF3細胞を用いて同定される。細胞は、VEGF−Bの存在下、かつ、化合物の存在下又は非存在下で培養される。次に、標準的な方法、例えばコロニー形成アッセイ、チミジン取り込み又は細胞増殖の別の適切なマーカー(例えば、MTS色素還元アッセイ)の取り込みを使用して、細胞増殖は評価される。VEGF−Bの存在下での増殖レベルを低下させる化合物は、VEGF−Bシグナル伝達の阻害剤と考えられる。
【0206】
化合物は、標準的な方法を用いてVEGF−Bに結合する能力についても評価することができる。タンパク質への結合を評価するための方法は、例えばScopes(In:Protein purification:principle and practice、Third Edition,Springer Verlag、1994)に記載されているように、当技術分野で公知である。そのような方法は、一般に、化合物を標識し、固定化したVEGF−Bと接触させることを含む。非特異的に結合した化合物を除去するために洗浄した後、標識の量及び結果として結合した化合物が検出される。もちろん、化合物を固定化し、VEGF−B標識することができる。パンニング型アッセイもまた使用することができる。あるいは、又はさらに、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することができる。
発現アッセイ
【0207】
VEGF−Bの発現を低減又は防止する化合物は、細胞を化合物と接触させ、VEGF−Bの発現レベルを決定することによって同定される。核酸レベルでの遺伝子発現を決定するための適切な方法は、当該分野で公知であり、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)又はマイクロアレイアッセイを含む。タンパク質レベルでの発現を決定するための適切な方法はまた、当技術分野で公知であり、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)、免疫蛍光又はウェスタンブロッティングを含む。
インビボアッセイ
【0208】
本明細書に記載の化合物は、動物モデルにおける活性について試験することができる。一例では、動物モデルは、代謝機能不全及び高血糖のモデルである。例えば、食餌誘発肥満(DIO)マウスモデルである。これは、十分に確立された実験的例(experimental paradigm)であり、マウスは、インスリン感受性及びグルコース取り込みの低下の障害と関連する末梢組織における過度又は異所性の脂質沈着を発症し、マウスは肥満、高インスリン血症、高血糖、脂質異常症及び高血圧を示す(Harberg,C.E.,et al.Nature 490,426−430;Collins,S.,et al.Pysiology & Behaviour 81,243−248)。
【0209】
非ヒト動物対象において虚血性脳卒中を誘発するための様々な既知の技術が存在し、例えば、大動脈/大静脈閉塞、外頚部結紮(extemal neck torniquet)若しくはカフ(cuff)、出血若しくは低血圧、頭蓋内圧亢進若しくは総頸動脈閉塞、2血管閉塞(two−vessel occlusion)及び低血圧、4血管閉塞(four−vessel occlusion)、片側総頚動脈閉塞(unilateral common carotid artery occlusion)(一部の種のみ)、エンドセリン−1誘発動脈及び静脈狭窄、中大脳動脈閉塞(MCAO)、自然発症の脳梗塞(高血圧ラットで自発的に)、マクロ球塞栓術、血栓塞栓術又は微小球塞栓術である。出血性脳卒中は、コラゲナーゼを脳内に注入することによってモデル化することができる。
【0210】
一例では、脳卒中のモデルは、以前にSu et al.Nature Medicine,2008;14:731−737に記載されているように、虚血性脳卒中を生じる、中大脳動脈閉塞(MCAO)を含む。
医薬組成物及び治療方法
【0211】
VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物(別名、活性成分)は、予防的又は治療的処置のために、非経口、局所、経口又は局所投与、エアロゾル投与、又は経皮投与に有用である。一例において、化合物は、非経口的に、例えば皮下又は静脈内に投与される。
