(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のクリッピング回路は、前記クリップ電圧に連結された第1の入力端子と前記TIAの前記入力ポートに連結された第2の入力端子とを有する第1の増幅器を備える適応クリッピング回路であり、前記ダイオード経路は、前記第1の増幅器の出力端子と前記TIAの前記入力ポートとを連結する、請求項1に記載のフロントエンド受信機。
前記整流素子は、前記第1の増幅器の前記出力端子に連結されたゲートと前記TIAの前記入力ポートに連結されたエミッタとを有するトランジスタを備える、請求項2に記載のフロントエンド受信機。
前記ダイオード経路は、直列に接続された制限抵抗経由で前記第1の増幅器の前記出力端子と前記TIAの前記入力ポートとを連結し、前記第2の入力端子は、前記直列に接続された制限抵抗経由で前記TIAの前記入力ポートに連結される、請求項2に記載のフロントエンド受信機。
前記直列に接続された制限抵抗は、前記TIAのフィードバック抵抗の抵抗値よりも約少なくとも1桁だけ小さい抵抗値を有する、請求項5に記載のフロントエンド受信機。
前記第2の入力端子は、前記直列に接続された制限抵抗の両端の電流誘起電圧降下だけ前記TIAの前記入力電圧より低い電圧を感知する、請求項5に記載のフロントエンド受信機。
前記整流素子は、前記第1の適応クリッピング回路の出力端子に連結されたゲートと前記TIAの前記入力ポートに連結されたエミッタとを有するトランジスタを備える、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
パルス飛行時間型(TOF)レーザー測距方法は、光学的に目に見えるターゲットへの、およびフロントエンド受信機に戻ってくる短いレーザーパルス(例えば約3nsの幅)の通過時間(ΔT)の測定に基づく。測定された通過時間は、ターゲットと受信機との間の距離(R)に変換することができる。
【0014】
パルスTOF測定に基づくライダーは、高い測定速度(>1000結果/秒)が必要な、受信されたエコーのダイナミクスが非常に幅広い(>1:1000)、および非連動ターゲットへ数十メートルまでの距離へ単一の送信パルスでも正確な距離測定(<1cm)が必要な環境知覚システムにおいて特に魅力的である。この種の例は、交通アプリケーションにおける衝突予防システムおよびスキャナである。例えば、自動車アプリケーションにおいて、ダイナミックレンジは1:100,000を超えることがある。鏡のような反射または近接物体からの反射の場合、非常に高い入力信号が受信機チャネルの入力部に現れることがある。入力信号は、10〜100mAに近づき、または0.5〜1Aに近づくこともあり、これは受信機チャネルを飽和させる可能性がある。
【0015】
興味深いのはまた、ライダーアプリケーションにおける受信パルスのパルス幅の測定であり、なぜならライダーアプリケーションにおける送信されたパルスと受信されたパルスとの間のパルス幅の差は、天候(湿気、霧、など)についての情報も運ぶからである。パルス幅は、例えば、霧の状態下での複数の散乱事象のために増加する可能性があり、したがってTIA自身のパルス幅拡大からこのパルス幅拡大を区別することは価値がある。パルス幅を制限することはまた、所与の時間周期におけるパルス列のパルス数を増加させることを可能にし、SNRを改善するために平均化技術を使用するときに役立つ。
【0016】
それゆえに、TIAの飽和閾値電圧を非常に超える電圧を誘起する大電流によって引き起こされるTIAの深い飽和を防止すること、および広範囲の入力電流振幅にわたってパルス幅歪の量と変動の両方を小さく保つことは有利なことであり、多くの場合必須である。
【0017】
図1(a)は、レーザーパルスに応答して発生される光電流I
inの例示的な電流パルスを示す。光電流パルスI
inは、TIAの入力に入力電圧V
inを生成し、TIAがその線形動作範囲で動作する場合、入力電流の形状を反映する。しかしながら、TIAは、それ以上でTIAが飽和する入力飽和電圧閾値V
sat,thによって特徴付けられる。光電流I
inが増加すると、TIA入力電圧V
inは「過飽和」領域に入り、そこからパルスの終わりにフィードバック抵抗R
fを介する抵抗−コンデンサ(RC)放電によって決定される時定数で減衰する。静電容量Cの値は、例えば、APDに対する静電容量およびシステムの他の寄生静電容量によって決定される。
図1(b)から明らかなように、パルスの幅は、TIAの入力電圧V
inが線形動作領域(<V
sat,th)に戻る前に実質的に広げられる。これは、出力電圧V
out,satの検出されたパルス幅を
図1(c)に表した量だけ「パルス幅歪」として増加し、したがって、
図1(a)の受信光電流パルスI
inの形状にもはや似ていない。したがって、TIAの入力における入力電圧V
inを入力飽和電圧閾値V
