【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の診断方法は、
少なくとも一の風車翼を含む風車ロータを回転させて固定するステップと、
前記風車ロータを固定した状態で、前記風車翼のピッチ角を変動させるピッチ機構に前記ピッチ角を基準角度からピッチ角目標値を目指して増減させる様にピッチ制御指令値を与えるステップと、
前記ピッチ制御指令値に応じた前記風車翼の実ピッチ角速度又は実ピッチ角を取得するステップと、
取得した前記実ピッチ角速度又は前記実ピッチ角と前記ピッチ制御指令値との相関に基づき、前記ピッチ機構の健全性を診断するステップと、
を備えている。
【0008】
上記(1)の方法によれば、風車ロータを回転後に固定した状態で、風車翼のピッチ角を基準角度からピッチ角目標値を目指して増減させる様にピッチ制御指令値がピッチ機構に与えられ、該ピッチ制御指令値に応じて変動された風車翼の実ピッチ角速度又は実ピッチ角が取得される。そして、取得された実ピッチ角速度又は実ピッチ角とピッチ制御指令値との相関に基づきピッチ機構の健全性が診断される。つまり、ピッチ角の増加方向及び減少方向の両方向につき、上記基準角度を基準としてピッチ制御指令値と実ピッチ角速度又は実ピッチ角との相関からピッチ機構の健全性や異常の兆候を定量的に診断することができる。なお、ピッチ角目標値に対して上記ピッチ制御指令値は、取得した実ピッチ角速度又は実ピッチ角が上記ピッチ角目標値に達しない、或いは乖離している場合は補正すべく調整するのでピッチ機構の健全性を診断することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の方法において、
前記風車ロータを固定させるステップでは、診断対象とする前記風車翼を前記風車ロータの中心を含む鉛直方向に沿って固定させてもよい。
【0010】
上記(2)の方法によれば、風車ロータの中心を含む鉛直方向に沿って診断対象の風車翼を固定させた状態でピッチ機構の健全性を診断することができる。つまり、ピッチ角変更に関する風車翼の回転軸を鉛直方向に沿わせた状態でピッチ機構の健全性を診断できるから、例えばピッチ角変更に対する風車翼の自重等の重力成分に起因した影響を排除し、ピッチ機構の健全性をより高精度に診断することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の方法において、
前記ピッチ角目標値又は前記ピッチ制御指令値を正弦波で与えてもよい。
【0012】
上記(3)の方法によれば、ピッチ角目標値又はピッチ制御指令値が正弦波でピッチ機構に与えられるから、上記基準角度を基準としたピッチ角の増加方向又は減少方向の両方向の健全性について、比較が容易な基本波形を用いてピッチ機構の健全性すなわち異常の有無又は異常の程度を診断することができる。なお、ピッチ制御指令値は結果として正弦波としての形状とはならない場合もある。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の方法において、
前記実ピッチ角速度と前記ピッチ制御指令値との相関に関する第1閾値を設定するステップを備え、
前記診断するステップでは、前記実ピッチ角速度と前記ピッチ制御指令値との相関が前記第1閾値を逸脱した場合に異常と診断してもよい。
【0014】
上記(4)の方法によれば、実ピッチ角速度とピッチ制御指令値との相関が第1閾値を逸脱したか否かを判断基準としてピッチ角速度に関するピッチ機構の健全性をより定量的に診断することができる。例えば、ピッチ制御指令値に関して許容される実ピッチ角速度の許容値等を第1閾値に設定することにより、公差や組付け誤差等を含む許容可能な正常範囲であるか否かを容易に診断することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の方法において、
前記実ピッチ角と前記ピッチ制御指令値との相関に関する第2閾値を設定するステップを備え、
前記診断するステップでは、前記実ピッチ角と前記ピッチ制御指令値との相関が前記第2閾値を逸脱した場合に異常と診断してもよい。
【0016】
上記(5)の方法によれば、実ピッチ角とピッチ制御指令値との相関が第2閾値を逸脱したか否かを判断基準としてピッチ角に関するピッチ機構の健全性をより定量的に診断することができる。例えば、ピッチ制御指令値に関して許容される実ピッチ角の許容値等を第2閾値に設定することにより、公差や組付け誤差等を含む許容可能な正常範囲であるか否かを容易に診断することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の方法において、