【0212】
投与される化合物の製剤は、選択される投与経路及び製剤(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)に応じて変化する。投与すべき化合物を含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容される担体中に調製され得る。溶液又はエマルションの場合、適切な担体としては、例えば、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水性又はアルコール/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンガー又は固定油を含み得る。水、緩衝化水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液及びグリシンを含む、様々な適切な水性担体が当業者に知られている。静脈内ビヒクルは、様々な添加剤、防腐剤、又は液体、栄養素又は電解質補充剤を含むことができる(一般に、Remington’s Pharmaceutical Science,16th Edition,Mack,Ed.1980を参照のこと)。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤及び毒性調整剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムのような生理学的条件に近づけるのに必要とされる医薬的に許容される補助物質を任意に含み得る。化合物は、当技術分野で知られている凍結乾燥及び再構成技術に従って、保存のために凍結乾燥され、使用する前に適当な担体中で再構成することができる。
【0213】
選択された培地中の活性成分(単数又は複数)の最適濃度は、当業者に公知の手順に従って経験的に決定することができ、所望の最終的な医薬製剤に依存する。
【0214】
本開示の化合物の投与のための投与量範囲は、所望の効果を生じるのに十分なものである。例えば、組成物は、治療上又は予防上有効な量の化合物を含む。
【0215】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」は、対象におけるVEGF−Bのシグナル伝達を阻害/低減/予防するのに十分な量の化合物を意味すると解釈されるものとする。当業者は、そのような量は、例えば、化合物及び/又は特定の対象及び/又は治療される脳卒中の種類及び/又は重症度に依存して変化することを認識するであろう。従って、この用語は、本開示を特定の量、例えば化合物の重量又は数に限定するように解釈されるべきではない。
【0216】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、脳卒中の1つ以上の症状を軽減又は阻害するのに十分な量の化合物を意味すると解釈される。
【0217】
本明細書中で使用される場合、用語「予防有効量(prophylactically effective amount)」は、脳卒中の1つ以上の検出可能な症状の発症を予防又は阻害又は遅延させるのに十分な量の化合物を意味すると解釈される。
【0218】
一例では、化合物は、以下の効果の1つ以上を有するのに有効な量で投与される:
・ 血液脳関門の損傷を軽減する、又は予防する;
・ 脳の血管透過性を低下させる、又は予防する;
・ 脳の梗塞サイズを縮小させる、又は予防する;及び/又は
・ 頭蓋内出血を軽減する、又は予防する。
【0219】
投薬量は、過粘稠度症候群、肺水腫、鬱血性心不全などの有害な副作用を引き起こすほど多くすべきではない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、性別及び疾患の程度によって変化し、当業者によって決定され得る。投薬量は、合併症の場合には、個々の医師が調整することができる。
【0220】
