(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863923
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】輸送機器内装用の化粧板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20210412BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20210412BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20210412BHJP
B32B 21/04 20060101ALI20210412BHJP
B61D 17/18 20060101ALI20210412BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
B32B15/08 105
B32B15/092
B32B3/12
B32B21/04
B61D17/18
B60R13/02 Z
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-61239(P2018-61239)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-171640(P2019-171640A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】吹本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 賢一
(72)【発明者】
【氏名】内山 明
【審査官】
鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−516957(JP,A)
【文献】
特開2001−096702(JP,A)
【文献】
特開2014−208453(JP,A)
【文献】
特開2003−103698(JP,A)
【文献】
特開昭60−122149(JP,A)
【文献】
特開2003−247317(JP,A)
【文献】
特開昭63−084934(JP,A)
【文献】
特開平05−116111(JP,A)
【文献】
特開2010−046659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
B60R 13/01 − 13/04
B61D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板の一方側の表面に積層された熱硬化性樹脂を含む接着材(ただし、メラミン樹脂またはフェノール樹脂を含有するプリプレグを除く)と、
前記接着材の一方側の表面に積層され、開放された多数の空隙を有し、竹材又は木材の網代である多孔性の可燃内装材と、
前記可燃内装材に含浸硬化された熱硬化性樹脂を含む充填材と、を備える、輸送機器内装用の化粧板。
【請求項2】
前記充填材は、前記可燃内装材の一方側の表面から溢れる厚さよりも前記可燃内装材の他方側の裏面から前記接着材側に溢れる厚さが大きくなるように配置されている、請求項1に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項3】
前記充填材は、加熱により水が生成される吸熱フィラーを含む、請求項1又は2に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項4】
前記吸熱フィラーは、水酸化アルミニウムを含む、請求項3に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項5】
前記接着材は、前記充填材よりも熱伝導率が高い、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項6】
前記接着材は、前記接着材に含有される前記熱硬化性樹脂よりも熱伝導率の高い伝熱フィラーを含む、請求項5に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項7】
前記伝熱フィラーは、酸化アルミニウムを含む、請求項6に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項8】
前記充填材の前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項9】
前記金属板は、0.15mm以上の肉厚を有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項10】
前記充填材の重量をW3、前記可燃内装材の重量をW4としたとき、W3/(W3+W4)が15%以上、25%以下である、請求項1乃至9に記載の輸送機器内装用の化粧板。
【請求項11】
開放された多数の空隙を有し、竹材又は木材の網代である多孔性の可燃内装材に熱硬化性樹脂を含む充填材を含浸する第1工程と、
前記可燃内装材に含浸された前記充填材を半硬化させる第2工程と、
熱硬化性樹脂を含む接着材(ただし、メラミン樹脂またはフェノール樹脂を含有するプリプレグを除く)を金属板の一方側の表面に積層する第3工程と、
前記半硬化した充填材が含浸された前記可燃内装材を前記接着材の一方側の表面に積層する第4工程と、