sat,thに近い値に制限することが望ましい。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
図2に図示される概略回路図は、図示されていない光源、例えばレーザー、からの受光入力信号に応答して、アバランシェフォトダイオード(APD)からの光電流I
inによって発生された入力電圧V
inを入力として受信するトランスインピーダンス増幅器(TIA)200を示す。トランスインピーダンス増幅器のDCおよび低周波利得は、増幅器の利得が十分に大きい場合、式(1)および式(2)によって決定することができる。
【0022】
TIAのオペアンプの高利得は、フォトダイオード電流を抵抗R
fを通るフィードバック電流に等しく保つ。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態によれば、パルス幅歪またはパルス幅拡大は、TIA入力電圧V
inをダイオードで制限(クリッピング)することによって低減され、ここでクリッピング経路は、飽和電圧V
sat,thより低い線形動作中は非アクティブであり、ノイズを大幅に増加させることはない。例えば、TIAの入力電圧V
inは、TIAの入力をショットキーまたはツェナーダイオード(図示せず)で橋渡しすることによって制限されてもよい。しかしながら、不都合なことに、これらのダイオードがターンオン電圧(Si接合では約0.7V、Ge接合では約0.3V)を下回って動作する場合であっても、電流リークによりクリップ電圧を飽和閾値V
sat,thに非常に近くに選択することはできない。
【0024】
ダイオードを流れる順方向電流は、次の式で与えられる
【0026】
ここで、
V
D=ダイオード両端の印加電圧
k=ボルツマン定数(1.38*10
−23ジュール/ケルビン)
T=ケルビンでの絶対温度
q=電子電荷(1.6*10
−19クーロン)
I
D=ダイオードを流れる実際の電流
I
s=拡散電流(デバイスに依存する定数)
いわゆる熱ダイオード電圧V
Tは、室温でkT/q=26mVである。
【0027】
(式3)から、I
DはV
Dで指数関数的に増加し、Siダイオードについて約0.7Vのバンドギャップを下回ってさえも非ゼロであることが明らかである。特定のアプリケーションに依存して、
図2のダイオード204を通る順方向リーク電流は、ダイオード204両端の順方向バイアスがダイオードのバンドギャップ(または理論的なターンオン電圧)から熱電圧V
Tの倍数だけ、例えば熱電圧V
Tの約8倍、すなわち約8*26mVあるいは約200mVだけ減少しても無視できると考えられる。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
図2に図示するように、クリップ電圧は、外部制御電圧V
ctrlによって制御される第1の入力を有するバッファ増幅器202の出力を、次にTIAの入力に接続された逆バイアスダイオード204に接続することによって調整され得る。第2の(図示されていない)入力は、コモンモード電圧、例えば接地に接続することができる。バッファ増幅器は、ボルテージフォロアとして実行されてもよい。ダイオードは、例えば約0.7Vのターンオン電圧を有するSiダイオードであってもよい。入力電圧V
inを、例えば、2Vの例示的な飽和閾値V
sat,thの上でΔV=350mVの値にクリップするために、制御電圧V
ctrlは1.85Vでなければならない。TIAの線形動作の間、TIAの入力電圧V
inが2Vの飽和閾値V
sat,thを下回るとき、ダイオードの電圧が0.25Vであるので
図2のダイオード204は本質的に非導通であり、入力電圧V
inはフィードバック抵抗R
fのみによって決まる。V
inが2.35Vを超えるとき、ダイオードは順方向バイアスされ、過剰電流I
inはダイオード204によって消散される。ΔV=350mVの値は、代表例として単に選択されており、V
inがまだTIAの正常動作範囲内にある限り、例えば、ダイオードのターンオン電圧(Siダイオードについては0.7V、Geダイオードについては0.3V)にほぼ等しくてもよく、好ましくはダイオードのターンオン電圧の半分、またはダイオードの熱電圧V
Tの倍数、例えば約8倍のV
Tである200mVであってもよいことに留意すべきである。
【0029】
ダイオード204は、V
inを過度に増加させることなく、飽和閾値V
sat,thより上で比較的大きな電流を消散することができなければならないので、ダイオードの順方向抵抗は小さくなければならず、大きなダイオードが必要となる。しかしながら、より大きなダイオードはまた、より小さいダイオードよりも著しく大きい静電容量を有し、それは今度は、
図1(b)のRC放電時間を制御するRC時定数を増加させ、帯域幅を減少させ、TIAノイズを増加させる。
【0030】
入力電圧V
inおよび出力電圧V