投与量は、1日又は複数日に1回又は複数回の投与において、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、例えば、約0.2mg/kg〜約200mg/kg、例えば約0.5mg/kg〜約20mg/kgに変えることができる。
【0221】
いくつかの例では、化合物は、その後(維持用量(maintenance doses))より高い初期(又は負荷)用量にて投与される。例えば、化合物は、約1mg/kg〜約30mg/kgの初期用量で投与される。次いで、化合物は、約0.0001mg/kg〜約1mg/kgの維持用量で投与される。維持用量は、7日〜35日ごと、例えば、14日又は21日又は28日ごとに投与されてもよい。
【0222】
いくつかの例では、用量漸増法(dose escalation regime)が使用され、化合物は、その後の用量で使用されるよりも低い用量で最初に投与される。この投薬計画は、対象が最初に罹患した有害事象の場合に有用である。
【0223】
治療に十分に応答していない対象の場合、1週間に複数の用量が投与されてもよい。あるいは、又はそれに加えて、増加する用量が投与されてもよい。
【0224】
一例では、本開示の化合物(単数又は複数)は、現在使用されているか、又は脳卒中の予防又は治療のために開発中の少なくとも1つの追加の既知の化合物と組み合わせて使用される。このような既知の化合物の例には、組織プラスミノーゲンアクチベーター(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、ラノテプラーゼ、デスモテプラーゼ及びスタフィロキナーゼなどの一般的な血栓溶解剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0225】
さらに、本開示の方法は、これらに限定されないが、異常脂質血症、高血圧、肥満、神経障害及び/又は網膜症などを含む、脳卒中に直接的又は間接的に関連する他の疾患の治療のための少なくとも1つの他の治療剤の同時投与を含んでもよい。本発明の化合物(単数又は複数)と同時投与することができる薬剤のさらなる例は、コルチコステロイド;免疫抑制薬;抗生物質;抗高血圧及び利尿薬(例えばACE阻害薬);胆汁捕捉レジン(bile sequestrant resin)、コレスチラミン、ニコチン酸、及びとりわけコレステロール及びトリグリセリドを減少させるために使用される剤(drugs)及び薬剤(medications)などの脂質低下剤(例えば、フィブラート(例えば、ジェムフィブロジル(商標))及び、ロバスタチン(商標)、アトルバスタチン(商標)、フルバスタチン(商標)、レスコール(商標)、リピトール(商標)、メバコール(Mevacor)(商標)、プラバコール(Pravachol)(商標)、プラバスタチン(Pravastatin)(商標)、シンバスタチン(Simvastatin)(商標)、ゾコー(Zocor)(商標)、セリバスタチン(Cerivastatin)(商標)などのHMG−CoA阻害剤);脂質の腸内吸収を阻害する化合物(例えば、エゼチミンデ(ezetiminde));ニコチン酸;ビタミンD、である。
【0226】
上記から明らかなように、本開示は、対象の併用治療的処置(concomitant therapeutic treatment)の方法を提供するものであり、それを必要とする対象に、有効量の第1の化合物及び第2の化合物を投与することを含み、ここで、前記薬剤は、本開示の化合物(すなわち、VEGF−Bシグナル伝達阻害剤)であり、第2の薬剤は、脳卒中の予防又は治療のためのものである。
【0227】
本明細書で使用される場合、「併用治療(concomitant treatment)」という語句中のように、「併用(concomitant)」という用語は、第2の薬剤の存在下で第1の薬剤を投与することを含む。併用治療的処置方法は、第1、第2、第3又は追加の薬剤を同時投与する方法を含む。併用治療的処置方法はまた、第1の又は追加の薬剤を、第2又は追加の薬剤の存在下で投与する方法を含み、ここで、第2又は追加の薬剤は、例えば、以前に投与されていてもよい。併用治療的処置方法は、異なる行為者によって段階的に実施されてもよい。例えば、ある行為者が第1の薬剤(agent)を対象に投与するものであり、第2の行為者が対象に第2の薬剤を投与してもよく、第1の薬剤(及び/又は追加の薬剤)が第2の薬剤(及び/又は追加の薬剤)の存在下での投与後である限り、投与工程は、同時に又はほぼ同じ時間に、又は離れた時間に実行されてもよい。行為者と対象は同じ実体(entity)(例えば、人間)であってもよい。
