特許第6863917号(P6863917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863917抑制された非α化顆粒デンプンの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863917
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】抑制された非α化顆粒デンプンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 30/00 20060101AFI20210412BHJP
   C08B 30/12 20060101ALI20210412BHJP
   A23L 29/212 20160101ALN20210412BHJP
【FI】
   C08B30/00
   C08B30/12
   !A23L29/212
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-36608(P2018-36608)
(22)【出願日】2018年3月1日
(62)【分割の表示】特願2015-512697(P2015-512697)の分割
【原出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-109192(P2018-109192A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】61/647,146
(32)【優先日】2012年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/810,545
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593063172
【氏名又は名称】テイト アンド ライル イングレディエンツ アメリカス リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TATE & LYLE INGREDIENTS AMERICAS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】シエン−ジョーン ハン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ケー.ハットン
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−503549(JP,A)
【文献】 米国特許第04256509(US,A)
【文献】 米国特許第03578498(US,A)
【文献】 米国特許第02124372(US,A)
【文献】 特表2003−501494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 30/00
A23L 29/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した粘度上昇を示すがピーク粘度は達成しないことを特徴とする高度に抑制された非α化顆粒デンプンであって、粘度が、pH3の水中で乾燥固体に基づき5%〜6.3%の量の当該デンプンを92℃〜95℃で加熱することによって測定され、化学的に修飾されたものではなく、黄色指数が17.8以下であり、特異的沈降容積(SSV)が9mL/g〜24mL/gである、抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項2】
特異的沈降容積(SSV)が9mL/g〜20mL/gである、請求項1に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項3】
特異的沈降容積(SSV)が9mL/g〜18mL/gである、請求項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項4】
前記測定後に、70%以上の前記顆粒が複屈折を呈する、請求項1〜のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項5】
前記測定後に、80%以上の前記顆粒が複屈折を呈する、請求項1〜のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項6】
前記測定後に、90%以上の前記顆粒が複屈折を呈する、請求項1〜のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項7】
白色指数が41.5〜50.9である、請求項1〜のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項8】
黄色指数が14.8〜17.8である、請求項1〜のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項9】
白色指数が41.5〜50.9であり、黄色指数が14.8〜17.8である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【請求項10】
前記デンプンがワキシーデンプンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抑制された非α化顆粒デンプン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物中の成分として有用な抑制された非α化顆粒デンプンの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
食品業界における最近の傾向は、いわゆる「クリーンラベル」成分すなわち非化学修飾成分に対する消費者の需要の増加である。その加工中又は最終使用中のいずれかで、厳しい酸及び/又は熱及び/又は剪断条件に付されるスープ又はソースなどの食品を増粘することが所望される用途では、化学修飾されたデンプンが、そのような極端な条件に対して非常に耐性であるため、従来から使用されている。これらの化学修飾デンプンは、デンプン中で架橋を形成し、こうして高温でのその粘度及び安定性の特性を変更するために化学試薬が使用される種々の架橋技術により、製造される。しかし、同様の性能を示すそのような化学修飾デンプンの代替物を開発することは望ましく、しかしラベル目的で化学修飾されたと見なされたり、分類されたりすることはないであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、抑制された非α化顆粒デンプンを製造する方法であって、アルコール媒体中で、塩基と塩からなる群から選択される少なくとも1種の処理剤の存在下で、少なくとも35℃の温度で、非α化顆粒デンプンを加熱することを含む方法を提供する。
【0004】
別の形態において本発明は、抑制された非α化顆粒デンプンを製造する方法であって、
a)アルコール媒体中の非α化顆粒デンプンを、塩基の存在下で、少なくとも35℃の温度で加熱する工程と;
b)上記塩基を酸で中和する工程と;
c)上記抑制された非α化顆粒デンプンを上記アルコール媒体から分離する工程と;及び
d)上記抑制された非α化顆粒デンプンから、加熱によりアルコール溶媒を除去する工程と、
を含む方法を提供する。
【0005】
アルコール媒体は、C1〜C4アルコール(例えばエタノール)からなってよい。別の態様においてアルコール媒体は、0〜20重量%の水からなる。ある態様において、アルコール媒体は塩基性である。別の態様において、アルコール媒体は中性である。工程a)中の温度は、ある態様において、少なくとも120℃でもよい。工程a)中の加熱は、例えば5分〜20時間、行うことができる。処理剤は、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩(特に炭酸ナトリウム)、アルカリ金属リン酸塩、アンモニウムリン酸塩、アルカリ土類炭酸塩、及びアルカリ土類水酸化物からなる群から選択される塩基でもよい。処理剤は、ポリカルボン酸塩を含んでよい。ポリカルボン酸の塩は、例えばポリカルボン酸のナトリウム塩又はカリウム塩であってもよい。ある態様において処理剤は、クエン酸の1種又はそれ以上のナトリウム塩を含む。処理剤は、非α化顆粒デンプンの重量に基づいて10重量%以下の量で存在してもよく、及び/又は非α化顆粒デンプンの重量に基づいて少なくとも0.2重量%の量で存在してもよい。本方法は、抑制された非α化顆粒デンプンからアルコール溶媒を除去する追加の工程を含んでよい。本方法は、抑制された非α化顆粒デンプンをアルコール媒体から分離し、分離された抑制された非α化顆粒デンプンを加熱する追加の工程を含んでよい。分離された抑制された非α化顆粒デンプンの加熱は、ある態様において、少なくとも120℃の温度で行われる。本方法は、抑制された非α化顆粒デンプンを蒸気で処理する追加の工程を含んでよい。