前記接着材及び前記充填材を熱硬化させる第5工程と、を備える、輸送機器内装用の化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機器の内装に用いる化粧板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両や船舶等の輸送機器では、室内壁の内装材に不燃性が要求されることで内装材の選択肢が狭くなるのが現状である。例えば、鉄道車両の室内壁には、一般的にアルミメラミン化粧板が用いられることが多い(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−84934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アルミメラミン化粧板では、図柄は印刷により自由に表現できるものの表面の質感に乏しく、インテリアデザイン面において内装に高級感を出すことが難しい。他方、竹や木質の網代等を内装材に用いて高級感を出そうとしても、それらが可燃物であるため、質感を保ちながら不燃性の要求を満たすことが難しい。
【0005】
そこで本発明は、可燃性の内装材を化粧板に用いながら、不燃性を付与して且つ外観を良好に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る輸送機器内装用の化粧板は、金属板と、前記金属板の一方側の表面に積層された熱硬化性樹脂を含む接着材と、前記接着材の一方側の表面に積層され、開放された多数の空隙を有する多孔性の可燃内装材と、前記可燃内装材に含浸硬化された熱硬化性樹脂を含む充填材と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、熱硬化性樹脂を含む充填材が可燃内装材に含浸硬化されて可燃内装材の多数の空隙が充填材で充填されているので、可燃内装材に内在していた空気(酸素)が無くなる。これにより、可燃内装材に伝わった熱は、接着材を介して金属板へ効率よく伝達され、不燃効果が向上する。併せて、可燃内装材の表面が熱硬化樹脂でコーティングされているため、可燃内装材が一層燃え難くなる。更に、可燃内装材が金属板に直接積層されるのではなく可燃内装材と金属板との間に熱硬化性樹脂を含む接着材が介在しているので、充填材を多量に用いなくても可燃内装材を金属板に安定的に固定できる。そのため、可燃内装材の一方側の表面(意匠面)に溢れる充填材が低減され、充填材により可燃内装材の外観が損なわれることが防止できる。
【0008】
本発明の一態様に係る輸送機器内装用の化粧板の製造方法は、開放された多数の空隙を有する多孔性の可燃内装材に熱硬化性樹脂を含む充填材を含浸する第1工程と、前記可燃内装材に含浸された前記充填材を半硬化させる第2工程と、熱硬化性樹脂を含む接着材を金属板の一方側の表面に積層する第3工程と、前記半硬化した充填材が含浸された前記可燃内装材を前記接着材の一方側の表面に積層する第4工程と、前記接着材及び前記充填材を熱硬化させる第5工程と、を備える。
【0009】
前記製法によれば、多孔性の可燃内装材を用いながらも、不燃性が付与され且つ外観が良好な化粧板を製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多孔性の可燃内装材を用いた化粧板において、不燃性を付与して且つ外観を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る輸送機器内装用の化粧板の断面図である。
【
図2】
図1に示す化粧板の意匠面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る輸送機器内装用の化粧板1の断面図である。
図2は、
図1に示す化粧板1の意匠面側から見た平面図である。化粧板1は、鉄道車両、船舶、航空機、昇降機等のように人間が搭乗する輸送機器の室内壁の内装に用いられる。
図1に示すように、化粧板1は、金属板2と、金属板2の一方側の表面に積層された接着材3と、接着材3の一方側の表面に積層された可燃内装材4と、可燃内装材4に含浸硬化された充填材5とを備える。
【0014】
金属板2は、放熱のために熱伝導率の高い材料が好適に用いられ、例えばアルミニウム板、銅板が用いられ、好ましくはアルミニウム板が用いられる。金属板2は、0.15mm以上の肉厚を有し、好ましくは1.00mm以上の肉厚を有し、更に好ましくは2.0mm以上の肉厚を有する。これにより、可燃内装材4の意匠面Dから伝達された熱が金属板2で十分に放熱され、不燃性の向上に寄与する。
【0015】
接着材3は、金属板2及び可燃内装材4の各々よりも薄肉のシート状である。接着材3は、例えば、充填材5よりも熱伝導率が高いものを用いるとよい。一例として、接着材3には、伝熱フィラー、硬化剤、及び熱硬化性樹脂を含有したものが用いられる。前記伝熱フィラーは、熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が高い材料であり、例えば酸化アルミニウムが用いられる。前記伝熱フィラーは、酸化アルミニウムと同等の特性を持つものであれば特に材料に制限はないが、例えば、ムライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素などを使用することができ、いずれか1種類又はこれらを混合したものを使用することができる。