outならびに付随するパルス幅についてバッファ増幅器202に伴うダイオード204の効果を
図3に概略的に示し、
図3(a)は、I
in_1>I
in_2>I
in_3の3つの異なる例示的入力電流レベルI
in_1、I
in_2およびI
in_3を示す。光電流パルスI
in_1、I
in_2およびI
in_3は、V
in=V
ctrl+0.7V+R
diode,int*I
inとして入力電流I
inに依存するV
inを有するTIAの入力に対応する電圧V
in_1、V
in_2およびV
in_3を生成し、ここでV
ctrlはバッファ増幅器202に印加される制御電圧であり、0.7VはSiダイオードのターンオン電圧であり、R
diode,intはダイオード204の内部順方向抵抗である。ダイオード204によってアシストされる放電期間は、ダイオード204を流れる電流が無視できるようになるとき、すなわちV
in=V
ctrl+V
diode(0)=V
ctrl+0.7Vで常に終了する。この例では、電圧V
ctrl+V
diode(0)は、TIAの飽和閾値電圧V
sat,thよりΔV
〜450mVだけ高くなるように選択される、なぜなら、V
in≦V
sat,thのとき、すなわちダイオードを流れる順方向リーク電流が特定のアプリケーションについて無視できるとき、ダイオードは通常の動作中はオフであるべきだからである。入力電圧V
inがV
ctrl+V
diode(0)を下回ると、入力電流はこの時点からフィードバック抵抗R
fを通してのみ放電することができる。しかしながら、R
fを通しての放電は、I
inにかかわらず常にV
ctrl+V
diode(0)から始まり、それは、電圧V
in_1、V
in_2およびV
in_3がV
ctrl+V
diode(0)を超えることを引き起こすすべての図示された電流I
in_1、I
in_2およびI
in_3についてパルス幅拡大が同じであることを暗示する。
【0031】
V
cc,APDはAPDの(正の)電源電圧を表す。V
ccは
図11のESDの供給電圧を表し、バッファ増幅器およびTIAの供給電圧(図には明示されていない)を表す。V
cc,APDは通常V
ccよりも高い。
【0032】
図3および
図1の比較は、パルス幅歪を低減するダイオード204を通して大電流を放電する利点を示す。ΔV=V
ctrl+V
diode(0)−V
sat,thをほぼゼロに減少させるのに必要な放電時間は、パルス幅歪の主な要因である。ΔVをできるだけ小さくすることが望ましい。ΔVを小さくすることによってパルス幅歪を理論的には低減することができるが、ダイオード204を通る電流漏洩はTIAの通常動作に悪影響を及ぼし得る、すなわち、V
ctrl+V
diode(0)がせいぜいV
sat,thよりわずかに(例えば、ダイオードのターンオン電圧を上回らないだけ、好ましくはダイオードのターンオン電圧の半分を上回らないだけ、またはSiダイオードの熱電圧V
Tの倍数だけ、例えばV
inがまだTIAの正常動作範囲内にある限り、8*V
T=200mVだけ)上であるようにV
ctrlが選択されるときである。
【0033】
パルス幅歪は、
図3の結果によって図示されるダイオードアシストクリッピングを用いて
図1から低減されるが、R
fを通るΔVの放電の時定数は、数十ナノ秒のオーダーであり得、これはいくつかのアプリケーションにとって依然として許容できないほど長いと言える。ここで説明する適応クリッピングにより、パルス幅歪をさらに低減することができる。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
図4に図示するように、入力電圧V
inは、外部から印加されるクリップ電圧V
clipに見合ってダイオード404の両端の電圧を調整することによって適応的にクリップされ得る。
図4の適応クリッピング回路は、オペアンプ402の反転入力が、
図2のようにコモンモード電圧または接地のような固定電位に結ばれず、代わりにTIAの入力端子から電圧V
inを受ける点で、
図2を参照して先に説明した回路とは異なる。
【0035】
図4の適応クリッピング回路は以下のように動作する、すなわちオペアンプ402の出力電圧は、正入力端子(+)と負入力端子(−)との間の電圧差に利得係数だけ線形的に比例する。理想的なオペアンプは、無限大利得、無限大入力抵抗、およびゼロ出力抵抗を有する。無限大利得を仮定した結果、出力電圧がオペアンプの線形領域内にあるとき、正入力端子(+)の電圧は常に負入力端子(−)の電圧に等しい。ダイオード404がなければ、
図4の回路は、増幅器402およびダイオード404によって形成されるフィードバックループが常にV
in=V
clipとなるようにノイズ412を駆動するボルテージフォロワとなる。順方向電圧V
fを有するダイオード404がオペアンプ402の出力と負入力端子(−)との間に挿入され、クリップ電圧V