【0006】
出発物質として使用される非α化顆粒デンプンは、例えば、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、バナナデンプン、大麦デンプン、小麦デンプン、コメデンプン、サゴデンプン、アマランスデンプン、タピオカデンプン、モロコシデンプン、モチトウモロコシデンプン、ワキシーエンドウデンプン、ワキシー小麦デンプン、ワキシータピオカデンプン、ワキシーコメデンプン、ワキシー大麦、ワキシージャガイモ、ワキシーモロコシ、40%以上のアミロース含量を有するデンプン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。具体的には、非α化顆粒デンプンはトウモロコシデンプン又はワキシーデンプンであってもよい。本方法のある態様において、非α化顆粒デンプンは、アルコール媒体中のスラリーの形態であり、スラリーのpHは少なくとも6である。別の態様において、この少なくとも1種の処理剤は塩基を含み、本方法は、抑制された非α化顆粒デンプン中の塩基を酸で中和する追加の工程を含む。酸は、例えば、リン含有酸、カルボン酸、尿酸、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。例えば、酸は、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。酸は、ポリカルボン酸であってもよい。中和後、アルコール媒体中の抑制された非α化顆粒デンプンを加熱するさらなる工程を行ってもよい。例えば、アルコール媒体中での抑制された非α化顆粒デンプンのさらなる加熱は、約120℃〜約200℃の温度で行うことができる。
【0007】
さらに別の形態において本発明は、抑制された非α化顆粒デンプンの製造方法であって、
a)水性エタノール媒体中の非α化顆粒デンプンのスラリーを、塩基の存在下で、120℃〜200℃の温度で加熱する工程と;
b)上記塩基を酸で中和する工程と;
c)上記抑制された非α化顆粒デンプンを上記水性エタノール媒体から分離する工程と;及び
d)上記分離された抑制された非α化顆粒デンプンに、蒸気を100℃〜200℃の温度で接触させて、エタノールを除去する工程と、
を含む方法を提供する。
【0008】
工程b)の後でかつ工程c)の前に、中和されたスラリーは再度、例えば120℃〜200℃の温度で加熱してもよい。
【0009】
また本発明により、抑制された非α化顆粒デンプンの製造方法であって、
a)アルコール媒体中の非α化顆粒デンプンを、塩基の存在下で、少なくとも35℃の温度で加熱する工程と;
b)上記塩基を酸で中和して、中和スラリーを提供する工程と;
c)上記中和されたスラリーを、少なくとも35℃の温度で加熱する工程と;
d)上記抑制された非α化顆粒デンプンを上記アルコール媒体から分離する工程と;及び
e)上記抑制された非α化顆粒デンプンから、加熱によりアルコール溶媒を除去する工程と、
を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の別の形態は、抑制された非α化顆粒デンプンの製造方法であって、
a)アルコール媒体中の非α化顆粒デンプンを、カルボン酸塩の存在下で、少なくとも35℃の温度で加熱する工程と;
b)上記抑制された非α化顆粒デンプンを上記アルコール媒体から分離する工程と;及び
c)上記抑制された非α化顆粒デンプンから、加熱によりアルコール溶媒を除去する工程と、
を含む方法を提供する。
【0011】
アルコール媒体は、C1〜C4アルコール(例えばエタノール)からなってよい。アルコール媒体は、0〜20重量%の水を含んでよい。ある態様において、工程a)中の温度は少なくとも120℃でもよい。カルボン酸塩は、例えば非α化顆粒デンプンの重量に基づいて10重量%以下の量で存在してもよい。カルボン酸塩は、例えば非α化顆粒デンプンの重量に基づいて少なくとも0.2重量%の量で存在してもよい。ある態様において、工程c)の分離された抑制された非α化顆粒デンプンの加熱は、少なくとも120℃の温度で行われる。上記方法は、抑制された非α化顆粒デンプンを蒸気で処理する追加の工程を含んでよい。
【0012】
非α化顆粒デンプンは、例えば、トウモロコシデンプン、エンドウデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、バナナデンプン、大麦デンプン、小麦デンプン、コメデンプン、サゴデンプン、アマランスデンプン、タピオカデンプン、モロコシデンプン、モチトウモロコシデンプン、ワキシーエンドウデンプン、ワキシー小麦デンプン、ワキシータピオカデンプン、ワキシーコメデンプン、ワキシー大麦、ワキシージャガイモ、ワキシーモロコシ、40%以上のアミロース含量を有するデンプン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。具体的態様において、非α化顆粒デンプンはトウモロコシデンプン又はワキシーデンプンである。本発明のいくつかの態様において、非α化顆粒デンプンは、アルコール媒体中のスラリーの形態であってよく、スラリーのpHは5〜8であってもよい。工程a)中の加熱は、5分〜20時間行うことができる。この少なくとも1種のカルボン酸塩は、ポリカルボン酸塩、例えばポリカルボン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を含んでよい。本発明のある形態において、この少なくとも1種のカルボン酸塩は、クエン酸の1種又はそれ以上のナトリウム塩を含む。この少なくとも1種のカルボン酸塩は、少なくとも1種のカルボン酸を少なくとも1種の塩基と一緒にすることにより、工程a)の前にその場で形成することができる。
【0013】
本発明のさらに別の形態は、上記方法のいずれかに従って得られる抑制された非α化顆粒デンプンを提供する。
【0014】
すなわち本発明は、危険な化学物質を使用することなく、食品グレードの成分のみを使用して、抑制されたデンプンを調製することを可能にする。さらに、このような調製中に、危険な化学物質は製造されない。本発明に従って製造されるデンプンは、高度に化学的架橋されたデンプンに匹敵するレベルまで抑制することができ、化学修飾されたデンプンが便利に使用される同じ用途で使用することができる。例えば、本発明の方法に従って得られる抑制されたデンプンは、厳しい酸及び/又は熱及び/又は剪断条件が存在するか又は適用される場合に、化学修飾されたデンプンの代替物又は置換物として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面は、実施例でさらに詳細に説明される。
図1】pH6.5の水性媒体中で、5%濃度で測定された異なるデンプン試料の迅速ビスコアナライザー(Rapid Visco-Analyzer)(RVA)プロフィール(迅速調理:Cookup)を示す。
図2】pH6.5でRVA後のデンプンペーストの顕微鏡写真(倍率200×)を示す。
図3】pH3.5の水性媒体中で、5%濃度で測定された異なるデンプン試料のRVAプロフィール(迅速調理)を示す。
図4】pH3.5のRVA後のデンプンペーストの顕微鏡写真(倍率200×)を示す。
図5】レトルトシミュレーション後の種々のデンプンペーストの顕微鏡写真を示す。
図6】その一部が本発明に従って処理される種々のデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図7】pH6.5の水性媒体中で5%濃度で測定された異なるデンプン試料のRVAプロフィール(迅速調理)を示す。
図8】本発明に従って調製された試料、並びにTate & Lyleから市販されている高架橋度を有する化学修飾ワキシーデンプンを含む種々のデンプン試料の、RVAプロフィールを示す。
図9】本発明に従って調製された試料、並びにTate & Lyleから市販されている高架橋度を有する化学修飾ワキシーデンプンを含む種々のデンプン試料の、RVAプロフィールを示す。
図10】pH3.5を有する緩衝液中で、6.65%で測定された種々のデンプン試料のRVAプロフィールを示す。
図11】pH3.5を有する緩衝液中で、6.65%で測定された種々のデンプン試料のRVAプロフィールを示す。
