特許第6863937号(P6863937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6863937自動車用の構成要素、およびマグネシウム材料からコーティング付き構成要素を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6863937
(24)【登録日】2021年4月5日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】自動車用の構成要素、およびマグネシウム材料からコーティング付き構成要素を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/00 20060101AFI20210412BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20210412BHJP
   B24C 1/08 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   B22D29/00 G
   B22D21/04 B
   B22D29/00 B
   B24C1/08
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-146868(P2018-146868)
(22)【出願日】2018年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-34338(P2019-34338A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年8月7日
(31)【優先権主張番号】102017118289.6
(32)【優先日】2017年8月11日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ジルケ ゴロプ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ユンゲルト
(72)【発明者】
【氏名】マルク−リーヴェン ヘト
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−120877(JP,A)
【文献】 特開2009−262208(JP,A)
【文献】 特開2001−009555(JP,A)
【文献】 特開2012−200838(JP,A)
【文献】 特開2010−269346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 29/00
B05D 7/14
B05D 5/06
B24C 11/00
B22D 21/04
B24C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の構成要素(10)であって、
マグネシウム材料から製造された基体(12)であって、前記基体(12)の外観表面(14)が1〜40μmの算術平均粗さRaを有する基体(12)と、
透明ラッカーコーティング(40)を備え、前記透明ラッカーコーティング(40)が、前記基体(12)の前記外観表面(14)上に設けられ、最大で60μmの層厚さを有し、前記透明ラッカーコーティング(40)の下に配置された前記基体(12)の表面構造(15)が、視覚的および触覚的に識別可能であり、
前記透明ラッカーコーティング(40)が一層で形成されていると共に、透明ラッカー表面(42)を有し、前記透明ラッカー表面(42)が、少なくとも0.5μmの平均粗さRaを有している、ことを特徴とする構成要素(10)。
【請求項2】
前記透明ラッカーコーティング(40)が、5〜40μmの層厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の構成要素(10)。
【請求項3】
前記基体(12)がマグネシウム鋳物であることを特徴とする請求項1または2に記載の構成要素(10)。
【請求項4】
自動車内装用の外観構成要素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の構成要素(10)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の構成要素(10)を製造するための方法であって、
a)ブラスト処理法を用いて前記構成要素(10)の前記外観表面(14)を加工する方法ステップと、
b)前記ブラスト処理法によって加工された前記外観表面(14)に透明ラッカーコーティング(40)を塗布する方法ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
ブラスト要素(26)がアルミニウム粒(27)であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム粒(27)が、0.6〜1mmの直径を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記透明ラッカーコーティング(40)が、艶消し剤および/または着色剤を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のマグネシウム構成要素に関する。
【0002】
さらに、本発明は、マグネシウム材料からコーティング付き構成要素を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の軽量化を図るため、マグネシウム材料から製造された構成要素の使用が増えている。ここで、マグネシウム材料は、アルミナ材料、特に鋼材に比べて低い密度を有すると共に、比較的良好な機械的特性を有する。マグネシウム材料から製造された構成要素は、例えば車両シートまたはインストルメントパネルの部品として、外装および内装構成要素として使用される。
【0004】