clipが正入力端子(+)に印加されるとき、オペアンプ402およびダイオード404によって形成されるフィードバックループは、V
in≦V
clipの場合、V
inをV
clipに等しくすることができない。例えば、上述したように、V
in〜2VおよびV
clip〜2.2Vの場合、フィードバックループは効果がなく、TIAは線形領域で動作し、V
inは増幅器200の出力共通モード電圧と入力電流I
in掛けるR
fとの和によって決定される。
【0036】
高電流パルスの間、V
inはV
clipまで充電され、その時点で、ダイオード404を流れる電流が、所望のクリップ電圧V
clipを上回らないようにするためにV
inがさらに増加するのを妨げるように、オペアンプ402およびダイオード404によって形成されるフィードバックループが活性化され、ダイオード404のカソードを調整する。
図4の例示的な適応クリッピング回路を用いることで、ΔV=V
clip−V
sat,thは、ダイオード404の実際の温度依存ソフトターンオン電圧よりも小さい値に設定することができ、通常の動作中にダイオード404を通して高い漏れ電流を引き起こすことなく、パルス幅歪が非常に小さくなり、通常の動作に戻る時間が短くなるという結果をもたらす。これは
図2のダイオード回路では可能ではなかった、なぜなら、ΔV=V
ctrl+V
diode(0)−V
sat,thの小さな値は、ダイオード204の両端に大きな電圧降下をもたらし、通常の動作中に相応の大きな漏れ電流を生じさせるからである。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
図5に図示するように、ダイオード404によって提供される機能、すなわち、フィードバックループがV
inを増加させるのを防ぐ機能は、トランジスタ504、例えばオープンエミッタPNPエミッタフォロワまたはオープンソースPMOS(p型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)ソースフォロア、によっても提供されることができる、なぜならこれらのオープンエミッタ/オープンソース段の両方共が電流をシンクし、V
inを放電/低減することができるが、V
inを充電/増加させるための電流を供給することはできないからである。フィードバックループは、V
inが、例えば例示的値2.2Vを超えるとき、電圧を引き下げる。上述したように、
図4および5に示す適応クリッピング回路は、大電流を扱うために適切なサイズにする必要がある、しかしながら、サイズに関係する静電容量は応答時間を制限する。換言すれば、適応クリッピング回路のループ帯域幅は、ループが入力電流パルスの立ち上がりエッジに迅速に応答でき、V
inが危険なレベルに達するのを防ぐように十分に高くなければならない。しかしながら、ループは通常の動作中はオフであるので、ループを最初に確立しなければならず(ウェークアップ段階)、その後にのみV
inを下げることによってV
sat,thに近い所望のレベルに応答することができる。
【0038】
より高い「最大許容電流」を達成することの別の問題は、より高い振幅の電流パルスがV
inをV
sat,thにより速く充電し、こうしてより速い応答時間を要求することである。
【0039】
図6(a)〜6(c)は、TIAの入力における入力電圧V
in_1、V
in_2、V
in_3およびTIAによって発生されたV
out_1、V
out_2、V
out_3の形状に関して異なる、特に非常に高い入力電流レベルI
in_1、I
in_2、I
in_3の影響を概略的に図示する。上述のように、適応クリッピングは、電圧V
inを飽和閾値V
sat,thに近いV
clipに入力電流I
inとは無関係に制限する。V
inがクリップされる電圧は飽和閾値V
sat,thに近いので、残りの過剰電圧ΔV=V
clip−V
sat,thは時定数τ=R
f*CでR
fを通して放電される。こうして、TIAからの出力パルスのパルス幅は、
図6(a)の例示的な入力電流I
in_3など、過度に高くない入力電流についての入力電流の幅近くに適応クリッピングで低減することができる。
【0040】
しかしながら、
図6(a)の入力電流I
in_1、I
in_2など、高い入力電流レベルでの
図4および5のクリッピング回路の動的応答は、
図6(b)のV
in_3と比較してV
in_2の狭小化に現れるパルス歪み、および電流パルスI
in_1の立ち下がりエッジでV
in_1に負電圧グリッチを生じさせ、
図6(b)におけるV
in_1の位相反転という結果になり得る。負電圧グリッチが十分に強い場合、V
in_1はコモンモード電圧の下に低下し、
図6(c)に図示するように、TIAの出力に反対極性のパルスを生成する。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