前記ピッチ制御指令値を与えるステップでは、前記ピッチ角がフェザーとファインとの間における全ピッチ角度範囲の10〜50%の振幅範囲を目指して変動するように前記ピッチ制御指令値を与えてもよい。
【0018】
上記(6)の方法によれば、ピッチ角がフェザーとファインとの間における全ピッチ角度範囲の10〜50%の振幅範囲を目指して変動するようなピッチ角目標値がピッチ機構に与えられる。つまり、フェザーとファインとの間の全ピッチ角度範囲に亘ってピッチ角を変化させる場合に比べて簡易かつ短時間にピッチ機構の健全性を診断することができる。また、例えば、運転時の使用頻度が比較的高い領域や、異常が比較的発生し易いピッチ角を含むピッチ角度範囲等について選択的に又は優先的にピッチ機構の健全性を診断することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の方法において、
前記ピッチ制御指令値を与えるステップでは、前記ピッチ角が0.04〜0.2Hzの周波数範囲を目指して変動するように前記ピッチ制御指令値を与えてもよい。
【0020】
上記(7)の方法によれば、0.04〜0.2Hzの周波数範囲を目指してピッチ角を変動させてピッチ機構の健全性が診断される。つまり、0.04〜0.2Hzのうち任意の周波数でピッチ機構の健全性を診断することができるから、例えば、異なる周波数でピッチ角を変動させた際の挙動を把握することができ、健全性の診断をより高精度に実行することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の方法において、
前記ピッチ制御指令値を与えるステップでは、前記ピッチ角が5〜25秒の周期範囲を目指して変動するように前記ピッチ制御指令値を与えてもよい。
【0022】
上記(8)の方法によれば、5〜25秒の周期範囲を目指してピッチ角を変動させてピッチ機構の健全性が診断される。つまり、5〜25秒のうち任意の周期でピッチ機構の健全性を診断することができるから、例えば、異なる周期でピッチ角を変動させた際の挙動を把握することができ、健全性の診断をより高精度に実行することができる。
【0023】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る風力発電設備の自動診断装置は、
少なくとも一の風車翼を含む風車ロータと、
前記風車翼のピッチ角を変動させるピッチ機構と、
前記風車翼の実ピッチ角速度又は実ピッチ角を取得するセンサと、
少なくとも前記ピッチ機構及び前記風車ロータの駆動を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記風車ロータを回転させて固定した状態で前記ピッチ角を基準角度からピッチ角目標値を目指して増減させる様にピッチ制御指令値を前記ピッチ機構に与え、
前記ピッチ制御指令値に応じた前記風車翼の前記実ピッチ角速度又は前記実ピッチ角を前記センサから取得し、
取得した前記実ピッチ角速度又は前記実ピッチ角と前記ピッチ制御指令値との相関に基づき、前記ピッチ機構の健全性を診断するように構成されている。
【0024】
上記(9)の構成によれば、上記(1)で述べたように、コントローラにより、風車ロータを回転後に固定した状態で、風車翼のピッチ角を基準角度からピッチ角目標値を目指して増減させる様にピッチ制御指令値がピッチ機構に与えられ、該ピッチ制御指令値に応じて変動された風車翼の実ピッチ角速度又は実ピッチ角がセンサを介して取得される。そして、取得された実ピッチ角速度又は実ピッチ角とピッチ制御指令値との相関に基づき、コントローラによってピッチ機構の健全性が診断される。つまり、ピッチ角の増加方向及び減少方向の両方向につき、上記基準角度を基準としてピッチ制御指令値と実ピッチ角速度又は実ピッチ角との相関からピッチ機構の健全性や異常の兆候を定量的に診断することができる。なお、ピッチ制御指令値は、取得した実ピッチ角速度又は実ピッチ角が上記ピッチ角目標値に達しない、或いは乖離している場合は補正すべく調整され得る。これにより、ピッチ機構の健全性を診断することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の何れか一つに記載の構成において、
前記コントローラは、診断対象とする前記風車翼を前記風車ロータの中心を含む鉛直方向に沿って固定させるように構成されていてもよい。
【0026】
上記(10)の構成によれば、上記(2)で述べたように、コントローラにより、風車ロータの中心を含む鉛直方向に沿って診断対象の風車翼を固定させた状態でピッチ機構の健全性を診断することができる。つまり、ピッチ角変更に関する風車翼の回転軸を鉛直方向に沿わせた状態でピッチ機構の健全性を診断できるから、例えばピッチ角変更に対する風車翼の自重等の重力成分に起因した影響を排除し、ピッチ機構の健全性をより高精度に診断することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の構成において、