腐食防止保護を提供するため、および/またはマグネシウム構成要素、特に外観マグネシウム構成要素の見た目を改良するために、上記マグネシウム構成要素にコーティングが施される。コーティングは通常、粉末コーティングによって行われる。(特許文献1)は、マグネシウム材料から製造されるこのタイプの構成要素を開示している。構成要素の表面に腐食防止保護を提供するために、構成要素は溶射によってコーティングされる。
【0005】
マグネシウム構成要素のこれらのタイプのコーティングでは、構成要素、または構成要素の所定の表面がコーティングによって覆われ、コーティングの下に配置された金属表面が触覚的および視覚的に識別可能できなくなることが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2012 112 394 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、マグネシウム材料から製造された構成要素、および上記構成要素を製造するための方法であって、上記構成要素が腐食防止保護を有し、上記構成要素の金属表面が視覚的および触覚的に識別可能である、構成要素および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項1の特徴を備える自動車用の構成要素と、対応する請求項6に記載の方法とによって実現される。
【0009】
この構成要素は、マグネシウム材料から製造された基体を有する。基体は、通常1〜40μmの算術平均粗さRaを有する外観表面を有する。平均粗さRaは、例えば減法的加工、一次成形プロセス、または成形プロセスによって製造された技術的な表面の粗さを表す。算術平均粗さRaは、測定距離に沿った粗い表面の高さおよび深さの差を決定し、決定された粗さプロファイルの特定の積分を測定距離にわたって計算し、最後に、得られた結果を測定距離の長さで割ることによって求められる。
【0010】
透明ラッカーコーティングが、基体の外観表面に設けられる。透明ラッカーコーティングは、最大60μmの層厚さを有し、マグネシウム材料から製造された基体の腐食防止保護として働く。
【0011】
透明ラッカーとしては、ベースラッカーと硬化剤とを有する二成分透明ラッカーを使用することが好ましい。一成分透明ラッカーに比べて、二成分透明ラッカーは、化学物質に対して耐性があり、薄い層厚さを実現可能にする。透明ラッカーは、湿潤ラッカー、粉末ラッカー、ハイブリッドラッカー、またはゾル−ゲル系として構成することができ、噴霧、フラッディング、ディッピング、または粉末コーティングによって塗布することができる。ここで、透明ラッカーは、熱硬化、UV硬化、熱/UV硬化するように構成されることが好ましい。
【0012】
厚く塗布されるコーティングに比べて透明ラッカーコーティングの層厚さが薄いことにより、また、透明ラッカーコーティングの視覚的および機械的特性により、コーティングがあるにも関わらず、基体の金属の外観表面が視覚的および触覚的に識別可能である。これにより、その構成要素のマグネシウム特性が知覚可能である。
【0013】
好ましくは、透明ラッカーコーティングは20〜40μmの層厚さを有し、それにより、外観表面の表面構造は、視覚的および触覚的に特に良く識別可能である。しかし、比較的新しいラッカー系の場合、より小さい約5μmの層厚さも可能である。
【0014】
1つの好ましい設計実施形態における透明ラッカーコーティングは、少なくとも0.5μmの算術平均粗さRaを有する透明ラッカー表面を有する。ここで、コーティングがあるにも関わらず基体の金属表面が依然として実質的に視覚的および触覚的に知覚可能であるように、透明ラッカー表面の表面構造は、外観表面の表面構造にほぼ対応する。
【0015】
好ましくは、基体はマグネシウム鋳物であり、基体を鋳造することによって基体の複雑な形状が製造可能である。しばしば使用されるマグネシウム鋳造材料はAZ91であり、AZ91は、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、およびマンガンから構成されたマグネシウムダイカスト合金である。マグネシウム合金AZ91は、高い強度、非常に良好な鋳造性、および比較的高い耐食性を有する。あるいは、基体は、マグネシウムシートまたは押出成形マグネシウム形材でもよい。
【0016】
1つの好ましい設計実施形態における構成要素は、自動車内装用の外観構成要素であり、構成要素は、例えばセンターコンソールなどの設計要素または支持要素でよい。あるいは、構成要素は、自動車外装部品として使用することができる。
【0017】
さらに、本発明の目的は、マグネシウム構成要素からコーティング付き構成要素を製造するための方法であって、コーティングがあるにも関わらずこの構成要素の金属表面が視覚的および触覚的に識別可能である方法を提供することである。
【0018】
この目的は、独立請求項6の特徴を備える、マグネシウム構成要素からコーティング付き構成要素を製造するための方法によって実現される。
【0019】
この方法は、
a)ブラスト処理法を用いて構成要素の外観表面を加工する方法ステップと、
b)ブラスト処理法によって加工された外観表面に透明ラッカーコーティングを塗布する方法ステップと
を含む。
【0020】
一次成形後、または押出成形などの成形後の外観表面は、不均質な表面構造を有し、表面構造は、それぞれ様々な高さおよび深さの山および谷を有する。さらに、例えば基体をダイカストするとき、とりわけ、鋳造プロセスでの溶融物の流れ、冷却処置、および鋳造プロセスで使用される離型剤に起因する、またはそれらによって生成される縞模様および変色が、しばしば製造処置中に生成される。不均質な表面構造は、外観表面をブラスト処理することによって圧密され、縞模様および変色が低減または除去され、それにより、ブラスト処理後に基体の均質な金属表面が得られる。さらに、透明ラッカーコーティングの塗布前に、構成要素の他の前処理、例えば構成要素のバリ取り、洗浄、パッシベーションを行うことができる。