図7に図示するように、適応クリッピングはダイオードクリッピングと組み合わせてもよく、今後アシストされた適応クリッピングと呼ぶ。アシストされた適応クリッピングは、適応クリッピング回路により高速な代替電流経路を追加し、それによりループは入力電流パルスの立ち上がりエッジに素早く応答することができ、V
inが望ましくないまたは危険なレベルに達するのを防ぐ。
【0042】
アシストされた適応クリッピングでは、全体クリッピング回路は
図2に従った第1のダイオードクリッピング経路701を含み、それは最初に応答し、V
clipより幾分高い比較的安全な電圧でV
inをクリップし、制御電圧V
ctrlによって制御される、なぜなら、ダイオードクリッピングは、第1のダイオードクリッピング経路701内のダイオードの通過時間だけによって決まるより短い応答時間を有するからである。
【0043】
その後、
図7(a)に図示され
図5に従って設計された適応クリッピングフィードバックループ702および
図7(b)に図示され
図4に従って設計された適応クリッピングフィードバックループ704は、それぞれ、ウェークアップし、電流を消散し始める、なぜなら上述したように、非適応クリッピング回路よりも低い電圧でクリッピングするからである。言い換えれば、非適応第1のダイオードクリッピング経路701が最初に応答し、高入力電流の第1のサージを消散させる。その後、適応クリッピングフィードバックループ702または704がそれぞれウェークアップし、非適応クリッピング回路を通過する電流をまた消散し始め、それにより(適応クリッピングフィードバックループ702、704はV
sat,thより上のより低い電圧値でクリップするので)入力電圧をさらに低減する。この移行期間中、適応クリッピングフィードバックループ702、704を通る電流は増加するが、非適応クリッピング経路701を通る電流は減少する。こうして、V
inは、それぞれの適応クリッピングフィードバックループ702および704を介してほぼV
clipまで放電される。
【0044】
非常に高い電流が当初、すなわち適応クリッピングフィードバックループ702、704が起動する前に、第1のダイオードクリッピング経路701を有するダイオードクリッピングによって処理されるので、適応クリッピングフィードバックループ702、704のデバイスを小さくすることができ、フィードバックループの帯域幅を増加させることができる。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態によれば、適応クリッピングは、
図8(a)の回路802内のトランジスタ504を通って、または同様に
図8(b)の回路804内のダイオード404を通って流れる適応クリッピング電流を制限することにより、より強固にされてもよい。この目的を達成するために、電流制限抵抗R
limを、
図8(a)に示す適応クリッピング回路802では、TIA200の入力端子と(812の)オープンエミッタPNPエミッタフォロワまたはオープンソースPMOSソースフォロア504との間に、または相応して
図8(b)に示す適応クリッピング回路804において、TIA200の入力端子と(812の)ダイオードのアノードとの間に挿入してもよい。抵抗R
lim両端の電圧降下の結果、適応クリッピング回路802内のPNPエミッタフォロワまたはオープンソースPMOSソースによって、または適応クリッピング回路804内のダイオードによってそれぞれ消散される電流は低減される。
【0046】
ノード812と増幅器402の(−)入力との間の適応クリッピング回路804のフィードバックループは、ノード812をクリップ電圧V
clipに保持し、ダイオードが順バイアスされるとき、すなわちV
in>V
clipのとき、V
inが当初より高い電圧V
in=V
clip+R
lim*I
diodeを有することを可能にする。V
in<V
clipのとき、適応クリッピング回路804は影響しない、なぜならその時ダイオード404が逆バイアスされ、電流を遮断するからである。適応クリッピング回路802も同様に動作する。V
inは適応クリッピング回路804の初期放電期間中にR
lim*I
diodeだけV
clipよりも高い電圧にある一方、I
diodeがゼロになるとV
inはV
clipに近づき、適応クリッピング回路804を通しての放電を終える。抵抗R
limは、ノード812の電圧とV
inとの間にオフセットを生み出すように動作する。このオフセットは、ノード812を充電する(一時的に電圧を引き上げる)手段を提供し、したがって、R
limを介した放電中にノード812をV
clipに保持する能力をフィードバックループに与える。
【0047】
例示的な適応クリッピング回路804の動作が、
図9に概略的に図示されている。適応クリッピング回路804のフィードバックループは、入力電流I
inにかかわらずV
in電圧がV
clipの上R
lim*I