【0228】
さらなる治療剤の投与時間は、本発明の化合物の投与時間から測定することができる。間隔は、例えば、5分〜24時間又は48時間とすることができる。間隔は、例えば、15分〜6時間、15分〜4.5時間、15分〜3時間、15分〜1時間、30分〜6時間、又は30分〜3時間、又は30分〜4.5時間、又は1〜3時間、又は1〜4.5時間、又は1〜5時間、又は1〜6時間、又は1〜7時間、又は1〜8時間、又は1〜9時間、又は1〜10時間であってもよい。
【0229】
一例において、本開示はまた、対象における脳卒中の効果を低減する方法、又は脳卒中を治療する方法を提供するものであって、前記方法は、前記対象に血栓溶解剤を投与することを含み、ここで、前記対象は、脳卒中に罹患している対象に、VEGF−Bシグナル伝達阻害剤の投与を受けている、又は(脳卒中の症状の発症後に)以前受けたことがあり、かつ、別の治療を受けている。
キット
【0230】
本開示の別の例は、上記のような脳卒中の治療に有用な化合物を含むキットを提供する。
【0231】
一例において、キットは、(a)本明細書に記載のVEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物及び/又は本明細書に記載の血栓溶解性化合物を、任意に医薬的に許容される担体若しくは希釈剤中に、含む容器;及び(b)対象の脳卒中の影響を軽減するための指示(instruction)を有する添付文書(package insert)、を含む。
【0232】
本開示のこの実施例によれば、添付文書は、容器上又は、容器に同封される。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、脳卒中の治療に有効な組成物を保持又は含有し、滅菌アクセスポートを備えてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、VEGF−Bシグナル伝達を阻害する化合物である。ラベル又は添付文書は、提供されている化合物及び他の薬剤の投与量並びに間隔に関する具体的な指針と共に、組成物が、治療に適する対象(例えば、脳卒中を有するか又は発症しやすい患者)を治療するために使用されることを示す。キットはさらに、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液及び/又はデキストロース溶液などの医薬的に許容される希釈剤緩衝液を含む容器をさらに含んでもよい。該キットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針及び注射器を含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の物質をさらに含み得る。
【0233】
本開示は、以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例】
【0234】
実施例1:インビトロでのヒト初代脳由来内皮細胞における脂肪酸取り込みの増加は、グルコース取り込みを減少させた
VEGF−Bで刺激された初代内皮細胞は、脂肪酸取り込みを増加させ、グルコース取り込みを減少させた
【0235】
ヒト初代脳微小血管内皮細胞、HBMEC(継代数<5)を、37℃、5%CO
2で細胞培養インキュベーター中、5%ウシ胎仔血清(FCS)を含む補体パック(complement pack)を備える内皮基礎培地中にて、24ウェルプレートで培養した。刺激の6時間前に、FCSを、脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(FAF−BSA)で置換することにより、内皮細胞を飢餓状態にした。ビヒクル(対照)、100ng/mlのVEGF−B
167(B167)、100ng/mlのVEGF−B