【0021】
ブラスト処理は、例えば、圧力ブラスト処理やホイールブラスト処理によって行うことができる。ホイールブラスト処理の場合、ブラスト要素がホイールに供給され、ブラスト要素はホイールの回転によって加速され、加速されたブラスト要素は、大きく広がったジェットブラストで基体の外観表面上に噴射される。
【0022】
ブラスト処理法はAlmen強度測定によって定量化され、Almen強度測定においてブラスト処理のジェット強度が決定される。ばね鋼から製造されたAlmen試験ストリップは、ブラスト処理プロセス中にブラスト処理され、Almen試験ストリップの撓みによって、蓄積されたブラスト強度が測定される。Almen強度測定には、タイプN、タイプA、またはタイプCの3つの異なるテストストリップを使用することができ、これら異なるテストストリップはシートの厚さが異なり、シートの厚さは、タイプNから順に増加する。
【0023】
本発明の例示的なブラスト処理プロセスでは、タイプNのテストストリップが使用され、テストストリップは、好ましくは0.1〜0.42mmの範囲で撓む。
【0024】
ブラスト処理後、ブラスト処理によって準備された外観表面は、透明ラッカーでコーティングされ、透明ラッカーの薄層が外観表面に塗布される。ブラスト処理された均質な外観表面の表面構造が視覚的および触覚的に識別可能であり続けるように、透明ラッカーコーティングの層厚さは最大60μmである。
【0025】
ブラスト要素は、好ましくはアルミニウム粒、例えばアルミニウムワイヤ粒である。アルミニウム粒は通常、薄壁の構成要素の洗浄、圧密、および平坦化に使用され、アルミニウム粒によって、歪みを伴わずに薄壁の構成要素をブラスト処理することができる。それにより、マグネシウム材料から製造された薄い設計要素もブラスト処理することができる。さらに、アルミニウム粒によるブラスト処理によって、外観表面の光沢度が増加する。
【0026】
1つの好ましい設計実施形態では、アルミニウム粒は、0.3〜3.0mmの直径を有する。それにより、外観表面の微細で均質な表面構造が生成される。
【0027】
透明ラッカーは、艶消し剤および/または着色剤を有することが好ましく、それにより、透明ラッカーコーティングがあるにも関わらず、艶消しの金属の外観表面が実現される。光沢度を測定したときの透明ラッカー表面は、例えば30〜60グロスユニットを示すことができ、測定は60°の角度で行われる。
【0028】
本発明の例示的実施形態を、図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一次成形後の構成要素の基体の模式図である。
図2】マグネシウム材料からコーティング付き構成要素を製造するための方法の個々の方法ステップの模式図である。
図3】マグネシウム材料からコーティング付き構成要素を製造するための方法の個々の方法ステップの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、コーティングされる構成要素10の基体12を示す。基体12は、マグネシウム材料、例えばAZ91から製造され、外観表面14を有する。外観表面は、構成要素の取付け状態で目に見える。外観表面14は、一次成形プロセス後に生成された不均質な表面構造15を有し、表面構造15は、それぞれ様々な深さおよび高さの谷および山を有する。さらに、外観表面14は、例えば、ダイカスト法で使用される離型剤によって、および/またはダイカスト法における溶融物の流れによって生成された縞模様および変色を有する。
【0031】
図2は、マグネシウム材料からコーティング付き構成要素10を製造するための第1の方法ステップを示す。第1の方法ステップで、基体12の外観表面14がブラスト処理される。ブラスト処理は、ブラストデバイス20、例えば圧力ブラストまたはホイールブラストデバイスによって行われる。ブラストジェット24を用いるブラストデバイス20は、外観表面14と位置合わせされ、ブラストジェット24は複数のブラスト要素26を含み、ブラスト要素26は外観表面14上に加速される。ブラスト要素26は、アルミニウム粒27であり、0.6〜1.0mmの直径を有し、その機械的特性により、外観表面14を洗浄、圧密、および平坦化する。
【0032】
図2では、ブラスト処理されていない不均質な表面構造15がブラストデバイス20の右側に示され、外観表面14のブラスト処理された表面構造17がブラストデバイス20の左側に示されている。ブラスト処理されていない表面構造15とは対照的に、ブラスト処理された表面構造17は、2〜6μmの算術平均粗さRaを有する、より微細であり、より圧密の、洗浄された表面構造を有する。
【0033】
図3は、マグネシウム材料からコーティング付き構成要素10を製造するための第2の方法ステップを示す。第2の方法ステップにおいて、外観表面14のブラスト処理された表面構造17は、透明ラッカーコーティングmでコーティングされる。コーティングプロセスは、塗装デバイス30によって行われ、ラッカージェット34を用いる塗装デバイス30は、外観表面14と位置合わせされる。透明ラッカーコーティング40を有する透明ラッカー表面42が塗装デバイス30の左側に示され、ブラスト処理された表面構造17が塗装デバイス30の右側に示されている。
【0034】
透明ラッカーコーティング40は、30μmの層厚さを有し、透明ラッカー表面42は、1.5μmの算術平均粗さRaを有する。このタイプの透明ラッカーコーティング40により、透明ラッカーコーティング40によって覆われた金属の外観表面14は、視覚的および触覚的に識別可能である。
【0035】
独立請求項の範囲内にある、記載された実施形態以外の構成実施形態も可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 構成要素
12 基体
14 外観表面
15 表面構造
26 ブラスト要素
27 アルミニウム粒
40 透明ラッカーコーティング
42 透明ラッカー表面
図1
図2
図3