diodeである間(
図9(a)は3つの異なる入力電流レベルI
in_1>I
in_2>I
in_3を示す)、ノード812の電圧をV
clipに保持する。入力電流パルスの振幅がゼロに戻るとき、すなわち入力パルスの終わりで、ダイオード404はV
inが放電されるのをアシストする電流を導通し続ける。このアシストは、ダイオード404を通る電流がゼロに減少するまで続き、その点でR
lim上の電圧降下はゼロに等しくなる。その結果、ダイオードアシスト段階は常に電圧V
clipで終了する。ダイオード404および電流制限抵抗R
limを介して過電流が適応クリッピング回路804を通して消散されると、残留電流はTIA200のフィードバック抵抗R
fを通して消散される。ノード814の電圧は、ダイオード404の順方向電圧降下に見合ってV
clipの下に引き下げられるので、V
clipとV
sat,thとの間の電圧差ΔVは、例えば0.3〜0.4V未満、例えば0.1Vの値に保持することができ、典型的なSiダイオード404の順方向電圧0.7Vよりもはるかに低いことを強調しなければならない。
【0048】
上述の議論は、必要な変更を加えて、適応クリッピング回路802にも適用される。いくつかの実施形態では、
図8に示されていないが、回路はアシストされた適応クリッピングをさらに含むことができ、例えば回路は
図7によって図示された第1のダイオードクリッピング経路701を含む。
【0049】
図8に図示された例において、電圧V
clipへのR
limを通した放電の時定数が、TIAのフィードバックループを通る残りの放電よりもはるかに速くあり得るように、R
f〜5〜10kΩ、R
lim〜20Ωである。
【0050】
電流制限抵抗R
limがなければ、ノード811と812との間の電圧は、ある入力電流レベル(
図6(b)参照)を超えて実際に極性を逆転し、フィードバックループが瞬間的に作用できないのでV
inがV
clip以下に低下することを意味する。V
in<V
clipの場合、V
clipは、ダイオード404(または相応してトランジスタ504)が逆バイアスされているので、ノード811をV
clipにプルアップすることができない。この状況は、上述した位相反転につながる。電流制限抵抗R
limは、フィードバックによって感知されたノード812とV
inとの間のオフセットを生み出す。このオフセットは、ノード812を充電する手段(一時的なプルアップ経路)を提供し、したがって、放電中にノード812をV
clipに保持する能力をフィードバックループに与える。
【0051】
図10に図示する本開示のいくつかの実施形態によれば、APDのアノードとTIA200の入力との間の電流経路に抵抗素子R
dを挿入してもよい。
図10の実施形態において、第1のクリッピング回路1004は、TIA200の入力と抵抗R
dの第1の端子との間の接続点1012に接続されてもよく、第2のクリッピング回路1002は、APDのアノードと抵抗R
dの第2の端子との間の接続点1010に接続されてもよい。第2のクリッピング回路1002は、TIA200の入力においてより少ない容量性負荷でより大きな電流パルスを取り扱うように設計される。この構造では、第1のクリッピング段1004の目的は、TIAが適切に動作、すなわちTIAの飽和閾値電圧にできるだけ近く動作できるように、V
inを望ましい電圧レベルに保つことである。第1のクリッピング回路1004によって取り扱われる最大電流は、抵抗R
dによって制限される。第1のクリッピング回路1004のダイオードD
1の内部抵抗によって引き起こされる電圧降下は依然として問題であるが、
図2に伴って前述したように、第1のクリッピング回路1004によって供給される最大電流は、抵抗R
dによっておよび第2のクリッピング回路1002によって制限される。これらの緩和された電流取り扱い要件により、ダイオードD
1は今やずっと小さなサイズを有することができる、なぜならダイオードD
1を流れる電流がより小さいためにその内部抵抗が懸念されることが少ないからである。
【0052】
ダイオードD
1を流れる電流は、抵抗R
dの両端に電圧降下を発生させる。この電圧降下のために、例えばV
clip2がV
clip1と等しく選択されていると仮定すると、ダイオードD
2に印加される電圧はダイオードD
1に印加される電圧よりも大きい。したがって、ダイオードD
2を流れる電流は、2つのダイオードD
1およびD
2のサイズが同じであっても、ダイオードD
1を流れる電流よりも大きい。その結果、APDからの電流のうちのより小さい部分が第1のクリッピング回路1004によって取り扱われ、一方APDからのより大きな残りの電流が第2のクリッピング回路1002によって取り扱われる。
【0053】
クリッピング回路1002、1004は、
図2に示したバッファ202およびダイオード204を有する回路と、または同様に