186(B186)又は2μg/mlの抗VEGF−B抗体2H10を2時間添加することにより、細胞を刺激した。
【0236】
刺激後、BODIPY標識脂肪酸(FA)又は蛍光グルコースアナログ(2−NBDG)の取り込みを測定した。2−NBDGをグルコース取り込みのマーカーとして使用した。細胞をBODIPY−C12又は2−NBDGトレーサーと共に5又は20分間それぞれインキュベートした。2−NBDGを添加する前に、細胞をKreb’s Ringer緩衝液で10分間洗浄して、培養培地由来グルコースを除去した。FA又はグルコーストレーサーとのインキュベーション後、細胞を洗浄し、画像取得及び定量化の前に固定した。
【0237】
100ng/mlのVEGF−Bアイソフォーム(VEGF−B
167又はVEGF−B
186)のいずれかによる刺激は、脂肪酸(FA)取り込みを有意に増加させ、グルコース取り込みを有意に減少させた。ブロッキングVEGF−B抗体2H10単独での処理は、脂肪酸又はグルコース取り込みを有意に変化させなかったが、培養した内皮細胞におけるVEGF−Bの内因性産生及び分泌を示すFA取り込み及びグルコース取り込みの減少傾向が観察された。
【0238】
これらのデータは、脳血管内皮細胞が、FA取り込みの増加及びグルコース取り込みの減少を伴ってVEGF−Bに応答することができ、脂質及びグルコースの取り込みが脳内皮において相互に関連し得ることを示唆している。
【0239】
図1A及び1Bは、VEGF−Bタンパク質で処置した初代脳由来内皮細胞におけるFA取り込みの増加及びグルコース取り込みの減少を示す。
初代内皮細胞の脂肪酸への暴露は、グルコース取り込みを減少させる
【0240】
ヒト初代内皮細胞を、パルミチン酸ナトリウムとオレイン酸ナトリウム(50μM)の混合物の存在下又は非存在下で2時間又は一晩培養し、その後2−NBDGトレーサーに供し、グルコース取り込みについてアッセイした。
【0241】
FAリッチ環境及び脂質負荷に曝された内皮細胞は、インビトロでグルコースを取り込む能力が有意に低下したことを示す。これは、食餌誘発性肥満(DIO)モデルなどのように、高脂質環境での内皮細胞が同様に応答し、これはインビボでのDIOの設定において、組織グルコース取り込みの減少につながることを示唆する。
【0242】
図1Cは、脂肪酸に暴露された初代内皮細胞におけるグルコース取り込みの減少を示す。脂質負荷に曝された内皮細胞は、グルコースを取り込む能力が有意に低下し、内皮細胞におけるFAの曝露及び取り込みが、グルコース取り込みを減少させることを示唆している。
実施例2:食餌誘発性肥満を有するマウスは、血糖レベルが上昇し、虚血性脳卒中の発生率が増加した
食餌誘発性肥満(DIO)を有するマウスは、血糖レベルが上昇した
【0243】
3週齢のC57BL/6マウスに、高脂肪食(脂肪から60%のカロリー)又は低脂肪対照食(通常の餌、脂肪から10%のカロリー)を15週間与えた。血中グルコースレベルを安定化させる手段として、2時間にわたり食物を回収した後の日の同時刻における血糖レベルを測定した。尾の先端を切断し、血液一滴を、グルコースメーターを用いて測定した。
【0244】
DIOマウスは、以前の研究(Hagberg et al.Nature 2012;Collins et al.Physiology&Behavior 2004)に従って、年齢が一致したマウスと比較して、正常な飼料で血糖レベルの上昇を示した。
【0245】
図2Aは、DIOを有するマウスが、年齢が一致したマウスと比較して、正常な飼料で血糖レベルが上昇したことを示す。
DIOを有するマウスは、より重度の脳卒中を有し、自発的出血及びより大きい梗塞の発生率が増加した
【0246】
3週齢の雄性C57BL/6Jマウスを、脳虚血(中大脳動脈閉塞(MCAO)モデル)を誘発する最低12週間前に、高脂肪食(脂肪から60%カロリー)又は低脂肪対照食(通常の飼料、脂肪から10%カロリー)上に置いた。
【0247】