図12】RVAとレトルトシミュレーション後のデンプンペーストの種々の試料中のデンプン顆粒の顕微鏡写真を示す。
図13】RVAとレトルトシミュレーション後のデンプンペーストの種々の試料中のデンプン顆粒の顕微鏡写真を示す。
図14】RVAとレトルトシミュレーション後のデンプンペーストの種々の試料中のデンプン顆粒の顕微鏡写真を示す。
図15】RVAとレトルトシミュレーション後のデンプンペーストの種々の試料中のデンプン顆粒の顕微鏡写真を示す。
図16】脱溶媒前及び脱溶媒後の処理されたデンプン試料の異なるpHでの、RVAプロフィールを示す。
図17】脱溶媒前及び脱溶媒後の処理されたデンプン試料の異なるpHでの、RVAプロフィールを示す。
図18】1%NaCl中で調理された処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図19】1%NaCl中で調理され次にブレンダーを使用して剪断された、処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図20】1%NaCl中で調理された処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図21】1%NaCl中で調理され次にブレンダーを使用して剪断された、処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図22】偏光を照射して処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図23】偏光を照射して処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図24】脱溶媒前及び脱溶媒後の処理されたデンプン試料の異なるpHでの、RVAプロフィールを示す。
図25】1%NaCl中で調理された処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図26】1%NaCl中で調理され次にブレンダーを使用して剪断された、処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
図27】偏光を照射して処理されたデンプン試料の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において用語「抑制されたデンプン(inhibited starch)」は、化学的に架橋されたデンプンの特性を有するデンプンを意味する。抑制されたデンプンは、pH3を有する水中の5%〜6.3%の乾燥デンプンを92℃〜95℃で加熱した時、観察される粘度と他の特性により特徴付けられるように、その抑制程度が変化し得る。実質的に完全に抑制されたデンプンは、膨潤に抵抗するであろう。高度に抑制されたデンプンは、限定された程度に膨潤し、連続した粘度上昇を示すが、ピーク粘度は達成しないであろう。中程度に抑制されたデンプンは、抑制されていない同じデンプンと比較して、より低いピーク粘度とより低い粘度破壊パーセントを示すであろう。低く抑制されたデンプンは、対照(非抑制)デンプンと比較して、ピーク粘度のわずかな上昇と、より低い粘度破壊パーセントを示すであろう。
【0017】
すべてのデンプン(デンプン粉を含む)は、本発明における使用に適している。デンプンは、任意の天然の供給源に由来することができる。「天然の」デンプン又は粉は、非修飾形態で天然に見出されるものである。デンプンの典型的な供給源は、穀物、塊茎、根、豆果、及び果実である。天然の供給源は、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、大麦、小麦、コメ、サゴ、アマランス、タピオカ、モロコシ、ワキシートウモロコシ、ワキシーエンドウ、ワキシー小麦、ワキシータピオカ、モチ米、ワキシー大麦、ワキシージャガイモ、ワキシートウモロコシ、40%以上のアミロース含量を有するデンプンなどでもよい。ある態様において、トウモロコシデンプン(特に、ワキシートウモロコシデンプン)が使用される。異なるデンプンの混合物を利用することができる。デンプンは、アルコール媒体と処理剤で加熱される前に、1又はそれ以上の精製及び/又は改質処理を施してもよい。例えばデンプンは、デンプン中に存在する脂質及び/又はタンパク質の量を減少させるために処理してもよい。デンプンは、ある量の水分(例えば、最大約15重量%の水)を含んでよい。
【0018】
アルコール媒体は、一般に少なくとも1種のアルコール、特にC1〜C4モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコールなどを含む。例えば、非アルコール性有機溶媒(特にアルコールと混和性のもの)及び/又は水などの1種又はそれ以上の他の物質が、アルコール媒体中に存在してもよい。しかし本発明のある態様において、アルコール媒体は、アルコールや、任意選択的に水以外の溶媒、を含まない。例えば本発明の方法において、水性アルコールが有利に使用できる。アルコール媒体は、例えば30重量%〜100重量%のアルコール(例えばエタノール)、及び0重量%〜70重量%の水を含んでよい。ある態様においてアルコール媒体は、80重量%〜96重量%のアルコール(例えばエタノール)、及び4重量%〜20重量%の水を含み、アルコールと水の総量は100%に等しくなる。別の態様においてアルコール媒体は、90重量%〜100重量%のアルコール(例えばエタノール)、及び0重量%〜10重量%の水を含み、アルコールと水の総量は100%も等しくなる。別の態様において、10重量%以下又は15重量%以下の水がアルコール媒体中に存在する。デンプンに対するアルコール媒体の量は決定的に重要であるとは考えられないが、典型的には、便宜上及び処理の容易さのために、攪拌可能な及び/又は揚水性のスラリーを提供するために、十分なアルコール媒体が存在する。例えば、デンプン:アルコール媒体の重量比は、約1:2〜約1:6でもよい。
【0019】
本発明のある形態において、非α化顆粒デンプンがアルコール媒体中で加熱される時、少なくとも、ある量の処理剤(塩基及び/又は塩)が存在する。しかし、本発明のこの態様の利点は、既知のデンプン修飾法とは対照的に、デンプンの有効な抑制を達成するために、多量の処理剤(デンプンに対して)を使用する必要が無いことである。これは、抑制デンプンの以後の処理を簡便にし、製造コストの可能性を低下させる。
【0020】
典型的には、少なくとも0.5重量%の処理剤(使用されるデンプンの乾燥重量に基づいて)が使用されるが、本発明の別の態様では、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%の処理剤が存在する。経済的理由から、一般に10重量%以下又は15重量%以下の処理剤が存在する。
【0021】
典型的には、デンプン、アルコール媒体、及び処理剤の混合物は、スラリーの形態である。本発明のある態様において、スラリーのpHを特定の値に調整することが好ましいであろう。アルコールの存在のために、このようなスラリーのpHを測定することは困難なことがある。塩基を添加してスラリーを塩基性にすることが望ましい態様では、スラリーが脱イオン水単独中のデンプンのスラリーであるかのように、適切な量の塩基を決定して、次に塩基とデンプンとの同じ比率を維持しながら、実際の量にスケールアップすることにより、塩基の適切な量を決定することができる。
【0022】
スラリーは、例えば中性(pH6〜8)又は塩基性(pH8より大きい)である。ある態様において、スラリーのpHは少なくとも6である。別の態様において、スラリーのpHは少なくとも7である。別の態様においてスラリーのpHは、12以下である。別の態様においてスラリーのpHは、6〜10、7.5〜10.5、又は8〜10である。さらに別の態様においてスラリーのpHは、5〜8又は6〜7である。
【0023】
デンプンのアルコール処理剤による処理は、まずデンプンをアルコール媒体中に入れ、次に処理剤(例えば、塩基及び/又は塩)を加えることにより行われる。あるいは処理剤は、まずアルコール媒体と一緒にされ、次にデンプンと接触される。処理剤は、例えば塩基と酸(これらは、反応して塩を形成し、これが処理剤として機能する)を別々に加えることにより、その場で形成することができる。
【0024】