図7の回路701と実質的に同等の構造を有するものとしてそれぞれ示されているが、クリッピング回路1002および1004のうちの1つは、回路702および回路704(
図7)または回路802および回路804(
図8)の構造をそれぞれ有してもよいことが理解されよう。
【0054】
第2のクリッピング回路1002は、APDからの高入力電流のかなりの部分を対処する。しかしながら、APDの出力電圧V
APDがもはやTIAの動作点に影響を与えないので、第2のクリッピング回路1002のダイオードD
2の電圧依存内部抵抗R
D2,intは実際上問題ではない。例えば、出力電圧V
APDが非常に高く、例えば5Vであっても、R
d両端の電圧降下は十分に大きく、第1のクリッピング回路1004は、電流のごく一部のみを対処するだけでよく、V
inをTIAの動作範囲内であるV
clip1+0.7Vに近いかまたはわずかに上に保つ、すなわちTIAの飽和閾値電圧にできるだけ近くに保つことができる。このアーキテクチャでは、D
1とD
2は小さくても、大きな入力電流を取り扱うことができる。
【0055】
両方のクリッピング回路1002および1004が作動される大電流では、第1のクリッピング回路1004の電流I
clip1,maxは、以下のように計算することができる。
I
clip1,max=(V
clip2−V
clip1+I
clip2*R
D2,int)/(R
d+R
D1,int)
ここでフィードバック抵抗R
fを通る電流は無視できるものと仮定している。R
D1,intはダイオードD
1の電圧依存内部抵抗であり、R
D2,intはダイオードD
2の電圧依存内部抵抗である。V
clip2=V
clip1を選択することにより、D
1を流れる最大電流が最小になる。
【0056】
図12は、
図10の回路の動作条件のシナリオ例を示す。上述したように、V
clip1およびV
clip2は、同一で、例えば1.8Vに等しくなるように好都合に選択されてもよい。APDが500mAの光電流を供給し、ダイオードD
1およびD
2の両方の内部抵抗はそれぞれの動作点で1Ωであり、および抵抗素子R
dの抵抗が18Ωに選択されると仮定すると、第1のクリッピング段1004によって消散される電流は25mAになり、第2のクリッピング段1002によって消散される電流は475mAになる。それなら、接続点1010の電圧は2.975Vであり、接続点1012の電圧は、したがってTIAの入力でも2.525Vであり、これは十分にTIAの正常動作範囲内である。R
dを大きくすると、第1のクリッピング回路1004の電流取り扱い要件は緩和されるが、システムのノイズが増加する。
【0057】
図示された例は実際の最適化された動作条件に対応しないかもしれないとしても、それは単一段クリッピング回路のみを有するよりはるかに良好に動作することを実証する。
【0058】
図11に示す本開示のいくつかの実施形態によれば、
図10の第1のクリッピング段1002は、ESD(静電気放電)ダイオード1102で置き換えられてもよく、それはESD保護を提供するために典型的には光電流検出回路に既に組み込まれ、APDと並列に接続されている。この回路は
図10の回路と等価であり、ここでV
clip2=V
CC<V
CC,APDであり、1002内のバッファが不要である。第2クリッピング段としてESDダイオードを使用することは、ESDダイオードが既に配置されているので、接続点1010に追加の容量が導入されないという利点を有する。しかしながら、不利な点はV
clip2がV
CCに等しくなければならないということであり、それは最初のクリッピング構造でのより高い最大電流という結果になる。この電流はR
dを大きくすることで低減できるが、R
dを大きくすることはノイズ寄与を増加させる。
【0059】
多重散乱は、例えば、霧のような水滴上で生じるので、パルス分散の検出は光学測距アプリケーションにおける気象条件についての情報を提供することができる。このように気象条件は、反射レーザーパルスの形状に結果として生じる変化のために、測距アプリケーションにとって重要なパラメータとなる可能性がある。気象条件を検出する以外にも、分散情報はまた測距アルゴリズムの精度を維持するためにも必要である。
【0060】
レーザーレーダーエレクトロニクスで使用されるコンポーネントは通常は安価であるため、この技術は大量のアプリケーションでは潜在的に興味深いものである。
【0061】
一実施形態によれば、APDの極性を含む回路の極性は、前述の回路の性能または動作に影響を及ぼすことなく逆にしてもよい。
【0062】
ライダーアプリケーションを参照して実施形態を説明してきたが、変化する強度を有する光パルスを検出する必要があるときはいつでも説明し図示した回路を使用することができる、例えば大きな光パルスによる過負荷が発生する可能性のある光時間領域反射率計(OTDR)において使用することができることが理解されるであろう。さらに、他のタイプの電流パルスを検出する必要があるときに、説明し図示した回路を使用することができる。