MCAOモデルを用いて脳虚血を誘導するために、マウスを抱水クロラール(450mg/kg)で麻酔し、解剖顕微鏡下にしっかりと置いた。左のMCAは開頭術により露出され、レーザードップラーフロープローブは、MCAの分岐部から1.5mm背側の中線(dorsal median)の大脳皮質の表面上に置かれた。プローブは、流量計に接続され、連続データ収集プログラムを用いて記録された組織灌流単位(TPU)から相対的脳血流(CBF)を決定した。3.5mWの540nmレーザーをMCAに6cmの距離から当て、ローズベンガル染料(RB)(50mg/kg)を尾静脈から注入した。安定閉塞は、TPUが閉塞前レベルの20%未満に低下し、レーザー中止の10分以内にリバウンドしない場合に達成された。
【0248】
梗塞体積を測定するために、脳を取り出し、2mm厚の冠状切片に切断し、4%の2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)で染色した。脳全体の5つの冠状レベルにおける梗塞領域を同定し、梗塞及び半球体積を測定した。梗塞体積は、対側半球の体積からの非梗塞同側半球の体積を測定し、差し引くことによって計算した。
【0249】
DIOを有するマウスは、痩せたマウスよりも重度の脳卒中を有し、自発的出血及びより大きな梗塞の発生率が有意に増加した。脳卒中の結果は、DIOモデルでは、梗塞サイズ及び自発的脳内出血(ICH)の発生率の増加の両方において、正常な食餌対照マウスよりも有意に悪かった。
【0250】
図2B及び2Cは、DIOを有するマウスが、虚血性脳卒中後、脳卒中体積が大きく、出血が増加したことを示している。
DIOを有するマウスは、脳虚血後にVEGF−B受容体Nrp1の発現を有意に増加させた
【0251】
DIOマウスを上記のようにMCAOに供した。虚血3時間後に、マウスを灌流し、屠殺し、同一(ipsi−)及び対側半球をホモジェナイズし、全RNAを調製した。Vegfb及びその受容体Vegfr1(Flt1)及びニューロピリン−1(Nrp1)の転写産物レベルをqPCRにより定量した。
【0252】
Vegfb及びVegfr1の発現は、非虚血の対側半球と比較して虚血の3時間で有意に増加しなかったが、Nrp1の発現がMCAOの3時間後に虚血半球において、ほぼ3倍に増加したことから、VEGF−Bシグナル伝達が、脳虚血の間に局所的に増加し得ることを示唆している。
【0253】
図2Dは、Vegf−b又はFlt1発現ではなく、Nrp1発現が、虚血性脳卒中後に、DIOを有するマウスにおいて有意に増加することを示す。
実施例3:中和抗VEGF−B抗体(2H10)による予防的処置は、DIOを有するマウスにおける虚血性脳卒中の進行を予防する
VEGF−B拮抗作用は、DIOを有するマウスの脳におけるグルコース取り込みを改善する
【0254】
C57BL/6Jマウスに通常の飼料(除脂肪(lean))又は高脂肪飼料(DIO)を与え、DIOマウスをアイソタイプ対照又は抗VEGF−B 2H10抗体(16mg/kg)のいずれかで週2回30日間処理し、その後[
18F]−DG PETイメージングを行った。
【0255】
DIOは、除脂肪対照マウスと比較して、脳におけるグルコース取り込みを減少させ(標識グルコースアナログを用いて測定した)、DIOを有するマウスにおけるVEGF−Bの長期阻害が、脳におけるグルコース取り込みを有意に改善した。これらのデータは、末梢組織と同様に、DIOに関連する全身代謝障害が、脳が血液からグルコースを取り込む能力を低下させ、VEGF−Bシグナル伝達がDIOモデルにおけるCNSグルコース代謝の調節において役割を果たす可能性があることを示唆する。
【0256】
図3Aは、2H10を用いたVEGF−Bアンタゴニズムが、DIOを有するマウスの脳におけるグルコース取り込みを改善することを示す。
予防的抗VEGF−B処置は、DIOを有するマウスにおける虚血性脳卒中の重篤度を有意に低下させる
【0257】
VEGF−Bが神経血管機能障害を促進し、代謝障害のバックグラウンドにおける虚血性脳卒中の重篤度を増加させるかどうかを直接試験するために、VEGF−Bに対するモノクローナル抗体、2H10、又はアイソタイプ対照の処理の有無で、DIOを有するマウスにおいて、血栓性脳卒中(thrombotic stroke)を誘導した。
【0258】