【0016】
熱硬化性樹脂には、例えばエポキシ樹脂が用いられるが、エポキシ樹脂以外のもの(フェノール樹脂)を用いてもよい。硬化剤としては、酸無水物、アミン系硬化剤などを使用することができる。添加量は、酸化アルミニウムと熱硬化性樹脂の合計重量(固形分換算)を100としたときに20〜50を加えることができる。未硬化状態の接着材3は、例えば、未硬化状態の充填材5よりも流動性が低い(粘度が高い)ものとするとよい。
【0017】
可燃内装材4は、外部に開放された多数の空隙を有する多孔質材である。可燃内装材4は、接着材3よりも厚肉である。可燃内装材4は、例えば両面(意匠面及び裏面)に凹凸形状を有する。本実施形態では、可燃内装材4には、竹材又は木材を材料とした網代が用いられている。この場合、
図2に示すように、可燃内装材4には、網代の隣接する材料同士の間に空隙Vが形成されている。なお、可燃内装材4は、この材料に限られず、外部に開放された多数の空隙を有する可燃材であればよい。例えば、可燃内装材4は、可燃材料(例えば、紙、繊維等)からなる織物又は不織布や、多数のオープンセルを有する可燃性多孔質材でもよい。
【0018】
充填材5は、可燃内装材4を被覆すると共に空隙Vに充填されている。充填材5は、透明の熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)及び硬化剤(例えば、酸無水物、アミン系硬化剤)を含み、可燃内装材4に含浸させた状態で熱硬化されてなる。充填材5の熱硬化性樹脂として液状タイプのエポキシ樹脂を用いることで、可燃内装材4の細部の隙間にまで充填材5を行き渡らせ易くなり、可燃内装材4の質感維持に貢献する。なお、充填材5の熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂以外のフェノール樹脂などを用いてもよい。硬化剤としては、酸無水物、アミン系硬化剤を用いることができる。添加量は、酸化アルミニウムと熱硬化性樹脂の合計重量を100としたときに20〜50を加えることができる。
【0019】
充填材5には、熱硬化性樹脂が用いられる。充填材5は、例えば吸熱フィラーを含有しているとよい。前記吸熱フィラーは、加熱により水が生成されるもので、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを用いることができ、水酸化アルミニウムが好適に用いられる。水酸化アルミニウムは、加熱により水が生成されるとともに酸化アルミニウムが生成されるため、加熱時には充填材5の熱伝導性も向上する。酸無水物及びエポキシ樹脂に水酸化アルミニウムを含有させたものを充填材5とする場合には、水酸化アルミニウムの重量をW1として、エポキシ樹脂の重量をW2とすると、外観上の観点から、W1/(W1+W2)を60以下、好ましくは50以下とするとよい。また、充填材5の重量をW3として、可燃内装材4の重量をW4とすると、不燃性及び外観の両立の観点から、W3/(W3+W4)を15以上25以下とすると好ましい。
【0020】
充填材5は、可燃内装材4の一方側の表面(即ち、意匠面D)から溢れる厚さT1よりも可燃内装材4の他方側の裏面(接着材3側の面)から接着材3側に溢れる厚さT2が大きくなるように配置されている。即ち、可燃内装材4の裏面側において充填材5が接着材3に十分に接合される一方、可燃内装材4の意匠面Dの充填材5による被覆厚さが薄く、可燃内装材4の見た目の質感が十分に維持されている。
【0021】
次に、化粧板1の製造手順について説明する。以下で説明する製法は、プリプレグプレス成型法を用いたものであるが、この成形法は一例であり、他の成形法を用いてもよい。まず、開放された多数の空隙を有する多孔性の可燃内装材4に熱硬化前の液状の充填材5を含浸させる。そして、可燃内装材4に含浸された充填材5を半硬化させてプリプレグを作成する。また、未硬化状態の接着材3を金属板2の一方側の表面に積層する。そして、前記したプリプレグ(可燃内装材4及び半硬化状態の充填材5)を接着材3の一方側の表面(金属板2とは反対側の面)に積層する。この際、金属板2とプリプレグとの間に接着材3が介在するため、未硬化状態の充填材5が流出することが抑制されて安定して積層することできる。
【0022】
次いで、金属板2に接着材3を介してプリプレグを積層したものを金型により加圧及び加熱し、接着材3及び充填材5を熱硬化させる。その際、金属板2と可燃内装材4との間には接着材3が介在しているために、加圧・加熱の初期段階において充填材5は可燃内装材4の裏面から接着材3側に溢れ出ることができる一方、可燃内装材4の表面が金型に押圧されるために、可燃内装材4の意匠面Dからは充填材5が溢れにくい。そのため、可燃内装材4の意匠面Dから溢れる充填材5の厚さT1は、可燃内装材4の裏面から接着材3側に溢れる充填材5の厚さT2よりも小さくなる。そして、可燃内装材4の裏面側の充填材5が接着材3に面接着されるため、可燃内装材4が金属板2に対して強固に固定されることにもなる。
【0023】
なお、ここでは、化粧板1の製造方法としてプリプレグプレス成型法を用いる場合を例示したが、他の成形法を用いてもよく、例えば、プリプレグオートクレーブ成形法やRTM成形法等を用いてもよい。
【0024】