本発明の方法で使用するのに適した塩基は、特に限定されないが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化ナトリウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、及び炭酸カルシウム、リン含有酸のアルカリ金属及びアンモニウム塩、例えばピロリン酸四ナトリウム、オルトリン酸アンモニウム、オルトリン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、及び該当する規制法で使用が認可されている任意の他の塩基、を含む。強塩基並びに弱塩基を使用することができる。
【0025】
本発明の方法で使用するのに適した塩は、水溶液中でイオン化して実質的に中性の溶液(すなわち、pH6〜8を有する溶液)を提供する水溶性物質がある。有機カルボン酸の塩と同様に、アルカリ金属含有塩が本発明で特に有用である。本発明のある態様において処理剤は、クエン酸などのポリカルボン酸の塩(特に、ナトリウム塩又はカリウム塩)を含む。他の適切なカルボン酸塩には、特に限定されないが、酢酸、アジピン酸、イタコン酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、アコニット酸、コハク酸、オキザロコハク酸、グルタル酸、ケトグルタル酸、リンゴ酸、脂肪酸、及びこれらの組合せがある。本発明のある形態において、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、及びこれらの組合せ)が使用される。適切なカルボン酸塩の他の例は、特に限定されないが、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムなど、及びこれらの組合せがある。本発明のある態様において、緩衝剤として機能することができる1種又はそれ以上の塩が使用される。
【0026】
異なる処理剤の混合物を、本発明で使用することができる。例えば、デンプンは、アルコール媒体中で、少なくとも1種の塩基と少なくとも1種の塩との存在下で加熱することができる。
【0027】
デンプン、アルコール媒体、及び処理剤は、デンプンを所望の程度に抑制するのに有効な時間と温度で加熱される。一般に、室温より高い温度(すなわち、35℃又はそれ以上)が必要であろう。同時に、極端に高い温度は避けるべきである。加熱温度は、例えば35℃〜200℃でもよい。典型的には、100℃〜190℃、120℃〜180℃、又は130℃〜160℃、又は140℃〜150℃の温度が充分であろう。加熱時間は、少なくとも5分であるが、20時間以下であり、典型的には40分〜2時間である。一般に、デンプン抑制の所望のレベルは、加熱温度が高い場合は、より迅速に達成することができる。
【0028】
デンプン、アルコール媒体、及び処理剤の混合物の成分の処理時間、処理温度、及び比率の具体的な条件は、一般に、デンプンがあまりゼラチン化しないように選択される。すなわち、反応PNは非α化のままである。すなわち、本発明の種々の態様において、このような処理の結果として、30%以下又は20%以下又は10%以下のデンプン顆粒は、複屈折を失う。
【0029】
加熱工程用に選択された温度が、アルコール媒体の1種又はそれ以上の成分の沸点を超える時、加熱工程は、加圧可能な容器又は他の装置中で実施することが有利であろう。アルコール媒体を液体状態維持するために、処理は、限定された領域中で行うことができる。追加の正圧を使用してもよいが、一般的には必要ではない。デンプンは、高温高圧の条件下で処理剤と一緒にアルコール性媒体中でスラリー化することができ、デンプンの粘度特性を変更するのに十分な時間処理することができる。そのような処理は、バッチ毎に撹拌タンク反応器中で、又は継続的に管状反応器内で行うことができるが、他の適切な処理技術が当業者には明らかであろう。別の態様ではデンプンは、管状反応器内のベッドの形態、及びそのようなベッドを通過する(任意選択的に、連続的に)アルコール媒体と処理剤との混合物の形態でもよく、ベッドは、デンプンの抑制を実施するための所望の温度で維持される。
【0030】
塩基が処理剤として使用されている態様では、加熱工程が完了すると、塩基を中和する目的で、デンプン、アルコール媒体、及び塩基の混合物は、1種以上の酸と組み合わせることができる。このような中和工程で使用するのに適切な酸は、特に限定されないが、リン酸のようなリン含有酸、カルボン酸、例えば、酢酸、アジピン酸、イタコン酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、アコニット酸、コハク酸、オキサロコハク酸、グルタル酸、ケトグルタル酸、リンゴ酸、脂肪酸及びこれらの組み合わせ、ならびに、尿酸などの他の種類の酸がある。抑制されたデンプンが食品成分としての使用が意図される場合、酸は一般に、適用法令によりそのような使用のために許可されたものであるように選択するべきである。典型的には、混合物のpHをほぼ中性〜わずかに酸性、例えば約5〜約7まで又は約6〜約6.5までのpHに低下させるために十分な酸が添加される。
【0031】
酸による中和は、任意の適切な温度で行うことができる。ある態様において、デンプン、塩基、及びアルコール媒体のスラリーは、使用される加熱温度からほぼ室温(例えば、約15℃〜約30℃)まで冷却された後、中和のために使用される酸と一緒にされる。中和された混合物は、次に、後述されるようにさらに処理されて、抑制されたデンプンがアルコール媒体から分離される。しかし本発明の別の態様において、塩基の中和の後に、デンプンスラリーのさらなる加熱が行われる。このような追加の加熱は、塩基の中和後に加熱に付されていない同様に調製されたデンプンの粘度特性と比較して、得られる抑制されたデンプンのレオロジー特性を修飾できることがわかっている。
【0032】
一般に、そのような追加の加熱工程は、室温より高い温度(すなわち、35℃以上)で有利に行われる。同時に、極端に高い温度は避けるべきである。加熱温度は、例えば35℃〜200℃でもよい。典型的には、100℃〜190℃、120℃〜180℃、又は130℃〜160℃、又は140℃〜150℃の温度が充分であろう。加熱時間は一般に、少なくとも5分であるが、20時間以下であり、典型的には40分〜2時間である。
【0033】
塩(例えば、クエン酸のナトリウム塩)が処理剤として使用されている本発明の態様では、デンプン/処理剤/アルコール媒体混合物の加熱が所望の時間行われた後に、混合物をかなり迅速にほぼ室温まで冷却することが有利であり得る。少なくともある条件下では、そのような迅速な冷却が、加熱処理工程後に、デンプン/処理剤/アルコール媒体混合物のより遅い冷却により得られるデンプンと比較して、より高度に抑制されたデンプンを提供し得ることが、発見されている。
【0034】
デンプンとアルコール媒体との混合物は、デンプンをアルコール媒体から分離するように処理される。液体から粒状固体を回収するための、濾過、デカンド、沈降、又は遠心分離などの従来法は、そのような目的に適合させることができる。分離されたデンプンは、任意選択的に追加のアルコール媒体及び/又はアルコール及び/又は水で洗浄されて、すべての望ましくない可溶性不純物が除去される。ある態様において、残存塩基の中和は、回収されたデンプンを酸性化された液体媒体で洗浄することにより行われる。分離されたデンプンの乾燥は、本発明に従って、抑制された非α化顆粒デンプンを提供するであろう。例えば乾燥は、やや高温(例えば30℃〜60℃)で、オーブン又は流動床反応器又はドライヤー又はミキサーなどの適切な装置中で行うことができる。真空及び/又はガスパージ(例えば、窒素スイープ)を適用して、デンプンからの揮発性物質(例えば、水、アルコール)の除去を促進することができる。得られる乾燥された抑制された非α化顆粒デンプンは、圧搾、破砕、粉砕、スクリーニング、ふるい分け、又は特定の所望の粒子サイズを達成するために任意の他のそのような技術に付されていてもよい。ある態様において、抑制されたデンプンは自由流動性の粒状物質の形態である。
【0035】
しかし本発明のある態様において、デンプンは、かなり高温(例えば、80℃超、又は100℃超、又は120℃超)で、脱溶媒工程に付される。しかし、過度に高い温度は、デンプンの分解又は変色をもたらすため、避けるべきである。そのような工程は、生成物中の残存溶媒(アルコール)の量を減少させるのみでなく、デンプンにより示される抑制の程度を増強する追加の予想外の利益を提供する。脱溶媒温度は、例えば約100℃〜約200℃でもよい。典型的な温度は、120℃〜180℃、又は150℃〜170℃である。脱溶媒は、蒸気の存在下又は非存在下で行うことができる。蒸気処理は、高温で起きるようなデンプンの変色の程度を最小にするすることを助ける点で、有利であることがわかっている。本発明のある態様において、蒸気は、抑制されたデンプンのベッド又はケーキを通過させられる。米国特許第3,578,498号(その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる)のデンプン脱溶媒法は、本発明での使用に適合させることができる。蒸気処理後に、抑制されたデンプンは乾燥して(例えば、約30℃〜約70℃の温度のオーブン中で、又は流動床反応器中で、加熱することにより)、残存する水分含量を低減させることができる。