前記コントローラは、前記ピッチ機構に対して前記ピッチ角目標値又は前記ピッチ制御指令値を正弦波で与えるように構成されていてもよい。
【0028】
上記(11)の構成によれば、上記(3)で述べたように、ピッチ角目標値又はピッチ制御指令値が正弦波でピッチ機構に与えられるから、上記基準角度を基準としたピッチ角の増加方向又は減少方向の両方向の健全性について、比較が容易な基本波形を用いてピッチ機構の健全性すなわち異常の有無又は異常の程度を診断することができる。なお、ピッチ制御指令値は結果として正弦波としての形状とはならない場合もある。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)〜(11)の何れか一つに記載の構成において、風力発電設備の自動診断装置は、
前記実ピッチ角速度と前記ピッチ制御指令値との相関に関する第1閾値、又は、前記実ピッチ角と前記ピッチ制御指令値との相関に関する第2閾値を記憶した記憶部を備え、
前記コントローラは、前記実ピッチ角速度と前記ピッチ制御指令値との相関が前記第1閾値を逸脱した場合、又は、前記実ピッチ角と前記ピッチ制御指令値との相関が前記第2閾値を逸脱した場合に異常と診断するように構成されていてもよい。
【0030】
上記(12)の構成によれば、上記(4)又は(5)で述べたように、実ピッチ角速度とピッチ制御指令値との相関が第1閾値を逸脱したか否かを判断基準としてピッチ角速度に関するピッチ機構の健全性をより定量的に診断することができる。また、実ピッチ角とピッチ制御指令値との相関が第2閾値を逸脱したか否かを判断基準としてピッチ角に関するピッチ機構の健全性をより定量的に診断することができる。例えば、ピッチ制御指令値に関して許容される実ピッチ角速度の許容値等を第1閾値に設定することにより、公差や組付け誤差等を含む許容可能な正常範囲であるか否かを容易に診断することができる。また、例えば、ピッチ制御指令値に関して許容される実ピッチ角の許容値等を第2閾値に設定することにより、公差や組付け誤差等を含む許容可能な正常範囲であるか否かを容易に診断することができる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(9)〜(12)の何れか一つに記載の構成において、
前記コントローラは、前記ピッチ角がフェザーとファインとの間における全ピッチ角度範囲の10〜50%の振幅範囲を目指して変動するように前記ピッチ制御指令値を与えるように構成されていてもよい。
【0032】
上記(13)の構成によれば、上記(6)で述べたように、コントローラにより、ピッチ角がフェザーとファインとの間における全ピッチ角度範囲の10〜50%の振幅範囲を目指して変動するようなピッチ角目標値がピッチ機構に与えられる。つまり、フェザーとファインとの間の全ピッチ角度範囲に亘ってピッチ角を変化させる場合に比べて簡易かつ短時間にピッチ機構の健全性を診断することができる。また、例えば、運転時の使用頻度が比較的高い領域や、異常が比較的発生し易いピッチ角を含むピッチ角度範囲等について選択的に又は優先的にピッチ機構の健全性を診断することができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(9)〜(13)の何れか一つに記載の構成において、
前記コントローラは、前記ピッチ角が0.04〜0.2Hzの周波数範囲を目指して変動するように前記ピッチ制御指令値を与えるように構成されていてもよい。
【0034】
上記(14)の構成によれば、コントローラにより、0.04〜0.2Hzの周波数範囲を目指してピッチ角を変動させてピッチ機構の健全性が診断される。つまり、0.04〜0.2Hzのうち任意の周波数でピッチ機構の健全性を診断することができるから、例えば、異なる周波数でピッチ角を変動させた際の挙動を把握することができ、健全性の診断をより高精度に実行することができる。
【0035】
(15)幾つかの実施形態では、上記(9)〜(14)の何れか一つの何れか一つに記載の構成において、
前記ピッチ機構の健全性に関する情報を報知する報知部を備え、
前記コントローラは、一定サイクルごとに前記診断を行い、少なくとも一の前記風車翼の前記ピッチ機構について異常が確認された場合にその旨を前記報知部により報知するように構成されていてもよい。
【0036】
上記(15)の構成によれば、コントローラにより、一定サイクルごとにピッチ機構の健全性の診断が行われ、少なくとも一の風車翼のピッチ機構について異常が確認された場合にその旨を報知部により報知される。