いずれかの抗体16mg/kgを、MCAOの−7日、−3日、及び1時間前に3回注射(I.P.)して、マウスを1週間処置した。次いで、マウスに光血栓性MCAOを供し、上述のように分析した。DIOバックグラウンドにおいて、VEGF−Bブロッキング抗体、2H10による治療は、梗塞サイズ及びICHの両方を有意に減少させる。
【0259】
図3B及び3Cは、VEGF−Bブロッキング抗体(2H10)での予防的処置が、DIOを有するマウスにおける虚血性脳卒中後の転帰を改善することを示す。
抗VEGF−Bで予防的に処置したDIOを有するマウスは、脳虚血後のグルコーストランスポーターGlut−1の発現を保持する
【0260】
3週齢のC57BL/6Jマウスに高脂肪食を17週間与えた後、それらを、MCAOの−7日、−3日、及び1時間前にIP注射により16mg/kgのアイソタイプ対照又は抗VEGF−B 2H10抗体のいずれかで1週間前処理した。
【0261】
対照又は2H10抗体で前処理したDIOマウスを、MCAOの1時間後にPFA中で灌流して固定し、脳にビブラトーム切片を施した。切片をGlut−1に対する抗体で染色し、免疫蛍光で検出した。
【0262】
DIOを用いたマウスの脳血管におけるグルコーストランスポーターGlut−1の染色は、虚血ゾーンの境界において、MCAOの早くも1時間後、非虚血性半球(対照)の同様の血管と比較して、Glut−1染色の顕著な喪失があったことを示した。
【0263】
MCAOの前の、VEGF−Bブロッキング抗体2H10での1週間の前処置は、境界部(penumbra)の血管におけるGlut−1抗原を部分的に保護する。これは、2H10によるVEGF−Bシグナル伝達の遮断が、Glut−1グルコーストランスポーター機能を保持することによって虚血境界部における血管によるより良好なグルコース取り込みを促進することを示唆しており、これにより、この血流減少領域における血管が、境界部の低酸素及び低血糖環境を改善させることができる。
【0264】
図3Dは、非虚血性対側半球と比較して、虚血脳半球におけるGlut−1の保持された細胞膜発現と相関する、VEGF−Bブロッキング抗体2H10で前処理したDIOマウスを示す。免疫蛍光の相対的な領域がプロットされている。
予防的抗VEGF−B処置は、脳虚血後のDIOを有するマウスにおける血液脳関門漏出を減少させる
【0265】
DIOマウスを、上記のように2H10又はアイソタイプ対照抗体で前処理し、続いてMCAOを行った。MCAO誘導の直前に、70kDaの蛍光デキストラントレーサーをマウスに注射し(IV)、BBB透過性の分析を可能にした。MCAO誘導の1時間後、マウスを灌流し、軽く後固定し、BBB透過性について脳を解析した。
【0266】
MCAOの1時間後には、DIOを有するマウスにおいてBBB完全性の劇的な消失が観察された。これは、VEGF−Bブロッキング抗体2H10による処理によって有意に減少した。これは、VEGF−Bの遮断が、虚血の最初の1時間の間にDIOを有するマウスにおいて脳血管機能を改善することを示唆している。
【0267】
図3Eは、VEGF−Bブロッキング抗体2H10による前処理が、DIOを有するマウスにおいて虚血性脳卒中1時間後の血液脳関門漏出を減少させることを示す。
予防的抗VEGF−B処置は、脳虚血後のDIOを有するマウスにおけるオクルディンリン酸化の誘導を減少させる
【0268】
DIOマウスを、2H10又はアイソタイプ対照抗体で前述のように1週間前処理し、続いてMCAOを行った。虚血3時間後、マウスを灌流し、脳を収集し、直ちに凍結させた。凍結切片を得て、ホスホセリン特異的抗オクルディン抗体(セリン残基490)で免疫蛍光染色し、蛍光強度を定量した。
【0269】
オクルディンは、MCAO及び虚血再灌流傷害後に急速にリン酸化されるタイトジャンクションタンパク質である(Muthusamy et al.,Journal of cerebral blood flow and metabolism 2014)。セリン残基490上のオクルディンのリン酸化は、BBB破壊及び透過性に関与することが以前に示されている(Murakami et al.,Diabetes 2012;Murakami et al.,The Journal of Biological Chemistry 2009)。