【0063】
図面では、入力電圧V
inのクリッピングまたは制限は、1つの極性についてのみ示されている。他の極性をクリッピングするクリッピング回路を設けることにより、2つの極性のクリッピングを提供することが可能であることに留意されたい。これは、例えば、順方向に電流を流し、逆方向の電流を遮断するショットキーダイオードの使用によって容易に実現することができる。これは、例えば、逆方向で使用されるツェナーダイオードとは対照的である。
【0064】
本明細書で概説した仕様、寸法、および関係のすべて(例えば、プロセッサの数、ロジック動作、など)は、例示および教示のためだけにのみ提供されたものであることに留意されたい。そのような情報は、本開示の精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなくかなり変えられてもよい。本明細書は、1つの非限定的な例にのみ適用し、したがって、それらはそのように解釈されるべきである。前述の説明では、例示的な実施形態を、特定のプロセッサおよび/またはコンポーネント配置を参照して説明してきた。添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、そのような実施形態に様々な修正および変更を加えることができる。したがって、説明および図面は、制限するものではなく例示的なものとみなされるべきである。
【0065】
本明細書で提供される多数の例では、相互作用は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の電気的コンポーネントの点から記述されてもよいことに留意されたい。しかしながら、これは、明瞭化および単なる例示のためになされたものである。システムは、任意の適切な方法で統合することができることを理解されたい。類似の設計選択肢に沿って、図示された図面のコンポーネント、モジュール、および要素のいずれかは、様々な可能な構成で組み合わせることができ、そのすべてが本明細書の広い範囲内にあることは明らかである。場合によっては、限られた数の電気的要素を参照するだけで、所与のセットのフローの1つ以上の機能性を記述することがより容易になる場合がある。図面およびその教示の電気回路は、容易に拡張可能であり、多数のコンポーネントならびにより複雑で洗練された配置および構成を収容することができることを理解されたい。したがって、提供された例は、請求の範囲を限定するものではなく、または無数の他のアーキテクチャに潜在的に適用されるように電気回路の広範な教示を妨げるものではない。
【0066】
また、本明細書では、「一実施形態」、「例示的実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「様々な実施形態」、「他の実施形態」、「代替実施形態」に含まれる様々な特徴(例えば、素子、構造、モジュール、コンポーネント、ステップ、動作、特性、など)への参照、などは、それらの特徴のいずれもが本開示の1つ以上の実施形態に含まれることを意味するように意図しているが、同じ実施形態において組み合わされてもよいし必ずしも組み合わされなくてもよい。
【0067】
回路アーキテクチャに関連する機能は、図面に図示されるシステムによって、またはそのシステム内で実行され得る可能な回路アーキテクチャ機能のうちのいくつかのみを図示することにも留意されたい。これらの動作の一部は、必要に応じて削除または移動されてもよく、またはこれらの動作は、本開示の範囲から逸脱することなく、かなり修正または変更することができる。加えて、これらの動作のタイミングはかなり変えられてもよい。前述の動作フローは、例示および議論の目的で提供されている。本開示の教示から逸脱することなく、任意の適切な配置、時系列、構成、およびタイミング機構が提供され得るという点で、実質的な柔軟性が本明細書に記載の実施形態によって提供される。
【0068】
多数の他の変更、置換、変形、改変、および修正が当業者には確認されるかもしれず、本開示は、添付の特許請求の範囲内に入るそのようなすべての変更、置換、変形、改変、および修正を包含することが意図されている。
【0069】
上述のデバイスおよびシステムのすべてのオプション機能は、本明細書に記載の方法またはプロセスに関して実施されてもよく、例の明細は、1つ以上の実施形態のどこにでも使用されてよいことに留意されたい。
【0070】
これらの事例(上記)における「のための手段」は、任意の適切なソフトウェア、回路、ハブ、コンピュータコード、ロジック、アルゴリズム、ハードウェア、コントローラ、インターフェース、リンク、バス、通信経路、などと一緒に、本明細書で論じられた任意の適切なコンポーネントを使用することを含むことができる(ただしこれに限定されない)。