【0036】
ある態様において、アルコール媒体から回収された処理されたデンプンは、まず約35重量%以下又は約15重量%以下の総揮発性物質含量にされる。これはまず、例えば回収されたデンプンを、中程度の温度(例えば20℃〜70℃)で空気乾燥又はオーブン乾燥して、所望の初期揮発性物質含量にすることにより行うことができる。次に、乾燥されたデンプン中に生蒸気が通され、システムは、蒸気の凝集点より高い温度で維持される。流動床装置を使用して、このような蒸気で脱溶媒工程を行うことができる。
【0037】
一般に脱溶媒は、抑制されたデンプン中の残存アルコール含量を1重量%未満又は0.5重量%未満又は0.1重量%未満にするのに有効な条件下で行うことが好ましいであろう。
【0038】
脱溶媒後に、抑制されたデンプンは水で洗浄され、次に再乾燥されて、色及び/又は香りを改善し、及び/又は水分含量を低下させることができる。
【0039】
得られるデンプンは、調理された時(例えば、選択した用途でその機能や性能を最大化するために)及び/又はゼラチン化された(例えば、偏光を使用して照射された時、デンプンはもはや複屈折又はマルタ十字(Maltese cross)を示さない)時、非粘着性の滑らかな質感を有し、及び/又は、熱、剪断、及び極端なpHなどの処理変数に対して、特にそのような条件下で相当の時間、優れた耐性を示すことができる点で、化学的に架橋されたデンプンと機能的に似ている。また、調理時の粘度は、後に、又は本発明に従って抑制されていないデンプンと実質的に同時に、初期化(構築を開始)される。そのような阻害デンプンはまた、処理された食品に望ましい滑らかな質感を提供し、処理操作を通じて、増粘のためのその能力を維持することができる。さらに、抑制されたデンプンは、本発明の方法を用いて処理されていない同じデンプンよりも小さい粘度破壊を有するであろう。
【0040】
本発明の実施により得られる抑制された非α化顆粒デンプンは、食品中で使用する前に、他の非修飾又は修飾デンプンと混合するか、又は他の食品成分と混合することができる。抑制されたデンプンは、現在食品に使用される化学的に修飾された又は架橋されたデンプンの代わりに使用されるが、クリーンラベル(非修飾ラベル)を維持することができる。
【0041】
抑制されたデンプンが有用である食品は、熱加工食品、酸食品、乾燥ミックス、冷蔵食品、冷凍食品、押し出された食品、オーブン調理食品、ストーブトップ調理食品、電子レンジ食品、フル脂肪又は脂肪減少食品、及び低い水分活性を有する食品がある。抑制されたデンプンが特に有用である食品は、低温殺菌、レトルト化、又は超高温(UHT)処理などの熱処理工程を必要とする食品である。抑制されたデンプンは、冷却、冷凍及び加熱を含む全ての加工温度を通じて安定性が必要とされる食品用途に、特に有用である。
【0042】
抑制されたデンプンは、非化学的に架橋されたデンプン増粘剤、増粘剤、ゲル化剤、又は増量剤が必要であるか又は所望される食品にも有用である。加工食品調合物に基づいて、使用者は、最終食品において必要な厚さとゲル粘度、ならびに所望の質感を提供するのに必要な量及びタイプの抑制された非α化デンプンを、容易に選択することができる。典型的にはデンプンは、食品重量の0.1〜35重量%、例えば2〜6重量%の量で使用される。
【0043】
抑制された非α化顆粒デンプンの使用により改善することができる食品の中には、高酸性食品(pH<3.7)、例えば果物ベースのパイ充填物、ベビーフードなど;酸性食品(pH3.7〜4.5)、例えばトマトベースの製品;低酸性食品(pH>4.5)、例えばグレイビー、ソース、スープ;ストーブトップ調理食品、例えばソース、グレイビー、及びプリン;インスタント食品、例えばプリン;注ぐことができスプーンですくえるサラダドレッシング;冷蔵食品、例えば乳製品や模造乳製品(例えば、ヨーグルト、サワークリーム、チーズ);凍結食品、例えば凍結デザートやディナー;電子レンジ食品、例えば冷凍ディナー;液体製品、例えばダイエット製品及び病院の食品;焼き菓子、グレイビー、ソース、プリン、ベビーフード、ホットシリアルなどを調製するための乾燥ミックス;及び、バッター調理やフライ調理の前に食品をプレダストするための乾燥ミックスがある。抑制されたデンプンはまた、カプセル化されたフレーバー及びクラウドなどの食品成分を調製するのにも有用である。
【0044】
本発明に従って調製される抑制されたデンプンはまた、化学的に修飾(架橋)された阻害されたデンプンが従来から使用されている種々の非食品最終用途、例えば化粧品及びパーソナルケア製品、紙、包装、医薬製剤、接着剤などでも使用することができる。
【実施例】
【0045】
デンプン処理法A
本例では、デンプンを、まずアルコール媒体中で、塩基(炭酸ナトリウム)の存在下で加熱し、次に低温で中和する。抑制されたデンプンからアルコールのバルクを分離後、抑制されたデンプンを乾燥/脱溶媒に付す。
【0046】
処理法の要約:
1. 3Aエタノール(94重量%)1177gを秤量する。
2. 308gのワキシーデンプン(89%の乾燥デンプン又はd.s.)を攪拌しながらエタノールに加える。
3. 炭酸ナトリウム(乾燥デンプンに基づいて、0.7重量%、1.4重量%、2.8重量%、又は5.53重量%)を加える。
4. デンプン、アルコール、及び炭酸ナトリウムの混合物を、攪拌と制御蒸気加熱とを備えた2リットルの圧力ステンレス鋼容器に、ジャケットを介して入れる。
5. 反応器中でスラリーを指定の温度(143℃)まで加熱し、この温度で60分間維持する。
6. 反応器を35℃に冷却する。
7. ベントナイトを開いて圧力を平衡化する。
8. 50%クエン酸溶液(乾燥デンプンに基づいて、0.843重量%、1.685重量%、3.37重量%、又は6.75重量%)を使用して、シリンジを使用してベントを介して、スラリーを約pH6に中和する。
9. 30分間攪拌する。
10. フタを開く。
11. 反応器からスラリーを除去する。
12. ろ紙を使用してブルナーロート上でスラリーを濾過する。
13. 湿ったケーキを取り、ドラフト中でトレイの上に粉砕し、数時間/一晩放置した後、オーブンに入れる。これにより、3Aアルコールのほとんどは蒸発する。
14. 対流オーブン中で、50℃で一晩デンプンを乾燥させる。
15. デンプンを粉砕し、100メッシュの篩を通過させ、印をつける。
16. 脱溶媒のために、デンプンを対流オーブン中で125℃又は160℃で4時間乾燥させる。
【0047】
蒸気を用いる脱溶媒:
1. 鋼鉄容器(直径7.2”、高さ8.5”)中に3.5kgのDI水を秤量する。
2. 水を有する鋼鉄容器をオーブン(Yamato DKN 600 機械的対流オーブン、Fisher Scientific Inc.)に160℃で1時間入れる。
3. アルコール−塩基処理したデンプン(上記の手順工程16からのアルコール−塩基処理したデンプン)50gを秤量し、500メッシュの篩の上に広げ、水容器上の棚の上に直接置く。
4. デンプンを160℃で4時間、脱溶媒をする。
5. 50℃で、一晩オーブン中でデンプンを乾燥させる。
【0048】
デンプンの迅速ビスコアナライザー測定:
デンプンのペーストプロフィールを分析するために、迅速ビスコアナライザー(RVA)(Newport Scientific Pty. Ltd., Warriewood, Australia)を使用した。デンプン濃度を変化させて、約1000センチポアズ(cP)のピークペースト粘度を得た。この試験では、5%と6.65%のデンプン濃度を使用した。加熱プロフィールとRPMは、各グラフに記載されている。RVA pH6.5溶液(Cat. No. 6654-5, RICCA Chemical Company, Arlington, Texas, USA)、及び認定されたpH3.5緩衝液(Key Laboratory Services, 2363 Federal Drive, Decatur, IL)を使用した。迅速調理RVAプロフィールは、迅速調理ワキシーデンプンのRVA粘度を測定することが意図されている。デンプンをRVAカップ中に秤量し、RVA pH6.5又はpH3.5溶液を総重量28gになるように加えた。インスタントRVAプロフィールは、インスタントデンプンを分析することが意図された。デンプンをRVAカップ中に秤量し、デンプンの分散のために4.5gのプロピレングリコールを加えた。混合物をスパテラで攪拌し、完全な分散が達成されたことを確認した。RVA pH6.5溶液を総重量32gになるように加えた。初期段階でデンプンスラリーを35℃で20分間混合して、インスタントデンプンのペースト粘度を開発した。