【0270】
MCAOの3時間後の対側半球(対照)と比較して、アイソタイプ対照(IgG)処置DIOマウスは、境界部(同一(ipsi))におけるオクルディンセリンリン酸化(pS490)の増加を示し、虚血半球における内皮タイトジャンクション分解及び血管透過性の増加を示した。抗VEGF−B抗体2H10による治療は、同側半球境界領域におけるオクルディンリン酸化の誘導を減少させ、それは、抗VEGF−B抗体2H10での治療がBBB完全性の向上をもたらすという概念を支持する。
【0271】
図3Fは、抗VEGF−B処置が、DIOを有するマウスにおける虚血性脳卒中後のオクルディンリン酸化を減少させることを示す。
予防的抗VEGF−B処理は、脳虚血後のDIOを有するマウスの脳血管における脂質蓄積を阻止する
【0272】
VEGF−Bシグナルがグルコース取り込みをダウンレギュレートし、脂質取り込みを増加させるので(上に示したように)、脳血管を、痩せたマウス及び肥満マウスにおいて、及び2H10抗体で処置した肥満マウスにおいて、MCAO後の脂質蓄積について調べた。
【0273】
DIOマウスを、上記で詳述した2H10又はアイソタイプ対照抗体で前処理し、続いてMCAOを行った。前処置無し及び除脂肪年齢調整対照のDIOマウスもMCAOに供した。虚血の3時間後、マウスを灌流し、脳を収集し、直ちに凍結させた。凍結切片を得、脂質液滴コーティングタンパク質、アディポフィリン/ペリリピン2に対する抗体で染色し、定量した。
【0274】
MCAOの3時間以内に、虚血半球の脳血管への脂質の有意な取り込みが観察された。アディポフィリン染色がほとんど観察されない非虚血性の対側半球と比較して、痩せたマウスの虚血性半球における血管周囲の脂質の有意な取り込みがあった。しかし、これはDIOを有するマウスよりも有意に少なく、これらの肥満マウスでは、血管周囲の脂質蓄積の増加は、2H10処置によって大きく阻止された。
【0275】
これらのデータは、痩せたマウスにおいてさえ、MCAOが脂質摂取を迅速に誘発し、おそらくは虚血組織の代謝要求を満たすのに役立ち、DIOがこの応答を劇的に強化することを示唆する。しかしながら、脳血管床における過剰かつ異所性の脂質蓄積は、特にMCAO後の酸素及びグルコース欠乏の状況において有害であり得る。
【0276】
図3Gは、虚血性脳卒中後の脳血管における脂質蓄積が、抗VEGF−B抗体2H10による予防的処置によって阻止されることを示す。
実施例4:tPA血栓溶解と組み合わせた治療上の抗VEGF−B処置は、DIOを揺するマウスの梗塞サイズ、出血を減少させ、及び生存を伸ばす
【0277】
DIOを有するマウスをMCAOに供し、上記で詳述したように、2H10又はアイソタイプ対照抗体(16mg/kg)で脳卒中の1時間後に処置した。さらに4時間後、tPA(Alteplase、10mg/kg)の静脈内注入によって血栓溶解療法を受け、誘発された血栓を溶解した。生存している動物の単離された脳を上記のように分析した。
【0278】
典型的には、血栓溶解性tPA治療の有効性は時間とともに減少し、出血性転化のリスクは上昇する(Ahmed et al.,Lancet Neurology 2010)。本結果は、2H10処置された動物の生存率が、後のtPA血栓溶解に供したアイソタイプ処置対照と比較して有意に高かったので、MCAO後に1時間遅れで2H10での処置し、4時間後にtPA血栓溶解を行うと、梗塞サイズを減少させ、出血を減少させ、致死的出血を防ぐことを示す。
【0279】
この結果は、出血性合併症を軽減することによってtPA血栓溶解の安全性を改善し得る、及び/又は、tPAの治療ウィンドウ(treatment window)を延長し得る、tPA処置に対する潜在的アジュバント療法としての、脳卒中におけるVEGF−Bアンタゴニストの治療可能性を示唆する。臨床状況では、治療ウィンドウの延長は、血栓溶解療法を受けているより多くの患者の治療に対する最も重要な工程である。
【0280】
図4A−Cは、VEGF−Bブロッキング抗体2H10でVEGF−Bを阻害することにより、後期血栓溶解後の転帰を改善することを示す。