以上に説明した構成によれば、熱硬化性樹脂を含む充填材5が可燃内装材4に含浸硬化されて可燃内装材4の多数の空隙Vが充填材5で充填されているので、可燃内装材4に内在していた空気(酸素)が無くなる。これにより、可燃内装材4に伝わった熱が、接着材3を介して金属板2へ効率よく伝達され、不燃効果が向上する。併せて、可燃内装材4の表面が熱硬化樹脂でコーティングされているため、可燃内装材4は一層燃え難くなる。
更に、可燃内装材4が金属板2に直接積層されるのではなく可燃内装材4と金属板2との間に熱硬化性樹脂を含む接着材3が介在しているので、充填材5を多量に用いなくても可燃内装材4を金属板2に安定的に固定できる。そのため、可燃内装材4の意匠面D側に溢れる充填材5が低減され、充填材5により可燃内装材4の外観が損なわれることを防止できる。
【0025】
従って、多孔性の可燃内装材4を用いた化粧板1において、不燃性を付与して且つ外観を良好に保つことが可能となる。本実施形態では、可燃内装材4に竹材又は木材の網代が用いられるため、化粧板1に竹又は木質の質感を付与しながら可燃内装材4に充填材5を好適に充填できる。
【0026】
また、可燃内装材4の意匠面Dから溢れる充填材5の厚さT1が、可燃内装材4の裏面から接着材3側に溢れる充填材5の厚さT2よりも小さいため、透明の充填材5による可燃内装材4の意匠面Dのコーティング厚さが薄くなり、可燃内装材4の外観が損なわれず外観を良好に保つことができる。特に、可燃内装材4が表面に凹凸形状を有するものである場合には、可燃内装材4の意匠面Dから溢れる充填材5の厚さT1が薄いことで、その凹凸形状の質感が良好に保たれることになる。
【0027】
また、充填材5には、吸熱材料として水酸化アルミニウムが含まれているため、加熱時に水酸化アルミニウムから水が発生して且つ高熱伝導性の酸化アルミニウムが生成される。よって、充填材5において吸熱性が向上すると共に、充填材5から金属板2側への熱伝達を円滑に行え、不燃性が向上する。また、充填材5が吸熱材料をフィラーとして含有していることで、未硬化状態の熱硬化性樹脂の流出を抑制でき、熱硬化時における充填材5の均一化に寄与することができる。
【0028】
また、接着材3は、酸化アルミニウムを含み、充填材5よりも熱伝導率が高いので、可燃内装材4の意匠面Dから伝達された熱が接着材3を介して金属板2に円滑に伝達され、その放熱効果により不燃性が向上する。
【0029】
次に、表1を参照しながら実施例及び比較例について説明する。なお、表1中の「不燃」の判定は、「解説 鉄道に関する技術基準(車両編)改訂版」(国土交通省鉄道局 監修)に基づいて行った。また、金属板2には、アルミニウム板を用いた。また、充填材5には、エポキシ樹脂、水酸化アルミニウム、及び硬化剤としてアミン系硬化剤を含有したものであり、エポキシ樹脂と水酸化アルミニウムとを重量換算で一対一の割合で混合したものを用いた。また、接着材3には、酸化アルミニウム、硬化剤としてアミン系硬化剤、及びエポキシ樹脂を含有したものを用いた。また、充填材5の重量をW3として可燃内装材4の重量をW4としたときに、実施例では、充填材5をW3/(W3+W4)が0.22となる割合とし、比較例3では、充填材5をW3/(W3+W4)が0.28となる割合とした。また、各化粧板はプリプレグプレス成型法にて製造した。
【0031】
表1に示すように、比較例1の化粧板では、充填材5を用いられず且つ金属板2の肉厚が薄いため、不燃を達成できなかった。比較例2の化粧板でも、金属板2の肉厚は厚いが充填材5が用いられないため、不燃を達成できなかった。比較例3の化粧板では、金属板2の肉厚が厚く且つ充填材5が用いられて不燃を達成できたが、接着材3が用いられないため、可燃内装材4の意匠面D側に充填材5が溢れやすく且つ充填材5が均一にならず、可燃内装材4の意匠面Dの質感が損なわれて外観を良好にできなかった。この比較例3の外観悪化は、以下の現象に起因するものと考えられる。
【0032】
比較例3のように接着材3が無い状態で、網代である可燃内装材4をプレスにより加熱・加圧すると、溶融した充填材5の逃げ場は、可燃内装材4(網代)の表面または化粧板の側端縁のみとなり、溶融した充填材5は、化粧板側端縁と可燃内装材4の表面とから流出する。このとき、可燃内装材4の表面(意匠面)には網代構造による凹凸があり、この凹凸とプレス面との間に網代の凹凸表面に起因した極小の隙間が存在するが、当該隙間にも溶融した充填材5が流れていくことになる。そうすると、可燃内装材4(網代)の表面(意匠面)に存在する充填材5がリッチになり、可燃内装材4の表面の凹凸が無くなって、可燃内装材4の表面の質感が損なわれて外観が悪くなる。但し、表面に網代のような凹凸が形成されていない可燃内装材を用いる場合には、比較例3のように接着材を用いない例も採用し得る。
【0033】
他方、実施例の化粧板では、可燃内装材4に充填材5が含浸硬化され、接着材3が用いられ、金属板2の肉厚が厚いため、不燃を達成できて且つ可燃内装材4の意匠面Dの質感が保たれ、外観を良好にできた。即ち、実施例のように接着材3が存在する場合には、溶融した充填材5の逃げ場が、上記した2つ以外にも柔軟な接着材3そのものが逃げ場になり、溶融した充填材5は、化粧板側端縁側や可燃内装材4の表面側よりも接着材3側の方に逃げ易くなる。そのため、可燃内装材4(網代)の表面(意匠面)側の充填材5がプアになり、可燃内装材4の表面の凹凸が維持され、可燃内装材4の表面の質感が保たれて外観が良好となる。
【符号の説明】
【0034】
1 化粧板
2 金属板
3 接着材
4 可燃内装材
5 充填材
D 意匠面
V 空隙