【0049】
デンプンペーストの顕微鏡観察:
デンプンペーストを蒸留水で約1%デンプンまで希釈した。1滴のデンプン溶液を顕微鏡スライドに加え、ヨードチンキ(2%O.S.P.)又は0.2% I2及び2%KIを含む溶液で染色した。各試料の上にカバーグラスをのせた。染色されたデンプン試料を有するスライドを、ライカ顕微鏡DM4000M(Buffalo Grove, IL 60089 United States)を使用して観察した。20×対物レンズと10×双眼レンズを使用した。0.2% I2及び2%KIを含む溶液で染色し偏光を照射したデンプン顆粒もまた、この顕微鏡を使用して観察した。
【0050】
RVA調理後のデンプンの特異的沈降容積:
特異的沈降容積(SSV)を、乾燥デンプンの質量単位当たりの膨潤したデンプン顆粒により占められるバルク容積(mL/g)として定義する。各デンプンを、迅速ビスコアナライザー(RVA)を使用して、以下の条件下で調理した:乾燥固体パーセント(DS%)=スラリー中2.5%の乾燥スラリー;38gの総スラリー;迅速調理RVAプロフィール(160rpm、95℃で20分、50℃まで冷却、総運転時間35分);pH6.5リン酸緩衝液。RVA中の水の消失は、調理前と後に秤量することにより説明される。次に、ペーストを、希釈することなく、風袋軽量済30mL遠心管に移し、秤量し、ベンチトップのSorvall Legend T+遠心分離機で、4000rpmで15分遠心分離した。上清をデカントした後、沈降容積を読んだ。SSV(mL/g)=(4000rpmで15分後のmL沈降)/(ペースト中の30mL*の乾燥デンプン含量%中のgペースト)。SSVが20mL/g〜40mL/gのデンプンは、化学的に架橋されたデンプン中で低せん断安定性又は低架橋度を有すると考えられる。SSVが16mL/g〜20mL/gのデンプンは、中程度の剪断安定性を有し、SSV<16mLの/gを有するデンプンは高剪断安定性を有する。
【0051】
デンプンの色の測定:
色は、Hunter Colorflex反射式分光光度計(Hunterlabs, Reston, VA)を使用して測定した。
【0052】
圧力セルを有するPhysica MCR 301レオメーターを使用するレトルトシミュレーション
レトルト処理をシミュレートするために、Physica MCR 301レオメーター(Anton Paar Germany GmbH, Ostfildern, Germany)が使用された。デンプンをカップ中に秤量し、RVA pH6.5溶液(Cat. No. 6654-5, RICCA Chemical Company, Arlington, Texas, USA)を、総重量25gのスラリーになるように加えた。デンプンのパーセントは、120℃で約1000mPa.sを超える粘度を与えるのに十分な程度高くなければならない。デンプンのより高い濃度が、より高度に抑制されたデンプンにとって必要である。シリンジを使用して、20gのスラリーを圧力セルに充填した。両翼スターラー(ST24/PR-2W-A1)を使用した。60℃まで初期加熱し、次に試料を60℃に維持して粘度を記録し、次に120℃(典型的なレトルト温度)までゆっくり加熱し、5分保持する。次に、デンプンスラリーは、中程度の高温(70℃)と低温(25℃)での、粘度安定性の二重記録のために、2段階で冷却される。システムは、製品の均一性を確保するために、加熱相と冷却相中に、剪断速度177分-1で「高」剪断下にあり、及び粘度読み値を最大にして、バッチ間の差を向上させるために、高温(120℃)保持工程中に、剪断速度29.3分-1で「低」剪断下にある。120℃で5分の保持時間中の粘度曲線は、レトルト安定性にとって重要である。120℃保持時間での上方への曲線又は線は、デンプン顆粒の膨潤と高度に抑制されたデンプンを示す。下方への曲線又は線は、ペーストの破壊を示す。測定後のペーストを、顕微鏡下で観察した。
【0053】
結果と考察(デンプン処理法A)
上記したように、ワキシーデンプンを、炭酸ナトリウム(乾燥デンプンに基づいて1.4%)を有するアルコール中で、143℃で1時間処理し、次にクエン酸で中和した。処理したワキシーデンプンを濾過して集めた。追加のアルコールをドラフト中で一晩蒸発して除去し、強制空気オーブンで、50℃で乾燥し、次に160℃で蒸気有り又は無しで4時間乾燥(脱溶媒)した。
【0054】
図1は、ワキシーデンプン(試料1−D)、143℃で1時間アルコール−塩基処理後のワキシーデンプン(試料1−A)、143℃で1時間アルコール−塩基処理し、160℃で蒸気有り(試料1−C)又は蒸気無し(試料1−B)で4時間脱溶媒した後のワキシーデンプンのRVAプロフィール(迅速調理)(5%及びpH6.5)を示す。アルコール−塩基処理単独では、RVA破壊(ピーク又は最大粘度−ピーク後の谷又は最小粘度)は約50%低下し、最終粘度は約43%増加した。RVA分析後のペーストの顕微鏡写真は、ワキシーデンプンペーストが分散され、一方、アルコール−アルカリ処理後のワキシーデンプンのデンプンペーストは、膨潤顆粒残留物(破壊された膨潤顆粒)を含有することを示し(図2)、これは、アルコール−塩基処理が膨潤顆粒残留物を維持することを助けたが、膨潤顆粒構造を保持するのに十分ではなかったことを示した。アルコール−塩基処理後の蒸気有り又は無しの脱溶媒は、RVA破壊を排除した(図1)。蒸気無しで脱溶媒されたアルコール−塩基処理したワキシーデンプンは、蒸気有りで脱溶媒されたものより低いRVA最終粘度を有する。RVA分析後のペーストの顕微鏡写真は、蒸気有り又は無しで脱溶媒したアルコール−アルカリ処理ワキシーデンプンのデンプンペーストの両方とも、デンプン顆粒構造を維持することを示した。特異的沈降容積(SSV)測定値は、蒸気有りで脱溶媒されたアルコール−アルカリ処理したワキシーデンプンと比較して、蒸気無しで脱溶媒されたアルコール−アルカリ処理したワキシーデンプンのより高い抑制を示し(表1)、これは、おそらくRVA中に前者のデンプン顆粒のより少ない膨潤により引き起こされたものであろう。しかし高温での乾燥デンプン(1%未満の水分)は、爆発危険物であり、従って蒸気有りの脱溶媒が、工業的スケールでより安全なプロセスと見なされる。さらに、蒸気有りで160℃の脱溶媒は、蒸気無しで脱溶媒したものより、生成物でより少ない色を生成した(表2)。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
pH3.5緩衝液中の5%試料濃度を使用して、RVA分析中に蒸気有り及び無しで脱溶媒後の、アルコール−塩基処理したワキシーデンプン中で、正の傾きが維持され(ペーストの粘度破壊無し)(図3)、ペーストが酸性条件下で安定であることを示していた。pH3.5緩衝液を使用するRVA後のペーストの顕微鏡写真は、脱溶媒された試料中の顆粒構造を示した(図4)。
【0058】
レオメーターを使用するレトルトシミュレーションを使用して、スープ製造において120℃でのレトルト処理をシミュレートし、高温条件下でのデンプンペーストの安定性を試験した。この試験で、120℃の保持時間でわずかに陰性のゼロの又は正の傾きを有するデンプンは、スープ及び他の高温用途で許容される可能性がある。天然のワキシーデンプンは、この基準により高温処理を必要とするスープ及び食品に適していない。脱溶媒無しのアルコール−塩基処理されたワキシーデンプンは、理想的な候補ではない。160℃で蒸気有り及び無しで脱溶媒されたアルコール−塩基処理されたワキシーデンプンは、高温処理を必要とするスープ及び食品に適している可能性がある。レトルトシミュレーション後のペーストの顕微鏡写真は、図5に示される。蒸気有り及び無しで脱溶媒されたアルコール−塩基処理されたワキシーデンプンのデンプンペーストは、両方ともデンプン顆粒構造を維持し、これは、これらがレトルト安定である証拠を提供した。
【0059】
アルコール−塩基処理後に脱溶媒された後の非α化顆粒デンプンの、偏光を照射された試料は、図6に示される顕微鏡画像を示した。そのRVAプロフィールは図7に示される。天然のデンプン顆粒は、偏光で観察された時、複屈折又は典型的なマルタ十字を示す。この特性(マルタ十字を示す)は、デンプン分子が顆粒内で放射状に配向されるためにもたらされる。デンプンが水の中で加熱されると、デンプンのゼラチン化の終了により、偏光の複屈折(マルタ十字パターン)が失われる。図6は、ワキシーデンプンがアルコール−塩基処理により処理され、次に蒸気有り又は無しで脱溶媒された時、デンプン顆粒のマルタ十字パターンが実質的に変化しないことを示し、これは、デンプンがα化されていないことを示す。α化デンプンは、インスタントプロフィールを使用するRVA中で、さらに加熱する前に35℃で初期の20分に、粘度を示し始める。α化インスタントワキシーデンプン(XPAND’R SC, a Tate & Lyle市の市販品)は、35℃で直ちに粘度を示し始め、天然のワキシーデンプン及びアルコール−アルカリ処理後脱溶媒したワキシーデンプンは、より高い温度に加熱されるまで、感知できる粘度を示し始めず、これは、これらが非α化デンプンであることを示唆した。
【0060】
ワキシーデンプンは、アルコール中で種々の量の炭酸ナトリウム(乾燥デンプンに基づいて0.7%、1.4%、2.8%、及び5.53%)を用いて143℃で1時間処理され、次にクエン酸で中和された。125℃又は160℃で4時間、脱溶媒を行った。表3は、中和のための炭酸ナトリウムとクエン酸の量の増加が、生成物のSSV値(より高い抑制)の低下を与える傾向があることを示す。高温(160℃)での同じアルコール−塩基処理デンプンは、低温(125℃)で脱溶媒された時より、抑制された生成物(より低いSSV値)を与えた。5.53%の炭酸ナトリウムを使用して処理され160℃で脱溶媒された生成物は、デンプンA〜C(市販されている抑制又は修飾されたデンプン)より抑制された。
【0061】
【表3】
【0062】
図8は、種々の量の炭酸ナトリウムを有するアルコールで処理され160℃で4時間脱溶媒された後のワキシーデンプンと、高架橋度を有するTate & Lyleの市販の化学修飾されたワキシーデンプンとの、RVAプロフィールを示す。すべての試料は、アルコール−塩基処理後に、RVA破壊を示さなかった。処理されたワキシーデンプンの粘度は、アルコール−塩基処理中の炭酸ナトリウムとその後の中和中のクエン酸の量の上昇とともに低下した。アルコール−塩基処理された試料は、RVA分析で、化学的に架橋されたデンプンのように挙動した。
【0063】
これらの同じアルコール−塩基処理された試料は、低温(125℃)で脱溶媒され、そのRVAプロフィールは図9に示される。低温で脱溶媒された試料により、顕著に低い抑制が示された(図9)。炭酸ナトリウムの量の低下(5.53%から0.7%へ)とともに、RVA破壊が上昇した。
【0064】
160℃で脱溶媒されたアルコール−塩基処理試料の酸安定性を、pH3.5緩衝液中でRVAを使用して試験した(図10)。RVAプロフィールでRVA破壊は観察されず、これらの処理デンプンが酸安定性であることが示された。125℃で脱溶媒された試料により顕著なRVA破壊が示され、炭酸ナトリウムの量の低下(5.53%から0.7%へ)とともに、破壊が上昇した(図11)。
【0065】
デンプンの高温安定性を、Physica MCR 301レオメーターを使用して試験した。アルコール処理で2.8%、1.4%、及び0.7%の炭酸ナトリウムを使用して調製し、次に160℃で脱溶媒したアルコール−塩基処理試料の粘度は、120℃で5分の保持時間で上昇を示し、これは、ペーストの破壊が無いことと高温でのペースト安定性を示した。
【0066】
図12、13、14、及び15は、RVAと、Physica MCR 301レオメーターを使用するレトルトシミュレーション後の、ペースト中のデンプン顆粒の顕微鏡写真を示す。アルコール−塩基処理試料を160℃で脱溶媒すると、無傷の膨潤デンプン顆粒が明瞭に見られた。RVAとレトルトシミュレーション後の無傷の膨潤デンプン顆粒は、本発明に従う処理後のデンプン顆粒の抑制を明瞭に示した。アルコール−塩基処理試料を125℃で脱溶媒すると、デンプン顆粒は、160℃で脱溶媒されたデンプンよりも膨潤し、一部の膨潤デンプンは破壊された。デンプン顆粒の破壊の程度は、以後の中和で使用された炭酸ナトリウムの量とクエン酸の量に反比例していた。
【0067】
デンプン処理法B
本例では、デンプンをまずアルコール媒体中の塩基で加熱し、次にクエン酸を加えてさらに加熱して塩基を中和(約6のpHを与える)する2つの熱サイクルを含む方法を使用して、デンプンを処理した。
【0068】
ワキシーデンプン(308g,水分11%)を、攪拌しながら3Aエタノール(1177g;水7.18%)に加えた。次に、無水炭酸ナトリウム(7.585g;乾燥デンプンに基づいて2.77重量%)を加えた。生じたスラリーを、攪拌と制御蒸気加熱とを備えた2リットルの高圧ステンレス鋼反応器中に、ジャケットを通して移した。スラリーを反応器中で攪拌して143℃に加熱し、この温度で60分維持した。反応器内容物を25℃に冷却後、18.5gの50%クエン酸溶液(乾燥デンプンに基づいて3.37重量%)を使用してスラリーを中和した。反応器内容物を再度攪拌しながら反応器中で143℃に加熱し、この温度で60分維持した。25℃に冷却後、スラリーをブフナーロート中でろ紙でろ過して、湿ったデンプンケーキを得た。湿ったケーキをドラフト中でトレイの上で粉砕し、数時間放置した後、オーブンに入れると、3Aアルコールのほとんどは蒸発された。次に、デンプン(以後「7629−68」と特定する)を対流オーブン中で、50℃で一晩乾燥させ、次に摩砕し、100メッシュの篩中を通過させた。
【0069】
鋼鉄容器(直径7.2”、高さ8.5”)中に3.5kgの脱イオン水を入れ、鋼鉄容器をオーブン中で、125℃で1時間加熱し、50gの処理したデンプンを500メッシュの篩の上に広げ、鋼鉄容器上の真上の棚に置き、125℃で4時間デンプンを脱溶媒することにより、蒸気によるデンプンの脱溶媒を行った。次に、デンプンを50℃のオーブン中で一晩乾燥させた。
【0070】
デンプンの迅速ビスコアナライザー測定
デンプンのペーストプロフィールを分析するために、迅速ビスコアナライザー(RVA)(Newport Scientific Pty. Ltd., Warriewood, Australia)が使用された。RVAスラリー中で、デンプン濃度5%が使用された。加熱プロフィールとRPMは各グラフに示される。RVA pH6.5緩衝液(Cat. No. 6654-5, RICCA Chemical Company, Arlington, Texas, USA)及び認可済み緩液pH3.5衝(Key Laboratory Services, 2363 Federal Drive, Decatur, IL)が使用された。95℃で20分の保持を用いるViswaxy RVAプロフィールは、迅速調理ワキシーデンプンのRVA粘度を測定することを目的とする。デンプンをRVAカップ中に秤量し、RVA pH6.5又はpH3.5溶液を、総重量28gになるように加えた。
【0071】
剪断有り及び無しで沈降容積を測定する方法
1. デンプンの水分を測定する。
2. 5%のdsデンプンを250mLの広口試料ガラスジャー中に秤量し、DI水又は1%NaCl溶液を100gになるように加える。
3. ジャーの重量を記録する(任意)。
4. ジャーを95℃の水浴に入れ、内容物を加熱しながらガラス棒を使用して3分間攪拌する。
5. ガラスジャーを取り出し、これをキャップで固定する。
6. ジャーを95℃の別の水浴シェーカー(Boekel Shakerホットタブ)に入れる。
7. 120rpmの回転振盪で、試料を95℃で20分間調理する。
8. 20分後、シェーカーから試料を取り出し、室温の別の水浴に入れ、デンプンペーストを冷却する。
9. ジャーの重量を記録する(任意)。
10. 約40〜50mLのDI水又は1%NaCl溶液を100mLのメスシリンダーに加え、20.0gの調理済みデンプンペーストを加える。残りの容積(100mLのマーク)にDI水又は1%NaCl溶液を充填する。
11. メスシリンダーをパラフィンで密封し、内容物を振盪して、均一に分布したデンプン懸濁液(1%ds)を形成させる。
12. メスシリンダーを動かさないようによけておく。
13. 24時間後、沈降容積を記録する。
14. 剪断後の沈降容積の測定のために、水又は1%NaCl溶液中の50gのデンプンペーストをブレンダーに入れる。水中のデンプンについては35Vの設定で、1%NaCl溶液中のデンプンについて25Vの設定で、20秒間剪断を行う。剪断したデンプンペーストの通常の沈降法を行う。
【0072】
デンプンペーストの顕微鏡
1. そのままのデンプンペースト(5%)20μLを顕微鏡ガラススライド上にのせる。
2. 0.02Nヨウ素ストック溶液20μLをペースト上に適用する。
3. 楊枝を使用して、ペーストとヨウ素をガラススライド上で均一に混合する。
4. 混合物上にカバーガラス片をのせ、ライカDM4000光学顕微鏡で、5×対物レンズと10×双眼レンズを使用して、透過光で試料を観察する。
5. カバーガラス下の試料の全領域を見渡して、試料全体を代表する顆粒濃度を有する画像を撮る。
6. 剪断していないデンプンペースト試料について、50×の倍率の画像中で、無傷の顆粒の数を、無傷のワキシー顆粒の総数として計測する。
7. 剪断したデンプンペースト試料について、無傷のワキシー顆粒を断片から区別するために顕微鏡画像を拡大しなければならないため、無傷の顆粒の数を用手法で計測する。
8. 断片化のパーセント=(剪断していない試料中の無傷のワキシー顆粒の数 − 剪断した試料中の無傷のワキシー顆粒の数)/剪断していない試料中の無傷のワキシー顆粒の数。
【0073】
偏光下のデンプンの顕微鏡:
デンプン(10mg)を顕微鏡スライド上に置いた。1滴の蒸留水を加え、デンプンと混合した。カバーガラスを試料の上に載せた。デンプン試料を有するスライドを、ライカ顕微鏡DM4000(Buffalo Grove, IL 60089 United States)を使用して、20×対物レンズと10×双眼レンズを使用して、偏光を照射して観察した。
【0074】
結果と考察(デンプン処理法B)
表4は、125℃と160℃での脱溶媒の前と後の、アルコール−アルカリ処理デンプンの1%NaCl中の沈降容積を示す。
【表4】
【0075】
表5は、水中の125℃と160℃での脱溶媒の前と後の、アルコール−アルカリ処理した試料7629−68の沈降容積を示し、これは、1%NaCl溶液で観察されたものより大きな沈降容積を示した。
【表5】
【0076】
125℃と160℃での脱溶媒の前と後の、アルコール−アルカリ処理した試料7629−68のRVAプロフィールを、図16(RVA pH6.5)と図17(RVA pH3.5)に示す。
【0077】
図18と20は、非剪断沈降容積を測定するために調製された1%NaCl中で調理されたデンプンの顕微鏡写真である。図19と21は、1%NaCl中で調理され、次に、剪断沈降容積を測定するために調製された、ブレンダーを使用して剪断されたデンプンの顕微鏡写真である。顆粒の顕著な断片化は観察されなかった。
【0078】
天然のデンプン顆粒は、偏光で観察された時、複屈折又は典型的なマルタ十字を示す。デンプンが水の中で加熱されると、デンプンのゼラチン化の終了により、偏光の複屈折又はマルタ十字パターンが失われる。図22及び23は、ワキシーデンプンが、2つの加熱サイクルを有するアルコール−アルカリ処理と125℃及び160℃での脱溶媒を使用して処理されると、デンプン顆粒のマルタ十字が保持されることを示し、これは、デンプンがα化されていないことを示す。
【0079】
沈降容積は、上記試験でデンプン抑制の程度を測定するために使用される。より小さい非剪断沈降容積は、調理されたデンプン顆粒のより少ない膨潤とより大きな抑制を示す。非剪断沈降容積と比較して剪断沈降容積のより小さな変化は、より高い剪断安定性を示す。これらの基準により、脱溶媒の前及び後のアルコール−アルカリ処理した試料7629−68は非常に高度に抑制されており、剪断安定性であることが証明された。RVAプロフィールもまた、脱溶媒の前及び後の試料7629−68が高度に抑制されていることを示した。
【0080】
ブレンダーを使用して25ボルトで20秒間剪断する前(図18及び20)及び後(図19及び21)の1%NaCl中の調理されたデンプンの顕微鏡写真は、ゼラチン化顆粒の顕著な断片化を示さない。
【0081】
ワキシーデンプンが、2つの加熱サイクルを有するアルコール−アルカリ処理と脱溶媒を使用して処理されると、デンプン顆粒のマルタ十字が保持され、これは、デンプンがα化されていないことを示す。
【0082】
デンプン処理法C
この方法では、デンプンは、炭酸ナトリウムとクエン酸が導入されているアルコール媒体中で加熱され、ここで、炭酸ナトリウムは基本的にクエン酸により中和される(すなわち、クエン酸のナトリウム塩はその場で生成される)。
【0083】
ワキシーデンプン(307g,水分10.7%)を、攪拌しながら3Aエタノール(1177g;水7.18%)に加えた。次に、無水炭酸ナトリウム(7.585g;乾燥デンプンに基づいて2.77重量%)及び18.5gの50%クエン酸溶液(乾燥デンプンに基づいて3.37重量%)を加えた。生じたスラリーを、攪拌と制御蒸気加熱とを備えた2リットルの高圧ステンレス鋼反応器中に、ジャケットを通して移した。スラリーを反応器中で攪拌して143℃に加熱し、この温度で60分維持した。25℃に冷却後、スラリーをブフナーロート中で、ろ紙でろ過して、湿ったデンプンケーキを得た。湿ったケーキをドラフト中でトレイの上で粉砕し、数時間放置した後、オーブンに入れると、3Aアルコールのほとんどが蒸発された。次に、デンプン(以後「7629−70」と特定する)を対流オーブン中で、50℃で一晩乾燥させ、次に摩砕し、100メッシュの篩中を通過させた。
【0084】
鋼鉄容器(直径7.2”、高さ8.5”)中に3.5kgの脱イオン水を入れ、鋼鉄容器をオーブン中で、125℃で1時間加熱し、50gの処理したデンプンを500メッシュの篩の上に広げ、鋼鉄容器の真上の棚に置き、125℃で4時間デンプンを脱溶媒することにより、蒸気によるデンプンの脱溶媒を行った。次にデンプンを50℃オーブン中で一晩乾燥させた。
【0085】
得られたデンプンを、デンプン処理法Bを使用して作成されたデンプンについて上記したものと同じ方法を使用して性状解析した。
【0086】
結果と考察(デンプン処理法C)
表6は、脱溶媒前と後の、アルコール中の炭酸ナトリウムとクエン酸による1回の加熱サイクルを使用して作成された抑制されたデンプンの、1%NaCl中の沈降容積を示す。
【表6】
【0087】
表7は、脱溶媒前と後の、アルコール中の炭酸ナトリウムとクエン酸による1回の加熱サイクルを使用して作成された抑制されたデンプンの、精製水中の沈降容積を示す。沈降容積は、1%NaCl溶液中で観察されたものより高かった。
【表7】
【0088】
脱溶媒前と後の、アルコール中の炭酸ナトリウムとクエン酸による1回の加熱サイクルを使用して作成された抑制されたデンプンのpH3.5及び6.5のRVAプロフィールが、図24に示される。
【0089】
図25は、非剪断沈降容積を測定するために調製された1%NaCl中で調理されたデンプンの顕微鏡写真である。図26は、1%NaCl中で調理され、次に、剪断沈降容積を測定するために調製された、ブレンダーを使用して剪断されたデンプンの顕微鏡写真である。
【0090】
天然のデンプン顆粒は、偏光で観察された時、複屈折又は典型的なマルタ十字を示す。デンプン分子が顆粒内で放射状に配向されるため、マルタ十字の特性がもたらされる。デンプンが水の中で加熱されると、デンプンのゼラチン化の終了により、偏光の複屈折又はマルタ十字が失われる。図27は、ワキシーデンプンが、アルコール中の炭酸ナトリウムとクエン酸による1つの加熱サイクルと脱溶媒を使用して処理されると、デンプン顆粒のマルタ十字特性が保持されることを示し、これは、デンプンがα化されていないことを示す。
【0091】
沈降容積は、この試験でデンプン抑制の程度を測定するために使用される。より小さい非剪断沈降容積は、調理されたデンプン顆粒のより少ない膨潤とより大きな抑制を示す。非剪断沈降容積と比較して剪断沈降容積のより小さな変化は、より高い剪断安定性を示す。本例は、アルコール中の炭酸ナトリウムとクエン酸による1つの加熱サイクルを使用して作成された抑制されたデンプンが高度に抑制されており、剪断安定性であることを示す。ブレンダーを使用して25ボルトで20秒間剪断する前(図25)及び後(図26)の1%NaCl中で調理されたデンプンの顕微鏡写真は、調理された顆粒の顕著な断片化を示さなかった。偏光で観察すると、処理後のデンプンは複屈折又は典型的なマルタ十字を示し、これは、デンプンがα化されていないことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
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図22
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図24
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図26
図27